情報委員会(第35回) 議事録

1.日時

令和6年1月25日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館16階 16F1会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 第34回情報委員会(書面調査)の結果の報告
  2. 令和6年度情報科学技術関連予算案について
  3. 人工知能(AI)分野における最新の研究動向について
  4. AIP センターの今後の在り方に関する検討について
  5. スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムの中間評価について
  6. その他

4.出席者

委員

相澤主査、青木委員、天野委員、石田委員、尾上委員、川添委員、小林委員、長谷山委員、引原委員、星野委員、湊委員、美濃委員、盛合委員、若目田委員

文部科学省

塩見 研究振興局長、奥野 大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、嶋崎 参事官(情報担当)、国分 計算科学技術推進室長、藤澤 学術基盤整備室長、原田 科学官、竹房 学術調査官、松林 学術調査官

オブザーバー

科学技術振興機構 研究開発戦略センター
 フェロー 福島俊一

5.議事録

【相澤主査】それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第35回会合を開催いたします。
 本日は、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策も行いつつ、現地出席とオンライン出席のハイブリッドで開催することといたしました。報道関係者も含め、傍聴者の方にはオンラインで参加いただいております。
 また、通信状態等に不具合が生じるなど続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
 本日は、佐古委員が御欠席と御連絡をいただいております。
 また、オブザーバーとして、科学技術振興機構研究開発戦略センターの福島俊一フェローに御出席いただいております。ありがとうございます。
 それでは、まず、事務局に異動があったと聞いておりますので、配付資料の確認とハイブリッド開催に当たっての注意事項と併せて事務局より説明をお願いいたします。
【植田参事官補佐】  事務局でございます。前回7月に開催させていただいた委員会の後、事務局内に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。
 研究振興局長として塩見、情報担当参事官として嶋崎、計算科学技術推進室長として国分が着任しております。
 研究振興局長の塩見から、一言御挨拶をさせていただければと思います。
【塩見研究振興局長】  昨年8月に研究振興局長に着任いたしました塩見でございます。御挨拶が遅くなりまして大変申し訳ございません。本日はお忙しい中、お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。
 情報委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。情報委員会では、最先端の情報科学技術の研究開発の推進と、あらゆる研究分野のデータ駆動型研究等を支える情報基盤の整備の2つの側面から御議論いただいていると承知しております。昨年は研究分野のデータ駆動型研究等を支える情報基盤の整備の観点で、オープンサイエンスの推進を中心に御議論いただき、報告書として「オープンサイエンスの推進について(一次まとめ)」をまとめていただきました。
 本日の会議では、AIに関する最新の研究開発動向の報告や、理研AIPセンターの今後の在り方の検討、スーパーコンピュータ「富岳」に関する研究開発課題の評価などが予定されております。活発な御議論をお願いできれば幸いに存じます。
 文部科学省としましても、先生方の御指導、御助言を賜りながら、本分野の振興に取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【植田参事官補佐】  続いて、議事次第に基づき、配付資料を確認させていただきます。現地出席の方は、お手元の配付資料を、オンラインで御参加いただいている方はダウンロードいただいている資料を御確認ください。
 本日は、本資料8点に加え、参考資料を7点お配りしております。資料1としまして、前回、書面調査をお願いしました研究開発課題の事前評価結果、こちらは委員のみの配付とさせていただいております。資料2が、令和6年度当初予算案・令和5年度補正予算概要。資料3が、CRDS様の人工知能研究の潮流、資料4-1がAIPセンターの今後の在り方に関する検討についての案、資料4-2が理化学研究所革新知能統合研究センターのこれまでの取組について、資料5は、スーパーコンピュータ「富岳」の成果創出加速プログラム中間評価結果(案)、資料6-1が科学技術・学術審議会情報委員会における下部組織の設置についての案、資料6-2が科学技術・学術審議会情報委員会情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会(仮称)の設置についての案となっております。
 その他、参考資料1として、CRDS様の人工知能研究の新潮流2、参考資料2-1から4として、理化学研究所革新知能統合研究センター様の資料を4点、参考資料3として、情報委員会の運営規則、参考資料4として、以前おまとめいただいた「オープンサイエンスの推進について(一次まとめ)」をお配りしております。
 資料の不足や問題等ございましたら、お知らせいただければと思います。何かございましたら、現地出席の方は手を挙げていただき、オンライン参加の方は事務局までお電話等で御連絡いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしければ、続けてハイブリッド開催に当たっての注意事項を申し上げます。まず、御発言には、マイクは常にミュートとしていただけますと幸いです。ビデオは常時オンにしていただき、通信状況が悪化した場合はビデオを停止していただければと思います。また、運営の都合上、現地出席の方も含めて、御発言いただく際は手を挙げるボタンを押して御連絡ください。相澤主査におかれては、参加者一覧を常に開いていただき、手のアイコンが表示されている委員を御指名ください。また、議事録作成のため、速記の方に来ていただいております。御発言される際は、お名前をおっしゃってから御発言いただけますと幸いです。また、恐れ入りますが、マイクの数が限られておりますので、現地出席の方が御発言いただく際は、大きめの声で御発言いただけますと幸いです。
 また、傍聴希望をいただいていた方にはZoomにて御参加をいただいております。
 その他トラブルが発生した場合は、現地出席の方は手を挙げていただき、オンライン出席の方は、電話等で事務局まで御連絡いただければと思います。
 事務局からの御案内は以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 早速ですが、本日は、6件の議題を予定しております。第34回情報委員会(書面調査)の結果の御報告、令和6年度情報科学技術関連予算案について、人工知能分野における最新の研究動向について、AIPセンターの今後の在り方に関する検討について、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムの中間評価について、その他となっております。
 それでは、初めに、書面審査として実施した第34回情報委員会の結果を報告いたします。事務局より説明願います。
【植田参事官補佐】  事務局でございます。
 7月26日から8月2日に書面調査にて開催させていただきました第34回委員会におきましては、令和6年度概算要求に向けた重点課題の事前評価について御審議をいただきました。8月17日付で情報委員会としての決定をいただきまして、情報委員会の運営規則第7条に基づき、研究計画・評価分科会に御報告をさせていただきました。なお、本議事内容につきましては、同運営規則第5条第3項に基づき、非公開の扱いとなっておりますので、詳細は割愛させていただければと思います。
 以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明に対して、御質問、御意見などありましたら挙手にてお知らせを願います。いかがでしょうか。
 特にないようでございますので、続きまして、次の議題に移りたいと思います。議題(2)において、情報分野における令和6年度当初予算案と、令和5年度補正予算概要について、事務局より御説明をお願いします。
【廣瀬参事官補佐】  事務局より、資料2を用いまして、令和6年度当初予算案・令和5年度補正予算案における情報科学技術分野の取組について御説明させていただきます。資料をおめくりください。
 こちらが情報分野の全体像になってございます。文部科学省情報担当におきましては、データ利用の促進という観点から、IoTの普及、社会のデジタル化の進展等に伴って、様々なデータが大量に収集可能になっているという中で、データの適切かつ効率的な収集・管理・共有・活用が科学技術や経済の成長の鍵となっているというふうに認識しており、2本の柱を中心に研究開発の分野振興を行っております。
 1つ目が左にありますとおり、次世代社会を切り拓く先端的な情報科学技術の研究開発、こちらは、例えば下の赤枠のところにありますAIPセンターや、来年度から新しく開始します生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発拠点形成事業といったものをここの部分で行っていくというふうに考えております。
 加えまして、次世代の研究開発を支えるデジタル基盤の構築・運用という水色の部分のところが2本の柱と考えておりまして、例えば、AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業や、SINET、スーパーコンピュータ「富岳」をはじめとするハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの運営といったものを行っております。
 個別に関しまして、次のページ以降、簡単に御説明させていただきたいと思います。まず初めに、生成AIの開発力強化と人材育成の推進についてです。こちらは夏の情報委員会におきまして事前評価をしていただいた事業も含まれておりますが、昨今の生成AIに関する研究開発に関しまして、国民からの生成AIに感じるリスクの声に応えるとともに、こういったものを活用して科学技術の競争力を高めていくといった目的に資するために、文部科学省として、生成AIに関する施策を3本、来年度、また今年度の補正予算を用いて推進していく予定となっております。
 1つ目が、一番上の囲みにあります、アカデミアを中心としてオープンな生成AIモデルを研究開発することによって、生成AIモデルの透明性・信頼性の確保と、それによるAIのリスクの軽減というものを狙った研究開発でございます。
 2つ目が、開発された基盤モデルを活用した科学研究向けの基盤モデルの開発と、多様な科学分野での利活用の推進を目指した研究開発、こちらはAI For Scienceといっておりまして、理化学研究所において行うことになっております。
 3つ目が、JSTにおいて、まさに本日から公募が開始されたものになりますけれども、若手研究者、博士後期課程学生に対する、特にAIに特化した人材育成のプログラムというものです。この3事業を用いまして、生成AIモデルの基礎的な研究開発力を国内で醸成していきたいと考えてございます。次のページをおめくりください。
 この中でも情報担当のほうで関連深いものに、生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発拠点ケースについて、詳細を御説明したいと思います。こちら、第33回、第34回の情報委員会におきまして、事前評価をいただいた事業になってございます。令和6年度から概算要求を経まして、7億円の予算を認められて開始するというものになってございます。夏の時点からの変更としましては、夏の時点では公募事業という形で御説明をさせていただいておりましたが、国立情報学研究所が主宰しているLLM勉強会において、産学官の研究力を結集して、生成AIに関する研究開発というものが進んできていること、また、NIIの大学共同利用機関としての性格等も踏まえまして、こちらの事業を公募事業から国立情報学研究所の機関指定という形に事業を変更し、来年度より事業を開始したいと考えてございます。
