ライフサイエンス委員会(第110回)議事録

1.日時

令和5年12月8日(金曜日)10時00分~11時42分

2.場所

WEB会議

3.出席者

委員

宮園主査、畠主査代理、有田委員、大津委員、加藤委員、金田委員、鎌谷委員、上村委員、木下委員、熊ノ郷委員、桜井委員、澤田委員、鹿野委員、杉本委員、鈴木委員、武部委員、辻委員、豊島委員、西田委員、坂内委員、宮田委員、山本委員

文部科学省

釜井ライフサイエンス課長、廣瀨ライフサイエンス課課長補佐

4.議事録

【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  定刻になりましたので、ただいまより、第110回ライフサイエンス委員会を開会いたします。
 本日は、Web会議システムによる開催とさせていただいております。本審議会は、報道関係者と一般の方にも傍聴いただいております。
 本日は、大曲委員、岡田委員、金倉委員より御欠席の連絡をいただいており、鈴木委員からは途中での退出と承っておりますが、出席委員数は、総委員数25名の過半数13名に達しており、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 会議の円滑な運営のため、ZoomによるWeb会議システムで御参加いただいております皆様にお願いしたいことがございます。委員の先生方、傍聴の皆様におかれましては、表示名は、本名、日本語表記、フルネームとしていただきますよう、お願いします。傍聴の皆様は、表示名冒頭に「傍聴」と御入力ください。傍聴の皆様におかれては、マイクとビデオを常にオフにしてください。委員の先生方におかれましては、回線への負荷軽減のため、通常はマイクとビデオをオフにしていただき、御発言を希望する場合はビデオをオンにしていただきますよう、お願いいたします。また、発言される際のみマイクをオンにしてくださいますよう、お願いいたします。発言が終わられましたら、両方を再度オフにしてください。そのほか、システムの不備等が発生しましたら、随時お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。Web会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいております電話番号に御連絡させていただきます。表示名や音声・映像については、事務局により操作させていただく場合がありますこと、御承知おきください。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、何とぞ御理解いただけますと幸いでございます。
 それでは、以降の進行は宮園主査にお願いいたします。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事と配付資料について、事務局から確認をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  議事次第を御覧ください。
 議題(1)は、委員等からのプレゼン、マル2、今後のライフサイエンスの潮流でございます。今回は、今後のライフサイエンスの潮流を議論するに当たりまして、ライフサイエンス委員会の中でも若手でいらっしゃる、武部委員から御発表いただきます。次に、宮園主査より、老化とフレイル・がんについて、御発表いただきます。その後、質疑応答及び議論を行っていただく予定でございます。
 議題(2)は、その他としております。ライフサイエンス分野における令和5年度の補正予算が先日成立いたしましたので、この点に関して事務局より状況を報告させていただきます。
 配付資料は、議事次第に記載されているとおりです。委員の皆様には、事前にメールにてお送りさせていただいております。資料番号は議事に対応しております。不足等ございましたら、議事の途中でも構いませんので、事務局にお声がけください。
 事務局からの説明は、以上です。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、早速ですけれども、議題(1)に入ります。一つ目は、委員等からのプレゼンテーションということで、今回は2回目ということになりますが、今後のライフサイエンスの潮流ということでお話をいただいております。
 まず、武部委員から、御発表をお願いいたしたいと思います。なお、質疑応答は全ての発表後にまとめて行いますので、御承知おきをお願いいたします。
 では、武部委員、よろしくお願いいたします。
【武部委員】  宮園先生、御紹介、ありがとうございます。私、武部と申します。このような機会をいただきまして、文科省、そしてライフサイエンス委員の皆様に心から感謝申し上げます。
 今日の見解は、私の勝手な見解ですので、その点、御承知おきいただけたらと思います。今日は三つほどお話ができればなと思ってございまして、私自身の研究領域から進展が予測されるようなライフサイエンス領域のお話というのが一つ目でございまして、二つ目以降は、私はアメリカにも研究拠点を持っているというところから、日本のライフサイエンス研究に何か役に立つ視点が与えられないかということを考えて、議題をお持ちしてございます。
 まず、早速、私のメインの研究テーマについて、お話をしたいと思います。私は今、オルガノイドという領域の研究を進めてございまして、特に多能性幹細胞等の細胞を使いまして研究を進めているところなんですが、聞いたことのない方もおられると思いまして、基本的なことも少し御紹介したいと思います。
 オルガノイドというのは臓器のようなものという概念でございますけれども、基本的には、過去、様々なモデル動物での生物学的な知見というのを生かしながら、立体的な複雑な組織を誘導したものがオルガノイドということでございます。具体的には三つの要素を満たしていることが必要でございまして、例えば、これは私の研究の実際の図を持ってきているんですけれども、細胞たち自らが、その発生ですとか、あるいは再生が起こる過程の記憶を呼び起こすことで自己組織化というプロセスを起こすと。このプロセスを経るということが一つ目の要件でございます。一方、組織というのはランダムに存在をしているわけではなくて、例えば、細胞極性、あるいは接着というようなものを介しながら、例えば、ヘパトサイトという肝臓の細胞であれば、血管の側と胆管と呼ばれている老廃物を出す側、これは分かれている必要があるのですが、こうした微細構造を持っているという、トポロジカルな特徴を再現するというのが、二つ目でございます。そして、こういった要件を満たすために臓器特徴的な機能、例えば、分泌をしたり、代謝をしたりという、いわゆる生体機能というのを発現することができるために、現在、研究が非常に過熱をしているというものでございます。
 どう過熱をしているのかというのを次のスライドで少しお示しをしたいと思いますが、こちらはPubMedでオルガノイドに関連する研究の数をプロットしたものでございまして、実はオルガノイド研究というのは古くて新しいと言えると考えております。例えば、黄色は実数を年ごとに示してございますが、実は、1900年代中盤に、動物のシステムを使いながら、オルガノイド研究というのは比較的盛んであったと言えます。一方で、しばらくは低調な時期が続いたのですが、2013年の辺りから直線的に非常に速いスピードで研究が進展しているところでございます。なぜこの研究が進展したかという、この一番最後のウエーブについて、少し考察をしたいと思います。
 例えば、初期の2013年以降のトリガーになった、研究の一番のきっかけというのを一つ挙げるとするならば、理化学研究所の研究ではないかと、私は考えてございます。具体的には、お亡くなりになってしまいましたが、笹井芳樹先生のチームが脳のオルガノイドというのを世界で初めてES細胞から樹立をした、こういう研究が非常に大きなトリガーになったと、私は考えております。その後、現在は慶應に移られた佐藤先生がオランダで発明された消化管のオルガノイド研究、また、シンシナティの、私の同僚であります、James Wellsのグループが作りました、これも消化管のオルガノイドをiPSから作るという仕事、そして、私どもですとか、あるいはウイーンのグループが、ブレインのオルガノイドを作ったり、肝臓のオルガノイドを作ったりと、こういう研究が幾つか連なった結果、2013年には『science』誌が選ぶブレークスルー・オブ・ザ・イヤーにオルガノイドという概念が選ばれるという状況がございました。その後、見てお分かりいただけますとおり、ヒトの幹細胞からオルガノイドを作れるために、人間でしかできなかった研究がシャーレ上でできるということで、非常に論文の数が増えてきたという歴史がございます。一方で、日本の貢献というのがどうかといいますと、お示ししましたように、初期のトリガーを引いてきたのは、実は日本人の研究がかなり多かったと。ここに記載してないものも含めて、多かったと思っております。
 一方で、日本の占める論文の割合というのは2008年以降どうなっているのかというのを見ますと、実は、世界は直線的に伸びているのに対しまして、あまり変わらないか、むしろ若干低減傾向にあるという状況があるのかなというふうに見てとれます。もしかするとこの領域以外もみんな似たようなものなのかもしれませんが、事実としてはこのようになっているというふうに考えています。
 また、もう一つ興味深いのは、今度は特許ですね。特許の出願件数というのをこのデータベースから取ってきまして、これを日本と世界の総数というので決定したものがこちらのデータでございまして、現在、2022年、2023年となりますと600程度の特許が毎年出願されているというような状況でございますが、一方で、日本も若干増えているなあというところではあるのですけれども、この赤字の日本の特許数というのはそこまで増えていないというような状況があるかと思います。この状況に対して危惧もあるかと思うのですが、私自身はあまり懸念を持っていないところもございます。というのも、2008年の笹井先生らの発明から幾つかの日本のチームを中心とした様々な発見というのがいわゆるオリジネータとしてのこの領域を開拓したと思っておりまして、これこそ、基礎研究者がある意味で言うと目指すべき、非常にディスラプティブな発見の一つだったんじゃないかなと思います。一方で、一度できた技術というのを世の中に普及し訴求していくという、言わばディベロップメントのプロセス、こちらは海外勢というのも非常に大きな資金力とリソースを持って挑んでくると。こういうようなことがある意味で言うと考察できるのかなと考えてございまして、ディスラプションを目指すのか、ディベロップメントを目指すのかというのは、一つ、我々、観点としてよく考えなきゃいけないというふうに思っております。
