深海探査システム委員会(第4回)議事録

1.日時

令和6年2月22日(木曜日)9時00分~11時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 今後の深海探査システムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

松本主査、岩崎委員、奥村委員、河野委員、小島委員、谷委員、日野委員、廣川委員、巻委員、湯浅委員

文部科学省

山之内海洋地球課長、伊藤海洋地球課長補佐 ほか

5.議事録

【松本主査】 ただいまより、第12期科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋探査システム委員会の第4回会合を開催いたします。
 本日は御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、事務局より参加者定足数の確認及び配付資料の確認をお願いいたします。
【伊藤補佐】  事務局でございます。本日は10名全員の委員の皆様に御出席いただいておりますので、本委員会の運営規則第2条に定める定足数の過半数を満たしておりますことを御報告いたします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。今、議事次第を投映させていただいておりますけれども、資料の1と2を事前に委員の先生方にお送りしているところでございます。御不明な点、不備等ございましたら、事務局までお知らせください。
 以上となります。
【松本主査】  それでは、本日の議事1「今後の深海探査システムの在り方について」に入りたいと思います。
 本日は、中間取りまとめ案について議論を行います。初めに、事務局より本資料の位置づけと全体構成について説明をお願いいたします。
【事務局】  まず、資料1に基づきまして、今の中間まとめ案の位置づけを御説明させていただきます。
 昨年の8月に海洋開発分科会で本委員会が設置されまして、11月から2月にかけて第1回から第4回を開催し、皆様にヒアリングをさせていただいたところでございます。本日はヒアリングを踏まえまして、中間取りまとめという形で御審議いただきました後、3月後半にございます海洋開発分科会で中間取りまとめの報告と御審議をいただきます。そこでの御意見も踏まえて、来年度5月、6月にまた委員会を開催し、報告書を取りまとめ、夏頃に開催予定の海洋開発分科会に報告書案という形で御審議いただく予定です。本日は、中間取りまとめを御審議いただきます。
 続きまして、中間取りまとめ案の構成について、1ページ目の目次を御覧ください。最初に「はじめに」という導入がありました後、ローマ数字の1と2に分けて大きく章立てをしております。
 ローマ数字1では、我が国における深海探査システムの現状と課題ということで、1ポツで、深海探査システムの国内外の状況ということで、HOV・ROV・AUVの状況等について取りまとめています。2ポツで、各分野の研究開発動向と深海探査システムに求められる能力ということで、ヒアリングさせていただいた各分野のニーズを述べております。これらのローマ数字の1を踏まえまして、ローマ数字の2ということで、今後の深海探査システムの在り方について取りまとめるという章立てになってございます。
 事務局からは以上でございます。
【松本主査】  ありがとうございました。内容が多岐にわたりますので、議論は項目ごとに切って行いたいと考えています。
 具体的には、目次に沿いまして、まずは、「はじめに」と、「我が国における深海探査システムの現状と課題」のうち「1.深海探査システムの国内外の状況」、次に、「2.各分野の研究開発動向と深海探査システムに求められる能力について」、最後に、「今後の深海探査システムの在り方について」の3つに区切って議論をしていきます。
 まずは、「はじめに」及び「我が国における深海探査システムの現状と課題」のうち「1.深海探査システムの国内外の状況」について、事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  まず、「はじめに」でございますが、我が国は四方を海に囲まれており、EEZの面積は世界で第6位ということで、様々な面で海洋が国民の社会経済活動に深く関わっているという事実を述べさせていただいた後に、一昨年の8月にも海洋開発分科会において海洋調査の重要性が指摘されたところ、また、昨年の12月の総合海洋政策本部においても、総合的な海洋安全保障上も海洋に関する情報収集体制の強化は重要だとされているところでございます。これらの中でも深海探査は以下のような喫緊の課題を抱えておりまして、早急に取り組む必要があると考えております。
 以下のような喫緊の課題が4つございまして、1つ目が「深海大国日本における深海探査の重要性」ということで、EEZの約50%が水深4,000m以深である我が国の深海探査は、科学的知見の充実の基盤と総合的な海洋の安全保障上も極めて重要というところでございます。
 2つ目は「AUVやROVの大深度化・高性能化の後れ」ということで、海外では高性能化が著しく進展していて、いずれも6,000m級の製品が市販化されておりますけれども、我が国のAUVは4,000m級にとどまっておりますし、ROVも4,500m級まで後退しており、海外から大きく後れている状況でございます。
 3つ目は「日本で最深度まで潜航できるHOVの老朽化」ということで、「しんかい6500」は6,000m以深で調査ができる一方で、今、老朽化に見舞われているところでございます。
 4つ目は「人材の育成・確保」ということで、海洋分野におきましても、少子高齢化に伴う人口減少の影響に加え、イノベーションを創出できる人材の必要性も高まるなどの課題が顕著になっているところでございます。
 これらを踏まえ、HOV・ROV・AUVを中心とした深海探査システムの研究開発及び整備に早急に取り組む必要があるということで、課題と現状と今後の方針について取りまとめるとさせていただいております。
 1ポツですけれども、深海探査は科学的知見の充実の基盤であるとともに、総合的な海洋の安全保障上も極めて重要だということで、まずは深海探査の機器等についての現状について取りまとめさせていただいております。
 (1)HOVにつきましては、繰り返しですけれども、海外も6,000m級以上のHOVを保有しておりまして、日本でも「しんかい6500」がある一方で、構成機器・部品の生産中止とか機器メーカーのサポート停止が進み、技術が失われつつあるので、現状のままでは海外からさらに後れをとる恐れがあるところでございます。
 (2)ROVにつきましても、海外では6,000m級が市販されているところ、我が国では今、4,500m級というところになっておりまして、ROVによる探査能力において海外から後れをとっており、経済安全保障上も課題であると。さらには、大深度ROVを製造する民間企業がほとんど存在せず、また、ケーブルも国内メーカーは既に撤退しており、技術的なハードルが高いことに加え、運用コストも課題であることから、フルデプス対応のROVの実現に向けて新たな研究開発が必要であるところでございます。
 (3)AUVにつきましては、今、8,000m級のAUVを開発しているところですけれども、複数や多機種同時運用にはまだ課題があるところでございます。また、そのほか様々な特徴を持ったAUVの開発が進行中であり、世界に先駆けた研究開発を進める必要があると取りまとめさせていただいております。
 (4)につきましては、今までの単独の探査機というよりも、探査機の運用システムについてという形でまとめております。1点目は深海探査機の複数・多機種同時運用や長期運用ということで、米国ではROVとAUVといった複数種の深海探査機による24時間の連続監査を実施しており、これは調査航海の期間を有効活用するという観点で極めて効率性が高いところでございます。一方、我が国は必ずしも複数・多機種同時運用が想定された設計・体制となっておりませんので、時間的にもコスト的にも非効率という状況かと思います。また、複数のAUVを同時運用する技術につきましては、実際の調査航海で有効活用している事例はまだ見られないものの、国内外で研究開発が盛んということで、世界に先駆けた研究開発が必要と取りまとめております。また、海底ステーションを基地として、ROVやAUVを海中に長期展開するレジデント技術も、深海探査への活用に向けて研究が必要とまとめております。
 続きまして、2点目は着水揚収ということで、海外では様々なクレーンを必要としない技術とかについて進展しているところですが、今、例えばJAMSTECではAフレームクレーンを使用しており、多くの人員が必要ということで、24時間観測とか同時運用体制を構築する上で大きな障壁となっているほか、船員不足への対応の観点からも課題ということで取りまとめております。
 3点目は音響通信技術でございますけれども、例えば「しんかい6500」から母船「よこすか」への画像転送に使用されている水中音響通信は、従来に比べて約10倍以上の性能を達成しており、約2.5秒に1枚の頻度で画像送信可能というところでございます。また、そのほかにも、通信と測位を統合した装置の開発を用いまして、複数機のAUVの隊列制御にも成功しているところで、世界でも様々な研究がされておりますけれども、世界トップレベルの我が国の水中音響技術を生かした技術開発の推進が必要とさせていただいております。
 最後になりますが、4点目は深海探査システムを取り巻く諸課題ということで、海洋調査コミュニティーが縮小しており、海洋研究者の裾野を広げることが不可欠ということでまとめさせていただいております。
 枠内は、そのほかに中間取りまとめに足りない過不足なところがないかということで、例えばということで、海洋ロボティクス、経済安全保障の観点から日本が注力すべき技術等は何かということで提案させていただいております。事務局からは以上となります。
【松本主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 谷委員、どうぞお願いいたします。