 実施する内容につきましては、夏に御説明をしたものと変更はありませんでして、目的のところにある、特に3点について行います。具体的には、生成AIモデルに関する研究力・開発力醸成のための環境整備というものを行った上で、生成AIモデルの学習原理の解明等による透明性の確保であったり、このモデルの高度化に資する研究開発というものを行うことによって、AIの進化であったり、将来にわたって革新的なイノベーション創出への貢献というものをしていきたいと考えてございます。次のページおめくりください。
 次は、理研AIPセンターについてです。こちらについては議題の(4)でも御議論いただきたいと思っておりますが、2016年から設置をされた理研AIPセンターにつきましては、引き続き日本のAIの研究開発の拠点、ハブとしてしっかりと研究開発を進めていくという形で、令和6年度の予算額として、AIPとしては31億円、またAIPネットワークラボと合わせて97億円という形で予算を措置いただいております。こちらは今年度の予算に比べて大きく減額をしているところになりますが、一番の原因は、戦略的創造研究推進事業の中で終了する課題があるからでして、緑枠の下のところに小さく書いてありますけれども、令和6年度からまたAIPプロジェクトに親和性の高い領域が発足した場合には、ここに追加でラボに参画する可能性がありますので、最終的にどのような規模になるのかというのは、また令和6年度になってから、こちらの部分が修正される見込みとなってございます。次のページをおめくりください。
 こちらから、インフラの部分に関しての説明を少し続けていきたいと思います。まず初めに、スーパーコンピュータ「富岳」及び革新的パフォーマンス・コンピューティング・インフラの運営についてです。こちらは「富岳」を中心として、多様な利用者にニーズに応える革新的な研究環境というものを構築し、その利用を推進するための経費となってございまして、令和6年度予算額では、昨年度より約8億円の増という形で189億円を措置して、事業を運営していきたいと思ってございます。主に安定的に運転を継続するための光熱水費等の高騰への対応というところで増額が認められております。しっかりとここで安定運転を継続するとともに、大学や民間企業等に使っていただいて、成果の創出に貢献をしていきたいと考えてございます。
 次のページは、それに関連する補正予算の話になりますので、割愛させていただきたいと思います。
 次、8ページ目を御覧ください。こちらはSINETというNIIが構築して運用しているネットワークに関するものです。こちら、世界の学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトという事業の中で推進しているものになっております。こちらも2022年4月から運用を開始しているSINET6につきまして、安定運用のために必要な予算が措置されておりまして、日本全国の大学や、研究機関の学術情報基盤として、しっかりとNIIにおいて構築・運用していただくように必要な予算というものを現在措置いただいております。次のページをおめくりください。
 AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業についてです。こちらは昨年に比べ、1億円の拡充が認められてございます。事業につきましては、データ駆動型の研究やAI等の活用によって、大量に研究データというものが必要になり、またそのデータ分析が進展し、大規模かつ高品質なデータの利活用の推進というものを全国規模、様々な分野・機関を超えて進めていくということが鍵といっている中で、全国の研究者が分野を問わずに必要なデータを互いに利活用するような環境の整備を行っております。
 来年度は、この取組の中の資料の左下にあります3番、オープンアクセスの推進に向けた調査というものを新たに行うということで拡充が認められておりまして、このオープンアクセスの推進等に係る実態調査を新たに行っていきたいと考えてございます。次のページをおめくりください。
 こちらは令和5年度の補正予算で認められた事業になります。先ほどもオープンアクセスに関しての調査をデータエコシステム事業のほうで行うと御説明いたしましたが、それに関連しまして、オープンアクセスの加速化事業が補正予算において行うことが決まってございます。こちらですけれども、現状・課題のところにありますとおり、G7科学技術大臣コミュニケにおきまして、公的資金における学術出版物や、科学データというものの即時オープンアクセスというものを支援するということが明記されてございます。これを受けまして、2025年度の新規公募群から、学術論文等の即時OAの実現に向けた国の方針を、現在策定する予定になってございます。こういった方針に基づきまして、大学による研究成果の管理・公開に関する体制の充実・強化というものを図るということが必要となっておりますので、体制整備をするための研究データポリシーに基づく事業計画等々を策定する大学を対象としまして、例えば、管理・利活用システムの開発・高度化に係る研究開発費や、その運用・体制強化に係る経費、また、研究成果のオープンアクセス化の促進に係る経費について支援をするといった事業を、現在行うということが決まってございます。次のページをおめくりください。
 11ページになります。こちらはJSTで行う事業になっておりまして、情報通信科学・イノベーション基盤創出という事業になってございます。こちらは、JSTで来年度から新しく公募を開始する事業になってございます。
 背景・課題のところにありますが、ICTの革新的な進展というものが大きな社会変革を起こす鍵だという認識に立ち、将来の我が国の帰趨を握るようなこういった革新的なICTの創出・進化を実現するための研究開発及び高度研究人材の育成というものを行っていくといったファンディング事業でございます。
 事業の目的・目標のところに書いておりますように、こういった大きな社会変革を実現可能とする革新的なICT技術の創出と、革新的な構想力を有した高度研究人材の育成というものに取り組むための事業でして、このためにこちらの事業では、未来社会の大胆なビジョンとそれに挑戦するICT技術というものをグランドチャレンジとしてJSTのほうで設定いたしまして、その実現に向けた研究開発を公募し、推進をしていくことを、JSTにおいて検討してございます。
 事業推進スキームにつきましては右側のところにありますが、基盤研究という形で、まず研究開発の公募を行います。こちらは採択をして大体6年間行うということになってございます。こちらで基礎研究を行った上で、この基礎研究において概念実証等が必要になるような、そういった新しい良い成果が出た際には、追加的支援メニューとして、移行研究という形でアドオン支援をするというスキームを、現在考えてございます。これによって、効果的かつ効率的な研究開発というのを実施していきたいというふうに考えてございます。次のページをおめくりください。
 Society 5.0実現化研究拠点支援事業となります。こちらは昨年度に引き続きまして継続をする事業になっており、来年度におきましても、データ連携に向けた基盤の構築という形で引き続き着実な研究開発をするために必要な予算ということで、6億円を措置いただいているという形になってございます。
 最後になりますけれども、13ページ、統計エキスパート人材育成プロジェクトにつきましても同様に、来年度、また3億円を措置いただきまして、統計人材の育成というものをしっかり続けるために必要な経費というものを今、お認めいただいている状況でございます。
 以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございました。では、ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたら1件か2件でしたらお時間ございますがいかがでしょうか。本日、大変議事が押しておりますが、後ほど事務局から最後に御案内あると思いますが、皆様からのフィードバックを後日受け付ける御案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。尾上委員、どうぞ。
【尾上主査代理】  尾上でございます。簡単なコメントなんですけれども、3ページのまさにこの3つの事業というのはすごく重要だと思っておりまして、担当が全て違うんですけど、きっちり連携をしていただいて、例えば右側の人材政策課が担当しているようなもののメンタリングというところとかがうまく左側のプロフェッショナルな、卓越な研究者ができるような体制をうまく組んでいただければと思います。
【相澤主査】  大変貴重なコメントありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。若目田委員、どうぞ。
【若目田委員】  オープンアクセス加速化事業の件ですけれども、大変重要なことだと承知をしておりますが、その前には実態調査とかに出た課題、ちょっとその前後関係は分からないですけれども、本当にかなり要はシステムの問題なのか、運用の問題なのか、何かその辺の課題を適切に把握した上で、その課題解決に関わるような配分というか、活用をすべきじゃないかなと思いますので、そういう実態がどうなのかということを含めて進めていただけたらと思います。
【相澤主査】  ありがとうございます。こちらも重要な御意見をいただき、ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 では、議事を急いで恐縮でございますが、続きまして、議題(3)に移りたいと思います。
 議題(3)におきましては、科学技術振興機構研究開発戦略センターの福島フェローから、昨年7月に出されました報告書、人工知能研究の新潮流2、基盤モデル生成AIのインパクトを基に、人工知能分野における最新の研究動向について御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
【福島フェロー】  では、JST CRDSの福島から、「人工知能研究の潮流」と題して発表させていただきます。
 副題に「JST CRDSの俯瞰的調査から」とつけているように、CRDSでの調査報告書を基にした内容になります。次のページ、お願いします。
 具体的にはこちらの報告書が対応しております。特に真ん中のところ、今御紹介ありました「人工知能研究の新潮流2」というものを基にしていますが、この分野は、動きがとても速く、それ以降の半年でいろいろな動きがあり、それらを踏まえた戦略提言をまとめた報告書を近々公開しますので、それを基にしたアップデートを含めて御紹介いたします。では、次のページをお願いします。
 報告書のリストを参考に載せました。私自身は企業の中央研究所で35年ぐらい勤務した後、CRDSに来て8年ほど、ここに示すようなAI分野の俯瞰的な調査や戦略提言をまとめてきました。これらの報告書は、文献や学会の調査だけではなく、各トピックで50名から100名ぐらいの有識者との意見交換やワークショップを重ねてまとめているというのが特徴です。では、次のページをお願いします。
 今回の発表のアウトラインはこちらに示すようなとおりです。まずこの1年、生成AI周りで非常に激しい動きがありましたので、その辺の最新の動向を振り返ります。その上で、これまでいろいろ報告書を出してきましたが、四、五年スパンで見たときに、2つの潮流があると捉えておりますので、それを御説明しつつ、それが生成AIの最新動向にもつながっていることをお話しします。この1、2、3が今日のお話の中心で、4、5は残った時間の中で軽く触れる形になると思います。では、次のページをお願いします。
 それでは、まず2023年のAI状況についてお話しします。次のページ、お願いします。