 一方で、このディベロップメントのプロセスがアクセラレートしている理由というのは、幾つも理由はあるんですけれども、一つ、その要素として重要と思っておりますのが、いわゆる企業とアカデミアのパートナーシップというのが非常に激化しているというふうに考えております。例えば、Novo Nordiskさんのほうでは、450億ぐらいのリソースを使いながら、オーストラリア、デンマーク、オランダの機関をつなぐような、新しいイニシアティブをつくりまして、オルガノイド研究を展開するということ。あるいは、Rocheさんですと、100億近い資金を投じまして新しい研究所を創設しまして、オルガノイド研究を基盤にした、さらなるヒューマンバイオロジーの進化というテーマで、つい去年でしたか、この数年でこの二つの事象が起こりました。また、BoehringerさんですとかNovartisさんなんかも大きなパートナーシップを組みながら、非常に効果的にファーマと連携をしながら、それこそ、いわゆるコンベンショナルな創薬から、細胞医薬、あるいは核酸医療の評価というところも、かなり応用に向けて期待が集まっているのかなというふうに考えております。また、アカデミアのトップリーダー、オランダで先ほどの佐藤さんが所属をしていたHans Clevers先生なんかはRocheに移りましたし、ハーバード大のデパートメントチェアでもありましたDouglas MeltonもVertex Pharmaceuticalsというところに移りました。Aviv Regevも企業に移り、Matthiasという非常に有能なバイオエンジニアリングの研究者もRocheに移ってございまして、こういったパートナリングの進み方というのは非常に速く進んでおりまして、これ、理由というのは、下に書いておりますが、今までどちらかというと作るという研究が多かったところから、むしろ応用への還元を実践的に目指すという有用事例を生み出す、言わばコトづくりというところにシフトが生じていることが理由ではないかというふうにも考察をしてございます。ただ、これは基礎研究について考える委員会だと思いますので、私の考える次のオルガノイド研究の重要な領域というのを議論できればと思いまして、残り2枚、御説明をいたします。
 現在、オルガノイド研究がものすごく加速していることのもう一つの背景というのは、いろいろな基盤技術が出来上がってきておりまして、これとオルガノイドというのを組み合わすということで、得られる情報の深さですとか、あるいは幅が非常に改善をしているということがございます。例えば、これは言うまでもないと思いますし、前回の御発表でも委員の先生からございましたが、いわゆるシングルセル技術ですとか、あるいはCRISPRを活用しましたゲノムワイドな遺伝子の編集技術ですとか、スペーシャル(空間的)なトランスクリプトミクスですとか、いろいろな技術が進展をしてございますし、最近では、次にお示しをするのですが、複数のドナー、複数の人間の検体を一括して解析をするような方法論、さらには、ゲノムやトランスクリプトームでは分からなかった、プロテインレベルやメタボライトレベルでの解析等を含め、さらなるオミクス技術の進展というのが非常に速く進んでいると思います。また、イメージング技術等や、あるいは計算技術、さらにはマイクロバイアルエコロジーに関するような技術、こういったものがオルガノイド研究を後押ししている理由ではないかと思っております。
 例えば、どんなことができるかと申しますと、こちらは私やハーバードやコーネル大の研究のサマリーなんですが、例えば、数十名、数百名の患者さんに由来するステムセルのパネルから、オルガノイドで、村ではないのですが、複数の方が同時に共存する仕組みをつくってあげますと、いわゆる環境要因というのは同時に一括して与えることができまして、これを使うと、誰が早く病気になるのか、かかりやすいのか、こんなことも分かってくるところが非常に特徴でございまして、セルライン等では解析ができなかった、あるいはマウス等では解析ができなかったところの人類の多様性の理解というのが進みそうであるという期待が非常に大きいのかなと思ってございます。
 私個人が今後という意味で注目をしている研究領域というのを四つ挙げて、次のトピックに移りたいと思います。
 一つ目の領域、これは複雑なバイオロジーへと、クエスチョンが一つ消化できるんじゃないかと思っております。これまではどちらかというと臓器別、熊ノ郷先生のお言葉をお借りしますと縦糸型医学だったと思うんですが、現在は、免疫ですとか、代謝、循環器、いわゆる臓器間をつなぐプラットフォーム、こうしたものを加味した、言わば、横串の、横糸型の相互作用というのを加味した研究というのが、今後増えるべきであるし、今まさに増えつつあるというふうに考えております。特に、課題としまして、多能性幹細胞と呼ばれるES細胞・iPS細胞、こういったものを使った研究というのは発生の段階のまだまだ初期的なステージにとどまっていると言われておりますので、ここが、妊娠中期・後期、ひいては生後に出てくるようなプロセスに関わっていくためには、今申し上げた横串のシステムをきちんと加味した臓器形成が必要でございます。ですので、ものづくり的研究の余地はまだあるのかなと。
 一方で、二つ目の観点として挙げましたのは、これは前回の発表にもございましたので簡略的に御説明しますけれども、従来のようなモノジェニックな疾患をiPSで研究するというところから、より複雑なポリジェニックな要素というのも見ることができますし、さらには、プロテオーム、リピドーム、メタボローム、こういった情報とひもづけることで、より高次の表現型をシャーレ上で見れると。さらには、最近非常に大きなトレンドの一つでありますのは、進化的な観点から、動物ですとか、あるいはネアンデルタールのような絶滅種、こういったもののゲノム情報を組み込んでフェノタイプを見ていくということで、なぜ人間がホモサピエンスであるのかと、こういうことも考察をしていく研究が非常に重要になるのかなと思っております。
 一方で、こうした先天的な形質というところに加えまして、当然でございますが、高齢化とともに、エクスポージャー、環境要因というのがずっと来るというところから、変化をしていく要素も捉えることが必要です。ですので、こういったものを総称としましたエクスポゾームという考え方ですとか、そこから得られるようなエピジェネティックな変化、こういったものを今後解析していく必要があろうと思っておりますし、これを統合する形で、オルガノイドを全員に作るということは当然難しいですので、これをヒトにひもづけるためのデジタル解析、AI等を組み合わせた解析というのが今後非常に大きくなってくるだろうと思ってございます。
 ということで、オルガノイド研究のお話というのはここまでですが、この後少し、このプロセスの中で我々がどういうふうにライフサイエンス研究を進めるといいかというのを考えたスライドを御説明いたします。
 前半でディスラプトとディベロップというお話をしたのですが、いわゆる全く新たなものを発明していくようなディスラプティブなプロセスと、いわゆる、応用していく、世に広げるというディベロップメントのプロセスというのは、恐らくインサイトが結構違うと思っております。ここに書いてあるのを一々御説明はしないのですけれども、こういうことを考えますと、どうやってディスラプティブなものを日本から生み出すかということを考えますと、ある程度、ディベロップメントのプロセスとは違った特徴づけをする必要があろうと思っております。
 一方で、私、アメリカにもおりますので、日本とアメリカのコントラストというのを感じる機会が多くございまして、そちらにおける課題感というのを少し挙げてみたのがこちらでございます。米国側のはすごくいいかというと、いい部分もあるというところでございまして、例えば、PIの雇用はすぐ首切られるとか、ROIというのを皆さん取るのですが、このためには極めて膨大な予備データが必要であったり、研究申請のためには、100ページ、200ページのグラントプロポーザルを書かなきゃいけなかったり、こんな大変さもございます。一方で、これは意外と御存じない方もおられるのですが、大きな領域の違うコラボレーションというのは極めて難しい。同じデパートメント、同じディビジョンではできるのですが、こういったものは難しい。日本とアメリカ共通の問題点というのもこちらにございますけれども、一方で日本はどうかなあということを考えますと、後に御説明するんですが、スタートアップパッケージがないこと、メンタリングがないこととか、セミナーというとただ1時間話して終わるみたいなことも、非常に効率が悪いなと思ったりしております。また、下に書いてあるようなことは、皆さんもよく御存じのことかなと思います。
 一方で、日本でも強いところもあるなと思っておりまして、例えば、PIの雇用が結構安定していたり、ファカルティーのメンバーが安定していたり、さらに、大学院生なんかは、アメリカですとトレーニングを非常にしっかり受けますので、かなり同じような物の考え方に縛られるのですが、あんまり教育がしっかりしてないという、悪くも言えるんですけれども、これに縛られないために、意外とぶっ飛んだ研究がそんなに阻害されないというよさもあるのかなと思っております。オルガノイド研究からも分かりますように、割とものづくり的な研究が得意だったりすると。こんなところもあると思っておりまして、私は、もしかするとディベロップというよりもディスラプティブな研究のほうが日本は向いているんじゃないかと思っております。
 そして、その科学的な根拠も最近分かってきておりまして、ちょっと時間を過ぎておりますので簡単に御説明しますが、例えば、小さいチームのほうがディスラプトしやすいですとか、あるいは、共同研究者の距離が近いほどディスラプションが起きやすくて、ディベロップメントは起きづらい。こんな幾つかのエビデンスがございますので、サイエンス・オブ・サイエンスの領域の研究を考えると、割とディスラプティブな要素は日本に向いているというふうに考えています。
 しかしながら、それをやる環境というのは日本にはないというふうにも感じておりまして、例えば、ディスラプティブな研究をやるフェーズというのはいつかというと、恐らく国際的にはほとんどが独立直後の5年間だと思っておりまして、その5年間には、普通は組織からスタートアップパッケージというものが提供され、メンターがたくさんいて、これを基に皆さん自由に研究をして、そこから出た種が大型予算やNIHの研究につながるということでございますが、日本の大学で独立したときに気づいたのですけれども、スタートアップパッケージやメンターというのがいないということにかなり衝撃を受けた過去がございます。また、海外では、NIHからとか、あるいは財団とかから、プロジェクトプロポーザルではなくて、「人」に投資をするというような資金なんかもたくさんございますので、こういったところが左側のフェーズを助けているというふうに(音声途切れ)。
【宮園主査】  聞こえなくなりましたね、武部さん。
【武部委員】  すみません。ありがとうございます。
 三つほど、今後できることというのを御提案させていただきたいなと思っておりまして、メンターシップ、スポンサーシップ、コミュニティづくり、偶然を生み出す、そして、プロフェッショナルなサポートを提供するということができると、今後、非常に大きな展開が期待できると思ってございます。例えば、リソースに関してのところで申しますと、既に日本はいろんなサポートはあると思いますけれども、やはり、メンターシップのカルチャーというのをつくるのは非常に大きな要素ではないかと思っております。また、「人」というところをより重視したリクルーティングの方法論というのも大事だと思っておりまして、一般的にやられているような黒板とチョークを使ったチョークトークのような考え方ですとか、あるいは小さなラボを増やすというような観点ですとか、こういったものも非常に重要ではないかなと思っております。また、寄附やエンダウメントの仕組みは国際的には非常にこういう領域の支援に使われていますので、この資金のプールの拡張というのは非常に重要な課題意識だと認識をしてございます。