【谷委員】  ありがとうございます。おおむね僕はいいかなと思っているんですけれども、たしか巻委員が以前、ROVの重要性として、万が一「しんかい6500」に何らかのトラブルがあったときに、日本で「しんかい6500」を救助する手段を維持すべきであろうという御意見を言ってくださったと思うのですが、僕もそれは非常に重要だなと思っていて、結局、今、4,500mまでしかROVは行けないので、万が一「しんかい6500」に何かあったときに、我々独自で救助することができないと。そういう意味でも、ROVを少なくとも6,500mぐらいまでの性能を維持しておくと。必要性のところにそういうことは触れておいたほうがいいのかなと思うんですけども。
【松本主査】  大切な御意見だと思います。ありがとうございます。
 河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。今の御説明、救助に当たってのROVの重要性はそのとおりですけれども、我が国に今、自力で救助する手段がないわけではなくて、救助の方式は定められていて、ちゃんとそれなりの救助方式はあります。だから、事故があったら、もう外国から人を連れてこないとできないということではありません。
【松本主査】  廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】  ありがとうございます。おおむねこれまでの委員会のコメントをまとめられた感じで、細かいところで気になるところを少し申し上げたいと思います。
 まず、「はじめに」のところですけれども、淡々と述べられている感がありまして、特に、例えば33行目の「深海探査の重要性」という項目がありますけれども、ここもなぜ重要なのかを、厚みを持たせてちゃんと述べたほうがいいのかなという感じがします。単に科学的知見の充実基盤、これは当然ですし、安全保障というのも重要ですが、なぜそれが深海探査の上で重要なのかというのは、きちんと何か最初のところで述べたほうがいいのかなと思います。
 それから、次のROVのコメントは今、谷委員からもございました、「しんかい6500」の救助手段としてROVは重要だと思います。ただ、ROVの中で、例えば93行目、ROVがフルデプスまで本当に必要なのかというのは疑問があります。後でも個別の議論はあるかと思いますが、世界的にも7,000mを超えるようなフルデプスのROVはないという中で、そこまで目指すのかというところ、そこは疑問に思います。取りあえずは「しんかい6500」の救助手段としての6,500m、この辺りを目指すのが当面の目標ではないかなと思います。
 私からは以上です。
【松本主査】  ありがとうございました。
 湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】  私もおおむね問題ないと思うんですが、細かいところを指摘したいと思います。
 例えば93行目のROVの件ですが、ここだけ運用コストも課題となっているのですけれども、この運用コストの課題をROVのところに書かれたのはなぜかなと。当然ほかのHOVにしろAUVにしろ、運用コストというのはある程度は課題になってくるんじゃないかなと思います。
 それと、128行目の着水揚収ですが、「海外の」とわざわざ書かれているんですけれども、私から紹介しました防衛省では、Aフレームクレーンとか、そういうイメージの着水揚収システムじゃない方式をしておりますので、あえて海外と書かなくてもいいのかなと。
 それと、135行目の「スイマーによる作業は必須」ということで、課題として船員不足だけ書いているんですけれども、これは安全面が一番大きいと思いますので、「安全面」というところは記載すべきじゃないかなと思います。以上です。
【松本主査】  小島委員、お願いいたします。
【小島委員】  非常によくまとめられていて、ありがとうございました。
気になったところとして、3ページ目のHOVに関して、6,000m級以上という表現をされているんですけれども、既に世界はフルデプスに入っていることは、少しここで強調されてもよいかなと思いました。
 あと、現状・課題のところで、経済安全保障ということが述べられているのに加えて、地震とか津波に関する原因究明による防災とか減災というのも強調されるとよいのではないかと思いました。よろしくお願いいたします。
【松本主査】  ありがとうございます。
 巻委員、お願いします。
【巻委員】  私もおおむねよくまとまっていると思うんですけれども、2点ほど少し気になったところがあります。
 冒頭の、安全保障上深海探査は重要という枠組みですけれども、先ほどの御指摘にも共通するんですけれども、それだけだとなかなかフルデプスにはいかない。というのは、日本海溝とかそういう超深海部が本当に安全保障上重要なのかというのは疑問がありますので、地震・津波とかサイエンス的なことの重要性を強調したほうがいいのかなと思いました。
 あとは、深海技術で重要なこととして、今回はプラットフォームメインのまとめと理解しているんですけれども、そこで載せるセンサーですね。深海のサンプリング装置とか、いろいろな現場分析のセンサー技術というのも結構開発が進んでいる状況と認識していますので、その辺りも推進すべきということを言っていただけるといいかなと思いました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。
 湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】  もう1点。最後のほうの、「そのほか踏まえておくべき現状・課題等はあるか」というところです。現状、洋上風力等がEEZでかなり設置されると思うんですけれども、大深度領域に設置ということにはならないと思います。しかし、経済安全保障上という観点から見ますと、ある程度浅い領域で例えばAUVとかROVを日本の産業として発展させて、メーカーの裾野を広げて、それを土台として大深度に持っていくんだというところを、現状の課題としてできれば書いておいたほうがいいのかなと思います。以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。湯浅委員に今の御発言で確認ですけれども、浅いところというのは、深海探査というところだけじゃなくて、多分、過去の委員会の中で、例えば洋上風力の点検とか、漁礁を見に行くとか、そういったような、もうちょっと浅いエリアでの使い方でも広めていきましょうといった、その辺の話とかぶるような御意見ということでよろしかったでしょうか。
【湯浅委員】  大深度のAUVにしろROVにしろ、製造するには、土台となる装置とか機器の国産のメーカーがなければ、なかなか経済安全保障というのは成り立たないと思うんですよね。急に大深度を造れといってもなかなか台数は出ないわけですから、どうしても浅い海のほうが、台数が出るだろうと思いますので、そこでまず、経済安全保障上、国産のメーカーさんの土台を作っておいて、その土台の下に大深度に向けてさらに進んでいくことをしないと、なかなかAUVとかROVといった大深度の機器は国産という道にはいかないんじゃないかなと思いますので、そういうところも一言書いているほうがいいんじゃないかなと思った次第です。
【松本主査】  ありがとうございます。国産で、もうちょっと数が出るような、マーケットがあるような場所で、安全保障にも絡んでいるというところでの展開も必要だというコメントを入れておいたほうがよろしいという理解でよろしいでしょうか。
【湯浅委員】  そうですね。大深度をするには、浅深度の土台が要りますよというところですね。
【松本主査】  分かりました。ありがとうございます。
 岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】  私もよくまとまっていると思いました。皆さんからも出ている、ROVは6Kのレスキューとしても必要ということも書かれておいたほうがいいのではないかなと思っております。
 あと、思いましたのは、これまでの議論の中で、こういうHOV、ROV、AUV等々を動かすものとして、母船を充実させなければいけないという御意見があったと思います。まず船がないとこれらの深海探査機器も動かせないというところから、それも一つ項目として書いておくべきなのではないかなと感じました。
【松本主査】  分かりました。母船の充実というところですね。
【岩崎委員】  そのとおりです。
【松本主査】  ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
(発言者なし)
 全体討議の時間をまた最後に取っておりますので、こちらの内容でお話ししたいことがあれば、またそちらでも受け付けますので、お願いいたします。
 では、次のところに移りたいと思います。
 続きまして、「2.各分野の研究開発動向と深海探査システムに求められる能力について」、事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  EEZの大半を深海域が占める我が国は様々な分野の研究開発を推進していくことが重要ということで、大きく4つに分けて書かせていただいております。
 まず、1つ目ですけれども、海底地質学というところで、海底火山研究とかプレートテクトニクスでは、研究開発のために岩石の資料の採取が必要ということで、特にマリアナ海溝、最深部1万mですけれども、それは岩石学的性質の全てを示すということで、非常に重要なサンプルがあるんですけれども、先ほど述べました現状のとおり、今、6,500m以深である本海域の岩石の採取は難しいということになっております。また、伊豆・小笠原海溝も6,500m以深でございますが、ここの岩石も非常に面白いという特徴があるものの、現状、この水深での調査・試料採取ができるROVを我が国では所有していないということで、以上によりまして、海底地質学では、有人無人問わず、少なくとも水深7,000mで海底を観察して資料を採取する手段が必要ということで、露頭観察の能力とかマニピュレーション能力、大容量サンプリング能力が重要という形でまとめております。そのほか必要なニーズ等はあるかということで、事務局としては、熱水噴出孔の環境温度変化による機体の安全性等があるかと考えておりますので、皆様から御意見いただければと考えております。
