基礎研究振興部会(第13回) 議事録

1.日時

令和6年1月17日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 令和6年度政府予算案及び令和5年度補正予算について(基礎科学関係)
  2. 「2030年に向けた数理科学の展開」に関する実施状況について

4.出席者

委員

観山部会長、佐伯部会長代理、有馬委員、上杉委員、小泉委員、齊藤委員、品田委員、城山委員、辻委員、長谷山委員、前田委員、美濃島委員

文部科学省

研究振興局長 塩見みづ枝、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当) 奥野真、研究振興局基礎・基盤研究課長 西山崇志、研究振興局学術研究推進課企画室長 松本昌三、科学技術・学術政策局人材政策課 課長補佐 滝沢翔平、研究振興局参事官(情報担当)参事官補佐 廣瀬麻野、研究振興局基礎・基盤研究課 課長補佐 春田諒、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 葛谷暢重

オブザーバー

東北大学大学院理学研究科数学専攻教授 水藤寛、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 所長 梶原健司

5.議事録

【観山部会長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第13回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
 本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき、公開の扱いといたしますので、御承知おきください。
 まず、事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。
 
【葛谷推進官】  本部の事務局を担当しております。文部科学省基礎・基盤研究課の葛谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の出席状況につきましては、現時点で13名中12名の委員の方に御出席をいただいております。合田委員におかれましては、本日御欠席の御連絡をいただいているところでございます。
 本日は、議題(2)の関係で、東北大学大学院理学研究科数学専攻教授、水藤寛様、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所所長、梶原健司様にも御出席いただいております。
 続きましては配付資料を確認いたします。資料は、議事次第の配付資料一覧のとおり、事前にメールにて送付しておりますが、欠落等ございましたら、画面越しに手を挙げ、お申出いただければと思います。
 資料の欠落等はございませんでしょうか。
 御確認ありがとうございました。
 続きまして、本日の議題について御説明いたします。事務局の西山課長よりお願いいたします。
 
【西山課長】  新年1回目の会議でございます。どうぞよろしくお願いいたします。基礎・基盤研究課長の西山です。
 本日の基礎研究振興部会の議題でございますが、議事次第のほうを御覧いただきたいと思います。2つございます。1つ目は、令和6年度の政府予算案及び令和5年度の補正予算についてでございます。令和5年度の補正予算については、既に国会のほうで可決・成立をしてございます。令和6年度の政府予算案については、12月に政府予算案が閣議決定をされているところでございます。今後国会審議等が行われるということでございまして、本日は、これらについて、特に基礎研究・基礎科学関係について、予算案及び補正予算の説明をさせていただきたいというのが1つ目でございます。
 2つ目は、議題の(2)にございますとおり、2030年に向けた数理科学の展開に関する実施状況についてでございます。こちらは、2022年7月、1年半前になりますが、この基礎研究振興部会でも御議論をいただきまして、その上で、2030年に向けた数理科学の展開という報告を文部科学省のほうで策定をしてございます。
 本日は、この策定した報告について、文部科学省及び各機関、主な研究機関における実施状況等についてフォローアップをさせていただくということで議題としてございます。
 以上でございます。
 
【葛谷推進官】  ありがとうございました。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 まず議題1、「令和6年度政府予算案及び令和5年度補正予算について(基礎科学関係)」ですけれども、資料の1-1から資料の1-5について文部科学省から御発表をお願いいたします。説明が終わりしましたら、委員の皆さんより御意見を頂戴できればと思っております。資料の1-1から1-5が終わってから御質問や御意見いただきたいと思います。
 まずは資料の1-1から説明をお願いいたします。
 
【春田課長補佐】  観山部会長、ありがとうございます。文部科学省基礎・基盤研究課課長補佐の春田でございます。私のほうから資料1-1に基づきまして、文部科学省生成AIの研究開発について、令和6年度予算案の内容を御説明いたします。
 ページをおめくりいただきまして、2ページ目でございますが、こちらについて、8月10日の第12回の部会にて概算要求時点の内容は御説明を差し上げているものでございます。生成AIの開発力強化と人材育成の推進という形で、文部科学省としては3つの施策を今後推進することを考えているところでございます。
 1つ目が、一番左のAI for Societyで、生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発拠点形成を進めていく形になってございます。
 2つ目が、真ん中のAI for Scienceでございまして、科学研究向けAI基盤モデルの開発・共用という形で、理研を中核として基盤モデルを活用した科学研究向けAI基盤モデルの開発を進めていく予定でございます。
 3つ目が、一番右のCross AI Talent Developmentでございまして、国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成という形で、いわゆるAIに関わる人材を育成していくことを考えているところでございます。
 これらの3つの施策を合わせまして、令和6年度予算案としては24億円を、令和5年度補正予算につきましては377億円を計上しているところでございまして、令和5年度補正予算と令和6年度予算を合わせますと大体400億円強の予算という形になっているところでございます。
 それでは、真ん中のAI for Scienceにつきましては、基礎・基盤研究課のほうで担当してございますので、詳細を次ページ以降で御説明いたします。
 3ページ目、お願いします。こちらにつきましても、8月10日の第12回の部会で御説明を差し上げている内容ではございますが、AI for Scienceに係る取組として、科学研究向けAI基盤モデルの開発・共用というものを、理化学研究所を中核として今後進めていく予定でございます。
 こちらについては、予算内容といたしましては、右肩でございますが、令和6年度予算案として17億円を、令和5年度補正予算として122億円を計上しているところでございます。
 内容としては、青背景の左上の部分でございますが、特定科学分野に強みを有する研究機関と連携体制を構築し、科学研究データを追加学習等することで、ドメイン指向の科学研究向けAI基盤モデルを開発することが事業の目的になってございます。
 さらには開発した科学基盤モデルの利用を産学に広く開放することで、多様な分野における科学研究の革新、科学研究サイクルの飛躍的加速と科学研究の探索空間の拡大を狙ってまいります。
 特に、ドメインといたしましては、「良質なデータ」のところの下の部分でございますが、生命・医科学分野、材料・物性科学分野、まずこの2つのドメインを特に注力していくという形で考えているところでございます。
 では、次のページ以降でTRIP-AGISの詳細について御説明いたします。まず、TRIP-AGISでございますが、事業の内容としては、3つの柱になってございまして、1つ目が共通基盤技術、2つ目が特定科学分野のAI基盤モデルの開発・共用、3つ目が革新的な計算基盤の開拓という形になってございます。
 1つ目の柱の科学研究向けAI基盤モデル開発・共用の共通基盤技術でございますが、こちらにつきましては、いわゆる科学基盤モデル開発に必要な共通基盤の技術を開発していくという形になっております。具体には2つございまして、1つ目が、言語、画像以外の科学データなど、多種多様なデータ、マルチモーダルなデータの学習・生成が可能な基盤技術を開発するとともに、2つ目が、学習に必要な大量のデータ創出と、モデルが生成した実験計画の自動実行を両立できる実験の自動化・高速化技術を進めていくという形になってございます。
 さらにこの共通基盤技術を基にしながら、特定科学分野の科学基盤モデルの開発というものを進めていく予定でございまして、特に2つの分野、生命・医科学分野と材料・物性科学分野における科学基盤モデルの開発を進めていく予定でございます。
 科学基盤モデルの開発に関しましては、計算資源というものが大変重要という形になってございまして、科学基盤モデルの開発・共用のための計算環境についても整備・運用するとともに、今後の生成AIをはじめとするAI技術の発展を見据えた計算資源の高度化に資するような研究開発も行っていく予定でございます。
 次、5ページ目でございますが、共通基盤技術の詳細について御説明いたします。先ほど申し上げたとおり、2つの項目になってございまして、1つ目が、ピンク色の文字で書いてありますが、基盤モデルに多様な科学研究データを学習・生成させる手法の開発を進めていく予定でございます。こちらについては、学術文献のいわゆる文書・図表等の知識表現のみならず、科学研究データ、数値情報や配列データなどのいわゆる生データについても学習可能な技術開発を行っていく予定です。
 2つ目が、開発した科学基盤モデルを用いて、ハイスループットで実験を行っていくための自動実験系の開発も併せて行う予定でございます。
 こちら、右下に写真がございますが、例えば双腕型の自動実験ロボットなどの開発を進めることで、自動で実験ができるような環境構築を行っていくといったことを考えているところでございます。
 6ページ目、7ページ目で特定科学分野の研究開発について御説明いたします。
 まず、生命・医科学分野でございますが、こちらについては、大きく3つに分けた個別のモデルを作成し、それを統合することで全体として1つの科学基盤モデルをつくるという形になってございます。1つが分子レベル創薬モデル、2つ目が細胞レベル応答モデル、3つ目が個体レベル行動・特性モデルです。
 1つ目の分子レベル創薬モデルにつきましては、例えばたんぱく質の構造予測でありますとか、化合物の結合サイクルの予測、そういったものができるようなモデルを構築することを考えているところでございます。
 2つ目の細胞レベル応答モデルでございますが、これは細胞に刺激を与えたときにどういった応答が表れるであろうかといったものを予測するようなモデルを開発することを考えているところでございます。
 3つ目が個体レベルの行動予測モデルでございますが、こちらにつきましては、いわゆる遺伝子の違いが個体レベルでの行動・特性にどういうふうに表れてくるかといったものを予測するようなモデルを開発することを考えているところでございます。
 これら3つのモデルを最終的には統合し、生命・医科学分野における科学基盤モデルといったものを開発することを考えております。
 続いて、7ページ目でございますが、材料・物性科学分野につきましては、この目標のところに書いてありますとおり、目指す材料機能を実現するための候補物質と合成法の提案ができるような科学基盤モデルを構築することを考えているところでございます。
 具体的には、文献・実験データ、シミュレーション等による計算データというものを基盤モデルに学習させまして、所要の物性を持つ材料を提案、及びその合成法を予測するような科学基盤モデルを開発することを考えているところでございます。
 文献情報としては、物質・材料作製方法に関する文献情報を、さらには、新規の実験データ、計算物理によるシミュレーションデータなども併せ込みまして基盤モデルを開発していくというところで現在検討を進めているところでございます。
 8ページ目、最後でございますが、科学基盤モデルを作成するためには計算基盤が大変重要という形になってございまして、計算基盤を構築するために、スーパーコンピューターである「富岳」のリソースなども活用しながら、大量の学習を行える計算環境を構築することを現在進めているところでございます。
 さらには今後、生成AIをはじめとするAI技術が進展するに当たって、計算基盤というものがますます重要になってくることを踏まえながら、AI向けの新たな計算機原理の確立に向けた研究開発も進めることを考えているところでございます。
 足早でございますが、資料1-1についての説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 続いて資料1-2の御説明をお願いいたします。
 