 一方で、人と人との予期しないつながりやぶつかりというのもやはり重要な要素かと思っておりまして、こういったものはいわゆる、今、新学術等でも、いろんな学術変革等でもあるかと思うのですが、一つのトップサイエンティストが核となるようなコミュニティというのがあるといいのかなと思っておりますし、多様性を高めるために、多様性の目標だけをつくるのではなくて、実際にサポートをするインフラがあるべきではないかなと思っております。また、セミナーの方式は、日本中、ちょっと変えたほうがいいんじゃないかと思っておりまして、興味があれば、後ほど詳しく御説明をいたします。
 こちらは最後のスライドになりますけれども、いろいろプロフェッショナルのサポートを日本のラボというのはなかなか受けづらくて、研究者が事務作業等も全部やるというのが基本かと思うのですが、そういったところも、人事、経理、法務、そういったものもいろんなジョブレイヤーからのサポートを受けるべきであるかと思いますし、今後、ビジネス面でのサポートというところも期待していきたいなというふうに考えております。
 ということで、今後、大学や企業、組織だけではなくて、そこを少し横断的につなげていくような形でクリティカルマスを担保して、今申し上げたようなことが実現できたらいいなと考えてございます。
 ちょっと長くなってしまいましたが、以上で私の発表とさせていただきます。
【宮園主査】  どうもありがとうございます。
 本当に大変面白い話で、すぐ質問したい方はいっぱいいらっしゃると思いますが、予定では私が発表した後にまとめて質問ということになっておりますので、大変申し訳ありませんが、この後、私のほうから話題提供ということで発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 私がこの話をするきっかけになりましたのは、実は文科省のほうから老化についての日本の研究の動向を少しまとめて政府のいろんな方にレクをしてほしいと言われまして、私、専門ではありませんけれども、慌てていろいろな方に聞いて、老化ということについて説明をさせていただきました。このきっかけは、この委員の中に加藤先生もいらっしゃいますけれども、アルツハイマー病の治療薬レカネマブが登場して、それまでほとんど認知症に関しては治療法も何もなかったものが、やっと、認知症に対して治療ができるような、そういう期待ができてきたということで、老化の研究に関して非常に社会の目が集まるようになってきたと。脳研究、それから認知症の研究はもちろん重要でありますけれども、それと同時に、認知症以外、老化について、もう少し現状を知りたいということでありました。私は専門ではありませんので繰り返し言い訳を言いますけれども、知っている人にいろいろとお聞きしまして、今日御紹介するようなことをまとめて皆様に御説明したということで、もう一度ここで、ライフサイエンス委員会の皆様とシェアしたいと思います。
 まず、よく少子高齢化とか高齢化していると言いますけれども、日本は既に、高齢社会を既に過ぎて、超高齢社会になっています。これは、65歳以上の方が何%いらっしゃるかとか、そういうことで計算するわけですけれども、恐らく2065年頃には、65歳以上の人が2.6人に1人(38.4%)、75歳以上の人が25.5%と、こういう社会が来るということで、75歳以上あるいは65歳以上の方がこのような形でどんどん社会の中に増えていく、こういった社会が本当にどんどん進んできているということで、老化の研究ということはこれからますます重要になってくるだろうと思われます。
 一方で、これは『Lancet Public Health』というジャーナルに載った論文からお借りしてきたものなんですけれども、日本人、単に平均寿命が延びている、みんな長生きするようになっただけではなくて、健康な状態で寿命が延びていると。それに対して、これは各国の人々は何歳ぐらいの人が世界平均の65歳の健康度と同等かというのを調べた図なんですけれども、これは海外からのデータですが、日本人ですと、一番右端にありますけど、76歳の方が世界平均の65歳と同等の健康度を維持しているということです。この後、スイスとか韓国などが続きまして、米国はこの辺ですから、日本人は、平均寿命が延びただけではなくて、かなり健康な状態で、75歳とか、それ以上の年齢に至っているということが、これからは分かります。
 そうするとどういうふうになるかということですが、実はまた別の統計がありまして、平均寿命というのがどんどん延びていると言われていますけれども、病気等のない健康寿命というのがもう一つ報告されているのですが、健康寿命というのも延びていますけれども、健康寿命と平均寿命の差というのは、実は2001年と比べてそんなに変わっていません。女性ですと、健康寿命の後、12年ぐらいは何らかの病気あるいは介護等が必要な状態になって死に至ると。男性の場合はちょっと短くて9年ぐらいですけれども、この幅はあまり狭まっていないというのが、この統計の特徴だということであります。
 そうなりますと、できるだけ健康な状態で老化を迎えて寿命を全うしたいということになりますと、老化とともにどんな病気が関係してくるかということで、いろいろな病気、こういう図がジャーナルには掲載されているということであります。繰り返しになりますけど、認知症につきましては、いろいろトピックになっておりますし、御専門の方もおられますので、またお聞きする機会があると思いますから、私は認知症以外についてまとめましたので、少し御紹介いたします。
 フレイルとサルコペニア、この二つの言葉が超高齢社会の中では非常に重要なファクターになってくると。より質の高い高齢期を迎えるにはどうしたらいいかということで、こういった研究がなされています。
 資料を取ってきますと、加齢による身体変化ということで、これは東大の老年病学の秋下教授から頂いた図なんですけれども、代表的なものは四つの変化。一つは身体の組成ですね。骨密度の低下はよく言われていますけど、脂肪量が増加して、筋肉量が低下する。これがサルコペニアという状態に近くなるわけですが、こういったことが起こる。それから、エネルギー産生と消費の不均衡ということで、活動量が低下し、食事摂取量が低下していく。それから、恒常性の調節異常ということで、サイトカインの増加とか、ストレスに弱くなるといったことがあります。そして、神経変性、認知症等が起こってくる。これらが加齢によって起こってくるわけですけれども、病気になりやすい状態になってくるというわけです。こういったもの全体をまとめた形で、フレイルという言葉が今使われているということであります。
 そうしますと、健康な状態から要介護、そして寿命を迎える、この間のフレイルというのは、定義としましては、まず、生理的な予備力が低下して、外からのストレスに対する抵抗力が弱まる。そして、いろんな疾患にかかりやすくなる状態ですけれども、フレイルになると必ずこちらのほうに進んでいくというわけではなくて、まだ可逆的な状態であるので、年を取る中でこの状態をどのようにして遅くてしていくか、そして、要介護の時期を短くするかというのが、臨床の先生方の中では非常に重要な議論となっていると。このフレイルも、今言ったようなことで定義もぼんやりしたところもありまして、身体的な状態、精神・心理的な状態、そして、独居とか経済的困窮など、社会的な状態、こういったものが集合した形でフレイルが進んでいくということが言われているようです。ちなみに、フレイルというのはFrailtyと書きます。
 ですので、今後は、より健常期間を延ばして、フレイルをより高齢期にシフトして、要介護や機能不全の状態をより短くする。単純な寿命の延長ではなくて、高齢期の人生の質を高めるというのが、今後は社会的に求められるだろうということであります。
 それから、フレイルの中でも、歯科の先生方の世界では、オーラルフレイルという言葉が使われておりまして、これはフレイルの一つの形と考えてもらえばいいと思いますけど、口の中の状態、口腔衛生や口の機能というのは老化と密接に関係していまして、口腔の健康状態、口腔の脆弱性が老化すると、食べるということも難しくなりますし、栄養障害にも関係する。そして、むせたり、口腔の機能というのはフレイルと非常に密接に関係しているということで、歯科・口腔外科の分野では、今、オーラルフレイルという言葉が注目されているというふうに伺っています。ですから、オーラルフレイルと身体全体のフレイルは非常に密接な関係があって、口腔内の状態が健康であるということも健常な老化という意味では重要であるということが、今、話題になっているということです。
 それから、サルコペニアというのは、肉を表すサルコ(sarco)という言葉と喪失を表すペニア(penia)を組み合わせた造語だそうですけれども、年を取っていきますとだんだん、筋肉の量が減ってきて、脂肪が増えてくると。そうしますと、筋力が低下して、様々なトラブルを起こし、転倒して骨折などを起こして死亡のリスクが上昇するということで、こういったことでサルコペニアという言葉も大変注目されているところであります。
 私が関係している分野で、TGF-βファミリーの中でミオスタチンという遺伝子がありまして、これは別名Growth Differentiation Factor-8と言います。生まれつきミオスタチンを作っていない動物というのが実は自然界に見られまして、ミオスタチンというのは、筋肉の細胞で作られて、筋肉の増殖を抑えるタンパク質です。生まれつきこれを作れない動物がいまして、Double muscle cattleとか、このように筋肉が隆々とした牛が見られますし、そのほかミオスタチンを作ることができない動物というのは自然界でも時々見られるようです。実は、ミオスタチンが見つかりまして大変注目されていたんですけども、2004年には、人で、子供さんで、この遺伝子の異常を持った方で、こういうふうに筋肉がかなり多いということで、このタンパク質が非常に注目された時期があります。大手の製薬メーカーがミオスタチンの作用を抑えるような抗体医薬、あるいはその関連の医薬を作ったのですが、これは残念ながら臨床的には効果がなかったということです。ミオスタチンの作用を抑制することができれば、高齢者の筋力低下だけではなくて、例えば、筋ジストロフィーのような筋肉の病気ですとか、それから、がんで見られますカヘキシアにも使えるのではないかということで随分注目されたんですけども、最終的にはどれもうまくいきませんでした。
 私たちも調べてみたんですけども、ミオスタチンの代わりに、フォリスタチン様タンパクというのがありますが、これを入れると、確かに動物は筋肉が大きくなりますし、それから筋力も上昇します。ただ、どうもヒトでは、ミオスタチンだけではなくて、いろんな遺伝子が関係しているということですので、近い将来、これを克服するような治療薬が見つかるんじゃないかということも言われています。ちなみに、スポーツ界ではドーピングなどに使われるんじゃないかということでチェックリストに入っているということでありますが、こういったものもサルコペニアの治療ということでは可能性があるんじゃないかということです。
 それから、もう一つ、Inflammagingという言葉、私もいろいろ聞いているうちに初めて聞いたんですけれども、サルコペニアで筋力が低下しますと、いろんなファクターが出てきます。慢性の炎症のファクターが出てきますと、血管が老化してくると。血管が老化すると、今度は動かなくなって筋力低下がまた起こってくると。こういう悪循環が起こるということで、高齢で筋力低下が起こると、炎症がいろんなところで起こってこういった老化にも関係してくるということで、こういった意味での研究というのもこれから盛んになってくるんじゃないかということをお聞きしました。