 続きまして、2つ目、地球生命科学でございますけれども、生命誕生とか地球外生命圏の理解に向けまして、海溝において蛇紋岩化に着目した研究が世界中で盛んということで、ここは水深2,000mから6,500mのコアリングが必要という御発表をいただきまして、水深6,500mの調査能力の維持は必要不可欠とされていると思います。また、生態系維持の観点から海洋保護区の指定が進んでいるということで、最近では超深海を含めた海洋生態系に関する研究が進展おりまして、HOVによる人の目での観察とか、ROV・HOVを使用したサンプリングや、現場実験が必要というところでまとめさせていただいております。以上のことから、多彩な試料採取とか現場の観測能力が可能なROV・HOVが必要ということで、特に深海域では化学組成が変わり得ることもございまして、繊細なマニュピレーター能力とか、HOVの視認性・機動性・安定性・作業性が不可欠という形でまとめさせていただいております。また、AIによる画像認識の期待もされるかと思います。そのほか、生物の行動・生態の調査研究も必要な映像情報とか、水深これぐらいまでの観測が必要みたいなところの御意見を頂戴できればと考えております。
 続きまして、海底鉱物資源でございます。海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアースというところで、様々な鉱物資源が深海底に存在しているところです。この分布を把握するためにはAUVを活用したり、また、その試料採取のところにはROV・HOVを使用しているということで、そのほかにもAUVでマンガンクラストの厚み計測等々、様々な研究開発がされておりまして、今後はより深海域の分布や形成過程等を比較することが必要という御発表をいただいているところでございます。以上のことから、AUV・ROV・HOVの各種の探査機をバランスよくそろえて活用することが重要であり、これらを同時に運用できるシステムが必要。また、HOVと同等の高い視認性を持つ高度可視化システムの開発が必要と取りまとめさせていただいております。そのほか、必要なマニュピレーターの強度とか吊り上げ能力等についても、もしあれば御意見等賜ればと思います。
 最後に地震・防災ということで、先ほども御意見ございましたけれども、海溝近傍で発生する特異な津波地震には未解明な点が多いということで、フルデプスにおける調査研究が重要とされているところでございます。特に東日本大震災では、日本海溝で水深8,000m以深ということで、海外のHOVを用いて様子を撮影等したことも御発表いただいております。そういったことに加えまして、精度の高い地震発生予測には、観測精度を十分に高めた地殻変動の観測が必要ということで、ROVによる海底に光ファイバー歪計の敷設とか、地殻変動観測装置の設置なども必要ということを御議論いただいたと思っております。また、現状では北海道とか千島列島の沖でも観測が必要ということも御発表いただいたところを取りまとめております。以上より、水深6,500m以深で海溝底の岩石や堆積物を採取可能な探査機の開発とか、超高精度な慣性航法能力を備えた探査機の建設が必要ということとか、光ファイバーとかの敷設のための重作業のROVとか探査機が必要ということで取りまとめさせていただいております。最近は海底火山にも注目が集まっておりますので、そこに向けた無人探査機の必要性等ございましたら、そちらについても御意見賜りたいと考えております。
 事務局からは以上となります。
【松本主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 小島委員、お願いします。
【小島委員】  生物系のところのニーズに関して、一つは、現場でピンポイントで何か長期的なモニタリングをしたいとか、映像を長期的に記録したいとか、そういう物を設置することに特にHOVが非常に有用ではないかと。回収は多分船だけでできると思いますけれども、場所を決めて設置するのは、HOVでないとできないというのが一つ。あと、それ以外に、AUVをこういうところで展開するときのホーマーの様なものの設置にも使えるんじゃないかと思っております。
 それからもう一つ、ニーズとして最近言われているものとして、海底資源開発をする場合に、環境影響評価をきちんとしないとそれができないというのが、世界的に今、そういう状況になっているので、そのためにもこういうシステムの拡充が必要であるという論点もあってもいいかと思いました。
【松本主査】  ありがとうございます。
 谷委員、お願いいたします。
【谷委員】  この海底地質学のところですけれども、最初の165行目と168行目で、現状、水深6,500m以深からの岩石は採取不可となっているんですが、実際は今、ドレッジとかで採ることはできるんですけれども、海底を観察しながら物を採るというのは、僕たちにとっては得られる情報が全然違うので、海底を観察しながら採取をする、あるいは観測機器を設置して調査を行うことができないところが、このROVやHOVを使った調査の重要なところなので、そこの語尾を書き直していただけたらなと思います。
 あと、最初のところで、これまでは結構地質学の調査航海で、生物学の調査航海や地球物理学の調査航海みたいに、結構別々に独立した調査航海が多かったと思うんですけれども、これから調査を効率的に行う上で、分野横断型の研究を推進していかなきゃいけないと思っています。それは新しい発見にもつながると思うんですけれども、そういう意味で、分野横断型の調査研究をする上で、多分重要なのはROVだと思うんですけれども、そういう新しいサイエンスをつくり出していくために分野横断型の調査が必要で、それはROVでいろいろな研究者の人たちが同時に乗る。あと前回からの議論だったと思うんですけれども、高速の衛星回線で陸上の研究所をつないでリアルタイムで映像を共有するみたいなところをこれからやっていきたいみたいなところがあるといいのかなと思いました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。
 日野委員、お願いいたします。
【日野委員】  地震・防災のところで幾つかコメントさせてください。
 私のプレゼンがよくなかったと思うんですけれども、いろいろ表現がうまくないなと思うところがあるんですが、一番気になったのは、最後の丸のところ、光ファイバーの敷設とか観測網の構築をROVがするというのは、さすがにこれは物理的に無理があると思う。だから、敷設されたROVにセンサーを取り付けるとか、あるいはセンサーを現場で調整するとか、そういう能力、システム全体の構築の中でいえば比較的軽作業ですけれども、それでもなお、ROVというものから見ると重作業になるということなので、このままでは、光ファイバーを100km展張するのにROVというのは、それは幾ら何でも無理だろうと思われると思うので、そこは表現を改める必要があるかなと思いました。
 それから、海底地震計を設置するためのところも、探査機をわざわざ使わなきゃいけないのは、ただ設置するのではなくて、場所を選んでピンポイント設置をすることが必要ということなので、ただ設置するだけというのだと、何で探査機が要るのというところが伝わらないかなと思ったので、そこの設置場所の高精度化が重要というところが伝わるような表現にさせていただく必要があるかなと思いました。
 また、その下の、海底火山の調査に向けてというところですけれども、この辺は熱水系のところと問題は多分共有していると思います。火山活動中の高温の状況で作業しなければいけないということがありますので、そういうところに行けるかどうかで、行けるとしたらどのぐらいなのか、どれぐらい滞在できるのか、その辺の技術は私はあまりよく分かっていませんけれども、トータルとして、熱水系の中で現状どれぐらいで、更に前へ進むとしたらどういうものがあるのかというところと情報共有させていただきながら、もし何かピンポイントした課題を提示するとしたら、そういうことが必要かなと思うんです。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございました。
 奥村委員、お願いいたします。
【奥村委員】  高知大の奥村です。地球生命科学分野で少し補足させていただければと思います。
 私のプレゼンで、時間も限られていたことから、自分が関係する研究課題に関して御紹介させていただいたんですけれども、最近、日本の深海探査の研究で、日本初の大発見として、深海の堆積物から真核生物に非常に近い古細菌の系統が見つかったということで、真核生物の進化に欠かせない新たな発見が深海の堆積物から見つかったという発見があったりとか、生命とか環境に関わる分野で、海洋プラスチック問題で、日本沖の5,000mぐらいの水深でプラスチックゴミだまりがあるみたいな報告もあったりするので、そういったほかの学術課題からも、深海探査というのは非常に重要だという成果が最近上がってきているので、そういった点も加えていただけるとうれしいなと思います。
 あとは、河野委員の動向の資料で出てきたのではないかなと思うんですけれども、諸外国のHOVの形態で、全球型のガラス球になっているHOVもあるみたいな御紹介があったと思うんですけれども、それに関連して、360度視認できるようなカメラの開発があると、地球生命分野でも、海底の生態系を調べるときに、動くような動物、そういったものも行動を追跡できるような形になるのではないかなと思いますので、そうした面のカメラシステムなどの開発も求められているのかなと思います。
 以上2点、追加いただければと思います。以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。
 日野委員、お願いいたします。