【春田課長補佐】  ありがとうございます。引き続き、資料1-2に基づきまして、WPI、世界トップレベル研究拠点プログラムの予算に関して御説明いたします。
 1枚おめくりいただいて、概要の資料でございます。こちら、世界トップレベル研究拠点プログラムにつきましては、令和6年度予算案としては72億円を計上してございまして、対前年度比で申し上げますと、約1億円の増という形になってございます。
 左下に、令和6年度予算案のポイントが記載してございまして、世界トップレベルの研究水準を誇る国際研究拠点の形成を計画的・継続的に推進するとともに、各拠点に関する進捗管理をポストコロナ仕様とするために所要の増をしているといったところでございます。
 こちら、令和6年度については、新規拠点の採択を行わないという形で現在、予算を計上しているところでございます。
 2ページ目が令和5年度における各拠点の主な研究成果を挙げているところでございます。各拠点ともに大変顕著なすばらしい研究成果を上げていただいておりますが、特にその中から2つ、NanoLSIとICReDDの成果について今回御紹介いたします。
 1つ目、NanoLSIの成果でございますが、こちら、左側にございますとおり、記憶の形成・忘却をつかさどるたんぱく質の“はたらく姿”をナノスケールで撮影することに成功してございます。
 具体には、高速原子間力顕微鏡を用いまして、脳の神経細胞に豊富に存在し、記憶の形成や忘却を担うたんぱく質であるカルモジュリン依存性プロテインキナーゼのはたらく姿をナノスケールで撮影することに成功し、これを論文として公表しているところでございます。
 2つ目でございますが、ICReDDの成果、右側でございます。化学反応の創成プラットフォーム「SCAN」を開発、公開したという成果でございます。
 この内容といたしましては、AFIR法から生み出された化学反応経路データを、ソフト等を一切インストールすることなく、ウェブ上でクリックのみで検索、可視化、探索、設計を実現するプラットフォーム、「Searching Chemical Actions and Networks」を開発・公開したといったところでございます。
 AFIR法で得られた化学反応経路はとても複雑で、その解析には高度な専門知識とプログラミング技術が必要でありましたが、このSCANを公開することで、こういった高度な知識やプログラム技術がない人でもAFIR法で創出された反応経路に関する解析が可能となると聞いているところでございます。
 続いて、令和5年度の新規拠点の採択の関係で御説明を続けてまいります。3ページ目をお願いいたします。
 令和5年度の新規公募に関しましては、2つの支援方式を同時に選考してまいりました。1つが、WPI COREという令和5年度から新しく創立した支援方式でございまして、伴走成長方式と言われる支援方式でございます。
 こちらについては、要件のところにその特徴が書いてございまして、5年目までにステージゲート審査を行いステップアップするといったところが特徴的な支援スキームとなってございます。
 具体には、支援拠点のいわゆる形成の当初においては、従来の約7割程度の支援、なので、7割ぐらいの規模の拠点形成を進めていただきながら、途中でステップアップをして、従来規模の拠点形成としていくということで、比較的小規模な大学からの応募、もしくはよりフォーカスしたような研究構想というものを期待してこの支援制度を創立したといったところでございます。
 2つ目の支援スキームが次の4ページ目でございまして、複数のホスト機関で提案するWPIという形になってございます。
 こちらにつきましても、特徴としては、要件のところに書いてありますとおり、特に対象機関のところでございますが、これまで、1つのホスト機関の下で1つの拠点形成を行っていたところでございますが、こちらについては、複数機関、原則2拠点、最大3機関の強固なアライアンス体制によって拠点形成を行っていただくといったところが大きく従来の支援スキームと違うところでございます。
 さらには、複数のホスト機関で提案するWPIに関しましては、海外機関との拠点組織レベルでの研究連携体制の構築というものも求めていまして、強固な国際連携の下、さらには、2つのホスト機関の強みが合わさった、より新しい提案というものを期待してこの支援スキームを創設したといったところでございます。
 今年度の公募に関しましては、予算の関係から、WPI CORE、2拠点、あるいは複数のホスト機関で提案するWPI、1拠点を採択するという形で公募・選考を行ってございまして、5ページ目でございますが、最終的には、WPIプログラム委員会の審査を経まして、東北大学と海洋研究開発機構、この2つの機関をホスト機関とする変動海洋エコシステム高等研究機構(AIMEC)というものが採択されているところでございます。
 拠点長としては須賀先生という方に就いていただくという形になってございまして、こちらの拠点のミッションとしては、上のほうに書かれてございますが、地球システム変動に対する海洋生態系の応答・適応メカニズムの解明と予測を行うことを目指した拠点という形になってございます。
 具体には、目標のところに書いてございますが、近年の地球温暖化により、地球表面の約7割を占める海洋の環境が急激に変化している中、この拠点では、海洋に存在する生態系に特に焦点を当て、学際的なアプローチにより、海洋生態系の維持に必要な連動性・安定性・適応性の理解を深化させ、人間社会に役立つ海洋生態系の変動予測の実現を目指す拠点という形になってございます。
 こちらについては、特徴として、東北大学の基礎学術や高等教育機能とJAMSTECの海洋調査や計算機プラットフォームの機能を強固に連携させた拠点の形成を進めるこという形になってございます。
 さらには、海外機関との強固な連携としては、ハワイ大学と強固な連携を行いまして、グローバルな拠点形成及び研究推進を行っていくという形になってございます。
 最後に、WPIのプログラム委員会のメンバーについて入れ替わりがございましたので、御紹介いたします(6ページ目)。
 WPIのプログラム委員会のメンバーについては、現在15名、うち海外委員が8名という形になっていまして、継続していただいている先生に加え、令和5年度に新たに5名の先生方、海外委員としては3名の先生方に着任をいただいているところでございます。
 1人目が、一番左の小谷先生、2人目が真ん中のKabat博士、3人目が左下のKleiner博士、4人目が左下にございます梶田先生、そして最後がカナダのNemer博士となってございます。
 新たに着任された先生方の御議論の下、今後もWPIプログラムによる世界トップレベルの研究拠点を進めてまいりたいと思います。
 私からの説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 続いて、資料1-3の御説明をお願いいたします。
 
【松本室長】  学術研究推進課企画室の松本と申します。よろしくお願いいたします。
 私のからはまず科学研究費助成事業、科研費の予算について説明させていただきます。
 1ページをお願いします。科研費ですけれども、平成6年度の予算案は2,377億円ということになっておりまして、前年度同額でございます。それに加えて令和5年度補正予算として654億円ということになっております。
 内容として、資料の下半分のとおり、大きな柱としては、若手・子育て世代の研究者への支援強化と国際共同研究の強化という2本柱で、1番目については内容が2つございます。
 1つは基盤研究(B)の基金化でございます。こちら、研究代表者、研究分担者として、新規継続課題で参画する人数としては4万人ほどいらっしゃいますので、その4万人の研究者の方々に裨益する取組でございます。
 もう一つ、通常の科研費の応募の時期に応募できなかった方々のためにある研究種目でございますけれども、「研究活動スタート支援」という研究種目がございまして、こちらの応募要件を緩和するという内容でございます。従前、産前・産後、育児の休業ということで応募できなかった方を対象とした応募要件がありましたが、そこに未就学児の養育期間も含めるような形での応募要件の緩和を図ることを予定しております。
 それからもう一つ、国際先導研究という研究種目を引き続き実施することです。こちら、令和3年度の補正予算から研究種目を創設してございますけれども、こちらを引き続き実施するという内容になっております。
 2ページをお願いします。科研費の基金化ですけれども、資料でお示ししているとおり、今回基盤研究の(B)を基金化する予定でございますので、このような形になっております。まだ特別推進研究、基盤研究(S)・(A)、学変(A)・(B)等が補助金のまま残っている状態ですので、こちらについても引き続き基金化を目指したいと思っております。
 3ページをお願いします。基金化による効果ということで、言うまでもないことかもしれませんが、単年度補助金制度の硬直的な予算執行ではない、より柔軟な執行ができるということ、補助金制度では繰越しを財務省と協議するのですけれども、原則2回繰り越すことができないということになっておりますし、繰越し事由としては、出産・育児等を理由とすることができないとなっていますので、こういったことも基金化によって改善ができるということがあります。
 それから、会計年度が違う諸外国との国際共同研究、こちらにも障壁が減るということになりますし、現在、繰越しの申請が約5,000件弱ぐらいありまして、かなり研究者や事務担当者の負担にもなってございますので、こちらについても負担の軽減に貢献する取組だと思っております。
 科研費については以上でございます。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 それでは、続いて資料1-4の御説明をお願いいたします。
 
【松本室長】  こちらも引き続き私から説明いたします。創発的研究支援事業についてでございます。
 1ページをお願いします。創発的研究支援事業につきましては、既に6回公募する研究費本体の部分の予算については確保してございまして、令和6年度の予算案0.6億円、令和5年度補正予算額6億円ということで、こちらは資料の一番左下、創発研究者をリサーチアシスタントとして支える博士課程学生等に対する支援、こちらに対する支援分の金額を計上しているところでございます。
 2ページをお願いいたします。創発につきましては、今年度8月に第4回目の公募を開始しまして、引き続き第5回目の公募は令和6年の8月頃、第6回目が令和7年の8月頃、同じく200件から250件程度を予定しているところでございます。
 第4回の今後のスケジュールは資料にお示ししているとおりでございます。
 それから、3ページをお願いします。研究費の本体の部分とRAの支援経費の部分ともう一つ、研究環境の整備支援というものがございまして、こちらについては、研究機関が創発研究者に対して実施した研究環境の改善内容を審査して追加的に支援をするというものでございますけれども、今回、研究開始3年目を迎える1期生に対して、各研究機関が行った取組を審査して追加的に支援をするということで、現在、各研究機関に調査票を配布しており、2月までに提出いただき、春頃に確認し、6月頃、配分額をお知らせるというようなスケジュールでこちらを進めております。
 説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 それでは、最後に資料1-5の説明をお願いいたします。
 