 私、専門はがんですので、超高齢社会とがんということも簡単に触れさせていただきますけれども、よく言われますのは、動物の中でも老化しにくい動物というのがいると。いろいろ調べてみると、例えば象はp53というがん抑制遺伝子が複数あるのでがんにはなりにくいんだとか、いろんな研究がなされているようです。これはネットで調べてきた話で、皆さん、御存じの方は多いと思いますけれども、ハダカデバネズミという非常に特徴的なネズミ、熊本大学の三浦先生たちのグループが盛んに研究しておられますが、ハダカデバネズミは30年生きるのだけれども、がんになりにくいということで、この前、プレスリリースがありましたので、それから取ってこさせていただいたのですけど、マウスの線維芽細胞の中に老化した細胞が出てきて、これがいろんな炎症性のタンパク質を出して老化するのですが、ハダカデバネズミの線維芽細胞では、細胞の老化が起こった場合に細胞死が誘導されて、その結果、老化した細胞が死んでしまうということで、老化しにくい、がんになりにくいんじゃないかという研究も、この後、もう一回触れますけれども、盛んに行われてきて、老化の研究も細胞生物学的な視点から、かなり大きな進歩が見られているんじゃないかと思います。
 がんのほうですけれども、がんは、様々な物理・化学的な刺激、あるいは様々な遺伝子の異常とエピジェネティックな変化によって、遺伝子の変異とか、そういったもので起こるということで、よく言われていますのは、大腸がんは様々ながん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常が蓄積することによって起こるということで、炎症とか、ストレス、そういった刺激によってこういった変化が起こることががんにつながるということが言われているのは、御存じのとおりです。
 がんに関しましては、外科治療、放射線治療、化学療法、これらも最近は物すごい勢いで進んでいまして、かつては転移があると外科手術はできないと言われていたのですが、今は、大腸がんでも、転移がありましてもどんどん手術をするような時代になってきまして、こういったところが非常に進んでいる一方で、分子標的治療、免疫チェックポイント療法が出現いたしまして、様々な形で今は転移したがんでも何とかして治療することができるような時代になってきていて、癌学会などでは、肺がんの分野では、すぐ近い将来にはがんを慢性疾患と捉えられるような時代になるだろうということで、がんの早期診断・治療だけではなくて、がんの予防とか共生の時代にこれからどんどんなっていくだろうということが言われています。そういうことで、今、例えばAMEDのムーンショットなどでも、がんゼロの社会を目指そうと。高齢を迎えればいろんな方ががんになりますけれども、それを早めに発見して予防していくような時代になっていくだろうということで、様々な新しい試みがなされているということであります。
 その中で、最近、個体老化と同時に細胞老化という研究がどんどん進んできておりますので、最後に、これらについてもちょっと触れてみたいと思います。
 個体の老化、先ほどのフレイルとかサルコペニアのほかに、細胞が老化していくということで、これは「医学界新聞」の記事をそのままお借りしてきましたので、もしよろしければ、これを読んでいただければと思います。増殖していた細胞が、細胞周期が停止した状態でこのような形になるということですね。これは、がん研究所の高橋暁子先生に頂いたんですけど、正常な細胞が老化すると細胞周期が停止して、p21とかp16のようなものが上昇して、そして老化した様々な炎症性タンパク質などを分泌するSASPというもの出していくので、老化細胞に対応すれば老化に関係した様々な疾患の治療等にもつながるんじゃないかということで、最近、盛んに研究が行われております。ですので、細胞の老化に伴いまして、SASPの阻害薬ということも重要ですし、老化した細胞ができますと、それらが周囲の細胞に様々な悪い影響を及ぼしますので、老化した細胞を除去するような、そういった方法も今後は大きな注目を浴びるだろうということであります。
 ですから、こういった、老化とか、がんとか、様々な生活習慣病に対して、治療法はもちろんですけれども、これからは予防や自己管理などに重点を置く時代が来るだろうと。プレシジョンメディシンという言葉が使われていますけれども、将来的にはプレシジョンパブリックヘルスといったような、個々の公衆衛生学というんですか、衛生学といったことが広がっていって、その中には情報学やAIなどが導入されていくのではないかということですね。例えば、血糖値に関しましては、最近はこういうセンサーを入れて血糖値を測っていくと、自分の血糖値がどれくらい高いかというのをリアルタイムでモニターすることができます。これは実は私の血糖値なんですけれども、食事をした後、非常に高い状態が続いていたので、いろいろやりまして、今はちゃんと正常状態に近い状態でいれているということをお見せしますが、こういったものがどんどん増えてくることによりまして、病気を予測して、それを早めにコントロールするという時代がこれから来るのではないかということです。
 実は、この後、理化学研究所の神戸のBDRの西田センター長がおられるところからデータを頂いているのですが、これはまた別の機会に先生方に御説明される機会があるかと思いますので、これは飛ばさせていただきまして、私の発表はこれで終わりとさせていただきます。どうもありがとうございました。
 ということで、私は、自分の仕事ではなくて、皆様からお聞きしたことを御紹介したわけですが、これから質疑応答に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 発表に関する御質問もしくは今後のライフサイエンスの潮流に関する御意見がございましたら、ぜひ積極的にお願いいたしたいと思います。最初に私から、武部先生のお話で、私、日本医学会で今後の医学の研究はどうなるかという話をしたときに、いろんな方にインタビューをした中で、アメリカや中国で、例えば新しい機械ができて、クライオ電顕なんかを何台も買ったけど、日本はなかなか買えないで遅れてしまっているという話をしましたら、岡田随象先生が、そういうことはほかに任せておいて、一番最初の重要な発見をするのが一番大事なんだということをおっしゃったことがあります。是非ともディスラプティブな研究を日本で支援していければと思いますが、武部先生、いかがでしょうか。
【武部委員】  私の感覚としては、日本人の特性といいますか、こちらにいますと、アメリカ人の方たちってなかなか、少し型を破ったような研究って本当にすごくしづらくて、先ほど少し申し上げたのですが、例えば、大学院のプログラムとかもすごくしっかりして、メンターも非常にしっかりした方がつくので、逆に言うと、例えばディベロップメンタルバイオロジーであれば、ディベロップメンタルバイオロジーのトラディションから抜け出るというのが仕組み上すごく難しくなっていますので、直線的に広げていくというフェーズはやりやすいものの、少し型を破った研究ってやっぱり難しいので、そういったところが今まで日本で結構多かった歴史的背景なんかも考えると、何らか、そういうディスラプティブなものというところに考えを持っていくのはすごくいいなと思っています。ただ、その反面で、海外とか欧米と比べたときに最初の加速をサポートする要素というのが日本にはあまりなかったりするので、そういった部分を何らか日本的にできる解決策を模索できたらいいのかなと思っております。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 次々と手が挙がりましたので、順番にお願いいたしたいと思います。
 まず、木下委員から、お願いいたします。
【木下委員】  武部先生も、主査の先生も、どうもありがとうございました。
 武部先生のほうでちょっと、コメント一つと、あと、質問というか、コメントですかね。あります。
 ディスラプティブ研究を進めるって、本当にいいお話をいただいたなと思っています。そのときにディベロップメントとのバランスが重要かなというふうに思っているんですね。というのは、例えば、今、次世代シーケンスあるいは空間オミクスのところで起こっていることなんですけども、今年発売された機械が来年には陳腐化する。でも、機械は1億ぐらいするみたいな。だから、単なるユーザーに落ちてしまうと、コストだけかかってというか、それこそディベロップをしている国にお金だけ払って、研究成果はディベロップメントに結構タイトな企業との共同研究で生み出されることも多いですので、やっぱりバランスは重要かなと。それこそ一番の理想は、日本でディスラプティブな研究をしたものをきちんと産業界につなぐということがもうちょっとスムーズにできるといいと思うんですね。だから、先ほどのお話の中で、途中でちょっと、人材が産業界に結構行っているということをお話しいただきました。実際、海外で起こっていることは肌感覚としてあって、同じ分野の人もどんどん民間に行っていて、今、すごいなと思っています。ただ、日本は、若干そういう傾向はありますけど、それでもまだ、アカデミアはアカデミア、民間は民間で、産学連携というのをわざわざ言わないと進まないというところが弱いのかなと思いました。
 もう一つは、スタートアップの経費、前回も議論があったと思うのですが、これもすごく重要で、特に橋渡し研究を例として挙げていましたけれども、私も頂いていたから手前みそになるかもしれませんが、あそこで培ったコミュニティはいまだにすごく重要なコミュニティになっていますし、そのときに結構、近いけども遠いというか、何か微妙な距離感のソサエティというか、コミュニティをつくれているので、私はそういうのを若いうちにつくれたというのは本当にラッキーだったなと思いまして、そういう機会を若い人にもぜひぜひ持っていただいて、横のつながりも持ちつつ広げていただければなと思いながら、ものすごく刺激的なお話、どうもありがとうございました。
 ただのコメントで終わります。
【武部委員】  ありがとうございます。本当におっしゃるとおりだと思いますし、特に起業の部分は、今日、後半の最後のほうのスライドで、事業化していくための特許の受渡しですとか、スタートアップを起こしたときのつくり込みとか、そういったところをもう少し日本の中でもうまくやれるようになると、ちゃんとプロフィットも日本に戻せるということになるのかなと思うので。
 ありがとうございます。
【木下委員】  ありがとうございます。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 では、続きまして、坂内委員、お願いいたします。
【坂内委員】  ありがとうございます。今の木下委員のこととも重なるんですが、日本はディスラプティブな研究が得意であるということ、これは本当に全く同意で、そこが日本の強みだというのは同意しております。
 一方で、現在求められていることとしまして、ディスラプティブなものはお金にならない、ディベロップして初めてお金になるという現実がございまして、アメリカのほうでは、逆にディスラプティブなものをどうやってお金に換えているのか、もし御存じでしたら御教示いただきたいと思い、質問しました。武部先生、いかがでしょうか。