【日野委員】  もう一つ、先ほど谷委員が分野横断型みたいな話をされていたんですけれども、その中で、私もそんなに詳しいわけではないんですけれども、海溝は周りに比べてローカルに一番水深が低いので、いろいろなものが集まっている。例えば、先ほど奥村委員がプラスチックの話もされていましたけれども、そういうものも集まってくると思うんです。そういう意味では、海溝底という特殊な環境、生物でも非常に特殊な生態系があったりするようですけれども、海溝底にアプローチするところそのものは、もうフルデプスじゃないと特に日本の周りは駄目ですので、海溝底にある科学的課題みたいなのを、もし可能であれば、たくさんもしあるのであれば、それを別章立てにして出していけると、フルデプスのところがどういうサイエンスのフロンティアを開くかというところがクリアになるかなと思っていました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。日野委員に確認です。今、章としてはないけれども、特に深い海溝等で科学的にこういうことをしたほうがいいとかいう内容を、別章立てで1個クローズアップしたような形でまとめたらどうかという御意見ということでしょうか。
【日野委員】  そうですね。例示的に海溝底という言い方をしましたけれども、今は何となく分野縦割りの章立てになっちゃっているので。
【松本主査】  分野横断型というキーワードのところにひっかけてという、そういう意味合いですね。
【日野委員】  そうですね。ですから、分野横断でできるキーワードがもし上がれば、そういうものを羅列していただいてもいいかなと思います。
【松本主査】  ありがとうございます。
 岩崎委員、どうぞ。
【岩崎委員】  201、202行目のところに、生態研究に必要な映像情報というのが括弧の中で書かれています。先ほどの奥村委員の360度のカメラとも関係するのですが、映像の高精細化、もしくは、深海のような暗いところでも闇が潰れずに映るHDR(ハイダイナミックレンジ)の技術が今、4K・8Kで発達しています。深海の映像表現といいますか、映像情報を撮る技術が、VR含めてこれからどんどん発達しています。分野横断的な章立てというお話がありましたけれども、映像の高精細化、それは照明も含めてということですけれども、入れていただけるといいかなと感じました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。
 廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】  ありがとうございます。よくまとめられていると思いますが、幾つかコメントさせていただきます。
 195行目のところですけれども、特に深海底では数cmのずれで地質の化学組成が変わり得るとか、何かそういう表現がありますけれども、これは深海底に限らず、陸上でも浅海域でも同じだと思います。場所によって、地質化学組成が変わり得る場所もあるし、あまり変わらない場所もありますので、例えば深海底の海洋底ではそんなに化学組成というのは大きくは変わっていかないので、数cmのずれで変わるというのは、深海の特性を表していないような気がします。
 それから、海底鉱物資源のところですけれども、214行目の辺りですけれども、鉱物資源には、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアースとありますけれども、熱水鉱床とコバルトリッチクラストは大体3,000mより浅いところにありますし、それより深いところではマンガン団塊、レアアースですけれども、それぞれを比較する意味が全くなくて、形成プロセスも違うと思いますので、ここで深海底の分布や形成過程を比較する意味ってよく分からないなと思います。むしろ、3,000mより深いところの鉱物資源の分布や形成過程をより解明することが必要だとか、何かそういう表現のほうがいいと思います。
 それから、218行目ですけれども、AUV・ROV・HOV各種をバランスよくそろえて活用する、これは別に鉱物資源のところに限らないと思います。AUVとROVとHOV、これらを同時に運用というのはなかなか実際のところは難しいかなというところもあります。バランスよくそろえて活用するというのは普遍的なところでもあるので、共通事項のところに述べるほうがいいのかなと思いました。以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。修文の部分と、そして最後の御指摘は、ここだけに特化した話では、分野横断的みたいな話のところでもいいんじゃないかという、そういう御意見ということですね。
【廣川委員】  そうですね。これは逆に言うと当たり前、システムの運用とか各種の同時運用とか、こういったことも述べられておりますので、これは鉱物資源に限らず、地質、それから生命科学、地震防災でも同じことが言えるんじゃないかと思います。それ以外の分野でも言えるかと思います。
【松本主査】  ありがとうございます。
 小島委員、お願いします。
【小島委員】  今の廣川委員のお話で、最初の数cmというところですけれども、補足させていただきますと、深海というのは非常に実は生物多様性が高いことが知られていて、それを説明する仮説の一つとして、一見全然同じような環境が続いているように見えるけれども、微視的に見ると、生物が作るようないろいろな構造物があって、そこにしかいない種がたくさんいるために多様性が高くなっているという、そういう説があって、それを検証するためにはピンポイントでサンプリングする技術が必要だろうというので、加えていただきました。
 あと、一つ意見ですけれども、研究の必要性がここで書かれているわけですけれども、それに加えて、教育とかアウトリーチという観点もどこかに入れたほうがいいのではないかと思いました。
 以上です。
【松本主査】  アウトリーチとかの話は最後のローマ数字2の項目ですか。この資料の最後のところに人材育成とかアウトリーチの関係が出てくるんですけれども、これとは別にということでしょうか。それとも、後から出てくるので、そこでまた御意見をいただくということで。
【小島委員】  失礼しました。おっしゃるとおりですので、後でお願いします。
【事務局】  松本主査、事務局でございます。今、小島委員から御意見いただいたアウトリーチのところですが、委員の御意見を踏まえて考えたいと思うんですけれども、アウトリーチの必要性みたいなのは、147行目からの、ローマ数字の1の(4)そのほか深海探査システムを取り巻く諸課題のところに少し教育とか裾野の拡大についてを入れさせていただいておりまして、どこの位置がいいのか、松本主査の御意見も伺いたいと思います。この分野横断のところにもう一度書いてもいいですし、ここに集約するという形でもいいかなと思っています。課題としてはローマ数字1の(4)のところに書いていて、今、松本主査がおっしゃっていただいたとおり、今後の取組のところは一番最後のページに書いているという構造にはなっております。もし松本主査のほうで、もっとここに書いたほうがいいとか、そういう御意見あれば、ぜひ御議論いただきたいと思います。すみません、勝手に割って入って。以上でございます。
【松本主査】  補足ありがとうございました。
 小島委員、もし御助言いただけるようでしたらお願いいたします。
【小島委員】  基本的に研究者養成とか技術者の養成という観点が強いので、それに加えて、岩崎委員の専門のところだと思いますけれども、そういうような観点の記述もあって、それをやるためにいろいろなカメラの開発が必要とか、そういう話にもなろうかと思うので、その辺も何か指摘していただいてもいいかなと思いました。
【松本主査】  ここに入っていても確かに不自然ではないですね。ありがとうございます。御意見として承ります。
 では次に、湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】  細かな話ですけれども、242行目から、「海中測器からのデータ転送を中継するための長距離通信機能」というのがあるんですが、これは上では「光ファイバーの敷設」として記載しているわけですから、そのデータは全部陸上に上がっていくと思うので、これはどういうことを意図されているのかなというのが分かりませんでした。「海中測器からのデータ転送を中継するための長距離通信機能」となっているんですが、データ転送を中継するために、わざわざ例えばROVとかAUVを使うことは考えにくいと思うので、これは何を意図されているのかなと思いました。
【松本主査】  事務局で御説明いただくことは可能ですか。
【事務局】  日野委員からも補足をいただければと思うんですけれども、日野委員からの御説明資料等とか御発表から引いてきたというところもございまして、海中に様々なケーブルにつないでいない測器等もございますので、そういったところからのデータを、準リアルタイムといいますか、通信して取っていくところを私どもはイメージしておりましたけれども、日野委員、いかがでしょうか。
【日野委員】  そのとおりです。全てのセンサーシステムがケーブルにつながるわけではなくて、機動的な観測をやったときに、機動的観測ではあるけれども準リアルタイムでデータが取りたいというニーズは確実にあります。例えば大きい地震があった直後とか、そういうことですね。
 ただ、ここで長距離通信が要るかというところは、そこまでは私はあまり踏み込んだ話はしていなかったんですが、観測装置のすぐそばまで行ってあげれば、多分高速データ送信はできるので、そこでデータを一気にダウンロードして、持ってきて帰ってもらう。そういうような用途で探査機を使えないだろうかという、そういう趣旨で多分私は話したつもりだったんです。これも正しく伝わってなかったかもしれません。すみません。
【湯浅委員】  了解しました。例えばAUVでセンサーまで行って、センサーからAUVにデータを転送させて、持って上がってくるということですね。
【日野委員】  そうですね。
【湯浅委員】  だから長距離通信といいますと、何か海底から船上に直接通信にて情報を上げることではないかなと思ってしまいますので、疑問に思った次第です。
【松本主査】  なるほど。長距離通信機能という表現が誤解を生むようなので、ここは文言の修正ということでよろしいでしょうか。
【湯浅委員】  それで結構です。
【松本主査】  分かりました。
 それでは、巻委員、お願いいたします。
【巻委員】  現状のニーズとして、海底の画像観測とか細かいサンプリングが中心に述べられているんですけれども、例えばAUVで現状よくやられている調査は、海底の近くで例えばマルチビームソナーによる海底の高精度な試験調査か、サイドスキャンソナーによる広域の地質とかのサーベイ、それからサブボトムプロファイラーによる海底下の地質構造調査というところだと思うんです。なんで、そういったニーズも触れていただくといいのかなと思います。今、多分、海底測量とかマッピングという言葉はあるんですけれども、もう少し具体的に触れていただくといいかなと。