【遠藤室長】  観山部会長、ありがとうございます。科学技術・学術政策局戦略研究推進室長の遠藤です。では、私のほうからJSTの戦略的創造研究推進事業、戦略事業と略しますけれども、これの状況について御説明させていただきます。
 2ページ目をお願いいたします。戦略事業に関しては、細かい事業設計等々につきましては簡単に済ませたいと思いますけれども、ポンチ絵の中段にございますように、文部科学省から戦略目標を提示いたしまして、その戦略目標に基づきまして、JSTが研究領域を設定、そして公募・採択して研究開発を進めるものでございます。
 幾つかの形式がございまして、戦略目標の達成のためにチーム型で取り組むものがCREST、それから若手を念頭に置きながら個人で挑戦していただくものがさきがけ、それから、中段のACT-Xと呼ぶものですけれども、こちらに関しましては、将来的に、さきがけあるいはさらにその先でいえばCRESTに応募していただくような方を引っ張り上げると、ここでは「個の確立」と書いてありますが、研究費や研究期間は必ずしも多く、長くはないのですけれども、そういうある種青田買いをしていくといったようなものがACT-Xでございまして、さらに一番右側、こちらに関しては、トップオブトップにどーんと張るということで、歴史でいえば一番これが長いものでありますけれど、そういったものがERATOということで、この4つのタイプを組み合わせて事業を推進しているということでございます。
 令和6年度予算案のポイントとしては、左下にも書いてあるのですが、次のページ、3ページ目で御説明させていただきます。
 まず予算額に関しましては、先ほどの2ページ目にもございましたとおり、437億円ということで、額としては前年同ということになっております。
 その内容につきましてですけれど、主に1、2、3と書いてございますけれど、1に関しては、既に採択されているもの、これについては、着実に実施をしていただくということでございます。
 ポイントとしては、2番目、3番目になりますけれども、この春から夏にかけて新たに公募する領域といたしましては、CREST、4、さきがけ、6、ERATO、2、ACT-X、2ということを今念頭に、予算規模的にはこの領域数で現在最終的な調整を行っているということでございます。
 下に※書きで念のために書いておりますけれども、さきがけの6領域のうち1領域に関しましては、既に昨年度示しております戦略目標の中に新たにさきがけの領域、公募を追加するというものでして、そういう意味では純然たる新設領域という意味ではさきがけは5領域ということになります。
 それからもう一つ、3番目のほうになりますけれども、さきがけにつきましては、これまで採択された方々が大変いい成果を出していただいておるということ、さらにはそういった方々が宣伝していただいているということもあると思うのですけれども、非常に人気で公募が多く、採択率が結果的に低いという状況が一部生じております。さきがけ、これは先ほど申し上げたとおり、若手支援として重要なプログラムだと考えておりますので、あまり採択率が低いと、応募しても駄目ではないかと最初からディスカレッジしてしまう状況というのも望ましくないと思っておりますので、やはり10%程度までは全て引き上げたいということで、採択率が低い領域、あるいは低いと見込まれる領域の課題数を追加し、採択率を10%程度までは最低持っていくということで予算を、案でございますけれど、措置しているということでございます。
 右上のほうに表がございます。過年度というか、令和4年度、令和5年度のそれぞれの予算におけるCREST、さきがけ、ERATO、ACT-Xの領域数の比較でございますけれども、やはり戦略事業に関しては、先ほど御説明しました科研費や創発の次のフェーズ、いわゆる戦略研究と我々呼んでおりますけれど、そのフェーズにおいて中心的な位置づけの事業だと考えております。特にCRESTやさきがけのもととなる戦略目標においてどういうものを示すかということにおいて、非常に日本のアカデミアへの影響が大きいと考えておりまして、その意味では、予見可能性といいますか、ある程度来年度もこのぐらいの規模の公募があるのだというような予見可能性を持たせるということが重要だと考えておりまして、CRESTであれば4領域なり、さきがけで5領域、6領域と、こういったところ、ERATOもそうですけれど、そういったものをまずしっかり維持し、願わくは増やしていくということはあると思うのですけれども、ある程度、公募の規模において予見可能性を持たせていきたいというのはありますし、もちろんそういう中で採択率もそれぞれ上げていくということを考えているということでございます。
 この先、少しいろいろ参考資料をつけております。成果に関しましては、例えば6ページ、7ページ辺りにそれぞれ載せております。時間の関係で一つ一つは申し上げませんけれども、老若男女といいますか、いろいろな方がいろいろ成果を出していただいているという状況でございます。
 それから、最近のトピックスとして、すいません、今回の資料には入っていないのですけれども、ERATOの中で、最近マーケットデザインというテーマについて、これは既に採択をして、JSTのほうからプレス発表しているものでございますけれど、マーケットデザインについて領域として採択しております。
 そういう意味で、若干語弊があるかもしれませんけれども、純然たる自然科学だけではなく、文理融合といいましょうか、そういったところも戦略事業のスコープとして最近は広がってきているということを少しトピックとして御紹介をさせていただきたいと思います。
 最後に、こちらも、特に資料ということではないのですけれども、途中でも申し上げたとおり、やはり戦略事業に関しては、戦略事業はどういう方向を向いているのかというのをアカデミアの先生方は非常に注目をしている、されていると認識しておりますし、責任感も感じております。
 そういう中で、これまで例えば論文の書誌情報を分析して、どういうところがホットトピックになっているのかというような分析をしてきていまして、現在もしておりますし、少しそれはどうしてもタイムラグが出てしまうということであれば、例えば科研費のような、いろいろ非常に幅広くやっている基礎フェーズの研究の採択課題を分析して、どういうところが盛り上がってきているかというのを見るというのもやっておりますし、そういったものもそれで重要なのですけれど、やはりどうしてもタイムラグがあるというか、後追いな感じになってくると。そうすると、どうやって兆しのようなものを見つけて、それをこの戦略研究のテーマとして設定していくかというのを、非常に我々、考えながら日々やっておるということでして、今後、さらに、戦略目標に関しては、来年度、再来年度もしっかりいいものを設定していきたいと考えておりますので、その際に、いかに先端研究の兆しのようなものを把握して、それを見出していくかということについて、先生方の御助言、アドバイスなどいただけると大変ありがたいと思います。
 すいません、少し雑駁になりましたけれど、御説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  以上でよろしいでしょうか。
 
【西山課長】  以上になります。
 
【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 以上の説明に関して、委員の先生方から御質問や御意見がございましたら、どうぞ挙手ボタンをお使いいただくか、実際に手を挙げていただくかで指名したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、まず齊藤先生、お願いします。
 
【齊藤委員】  世界トップレベル研究拠点に関して1点質問させていただきたいと思います。これ、今年度は新規募集をしないということだと思いますが、それはどういった理由なのでしょうか。
 
【春田課長補佐】  令和6年度においては、先生の今、御発言のとおり、新規拠点の公募をしないという形になってございます。もともと新規拠点の公募をすべく概算要求額に所要の予算を計上してございましたが、財務省との折衝の結果、新規拠点を採択するための予算が認められなかったという形で、かつ、今回、いわゆる令和5年度いっぱいで終わる拠点もないので、予算的に下がるところもないということで、予算の都合上、令和6年度、新規公募をしないという形になってございます。
 
【齊藤委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【観山部会長】  それでは、有馬先生、お願いします。
 
【有馬委員】  どうもありがとうございます。私もWPIのことも聞きたかったのですけれど、もう一つは予算の話なので、日本、ずっと、20年以上ですか、ずっといわゆる物価が上がらない状態が続いていたのですけれど、ここに来て多分少しずつ上がってくるということで、そのときに、基本的に見ていて、大体ゼロサムみたいに見えるわけですけれども、そうすると、実質的には、ここが全体としては減っていくように、多分物価とか人件費とかの上昇を考えると見えるはずなのですけれども、そこにつまり大きな全体の額としてそこはどういうふうに見ていらっしゃるのかというのをお伺いしたいのですけれど。
 
【西山課長】  私のほうからお答えします。ありがとうございます。大きな視点の御質問だと思います。今日参考資料の2ほうに、文部科学省の全体の予算をつけております。その中で、例えば科学技術の関係で申しますと、全体としては前年同という形で全体の予算を確保している。
 これに加えて、当初予算の3分の2ぐらいに当たる予算を補正予算のほうで確保しているところでございまして、細かく見ると、物価の上昇ですとか、あとは円安の対応ですとか、人件費等の上昇等にも対応できるような形での補正予算をそれぞれ組んでいるというのが状況ではありますが、もちろん今後、継続的に物価、もしくは特に賃金の上昇ということが社会全体として起こっていく中で、文科省としてもこれ継続的にきちんと対応していく必要があると認識をしています。
 本来的には当初予算でもしていく必要があるのだと思っていますが、政府全体の財政需要、すなわち税収との関係をきちんと考えながら財政当局と協議をしていくということになるかと思います。そういう流れの中で、文科省としても、毎年度の予算要求になりますが、全体の賃上げや物価上昇の流れをきちんと踏まえた形でやっていきたいと思っております。
 
【有馬委員】  ありがとうございました。
 
【観山部会長】  重要な観点で、特に電気代とかは非常に上がっていますよね。そこら辺が非常に重要な観点になるかと思います。ありがとうございました。
 では、続いて、上杉先生、お願いします。
 
【上杉委員】  京大の上杉です。戦略創造事業と科研費のところで1つ質問、意見があるのです。基礎研究を振興しながら、文部科学省としては、国際研究も増やしたいし、子育て世代をサポートしたいし、博士課程にもっと進むようにもしたいし、女性の研究者を増やしたいし、若手もサポートしたい。こういういろいろなことを考えながら新しい事業をつくってはると思うのですよ。そのたびに、小さいプログラムをつくって、いろいろなプログラムができて、どんどん複雑になっているような気がするのですね。それぞれのプログラムについて、審査をしてやる。やはり日本の科学者の数少ないですから、アメリカに比べると、その審査をして、これもだんだんボリュームが増えてきて、複雑になってきているのではないかと思います。
 それで、1つの僕は解決法ではないかと思っているのは、サプリメントという方法です。例えば私、アメリカの大学の先生をやっているときに、NIHグラントをとりますと、サプリメントというのが出る。例えば私の研究室にはマイノリティーの学生さんが何人かいたのですけれど、マイノリティーの学生さんがプロジェクトに参加すると、マイノリティーの学生さんの給料がサプリメントとしてついてきます。サプリメントを足すということで、ある特定の考え方のプロモーションをNIHグラントとして出します。
 それで質問は、多分サプリメントってやると、予算の立て方が難しいのか、どういうふうにNIHがやっているのか僕分からないのですけれども、既存の科研費は審査を非常にしっかりやっていると思いますし、そこで評価されたところで、さらに女性の研究者がいたら、サプリメントをあげる。そういうタイプのことはできないのかと。既存の審査の方法で、予算を、特別な、文科省がやりたいことをやっているというか、女性が多いとか、若手が多いとか、そういうタイプがあればサプリメントを足すという、こういうタイプの予算立てというのはできないのでしょうか。これが質問です。
 
【観山部会長】  いかがでしょうか。
 
【松本室長】  先生、ありがとうございます。科研費については、研究費部会という審議会がありまして、まさに研究種目の立てつけ等、議論をしているところです。
 今後の話になりますけれども、先生御指摘のとおり、いろいろ予算を獲得していこうとするあまり、少し研究種目が増えたりということも出てきています。その結果、審査するのも先生方なので、そういった意味で総合的に研究時間が減っているのではないかとか、いろいろ問題点も指摘されておりますので、国際関連の研究種目について、少しどこかにマージするとか、先生のおっしゃっていただいたような形で、国際的なことに対してアドオンするとか、そのようなことができないかというのをこれから議論していく予定にしています。
 
【上杉委員】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  それでは、前田先生、お願いします。
 
【前田委員】  1つ簡単な質問をさせて下さい。AIのところで、AI For Scienceについて丁寧に御説明いただき、それは理研のプロジェクトTRIP-AGISということで御説明いただいたのですが、AIのところは大事だと思うで、これは理研に閉じた形なのか、それとも戦略的創造事業とかにも広げていろいろな方が関わるような形というのもあり得るのかというところを少し教えていただきたいです。
 
