第10期地球観測推進部会(第5回) 議事録

1.日時

令和6年5月20日(月曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

村岡部会長、原田部会長代理、赤松委員、岩崎委員、岩谷委員、浦嶋委員、河野委員、川辺委員、嶋田委員、高薮委員、谷本委員、中北委員、堀委員、前島委員、六川委員、若松委員
 

文部科学省

千原研究開発局長、清浦大臣官房審議官(研究開発局担当)、轟環境エネルギー課長、松原環境科学技術推進官、中川地球観測推進専門官

オブザーバー

内閣府 熊谷科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)
国土交通省大臣官房技術調査課 山崎課長補佐
国土交通省水管理・国土保全局河川計画課河川情報企画室 成島企画専門官
国土地理院企画部 石山技術政策企画官
海上保安庁海洋情報部沿岸調査課 佐藤海洋防災調査室長
国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター 水災害研究グループ 栗林上席研究員
国立研究開発法人防災科学技術研究所地震津波火山ネットワークセンター  青井センター長  
山口大学応用衛星リモートセンシング研究センター 長井センター長
 

4.議事録

【村岡部会長】  皆様、おはようございます。ただ今より、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会第10期 地球観測推進部会の第5回会議を開催します。本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日はオンラインでの会議になります。この4月から平林委員が前島委員に交代となりました。前島委員、一言ご挨拶いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
【前島委員】  ご紹介ありがとうございますJAXAの前島と申します。地球観測を推進してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  よろしくお願いいたします。続きまして、事務局に人事異動があったと聞いております。その紹介とともに議事進行にあたっての注意事項を事務局からご説明をお願いいたします。
 
【中川地球観測推進専門官】  まず、事務局に人事異動がありましたので紹介させていただきます。研究開発局において林審議官が異動し、4月に清浦審議官が着任しております。清浦審議官、一言ご挨拶をお願いいたします。
 
【清浦審議官】  清浦です。皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
 
【中川地球観測推進専門官】  また、私も4月1日付けで着任いたしました。中川と申します。前任の甲斐に替わりまして地球観測推進部会の事務局を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、事務局から本日の部会の進め方について簡単に注意事項をご説明いたします。オンライン会議システムの安定のため、ご発言されていない時にはマイクとビデオをオフにしていただくようお願いいたします。ご発言がある場合は、挙手ボタンを押してからお知らせください。また、ご発言の際はお名前をおっしゃってからご発言いただくようお願いいたします。挙手ボタンが見つからない等の場合は、画面をオンにして画面上で手を挙げていただくか、直接発言していただきたいと思います。なお、オンライン会議システムを利用して出席されている委員については、音声が送受信できなくなった時刻から会議を退席した扱いとさせていただきます。
 配布資料につきましては、委員の皆様には事前に議事次第と共に資料1から資料4-4までの資料及び参考1の委員名簿を電子媒体でお送りしております。不備等がありましたら事務局までお申し付けください。
 続きまして、委員の出席を確認させていただきます。接続確認を行い、本日は16名の委員にご出席いただいております。全委員18名の過半数10名に達しておりますので、本部会は成立となります。なお、本日は上田委員、神成委員の2名の委員が欠席です。また、本日はオブザーバーといたしまして内閣府科学技術イノベーション推進事務局の熊谷参事官にご出席いただいております。以上となります。
 
【村岡部会長】  どうもありがとうございます。では、早速議題に入ります。今回の部会では、次期実施方針の策定に向けて、前回に引き続きまして関係省庁や関係機関等から、防災・減災分野の地球観測をテーマとしてヒアリングを行います。今回は防災科学技術研究所、国土交通省及び山口県の取組についてご説明いただきます。
 議題1に入ります。議題1は「防災科学研究所における地球観測の取組について」です。防災科学技術研究所の青井先生から、資料1に基づき15分程度でご説明をお願いいたします。青井先生、よろしくお願いいたします。
 