 というのは、それがAUVを使うメリットの一つだと思っていますので、船からのマルチビームだとどうしても分解能が粗くなってしまうところを、深海まで行くと、深海なのに高精細なマッピングができたりするので、その辺は多分地質とか、あとは海底鉱物資源調査などに非常に有効なのではないかと思います。
【松本主査】  確かにおっしゃるとおりだと思います。現状、209行目の「AUVでマッピングを実施」とか、こういった表現ですね。
【巻委員】  はい。
【松本主査】  これをもうちょっと具体的に、AUVでマルチビームとか、サイドスキャンじゃなくて、マルチビームとサイドスキャンとサブボトムプロファイラーといった具体的なセンシングの機械の名前を入れて、高精細なマッピングができるようになっているという、そこをもうちょっと強く前面に押し出すということですね。
【巻委員】  はい。
【松本主査】  ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
(発言者なし)
【松本主査】  大体出尽くしたようですかね。また最後に全体の質疑の時間を取っていますので、また何か思い出したり、思いついたり、そういうことがございましたら、最後のところで御意見等いただければと思います。
 では最後に、「今後の深海探査システムの在り方について」、事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  まず今後の方向性といたしまして、深海大国である我が国では、6,000m以深の大深度海域において、「試料採取」「観察」「測定」が可能な深海探査機は今後も必要不可欠とした上で、一方、大きく分けて、以下2つの課題を抱えていることから、これに対応した深海探査のシステム開発を進めるべきとしております。
 1つ目ですけれども、深海における試料採取能力の維持・強化ということで、繰り返しになりますが、最初のローマ数字の1ポツで述べた課題を端的にまとめております。海底地形調査を行う大深度AUVは開発中ですけれども、同等の深度での試料採取等ができなければ、各分野において研究開発に必要なデータを十分収集できないので、現状は、そうは言っても、「しんかい6500」と同等の能力を持つHOVの新造は極めて困難であること。ROVは、海外製を含め、今、市販品は6,000m級までしか存在しないので、大深度対応のROVは自国で新たに開発する必要があること。
 また、ROVですけれども、大深度対応のケーブルは技術面・運用コスト面で課題があることから、今後は太いケーブルに依存した新たなシステムが必要であり、これを実現するための技術開発が必須ということと、試料採取において、実際に現場に行って、海底の様子とかそういったものを観察しながらの大容量サンプリングが可能な「しんかい6500」の視認性とか安定性は大きな強みですので、無人探査機であっても同様の機能が必要ということでございます。こちらを踏まえまして、以下の取組を行います。
まず、6,500m以深での簡便な試料採取機能を搭載したケーブルに依存しない無人探査機システムということで、こちらの開発に必要と考えられる要素技術の例として、太いケーブルに依存しない形で高速・高精度な通信・測位を可能とする音響通信技術とか、細径ケーブル、また、ケーブルレス化による動作制御のタイムラグなどに対応しつつ、自律型で試料採取を可能とするようなAIを活用した自律航行とか、あと試料かどうかということを判別する画像認識機能みたいなものが、要素技術として考えられるかということで挙げさせていただいております。
 まず、簡便な試料採取の機能を搭載したものを開発した上で、これを発展させる形で、今度は大容量サンプリングとか岩石試料の採取及び重作業が可能な強さを持つ試料採取システムと。こちらについては、高い視認性に基づく機動的な調査が可能な、例えばVRみたいなものを活用した高度可視化システムの技術開発も一緒に行いまして、これらの機能を兼ね備えた新システムの運用を開発するということで、大容量サンプリング・岩石等の鉱物採取・重作業を可能とする電力を供給できる例えば大きなバッテリーとか、強度がきちんとあるマニュピレーター、サンプリングを効率化するためのサンプルエレベーター、あとは先ほども御議論ありましたけれども、高度化システムのための全方位のカメラとか3D仮想表示技術みたいなものを、要素技術として挙げさせていただいているところでございます。
 一方、今、申し上げました2つのものは、開発に時間を要することを踏まえまして、「しんかい6500」を耐圧殻の設計限界である2040年代まで最大限活用するために、このために必要な老朽化対策とか機能強化を早急かつ着実に実施するということで、全方位カメラとかVRみたいなものを、追加でつけられる要素技術の例として挙げさせていただいております。
 2つ目の課題といたしまして、深海調査の効率性の向上というところでございます。先ほど御議論ありましたので、表現等は修正が必要かもしれませんけれども、基本的には24時間観測とか同時運用の体制がなかなかできていないということで、汎用性の高い着水揚収システムみたいなものが必要であることとか、あとは船員不足への対応とか運行コスト削減の運用面の課題に対応するために、汎用性の高い着水揚収システムを搭載した母船とか、船上あるいは陸上からの遠隔操作等の技術を取り入れることで省人化・効率化を進めることが重要と。こちらの課題に対応するために以下の取組を行うとした上で、先ほど申し上げましたケーブルレスの無人探査技術の開発・運用によって省人化・効率化を進めることも、こちらの課題に寄与しますし、それとともに、汎用性の高い着水揚収システムとか、それを備えた母船について、海外の事例を調査し検討を行うということで、またまた24時間、観測や複数・他機種同時運用に向けまして、探査機間の協調制御や長時間運用、広域調査等に必要な技術開発を進めるということで、要素技術の例といたしまして、新しい着水揚収システムとか、あとは協調制御のためのAIや音響通信を活用した自律制御・マルチビークル技術の高度化、長時間運用のためのレジデント技術、慣性航法能力などを挙げさせていただいております。
 また、船上あるいは陸上からの遠隔操作に必要な技術開発を行って、新システムの運用を開始するということで、高速無線通信が必要ということで、例として挙げさせていただいております。
 上記と並行いたしまして、「しんかい6500」も可能な限り活用して、AUVと一緒に例えば調査を行うことで、「しんかい6500」の調査をピンポイントにできるように効率化することも目指すということで掲げさせていただいております。こちらに必要な技術の例としては、AUVの海底地形図の高精度化・高解像度化、3D化とか、着水揚収システムを例として挙げさせていただいております。
 こちらの技術開発を進めるに当たり、AIを用いた自律・協調制御や、VRを用いた可視化技術、通信技術については、海洋分野だけではなくて、他分野で先行している技術を積極的に取り入れることも重要ということと、海外の事例も積極的に調査した上で、最適なシステムを設計することが必要としております。
 そのほか、我が国が強みを持つ音響通信技術とか、目的特化型の多様なAUVの開発が進んでおりますので、こういった最先端の技術を生かした探査機や要素技術の研究開発を世界に先駆けて行う必要があるとさせていただいているところでございます。
 そのほか留意すべき点とか求められる能力等ございましたら、ぜひ御意見を賜りたいと考えております。
 次に、2ポツの深海探査システムを取り巻く諸課題への対応というところで、人材の育成・確保とか国民の理解増進が課題という形で書かせていただいております。高度なインフラの整備というものは、若手人材育成はもちろんですけれども、我が国が国際共同研究においてリーダーシップを発揮することにもつながるというところで、海洋科学技術分野の人材育成及び裾野拡大の観点からも、深海探査システムの維持・発展は重要というところと、「しんかい6500」が象徴的な存在であることもございますので、探査機が実際に行っている作業を公開しながら、市民目線で分かりやすい成果の発信重要としているところでございます。
 そのほか、人材育成に必要と考えられる取組とかアウトリーチ活動の留意すべき点などございましたら、こちらも御意見賜りたいと考えているところでございます。
 事務局からの説明は以上となります。
【松本主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】  ありがとうございます。幾つか気になるところがありまして、まず、最初のところ、「深海大国である我が国では、6,000m以深の大深度」というところですけれども、「はじめに」のところでは、深海大国は水深4,000m以深ということで、4,000mより深いところを深海と言っているんですけれども、ここでは今度は6,000mになっているので、何でここと違うのかなというのが一つ。深海というのは、6,000mを深海としてここを議論するのか、4,000mより深いところを議論するのか、そこは前提条件としてちゃんと考えなきゃいけないと思った次第です。
 それから、要素技術の件、いろいろたくさん羅列されておりますけれども、もちろんこの中には、非常にハードルが高いもの、あるいは比較的短期間で用意できるものが混在しているように思いますので、その辺の仕分けと、あと優先順位とか、そういうところも考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思いました。
以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。最初の御意見に関しては、おっしゃるとおり、水深が4,000mより深いところなのか、6,000mより深いところなのかをきちんと決めないと議論がふらついてしまうので、ここについては事務局の御意見を伺ってもよろしいですか。