 皆さん御存じのように、ChatGPTに代表される生成AIが大ブームになっています。人間のような自然の応答、専門的な知識・能力を備えているかのような応答を返して、人間の知的作業全般を変革しつつあります。ただし、その仕組みは、確率モデルに基づいて入力の続きを予想しているというものです。それで非常にすごい結果が出てくるのが驚きですが、言ってみれば高度なオートコンプリート機能のようなものです。この続きを予測する確率モデルというものが、大量データから事前学習によってつくられた、超巨大な深層ニューラルネットワークで、「基盤モデル」あるいは「大規模言語モデル」と呼ばれています。次のページ、お願いします。
 その基盤モデルの開発状況ですが、スライドの左側に小さく書いてあるとおり、スケーリング則といって、学習データの量を増やしてモデルの規模を大きくするほど精度が向上するということが分かって、急速に巨大化が進みました。その結果、最先端のモデルでは、学習1回の実行で数十億円かかると言われ、現状、アメリカのビッグテック企業が大きく先行しています。ただ、この1年でオープンソース化や応用開発が進み、国内でも中規模の基盤モデルの開発が活発化している状況かと思います。では、次のページをお願いします。
 その一方で、AIのリスクが深刻化して、もっともらしいうそを出力するハルシネーションというものが最近よく言われていますが、ほかにも社会的バイアスや情報漏えい、著作権・肖像権の問題など、生成AIの出力に関わる様々な問題が顕在化しています。また、フェイク生成や犯罪利用などの悪用の問題も生じていますし、最近、カスタムGPTやMyGPTと言われる、生成AIのアプリケーションが簡単につくれる手段も出てきたことから、多分これから粗悪なAIや、脆弱なAIや、時には邪悪なAIのようなものも乱立してきて、それらの品質に関する第三者認証・評価のようなものも重要になってくるのではないかという話や、経済安全保障の面での懸念といったものも指摘されています。では、次のページをお願いします。
 次に、関連政策の動向についても触れておきたいと思います。文字の小さい表になってしまいましたが、左側に米中欧日のAI分野の戦略の考え方を書いておりますが、そこは省略して、特に右側のこの1年の動きのところをお話しします。特にこの1年は生成AI対応の動きが非常に活発になっています。欧州ではAIを規制する法案が何年か前に出されていましたが、これに生成AI対応が盛り込まれたし、日本はG7の議長国として、広島AIプロセスを主導してきています。同じような時期にイギリス主導で、AI安全サミットが開催されて、その中では、これまでAI倫理がよく言われてきたのに対して、むしろAIの脅威に対する対策といったところが強調されているという印象です。これを受けて、AI安全研究所が設立されるという話がイギリス、アメリカ、そして日本でも予定されていると聞いております。では、次のページをお願いします。
 ここからAIの研究動向に関するCRDSの捉え方として、「2つの潮流」についてお話したいと思います。次のページ、お願いします。
 こちらが時系列の俯瞰図になります。うねりがあるのは、ご存じのように3度のAIブームがあったからで、AIの基本原理のようなものが、探索ベースからルールベース、機械学習ベースと移り変わってきました。それについて応用が広がり、さらに社会との関係も広がってきたという理解でおります。ここで潮流と言っているものの1つ目が、AIの基本原理が今主流の機械学習ベースから、さらにどう発展するかというもので、ここで「第4世代AI」と言っている潮流になります。もう一つそれにかぶさる形で、社会との関係が広がるにつれて、精度・性能を上げるというだけではなくて、安全性・信頼性を確保する、そういう社会からの要請を充足するためのAI技術というものがさらに必要になっていて、これを「信頼されるAI」の潮流と呼んでいます。次のページ、お願いします。
 その「2つの潮流」についてお話ししていきます。まず「第4世代AI」の潮流、次のAIの発展ということで、こちらのイメージ図を示しました。第3世代を機械学習ベースとして、今の基盤モデルをどう捉えるかですが、基本原理という面では、これまでと同じ深層学習を大規模にしているということから、第3.5世代という言い方をしています。これは非常に強力なAIですけれども、その反面、幾つか課題も指摘されています。下のほうに4つ並べておりますが、1点目が資源効率、極めて大規模なリソースが必要です。最先端の基盤モデルは1回の学習実行に数十億円もの計算費用がかかるという話をしましたが、一方、人間の脳は消費電力が20ワット程度と言われています。単純な比較はできないと思いますが、より省エネなタイプのものが考え得るのではないかという意味で参考に上げています。
 2点目は、実世界操作が苦手ということです。仮想世界で学習していますので、動的で個別的な実世界状況への適応がまだ限定的かと思います。ただ、ロボットと組み合わせるような取組も少しずつ出てきているというのは認識しております。
 3点目は論理性の問題です。大きなタスクのサブタスクへの分解や、論理構築・論理推論が苦手です。計算を間違うようなこともよく指摘されていました。あと安全性と信頼性というのは、先ほどAIのリスクとして挙げたような話になります。
 このような課題は、先ほど述べたような確率モデルに基づいて先を予測している、つまり、高度なオートコンクリート機能とでも呼べるような、基本的にボトムアップな帰納型であることに起因すると思われます。そこで、これを克服するためには原理的な拡張・発展が必要になっていくだろうということで、それをここでは「第4世代AI」と呼んでいます。次のページ、お願いします。
 このような方向につながるようなアプローチが幾つか出てきていると思いますので、簡単に御紹介します。1つ目は、基盤モデルの仕組みをベースに、外づけの改良を積み上げるというもので、プラグインや検索拡張生成(RAG)がよく知られていますが、どんどんビジネス応用にも組み込まれています。
 2つ目は、基盤モデルのメカニズム解明に基づく基本原理の改良です。国立情報学研究所を中心に国内の研究者が多数参加して取り組まれているLLM勉強会、LLM-jpとも呼ばれる活動が代表的です。
 3つ目は、人間の知能のメカニズムからヒントを得て新原理を開発するという取組です。脳科学とか発達科学の知見に基づいて、二重過程理論とか予測符号化理論など注目されていて、AIシステムへの実装もいろいろ考えられ始めています。
 二重過程理論というのは、人間の思考は即効的なシステム1と熟考的なシステム2から成るというモデルです。深層学習は基本的にシステム1に相当すると言われていましたが、基盤モデルで徐々にシステム2まで広がってきているものの、システム2全体はまだまだカバーできていないと考えられていて、そこを広げていこうという考えです。
 予測符号化理論は、内部モデルに基づく予測と、実際の知覚との誤差を最小化するように修正しながら認知機能を発達させるという認知発達分野のモデルです。これがロボット制御への応用なども実際に行われつつあって、可能性がありそうだと思っています。
 4つ目は少し毛色が変わって、知能を人間・社会との関係性の側面から発展させるというものです。例えば、ChatGPTは対話してくれるわけですが、コミュニケーションや共同作業で欠かすことができないような相手との共通理解とか、会話の背景、コモングラウンドといった言い方がされるものが、必ずしもできておらず、単に予測結果を出してくるだけという指摘がされています。こういったコモングラウンドのようなものを考えていく必要があるといったことが、対話の研究で言われております。次をお願いします。
 現在の基盤モデルの問題克服につながる可能性を持つ4通りのアプローチを御紹介しましたが、このスライドの左側に載せた小さな表にありますように、先ほど挙げた問題点が各アプローチで克服できる見込みがどうかというと、限定的、あるいは、モデルの解明が進まないとどこまでいけるか分からないという点で未知と考えています。また、こういったアプローチが目指すAIの姿というものも考えてみますと、汎用性の高い道具としてのAIという考え方もありますし、人間のパートナーとして望ましいAIや、人間の知能に近づいたAIなど、幾つかタイプが分かれると今は見えます。けれども、ワークショップで有識者と議論したところ、徐々に融合していくのではないかという見方をされた方が多かったので、そういう意味でも取組方としては、この中でどれを選ぶというよりは、いろいろアプローチの可能性を幅広に認めつつ、その中で融合、シナジーを生み出すようにしていくというのが、次世代モデルの創出を加速するには有望なのではないかと思っています。
 そのときにやはり次世代AIモデルの発展は、AI単独の高度化だけではなくて、他者や社会との関係性の中で発展させるという視点が徐々に重要になってくるのではないかと見ています。AIと人間社会の関係の在り方など、もう少し人文・社会科学的な面からの検討も併せて考えていく必要があるだろうといった議論もしております。次をお願いします。
 ここから、2つ目の潮流「信頼されるAI」についてです。次のページ、お願いします。
 第三次AIブーム以降、AIの応用は、広告レコメンドのような、ある意味失敗してもそれほど影響がないものから、交通・医療のような非常に品質クリティカルな分野にも広がっています。その結果、安全性・信頼性が非常に重要な課題として認識されるようになりました。ブラックボックス問題とかバイアス問題とか、脆弱性問題、品質保証問題といったものが挙げられて、対応が求められるようになったと認識しています。
 そのため、AIの開発や運用における社会原則や倫理指針といったものが考えられるようになって、日本政府ですと、「人間中心のAI社会原則」が出されていますし、国際的には「OECD AI原則」などが、2019年頃に国際的にも議論されて作られるようになって、その後、原則から実践フェーズへと移行してきています。
 既に述べたように、特に昨年から生成AIがもたらすリスクに対する国際的な議論が活発化していて、欧州AI法案の修正とか、広島AIプロセスとか、AI安全サミットといったところでの議論が活発化しているという状況です。次、お願いします。
 そういった安全性・信頼性を確保したAIシステムのための技術開発としては、機械学習の品質管理テストや公平性評価、プライバシー保護、説明可能AI、AIの脆弱性対策、AIセキュリティーなどをはじめ様々な技術開発が、この四、五年でかなり進んできています。これはソフトウエア工学の面からすると、従来のプログラミングは演繹的な開発方法だったのが、機械学習では帰納的な開発方法になったため、新しい方法論が必要になったということで、2018年頃から「機械学習工学」と呼ばれる研究分野が立ち上がってきています。
 また、品質の良いAIをつくるというだけではなくて、悪用面についても考える必要が生じています。2017年前後からでしょうか、ディープフェイクが社会問題化して、ある意味、新種のサイバー攻撃手段と言われるようにもなってきています。
 対策としては、メディアを詳細に解析してフェイクメディアを検出するとか、電子透かしやブロックチェーンによって出どころとか経路を追跡するといった検討も併せてされていると認識しています。また、生成AIの高品質化・利用拡大によってこの問題が一層深刻化して、リスクケースが拡大・多様化していると感じています。下半分に細かい図がありますけれども、詳しいところは省略しますが、いろいろなバリエーションがあって、特にピンクでくくった左側と右端、これは何を言っているかというと、左側のケース1は、生成AIの不適切な応答を回避するように生成AIのモデルをチューニングするもので。右側のケース5は、フェイクの悪用への対策です。これらは喫緊の課題と言われて、ここ最近かなり活発に議論されるようになりました。図の真ん中のあたりは、対策を考えなければならないということは認識されてきているのですが、技術的な取組はこれからという印象です。生成AIを使ったアプリケーションをつくったときに、きちんと安全性確保ができているのかとか、世に出された生成AIが粗悪なものでないか、邪悪なものではないかとか、そういったものを外側から審査するようなことができるのだろうか、といったところはこれからの課題かと思います。では、次のページをお願いします。
 今、5つのケースに分けてお話ししましたが、それらはそれぞれ継続的な強化が必要だと思いますが、そのようなボトムアップな積み上げだけではなく、新しい観点からの取組も情報科学的には必要と思っていまして、それをここでは2つ述べています。