【青井センター長】  防災科研の青井と申します。本日はこのような場をいただきありがとうございます。私の方からは防災科研の取組の中でも主に地震と津波の観測についてご説明差し上げたいというふうに考えております。ここに示した地図は、防災科研が全国に設置しております地震あるいは火山の観測点が示されています。特に地震につきましては1995年の阪神淡路大震災を契機に日本列島を非常に稠密に且つ空間的に均一にカバーするような観測網が構築されています。これは震災を受けて地震防災対策特別措置法が施行され、そのもと地震調査研究推進本部が発足しましたが、そのもとで策定された基盤的調査観測計画の一環として整備されたものです。地震による被害の軽減と地震現象の解明が大きな目標となっておりまして、具体的には長期的な地震発生の評価、それと現在どうなっているのかという現状把握や評価、それと地震動や津波に関するハザードマップあるいはハザード評価の高度化、それと現在では緊急地震速報というふうに呼ばれていますが地震が起こったことを早期に検知して地震波を先回りして伝達をするという、そういうことが具体的な目標として掲げられております。
 また、火山については科学技術・学術審議会の地震火山部会のもと、気象庁及び大学そして防災科研でカバーするべき火山を分担して観測をするという体制になっております。なお、火山に関しましては現在地震調査研究推進本部と同様な本部機能がこの4月から発足しまして、火山調査研究推進本部という形でまた新たな動きとして推進が進んでいるところです。
 地震につきましては先ほどの地図に1,900点あまりの観測点がプロットされておりましたが、地震という現象は稀な現象では決してなくて、小さなものまで含めると1日に数百個から多ければ千個ぐらいの地震が起こるわけですが、そういう規模が非常に小さなものから大きなものまでを観測をする体制になっています。
 また、火山につきましては地震とは異なり空間的に均質ということではなく、火山が噴火をする場所というのは当然火山がある場所ということで、火山の山体に様々なセンサ、具体的には高感度なもの、広帯域なもの、また、傾斜計や山体の変形を検知するためのGPS等、様々な観測機器を重点的に配備するというような観測の方法を行っています。
 このような形で2000年代の割と早い時期までに日本列島の陸域に関しては非常に稠密な観測体制が構築されましたが、一方で海域については十分な観測ができないまま2011年の東北地方太平洋沖地震を迎えてしまったわけです。この際、海域による観測が十分にはなされていなかったことから、マグニチュードを大きく過小評価をして、津波警報や緊急地震速報を出したという課題を踏まえ、海域にも観測網を展開していくというような方針が国として打ち立てられ、その方針に基づいて東日本につきましては千葉県房総沖から北海道の釧路沖にかけての非常に広い海域に、ここに6色で示しているような6本の海底ケーブルからなる日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築することとなりました。陸域とほぼ同程度の観測点密度を持つ観測網を海域まで広げ、少なくとも津波が問題となるようなマグニチュード7~7.5ぐらいの地震が起こった場合には、震源域に少なくとも1つの観測点が平均的には存在するという、そういうような密度で覆われております。これにより津波を最大で20分程度早く直接検知することができるようになり、また、地震においては最大30秒程度早く検知をすることができるような体制となりました。
 また、南海トラフの海域におきましては水色で示すようなDONET1、DONET2という観測網がJAMSTECにより構築をされ、その後完成とともに2016年度より防災科研に移管をされて現在運用が進んでいるところです。こちらは観測の空白域というふうに示しましたが、南海トラフの想定震源域のうち西半分のところにつきましては現在海域において観測の空白域になっていますが、ここの部分については現在N-net(南海トラフ海底地震津波観測網)という新たな観測網の構築が進んでおりまして、今年度末までに整備を進めているということで、後ほど少しご紹介をしたいと思います。
 海域における観測について防災科研が行っている方式は、海底に通信インフラである海底ケーブルの技術を応用して、観測機器、具体的には地震を測るための地震計と、津波を測るための水圧計を海底に設置をして、それらをケーブルと共に海底に敷設することで観測をしています。ここに示したような通信のケーブルを敷設するケーブル敷設船を用いてこのような観測網を敷設しているということです。
 駆け足の説明でしたが、非常に高感度な観測から広帯域の観測、強い揺れを観測することもできる強震観測、また、海域における2つの観測網、それと火山の観測網の7つの観測網を合わせまして、我々はこれを一体運用をしておりまして、これの総称をMOWLASというふうに呼んでおります。
 ここまでは現地においてどういうふうに観測をするのかということをご紹介してまいりましたが、これらのデータを活用するためには手元まで持ってくる必要があります。このようなデータがどういうふうに伝送され流通しているのかということについてご紹介したいと思います。左側の小屋みたいなものが観測点のイメージですが、これらのデータは地震観測に特化したIP-VPN網であるEarthLANというふうに呼ばれている網がございまして、これは防災科研と民間の通信事業者が共同研究をして開発をしたもので、現在は商用のサービスとして提供されているものです。この網を通じて防災科研にデータが届けられるわけですが、遅延時間(レイテンシ)に関しては0.5秒以下というふうに書いておりますが0.3秒~0.5秒ぐらいというのが実績値になっておりますものになっています。