【春田課長補佐】  ありがとうございます。まずTRIP-AGISのほうについて御説明をいたします。TRIP-AGISについては、理研を中核といたしますが、必ずしも理研に閉じた形ではなく、様々な研究機関や大学等と連携しながら進めていくことを構想しているところでございます。
 また、前田先生のほうからいわゆる戦略事業のほうについても広げていくべきではないかというふうな今コメントがあったと思いますが、これについては遠藤室長のほうからお話をお願いいたします。
 
【遠藤室長】  すいません、先ほどビデオが映らないまま一通りしゃべってしまいました。失礼いたしました。遠藤のほうから少し戦略事業のほうについてのコメントですけれども、実は既に、TRIP-AGISではないのですが、理研のAIPの活動と、それから戦略事業の中でAI関係のテーマというのは連携をするという形でこれまでもやってきております。
 TRIP-AGISについてどうやっていくのかというのはこれからですし、前田先生がおっしゃったような連携をすべきというのはおっしゃるとおりだと思いますので、ちょうど、同じ文部科学省でございますので、所管課同士がしっかり連携しながらやっていくということだと理解しております。
 
【前田委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【観山部会長】  それでは、品田先生、お願いします。
 
【品田委員】  生成AIの2ページ目の資料の右上、予算なのですけれど、私、予算の配分、年度ごとにどういうふうに配分するポリシーがあるのかよく分かってない部分もあって、変な質問かもしれないのですが、一言で言うと、補正予算額が377億円で、6年度が24億円というのが少し違和感がありまして、あと、Cross AI Talent Developmentは補正予算だけで、まだ6年度の予算が案として出てないというのはどういう事情があるのかというのを素朴な疑問で思っております。お答えいただければと思います。
 
【春田課長補佐】  御説明いたします。おおむね予算の建付けといたしまして、補正予算においては、一過性の予算を計上することが多いという形になってございます。これはいわゆる研究施設・設備に係る予算を補正予算で計上し、実際の研究プロジェクトを推進するための予算については当初予算のほうで計上するといったものが一般的な建付けになってございます。
 例えば、AI for Societyのほうでいいますと、令和5年度補正予算においては、計算資源を使うために必要な予算を計上し、令和6年度当初予算のほうでは研究プロジェクトを推進していく、拠点形成をしていくために必要な予算を計上している形になってございます。
 AI for Scienceにつきましても、令和5年度補正予算においては、計算資源の構築や自動実験ロボットのいわゆる購入などに充てる予算を計上していまして、当初予算においては、17億円の中で研究プロジェクトを推進していくための予算を計上しているところでございます。
 Cross AI Talent Developmentについては少し毛色が変わってございまして、こちらは米印にあるとおり、JSTの創発的研究推進基金の積み増しと、いわゆる基金のほうにお金が入っていくような予算計上という形になっています。なので、こちらの213億円については、単年度の予算ではなく、複数年度に使えるような形で補正予算に計上しているという形でございまして、そのため、令和6年度予算においては予算を計上していないという形になっているところでございます。
 
【品田委員】  大変よく分かりました。ありがとうございます。
 
【観山部会長】  よろしいでしょうか。
 佐伯先生、お願いします。
 
【佐伯部会長代理】  ありがとうございます。幾つか予算について全般的に意見がございますが、様々な予算的に厳しい中で、こういった科学技術、基礎研究に関して、予算を少なくとも金額的には増やしているように見えますので、非常にありがたく思っておりますが、1つ懸念するのは、こういった形でどんどん増やして、いろいろな戦略的創造事業あるいは科研費事業等でも様々な工夫を凝らしていろいろ増やしていっていただいているのですが、その際、研究者側の立場からすると、やはり申請、それから毎年の報告、あるいは最終報告、あるいはその評価といったところで非常に労力を使います。この辺りは、例えば私、若い頃どうだったかというところと比べてみると、かなり負担が増えているというのは皆さん、どの研究者の方も感じていることではないかと思われます。
 ですので、例えば戦略的創造事業、私、少し関わっておりますけれども、最初の申請から採択にかかって、それからあるいは中間評価、そして最終評価、非常に大変な評価の作業があって、評価する側もされる側も非常に大きな労力を使っていると思いますので、全体的にそういった労力を減らす努力はされていると思うのですけれども、やはりまだまだ非常に負担が大きいというところは否めないと思いますので、その辺りのシステムをもう少し全体的に考えていただいて、研究者の研究時間の確保という観点から少し改善を試みていただければと思います。私からの意見でございます。
 以上です。
 
【西山課長】  私のほうから。佐伯先生、ありがとうございます。研究時間をきっちりと研究者の方々に継続的に確保できるようにという御指摘だと思います。本件、文部科学省もそうですが、全体通して、内閣府、CSTIのほうでも重要な話として議論をしています。もちろん、大学における様々な管理的な業務もあります。こういった研究の各申請・評価等の業務もございます。さらには大学の先生方というと、入試関係の業務もかなりの負担だということも承知をしています。それが全体としてきちんと研究時間が確保できるように、大きな話もそうですし、今おっしゃったような、それぞれの各申請が統一できる部分は統一をするとか、そういったことも含めて文科省としてきちっと引き続きやっていきたいと思います。ありがとうございます。
 
【佐伯部会長代理】  よろしくお願いいたします。
 
【観山部会長】  小泉先生、お願いします。
 
【小泉委員】  小泉です。ありがとうございます。2つコメントなのですけれども、1つは、科研費の基盤(B)の基金化ということは、文科省、松本室長をはじめ、皆さんの努力の結果だと思います。十年来の課題となっていたところが達成できるというところは本当にすばらしいことだと思っています。一時、マスメディア等で基金がとてもたたかれていたりしましたけれども、研究者サイドから見ると、基金化というのはとても重要な、単年度予算からの脱却ができる重要なポイントですので、マスコミが何でたたいたのか、いまいちよく分からないのですが、むしろここは基金化はやはり、科研費、しっかりほかの種目も含めて進めていっていただきたいと思っているところです。なので、マスコミにもしっかり説明しなくてはいけないですね。基金化によってどれだけ救われるかということ、研究時間がどれだけ救われるかというところはしっかり言っておかないと、基金は駄目だというような論調が昨年10月、11月ぐらいに出てきたのは、本当にマスコミは何言ってるのだとすごく思ったところでした。そして、基金化、引き続き頑張っていただければと思います。
 それから、先ほどどなたかの質問にもありましたが、確かに科学技術政策、特定のものというよりも、科学技術全体が補正予算に頼ってしまっているところが、補正予算と年度予算でいうと、補正予算が結構大きな割合を占めてきているのがここ数年の特徴かと思って見ているところで、実際、今日の御説明でも補正予算に頼っているところが結構あるなと思いました。
 もちろん、先ほど御説明いただいたように、ショートスパンで必要なものに補正予算というのは良いのですけれども、例えばワンショットで設備を買いますとか、ぽんと何か買いますというのは良いのですけれど、本当に設備を買って終わりという時代ではないので、補正予算ばかりになってくると、今度は人件費やメンテナンスなど様々な継続的に必要な費用が確保できなくなってしまいます。、補正予算でばっと買いました、だけれど誰も使いません、そんなお金で終わってしまうというだけではやはり駄目なので、補正頼りになっているのは国の予算の構造上仕方ないのかもしれませんが、ぜひ補正だけに頼らない予算構造というのも求めていく必要があるのだろうかと思いました。これは文科省に言うよりは多分財務省とかに言うべきことなのかもしれませんが、そういった感想を持っております。
 すいません、雑駁な意見ですが、以上のとおりです。ありがとうございます。
 
【観山部会長】  大切な御意見だと思いますが、何かお答えありますでしょうか。
 
【西山課長】  ありがとうございます。後者の御指摘はそのとおりだと思います。国全体の、文科省も政府全体の1省庁でありますので、国の会計年度、財政法等に基づく単年度できちんと予算を見ていくということも全体としては非常に重要なことだとは思う一方で、それによって必要なところに逆に人件費等々含めて予算の措置がしにくくなるということも、これまた現場においては事実だと思います。
 重要なことは、それぞれ政策的な必要性、重要性をもって予算措置をしているわけではあるのですが、大学・研究機関等の現場において、先ほどの研究時間の確保の話とも関連すると思いますが、やはり自由度を持って予算を執行できる、そういう仕掛けをできるだけ増やしていくことが重要なのだろうと思っています。
 これは国の予算だけではなくて、例えば基礎科学、基礎研究の分野においても、社会全体のお金を大学・研究機関が受皿になることによって、それらを中長期的な投資に回せるような仕掛け、そういう中で、もちろん国の予算で補正予算、基金等を活用することも重要なのですが、大学等の現場においてそういった自由に使えるお金をきちんと増やし、それらを先行投資できるような仕掛け、そういうものを我々としては仕組みとしてもつくっていきたいと、このように思っております。
 ありがとうございます。
 
【観山部会長】  ほかの委員、よろしいでしょうか。
 私から、1つ、WPIに関してですけれども、新しくWPI COREとか、複数ホストで公募されるという形になったわけですが、今回東北大学とJAMSTECが採択されたということですが、新しいタイプで申請は結構あったのでしょうか。そこら辺少しできる範囲で教えていただければと思いますが。
 
【春田課長補佐】  観山先生、ありがとうございます。WPI CORE、複数のホスト機関によるWPIについて、どちらとも申請数がそれなりにあったという形になってございます。
 特にCOREのほうについては、いわゆる小規模な大学、あるいは、研究提案としてかなりフォーカスされたものも出しやすくなったというところで、すいません、今、具体の数字がすぐに出てこないですが、20を超えるような提案を頂いているといったところだと記憶をしてございます。
 複数のホスト機関で提案するWPIについては、いわゆる制度として新しかったこと、2つ以上の機関が連携をするというところを考案するに当たっては、公募の期間、周知期間が少し短かったのでないかといったところもあり、実際のこちらについて提案いただいたのは、2つの提案をいただいたという形になっているところでございます。
 それについて、今年初めていわゆるこういう新しい試みをしていたというところでございますので、今後また公募をする際には、しっかりと周知を行って、よりすばらしい提案を頂けるように努力をしたいと考えているところでございます。
 
【西山課長】  少しだけ補足をさせていただきますと、最初のほうで齊藤先生からも御質問ありましたが、令和6年度については、WPIの公募は、新規の公募は行わないのですが、引き続き、令和7年度以降になりますが、WPI、非常に評価の高い施策だと文科省思っておりますので、新規公募についても積極的に考えていきたいと思っております。
 その上で、今春田のほうから説明ありましたとおり、WPIのCORE、複数のホスト機関で提案するWPI、これ双方とも、各大学・研究機関からかなり質の高い提案があったとプログラム委員会では評価をされていると認識をしています。
 プログラム委員会の先生方も、これらの仕組みについてはポジティブに捉えて、海外の委員の方々も含めてポジティブに捉えていただいておりますし、また、大学の現場、研究機関の現場の先生方といろいろ意見交換をしている中でも、このような仕組みというのは引き続きやってはどうかと御意見を頂戴しているところではございます。これらもよく精査をして、文科省としても評価をした上で次年度以降につなげていきたいと思っております。
 ありがとうございます。
 
