「学校事故対応に関する指針」の改訂について(通知)(令和6年3月26日 5文科教第1980号)

令和6年3月26日に公表した「学校事故対応に関する指針【改訂版】」について周知するとともに、今回の改定を踏まえた主な留意事項等について通知します。

5文科教第1980号
令和6年3月26日


各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
各文部科学大臣所轄学校法人理事長  殿
構造改革特別区域法第12条第1項
の認定を受けた各地方公共団体の長
附属学校を置く各国立大学法人の長

文部科学省総合教育政策局長
望月 禎
 

 

「学校事故対応に関する指針」の改訂について(通知)
 

学校事故の対応に関しては、平成28年3月に策定した「学校事故対応に関する指針」(以下「指針」という。)に基づき、事件・事故災害の未然防止とともに、事故発生時の適切な対応や事故発生後の速やかな調査・検証等の実施をお願いしてきたところです。
その後、指針を踏まえた取組が各地で進められる中で、「第3次学校安全の推進に関する計画(令和4年3月25日閣議決定)」において、指針策定当初に想定していた取組について実効性を高める観点から、指針改訂等の措置について早急に検討を開始する必要性があることが示されました。
こうした状況を踏まえ、文部科学省では、「学校安全の推進に関する有識者会議」において、「事故の未然防止」「事故発生時の適切な対応」「重大事故発生に関する国への報告」等について、実効性を高めるための検討を重ね、この度、指針(改訂版)を別添のとおり取りまとめました。
この指針(改訂版)では、これまでの重大事故等を踏まえた事故の未然防止や事故の発生に備えた事前の体制整備等の取組、被害児童生徒等及びその家族に配慮した支援、事故等の検証や再発防止、死亡事故等の発生に関する国への報告等の実効性の向上を図るため、学校、学校の設置者及び都道府県等担当課の取り組むべき対応を明確にしました。また、指針(改訂版)には、関係機関等が連携して組織的に取り組むことや、その取組の充実を図る観点から、主体別のチェックリスト、Q&A、報告様式等を併せて収録しています。
各学校及び学校の設置者等においては、今回の主な改訂内容である下記の点に留意の上、指針(改訂版)を踏まえ、事前の体制整備、事故発生時の対応、被害児童生徒等及びその保護者への支援、連絡系統の確認など事故対応に関する共通理解及び備えを十分に図っていただき、適切な対応をお願いします。
国においても、毎年、都道府県等から報告された調査報告書の概要や事故等の状況報告を基に事故情報を蓄積し、有識者会議等による検討や分析を行い、教訓とすべき点を整理した上で、類似の事故の発生防止に役立てられるよう、積極的に情報提供等を行う予定です。また、学校の設置者等における本指針に基づく調査等の実施に当たっては、必要に応じて助言等の支援を行ってまいります。
ついては、貴職におかれては、指針(改訂版)の内容及び下記について十分御理解いただくとともに、都道府県・指定都市教育委員会教育長にあっては所管の学校並びに域内の市区町村教育委員会に対して、都道府県知事にあっては所轄の学校法人に対して、各文部科学大臣所轄学校法人担当課におかれては設置する学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、国立大学法人学長にあっては設置する附属学校に対して、周知・御指導いただくようお願いします。
なお、主催される学校安全の研修会等において、指針(改訂版)を踏まえた内容を取り扱い、事故対応等に関して理解を深めることについても併せて御留意願います。

本指針(改訂版)及び各様式等は、文部科学省のウェブサイトに掲載しています。
学校事故対応に関する指針【改訂版】(令和6年3月)
 


1.事故発生の未然防止(指針p5~10)

(1)重大事故・ヒヤリハット事例の共有と活用
実効性ある学校安全の体制を構築するため、各学校は、国等からの重大事故の情報などの各種事故情報及び、同様の事故の未然防止のための注意喚起の通知を、教職員間で共有し、重大事故が発生する前に対策を講じること。

(2)危機管理マニュアルの策定・見直し
学校の設置者は、学校が策定する危機管理マニュアルについて、事故や災害等から児童生徒等の安全を確保できるものになっているかを定期的に点検し、不備があれば、指導・助言により、是正を促すこと。