 それと、もう一つ特徴的なことは、つくばにあります防災科研だけではなく、気象庁の本庁虎ノ門と大阪管区気象台という日本の三拠点に送り届けるにあたって、防災科研に一回データを持ってくるのではなくて、このEarthLANの網の中でそれぞれの宛先に対して同様な方法で投げるというような方式になっておりますので、防災科研で何か障害があったりしても、このどこかで必ずデータが生かされるような体制になっているということです。このEarthLANの中でTDXというふうに書いてありますがTokyo data exchangeという仕組みの中で大学をはじめとする様々な機関にもリアルタイムでデータが送り届けられるというような状況になっています。これらのデータは、この後お話をしますが様々な防災目的に使われているということで、安定的に稼働することが非常に重要ということで、我々は数値目標を与えられておりまして、95%以上の稼働率でということで観測網を運用しています。また、これらのデータは全て一元化され、まずは気象庁で現業的に使われた後、防災科研の方でアーカイブ化してデータセンターとして様々なユーザーにデータを提供するような、そういう仕組みとなっています。
 具体的にこのようなデータがどういうふうに使われているかの例をここに示しております。もちろんこれらのデータはインターネットで自由に取れるようになっておりますので、様々な研究に世界中の研究者が利用して非常に素晴らしい成果を上げていますが、ここでは防災にどういうふうに生かされているかということをご紹介しております。
 まず左上、緊急地震速報と津波警報で、これらのデータは先ほどお話ししたEarthLANによってできるだけ低いレイテンシで送り届けられた後、気象庁の方で現業的に使用されています。
 それと、右上は震度で、地震が起こるとおおむね1分半ぐらいで震度情報がテレビ等に出ますが、これらも気象庁の観測点に加え防災科研のK-NET、さらには自治体(主には都道府県)のデータが一元化されることによって、日本の全ての市町村に必ず1つは震度計があるということで、あのような報道がなされ、また、それらをトリガーに様々な対応がとられる体制になっています。
 左下は地震工学への貢献ということで、建物を設計する等において、どのような地震動に耐えなければいけないのか、あるいは地震や津波のハザード評価への貢献ということで、そもそも地震がどこで起こり、どのように地震波が伝播し地表付近で増幅するのか、あるいは津波がどこで起こりどう伝播するのかということに対する情報というのは、観測データが大きく貢献しているわけです。
 我々がなぜ海域で一生懸命観測をしているかということの一つの例がこちらにございますが、ここで起こった三陸沖の地震、今ここでは海底の丸印の色が変わっていますが、これは海底面が揺れていることを示しています。右上に海域のS-netで取られているデータが示されておりますが、まだ地震波が陸に届いていないので、従来であれば我々は地震が起こったということを知るすべがなかったわけですが、こういうふうに陸に地震波が届くと陸域のHi-netにおいてもこういう揺れが検知されます。
 この動画は今1倍速で再生しておりましたが、私が説明をしていた22秒ぐらい我々は早く地震を検知できる可能性があるということをこれは示しております。緊急地震速報というのは本当に0.何秒というような時間を稼ぎ出すために様々な取組がされておりますが、海域に観測網を伸ばすことによって、10秒20秒という単位でそのような時間が稼げるということは防災上大変大きなメリットがあるというふうに考えています。また、これらのデータを鉄道会社等と一緒に新幹線を少しでも早く止めるとかという様々な取組もなされているわけです。
 海域の観測網ですが、ここに防災科研以外の組織の観測点も全てプロットしておりますが、赤で示したところが今全くの観測の空白域ということで、現在ここに南海トラフ海底地震津波観測網という形で、室戸ジオパークにある陸上局と宮崎県の串間にある陸上局を赤で示した沖合システムと、青で示した沿岸システムそれぞれ18点の観測装置が海底に敷設される予定になっております。沖合システムにつきましては昨年度敷設が完了しておりまして、現在取られはじめているデータのクオリティチェックしているところです。沿岸システムについても今年度末までに敷設が終了する予定です。
 このような大きな船(ケーブル敷設船)を使って、工場で1本のケーブルにつなぎ込まれた観測装置をこのような形で船に積み込んでおります。このような非常に大きな観測装置が既に一本のケーブルにつながっているので、このような形で積み込みが行われ、また敷設が進んでいくわけです。
 N-netが完成をしますと、地震動で最大20秒程度、津波で最大20分程度早く直接検知できることが期待されております。これは当然まだデータが完成しておりませんので、シミュレーションによるものになります。
 N-netの大きな特徴は、こういうケーブルにつなぎ込まれた観測装置だけではなくて、途中に分岐装置あるいは終端装置というものを備えていまして、将来的にここに新しく開発された観測装置等を接続できる拡張性を有しており、このようなインライン方式と分岐ノード方式のハイブリッドシステムを世界で初めてチャレンジしたということで、今年度末までに沖合及び沿岸の敷設が終わりシステムが完成した後、次のフェーズとしてこれらの拡張部の活用というものが期待されるわけです。
 最後に、全国規模の観測網ではないのですが、特に首都圏に特化した観測網をご紹介したいと思います。首都圏というのは非常に経済的にも人口密度的にも日本にとって非常に重要な地点ということで、全国平均の観測網に比べて非常に稠密な観測がなされておりまして、例えば理学的な成果としてはプレートがより浅いということを発見したことのみならず、例えば首都圏における地震動をリアルタイムで把握するというようなことにも貢献をしております。私からの説明は以上になります。
 