【観山部会長】  分かりました。競争率が高いというのは、それだけ厳選されたプログラムが選ばれるということでもあり、今後にとって非常にすばらしいことだと思いますが、ただ、少し前から私懸念するのは、今までのWPIでも、ホストとの関係というのは非常に気をつけなくてはならないというか、いろいろ問題が発生する場合がありますので、これが複数になると、会議や調整の時間が増えて研究時間が少なくなるかもしれないということで、そこら辺はプログラムオフィサーなどとも連携しながら適切な対応ができるような形で進めればと思っております。
 ありがとうございます。
 
【春田課長補佐】  観山先生、申し訳ございません。先ほど私の説明の中で、WPI COREに関する提案が20を超えると発言いたしましたが、今確認したところ、正式に受理した件数としては17件でございますので、訂正をいたします。申し訳ございません。
 
【観山部会長】  ありがとうございます。
 この議題については以上でよろしいでしょうか。
 また、最後に議論の時間をとりますので、それでは、議題の2に移りたいと思います。「『2030年に向けた数理科学の展開』に関する実施状況について」です。資料2-1については文部科学省から御説明いただいた後に、本日は資料2-2について、東北大学、水藤寛先生から、資料2-3については九州大学、梶原健司先生から御発表お願いします。その後に委員の皆様より御意見を頂戴できればと思いますので、まずは文部科学省から御説明をお願いいたします。
 
【葛谷推進官】  文部科学省、葛谷と申します。それでは、資料2-1と、参考資料3も関係しますけれども、この2つ、基本的に資料2-1を使って御説明したいと思います。
 こちら、「2030年に向けた数理科学の展開-数理科学への期待と重要課題-を踏まえた取組の実施状況」ということで、先ほど議題の説明でもございましたとおり、2022年、1年半前の7月にこの報告書が基礎部会の審議を経て文部科学省振興局のクレジットで策定されたところでございます。
 私のほうからまず2-1を使って、全体の実施状況を御説明した後、この報告書を踏まえて、東北大学、九州大学の個別の取組をしておりますので、その後、それぞれ御説明いただくという形で進めていきたいと思っております。
 それでは、1ページお願いいたします。まずこれまでの経緯ということで、今回この報告書が取りまとまったのが、先ほど申したように2022年の7月ということで、今回の期より前の期の委員のときに取りまとまっておりますので、経緯を少し簡単に御説明した後、実施状況について報告したいと思っております。
 まず数理理学ということでございますけれども、参考資料3の中にも少し記載しておりますけれども、暗号技術とかブロックチェーン技術といったようなものにも活用されているとおり、デジタルや通信、AIなどの幅広い分野において基盤として活用されておりまして、デジタル革新、いわゆるDXを加速し、新たな価値創造の原動力となっているところでございます。
 また、数理科学は、学問の進展とビッグデータの活用により、社会・産業・文化・自然・環境・生命などあらゆる現象の根本原理を解明し、重要な変化の兆しを予測できるようになることにより、より良い社会、Society5.0実現に対して重要なイニシアティブを果たしていくことが期待されているところでございます。
 さらに、数理科学は、これらの現象の理解とこれによる新産業や社会変革を伴うイノベーションの創出が相互に影響を及ぼし発展していくことで、学問の体系的な進展と新たな価値を創造していくことが期待されている。
 こういったように数理科学は期待されているものでございまして、こういった状況を踏まえまして、基礎研究振興部会での審議を重ね、令和4年7月にこの報告書を文部科学省振興局が取りまとめたところでございます。
 この報告書で示した重要課題に関しまして、文部科学省において、関係機関と協力して、取組を進めているところでございます。
 2ページをお願いいたします。こちらが重要課題、5つございますけれども、と併せて現在の数理科学、今後の目指すべき数理科学の展開を示したものでございます。
 まず、左下のほうを御覧いただければと思いますけれども、我々のほうにおきまして、数理科学は、抽象した概念を論理によって体系化するものでございますし、他分野への波及効果、汎用性が高く、DX時代に不可欠なものと理解しているところでございます。
 そういったものを踏まえまして、現在の数理科学というものは、真ん中のほうに逆三角形ございますけれども、こういった形であると仮定した場合に、2030年の数理科学においては、現在の数理科学をさらに広げていきたいということで考えているところでございます。
 それぞれ、矢印等ございまして、簡単に御説明させていただければと思っております。まず下のほう、こちらについては、学問の深化ということで、さらに学問を深めていくと、こういったことが重要ではないかと思っております。こちらは重要課題2に該当しておりまして、世界トップレベルの数理科学の探求拠点をつくっていくということを考えております。
 続きまして、それぞれ左、右のほうに矢印ございますけれども、学際、異分野との連携や社会との連携、こういったことをすることによって、数理科学をさら広げていく。こちらにつきましては、重要課題3というところで、学際、異分野との連携、重要課題4においては、社会との連携、知的アセットの価値化というところをお示ししているところでございます。
 そういった取組をすることによって、一番上、目指すべき社会、Society5.0に、数理科学が貢献していくということで上の矢印も広がっていきます。
 ただ、こういったこと全体を進めていく上において、重要課題1として、産学官の政策形成の場を活用したり、重要課題5として、数理・データサイエンス・AI人材育成、こういったものが重要だと考えているところでございます。
 3ページをお願いします。3ページで重要課題への施策展開ということで、それぞれ1、2、3、4、5についてまとめておりますけれども、少しこちらは字が小さいところもありまして、個別の課題ごとに実施状況を御説明したいと思いますので、4ページをお願いいたします。
 こちら、まず1つ目でございますけれども、重要課題の1と2と5について実施状況をまとめたものでございます。
 まず重要課題1、ビジョン共有型の基礎科学の振興でございます。こちらの施策の展開につきましては、真ん中のカラムでございまして、2030年に向けた数理科学の目指すべき姿を共有した上で、その展開を目指す数理科学イニシアティブ会議を設置し、産学官の形成の場を創設といったものでございます。
 こちらの実施状況ということで、数理科学イニシアティブサロンを定期的に開催となってございます。これは具体的には5ページをお願いいたします。
 こちらにお示ししておりますけれども、現在8名の委員の方、産学の方にお集まりいただきまして、2030年に向けた数理科学の展開をさらに広げていくということで、重要課題を中心に定期的に意見交換、検討を進めているところでございます。
 また、前のページ(4ページ)にお戻りいただければと思います。続きまして、重要課題2でございます。世界トップレベルの数理科学の探求拠点でございます。こちらの取組については、世界トップレベルの数理科学を探求する拠点、世界の数理科学の研究者を引きつけ、一流の頭脳循環を形成するということで、こちらの実施状況でございますけれども、数理×異分野として、例えばICReDDでは、数理×化学、また、WPI-AIMRでは、数理×材料化学、WPI-ASHBiでは、数理×生命科学といったようなWPI拠点にて国際頭脳循環を形成しているというところでございます。
 続いて、重要課題5でございます。数理・データサイエンス・AI人材育成でございます。真ん中でございますけれども、数理・データ思考を持った人材の育成を進めていくためということで、全ての大学・高専生が数理・データサイエンス・AIのリテラシーを取得とか、産学官で活躍できるトップクラスのエキスパート人材の育成といったような3つの目標値、こちらは、括弧書きでございまして、AI戦略2019、そして2022の中でも示されております目標値でございますけれども、こういったものの目標に貢献していくということでお示ししているところでございます。
 あわせて、幅広い分野を支援する博士課程の学生支援策として、日本学術振興会DCや、次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)といったものを実施と、また、新たなキャリアパス、キャリアイメージをつくり、定着させるため、ジョブ型インターンシップを促進、新たなキャリアパスの開拓に係る取組を推進といったところを考えております。
 こちらにおける実施状況、右側でございますけれども、数理・データ思考を持った人材育成を進めるために、人材育成事業として、大学・高専機能強化支援事業とか、こちらについては、特定成長分野、デジタル・グリーンといったものを対象に、各大学機能の強化をしていくといった事業でございますけれども、こういった事業を進めていったり、また、数理・データサイエンス、AI教育認定制度といったもので、左側に対応いたしますけれども、基礎・応用レベルを認定していく制度をつくっていったり、また、デジタル×ダブルメジャー大学院教育構築事業ということで、人文社会科学とデジタル、そして数理を掛けあわせるプログラム、そういったものの人材育成事業が進められているところでございます。
 続きまして、次の下のポツでございますけれども、博士課程の学生の処遇に関してございますけれども、こちらについては、今年度の補正事業によりまして、博士課程の処遇向上と研究環境等の確保等により、博士課程の人材育成を支援ということで、これまでSPRINGやフェローシップ創設事業というものをそれぞれ個別で事業を推進していたものを、今年度の補正予算にて一体化で実施する事業を措置しているところでございます。
 また、多様なキャリアパス構築のためにジョブ型インターンシップの促進に向けては、大学、関係機関等への働きかけ、そういったところを進めてきているところでございます。
 それでは、6ページをお願いいたします。残りの重要課題3と4でございます。重要課題3、学際、異分野との連携、そして重要課題4、社会との連携、知的アセットの価値化でございます。
 こちらについては、重要課題への取組といたしまして、他の科学や産業・社会との協働によって数理科学の学問の幅を広げ、進展させていく機能拡張モデルをつくっていくことが必要だということでございまして、数理科学、そのほとんどが無形の知的資産でございまして、数理科学の知的アセットを社会との間に適切に価値化していく、こういったことが重要であると、こういった仕組みを構築していくことが必要であると考えているところでございます。
 このためということで、下に具体例を挙げておりますけれども、1つ目が全国大学における数理科学の研究者が他の科学、産業・社会と協働するプラットフォーム組織・体制の整備、そして、滞在型、プロジェクトベースドラーニング型研究を国際的に提供し相補的に進めるため、東西2拠点に組織体制を構築、そして、その下でございますけれども、新たな産学連携を構築し、学問への再投資を行う資金の好循環モデルを構築といったような取組を進めていくといったところを進めております。
 実施状況でございますけれども、まず、学際、異分野との連携ということでございまして、先ほど議題1の御説明の中にもございましたけれども、戦略目標を通じて、数理科学を中心に異分野との連携を進めていく、こういった事業の検討を進めているところでございます。
 また、数理科学と脳科学との連携、そして3つ目でございますけれども、東西2拠点、ここでは、九州大学と東北大学の2拠点でございますけれども、こちらの拠点での取組を中心に、諸科学、産業・社会と協働する体制の整備といったところを進めています。
 7ページをお願いいたします。具体的でございますけれども、後ほど個別にそれぞれ御説明いただきますので、簡単に申し上げますと、左側が、オレンジ色が九州大学の取組でございまして、右側が、青色が東北大学の取組でございます。それぞれ、九州大学、東北大学の強みを生かして数理科学の学部の幅を広げていくプラットフォームとして、それぞれ活動を進めていただいているところでございます。
 そして最後のスライド(8ページ)でございます。今後の予定でございます。今後の予定としては、大きくまず2つの取組を中心に進めていきたいと思っております。異分野融合・社会との連携でございます。こちらにつきましては、異分野・社会との連携をさらに進めていくために、先ほどの課題の中にもございましたけれども、数理科学の知的アセットを社会との間に適切に価値化していく、こういった仕組みは、数学分野においてまだまだ弱いところございますので、そこについては検討を進めていきたいと考えております。
 また、関連学会・大学等を通じて数理科学と異分野とのマッチング機会、そういったものの拡大を進めていきたいと思っております。
 そして、多様なキャリアパスの構築、人材育成に関しましても引き続き進めていきたいと思っているところでございます。
 文科省からの説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 続きまして、東北大学、水藤先生より御発表をお願いいたします。
 