【武部委員】  ありがとうございます。ディスラプティブなものという表現と少しずれるかもしれませんけれども、確率が低いということだと思っていまして、ディスラプティブなものはお金にはなるというふうな認識を私はしていまして、ただ、その数が物すごく少ないので、打率が悪い部分の効率の悪さが例えばベンチャーキャピタルとか市場からお金を確保できないということになっていると思います。一方で、そういったところを担保するためには、ディスラプティブなポテンシャルのある人というところに着目をしてお金を入れるという仕組みがございまして、一番よくやられるのは、エンダウメントと呼ばれる、日本でも最近、10兆円ファンドといって国が運用するというのをやっているかと思うのですが、それを各大学が持っていて、そこである程度自由にできるような予算があるとか、あるいは、実はNIHも人に投資をしますというファンディングのメカニズムがございまして、多くの人はRO1というプロジェクトファンディングなんですけども、その人のクリエイティビティにかけて年間1億ぐらい出すというファンディングがありますので、そういうタイプのファンディングとか、あとは寄附金ですね。寄附税制があるので、寄附金を使ってそれをやるというのもあるのかなと思うので、そういう幾つかのファンディングのチャネルがそれを担保していて、その中で一部がものすごく伸びていくというようなイメージかと思います。
【坂内委員】  大変分かりやすかったです。ありがとうございました。
 人につけるというファンディングは、さきがけとかはプロジェクトなんですけど、若干、人につけるというような面もあるのかなと思いますし、今、いわゆる選択と集中されていると言われる側のシニアな方からも、やはり人につけるのではないかという声がアカデミアのほうからも出ておりますので、ぜひ我が国でもそのような仕組みができるといいと思いました。ありがとうございました。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 それでは、大津委員、お願いいたします。
【大津委員】  武部先生にお伺いしたいのですが、すばらしい御発表、ありがとうございました。ディベロップの話になりますけれども、先ほど、オルガノイドに関して、製薬の大手のほうが非常に大規模に産学連携でやり出したという話をしておられましたが、逆に、こうなった段階においてアカデミアの研究というのがどの辺にオリジナリティを持っていく話になっていくのかということが1点と、それから、この後、スタートアップ等も数々生まれてという話があるんですけれども、実際、このスタートアップというのは、オルガノイドでの話なのか、そこから導き出された創薬とか、いろんなゲノム編集的な話の方向でつくっておられるのか、その辺、2点お伺いしたいのですが。
【武部委員】  ありがとうございます。こういったプライベートカンパニーとのパートナーシップをやっている例というのは、実は企業のブランディング側面も結構強いような印象を持ってまして、すごく有能な研究者が製薬会社でR&Dをやっているということに割と価値を持っているようで、幾つかある例のうちの物にもよるんですけれども、私が今日挙げたものはかなり自由に研究をやっているケースがほとんどでありますので、そこまでの拘束をされているものはないという認識です。ただ、特許に関してはファンディングしている会社が取ってしまうので、そういう意味でインベンターとして得られるゲインというのは少なくなりがちなようなんですけれども、逆に、研究者の給料とか、いろんな待遇面はすごくいいので、ある意味で言うと、そこでトレードオフになっているのかなと思います。
 2点目の御質問のオルガノイド・スタートアップがどういうところを目指しているのかというと、一つ目はやはり創薬です。既存のコンパウンドとか、あるいはジーンセラピーのプロダクトとか、細胞療法、CAR-Tの効果とか、そういったものが誰にどれぐらい効くのかというのを予測するのに使っておりまして、例えば、いわゆるクリニカルトライアルのデザインを少し分核化してターゲットを分けたほうがいいんじゃないかとか、そういうガイドに使うようなものが、今、一番お金が集まりつつあるような領域かなと思います。ただ、オルガノイドそのものを治療に使う移植のプログラムも大きなファーマなんかでは今進んでおりますのと、あとは、AIを使った予測モデル系ということで、ゲノミクス研究とのハイブリッドの会社も米国ではすごく増えてきているのなと、そんな感覚でございます。
【大津委員】  ありがとうございました。
【宮園主査】  それでは、杉本委員、お願いいたします。
【杉本委員】  武部先生の研究費とメンタリング、コミュニティ形成について、ほかの先生ともかぶりますけれども、コメントをさせていただきたいと思います。
 まず、研究費についてですが、研究費ロットが矮小化・断片化しているということについては、現在ちょうど、生物系では最大級の分子生物学会が開催中なんですけれども、そこの理事会においてもかなり時間を取ってこの点は議論をされまして、科研費のさらなる充実というのは研究者レベルから非常に大きな声が上がっておりますので、今、意見を取りまとめようということで、ぜひ御検討いただければと思います。
 それから、17ページ、18ページで挙がっていました今後に向けてですけれども、先ほどから何度か出ています、さきがけ研究は、これこそ本当に世界に誇れる先駆的なシステムだというふうに、私も、受給した経験とアドバイザーを務めた経験から、大変強く感じております。今もまた、創発的研究など、ほかにも似たようなシステムもできていますけれども、さきがけを頂戴した方は本当に、異口同音にすばらしいシステムと言っていらっしゃると思います。これは、日本の場合、各大学や組織がスタートアップパッケージをなかなか構築することができないということもあり、一部、その役割を担ってきたという部分もあります。また、武部先生のお話にもありましたようにアドバイザーがメンター機能を担っているということもあり、キャリアステージの異なる研究者が交流する機会も提供しているという、武部先生の御提案の中のほとんどのものがかなり実現できているシステムなので、これはぜひ、維持するプラス拡張していただけるとよろしいのではないかと思います。若手PIの育成という点では、ここのモデルケースをぜひ充実していただきたいと思います。
 武部先生も、もし何か追加でありましたら、ぜひ、よろしくお願いいたします。
【武部委員】  私も、さきがけ卒業生としては全く同じ感覚なんですけれども、さきがけのサイズというのにはまだ課題があるような気がしていまして、トータル4,000万ぐらいで5年間とかだったと思うので、1人雇ったら何もほぼできないぐらいの規模だという認識なんですね。なので、最初に5年で挑戦するのだったら、2人ぐらいいて、消耗品もある程度担保できるぐらいのイメージの予算感じゃないと実質的にプロジェクトできないので、多くの方は誰かのラボの傘の中で半独立みたいな状態でやるというケースが多かったので、ちゃんと独立させてあげられるようなロット感でさきがけが構成されるのがベストだという感覚です。
【杉本委員】  ありがとうございました。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 それでは、桜井委員、お願いいたします。
【桜井委員】  武部先生、お話、どうもありがとうございました。私、実装化においてイノベーションというのは、本当にコミュニケーションなくしては生まれないなということを実感しております。先生は日本ではコラボレーションの敷居が高いとおっしゃったと思うんですけど、聞き逃したかもしれないのですが、この辺り、具体的にどういうことをイメージされておっしゃっていますでしょうか。
【武部委員】  二つあると思っていまして、私は医学部なのでというところもあるかもしれませんが、皆さん、持たれている技術の先進性というのを大切にされる方が多い印象で、そう簡単に内容とかを全部シェアするみたいなことというのは同じ組織にいてもなかなかないのかなという、心理的安全性のバーがちょっと高めという感覚が一つだと思います。
 もう一つは、アメリカでよくあるんですけども、先ほど来議論しているメンタリングの仕組みがないということだと思っていまして、例えば、5人ぐらいの教授が1人の学生を面倒見たり、あるいは若手の教授をシニアの教授がメンタリングしたりと、そういうような仕組みがよくあるのですが、メンタリングしている間に、君の研究は私のこの技術を使ったらいけるじゃんと、勝手にコラボレーションが生まれるケースが多いんですね。なので、メンタリングの仕組みがないために、そもそも自分の研究はどういう技術とつながったら引き上がるのかという感覚にあまり出会えないというところがあって、メンタリングの仕組みがしっかりとうまくつくれるとコラボレーションの機会はかなり増えるという感覚を持っています。それが日本にはないと。
【桜井委員】  ありがとうございます。すごくよく分かりました。実は、大企業というか、外資系の企業でもメンタリング制度がすごくたくさん、ちゃんと充実していまして、マネジメントレベルもさることながら、下の人たちに対しても、違う部署の方がメンタリングに入るんですね。同じ部署だとどうしても、上下関係とか、いろいろあるので、そういった仕組みがぜひ、大学や研究のほうでもあるといいなって、すごく思いました。ありがとうございます。
【宮園主査】  それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】  加藤です。武部先生は日本のほうがぶっ飛んだ研究が可能だというふうにおっしゃっていて、私も常々そのように感じていました。アメリカだと、はやりの研究じゃないと研究費が取れないというようなことで、なかなかそういう流れに沿ってない研究というのはアクセプトされないような雰囲気があるように思っています。ただ、確かに日本の研究申請書なんかを見てもぶっ飛んだテーマは多いんですけれども、実際やると、詰めが甘かったりして、詰めるだけのリソースがないと。そういうようなことでそれが実らないということが多いのかなあというふうには感じています。この20年間の間、日本ではどちらかというと、日本流を究めるというよりは、アメリカ式を取り入れようという試みが盛んに行われたと思いますし、私が理研に行ったときも、30代をPIにしてスタートアップの資金を十分に渡してという形で、どちらかというとアメリカ式を目指そうということでやられていましたし、理研でそういう方法が行われたのを大学でも取り入れていくということで競争的資金という形でそれが実現しつつあったと思うんですけれども、その結果、残念ながら日本の良いいところが失われて、アメリカの良いところも取り込み損なってしまったと、そういうことが起きたのかなと思っています。理研では無期雇用問題が発生したり、大学でも若手の雇用の安定性が失われたりして、何年たっても、特任、特任と、そんなような条件になってしまった。
 こういう中でどうするかということですけれども、先ほど宮園先生が岡田先生の言葉を引用されてディベロップはほかの国に任せてというふうにおっしゃっていまして、武部先生もそういうお考えだったと思うのですが、私も本当にそのように思いまして、今後は、ディスラプトするような研究にチューニングしたような、日本の科学政策をそういう方向に向けて転換していく必要があるんじゃないかなというふうに、個人的には感じています。