【村岡部会長】  青井先生、どうもありがとうございました。ただ今のご説明につきまして、部会の委員の皆様からのご意見、ご質問等を受けしたいと思います。どうぞ挙手ボタンを使ってお願いします。中北委員、どうぞ。
 
【中北委員】  京都大学の中北です。ご説明どうもありがとうございました。N-netも今年度中に整備されるということで、これまでの努力に敬意を表したいと思います。すごく簡単な質問なのですが、地上の震度計の10頁の2に書いていた都道府県も一緒にネットワーク、情報をアーカイブしているとありましたが、これは都道府県は書いてあったのですが、これ以外のJRとかそういった民間等のものもネットワークと一緒にアーカイブされていくという理解でよろしいのでしょうか。
 
【青井センター長】  ご質問ありがとうございます。時間の都合で余り詳しくお話できなかったのですが、これは自治体震度情報ネットワークという、震度に特化した網の一部分になっていまして、こちらは気象庁の方に一元化され、気象庁の方から震度が発表されるという枠組みになっておりまして、その中に防災科研のK-NETも含まれているという、そういうものになります。
 
【中北委員】  そちらの意味でのご説明だということですね。分かりました。ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。他に部会の委員の先生方はいかがでしょうか。川辺委員、どうぞ。
 
【川辺委員】  ご説明いただき、ありがとうございます。非常に密なネットワークができあがっていて、且つハイブリッドで拡張可能ということですので、すごいものだなと思いながら伺っていました。これを維持していくご苦労というのがまたあるのではないかと思うのですが、もしよろしければその辺りについて教えていただければと思いました。よろしくお願いします。
 
【青井センター長】  ありがとうございます。観測を継続しようと思うと、やはり老朽化ということがあります。できるだけ定期的に機器の更新をしていくということが必要ですが、これも限られた予算の中でということで、そういうところもだんだん時が経って老朽化が激しくなってきているということで、その辺も今後てこ入れをしていく必要があるなというふうに考えています。
 それと、もう一つ。そもそもこの観測技術というのはもちろん防災科研をはじめ様々な研究所あるいは大学も持っているわけですが、最後もの作りということでしたり、あるいは敷設を含めた工事の部分とかは民間事業者にお願いをしているわけですが、そういうようなところでだんだん日本も少子化等もあって技術が縮退していっているなということで、観測から撤退していくような事業者も出てきております。その辺の技術の継承ですとか、あるいは今後も開発や製作等をやっていけるような、ビジネスとして成立するようなところというのも今後しっかりと支えていかなければいけないのではないかというふうに考えております。
 
【川辺委員】  分かりました。どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  川辺委員、ありがとうございます。他にございませんでしょうか。 よろしければ私村岡からも一つお伺いしたいと思います。青井先生、ご説明いただきましてありがとうございました。時間が短かったかもしれませんが多くの取組についてご説明いただきました。この地球観測推進部会では、来年年明けにかけて今後10年の地球観測の実施方針の検討を進めておりますが、この議論において青井先生の専門の特に地震に関する分野から、ご要望、お考えなどがあればお聞かせいただけますでしょうか。
 