【事務局】  事務局でございます。おっしゃるとおりでございまして、表記が揺れてしまって大変申し訳なかったのですけれども、「はじめに」のところは、EEZの約50%がということで、EEZの大半が水深4,000m以深ですということを述べさせていただいておりました。こちらの後ろのほうでは、今、ROVが4,500m級までということもございまして、だけれどももっと深いところも調査が重要という気持ちもありまして、6,000m以深とさせていただいたんですけれども、大半を占めるのは4,000m以深というのがございますので、4,000m以深にさせていただくのでもよろしいかと思いますし、別に6,000m以深だけの話を今まで委員の先生方にも御議論いただいているわけでもないかなと思います。御意見賜れればと思いますが、いかがでしょうか。
【松本主査】  廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】  私もここは、これまで4,000m以深を深海と認識してやってきたので、そのほうがいいかなと。ただ、区切りとして、6,000mというのは、大海の海洋底が6,000mで、それより深いところ海溝とかトラフ、深いところはそれより深いところという一つの区切りでもあるので、ここは6,000と6,000より深いところ、フルデプスを目指すところとは、技術レベルとか要素技術も大分違ってくるかなと思います。その辺の区分けも場合によっては必要かなと思っています。
【松本主査】  廣川委員の御指摘のとおりで、水深が混在していて、誤解を招くような表記は避けたほうがよくて、場合によっては、そういった迷わないような説明の仕方の文章を追記するという方法もあるのかなと思いました。ありがとうございます。
 谷委員、お願いいたします。
【谷委員】  今廣川委員の御意見に関してですけれども、僕もこの4,000m、6,000mという切り分けは混乱を招くかなと思っています。多分、僕個人的には、今、「しんかい6500」が6,500mまで潜航可能なので、そこよりも浅いところ・深いところで切り分けるのがいいのかなと個人的に思っています。
 例えばROVで言うと、先ほどもありましたけれども、科学的な重要性とか「しんかい6500」の救難とかという意味においては、例えばROVで言うと6,500まで行きたいと。そこから先、フルデプスまでは、本当にじゃあROVが必要なのかどうかというところを、多分、これからできればここに盛り込めればいいのかなと思うんですけれども、そういう意味で言うと、6,500m、数字を丸めて7,000mにしたほうがいいのかなと個人的には思います。7,000mよりも浅いところのインフラをどうするのかで、そこから深いところ、あるいはフルデプスまではどういう科学的な重要性があって、そこに対してどのようなインフラを使ってこれから調査・研究していけばいいのかなというところで分けるのがいいかなと思いました。
 個人的な意見ですけれども、以上です。
【松本主査】  今の御意見、確かに非常に重要で、先ほどの廣川委員のお話の中にもありましたけれども、水深だけの話じゃなくて、技術的にちょうど6,000mのところまで、センサー類とかビークル類の技術というのは、6,000mまでは、ある程度充実しているけれども、そこから先ってなかなかどこでもすぐ手に入るわけじゃない、なかなか追いつくのにも一山二山ありそうだというような状況ですので、そこのところ、ちょうど技術レベルも分かれるところなので、そこは境目だろうなと受け止めました。
 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
 巻委員、お願いいたします。
【巻委員】  まず、6,000mというところですけれども、私も同意見でして、市販の機械とかが6,000mまでというのが多いので、そこを超えていくと、かなり多くのものを独自開発しないといけなくなってくるので、なかなかハードルは高くなるだろうなということはあります。一方で、他国との差別化とか、日本でもJAMSTECを中心に6,000以深の技術を開発してきているので、そこをより発展させていくことで、世界的にも優位な技術ができるのではないかという期待もあります。
 あとは細かいですけれども、254行目に「測定」という言葉があるんですけれども、私個人的な感覚としては、測定って何かすごく狭い概念なので、私としては「計測」という言葉に置き換えていただいたほうが、もう少し広い意味になるというか、ここではいいのかなと思います。
【松本主査】  確認ですけれども、試料採取、観測、測定の、最後の測定のところですね。
【巻委員】  はい。
【松本主査】  同じです。感覚的に「測定」って、何か実験室でもうちょっと小ぢんまりするイメージが私もします。「計測」のほうがよろしいということですね。
【巻委員】  そう思います。
【松本主査】  ありがとうございます。
河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。今後のシステムの在り方についての全体を読むと、太いケーブルを用いたROV、それから有人潜水船、この2つの機能を併せ持ったような、無索あるいは細いケーブルの新たなシステムを今後つくっていくんだという方向性が強く打ち出されていると思います。そのこと自体に異存は全くないんですけれども、これがすごく短い期間でできるとは到底思えないんです。ここには、その間、我々がどうするのか、どうすべきか、ということが一切書いていなくて、具体的には「しんかい6500」の寿命は尽きようとしている、あるいは、今、少なくともJAMSTECが保有している船舶は、効率化という観点では後れている。そういうものをこのまま使い続けることすらできなくなるかもしれないことについての言及はないんですけれども、それはそれで、これはもう今後のことだから、今後のことが達成されるまでの間のことは、あまり気にしなくてよいということになりますか。
【松本主査】  御意見ありがとうございます。
 その部分は繰り返し議論の中で出てきた部分だと認識をしていて、今、出ているちょうど293から297行目のところですよね。当面は「しんかい6500」を改造して使えるようにしましょうねということを、ここで記述しているんだと思うんですけれども、これ以外のコメントも必要だということでしょうか。
【河野委員】  この記述に要約されているから、これで皆さん、多くの方が危機感を持っていただけたと思うんですけれども、それを代弁していると皆さんがお考えになるなら、私たちは当事者ですので、それで結構ですけれども。
【松本主査】  もう少し記述として強く打ち出したいとか、そういう御意見がおありのように受け止めたんですけれども、いかがでしょうか。
【河野委員】  そうですね。当事者なので、これだけの記述で果たして私たちがこれを重要だと強く訴え続ける力になるのかというのには危惧を抱いておりますけれども、ただ、私たちは当事者なので。
【松本主査】  これ自身は当面の代替案であって、これが一番やりたいこととは本来は考えていらっしゃらないんだろうなとは理解をしているんですけれども、そういったところまで書き込んだほうがよろしいかとか、そういうことですか。
【河野委員】  将来こういうことが必要だからこういう新規開発をするべきだというのは、非常に受け入れられやすい意見です。そちらがハイライトされて、そちらが受け入れられて、我々もそういう方向の研究をもちろん喜んで進めていきますが、そのために、逆に今、焦眉の急と皆さん考えていただけたと思いますけれども、「よこすか」「しんかい6500」の有人潜水システムの老朽化が進んでいって、ひょっとすると運航停止にせざるを得ない状況が来るかもしれないという状況を、この4行の文章で強く訴えることができるでしょうか。そこには危惧を持っているということです。でも、我々は当事者なので、委員の皆さんが、いやいや、この程度にとどめておくべきだというのであれば、それはそれで書いてはありますので結構だと思いますけれども、というのが感想でございます。
【松本主査】  御意見ありがとうございます。
 真意は非常に理解しましたし、ディスカッションの中でもたくさん話題に出てきたところで、私個人としても非常に大事、そこを書かないと、どうしてこの代替案が出てくるかというのが全く、これが最終案なのかと受け止められてしまう、確かにそうだなと思いました。
 それでは湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】  私も河野委員と同じことを言おうかなと思っていまして、例えば261行目でHOVの「新造は極めて困難」と断言してしまっているのも、まずいかなと。少なくとも「極めて困難」ではなく、「コスト面とか開発期間等がかかるということで困難」というイメージにしておかないと、極めて困難と書かれると、もうできませんという、我々造船所ができませんと言っているとなってしまうので、これは書き過ぎではないかなと思います。
 293行目以降も、河野委員と同じで、ここである程度、私も審議をいろいろ聞いていまして、有人潜水船は要るんだとおっしゃられる委員の方が多くて、河野委員は苦しいところでああいう代案を出されましたけれども、開発はなかなかしんどいと思いますので、ここでHOVの話をこれで終わらせると、少なくともまずいんじゃないかなと思っています。何がしか道筋を付けるという意味で、もうちょっと検討期間とか、開発をどうするかというのは検討していくべきだというところは一言書いたほうがいいのかなという意見を持っています。
 それともう1点、細かい話ですけれども、太径ケーブルというのが264行とか276行目に出てくるんですけれども、太径ケーブル、イコール電力供給ケーブルがあるということになりますので、例えば276行目であれば、「太径ケーブルに依存しない」というところに、括弧して「電力を給電しない」というところをどこか注意書きとして書いていただいたほうがいいかなと思った次第です。それに伴って、276行目になりますと、「電力を給電しない細径ケーブルやケーブルに依存せずに高速・高精度な通信測位を可能とする音響通信技術」と変えてしまったほうがいいのかなと。
 あと、それと287行目には書いていますけれども、そのためにはハイパワーの電池を搭載するというのが要りますので、これも276行目の下にもう一つ行を加えていただいて、大容量の電池を搭載するというところを書いていただいたほうがいいのかなと思いました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。ケーブル関係のところのコメントですね。ケーブルを細くすることによって、電力の話が一緒について回るので、そこもきちんと書きましょうねという、そういうコメントですね。