 1つはシステム開発のパラダイム変化という観点です。機械学習によって帰納型の開発が新たに必要になったと述べましたが、さらに、生成AIを使ってどんどんシステムつくってしまうようになり、プロンプトエンジニアリングとかカスタムGPTとかいったやり方が出てきています。これは新しいつくり方ではないかと思います。人に依頼するように対話・コミュニケートして物をつくっていくということで、ある種新しいパラダイムであり、ここでどうやって品質、安全性を確保していくかには、何か新しい考え方、方法論が必要になるのではないかと思っています。
 それから、もう一つ。AIは不安定ですし、人間もいろいろ悪用してしまうような不完全な面があります。そういったAIと人間が共存・混在したマルチエージェント社会の中でどうやってリスクを低減していくかといった捉え方です。マルチエージェント研究におけるメカニズムデザインとか、社会的トラスト形成とか、もう少しメタな観点からの取組というものも徐々に立ち上がってきているのではないかと思っています。次のページ、お願いします。
 ということで、「2つの潮流」をお話ししました。このスライドには、このような技術開発が進むとどういうことができるようになるか、4つほど例を挙げていますが、細かい説明は省略して、次へいきたいと思います。
 残り時間、あと5分ぐらいで、4番、5番の話題を軽くお話しします。では、次のページをお願いします。
 今回、「2つの潮流」を中心にお話ししましたけれども、冒頭で示した報告書の中ではもう少し細かく9つの分野に分けて、それぞれの領域の動向を説明しています。さらっと御紹介しようと思いますが、9つは大変なので6つにくくってお話しします。スライドに示した9つの領域のうち、中段に位置するものが「第4世代AI」の潮流に関する研究分野で、その上の段のところが「信頼されるAI」に関わる研究分野ということで、先ほどの「2つの潮流」と関係付いた領域群になっています。では、次のページをお願いします。
 ここから少し飛ばした説明となります。まず領域Aは「機械学習モデル」で、既に述べているように、画像から言語までトランスフォーマー型の基盤モデルに統一されて、マルチモーダル化やロボット制御への適用も進んでいるというのがトピックです。次のページ、お願いします。
 領域Bは「人間知能の理解」です。先ほどもお話ししましたが、分析的なアプローチで人間の知能を理解しようというのが計算脳科学という分野ですし、構成論的につくって考えようというのが認知発達ロボティクスという分野と思っています。次世代AIのヒントになるということでは、先ほど二重過程理論とか予測符号化理論といったものを御紹介しました。では、次のページをお願いします。
 次の領域Cは「エージェント」関係です。マルチエージェントシステムや、インターフェースエージェントといった研究を含みます。マルチエージェントでは、社会シミュレーションに使われるようになり、いろいろな分野で社会実装が進んでいます。複数のAIがインタラクションするというのがこれからだんだん高度化していくと思われ、エージェント間の自動交渉や、生成AIがお互い対話しながらコミュニティーをつくっていくというような実験がされるなど、新しい展開が出てきそうな分野になっています。次のページ、お願いします。
 領域Dは「AI品質管理とガバナンス」ですが、この辺りは先ほど「信頼されるAI」のところでお話ししたので割愛します。
 次は領域E「意思決定・協働とAI」です。ここはフェイク問題への対策とか、AIを活用した創作といったところがホットなトピックですが、今後、何らかの目的達成に向けて、人とAIが協力して取り組むHuman-AI Teamingが重要課題になっていくと思われます。これについてはスライドの右下のほうに書いてあるような5つのパターンがあるという考え方も参考になると思います。次のページ、お願いします。
 最後は「AI駆動型問題解決」です。AIが様々な分野の問題に適用されていますが、科学研究分野への適用が結構ホットなトピックで、AlphaFold2や、たんぱく質言語モデルなどが話題になっています。少し駆け足でしたが、6つの分野をお話ししたので、その次のページをお願いします。
 最後、CRDSで検討している戦略提言について、雰囲気だけ御説明します。生成AIに関しては後追い開発や応用開発になっているとか、ガバナンス面の整備もされているといった状況ですが、そういった後追い開発や応用開発にとどまらずに、その先を目指すような基礎研究をもっと強化するというような方向で提言を出そうとしております。
 この図は基盤モデル生成AIに関する課題の全体感を表しています。その左側の3分の2はいろいろ走りながら考え、どんどん手を打っていく必要があるところですけれども、右側の3分の1が基礎研究として重要だと考えていまして、この辺りが「第4世代AI」の流れや、「信頼されるAI」の流れの中で、次にどう展開していくかという位置づけになっています。次のページ、お願いします。
 細かいところはお話ししませんが、先ほど言ってきたような「次世代AIモデル」を考えていくことに加えて、「AIリスクへの対処」を両輪で回しながら、それをいろいろな問題解決に適用していくための「AI駆動型のプロセス革新」も連携して進めていく。さらに、人文・社会的な面から「AI社会の在り方」といったことも併せて考えることが必要ではないかと、広く問題を捉えて提言しようとしています。次のページ、お願いします。
 推進方策についてもいろいろ検討していますが、ポイントが2つあります。1つは、AI分野では研究開発の形態が変わってきていると思っていまして、ビッグサイエンス化しているとか、ハイスピード化・ハイインパクト化している、あるいは、ビッグテックに閉じた形になって非オープン化しているといった変化がある中で、それを踏まえた研究エコシステムのようなものを考えていく必要があるのではないかと考えて、いろいろ議論しています。実際にはいろいろ関連する動きや施策が進んでいるかと思いますが、それらの大きな絵を描いておこうとしています。
 それから、基礎研究だけで問題が解決するかというと、それで十分ということはなくて、活用のほうを進める、産業イノベーション政策と連動させながら、基盤を底上げしていくなど、施策を連動させていくということも重要なのではないかということで挙げています。
 駆け足になりましたが、以上で私からの発表を終わります。
【相澤主査】  福島フェロー、ありがとうございました。
 それでは、議論に移りたいと思います。ここまでの御発表を踏まえまして、御質問や御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。どうぞ、川添委員。
【川添委員】  御説明ありがとうございました。今日、御紹介いただいた内容というのは、今の生成AIがそうであるように、これを利用するのは必ずや人間という形だと思うんですけれども、実は今、それを超えて実際に起きていることとしては、AIが話をするのは人間じゃなくてAIだという事象が出てきています。どういう分野かというと、例えば、サイバーセキュリティーの分野でいうと、攻撃する側がAIを使うので、守る側もAIを使うんですよね。そうするとAIとAIのコミュニケーションになってきて、そこにはもう人間は存在しなくて、AIとAIの間の最適化、あるいは場合によっては攻撃ということになるんですけれども、こういうケースにおいては、今御紹介いただいたような、必ずしも人間が理解できるということが重要ではなくて、AIとAIの中で最適化されていく世界だというふうに思うんですよね。
 今の生成AIはあくまでも人間を相手にしているので、もしかしたらアッパーリミットは人間のパフォーマンスリミットかもしれない。ただ、AIとAIがコミュニケーションしだすと、これは無限の進化をするかもしれなくて、それをどうとらまえるかは非常に重要だというふうに、実はNTTの研究所などは今捉えていまして、実際通信のシステムとかいろんなシステム、例えば自動運転のシステムでいえば、車に搭載したAIと交差点にあるAIが話し合って一番安全な走行を決めるという場合においては必ずしも人間の理解は必要なくて、最もパフォーマンスの高いアルゴリズムだったりプロトコルで動くことが重要になるということで、こういう研究分野が次に出てくるんじゃないかなと捉えているんですが、いかがでしょう。
【福島フェロー】  先ほどのマルチエージェントの領域辺りで、おっしゃるような動きはあると思います。領域Cですから24ページ目にありまして、自動交渉のような技術、これはプロトコルを標準化しようという動きもあります。あと右側に書いたジェネレーティブエージェントというものは、まさに生成AI同士が勝手に話をしてどんどんいろいろなことをやっていくみたいな実験がされています。どうしていくかというよりも、そういうことが起きるとどうなるかといった実験のレベルかもしれませんけれども、いろいろ動きが出てきています。これに関して安全性、信頼性をどう確保するかという話ですと、先ほどのマルチエージェント社会、人間も含めるか、人間はなしかというのはありますが、マルチエージェント社会の中でどういうメカニズムデザインをしていくか、そういったところも重要研究課題になってくるという認識はしております。
【川添委員】  それは多分、今日御説明いただいた第4世代というか、そこと違うほうに行くかもしれないとも思っているんですけれども、そういう流れも何となく考慮しておいたほうがいいのかなという、そういうコメントです。
【相澤主査】  ありがとうございました。
 それでは、ほかに御意見、御質問等いかがでしょうか。お願いいたします。
【小林委員】  今、12ページにありましたように資源効率、極めて大規模なリソースが必要だということで問題に上がっておりましたけど、計算機の考えでいくと、やはり分散協調型でそういったものを解決していくしかないのではないかなと思うんですが、ある程度ドメインスペシフィックな知識やAIを協調させて、メタなAIのような形で資源の効率化のようなことを進めるというような取組はあるんでしょうか。
【福島フェロー】  その辺りは今回十分に調べてはいないのですけれども、分散協調の話は出ていると思います。実際のAIの形としても、大規模なメガGPTのようなものがあるという世界から、いろいろなAIが乱立して分散して、当然それは連携して動くような世界になっていくというふうに見ています。その中でどうリソースを配分していくかとか、なるべく省エネ化していくといった問題は、確かに研究テーマになっていく可能性はあると思います。その辺の動向は詳しくは把握できてはいませんが、そのような見方をしています。
【小林委員】  このままどんどんリソースを必要とし続けると、いつかは破綻してしまうと思いますので、やはりそういう形が必要かなと思っておりました。ありがとうございます。
【相澤主査】  ありがとうございます。では、美濃委員お願いします。
【美濃委員】  このお話はもっともだと思いますが、ここでは、データや計算はどんどん大きくなって、エネルギーもどんどん大きくなるという前提でこれを調べたら、こんなことができるだろうという話なのか、もう少し違った方向へ行こうとしている話なのかがわかりません。これ見ていると、いわゆる今の延長線上でこういうことが起こり得るというふうに見えます。それはそのとおりだと思うので、もしそういう方向に行くなら、大学ぐらいが1つの研究室でやっていては絶対追いつかないような研究がここにたくさん書いてあるというような気がしています。
 だからそういう意味で、AIの領域はこういうところあるという話だけれど、この調査の前提のようなものが、いわゆる今の流れの上で考えられた話と考えていいのでしょうか。その辺りがはっきりしないと、アカデミックに本当にこういうことを実現しようとしてお金だけ出せばできるんだろうかと思いました。それよりも企業にやらせるほうがいいんじゃないかというような話を考えたときに、どんなレベルでこれを考えていらっしゃるのか、教えていただけるとありがたいです。
【福島フェロー】  答え方が難しいのですが、2つに分けてお話しすると、1つは大規模、ビックサイエンス化しているという流れは確かで、今の生成AIはその勢いや性能からすると、おそらくたくさん活用されて広まっていくでしょう。そういう方向性はある程度研究としても必要で、これは最後のページに書いたように、やはり1つの研究所ではできなくて、また、日本企業もアメリカのビッグテックほど巨大ではないので回していけなくて、だから、一丸となってみんなで協力してやるような形で、研究の基盤もつくっていかないといけないのではないかと。先ほども触れたLLM-jpというプロジェクトが進んでいるのも、その流れだと思っています。