【青井センター長】  ありがとうございます。我々は研究所として観測をやっておりますので、新しい観測技術の開発ですとか、あるいはそれから取れる、例えば今年度N-netが完成予定ですが、そういう新たなデータをどういうふうに使っていけばよいのかというような研究開発というのは非常に重要だというふうに考えています。
 一方で、やはり地震ですとか津波、火山もそうですが、発生頻度としては非常に稀な現象でございますので、長期にわたった安定的な観測の継続ということも非常に重要で、毎年非常にまっさらな新しいことを始めるということだけではなくて、そういう長期にわたっての国としての取組というものも同時に重要というふうに考えておりまして、そこのバランスというものをうまく取りながら、また、学術と防災という2面がございますので、そういう様々な観点でどう観測網というものを国として維持していくのかという観点が非常に重要かというふうに考えています。
 
【村岡部会長】  貴重なご意見をいただきました。どうもありがとうございました。他に部会の委員の皆様から追加のご質問等はございませんでしょうか。では、今朝は防災科学技術研究所の青井センター長にご説明いただきました。誠にありがとうございました。
 
【青井センター長】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  では、続きまして議題2に移ります。「国土交通省における地球観測の取組について」です。国土交通省の山崎様から、資料2に基づいて説明をお願いいたします。
 
【山崎課長補佐】  お世話になっています。国土交通省大臣官房技術調査課の山崎と申します。本日はこのような貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。本日は、「国土交通省における地球観測の取組」についてご紹介をさせていただきます。いくつかトピックがありますが、本日は、代表的なトピックについて各担当部局からご紹介させていただきます。冒頭、私から全体像について簡単にイントロということでご紹介させていただきます。
 ご承知のとおり国交省では、道路や河川といったインフラの管理、鉄道や航空といった物流関係、さらには防災対応も頑張っております。また、海上監視などにも取り組んでおり、多岐にわたる業務を現在担当しております。国土交通省という名前のとおり、国土の管理や監視というのは国交省にとって非常に重要なミッションと考えており、今回、地球観測の実施方針や実施計画などに基づいて、こういった陸海空様々な観点から地球観測の取組を実施しているところです。
 例えば資料の1ページ目の左に紹介しております空からの視点では、以前の部会でご紹介があったと思いますが、気象庁の静止気象衛星ひまわりでの集中豪雨の予測であったり、航空機や防災ヘリを使った被災状況の把握。
 陸からの視点では、レーダ雨量計で降水の状況を観測し、その情報をほぼリアルタイムで配信をしようというXRAINという取組であったり、国土の管理に必要不可欠でもある基準点の整備という取組も行っております。
 また、右に記載のあります海からの視点では、海上保安庁が持っております測量船を使って、海底の地形であったり、海域の火山の監視といったものにも取り組んでおります。
 あと、この資料ではご紹介できておりませんが、国土交通省では水循環や水資源管理といった分野についても所掌しています。こういった分野での国際協力の取組もしておりますので、そちらについてもご紹介いただこうと思っております。いずれも詳細についてはこの後ご説明させていただきますが、国交省の業務を進める上で地球観測というのは非常に重要な取組と考えておりますので、引き続き切れ目なく取り組んでいきたいと考えております。
 次のページが今日のメニューになります。この後こちらの内容で順にご説明しますが、まず国土地理院から基準点測量であったり、地殻変動の観測といった取組について、海上保安庁から、海底における地殻変動観測や海域における火山監視といったことについてご説明いただきます。その後、水管理・国土保全局から、XRAINによる高精度かつ高頻度な雨量観測について。最後に、国交省が所管している国立研究開発法人である土木研究所から、国際的な水資源管理への貢献の取組について、それぞれご説明をいただきますので、よろしくお願いいたします。
 