【湯浅委員】  はい。
【松本主査】  ありがとうございます。
 奥村委員、お願いいたします。
【奥村委員】  ありがとうございます。高知大の奥村です。
 私も河野委員の御意見に賛同しまして、その点、少し補足するために、少し改良をすべき点として、初めに戻ってしまうんですけれども、2ページの47行目、母船「よこすか」の老朽化・陳腐化というところですけれども、竣工から30年以上が経過し、ということをここにもぜひ書いていただけると、母船の老朽化ということを定量的に示すことができますので、その文言を加えていただくことで、母船の老朽化は待ったなしだというところを一つ強調できるといいなと思います。
 あと、最後のほうに戻りまして、8ページや9ページの今後の課題のマル1の最後か、マル2の深海調査効率性の最後か、どちらかにはなると思うんですけれども、こうしたAUV・HOV・ROVを複合的に利用した次世代の総合的な探査を考えていく上で、母船の建造は不可欠だという文言を入れる必要があるんじゃないかなと感じております。
 あともう1点として、何かタイムスケール的なことを少し入れる必要があるんじゃないかなと思います。前回、平成28年の「今後の深海探査システムの在り方について」という委員会の報告書があって、そこから今、8年経過しているわけですけれども、今2024年で、ここから8年間、もし何も進めることができなかったら、もう2030年代に入ってしまって、いよいよ我が国の深海探査システムに空白が生まれてしまうかもしれないという現状になってしまうかもしれないと非常に私は危機感を感じているので、今すぐにでも、こういった母船の問題、そして次世代の複合システムについて考えについて動き出さなければならないという切迫したようなニュアンスを、このローマ数字の2の項目のどこかに入れられるといいなと思っております。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。おっしゃるとおり、確かにざっくり計画線表みたいなものを入れて、今何もしなかったらこのタイミングでもうできなくなっちゃうものに対して、今ここに出ている代替案と、新しい、例えば新造船を造ったらどのぐらい延ばせるのかとか、新しいAUV等々のビークルを造るのに開発にどのぐらいかかるみたいな、そういう線表を同じ一枚紙の上に乗っけて、もうそういう新しい準備を始めていかないと、次の研究が途絶えてしまうという、そういうストーリーが見えるようなものも示す必要があるという、そういう御意見ですね。非常に大事な観点だと思います。御意見ありがとうございました。
 谷委員、お願いいたします。
【谷委員】  奥村委員の御意見はごもっともで、河野委員の危機感もそうですけれども、僕はずっと母船が重要だということを言い続けているんですけれども。だからこの項の一番上に、奥村委員もおっしゃってくださっていましたけれども、一番最初に、今現状の抱えている課題と、それに対してどういうタイムスケールで、少なくとも「しんかい6500」が存続できる間にどういうことをしなきゃいけない、そこから先にもう既に実は動き始めなきゃいけないので、そこから先にどうするのかというところを、現状の抱えている危機感と問題といったそれに対して、あと我々が、これから「しんかい6500」が存続している間に何をしなきゃいけないのか、その先を見据えて我々は今から何をしなきゃいけないのかというところを書いたほうがいいんじゃないかなと思います。
 あともう1点だけですけれども、315行目に、マル1で示したケーブルレスの無人探査システムの開発と書いてあるんですけれども、マル1のところでは太径ケーブルを使わないシステムの開発になっていて、何かここは話が飛んでいると思うんです。ケーブルレスと太径ケーブルを使わない探査システムって別のもので、ケーブルレスに行くにはさらにもっと技術的な課題がたくさんあると思うんですけれども。この315行目は、ケーブルレスではなくて、太径ケーブルを使わない探査システムをということじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【松本主査】  ありがとうございました。今の2つ目の御質問に関して、事務局から御回答いただいてもよろしいですか。
【事務局】  事務局でございます。今、谷委員のおっしゃるとおり、こちらは太径ケーブルに依存しないというほうが正しい表現になると思いますので、そちらに修正させていただきたいと考えております。
【松本主査】  文言修正ということで対応したいと思います。
 岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】  岩崎です。ありがとうございます。奥村委員、谷委員のおっしゃったことと全く同感ですけれども、今回まとめて書かれていることは、もちろん全て進めていかなければいけないことだと思うんですけれども、優先するものを強調して書くようなまとめ方をすべきじゃないのかなと思いました。本当に危機感というか、今始めないともう駄目なんだというぐらい、リミット・オブ・ノーリターンであることを最初にうたってもいいぐらいのことじゃないかなと思います。HOVである「しんかい6500」をどうするかということと、母船「よこすか」をはじめ、探査母船をどうするか。この前、月に「SLIM」がピンポイント着陸して脚光を浴びましたけれども、ロケットがなければああいうものも行けないわけで、深海探査にとっては、船がなければ何もできないわけですよね。今回の委員会のまとめがどのように政府に受け止められるのか、その先を想像するのはなかなか難しいとは思うんですけれども、海の調査経験がない方たちにも届くように、相当強調してもいいのではないかなと感じました。
 なので、「はじめに」というところで、1ページ目に強調して書くこともそうですし、それに対応した格好で、251行目以降のところの今後の在り方というところも、ローマ数字の1で訴えた危機感に対応して、例えば251行目から以降のところの冒頭には、もう今やらなければ引き返せませんという格好で、優先すべきことをまとめてもいいのではないかなと感じました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。危機感を前面に出すというのを、一番先頭からそういう論調で進めていいんじゃないかと、そういう御意見ですね。非常に貴重な意見だと思います。
 ほか、いかがでしょうか。
(発言者なし)
【松本主査】  よろしいでしょうか。それでは、全体を通して御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。
 現時点でも前のほうに戻ったりされていますので、特にこのセクション等に限った話ではなくて、全体を通して、ディスカッションを重ねた中でお気づきになったことなどございましたら、御自由に御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 日野委員、どうぞお願いいたします。
【日野委員】  最後のほうですけれども、アウトリーチ活動を進める上で留意すべき点はあるかという問いかけが最後にありました。これってすごく重要で、例えばさっき「SLIM」の話が出ましたけれども、宇宙開発は応援団がいっぱいいると思うんですよね。そういう意味では、深海の研究・技術開発にももっと応援団を増やさなきゃいけないという意味では、このアウトリーチ活動というところはすごく重要ですが、少なくとも今の文章で見ている限りは、そこが、アンダーラインを引いていますけれども、市民目線で分かりやすい成果の発信が重要ぐらいのところで止まっていて、それより前の技術的な課題のところはすごく丁寧に書いてあるんだけれども、もう少し膨らませられないのでしょうか。例えば、深海の何をみんなに見てもらいたいですか、どうやって見せたいですかというところを、いろいろな専門の委員の皆さんがいらっしゃるので、少しそこら辺の情報を集めて、もう少しここを魅力的な書きぶりにできるといいのではないかなと思いました。私自身もすぐにいいアイデアがあるわけではないですが、ここが寂しいなと思いました。
 以上です。
【松本主査】  御指摘いただいてからで大変恐縮ですけれども、確かにここだけ随分さらっとしているなという印象はありますね。
 岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】  岩崎です。ありがとうございます。先ほどの危機感を強調するということがまず第一にありますが、私も加えようかなとは思っていたことがあります。
 冒頭の50から54行目に、人材の育成確保という項目がありまして、アウトリーチも掲げられているんですけれども、例えば(4)の人材の育成・確保に加えて、(5)としてアウトリーチのことも冒頭にまずは書き加えていただく。そして、ローマ数字1の、50から54行目に対応するような格好で、最後のところ、つまり、今おっしゃっていただいた367、368行目に、この位置がいいのかどうかというのは分からないんですけれども、そうした人材育成及びアウトリーチのことも書き加えていただけると、よりいいのかなと思いました。宇宙と同じぐらいの未知の領域であり、自分の足元のこともまだ分かっていないことが地球にはたくさんあるとか、恐らくそういうようなことを丸の一つの柱として加えていただければなと思いました。
【松本主査】  確かにおっしゃるとおり、人材育成については冒頭には書いてあるけれども、ここの部分で少し厚みが足りない。キーワードとしては書かれているけれども、具体的な話がよく見えないという、そういう御指摘かと思います。
 ちなみにここ、下の四角に書いてございますとおり、何か具体的なこういう取組をしたらどうかとか、先ほどの日野委員のところでもお話ありましたけれども、何か発信するのにこういうものを見せていったらどうかとか、個別の何か今、ものがございましたら、この場で少し御発言いただいてもよろしいかなと思います。
 湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】  その件に若干関わるんですけれども、先ほども申し上げましたけれども、深海探査システムを例えば輸入品で構築するのは多分是としないんでしょうから、人材の育成もそうですけれども、産業の育成というのもどこかにもうちょっと強く書いていただいたほうがいいのかなと。そうでないと、先ほども申し上げましたけれども、浅深度のこういう海中探査機器の産業がないと、なかなか深深度までいかないことになりますので、そこら辺から構築するべきではないかなと思いますので、それももうちょっと強く書いていただいたほうがいいかなと思います。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。先ほど本日の委員会の中でも、マーケットのある浅場のところも含めて産業界がもうちょっと入ってこられるようなことを考えないと、深海のビークルだけじゃ産業がもたないよという御指摘があったかと思うんですけれども、その辺りをもう少し産業の育成という視点でここの項目に書き込んでいくという、そういうことですよね。
【湯浅委員】  そうですね。だから、人材ということだけではなくて、産業の育成も必要だと思っています。
【松本主査】  大事な視点だと思います。ありがとうございます。
 巻委員、お願いいたします。
【巻委員】  産業の育成という観点は私も重要だと思いまして、この報告書では、冒頭だと経済安全保障ということをかなり重視している感じですけれども、途中からサイエンスで何をすべきか、ということだけの議論になっている感があります。経済安全保障上の課題とか産業育成が主だと思うんですけれども、こういうことをやるべきということを追加いただけるとバランスがとれるかなと思います。
 あと、「しんかい6500」等のアウトリーチというところで、前の委員会でも少し御紹介があったと思いますけれども、「しんかい6500」の探査中の生中継では、光ファイバーケーブルでつないで、衛星通信でニコニコ動画で中継したというのが10年ぐらい前にあったと記憶していますけれども、あれは私も見ましたし、学生たちも結構見たという人がいて、周知の効果があるんじゃないかと思います。あとは、以前ドラマ化されたという話もありましたけれども、そういうメディアとの連携というのも一つのアイデアかなと思いました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。人材育成だけではなくて、経済安全保障の観点のコメントが後半で見当たらないので、そこも取りまとめのところで少し触れないとバランスが悪いというのは、確かにおっしゃるとおりですね。
 それから、最後の探査中の中継とかメディアとの連携というのは、非常に市民目線で分かりやすいというところに直結するかなと思います。そこで何を見せていくかみたいな話は各論になるので、この場でというよりは、もしかすると、委員会の最中でも結構ですけれども、この後で、こんなのはどうですかということをメール等でいただくのもよろしいのかなと思います。
 河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  今の巻委員に賛成ですけれども、経済安全保障上で何か書き込むとして、何か深掘りできるような適切かつ具体的なものについてアイデアはありますか。
【巻委員】  湯浅委員がおっしゃられていたような、国内の産業育成というのが一つあるかなと思います。
【河野委員】  経済安全保障上、国内に海洋産業が発達していないのはリスクであるというような視点でしょうか。
【巻委員】  そうですね。そういった論調ですね。
【河野委員】  分かりました。ありがとうございます。
【松本主査】  ありがとうございます。
 谷委員、お願いいたします。
【谷委員】  アウトリーチ活動のところで留意すべき点というか、必要なインフラについて、巻委員からお話もありましたけれども、僕たち博物館でアウトリーチをやるときに、「SLIM」も多分、あれだけ注目されたのは、ほぼほぼリアルに月の表面の画像が送られてきて、みんなそれに興奮したのだと思うんですけれども。臨場感のあるほぼリアルタイムの深海の映像を一般の人たちに見てもらう。それに対して、そこにどういうまだ道があるのかというところを、メディアを通して、あるいは我々のような博物館とかで一般の人たちに知ってもらうという手段が大事だと思います。そこで多分一番必要なインフラで、今欠けているのは、大容量の通信システムですね。陸上と船をつなぐ大容量の通信システムが足りないと。だから、この諸課題の対応として、そういう通信回線の拡充をするというところが重要じゃないかなと思います。
【松本主査】  ありがとうございます。
 岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】  谷委員、ありがとうございます。私もそれは強調したほうがいいかなと思いました。海外の、NOAAのNautilus Liveでは、いつもインターネットでそれこそ海洋探査している様子をリアルタイムで世界に発信していますけれども、もちろんメディアとの連携というのもそうですし、そうした独自に発信する手段もどんどんやっていけば、アウトリーチがもっと広がるんじゃないかなと思います。大容量の通信技術、つまりファイバーで映像を船上に上げて、そうして船から衛星へのリンク、地上へのリンクというところも加えるべきだなと感じました。
 以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。
 日野委員、お願いいたします。
【日野委員】  映像とかを見せるってすばらしいと思うし、まずそれがいいのかなと思うんですけれども、ただ、探査機が行っている間って、すごく短い時間ですよね。それを長くできると。例えば深海のライブカメラみたいなのを作れるといいと思って、今、深海探査システムということなので、必ずしも探査機だけではなくて、探査機と連携して深海底設置型の装置があって、私たちは地殻変動観測のためにファイバーを必要としているわけですけれども、必ずしもそれだけではなくて、それの一環としていろいろな映像を流すとかいうようなものとの連携みたいなのも、アウトリーチ活動として必要なのかなと思いました。今、これも思いつきですけれども、以上です。
【松本主査】  ありがとうございます。すみません、確認ですけれども、海底地震計が設置ずっと海底に常設されていて、そこにカメラ等を置けば、常時海底の様子が見れますよという、そういう理解で合っていますか。
【日野委員】  そうですね。JAMSTECさんでそういうシステムはつくっておられて、今のところは全部単機能で、地震観測のためにシステムをつくっていますから、余裕が全然なくて、ほかの情報は全然送れていない。既存のシステムではなかなかそういうのはないんですけれども、ただ一方で、広くシステムという意味で言えば、探査機の付加価値を上げるという意味で、そういうネットワークも使えるのではないかなということで、一緒に提案していってもいいかなと思ったということです。
【松本主査】  なるほど。ありがとうございます。
 廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】  全体の取りまとめの構成ですが、こういった文章で表現されるのも、詳細は分かりやすいんですけれども、それを何か最後の結論ところ、結論というか方向性に関しては、何か表でまとめるとか、そのようにして分かりやすくしたほうが最終的にはいいかなと思いますが、いかがでしょうか。
【松本主査】  そうですね。おっしゃるとおりだと思います。先ほど途中で御意見が出ましたけれども、時系列の計画線表のようなもの、将来に向けての計画線表のようなものと、あとは各ビークルに対しての今後の在り方みたいなものが表になっていくのかなというイメージですけれども、そういうイメージでよろしいでしょうか。
【廣川委員】  最初のところで申し上げたように、水深の問題、6,000mを区切りとして浅いとか深いとか、そういうところも切り分けるのと、あとは、当面やることと少し中長期的なスパンでやるものと、非常に技術的なハードルが高いものと比較的短期で達成できそうなものとか、何かそういったものが一覧で分かると、マトリックスが多いですが、今後の海洋開発分科会、あるいは外に出すときに役立つんじゃないかと思いました。
【松本主査】  分かりました。まとめ方については少しもんでみないと、ここでこのようにしてみますと即答できないので、お時間をいただく格好になると思いますが、ありがとうございます。
 もう議論が出尽くしたということでよろしいでしょうか。皆様、いかがでしょうか。
 まだ御発言があるようでしたら挙手をお願いしたいですが、よろしいでしょうか。
(発言者なし)
【松本主査】  皆さん、本日はたくさんの御意見、御議論いただきまして、どうもありがとうございました。
 本日いただきました御意見を踏まえまして、事務局にて資料を修正いたしまして、海洋開発分科会へ付議したいと思います。内容については主査一任ということでよろしいでしょうか。
 皆さんうなずいておられますので、一任させていただくことにさせていただきます。
 以上をもちまして、本日の議事は終了いたしました。
 最後に、事務局から連絡事項等ありましたらお願いいたします。
【事務局】  本日は長時間にわたりまして、ありがとうございました。事務局から御説明した中間取りまとめ案につきまして、追加の御意見がある場合には、短くて恐縮ですけれども、27日の火曜日までに事務局まで御連絡いただきますようお願いいたします。追ってメールにて御連絡させていただきます。
 議事録につきましては、事務局にて案を作成しまして、後日委員の皆様にメールにて確認させていただきます。
 次回の委員会の日程につきましては、改めて調整させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上となります。
【松本主査】  これをもちまして、本日の深海探査システム委員会を終了いたします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
 ―― 了 ――
 

お問合せ先

研究開発局海洋地球課