 ただ、そういう流れで基盤モデル、大規模モデルといった方向を探求していくというのは、なぜこんなにすごい性能が出るのかを解明する意味でもやらなくてはいけないと思うのですけれども、それだけではないアプローチも考えておきたいと思っています。それが、先ほどの人間の知能のメカニズムをヒントにした研究といったものです。そちらのほうでいくと、人間はそれほど大きなエネルギーを使っているわけではないので、省エネルギー化のヒントにもなるでしょう。要するに今のAIは、ボトムアップに大量のものを全部学習してやろうとしているのでどんどん大きくなりますが、人間は必要なところを適宜見にいっているわけです。そういう考え方を取り入れたAIは、今より省エネ化ができるかもしれません。人間の知能のメカニズムからヒントを得るアプローチがもしうまくいくと、AIに必要なリソースが減っていくという可能性もにらんで、ある意味、幅広な取組を考えたほうがまずはいいのではないかという立場に立っています。
【美濃委員】  ありがとうございます。
【相澤主査】  他にいかがでしょうか。石田委員、どうぞ。
【石田委員】  九州大学の石田です。詳しくないので教えていただきたいんですけれども、こういったときに開発するモデルというのは、大きなものが1つ、いいものがあるという考え方なのか、それとも例えば適用するタスクや場面に応じて、この場面ではAのモデルのほうがいい、この場面ではBのモデルのほうがいいという、モデル自体の開発にもバリエーションがあると考えていいのでしょうか。それとも、ある程度モデル自体は共通して、学習する資源によって得意なところは違ってくるというふうになるのか、その辺りの様子というのが分からないので教えていただければと思います。
【福島フェロー】  今の基盤モデルというのは汎用性が高くていろいろなことができて、中身としてはトランスフォーマー型が採用されています。ただ、そこにデータを追加学習させたり細かいチューニングをしたり、外側にアドオンでプラグインつけたりと、そういったものによっていろいろ用途を切り替えていくということもされています。例えば、科学用のデータを読み込むとたんぱく質の構造予測ができるようになるなど、違ったデータを学習すると、違った用途で結構効くといったことが出てきたりしている状況です。ですから、当面はトランスフォーマーをベースにいろいろなものがどんどんできていくでしょう。それはそれで進むでしょうが、やはり人間の知能とかから学んだ別なモデルが出てくると、また違った展開もあるかもしれないという気もします。いろんな可能性があるという状況でしょうか。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 若目田委員、よろしくお願いします。
【若目田委員】  先ほどの12ページの現在の基盤云々の問題点のところで、資源効率の話がありましたが、そこで電力のお話もありましたが、データというリソースの宿題が解けていなくて、こういったことが進むのかどうかということを伺いたいと思います。おそらくビッグテックというのは会社が大きいなどといったことではなく、データの寡占化に成功したことによってこういったモデルができたのではないかと思うんですけれども、そこに対する条件が整わなくてもこういった研究等が進んでいくのかという点と、逆にそれはなくてもいい。ここでいうと、逆に第2世代のルールベースのものから第4世代にブラッシュアップするところに勝ち筋を見つけるのかなど、その辺のところはいかがでしょうか。
【福島フェロー】  現状やはりデータは非常に重要で、今、LLM-jpなど日本で一丸となってやろうとしている取り組みでもやはりデータが重要だと考えられています。ただ、品質のいいデータをいろいろなところから出してほしいという要望に対して、データを持っているところは自分のところの資産なのでなかなか出してくれないという問題をどうしていくかというようなところが、おそらく今後重要な課題になってくると思います。
 例えば、マルチメディア、マルチモーダルのデータとしていろいろ質のいいものがあるのを何とか使えるようにしていくという話が1つ必要でしょうし、それ以外にも、ロボットなどの実世界でのいろいろな動作データを、それもいろいろな場面で、いろいろなロボットの動作があり得るわけで、そういったものも、これからどうやって集めていくかという課題もあります。そのようなデータを集める戦略といったことは非常に重要な課題で、現状日本としてはかなり悩ましいというか、苦しんでいる状況であることは間違いないと思います。
【若目田委員】  分かりました。ありがとうございます。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 オンラインで御参加の先生方で、もし御質問ございましたら挙手でお願いいたします。どうぞ、青木先生、よろしくお願いいたします。
【青木委員】  福島さんにはいつもお世話になっています。何度も関わっているうちに、すっかり頭に染み込んでお聞きしたんですけれども、福島さんのこの分類はすごく網羅されていると思います。あとはフレーバーの話が少しフレーバーかなと思うんですが、実は川添委員がさきほどおっしゃっていたことは極めて僕は重要だと思っています。というのは、必ず御説明のときに人間との関係性の中で常にAIを捉えるような努力をされているんだけれども、実は川添委員がおっしゃっているように、人間と全く異質な世界からとんでもないものが出てくるというのが今の大きな流れなんですよね。それもこの枠の中に入っていますが、そういう雰囲気が極めて大事じゃないかと思います。LLMも、出てきたときは専門家は全てあるということなんだけれども、予測できないことがみんなびっくりしたわけです。こんなものでなるのかと。イギリスのブレッチリーパークのAIセキュリティーサミットでもフロンティアAIと言っています。つまり、今までに専門家ですら想像してなかったようなものが次に出てくると。それの異質さがある種あのような会議を開かせているということもあって、その臨場感みたいなものを我々がしっかり捉えておくのが大事ではないかというふうに感じたということです。
 例えば、Embodied AIなんかのロボティクスとAIの組合せだと言えばそれで終わりなんだけれども、日本のロボティクス研究者はトラディショナル過ぎてそういう研究はやってないですよね。そういうところからも次にあっと驚くような物すごいものが出てくる可能性があるわけです。そこに行っていないという我々の情報分野の責任を、やっぱり感じる必要があるかなと思います。
 LLMのときも、日本はAIPもつくってやっていたわけです。NLPの研究者も卓越した人がいたんだけれども、そこに行ってないという批判が当然あるわけです。僕らもやはりそれをどういうふうに説明すればいいのかとか、そういうある種の爆発的なものに対して非常に独創的なアイデアで、若い人なり老若男女がバリエーションを持って取り組んでいくようなものに対してファンディングするということの雰囲気も重要ではないかと思って、川添委員の応援をしました。
 以上です。
【相澤主査】  ありがとうございます。本当に議論は尽きないことと思いますが、心苦しいのですが、そろそろラップアップといたしたいと思います。AI研究のみならず、ファンディングスキーム自体も変革を求められているということにもなるかと思いますので、また引き続き皆様の御知見を賜りたく存じます。ありがとうございました。
 続きまして、早速ですが、議題(4)に移ります。AIセンターの今後の在り方に関する検討について、資料4-1、4-2に基づき、事務局から御説明をお願いいたします。
【廣瀬参事官補佐】  事務局でございます。AIPセンターの今後の在り方につきまして、資料の4-1、4-2を用いまして説明させていただきます。
 まず、AIPセンターの検討につきまして、4-1を用いて簡単に御説明いたします。1.の経緯を御覧ください。理研AIPセンターは、世界最先端の研究者を糾合し、日本のAI研究開発力を底上げする拠点としまして、2016年度に理化学研究所に設置されたAIに関するセンターでございます。設置当初から10年のプログラムで開始しておりまして、2025年度末をもって補助金の交付期間が終了する予定になってございます。
 ただ、プログラムの終期が迫る中、AIPセンターの今後の方向性が現在明示されていないため、AIの研究開発の必要性というものが重々指摘されているという状況にもかかわらず、新しいプロジェクトの着手等が難しくなっているといったことから、今後の方向性というものを早急に示すことが必要ではないかと事務局として考えてございます。そのため、世界のAI開発の動向を踏まえつつ、AIPが今後果たすべき役割というものを再確認し、具体的な研究開発の内容や実施体制というものを早期に検討する必要があると考えてございます。
 本日は、このAIPセンターの今後の在り方を検討する際に留意すべき議論、論点というものを情報委員会において御議論いただきたいと考えております。議論の前提となります理研AIPのこれまでの取組につきまして、2月にAIPセンターの杉山センター長が来て詳細を御説明いただく予定ですけれども、まずは概略につきまして、資料の4-2を用いまして事務局より簡単に御説明をさせていただきたいと考えてございます。
 資料4-2を御覧ください。理化学研究所AIPセンターのこれまでの取組についての資料でございます。1枚おめくりください。
 1枚目は先ほどの予算するときにも用いた資料になっておりますが、AIPプロジェクトの概略について御説明をしている資料になってございます。AIPセンターは、このAIPプロジェクトの中のいわゆる左側の部分になっておりまして、拠点の研究を担うとなってございます。
 3ページ目を御覧ください。理研AIPセンターの体制でございます。AIPセンターは2016年4月に設置しておりまして、革新的な人工知能技術を開発し、科学研究の進歩や、実世界応用の発展に貢献することを目指してございます。また、技術の普及に伴って生じます倫理的・法的問題等について研究をすることも担ってございまして、杉山センター長にセンター発足当時からセンター長を担っていただき、この下の四角にあります汎用基盤技術グループ、目的指向基盤技術グループ、社会における人工知能研究グループ、この3ループで研究開発をしてございます。
 政策的な位置づけとしましては、一番下のところにも書いてありますとおり、AI戦略2019以降、理研AIPセンターというのは国のAI関連の中核センター群の1つとして、主に理論研究を中心とした革新的な基盤技術の研究開発を推進するという役割を担いつつ、AI技術による科学研究の発展や、社会問題の解決といった応用研究へつなげるということをしてございます。次のページをおめくりください。
 こちらはAIP発足当時から掲げている5つの重点テーマでございます。1つ目が、10年後を見据えた次世代基盤技術を開発するための基礎研究の推進でございます。これは主に杉山センター長が率いております汎用グループを中心に行っておりまして、例えば深層学習の原理を理論的に解明して、更なる性能や効率の向上というものを目指すといったことをしてございます。
 2つ目が、日本が強いサイエンス分野をAI技術によりさらに強化をするところになってございまして、これは目的グループを中心に、例えばがん・再生医療等の分野でAIの技術を適用するような研究開発をしてございます。
 また、3つ目の、日本が取り組まなければならない社会的課題、例えば防災・減災、インフラといったものが挙げられると考えておりますが、こういったものの課題についてのAI技術による解決や、4.のところにありますとおり、AIの普及によって倫理的・社会的な課題というものが発生しますので、こちらに対する対応というものも行ってございます。
 また、AI人材の不足が叫ばれている中で、この人材の育成というものも研究所のミッションと据えて取り組んでいるところでございます。
 5ページ目を御覧ください。理研AIPセンターの成果の概要でございます。詳細につきましては、2月の杉山センター長の御説明の際に御説明いただけると思っておりますけれども、世界最先端の研究者を糾合するという形で研究を行いまして、この3つのグループそれぞれに革新的な研究成果というものを創出してきてございます。