 そこで、武部先生は、過去20年の日本の科学政策をどのように評価していらっしゃって、今後、どのような方向に持っていくべきかというふうにお考えかということを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【武部委員】  ありがとうございます。すごく大きな命題で、なかなか一言で言えないところもありますけれども、一つ思うのは、ディスラプティブな研究をできるタイプの人とディベロッピングな研究をやるのが得意なタイプの人とにかなり明快に分かれるような印象を持っていまして、そこのミスマッチが起きるとお互い非常にアンハッピーになるという感覚がございます。ディベロッピングな研究をする方は、例えば、海外ですと仕事の職種の流動性というのが担保されているので、アカデミアから適切なタイミングで移動できる、適材適所に配置換えできるというところがあって、例えば、ベンチャーキャピタルに行くとか、あるいは、いわゆるファーマに行くとか、スタートアップに行くとか、そういう職種の多様性と流動性というんですか、そこがインダストリー業界の中でちゃんとできてくると、当然、全員がディスラプティブなことができるわけではないので、職の流動性というのを高められるような仕組みを逆に、大学だけではなくて、企業も含めて一緒にできると、もしかするといい形の自浄作用が働いていくのかなという気が個人的にはしてございます。日本の科学政策が今後よくなることを願いたいなと思って、今日、プレゼンしましたので、何となく、これからの議論の中で、皆さんと志が近いということがちょっとずつ分かってきたので、頑張っていこうかと思いました。
【加藤委員】  どうもありがとうございます。
【宮園主査】  じゃ、鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  ありがとうございます。非常にエキサイティングな議論で、わくわくして伺っておりました。
 ディスラプションを我々のユニークなポイントとして今後推し進めるとなると、そのときのビジネスモデルというんですか、先ほど特許の話も出ましたけれども、特許だけではなくて、多分、どうやって知的財産を守り、活用していくか、こういうことを話し合う場というのはどこにあるのかという質問と、もう一つは、海外のリサーチャー、優秀な人たちを日本に呼び寄せることも含めて、荒い言い方をすると、例えば、基礎科学の知的財産でもうけた場合には、研究者の方々に大きなインセンティブがある。例えばタックスフリーとか、何かそういう工夫があると、勢いを持って進むように思います。何か、それについて御意見を伺えれば、うれしいです。
【武部委員】  ありがとうございます。幾つか視点があるかなと思っていまして、今の日本の大学の中の仕組みですと、特許のことそのものを考える人はいるんですが、経営のプロセスを考えるとか、あるいはリーガルのプロセスを考えるとか、少しずつ具体化していくためのビジネス戦略を考えられる人というのがなかなかつながれていないというところがあって、恐らく、ビジネスディベロップメントができて、カンパニークリエーションに割と特化した人材というんですか、そういうコアになるような方が各組織に1人2人いるとすごくありがたいなと思うんですが、私の場合は、アメリカですごくそういうのが得意なベンチャーキャピタルとかも親しい方というのが何人かいて、その人に聞くと、この場合はこの人に頼んだらいいんじゃないということでビジネスとリーガルの専門家がついて会社ができるみたいなことをやっているので、その人のつながりをどううまくつくってあげるかというのが一つかなと思います。
 インセンティブのところは本当にそのとおりで、実は、説明しなかったんですけども、後半のスライドで書いたのは、スタートアップをつくったときに、アメリカですとタックスのインセンティブが、フォーム83(b)というのをファイルすると、最初に払った株価で、例えば10円中の1円という税金で、キャピタルゲインが出ても税金を払わなくていい、そういう税制優遇とかあるんですよ。日本にそういう仕組みはなかったりするので、ゲインが出たとしても、そんなにファウンダーにうれしいことが起きないということが一つあるかなと思っています。
 もう一つは、日本のCOIの仕組みで、大学は株を持っているとすごい悪いみたいな印象になりがちだったりとか、一時的にでも経営に関わるみたいなフェーズがあるとNGが出る大学が国立大学の中でもあったりなかったりという感じだったりするんですね。なので、大学の中でアントレプレナーシップのカルチャーが必ずしも悪いことではなくて、将来、もしゲインが出たとしても、それって社会に価値が出ているということなので、ある意味で言うと、そこをサポートするカルチャーづくりというのも少し見方の転換をしないと、皆さんが頑張っても事務の人たちからすごくネガティブに捉えられちゃうとか、そういうことを私も過去何回も経験してきたので、そういうカルチャー側面も結構あるのかなと思っております。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 じゃ、畠委員、お願いいたします。
【畠主査代理】  武部先生、どうもありがとうございます。相変わらずシャープな切り口でいろいろ話してくださって、とても楽しかったです。
 武部先生に御質問です。先生の御発表の中で、「米国と日本におけるライフサイエンス研究にみる課題感」という記載があって、その中で「コンソーシアムなど大きな組織をすぐ作りたがる」というアメリカの課題というのをお話になった一方で、「大きな領域越境が困難」と。それが逆に日本のディスラプティブなものにつながると思うのですが、逆に、日本は大きな領域越境をしやすい環境にあって、むしろそこを後押しするような施策があり得るのか。すなわち、これはアメリカの課題であるのですが、日本もそこまでアドバンテージはないというふうに考えて、なかなか難しいのか。それとも、それをアドバンテージにして、何か大きな領域越境できるような施策を取り得るものなのか。その辺り、教えていただくと面白いと思うのですが、いかがでしょうか。
【武部委員】  ありがとうございます。例えば、再生医療は分かりやすいと思うんですけど、工学系と医学の人たちが結構がっちり融合して、いろんな変わったことをやられたりとかすると思うんですね。こういうパターンの研究って、アメリカはほとんど起きないですね。デパートメント・オブ・メディシンの臨床の医学の中で所属している研究者たちのコラボレーションというのはすごくあるんですけれども、それを超えてしまうといきなりそれが起きづらくなるという現状があって、なので、私は、地理的な観点でも、これだけいろんなデパートメントを持った大学たちが近くにいて、それでコラボレーションができるということが何らかの形で促進できると、これは圧倒的な強みになる可能性があると思っています。
 それをやるために非常に分かりやすいファンディングのメカニズムというのは、海外ですとギャップファンディングとよく言うんですけれども、いわゆる異分野の研究って、最初のトリガーってなかなか引けないので、最初の1年だけの研究予算を500万から1,000万ぐらい出して、クロスデパートメントとかクロスユニバーシティの研究チームを最初のギャップイヤーだけファンディングする。それで予備的にいいデータが出れば大型のマルチPIのグラントに出すとか、そういう成長の仕方ができるので、そういうタイプのギャップファンディング的なメカニズムをやって、うまくいったら学術変革領域に行くとか、そういうやり方を施策としては取り得ると想っております。
【畠主査代理】  ありがとうございます。よく分かりました。
【宮園主査】  ありがとうございます。
 まだいっぱい手が挙がっていますので、皆さんにぜひ話をしていただいて。今日、武部さんの発表の後、発表する人がいないので、時間を埋めるつもりで私がやったのですが、要らなかったなと、さっきからずっと反省しているのですが。
 ということで、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】  本当に興味深いお話いただきまして、ありがとうございます。
 私は今、エコシステムのほうの関係で、海外からの資金流入・誘導などのディスカッションをしていますが、確かに最近、国内アカデミアを中心としたシーズであるとか、ベースの技術に対する海外からの関心はかなり高まってきていると感じています。「ただ、それを社会実装するところは明らかに下手であり、そのためにスタートアップを幾らつくっても、なかなか大きいユニコーンにならない。そこを助けてあげるよ」と言われています。逆に下手をすると利益を全部持っていかれてしまう危険性があるため、いかに日本に利益を落としながら共同して大きく育てていくかというところに今腐心しています。その観点からしますと、確かにメンターは非常に興味深いのですが、メンターの教育をどうされているのか教えていただければありがたいというのと、あと、日本の場合、公的資金が、研究そのもの、あるいは研究に関わる人には出るのですが、支援組織のほうにはなかなかつきません。メンターであるとかアクセラレーターとかを含めて、そういう支援組織をつくろうとするときの最初の立ち上げの頃の資金などは米国ではどうされていたのか、少し教えていただければありがたいです。
【武部委員】  そうなんです。非常に重要な御指摘で、米国では、メンターシップ自体がカルチャーで、当たり前で、どのステージでも必ず、お互いやるんですよね。なので、例えば、大学生であれば大学院生からメンタリングを受けるし、大学院生であればファカルティーからメンタリングを受けるし、教授になってもディレクターからメンタリングを受けるしという形で、徐々に徐々に、ラダーが上がるごとにメンタリングコミッティというのができてやっていくので、何となく、どちらかというと自然に生きたナレッジとしてそのスキルを獲得していくイメージです。リーダーシップ研修とかメンタリングの研修とかは当然あるんですけれども、それがすごく重要な役割を果たしているというよりは、属性とかタイプの違う方を複数名入れると必ず幾つかのパースペクティブは提供されて、それなりにロバストにメンターされるというような、そういう3人から4人ぐらいがメンタリングするみたいなことで何となくのロバストネスを担保して、先輩がいると、隣でこういうふうにメンタリングしたらいいんじゃないみたいなアドバイスをもらいながら、やりながら学ぶみたいな形式になっているのかなと思います。
 日本はその仕組みがなくて、インセンティブをつけなきゃいけないと私も本当に思っているんですけれども、なかなかこれは難しいので、私自身は今、社団法人をつくっていまして、そこに、企業さんとか、これからビジネスになることを期待しているような方たちからのお金をプールして、それでメンタリングに対するサポートみたいなものを具体的にある程度フィー・フォー・サービスの形でやっていただいて初期の頃のインセンティブをつけるみたいなことまでやらないと、なかなか、皆さん忙しくて、あまりやりたくないというふうにおっしゃられちゃうかなと思っていますので、そこは私も暗中模索中という感覚です。
【澤田委員】  ありがとうございます。
【宮園主査】  よろしいでしょうか。
 じゃ、次、山本委員、お願いいたします。