【石山技術政策企画官】  国土地理院の石山です。よろしくお願いいたします。それでは、国土地理院の地球観測の実施計画における登録事業についてご説明したいと思います。今スライドでご覧いただいているかと思います。国土地理院の登録事業でございますが、8つございます。これについて本日ご説明させていただきますが、地理院といたしましてはこちらの8つの事業を測量の規模に準じまして3つのフェーズに分けてご説明をしたいと思っております。1つはより狭い地域ということで地域フェーズと、国単位の地域として国フェーズ、あと地球規模ということで地球フェーズというふうに分類してご説明をしたいと思っております。
 次の頁でございますが、国フェーズのところから行きたいと思います。基本測地基準点測量というもので、これは一番基礎中の基礎となる測量になります。明治以来150年継続して続けている事業であります。国内に三角点、水準点等の基準点を設置しまして、現在はGPS衛星等を使ったGNSS測量を実施しているところです。これらの成果を随時公表されまして、各種測量、研究等にも使っていただいているというものでございます。
 トピックスして3つ目に書かせていただきましたのは航空重力測量と申しまして、高さ方向の基準に関しまして非常に大きな影響がある重力について、令和5年度から航空機を用いて測量を行っております。そうすることによりまして重力の等ポテンシャル面といわれているジオイドを明らかにすることによって、より正確な、またGNSSを使った測量ができるようにということで事業を進めているところであります。
 続きまして右側、電子基準点測量。これも国フェーズでございます。電子基準点に関しましては阪神大震災以降全国に広く配備をしてきたものでございまして、これは今1,300点ほどございますが、これらもGPS衛星を用いたGNSS連続観測を24時間365日継続して行うことによって正確な位置を決定するというものでございます。収集したデータは同様にオンライン等で公開してございますし、位置情報サービスや地殻変動観測等に活用しているものであります。また、電子基準点に関しましては、新しいトピックとしましては、この電子基準点で捉えた位置情報を逆に利用することによって各衛星、GNSS衛星、GPS衛星とかGLONASSとかガリレオ、もちろん日本の準天頂衛星もありますが、そういったものの精密な軌道情報(精密暦)といったものを算出するという事業も昨年度から始めたところでございます。
 下の段の左側、VLBI測量。これは地球フェーズになります。これは地球規模の観測ですので我が国だけではなくて国際観測というものに参加しているという形になるのですが、130億光年ほど離れた準星(クエーサー)と呼ばれる星は電波を出しているのですが、その電波を世界同時観測することによって、その電波の到達時間の差から観測点の相対的位置関係を把握するということを全世界でやっていますので、それによって地球の形というものを決定するというようなことをしております。これらの観測結果、世界規模でのITRFという座標系がございますが、そういったものを整備・維持に活用されておりますし、国内の我々が設置している基準点の位置決定にも利用しているということになっております。
 最後、隣ですが右側、南極観測ですが、南極地域に関しましては国土地理院から年1回職員を派遣しまして、南極において基準点の観測、地図の作成という作業・観測をしております。これらの観測データ、地形情報は国内外の研究機関に提供しておりまして、科学的・基礎的な情報整備というもので国際的に貢献させていただいているところであります。
 次の頁に行きますと、これが地域フェーズになります。具体的には災害時の地殻変動観測というものになるのですが、左上でございます、地殻変動観測と申しまして、電子基準点でも観測をしておりますが、いわゆる水準測量と現地に人を派遣して地殻変動監視のための測量を行うということも実施しております。これらの結果は全て地震予知連絡会と関係機関へ報告しておるところでございます。
 左下でございますが、機動観測と書いてあります。REGMOSというふうに書いてあるのですが、これは非常に顕著な地殻変動が予想される地域、例えば今回ですと能登半島等で群発地震がこの間の地震の前に発生しておりましたので、このREGMOSを能登半島に運びまして設置するということを行っております。そういうことで地震発生時の大きな地殻変動を捉えるということを行っております。
 その隣ですが衛星合成開口レーダ地盤変動測量(干渉SAR)ですが、これはJAXAが運用しておりますだいち2号(ALOS-2)の発する電波、これはLバンドのレーダになるのですが、それを用いまして地震が発生する前と地震が発生した後の電波の反射波を比較。干渉させるというふうにいいますが、重ね合わせることによってその電波のずれによって干渉縞が発生します。その干渉縞によってどれだけ地殻が動いたかということを見るという観測でございます。これらの結果も各機関にご提供させていただいているところであります。
 次の頁です。これが最後の頁になりますが、実際にどういった災害の被災状況把握を行っているかを能登半島地震を例にご説明したいと思います。今、基準点関係をご説明しましたが、航空機関係の撮影でございますけれども、能登半島地震が1月1日の16時10分に発生いたしましたが、その発生直後に、国土地理院の運用している、これは自動で動くシステムなのですが、ここで被災状況を推定するというシステムがございます。その結果に基づきまして16時18分に直ちに空中写真撮影計画の立案を開始したところであります。これはこの後、日没を迎えてしまいましたので、翌日早朝の日の出の後に直ちに離陸をいたしまして空中写真撮影を実施し、日没後にデータを回収しまして、写真を撮ったのは普通のデジタルカメラではなく測量のカメラを用いていますので、これはセンサになっています。RGBの色分解されたものなのですが、それを合成してトゥルーカラーに直しまして写真を作成するということで、3日の朝の6時15分に公開をいたしました。という活動をしてございます。
 向かって右側です。航空機による被災地の撮影というのはこういった形で実施しているのですが、もう1個、いわゆる光学カメラ以外にSARというレーダを用いて撮影することもございます。一番下のところの例ですが、これは平成26年の御嶽山が噴火した際の噴火口を推定する際に用いた航空機SARの画像でございます。斜め写真というのはいわゆる光学写真ですが、これについては噴煙が邪魔で噴火口がはっきりと確認がしづらい状況になっているのですが、レーダを用いまして噴火口の位置を確認することを行ったという例でございます。以上、国土地理院が実施している地球観測の登録事業についてご説明をさせていただきました。ありがとうございました。
 