 例えば、汎用グループの杉山センター長の下で行っている研究開発でありますと、弱教師付きの学習の理論とアルゴリズムという形で、弱教師付きの学習理論というものを世界に先駆けて確立したり、目的グループの上田先生のグループでは、例えば、データ活用による地震シミュレーションの加速という形で、超大規模な並列計算機上においても、地震シミュレーションという大きな計算資源が必要になるようなものを、人工知能も使いながら効率的に行うような研究開発をしてきてございます。次のページを御覧ください。
 AIPセンターの成果について、今度は定量的にまとめた資料になってございます。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2022年度、2021年度と成果、例えば口頭発表の数が、がくっと減っているといった事実はございますけれども、毎年継続的に成果を創出していると言えると考えております。特に一番下の主要な国際会議の採択数におきましては、AIPセンター設置当時は、こういったNeurIPSといったような主要な国際学会における日本の発表はほとんどなかったと伺っておりますけれども、安定的にオーラル発表であったり、採択がなされておりまして、日本全体の研究開発というものの底上げに貢献していると言えると思ってございます。
 7ページ目を御覧ください。理研AIPセンターと産業界等との連携についてまとめた資料になってございます。理研AIPセンターは日本のAI研究のハブというところも担っていくということになってございまして、外部との共同研究についても積極的に行ってございます。例えば、企業との共同研究でありましたら、現在59社の企業の皆様と共同研究を実施してございます。また、金融機関、大学等との連携もしておりまして、サブ拠点という形でAIPセンターの拠点を置かせていただいているような大学等もありますけれども、79か所との共同研究を現在実施してございます。
 また、人材育成の関係も多く含まれておりますけれども、海外との連携という形では、海外からのインターンを受け入れるということをしておりまして、AIPセンターの中での多様性というものでも、研究のアクティビティーの活性化に貢献していると考えてございます。次のページを御覧ください。
 こちらから、情報委員会における中間評価の結果について御説明したいと思ってございます。情報委員会では、令和2年の3月から6月にかけまして、理研AIPセンターの中間評価を実施していただいております。中間評価におきましては、今後の研究開発の方向性として、水色の四角で囲んでいるような評価をいただいてございます。
 概略について御説明いたしますと、中間評価では継続、中止、そういった判断もするということになりますので、まず初めに継続をするという御評価をいただいているということになってございます。その上で、AI戦略の下、我が国としてのAI分野の基盤技術というものを国際的に牽引する研究開発の必要性が一層高まっている中で、このAIPは、5年までの立ち上げ期間の実績というものを高く評価していただいているというところでございます。今後、理研AIPセンターが次のフェーズに早期に移行し、世界のAI研究をリードする存在に発展するということを強く期待するということを御評価いただいているところでございます。
 また、AIをはじめとする情報科学技術分野の変化が激しい中で、その将来ビジョンや戦略を明確に示しつつも、柔軟に見直しを行うということが極めて重要であり、AIをはじめとする情報科学技術の活用や、更なる社会への発展への社会的要請というものが世界的にも一層高まるという中で、しっかりと取組を進めるようにと言われてございます。
 また、この中間評価によって、こういった評価をいただく中で、評価の審議におきましても様々な視点で助言をいただいておりまして、今後の取組への課題、期待も、この評価結果の中でまとめられてございます。
 主に5つの観点が挙げられておりまして、これらに対する対応状況につきまして、理研AIPセンターのほうから聞き取った結果を次のページ以降にまとめてございます。
 まず初めに、新たなビジョンや戦略の構築、明確化への期待ということで、9、10、11枚で大きくいただいてございます。例えばなんですが、理研AIPセンターというものが最終的にどのようなアウトプット、アウトカムを目指すのかというような戦略を明確化して、AI研究で国全体を牽引し、世界をリードするような、そういった存在感を発揮することが期待されるというような助言、アドバイスをいただいてございまして、この対応として、アウトプット、アウトカム目標をしっかりと定めたり、実行に至る戦略を理研AIPの中で定めたりしまして、今、研究開発をしていると伺ってございます。
 また、次の10ページ目のところで、世界に向けてどのように日本のアイデンティティーを発揮するのか明確にすることが求められているというところや、アイデンティティーの明確化の探求と、AI研究において国際的に突出した強い領域の創出、世界をリードするといったところにおきましては、例えばですけれども、日本では、先ほどの福島フェローのお話にもありましたとおり、信頼されるAIといったものが、AI戦略の2019等におきまして、日本においての重要なAI技術分野として政策的に掲げられて、研究開発が推進されてございます。この技術分野、AIPの強みであります汎用グループが行っておりますAIの原理解明が関連深い分野となっておりまして、こういったところで国際的な日本の強みの創出に貢献しているということをAIPからも伺っているところでございます。
 次、12ページを御覧ください。日本全体のAI研究中核拠点としての発展への期待について簡単に御説明したいと思ってございます。こちらにつきましても、理研AIPセンターは国のAI研究のハブという形で日本のAI研究をリードしていくというのがミッションとしてありますけれども、こういったものの方策の明確化や、社会各界への積極的な発信についてしっかりとしたほうがよいのではないか、期待するというコメントをいただいてございます。
 こちらにつきましては、例えばなんですけれども、AIPセンター、研究開発活動で得られた最新の知見等について、大学や企業と連携した研究に反映したりするということも行っております。それに加えまして、NICT様、産総研様といった国のAI研究の中核というふうにAI戦略で定められている3つの機関を中心にして、AI Japanといったプラットフォームを構築しておりまして、こういった活動を通じてAI研究の成果の発信や、そういったものも行うということをしてございます。
 また、大学へのサブ拠点の設置を通じまして、各大学におけるAI研究の底上げといったところにも貢献しておりまして、日本全体のAI研究の中核拠点としての役割というものを果たしていく活動をしっかりしているというところでございます。
 長くなりますので、そのほかにつきましては、またお時間のあるときに御覧いただければと思います。
 資料4-1にお戻りください。本日御議論いただきたいと考えております理研AIPセンターの今度の在り方に関する検討における論点につきまして、今、事務局で考えている案につきまして御説明させていただきます。
 2.のところで、まず初めに、現在のAIPセンターの顕著な成果というものを継承しつつ、新しい今後のAIPセンターにおきましても、AIが抱える新たな課題というものに対応すべきではないかといった点がまず挙げられると書かせていただいております。また、新しい技術潮流が生まれた際に機動的に対応できるような枠組みをつくることを検討すべきではないか。また、今のAIPセンターの個々のチームリーダーの研究を尊重してトップの研究成果を発信しておりますけれども、社会の動向を踏まえて、ミッションというものを発展的に見直すとともに、AIPセンターとしての研究目標をさらに明確にすべきではないのかといった点。また、これまでの成果を踏まえて、AIPセンターが築き上げた国のAI研究のハブとしての機能や、世界からのビジビリティーというものを維持するための役割を、令和7年度で今の理研AIPセンター、期間としては終了しますが、令和8年度以降も引き続き理研が果たすべきではないのかといった点。またその場合、理研に設置されていることによる、理研全体への研究開発への波及効果を創出するために、理研内でもAI研究の総括的な位置づけというものを付与し、各センターとの連携や助言などを可能とするというような体制とすべきではないか。また、AIPセンターの事業期間につきまして、理研の中長期目標期間を考慮しつつ、本当は検討すべきではないかといった論点を、現在、事務局のほうで挙げさせていただいてございます。
 今後のスケジュールでございますが、本日はこちらの論点につきまして御議論いただいた後、2月26日に次回の情報委員会開催予定となってございますが、こちらにおきまして、理研よりこれまでの成果及びAIPセンターの今後の在り方について本日の議論を踏まえた上で、今、理研AIPとして何を考えているのかというものを御説明いただいた上で、AIPセンターの今後の在り方について、情報委員会として御議論いただきたいと考えてございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございました。
 それでは、検討における論点等を中心といたしまして、ただいまの御説明に関して御意見、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。オンラインで御参加の先生方も挙手をいただけましたら、こちらで指名させていただきます。よろしくお願いします。
 若目田委員、よろしくお願いします。
【若目田委員】  今日は論点に対する意見ということですので、今後の在り方についてはまた次回という形にいたしますが、次回御説明いただく部分に、成果とか何かそういうよくできた部分というのは当然、今伺ったとおりなんですけれども、今後いろいろ掲げた目標に対して何らかの課題があれば、そういう課題に関しても御説明いただければと思います。要は3チームあるといいますけど、そういったところに対する自己採点も含めて、何らかさらに改善すべき点があるとしたらこういうところがあったのではないかというような課題も伺えると参考になります。
 以上です。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。小林委員、お願いいたします。
【小林委員】  コメントというよりは確認なんですが、ここに何とかすべきではないかと書いてございますけど、現状ではこれはそうなっていないという理解でしょうか。
【嶋崎参事官】  両方あると思います。ある程度できていると評価できる部分もあると思いますけれども、さらに今のAIをはじめとするいろんな情報を考えたときに、今ここに書かせていただいているような論点についてはさらに強化をすべきではないかと思っております。必ずしも今、全くAIPセンターができていないので、ここをやるようにするべきではないかということだけではなくて、こういった観点がより強く求められるという状況ではないかという認識で書かせていただいておりますが、現実できている、できてないということについては、いろんな立場でいろんな御意見あると思いますので、そこはそれぞれの御認識も踏まえて、建設的な御議論、御指摘をいただければと思っております。
 以上でございます。
【小林委員】  そうしますと、次回はこういったところも含めて御説明いただけるというところになるのでしょうか。それとも、この辺はまた別に示されるのでしょうか。
【嶋崎参事官】  理研の思いが次は語られることになってございますので、それぞれの委員の各位におかれましては、これはあくまで事務局の1つの提案でございますので、こういうふうにすべきだということがあれば今日でも出していただいて、最終的な委員会としての取りまとめの中にうまく取り入れられるように議論を深めていただきたいと考えてございます。
【小林委員】  分かりました。ありがとうございます。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
【石田委員】  九州大学の石田です。先ほどの資料で、AIPの5つの重点テーマには人材育成の話が入っていたんですけれども、この論点のほうにはそれが入っていないと思い、それも入れたほうがいいのかなと思いました。