【水藤教授】  東北大学の水藤と申します。東北大学では材料科学高等研究所に属しております。WPI-AIMRと呼ばれているところですが、ここは数理科学と材料科学の連携を旗印にしておりまして、その発展として東北大学内における数学関係の連携をも推進し、その枠組みの中でやってきています。今日は、まずは背景を少しお話ししまして、それからこれまでの蓄積のこと、それから、今年させていただいた組織整備によってできたこととやりつつあることと、これからやりたいことなどに分けて御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 2ページをお願いします。これは数理科学の研究の形として少し例を挙げているものです。数学は数学だけで考えていると思われることもあるわけですけれども、実際はそれだけではなくて、外からの駆動力を受けての水平展開と、それを数理として深める、発展させる垂直展開を繰り返してきたというのが実際のところだと思います。
 ここに挙げていますような幾つかの例が歴史的にはもちろん有名でして、それが現在でも続いており、現在の社会状況から来ているいろいろな課題、それを数理に取り込むことによってそれを深めることで新たな学術の創出につなげるという試みや取組が連綿と行われているわけです。
 3ページをお願いします。例えばですけれども、左側の例ではスマートシティーを挙げていますが、社会における人々の営みからだんだんと抽象化を経て、スマートシティーに到達する、またそれを実際の営みに戻していく、その過程、過程にいろいろな形での数理科学が関わってきているというのが実際のところです。
 右側にも幾つか例を挙げていますけれども、数学的な概念によって、新たな実社会での技術や考え方が出てきたというのが例としては出てくるわけです。
 4ページをお願いします。これらの背景のもと、我々は東北大学において数理科学の連携及び数理科学からさらに広まって、総合知と言っているような人文社会科学まで含んだ形のものを対象とする訪問滞在型研究施設を運営してきました。それが知の創出センターと言っているところなのですけれども、このスローガンは下に書いていますが、訪問滞在型といっても場所を貸すだけではなく、そこでの実施企画に対する高度なサポートと、また、その運営に対しても深く関わっていく。そしてコーディネーターというのは、自分自身が博士の学位を持っていて、プログラムに深く関わるということを専門としている人たちの集団としてこれを運営しています。
 5ページをお願いします。今年で10年目なのですけれども、幾つかの長期プログラム、数か月から1年にわたってやるようなプログラムと、もう少し短めのものを組み合わせて様々なテーマを扱っています。
 例えば、先ほど話の出ました数理掛ける何とかというようなテーマもありますし、若手の育成プログラムもあります。
 このようなことを訪問滞在型という特徴を最大限活用して進めているものです。
 6ページをお願いします。ここでは幾つかのプログラムのポスターを並べていますけれども、御覧のように、人文社会科学を含んだ歴史学や民俗学、それからスピントロニクスとかストリングマスのような、本当に幅広いものを扱っています。これらを通して、総合知とは何かと、それをこうやって構成していくということを続けてきています。
 7ページお願いします。実際には幾つかの枠組みがありまして、一番長期の大型のテーマプログラムからジュニアリサーチプログラム、そして未来社会デザインのプログラムなどを実行しております。
 そして、今までやってきているものにも数理科学に関係するテーマは多いですけれども、今回の組織整備を受けて、今後は数理科学のことをより強調していく、それが果たせる役割を増やしていくということを目指しております。
 8ページをお願いします。もう一つの既存のこれまでの蓄積としまして、国際インターンシップのひとつであるG-RIPSというプログラムについて御紹介します。これはアメリカのUCLAの数学研究所が20年ぐらいにわたってやっているものですけれども、この国際展開として日本でも2018年から東北大学でやっています。
 これの特徴的なのは、パートナー企業がかなり長期的な課題、しかも数学で解いてほしい課題を提示して、経費的な支援もして、1つの課題あたりアメリカ人学生2人と日本人学生2人を基本とし、数学系の大学院生が2か月取り組むというものです。運営面では困難も多いのですけれども、それをやってきています。
 これが企業さんにとっては、自分たちの研究所でやるには少し長過ぎる、遠過ぎるテーマだけれども、ここでそれを試してみる場となっています。学生にとっては、数学の学生は工学系の学生とは大きく違って、自分たちの数学が社会とどうつながっているかということは全然知らないことが多いわけですね。そのリアリティーを知る機会となっています。もちろん、アメリカ人と日本人ですので、英語力の問題はあるわけですが、2か月間一緒にやっていれば当然コミュニケーションは向上します。
 9ページお願いします。実際には8週間にわたって、計画を立てるところ、中間発表、あとは企業さんのところを訪問したりということを通して最後に発表に至ります。プログラムの出口はいろいろあります。論文を出したりとか、その企業に就職ということもありますし、企業さんのほうでこれは本格的な研究者とやりたいということで共同研究に発展することもあります。いろいろな出口があるところがこれの良いところだと思っています。日本文化の研修コースみたいなものも少し埋め込んでおります。
 10ページお願いします。今年度はこのような企業さんに協力いただいて、このような課題を実施しました。これに対して学生たちの感想が11ページにあります。いろいろなことを知れてよかったというのはもちろんたくさんあるのですけれども、左側のは、日本の数学の学生に特徴的な感想だなと思って入れました。数学の学生というのは大抵は1人黙々と抽象的な概念の理解と問題を解くことに取り組んでいますと。それ自体はとても良いのですけれども、では、それが社会でどうなるかということは全然知らない。でも、それが実際にはかなり求められている。そのことをよく知ることができて、彼は大学院生として自分の夢をより明確に描けるようになったと言っています。実際にいろいろな企業にコンタクトして、そこでの数学を知ろうとしています。
 このような場というのは、日本はやはりそうなのですが、アメリカでさえなかなか数学の学生たちは知らないのですよね、実社会のことを。そういうことを知る場になっています。
 12ページお願いします。もう一つ御紹介しておきたいのは、数学コミュニティーと産業界の連携の形として、経団連で数理活用産学連携イニシアティブというのをつくっていただきまして、この場を使って交流をしています。いろいろな形で、数学側からのシーズの紹介ですとか、企業側からの見方、こういうことをもっとやってほしいというようなリクエストであったり、そういうことを議論しています。
 数学のコミュニティーとは少し違って、大きな声でほかの企業さんがいる前で手を挙げて質問しにくいというようなこともよくありますので、そのような話題はこういう個別の場をつくって意見交換ということも進めております。ここから共同研究に発展するということはもちろんよくあります。
 13ページをお願いします。実際のところはこのような形で、最近は対面になりまして続けてきています。次回は1月の終わりにやることになっています。主に大手町の経団連会館でやっています。
 14ページをお願いします。ここまでがこれまでの蓄積でして、今後、今年度の組織整備を経て、次にどうしていきたいということをまず書きました。我々は、東北大学の機能強化だけではなく、もっと幅広い、日本全国や海外からの研究者や学生の参加によって、そういうことのできる数理科学の拠点を形成すると。そのためには、既にある訪問滞在型研究所という仕組みを生かして、未来社会の価値創造につなげたいということを掲げております。
 15ページをお願いします。今年度、組織整備によりまして新たに実現した取組として、東北大学の数理科学共創社会センターと知の創出センターが協力して上の2つを始めたのですが、まだ整備途中の取組としてその次の3つを御説明させていただきます。
 最初の2つのうちの1つは、知の創出センターにおける新しい枠組み、もう一つは異分野異業種研究交流会と呼んでいる仕組みについて御説明します。
 16ページをお願いします。これは新たなほうの1つ目ですけれども、先ほど御説明しました知の創出センターの3つの大きな枠組みに加えて、新たに、未来共生社会創生プロジェクトというのを加えました。これは何が違うかといいますと、産業界からの支援や参画を基調とするという新しい形です。これによって、様々な新しい分野、新しい連携の形を模索することにしています。
 今年度から始めたので、まだ公募はできませんでしたので、我々の中で始めた試行版、初企画が、右側に書いていますけれども、これは数理科学の分野で最近注目を浴びて人も増えてきている因果推論ですね。AIによって相関関係を導き出すことはどんどんできるようになったけれども、実際に知りたいのは相関ではなくて因果関係であるということで、どうやって因果関係を抽出するかということに取り組むプログラムになっていますが、そういうことを言い始めると、「では、そもそも因果って何ですか」ということを聞きたくなるのが自然ですので、ここではやはり哲学ですとか、哲学は長年因果のことを考えてきていますから、または物理ですね。物理でも因果関係というのは重要なキーワードになっていますね。そういう異なる分野の人たちが集まって訪問滞在型研究所で議論をするという面と、もう一つは、実際の社会の問題に対してそれをどう使うのかということを共有する、そういうものを幅広く含むプログラムとしてこれを実施することにしています。
 17ページをお願いします。これは異分野異業種研究交流会といいまして、数学系の学生と数学の学生を求めている企業さんとの出会いの場をつくるというものです。企業と学生の出会いなんて昔からやっているのではないかと、もちろん工学系ではそう思われると思うのですけれども、数学系は全然そうではありませんでして、数学の学生は、自分たちのやっていることは社会とはあんまり関係ないよなと思っていたりするものですから、いやいや、そんなことはないよということを知ってもらうための場です。今年の組織整備によって、その運営事務を引き受けることができるようになりました。この企画はお互いに全然知らない企業さんが集まって数学コミュニティーとの連携をするものなので、そこの調整や交渉を我々のところで担当し、会場を提供してくれる大学の役割も非常に重要なので、それらが協力してやっています。
 先ほど申しました経団連の取組ともリンクさせることで参画企業数の拡大を含め、さらにこの場を広げていきたいと思っています。
 次のスライド(18ページ)お願いします。次も整備中ですが、これはリカレント講座。リカレント講座自体はよくありますけれども、組織整備が実現したことによりまして、逆引きというのをやろうとしています。これは、大学側から「これをやると良いですよ」というのではなく、企業さん側から、社会のほうから、こういうテーマをやりたいと。そのような問題意識を集めてきて、それに必要な数学を構成して提供するというものです。
 19ページをお願いします。これは数理課題の相談窓口です。この後御紹介になると思いますけれども、九州大学さんのほうでプラットフォームを構築されているので、そことの連携ということになります。いろいろな窓口や入り口があったほうが入りやすい企業さんや社会の方もいらっしゃいますので、我々もそのプラットフォームの一角を担おうとしています。特に経団連のイニシアティブの活動から出てきた相談などを受け付けております。
 20ページをお願いします。これはまた少し違った視点で、企業における数理課題を発掘するものなのですが、出口はあえて決めずに、数学の若手研究者が話題提供をして自由な議論の場を提供すると。左は最近はやっているグラフィックレコーディングという形でその場の様子を記録しているものですけれども、いろいろなことを提案すると、企業さんの側からもそれってうちの会社ではこういう問題かもしれない、というアイデアが出てきまして、数学の側にとっても得るものが大きい形になっています。
 21ページお願いします。これらが今年度組織整備で取り組んできているもの、実現したものと取り組んできているものですが、今後の方向性としては次のようなことを考えています。まずは、プラットフォームの一角を担うということなので、当然、より広い、東北大学だけではなく日本全体のいろいろな人たちを取り込むことが必要です。そこで、学生や若手研究者向けのチュートリアルですとか、先ほど申しました長期テーマプログラムの中に学生のサマースクールを埋め込むとか、そのようなことで全体へのサービスをしていきたいと思っています。
 また、そういうことをするには、数理的な素養を持つ、サイエンスオフィサーのような役割がやはり重要ということが分かってきていますので、そういう人員を配置したいのと、または先ほど葛谷さんがおっしゃられた数理掛ける何とかというようなものをテーマプログラムの中に埋め込んで推進していくということを挙げています。
 一番下は、最初にも書きましたけれども、より幅広い研究機関などの学生や研究者の取り込み、それから、訪問滞在型研究所だからこそできる新しいプログラム群、それによって未来社会の価値創造につなげるという活動に取り組んでいきたいと思っております。
 私からの御説明は以上です。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 続きまして、九州大学、梶原先生より発表をお願いいたします。
 