 
【佐藤海洋防災調査室長】  海上保安庁の佐藤です。よろしくお願いします。では、海上保安庁の取組についてご紹介いたします。海上保安庁の地球観測の実施計画に関しましては、この下にあるような3つが登録されておりまして、今回は地震に関する観測と、あと海域火山の観測の2つについて紹介します。
 まず地震ですが、私たちは海底で地殻変動を測るということをやっています。先ほど国土地理院さんから電子基準点の話がありましたが、電子基準点の海版だと思っていただければと思います。ただ、実際にはGNSSの電波というのは海底まで届かないので、右下にあるように海底に海底局というものを設置して、船の位置をGNSSで決めて、船と海底局との間を音波で測ることによって2、3 cmの精度で海底局の位置を決めるという取組をやっております。実際の観測点は左の図のようになっていまして、特に日本海溝や南海トラフの海溝型地震をターゲットとして調査・観測をしており、観測結果は地震調査委員会や南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会に提出しています。
 簡単に成果をご紹介いたします。まず、2011年の東北地方太平洋沖地震の成果です。左から地震前、地震時、地震後と並んでいます。一般的に地震観測というのは地震が発生しないとデータが取れませんが、地殻変動観測というのは、地震前から地震時、さらに地震後と、どのフェーズでもデータを得ることができます。実際に、東北地方太平洋沖地震の時には、地震前には太平洋プレートの沈み込みに伴って宮城沖の海底が5、6 cm沈み込んでいるということが分かっていました。それが3.11の地震によって、3.11の地震の震央の真上の点で24 mという大きな動きが検出されました。国土地理院さんの牡鹿電子基準点では5.3 mでしたので、その4倍以上の地殻変動が検出され、震源域の真上で測ることが大事だということが認識されました。さらに注目すべきは地震後です。右の図は地震後2年間ぐらいの観測成果です。陸の電子基準点では地震時と同じ東向きですが、海底の動きは地震の震央の真上では西向きだったり様々な方向の地殻変動データが得られており、このような複雑な動きは実際にここで観測してみないと分からないもので、海での直接の観測が大事だということです。
 同じような観測を南海トラフでも実施しています。南海トラフに関しましては、今は地震前のフェーズで、沖合からフィリピン海プレートが日本列島の下に沈み込んでいて、プレート境界にひずみを蓄積している状況です。こちらに示しているのが我々の観測点の速度でして、年間3 ~6 cmぐらいの速度で押されており、場所によって速度が違うということが分かっています。速度が大きい小さいが何を表しているのかというのがこちらですが、我々が見ているのはプレート境界で海側のプレートが沈み込むことによって引きずられる様子で、プレート境界面が固着しているほど地殻変動量も大きくなり、地殻変動量が小さいということは固着は弱く、観測から得られる速度は固着の濃淡を示しています。赤が濃いところがひずみを蓄積して固着している部分で、赤が薄くなればなるほど固着が弱い。南海トラフの地震も震源域の大部分が海にあるので、海域での観測が非常に重要で、日々南海トラフの観測を実施しているところです。
 続いて火山の観測ですが、私たちは船舶の航行安全の確保の観点から南西諸島や南方諸島の海域火山において火山観測を実施しており、観測結果を火山噴火予知連絡会に報告するとともにホームページで公表しております。調査の内容は主に航空機を使った調査と測量船を使った調査がございます。
 航空機による調査では、目視観測として噴火の状況、変色水の状況、火山ガスの有無を見るとともに、可能であれば熱計測を行い、温度の測定も実施しています。また、測量船による調査では、主に海底地形の調査を実施しています。対象としている火山には海面上に出ているものだけではなく、海底火山も含まれるので、海底火山が万が一噴火すると通っている船舶に危険が及ぶことから、海底地形を測って火山の様子を把握しております。
 最近のトピックスをいくつかご紹介したいと思います。西之島に関しては2013年に噴火してから新島が形成されて徐々に拡大してきましたが、現在も断続的に噴火と休止を繰り返しています。特筆すべきは伊豆鳥島の成果で、去年10月9日に伊豆鳥島近海の地震が原因と思われる津波が太平洋沿岸に広く観測されてましたが、この地震は通常の地震波形と違うということでこれは何だろうと思われていました。10月20日に当庁の航空機で鳥島近海を観測したところ、潮目に沿って軽石らしきものが浮遊していることが分かりました。これにより、10月9日の津波の原因が火山による可能性が高まりました。さらに、今年の1月に、孀婦岩のすぐ西側にある孀婦海山周辺の海底地形を測ったところ、新たに火口が形成されていることが分かりました。これによって、10月9日に検出された津波の原因が海底噴火である可能性が示唆されています。
 最後に、能登半島地震後に実施した調査結果について紹介します。海上保安庁では能登半島地震後、測量船を現場海域に向かわせて海底地形調査を実施しました。地震前、地震後の海底地形を比較することによって、海底活断層や海底地すべりを検出しました。左側が海底活断層で、輪島の辺りに猿山沖セグメントという活断層があります。地震前の2003年のデータでは、海底はなだらかな地形だったところが、今年1月の調査ではこのように段差が見え、約3 mの段差が生じたということが分かりました。下側はその差分です。この辺りでは、国土地理院さんの調査によって輪島の西方で約4 mの隆起があったと報告されており、それと整合的な結果となっています。
 右側は、富山湾で検出された海底地すべりで、地震前、地震後のデータを示しています。これを見ると、2010年の時はなだらかな斜面だったところに、今回2月の調査で地すべりが起きたことが明らかになりました。この辺りでは、富山検潮所で地震発生の3分後に津波が観測されており、斜面崩壊が津波と関係した可能性が指摘されております。
海上保安庁では、船舶航行の安全の確保から地震や火山の観測を実施しています。以上です。
 