 また、個人的に少し興味がございますのが、AIの研究をする層を厚くするという方向に行くのか、それとも非常に少数精鋭でも優秀な方々の能力を伸ばす、育成をするという形になるのか、その辺りをどういう方向性で考えられているのかお聞きしてみたいところでございます。
 以上です。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょうか。盛合先生、よろしくお願いいたします。
【盛合委員】  ありがとうございます。AIPセンターは、非常に日本のAIの研究者を集めて1つの大きな拠点として機能してきて大きな成果を上げているということで、10年を待たずに次の方向性について考えるということはすごく重要だと思っております。
 また、ほとんどの職員が有期雇用という形で10年近く過ごしているということもありまして、そういう日本のAIの研究者をどう処遇するかというところも含めて、世界の情勢と比べると非常に、10年前といいますか、このAIPセンターが立ち上がった頃と比較してもまた少し難しい面も出てきているかと思うんですけれども、今ここまでAIPセンターを運営してきて、運営上の課題となっているところも併せて次回お話しいただけるといいかなと思っています。そういうことを踏まえて、次の体制をどういうふうにするのが望ましいのかというところの有益な議論ができたらなと思っております。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょうか。
 川添先生、どうぞ。
【川添委員】  ありがとうございます。
 理研さんだからこそできることだというふうに思うんですけれども、やはりAIの研究を進める上で、従来のAIというものだけに特化した研究領域からさらに、いわゆるコンピュータ基盤、スーパーコンピュータもそうですし、GPUもそうかもしれません。やはりハードウエアも含めて今後一体となって研究していかないと、そこは1つの壁があって、これはこれ、あれはあれというような形の研究はもはや済まない時代になっていると思います。そこの部分をぜひ一体化して進めていただきたいというふうに思うので、それも含めて1つの論点していただければいいなと思います。よろしくお願いします。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、天野先生、湊先生、挙手いただいておりますので、この順番でよろしくお願いいたします。
【天野委員】  ありがとうございます。今のお話とほぼ似た話で、結局AIというものに集中して議論する、研究するというよりは、もうこれからはAI拡散していろんな領域と組み合わさっていくということが重要だと思います。
 あとそれから、今10年目を迎えて、研究者の待遇、雇い止め等の問題が起きると非常に問題になると思われますので、この点は十分配慮して、何らかの方法で優秀な方に継続して安定して研究いただけるような体制をつくるべきだと思います。
 以上です。
【相澤主査】  ありがとうございました。
 湊委員、よろしくお願いいたします。
【湊委員】  もし10年前にAIPがなかったら今頃どうなっていたんだろうというぐらい、あってよかったなとは思いますので、継続というのは当然かと思いますが、今回、10年プログラムだったのが、この先何年やるのかということがここに何も書かれてないような気がするので、中長期目標期間を考慮しつつ検討すべきではないかというところにそれも含めて論点となっているという理解でよろしいでしょうか。
【廣瀬参事官補佐】  事務局でございます。御指摘のとおり、一番下の論点、理研の中長期目標の期間を考慮しつつ検討すべきというところに、先生御指摘の部分は含まれているというふうに事務局としては考えてございます。
【湊委員】  分かりました。10年やってきて、さらに例えばもう10年とかとなるのか、5年になるのか、また、センター長がずっと、例えば20年やるのかとか、そういったところも関係してくるのではないかと思い、気になりました。
 以上です。
【嶋崎参事官】  その点もいろんなバリエーションがあると思っておりまして、ぶつ切りにして何年間、何年間と切って継続をしていくような組織体も中には存在をしますし、先ほどから、理研の中で一体としてという御議論もありますので、ではそういう形として、今の理研の本体と一体としてやる場合はどんなケースがあるのかとか、特に結論を絞って議論していただくつもりはありませんけれども、どういう形がAI、この目的を達成するのに最も効率的で効果的な形態かということも併せて御議論をいただければということで、特にどうすべきということは論点で書かせていただいておりますけれども、いろんな可能性があるということを認識させていただいているということでございます。
【相澤主査】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、青木先生お願いします。
【青木委員】  余計なお世話だと思うんですけど、文科省がおられるので、要は先ほどの盛合先生がおっしゃっていたことそのもので、運営のところはやはり聞いておいて、ファンディングのスキームを変えるということまで含めておそらくお考えになると思うので、そこの材料をしっかり、ある種安定的にするのかどうなのかというところも含めて皆さんに見ていただくといいのではないかと思います。
 以上です。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 ほかにもいろいろ御意見いただきたいところではございますが、そろそろ時間も迫っておりますので、ここで一旦終了いたします。AIPセンターの今後の在り方については、AIの研究推進の上で非常に重要な事案でございますので、今後、御案内のとおり、事務局に追加の御意見ありましたらぜひお寄せいただければと存じます。
 また、本日、この検討における論点として挙げていただいた御意見については、理研の2月26日のプレゼンの際にも御配慮をいただけるようにお伝えいただくということで、よろしくお願いいたします。
 では続きまして、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムの中間評価について御審議をいただきます。
 中間評価の審議に当たっては、令和5年度情報科学技術分野における研究評価計画についてに基づき、利害関係者につきましては中間評価の審議には参加できないこととなっています。当方で把握している利害関係者はおりませんが、利害関係者に当たると自ら判断する委員の方がいらっしゃいましたら、お申し出をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から、資料5に基づき、御説明をよろしくお願いします。
【谷本参事官補佐】  
事務局でございます。資料5に基づきまして、御説明いたします。
 資料を2枚おめくりいただきまして、3ページ目を御覧いただければと思います。このページは、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラムの概要をまとめたページになってございます。この事業は、「富岳」の成果創出の早期化・最大化を目的として実施しておりまして、課題の推進費と、もう一つ「富岳」の計算資源、この2つを配分することで支援を行っている事業でございます。
 真ん中のやや下に体制図がありますけれども、1から4まで4つの領域において課題を採択しておりまして、この4つの領域を束ねるような形で領域総括を設置しつつ、事業を推進しているところでございます。
 このページの一番下に採択課題数を記載しておりますけれども、令和2年に29課題、令和3年に3課題、令和5年に17課題をそれぞれ採択し、事業を推進しているところでございます。 次のページを御覧いただければと思います。このページは、成果創出加速プログラムに関するスケジュールを幅広に記載しているものでございまして、一番下の行が成果創出加速プログラムに関するものでございます。令和元年度に事前評価を行った上で、令和2年度から事業を開始しておりまして、今年度が中間評価の年に当たるという状況でございます。
 次のページからは、しばらく事前評価の際の記載を基にしながら、適宜時点更新を行いながら事業の内容を説明しているページが続きますので説明を割愛させていただきまして、12ページ目に飛んでいただければと思います。
 12ページ目からが中間評価表の案となっておりますので、こちらから先、内容をかいつまんで御説明させていただければと思います。
 ここの12ページ目には、主に研究開発プランなどとの関係についてまとめてあるところでして、真ん中の表のところにありますとおり、この事業は情報分野研究開発プログラムの中で、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築の中に位置づけられている事業でございます。
 次の13ページ目を御覧いただければと思います。このページは課題の進捗状況についてまとめて記載をしているところでございまして、課題のこれまでの採択の実績ですとか、領域総括の設置などについて記載をしております。
 下から2つ目のポツでございますけれども、この事業では、これまで累計で39件の研究開発課題を実施しております。令和2年度採択と令和3年度採択の合計22課題のうち、自己評価ではありますが、20課題が進捗率80%以上という自己評価をしているところでございます。また、令和2年度に採択した課題は昨年の3月に事業が終了しておりますけれども、事業終了時の外部有識者による評価においては、全19課題のうち、期待以上の成果があった課題が4課題、期待どおりの成果があった課題が14課題という評価をいただいているところでございます。
 次のページを御覧いただければと思います。このページから先は、「(2)各観点の再評価」として、必要性、有効性、効率性の3点から再評価を行っているところでございます。
 まず、必要性についてでございます。このページの下から2ポツのところでは、第6期の科学技術・イノベーション基本計画にて、データ駆動型研究等の高付加価値な研究の加速が目標として掲げられていることに触れつつ、最後のポツのところですけれども、この事業においては多くの課題においてシミュレーションとAI・データ科学を融合・連携させた研究開発が実施されていることを記載しております。また、令和5年度に新たに採択した課題については、AI・データ科学を融合・連携させた研究開発課題を積極的に採択している旨を記載してございます。
 次の15ページ目を御覧いただければと思います。このページの真ん中から下からは、有効性について再評価を行っているところでございます。このページの一番下の最後のポツのところですけれども、この事業は、「富岳」での早期の成果創出を目指しており、「富岳」開発段階に行っておりました重点課題・萌芽的課題において実施されていたアプリケーション開発の成果を活用した取組が発展的に実施されているところでございます。
 次のページの冒頭に続くところですけれども、これによりまして、「富岳」の共用開始後間もない段階から、早期の成果創出や社会実装につながる取組がなされているところでございます。重点課題・萌芽的課題と成果創出加速プログラムの令和2年度の採択したものとの関係性を表にまとめているところでございます。
 表の下のポツのところですけれども、この事業では、個別の課題において、行政組織や産業界などとの連携体制の構築も進んでいるところでございます。このページから次のページにかけて具体例を記載しておりますけれども、例えば、内閣官房と連携して新型コロナウイルスの飛沫シミュレーションに関する研究を行っているものですとか、気象庁と連携して線状降水帯の予測精度向上に取り組んでいるものですとか、そういった例を記載してございます。
 次の17ページ目の真ん中のポツですけれども、本事業などを通じて開発されたアプリケーションを用いた研究が、スパコンの関係で国際的な賞であるゴードン・ベル賞のCOVID-19研究特別賞を受賞しているといった実績ですとか、そのほか地震関係の研究について令和4年の11月にゴードン・ベル賞のファイナリストに選出されるといったような、国際的な評価もなされているところでございます。
 また、次のポツのところでは、産学官で構成されるコンソーシアムを通じて社会実装に向けた取組が進展している旨を記載しておりまして、その具体例を表にまとめているところでございます。