【梶原所長】  九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の梶原と申します。本日は、マス・フォア・インダストリ・プラットフォームにおける取組ということで、御説明の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、略してIMIと我々称しておりますが、2011年に創設された、世界でもあまり例のない産業数学をミッションとする研究所でございます。産業や社会、それから諸科学分野の要請に応えることを主要なミッションとしておりますが、それだけではなく、要請に応えるために、純粋数学、応用数学を再編して当たらなければならないわけですが、そのような中から新しい数学をつくっていこうと。そういう研究活動を行っておりまして、数学を深める研究、それから数学を展開する研究、両方を車の両輪として研究活動を実施しているところです。
 そのために、私ども多くの事業を行っておりますが、今回、その中から、昨年10月に立ち上げましたマス・フォア・インダストリ・プラットフォームにおける取組について簡単に御説明差し上げたいと思います。
 2ページをよろしくお願いいたします。まず、アウトラインですけれども、我が国は長年にわたって数理科学分野で高い水準を維持してきたわけですが、DX等進む中で、諸科学分野、社会からの課題に応えて価値を共創するために、新たな数理連携基盤を築く必要に迫られております。
 それに対応して、社会からの要請に数学コミュニティー全体で応えて、総合知構築を実現するオールジャパン体制のプラットフォームをつくろうということで、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、IMIと東北大学、知の創出センターが協力して、全国15の連携機関とともに数学連携プラットフォーム、マス・フォア・インダストリ・プラットフォームをつくったということでございます。
 コミュニティーからのサポート、連携機関、下にございますが、またこれは別のスライドで詳しく御説明いたします。
 3ページをお願いいたします。これは先ほどの文科省のほうからお示しになったと思いますけれども、「2030年に向けた数理科学の展開」という資料からページを抜き出してきたものです。
 下のほうに重要課題3、重要課題4ということで学際、異分野との連携、社会との連携というのが挙げられておりますが、そこに黄色でハイライトさせていただいております。「他の科学や産業・社会との協働により、数理科学の学問の幅を広げ進展させていく機能拡張のモデルを創っていく必要」があると書かれております。
 そのために、全国大学における数理科学の研究者が、他の科学、産業・社会と協働するプラットフォーム組織・体制を整備する。また、共同利用・共同研究拠点を活用すると。また、すぐ下にございますが、東西2拠点に組織・体制を構築するということがうたわれてございます。
 マス・フォア・インダストリ・プラットフォームは、このプラットフォーム組織を実装しようということでつくらせていただいているものでございます。
 4ページをお願いいたします。これも先ほど文科省のほうから御説明があったスライドでございますが、九州大学と東北大が協力して運営していくということで、九州大学のほうは、社会・産業・諸分野との連携基盤、人材育成、それからマス・フォア・インダストリ・プラットフォームを運営することで要請に応えていくという方針でやらせていただいております。
 5ページをお願いいたします。プラットフォームを構成している機関をここに示しております。中核機関はIMIでございます。それから、協力機関として東北大学の知の創出センターがございます。事務局は、IMIの中に昨年新しくリエゾン戦略部門という部門をつくって、そこに置いて運営をしております。
 連携機関として全国15個の機関がございますけれども、北のほうから北海道大学、それから東北大学はもちろんですけれども、筑波大学、理化学研究所、統計数理研究所、武蔵野大学、早稲田大学、明治大学、東京大学、慶應義塾大学、それから名古屋大学、関西圏には京都大学の理学研究科、京都大学数理解析研究所、大阪大学、大阪公立大学、それから広島大学ということで、全国幅広くバランスよく配置されていると思いますけれども、15の連携機関とプラットフォームを立てております。
 運営としましては、各拠点代表者による会議、MfIP会議と称しますが、年に2度程度開催することを考えております。それから、MfIP実務担当者の連絡会議を3か月に1度程度開催いたします。それからIMIの中で、中核拠点の中で運営委員会を立てて、毎月開催し、ここに東北大も参加していただくということにしております。それからアドバイザリー委員会を年に1度ほど開催することを考えているところでございます。
 6ページをお願いいたします。運営を担っているIMIのリエゾン戦略部門、これも昨年度概算要求が認められましてつくっている部門でございます。主に対外的な関係において管理運営を行う機関で、数学系の機関では他にあまりないような役割を担っております。
 大きくミッションが3つございまして、1つは、産学、異分野との連携研究の推進、支援機能の強化、それからマス・フォア・インダストリ・プラットフォームの構築・運営、さらに連携研究そのものを実践的に追求することです。現在、教員が3名、教授1名に准教授2名、それから、連携研究推進を担う教授をもう1人、現在選考中でございます。それから、事務職員が3名配置されております。それと、製造業関係の企業の技術系役員経験者をシニアコーディネーターと称して1名、業務委託をしております。
 それからもう一つ重要なのは、先ほど説明が漏れましたけれども、IMI東京分室と称しまして、九州大学の東京オフィスの中に分室を立てております。ここに事務職員が1名、それから、基金課のファンドレイザーとありますが、IMIと協力して、企業を回る際に共同研究等のマッチングをしてくださっている方が1人おります。
 こういう体制でここに書かれているような様々なミッションをこなしているところでございます。
 この1つの機能として、マス・フォア・インダストリ・プラットフォームを運営するという立てつけにしております。
 7ページをお願いいたします。当面の活動でございますが、まず、産業・社会・諸科学分野との窓口機能、それから共同研究マッチング、非常に大切な機能だと認識をしております。
 例えば企業・諸科学分野におけるまずニーズの発掘ですね。これは先ほど申し上げましたIMI東京分室、これはJRの有楽町駅前のビルに入っております。非常に便利なところにございまして、ここを活用いたしまして、企業様を回らせていただいて、ニーズの発掘をしているところで、私も何度もファンドレイザーの方と一緒に企業様を回りました。
 そのような機会に、MfIPによるワンストップサービスによるマッチング活動をいたしますと言いますと、大変興味を示す企業が実際に多くあります。医学など諸科学分野からのマッチングのニーズもございます。
 それと、次は(9ページ)産業・社会・諸科学分野との窓口機能ということで、例えばこれは実際昨年末に行ったのですけれども、脳科学関連学会連合との大型共同研究プログラムへの協力の依頼とマッチングの要請がございまして、これは11月にそういうお話があったのですが、12月にマッチングのためのワークショップを開催いたしました。
 それから、企業や諸科学分野からの問題解決や共同研究の打診がございますが、これは今後整理して、マス・フォア・インダストリ・プラットフォーム全体に流して対応することとしております。
 それから、各拠点におけるシーズ発掘も非常に重要でございますので、各拠点を訪問したり、それから、マッチングを希望する研究者のデータや連携事例のデータを共有することを考えております。
 それともう一つ、インターンシップマッチングについて、私も企業を回らせていただいて、数学者と共同研究しませんかと持ちかけても、「うーん、数学ねえ」という反応をされることもあるのですが、実は人材のニーズに関してすごく反応していただく企業様は非常に多いです。ですので、インターンシップのニーズが非常に高くて、それのマッチングをしようと。そうしますと、特にドクターレベルの研究型インターンシップを行いますと、企業に数学の素養を持った人材が増えるということで、将来、数学に対してのニーズが増えることを期待しているところでございます。
 8ページをお願いいたします。それから、出会いの機会の創出とその「見える化」ということで、先ほど東北大、水藤先生のほうから御説明がありましたけれども、経団連の数理活用イニシアティブ、それから、異分野異業種研究交流会、我々がやっておりますスタディグループ・ワークショップ、東北大様のほうでやられているG-RIPSなどのPBL型事業、それから知の創出センターにおけるテーマプログラムですね。数学コミュニティーを、外から見たときに一つに見えるようにしたいと思っていますので、こういうさまざまな事業が効率的に見えるようにしていきたいと考えております。
 それから、さらに数学のほうから諸科学分野等に出向いていくという訴求活動も重要だと考えておりまして、諸科学分野の学会などのイベントや、企業や諸科学分野の研究者を招いてのイベント。これはIMIでやっております共同利用・共同研究拠点の研究のスキームを活用して進めていきたいと考えております。
 最後は、まだ構想段階でございますけれども、MfIPキャラバンと勝手に称しておりますが、ふだん諸科学分野や産業との出会いのない純粋系の数学者に対する出会いの場を提供したいと考えております。そのために、諸科学分野や産業界の研究者、連携経験のある数学研究者を招聘して、講演会等のイベントを持ち回りでやるようにすることを考えているところでございます。
 以上、私のほうからの説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【観山部会長】  どうもお二人の先生、ありがとうございました。
 それでは、あまり時間がなくなってしまったのですけれども、今までの発表を踏まえて、御質問等ありますでしょうか。どうぞよろしく。
 城山先生、お願いします。
 