(3)教職員の危機管理に関する資質の向上
各学校は、教職員の危機管理に関する資質の向上を図る研修等を通じて、教職員個々に、状況に応じた判断力や機敏な行動力等の対応能力を高めることが重要であり、危機等発生時に、まずは児童生徒等の安全を確保し、被害を最小限にとどめるための備えをしておくという観点を最も重視すべきであること。

(4)安全点検の実施及び安全教育の充実
過去の事故が繰り返されることの無いよう、定期・臨時・日常の安全点検の中で、緊急時に使用するAED 等の救命や避難等に必要な器具等が使用可能な状態にあるかの点検を含め、学校と学校の設置者が連携を図りながら実施していくこと。安全点検を実施する際は、国で作成した「学校における安全点検要領」等を参照すること。
さらに、各学校においては、学校安全計画に基づき、教科等における指導のみならず、教育活動全体を通じて、安全教育の充実を図ること。


2.事故発生に備えた事前の取組等(指針p11~13)

(1)緊急時対応に関する事前の体制整備
各学校は、児童生徒が意識を失って倒れるなどの緊急事案では、駆けつけた教職員の中で直ちに指揮命令者を決めて組織的に対応すること。そのための想定訓練を実施しておくとともに、誰もが取り組めるよう体制整備を図っておくこと。

(2)保護者や地域住民、関係機関等との連携・協働体制の整備
学校における安全に関する取組や事件・事故等が発生した場合の対応を、事前に保護者等と共有しておくこと。

(3)事故発生に備えた取組について
学校の設置者は、詳細調査委員会の構成員を事前にリストアップするなどの検討を進め、都道府県等担当課は、学校の設置者へ助言できる体制を整えておくこと。


3.事故発生後の対応の流れ(指針p14~22)

(1)事故発生直後の取組
事故直後は、まずは被害児童生徒等の応急手当を最優先で行うことに十分留意すること。その際、救急車を手配するための119 番は通報者を限定する必要がなく、第一発見者をはじめ誰でも即座に通報できるようにすること。また、通信指令員の指示を応援のメンバーと共有しながら複数の教職員等で対応することが必要であること。

(2)学校の設置者等への報告、支援要請
学校は、次のような事故が起こった場合には、学校の設置者に速やかに報告を行うとともに、状況に応じて、学校設置者等に、必要な人材の派遣や助言等の支援を要請すること。

1報告に当たっては、指針(改訂版)の「【参考様式4】事故報告(基本調査(国への一報含む))様式例」を適宜活用すること。

・全ての「学校の管理下(登下校中の事故も対象に含む)において発生した死亡事故」
・治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う場合等重篤な事故(重篤な事故には、治療に要する期間が30日以上でなくても意識不明(人工呼吸器を装着、ICUに入る等)の場合や、身体の欠損(歯を含む)・身体機能の喪失を伴う事故等を含む。)

(3)国への一報
死亡事故及び意識不明等など児童生徒等の命に関わる重大な事案が発生した場合は、都道府県・指定都市教育委員会、国立学校の設置者及び私立・株式会社立学校の都道府県等担当課は、速やかに国まで一報を行うこと。(報告に当たっては※1に同じ)
2本通知文末の連絡先を参照のこと。


4.調査の実施(基本調査・詳細調査)(指針p23~36)

(1)基本調査の実施(実施の判断:学校の設置者、実施:原則として学校)
学校の設置者は、学校からの報告を踏まえ、全ての「死亡事故」を対象に基本調査を実施すること。「治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う場合等重篤な事故」については、被害児童生徒等の保護者の意向も踏まえ、特別な事情が無い場合は実施することを前提に判断すること。
基本調査の実施に当たっては、学校の設置者は学校に対し、適切な対応を促す指導・助言を行うこと。また、市区町村教育委員会及び私立・株式会社立学校の学校の設置者は、基本調査の結果を確認のうえ、都道府県等担当課に報告すること。その際、基本調査において事故等の原因が明らかとなり、再発防止策を講じることが可能と判断した場合には、再発防止策の速やかな検討・実施を学校に指示すること。
都道府県・指定都市教育委員会、国立学校の設置者及び私立・株式会社立学校の都道府県等担当課は、基本調査の結果を年度ごとに取りまとめ、国からの求めに応じ報告すること。(具体的な報告方法等については別途お知らせする。
ただし、3(3)で国へ一報した事案(死亡事故等の児童生徒等の命に関わる重大な事案)に係る基本調査結果は、その結果がまとまった時点で速やかに国に報告すること。(報告に当たっては※1に同じ)