【山本委員】  大変興味深い、すごいエキサイティングなお話をいただきまして、ありがとうございました。私も武部先生への質問とコメントになるんですけれども、私が前から気になっているのは、先生も御指摘された、支援人材ですね。支援人材とマネジメントの部分がやはり弱いなと思っています。私自身は、医薬品とか医療機器を開発する臨床試験の支援部隊のマネジメントをする立場で今やっていまして、その前は、一時期はPMDAという規制当局にもいたことがあります。なので、研究のところから出口の規制の部分、さらにその先の上市の部分まで一通り見てやっているということで、どちらかというと研究力というよりはマネジメント力を買われているところがあると思うんですけれども、残念ながら私のような人が非常に少なくて、それで重宝されているんだろうなと思うのですが、研究者を育てるという、アメリカだと割と、例えば、最初のスタートアップで力が伸ばせなかった研究者でも、研究サイドにいたい、アカデミアサイドにいたい、研究が好きという人たちが例えばNIHに行っているとか、結構、大学の中にサポートスタッフのトップレベルでいると思うんですけれども、日本にはそういう人たちがいる場所がないなというように思っているのと、もう一つは、もうちょっと上の、それこそ私みたいな臨床試験のところのサポートをする組織は大きな大学には結構できていまして、そういうところのトップとか、何人かは私みたいな感じで同じようにマネジメントをする人がいるのですが、例えば、基礎研究とか、別の領域にはそういう方は全然いらっしゃらないという形になっています。我々みたいな臨床試験の推進センターというのは厚労省が戦略的に置かれたもので、当初、それを整備する事業もありましたので、そこに乗っかって整備されていったのですが、そういう研究者を日本って終身雇用みたいな感じで、一旦、研究者を選ぶと、ずっと研究者でいなければならないとか、そうあるべきであって、そこからドロップアウトした人は駄目だみたいな、そういうメンタリティもあるのかなと思うのですけれども、そうじゃなくて、最初、研究をやって、研究は好きだけど、研究自身には向いてない、でも、サポートとかマネジメントには向いているという人たちをうまく育てていくというシステムを日本でつくれないのかなあと思っているのですが、アメリカとかはいかがなんでしょうか。
【武部委員】  大賛成というか、本当にそのとおりで、例えば、技術補佐員というトラックもものすごくたくさん分かれているんですね。技術補佐員という技術系のことだけを追求するというタイプの方で20年とかたつと年収が1,000万を優に超えるようなスタッフとかいたりしますけど、日本だと、いつまでも雇用できないとか、給与的に非常に日の目を見ないような待遇になってしまったりですとか、あるいは、PhDを持ってないと大学の教員になれないので山本先生のようなPMDAの経験者とかが雇えないということも僕は過去に何回か経験しまして、仕組み上、ジョブの多様性の価値というのを大学がちゃんと認めてあげた上で、そういう新しいタイプのキャリアトラックといいますか、そういうものに対してもちゃんとジョブファンクションを与えて、それで機能させるというのがすごく大事だと思っていまして、これまでの研究室って、研究者が全部、いわゆる管理業務とか事務業務から、実験も、そして規制対応みたいなことを全能のようにやってきていると思うんだけど、それがすごく効率を下げていますので、山本先生もおっしゃるように、ジョブのレイヤーを複数に分けてあげたりとか、マネジメントのファンクションとして、例えば、企業だと人事部があるとすごくいいんだよということを研究者の方たちも理解して、そして、大学からもそういうポジションに対してのアクノレッジがあって、ちゃんと組織としてつくれるようになるといいなあというふうに願っています。
【山本委員】  ありがとうございました。
【宮園主査】  それでは、鎌谷委員、お願いいたします。
【鎌谷委員】  武部先生、こんにちは。以前、先生からいただいたメールを私は無視してしまったんですけれども、あのとき、私、COVIDに倒れておりまして、その後、本務の仕事を整理していたら、無視する形になってしまいました。大変申し訳ないということをここでおわびしたいと思います。
 ちょっとテクニカルな質問に御見解をいただければと思って、もしかするとコンフィデンシャルのところもあるかもしれないので、お答えいただけるところがあればと思っているのですが、ポリジェニックなオルガノイドというのは非常に興味深いと、私も思っております。ポリジェニックというときにどれぐらい遺伝変異が必要かというと、論文によると1万以上必要だと言っているのもあって、1万か所編集するということもディスラプティブなアイデアとしては面白いと思うんですけれども、現実的には患者さんのiPSを使うのだろうというふうに思っています。そうしたときに、1万か所の組合せは組合せ爆発してしまいますが、100万人規模のバイオバンクとかが出てきていて、別に日本に限らず、世界のバイオバンクを使えばいいのかなとも思うのですけれども、ポリジェニックだけで病気が決まるわけではないと。リスクが変わるだけで、やはりほかの因子が必要になってきていると思います。その中で、エピゲノム、エクソソームといったお話が出てきたんだと思うんですけれども、患者さんからiPSを作る場合は、エピゲノムは恐らくある程度リセットされると。そのときに、エピゲノム状態を病気の患者さんの臓器に合わせるようなオルガノイドというのはどういうふうにされるのかなというところが、私、専門外なので、御存じのところを教えていただきたいなと思うのが1点と、もう1点は、ゲノムとエピゲノム、エクソソーム、それだけで病気のオルガノイドを作れるのか。ほかにも何かあるということがあったりして、検討の余地があるのかというところなど、お考えがあったら教えていただきたいなと思いました。
【武部委員】  ありがとうございます。1点目の観点に関しましては、我々としては、ポリジェニックなものを表現しているといっても、まだ完全なオルガノイドによるモデリングができているわけではないので、かなり欠けている要素なんかも補わなきゃいけないというふうには思っています。
 ごめんなさい。もう1回、質問のポイントをお伺いしてもよろしいですか。
【鎌谷委員】  一つ目は、つまり……。
【武部委員】  エピゲノムの編集か。
【鎌谷委員】  そうです。
【武部委員】  エピゲノムの観点に関しては二つアプローチがあって、いわゆる完全にエピジェネティックメモリーを消さないタイプの細胞の作り方とかオルガノイドの作り方というのがありますので、いわゆるiPS細胞を使うみたいな形で言うと完全にリセットされますけれども、iPSに戻さないタイプのオルガノイドの作り方とか、直接、そのエピゲノムを残したままのやり方というのは、現状ですぐにできるものです。
 もう一つ、我々が検討しているのは、二つ目の質問にも関連するんですけれども、いわゆる環境要因のエクスポージャーをいろいろと与えていきますと、エピジェネティックなステートが、徐々オルガノイドの状態が変化していくというのは見えてきているところがあるんですね。ですので、それが生体・個体のエピジェネティックな変化のトラジェクトリーと全く一致しているかはまだ保証はないのですけれども、一度リセットされた臓器のエピジェネティクスシグネチャーを、例えば、僕らの場合は、脂をいっぱいかけて脂肪肝にして徐々にNASHを発症させるみたいな、そういうことをやっているのですが、その発症のプロセスの中で移ろうエピゲノム状態の繊維過程というのを人間のある程度分かっているエピゲノム状態に投射をすることでどの段階に相当するのかというのを今研究しているというようなフェーズでございまして、エクスポージャーと組み合わせていくということをやっております。
 ですので、二つ目の質問は、ゲノム的な要素と、エピゲノム的な要素と、そういったエクスポゾームというふうに表現しているんですけれども、いわゆる環境要因での栄養みたいなお話ですとか、内分泌みたいなお話ですとか、場合によっては微生物との絡みというのも最近ですとすごくトピックになっていると思うので、こういった環境要因のパータベーションをいろんなパターンで与えていったり、組合せで与えていったりということが将来的にできると人間にかなり近づいていくモデルの検討ができるのかなと考えているという状況でございます。
【鎌谷委員】  ありがとうございました。ここも、やはりビッグデータ解析とバイオロジーとが融合する分野になっていると思って、それこそディスラプティブに進めていかなければいけない。また、時々、お話を聞かせていただければありがたいなと思いました。
【武部委員】  ぜひ、よろしくお願いいたします。
【鎌谷委員】  ありがとうございました。
【宮園主査】  それでは、上村委員、お願いいたします。
【上村委員】  大丈夫ですかね、もう時間があれなんですけど。
【宮園主査】  事務局、いいですよね。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  もちろん大丈夫です。委員の皆様によっては11時半以降の予定がある方もいらっしゃるかもしれませんけども、私どもとしては、続けていただき差し支えございません。
【宮園主査】  じゃあ、次の予定がある方には申し訳ありませんが、非常に重要なコメントをいただいていますので、このまま続けさせてください。よろしくお願いします。
【上村委員】  武部先生、こんにちは。御無沙汰しています。
【武部委員】  こんにちは。お久しぶりです。
【上村委員】  非常に面白いお話で、私が非常に興味を受けたのは、スモールラボに対するファンディングなんですね。どうしてもPIで大御所のところに、日本のAMEDとかもどうしても、論文数もありますし、ラボの大きいところに資金が集中しちゃうというのが一つ問題じゃないかな。今日も、先生のお話で、小さいラボというのが非常に、いわゆる、いろいろとダイバーシティーを持って、小さくてもファンディングできるような、そういうところが非常に重要だというので、我が意を得たりという思いがしたんですけども、その際に、先ほどおっしゃっていたギャップファンディングとかメンターシップとかもあるんですが、私、AMEDのBINDSというところでPOをやっておりまして、今回、若手枠というのをつくったんですね。それでプロジェクトを提案すると、結局、その人たちが、いわゆる横糸といいますか、オーガニックケミストがいろいろ提案したときに、例えば、ストラクチャーバイオロジストとか、いわゆるフィジカルケミカルな、そういうことをやれる方とやれるのを、結局、マッチングシステムみたいのをつくって、その人たちがつながれるようにやろうと思っているんですけど、アメリカの場合、フィールドが違うとかなり難しいということだったのですが、そこは、さっきおっしゃったようなギャップファンディングとか、そういうところで科研費とかを集中できるようにしているんでしょうか。その辺は多分、これからファンディングしていく上で非常に日本も参考になると思うので、その辺をお話しできたら、聞かせてください。
【武部委員】  ありがとうございます。いわゆるギャップファンディングみたいなものというのは、どちらかというと、組織、インスティテュートとかユニバーシティのサイドから出てくるケースが多くて、公的ファンディングとかで規模をあげるやつというのはどちらかというとプロジェクトがある程度固まったものであるケースが多いのかなという印象ではありますので、アメリカのケースを直で言うと、財布としては組織が負担しているケースが多いのかなと思います。
 もう1点あるとすると、ファンデーション系のグラントというのがありまして、それは、そのコミュニティにいることの価値を、先ほどのさきがけの議論のような形で、ここにいる研究者はみんなすごいから一緒にやれば何か出るはずと、そういうマインドづくりをすごく上手にやるんですよ。なので、ブランディングとかマーケティングの力だと私は思っているんですけれども、そのコミュニティが何かしてくれる感がすごくある、そういう雰囲気をつくってあげると、中で勝手にクロストークが起きて新しい研究の提案というのが生まれるケースが多いので、トップサイエンティストのコミュニティみたいなことを一言書いたのですが、そういうフラッグシップになるようなコミュニティ感みたいなものを比較的セレクトした方たちの中でつくれると、その中で割と生まれやすいのかなという気がしていて、例えば、私、New York Stem Cell Foundationというところのファンディングを受けていたんですけれども、そこの中には、モデルナの創業者になった方とか、Feng ZhangというCRISPR/Cas9をつくった人とか、そんな人が毎年2回集まるんです。そうすると、その中で勝手にコラボレーションが生まれて、また新しい『nature』『science』が出たみたいな、起業できたみたいなことがしょっちゅう起きていたので、多分、そういうコミュニティ感というのが、日本の研究だと大体、義務感で行っている感がどうしても強くなってしまって、行ってもあまりわくわくしないみたいなケースが多いと思うんですけど、そこのつくり込みとか見せ方みたいなものは実は結構大事な要素なんじゃないかなと、個人的には思っています。