 次の18ページ目に進んでいただければと思います。表の下のポツのところですけれども、令和5年度に採択した課題については、分野内や分野間の連携ですとか、また、若手・中堅研究者を中心とした新たな機軸による成果創出を目指す課題を新たに採択しているといった状況でございます。
 このページの下部からは、効率性について再評価を行った記載をしているところでして、19ページ目を御覧いただければと思います。
 このページ、上から2つ目のポツのところでは、外部有識者から成るワーキンググループにおいて、研究開発課題の新規採択ですとか、年度ごとの進捗状況や成果などの評価を行っている旨を記載しているところです。
 次のポツですけれども、研究領域の枠を超えて、全体を俯瞰して総括する領域総括を設置している旨を記載しています。領域総括の設置によりまして、事業全体の方向性ですとか、領域を超えた連携などについて必要な検討や助言を行っていただいておりまして、推進方針に関する意思決定プロセスの加速化につながっているところでございます。領域総括を設置して検討を行っている具体例を文中に書いておりまして、例えば、分野間の交流を促成する研究交流会の開催について、実施に向けた指導や助言などをいただいているところでございます。
 次の20ページ目を御覧いただければと思います。このページでは、(3)のところで、科学技術・イノベーション基本計画等の上位施策への貢献状況について記載しています。1段落目の後半のところ、「富岳」の開発段階において実施されたアプリケーション開発の成果を活用した取組が発展的に実施されていると。それとともに、最先端の科学的・社会的成果の創出が進められており、社会課題の解決等に資する取組がなされているという旨を記載しています。
 次の段落ですけれども、この事業では、大規模シミュレーションとAI・データ科学を融合・連携させた研究開発課題を積極的に採択・実施をしておりまして、第6期科学技術・イノベーション基本計画で掲げられているデータ駆動型研究等の高付加価値な研究の加速に資する取組がなされているということを記載してございます。
 「(4)事前評価結果時の指摘事項とその対応状況」についてですけれども、事前評価では2点御指摘をいただいておりまして、個別の課題によるデータマネジメントポリシーについては、内閣府が作成をするガイドラインに沿ったものにするということと、2つ目のところでは、「富岳」により初めて可能となる成果が創出される課題を選定すること、以上2つの御指摘をいただいています。対応状況として、2点それぞれ記載をしてございます。
 まず、1点目については、実施機関においてガイドラインに沿ったデータマネジメントプランを作成することとした上で、事業終了課題における評価の際に、各課題のデータマネジメントに係る取組状況を確認しているところでございます。また、課題の選定については、「富岳」により初めて可能となる計算・データ解析であることを必須要件としているところです。
 以上の記載を基に「(5)今後の研究開発の方向性」のところですけれども、今回は継続するという形で評価案を作成してございます。
 理由の欄ですけれども、目標の達成状況及び運営方法は適切であること、この事業を継続することで、社会的・科学的課題の解決に資する成果の創出及び社会実装に向けた取組のさらなる進展、シミュレーションとAI・データ科学を融合・連携させた先導的なAI・データ駆動型研究の推進等が期待されるためという記載をしてございます。
 最後、「(6)その他」ですけれども、引き続き、追加等の発信を積極的に行うことですとか、ノウハウや知見の展開など多分野連携を一層促進すること、若手研究者の積極的な参画を促進することなどを記載しておるところでございます。
 評価票案の御説明は以上でございます。本日は時間の関係もありまして、この評価票案への御意見は書面にていただければと考えてございます。いただいた御意見を踏まえた上で、今後、研究計画・評価分科会へお諮りすることを予定してございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございました。
 ただいま事務局から御説明がありましたとおり、本日の委員会後から、書面調査という形で審議を開始いたします。この場ではそれも踏まえまして、御意見、御質問等ありましたら若干お受けする時間があるという状況でございますが、いかがでしょうか。
 文章自体につきましては、少し時間をとって精読いただきまして、会議後、2月1日締切りで御意見を賜るという形になります。もし、この場で御指摘等ありましたら、よろしくお願いいたします。美濃委員、どうぞ。
【美濃委員】  単なる質問ですけれど、18ページのところにデータリポジトリを通して公開したと書いてあるんですが、これは全ての課題がそうしたのでしょうか。もう一つは、データリポジトリ入れるというのは簡単で、どれだけ使われたかが成果だと思いますが、そのようなデータはないのでしょうか。その辺りが書いてあれば、強化されるのではないかなと思います。
【谷本参事官補佐】  御質問ありがとうございます。後半の、公開されていたデータがどこまで活用されたかについては、申し訳ございませんがデータがない状況でございまして、前半の御質問について、令和2年度に採択した課題が終了した段階で、どういったデータの公表だとかを行っているかを確認しているところでございます。
 19課題あるんですけれども、予定も含めまして、全ての課題は何らかの形でデータの公開は行うというような回答をいただいているところでございます。
 簡単ですが、以上でございます。
【相澤主査】  ありがとうございます。小林委員、お願いします。
【小林委員】  この事業自体は大変すばらしい結果になっていると思っておりますし、特に若手の方が活躍して新しいアプリケーション開発の在り方などを探っているという意味では非常にいい取組だと思うんですけれど、その一方で、HPCIコンソーシアムの中でよく聞こえる議論としては、課題が小さくなったとか、やはり大きな取組ができなくなったとか、そういうようなことも意見としてアプリの方はよくおっしゃるので、その辺をコンソーシアムなどでも少し御説明いただいて、理解を得たほうがよろしいかなというふうに思いました。単なるコメントです。
【相澤主査】  ありがとうございます。
 では、天野先生、よろしくお願いいたします。
【天野委員】  「富岳」でなければできないというのは、ちょっときつすぎるのではないかなというふうに思います。これから「富岳」の性能も相対的には落ちてきますし、「富岳」でなければできないと言われると非常に範囲を狭めることになりますので、「富岳」を有効に活用できるとか、あるいは「富岳」があることによって非常に有効にうまくいくとか、そういった感じで表現をやわらげていただいたほうがいいのではないかというのが私の意見です。
 以上です。
【相澤主査】  重要な御指摘をありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。ありがとうございます。
 会議後、書面調査という形で2月1日木曜日までに引き続き御意見をいただきまして、取りまとめを事務局でいたしまして、修正案の作成という運びでよろしくお願いいたします。
 また、修正後の扱いについてですが、皆様の御賛同がいただけましたら主査預かりとして御一任いただければと思います。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。では、そのような形で運ばせていただきます。
 それでは、最後に、議題(6)その他としまして、事務局から資料6-1、6-2、参考資料3に基づき御説明よろしくお願いします。
【植田参事官補佐】  事務局でございます。
 初めに、参考資料3としてお配りしております当委員会の運営規則を御覧ください。この第2条に下部組織の設置についての記載がございまして、委員会は、特定の事項を機動的に調査するため、下部組織を設置できることですとか、その名称を委員会で定めること、当該下部組織に属する委員等は委員会主査が指名することなどが定められております。こちらに基づきまして、下部組織の立ち上げに関し、お諮りをさせていただければと思います。
 資料6-2を御覧ください。情報委員会では、科学技術及び学術の振興のために必要な方策等について幅広い観点から御審議をいただいているところですが、昨今の情報科学技術分野では急速な技術革新が進んでおりまして、最先端の技術等についてはさらに機動的に動向を調査するような体制が必要ではないかと思われる状況がございます。
 情報科学技術分野というと範囲が広くなってしまうところ、戦略的に重要と思われる研究開発領域等について本委員会で御議論いただきまして、それらを踏まえて、当該下部組織において、大学等の研究機関や民間企業の方などに幅広く御意見を伺った上で、JST様のCRESTやさきがけといった戦略的創造研究推進事業につながる文科省の戦略目標など、国が取り組むべき内容についても御提言をいただければというふうに考えております。
 資料6-1をお願いいたします。先ほどの資料で申し上げたとおり、情報科学技術分野において戦略的に重要な研究開発領域の動向及びそれらを踏まえて国が講ずべき取組等に係る事項について御審議をいただく下部組織、名称は試案として、情報科学技術分野における戦略的重要研究開発領域に関する検討会とさせていただいておりますけれども、こちらの設置の是非ですとか趣旨及びその調査事項、名称について、御意見を賜れればというふうに考えております。
 駆け足での御説明となりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。
【相澤主査】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、以上の事務局の説明に対して、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、特に皆様から御異論がないということでございましたが、下部組織の設置については、ただいま御説明がありましたとおり進めさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
 では、そのような形で原案どおり決定をいたします。
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。この場で言い足りなかったこと、追加の御意見などがありましたら、会議の後に事務局までメールで御意見をいただければと思います。
 では、最後に事務局から、事務連絡があればお願いします。
【植田参事官補佐】  事務局でございます。
 冒頭、事務局側の手違いによりまして、天野先生、星野先生、湊先生の御入室が遅れてしまいました。大変申し訳ございませんでした。
 先ほど相澤主査からございましたように、本日の議題について、追加の御意見を来週の2月1日の木曜日18時までお待ちしておりますので、そちらもぜひ御活用いただければと存じます。
 議題(5)で御審議をいただきました「富岳」の成果創出加速プログラムの評価票案につきましては、会議終了後改めて書面調査の御案内をさせていただきますので、同じく2月1日木曜日の18時までに御意見をいただけますと幸いです。いただいた御意見につきましては、相澤先生と御相談させていただき、資料に適切に反映した上で、研究計画・評価分科会のほうに御報告をさせていただければと思います。
 次回の情報委員会につきましては、2月26日月曜日、16時から開催予定となっております。あわせまして、2月2日金曜日に開催予定の科学技術・学術審議会学術分科会におきまして、参考資料3としてお配りしております「オープンサイエンスの推進について(一次まとめ)」について、事務局から御報告をさせていただければというふうに考えております。
 事務局からは以上でございます。ありがとうございました。
【相澤主査】  それでは、これで閉会とさせていただきます。皆様、御審議いただきどうもありがとうございました。次回は来月になりますが、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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研究振興局参事官(情報担当)付

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