(2)詳細調査への移行の判断(実施の判断:学校の設置者)
原則、基本調査を行った全ての事案について詳細調査を行うことが望ましいが、少なくとも以下の場合には、詳細調査に移行すること。ただし、ア)・イ)・ウ)・オ)の場合でも、保護者が詳細調査を望まない意思が明確に確認される場合は、この限りではないこと。

ア)当該学校の教育活動の中に事故の要因があると考えられる場合
・事前の安全管理体制に十分でない点が認められる など
イ)事故発生直後の対応の中に適切ではない点が認められる場合
ウ)基本調査により、事故の要因が明らかとならず再発防止策が検討できない場合
エ)被害児童生徒等の保護者の要望がある場合
オ)その他必要な場合

学校の設置者は、基本調査の結果を都道府県等担当課に報告する際に、詳細調査への移行の有無及び移行しない場合の理由についても併せて報告すること。その際、都道府県等担当課は、詳細調査に移行しない理由について確認し、不明な点がある場合には、学校の設置者に対して確認し、必要に応じて助言を行うこと。なお、都道府県・指定都市教育委員会及び国立大学法人の設置者は、死亡事故及び意識不明など児童生徒等の命に関わる重大な事案の詳細調査への移行状況について、基本調査の結果とともに国に報告すること。

(3)詳細調査の実施(実施:学校の設置者(詳細調査委員会の立ち上げ及びその事務))
被害児童生徒等の保護者からの聴き取りを行う場合には、客観性を保つ意味から、原則複数名で聴き取りを行うこと。


5.再発防止策の策定・実施(指針p37~38)

学校又は学校の設置者は、詳細調査委員会の報告書の提言を受けて、被害児童生徒等の保護者の意見も聴取するなどして、具体的、実践的な再発防止策を策定し、マニュアル等にまとめ、その徹底が図られるよう努めること。
また、都道府県・指定都市教育委員会、国立学校の設置者及び私立・株式会社立学校の都道府県等担当課は、毎年の年度当初に、前年度の所管の学校管理下で発生した事故等の基本調査及び詳細調査から、事故原因・傾向、再発防止策等の事故等の状況についてとりまとめ、所管の学校に周知し再発防止に努めることや、国の求めに応じてその状況を報告するととともに、再発防止策が継続して取り組まれているかを確認把握し、再発防止策が継続して講じられるよう働きかけること。


6.被害児童生徒等の保護者への支援(指針p39~43)

学校の設置者等は、被害児童生徒等の保護者と学校の二者間ではコミュニケーションがうまく図れず、関係がこじれてしまうおそれがあると判断したときは、被害児童生徒等の保護者と学校、双方にコミュニケーションを取ることができ、中立の立場で現場対応を支援する「支援担当者」の設置を検討すること。


7.他の指針との関係について

以下に示す事案についてはそれぞれの実情に応じた既存の指針等が整備されていることから、一義的には以下の指針等に基づいた対応を行うこととし、それによらない部分については、本指針を参考とすること。

(1)幼稚園及び認定こども園における事故
〇教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(平成28年3月 内閣府・文部科学省・厚生労働省)
※子ども・子育て支援新制度における「施設型給付」を受けない幼稚園は本ガイドラインの対象には含まれないが、本ガイドラインを参考にして適切な対応が行われるようにすること。

(2)いじめの重大事態
〇いじめの重大事態の調査に関するガイドライン(平成29年3月 文部科学省)

(3)児童生徒等の自殺
〇通知「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂について
(平成26年7月1日付け26文科初第416号)
〇子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(平成26年7月 文部科学省)
※いじめが背景に疑われる場合の自殺については、「いじめ防止対策推進法」に規定する「重大事態」として、法律に基づいた対応を行うこと。

(4)学校給食における食物アレルギー事故
〇学校給食における食物アレルギー対応指針(平成27年3月 文部科学省)
 

(本件連絡先)
文部科学省総合教育政策局
男女共同参画共生社会学習・安全課
安全教育推進室 学校安全係
TEL 03-5253-4111(内線2966)

参考資料・別添

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課

安全教育推進室 学校安全係
 

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(総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課)