【上村委員】  ありがとうございました。
 もう一つは、いわゆる産学連携なんですけど、日本の場合、産学連携って何ちゃってという感じが多くて、さっきの話じゃないですが、本当に真から行ったり来たりとか、そういうのが生まれにくい文化があるわけですよね。ですけど、本当にそこのところをきちんと施策としてやっていくというのは非常に大事で、例えば、さっきの特許の話ですけど、大学でいっぱい特許を出すのですが、自分を守るというか、出したという形なんですけど、私、企業出身で、企業の観点からすると、あくまでもほかの企業に対する、排除するための、裁判で勝つための特許になってくるわけで、その辺のところも、特許一つにしても非常に産学連携って大事なわけで、その辺がどうしても、アカデミアのときにはすごく弱い特許でも出しちゃうという。企業の場合、かなり強くするまで、取下げ、取下げで何遍もやるわけですけど、そこの辺の考え方が非常にまだアンマチュアじゃないかと思うんですが、その辺のアカデミアと企業のあれは人事交流というのが一番効果的だと思われますか。
【武部委員】  それは結構悩ましい問題で、私も本当にそのとおりだと思っていまして、企業とか、つくったスタートアップから特許を出したほうが絶対強くなるんですね、間違いなく。大学で一生懸命やると、大学の論理でいろいろ特許をつくっていくので、効率が悪い特許になると思うんですけど、ただ、それを表立ってやろうとすると大学から止められるみたいなことが当然あって、情報開示をしてそっちに利益誘導しているんじゃないかみたいな、またCOI問題になっちゃうので、そこは、どこかで割り切りというか、大学が承継しないで、むしろスタートアップのほうとか企業のほうで出せるんだったら出していいよみたいな判断とかも結構大胆にあっていいんじゃないかなと思っていて、私の場合は、企業の方とかに少しアドバイスなんかをいただきながら、一応、大学で出すみたいなことをやって、できる限りのことをやるという、そういう工夫をしていますかね。でも、すごく難しい問題だと思います。
【上村委員】  特許戦略というのは企業の生き死にを決めるぐらい重要なので、その辺をどこまで大学と共有できるかというのが結構重要なのかなと思って、御質問させていただきました。
 以上です。ありがとうございました。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 まだまだ質問は途絶えないと思いますけれども、一応、時間もありますので、今日は……。
 私も一言、ディスラプションとディベロップメントですね。日本はだんだん論文数が減ってきたとか、いろいろ言われますし、あと、よく言われるのは、日本人と欧米人を比べると、何か新しいテーマが出てきたとき、アメリカの研究者はすぐそちらのほうに移って行くんだけど、日本人は1年か2年ぐらいしてそちらに行くと。私が、よく言われたのは、本庶先生の免疫チェックポイント製剤が出たときに、アメリカの癌学会へ行くと半分近くががん免疫の話になっているのに、日本の癌学会はそっちのほうに移る人が少ないというのはどうなっているんだということを言われたんですけども、よくよく考えてみると、自分のディスラプションとディベロップメントということを考えると、日本人というのはそういう意味ではディベロップメントのほうに行くのはまだまだ苦手なのかなあと思いながら、今日は大変興味深くお聞きさせていただきました。
 木下委員がおっしゃいましたとおり、ディスラプション、ディベロップメント、どっちに向いているかというのは、それぞれの研究者、あるいはそれぞれの人によって、向き不向きもありますし、両者のバランスが必要なんだと思いますが、2000年代の初め頃のJSTの調査で、日本人は、基礎研究は非常に優れているけれども、それを社会へ実装していくのが苦手だということで、ぜひその体制をつくろうということが強く言われたわけですが、まだまだ足りないところがあるので、それはもちろんこれからも重要でしょうけれども、一方で、ライフサイエンス課では基礎研究は非常に重要だという話が随分議論となっておりますので、そういったバランスというか、そういったものも含めて、今後のライフサイエンス委員会で議論させていただければと思います。
 一応、この議題は以上とさせていただきますので、次の議題に移ります。
 議題(2)その他で、ライフサイエンス分野における令和5年度補正予算について、事務局より御説明をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  事務局でございます。本日は、大変充実した議論をいただきまして、ありがとうございます。
 時間もございますので、私のほうから、ごく簡潔に状況報告をさせていただきます。
 先般、11月29日に政府の補正予算のほうが決定されまして、その中にライフサイエンス分野に関しても少し盛り込まれておりますので、その内容について、情勢を報告させていただきます。
 大きく2点ございまして、1点は、「認知症治療等に資する脳科学を始めとした健康・医療分野の研究基盤等の整備」というものでございます。こちら、研究基盤等の整備ということで六つの項目を合わせて計上しているものでございまして、56億円、補正予算の中に計上されております。
 一つずつ、ごく簡単に御説明をさしあげますと、左上のものは脳科学研究でございまして、来年度から実施する「脳神経科学統合プログラム」の中核拠点において研究基盤の整備・共用をする事業でございます。
 また、上の真ん中は、BINDS事業の中で行っているものでございまして、今般、バイオ医薬品の創薬を強化していくということが政府方針となっておりますので、そのために必要な機器を整備するものでございます。
 右上は、バイオバンクの事業でございまして、東北メディカル・メガバンク、また、バイオバンク・ジャパンといった、我が国が誇るバイオバンクにつきまして、機器の更新や施設の整備等を行うものでございます。
 左下のものは、新興・再興感染症の事業の中でやっているものでございまして、感染症有事に備えて現地国で研究活動を行うために必要な機器の整備に関しまして、補正予算のほうで前倒しして実施するものでございます。
 真ん中下のベクター製造基盤の整備、こちらは再生・細胞医療と遺伝子治療の事業の中でやっていくものでございまして、遺伝子治療において不可欠なベクターに関しまして、国内に生産基盤をしっかり設けて事業の効果を高めていくものでございます。
 右下のものは少し色合いが違うもので、こちらは、AMED自体、日本医療研究開発機構の情報システムの整備を行うというものでございまして、更新時期が来ておりますシステム構築に必要な経費を補正予算で計上したものでございます。
 こういった形の経費を通じまして、当初予算での研究費等の支援と組み合わせまして、文科省としてしっかりライフサイエンス研究を支援していきたいと思っております。
 もう一つは、「大学発医療系スタートアップ支援プログラム」というプログラムに関しまして、5年間の基金として152億円を計上しております。本日も議論が様々あったかと思うんですけれども、スタートアップを支援していくこと、それによって医薬品を実用化していくということは極めて重要かというふうに思っております。また、ライフサイエンス分野、医療系のシーズも、規制等のこともございまして、ほかの分野より対応が少し難しいというところもございます。また、他省庁において、よりレーターなフェーズな支援などは充実してきているんですけども、文科省が所掌するようなアカデミア発のシーズを軌道に乗せていくシード期の段階においては支援がまだ不十分だという問題意識がございまして、そこを支援するための事業を設けさせていただいております。そのため、今走っている橋渡し研究支援機関が、医療系シーズの実用化に関する実績・ノウハウを蓄積しておりますので、その機関の力を活用しながら、4機関程度選定しまして、そこに体制整備費を支援していく、また、三つのシーズ枠を設けまして研究費を支援していく、そういった支援を行うということを想定しております。こちらは基金でございますので、スタートアップはなかなか事前には予測できない事業が多いかと思うんですけども、単年度の予算にとらわれずに、柔軟かつ機動的に支援することができるというふうに記載しております。こちらは、11月29日に補正予算が決まったばかりでございますので、本日の議論も含めまして、様々な意見を踏まえながら、今後、事業設計をしていき、有意義な形で速やかに実施していきたいというふうに思っております。
 少し駆け足になってしまいましたけども、文科省のほうからの予算に関する報告は以上でございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございます。
 ただいまの御説明に対しまして、何か質問等はございますでしょうか。
 こちらはよろしいでしょうか。
 特にございませんでしたら、この議題、以上とさせていただきまして、本日予定しておりました議事は以上ですが、ほかに御意見や御質問等はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。大分、時間を超過して申し訳ございませんでしたが、ほかに御意見などがございませんでしたら、本日のライフサイエンス委員会はここまでとさせていただきたいと思います。
 皆様から、大変貴重な御意見、コメントをいただきまして、大変ありがとうございました。
 では、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】  事務局でございます。
 本日は、大変充実した議論、誠にありがとうございます。また、事務局としても、時間設定が少し甘く、大変申し訳ございませんでした。
 事務的な連絡でございますけども、議事録につきましては、事務局作成の案を皆様にお諮りし、主査の御確認を経た後、弊省のホームページにて公開いたします。
 次回のライフサイエンス委員会は、年明け1月16日、10時から12時を予定しております。詳細な議事等は、追って御連絡させていただきます。
 事務局からは、以上でございます。
【宮園主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今日のライフサイエンス委員会をこれで閉会とさせていただきます。また、皆様、引き続き、いろいろと御意見をいただくことはあるかと思いますが、どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。
 それでは、どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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