【城山委員】  御説明ありがとうございました。質問というよりか、最初の文科省さんのほうからの御発表に対する少しコメント的なことなのですけれども、大きな話として、社会課題解決のような話の中で、数理科学のような基礎研究をどうやって振興していくかは、まさに一番王道的な課題で、そこのビジョン共有型の基礎科学振興というコンセプトを打ち上げられたのはすごく重要だと思うのですね。他方、今日お話を伺っていると、その根っことして重要課題の1としてビジョン共有型の振興ということを掲げられたのですけれど、そこで説明されたのは、サロンを定期的に開いて意見交換をしていますというだけで、若干少し力弱いなという感じを受けました。
 他方、今日まさに具体的なお話で、東北大なり九大の中での試みでやられたことというのは、いろいろな面白い、産業界との連携だったり、実は研究者自身も気づいていないけれどいろいろ社会とつながりがあるというようなことをまさに現場でやられているという話があって、こういう具体的なプラクティスをベースに、科学の重要性をどうやって社会に伝えていくのかという素材はそろっているのだと思うのですね。そういう意味でいうと、重要課題の2、3、4で言われたようなことをどうやって1の中にフィードバックして、逆に言うと、サロンの中で議論するだけではなくて、そういったものをどうやって社会発信していったらいいのかということの戦略をぜひ考えていただくと、重要課題1に対する、最終的な方向性としては答えになってくるのではないかというふうな印象を受けました。
 以上、コメントですけれども、よろしくお願いします。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。
 
【葛谷推進官】  ありがとうございます。私のほうからいただきました意見につきまして、状況について改めて御説明したいと思います。
 先ほど重要課題1については、定期的に開催というところをお話しさせていただいたところでございますけれども、もう少し具体的にお答えすると、まさに先生御指摘のとおり、東北大学、九州大学さんにおける取組、そういった状況も、この中、実はメンバーの中に東北大学、九州大学さんも入っているところでございまして、実際に活動をフィードバックいただきながら、拠点プラットフォームを日本全体に広げていく、諸科学との連携、社会との連携、そういったものを進めていくための取組をまさにこういった議論の場を通じてさらに発展させていこうと思っているところでございます。
 また、併せて社会発信ですね。こういった数理科学といったものが、DXほか、いろいろな分野においてさらなる活躍をしていくということで、社会へいろいろと発信していくことは大事だと思いますので、こちらについては、今後引き続き、こういった場を通じて議論して進めていきたいと思っているところでございます。
 ありがとうございます。
 
【観山部会長】  前田先生、手が挙がっているのですが、今日御発言のない長谷山先生、辻生成、美濃島先生からももしもありましたらお願いします。
 では、前田先生、お願いします。
 
【前田委員】  私、WPI-ICReDDでデータ科学とか数理科学とかとの連携を密にさせていただいていて、いろいろなうまくいった例とか、問題点とか、難しい点とか、経験してきているのですけど、時間もないと思うので1点だけ、連携を継続することがすごく重要だと思っています。最初は、違う分野でお互い分からないので、こちらが解きたい問題があって、それを解いてもらう。簡単な問題であればすぐ解決しますが、その先ですね、こちらが思いもよらなかったようなことを数理科学が解決してくれて、数理科学のほうでも新しい発見につながる、そういった成果が出てくるのが理想的だと思っています。ただ、そこまで行くには、2年、3年、WPIの環境だと、本当に一つ屋根の下でずっと議論し続けてといったことができて、そのくらいやって、ようやく最近、本当に革新的なことが数学のほうから提案されて、そんなことができるんだったらここにうまく使えるのではないかといったことになって、そこから思いもよらなかった技術が創出できたという経験が、初めて出てきたところです。プラットフォームのようなこともすごくきっかけとしては大事だと思うのですけれど、そこからどういうふうにその関係、一つ課題解決して終わりではなくて、そのコネクションを継続して、思いもよらなかったような連携につなげられるか、というのが大事だと思っています。これができる仕組み、WPIはすごくマッチしているのですけれども、そういうプロジェクトを増やしていくと良いと思っています。
 すいません、少し長くなりました。コメントでした。
 
【観山部会長】  ありがとうございます。
 それでは、美濃島先生、お願いします。
 
【美濃島委員】  ありがとうございます。東北大さんの御報告をお聞きして、大変すばらしい活動をされているなと感銘を受けたのですけれども、私、コメントの中に何回か出ていた工学系でこういった活動を幾つか見ているのですが、どれぐらいの学生が実際こういったことに参加したかということをお聞きしたいなと思ったのですけれど。その理由ですが、工学系でこういう活動は先んじているとは思うのですけれど、大変すばらしい活動だということで始まって、意欲のある学生が参加はするのですが、なかなか広がっていかないというところもありまして、参加する学生がなかなか集まらない。そういった形で、非常にすばらしいプログラムで、企業さんとか、協力の方を集めたりするのですけれど、やはり学生としては負荷は結構ありますし、あと、担当する教員側にも結構負荷があるというようなことがあって、広がっていかないというプログラムを結構見るものですから。このようなすばらしい活動について、そういった規模感といいますか、継続的に今後のことも含めてお聞きしたいなと思いましたので、よろしくお願いします。
 
【観山部会長】  水藤先生と梶原先生、手短にお願いします。
 
【水藤教授】  G-RIPSと言っている学生プログラムのことをおっしゃっていると思うのですけれども、規模は、もちろん上がり下がりありますけれども、だんだん今のところまでは大きくなってきています。最初は2社2課題で始めたのですけれども、今年は4社5課題でした。
 1課題当たり4人なので、そんなに大きなスケールではないです。今年は全部で20プラス1で21人でやりました。参加者はだんだんと増えてきています。
 アメリカのほうの兄弟プログラムは20年の歴史があって、あちらはすっかり知れ渡っているので、参加するのは30倍ぐらいの倍率なのですが、日本ではまだ1.0何倍というところですね。
 やはり学生のほうも、いくら教員に勧められてもなかなかなのですが、先輩が「あそこはよかったよ」と言ってくれるとどんどん広がっていくということもあり、最近はその流れができてきていますので、今後はだんだんと広がっていくと思っています。一気に大きくするのはなかなか難しいのですが、今回のような組織整備で運営基盤を整備できると、ある程度広げていくことができるというところはあります。
 一番苦労しているのは、学生のふだんの研究、授業などとの関係ですね。でも、やはり学生はこういう場を求めているように思います。数学ではそういう場が今までなかったからかもしれませんが、かなり積極的な学生が参加しています。私はとても希望を持っています。
 
【観山部会長】  梶原先生、何かありますか。
 
【梶原所長】  九州大学のほうでも類似のスタディグループ・ワークショップという取組をやっておりまして、東北大学のほうは長期にわたるプログラムですが、九州大学は1週間の短期集中型の問題解決合宿でございまして、実は、2009年だったと思います、その頃からやっております。参加者は、今では教員・学生合わせて100名を超える程度です。企業様からの問題も五、六題ずつ頂けるようになっています。1週間ですので、問題が完全解決するというのはなかなかないわけですが、例えば新しい定式化ができるとか、新しい見方ができるとか、そういうことがございまして、産学連携の第1のステップとして定着しております。
 例えば、そこで活躍した学生をインターンシップに呼んでいただいて、インターンシップでうまくいきそうだということになったら、今度はそれを共同研究に発展させていくという形で、第1ステップということになっているわけでございます。現在では、九大、東北大だけではなくて、東大とか、名古屋大とか、いろいろな大学でこの方式が現在実施されております。
 以上です。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。それでは、長谷山先生、お願いします。
 
【長谷山委員】  長谷山です。資料2-1の、今後の予定として書かれている、九州大学さんのマス・フォア・インダストリの活動を随分と長く拝見していますし、東北大学さんのWPIから始まる数理融合研究も非常にすばらしいものだと思っています。
 表紙タイトルの数理科学に米印をつけて、下方に“「数理科学」は「数学」を含むものとする”と定義しています。なおかつ、重点課題の1のビジョン共有型の基礎科学振興に関わる会議の有識者は、のほとんどが数学者であるようです。そう考えると、ここで議論すべきは、数学に注目したものなのだろうと私は思っています。
 ただ、今後の予定として書かれているのは、多様なキャリアパスを構築するというものです。世界の動向を考えてみれば、数学を学んだ人材に多様なキャリアパスがないのは多分日本だけなのではないかと思います。とすると、何が起こっているのかということを、しっかりと分析する必要があると思います。それは、九州大学さんや東北大学さんのグッドプラクティス大学を合わせてプラットフォームを作ることで、存在する問題が解決するとの議論と、根拠があるのであれば良いのですが、それだけでは解決され得ない大きな問題を日本自身が持っているのではないかと思っています。
 日本以外のほとんどの国では、数学を学んだ人材は引っ張りだこですから、海外の事例を文科省が調べていらして、どこが問題なのかということを考え、その結果に基づいて今後の予定が作成されているということが見えるように、もしくは明確にその内容が記載される形を望みます。
 以上です。
 
【観山部会長】  予定の時間が来ておりますので、手短にお答えが、文科省からありますか。
 
【葛谷推進官】  ありがとうございます。重要な御指摘ありがとうございます。まさに大分前から言われている課題、日本の数理科学者、数学者も含めて、まだまだ海外と比べて多様なキャリアパスが構築されていないといった課題、こちらについてはとても重要な課題だと認識しておりまして、どういったところが問題かというところは、複雑ないろいろな問題が重なり合って起きているものだと認識しております。
 一方で、先ほど御説明、東北大学、九州大学の皆様方から、異分野やまた産業界との連携における活動について取り組んでいただいたところでございますけれど、少しずつ広がり、こういった外に目を向けていくといった、数学者、数理学者の学生、そういったところが増えつつある状況でございますので、引き続き現場の声を聞きながら、併せて学会等とも連携しながら、さらにこういった数理学者が異分野、社会、そういったところに目を向けられるようなキャリアパスとなるように我々も事業を進めていきたい、施策を進めていきたいと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
【長谷山委員】  座長、申し訳ありません。時間が迫っているのは分かっているのですが、私がお話ししたことの1つに対して回答がございませんので、再度発言させて頂きます。世界の動向をしっかりと見るべきだと思います。我が国の数学者がどれぐらい数学以外の領域に論文を書いているのかを見れば、また、数学との融合領域にどれぐらいの論文が掲載されているかを調査すれば、必ず数値エビデンスに基づいた結果が出てくると思います。日本も世界と同じように優秀な数学者がたくさんいるのにこのような現状になっているということを、世界のデータを分析して、しっかりとしたエビデンスのもとに語ることが必要かと思います。
 以上です。
 
【観山部会長】  どうぞよろしくお願いします。今後もこの委員会続きますので、ぜひ、非常に重要なテーマでございます。
 私が思うに、やはり日本の勤勉な労働者の生産性がどんどん落ちてきている。世界の中でランキング非常に悪いというのは、やはり社会の中に数理というのが入ってきてないという状況も1つの大きな理由ではないかと思いますので、非常に重要なテーマでございますので、今後とも検討を続けていきたいと思っております。
 すいません、辻先生、また今度お話しいただければと思います。
 本日の議題としては以上になります。
 基礎研究振興部会運営規則第7条に基づきまして、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表するということになっておりますので、本日の議事録につきましては、後日メールにてお送りいたしますので、御確認のほどどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、すいません、若干時間が延びまして申し訳ありません。以上をもちまして、第13回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を閉会いたしたいと思います。本日は御出席いただき、御協力いただき、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

お問合せ先

研究振興局基礎・基盤研究課