【成島企画専門官】  国交省 河川情報企画室の成島と申します。よろしくお願いします。私の方からはXRAINによる高精度・高分解能のレーダ観測ということで説明させていただきます。参加者がすごく詳しい方も多数いらっしゃるみたいなので簡単にご説明させていただければと思います。こちらの方はまず背景として説明するのですが、昨今やはり我々水管理・国土保全局としては厳しい情勢として、雨の降り方が変わってきており、短時間で大雨が降るようないわゆるゲリラ豪雨的なものが増えてきたり、海面の水温が高まっているということで台風とかも頻発しているということになっております。そういったこともあって昨今の気候変動により水災害ということも多数発生しているというような状況ということもあり、我々としてもできるだけ監視体制の方をしっかりしていって、大きな水害のときはできるだけ早く知らせて避難するということが重要になってきております。やはりそういったときに河川情報というものは非常に重要となりますので、そういったものをきちんと整備していくということが重要となっています。今日話題にするレーダ雨量の他にも、こういった昨今ですとカメラ映像とか、後は当然雨量計とか水位計とか様々な機器を国土交通省の方で整備して、ここに整備しているという状況であります。
 今日話題になっているレーダ関係なのですが、我々はCバンドレーダ、C-MPレーダ、X-MPレーダというものを整備していまして、昨今はCバンドのMP化ということを進めておりまして、結構多くの箇所でMP化の方が進んでいる状況となっております。また、X-MPレーダはCよりもエリアが狭いということもあって、大都市圏とかそういったところを監視するように整備しているのですが、こちらの方も整備してから10年以上経って老朽化しているということもありまして、今後更新の方を進めていくということを実施しております。
 こちらの方に書いてあるのですが、気象庁の方でもレーダ等を整備しているのですが、国交省の方がより多くのレーダを整備しておりまして、その目的はより地上に近いような雨を監視するということで整備しておりまして、こちらの方のデータは気象庁とかにもリアルタイムに提供しており、昨今の線状降水帯の監視とかそういったものにも役立っていると聞いております。
 データの仕組みの方は詳しい先生方が多数いらっしゃると思いますので省略させていただきますが、今まで1波だったものを昨今は技術開発で二重偏波というものを利用することで、より精度良く監視するということができるようになって、従来よりも早い1分間隔でより狭い250 mメッシュでの監視ということを実施しております。
 こちらの方もごく簡単にですが、富士山とかでSバンドとかも使っているのですけれども、気象レーダは基本的にCバンドとXバンドの形になっているということで、そちらの双方を使って、Cバンドの方はより広域の方を観測できるということで、そういったものとより感度が高くて精度の高いXの方も使いながら活用しているということになっております。
 XRAINの方について、先ほどお話ししたとおりCバンド短波の方ですとやはり精度が低いということもありまして、地上雨量データの合成をするということもあって、どうしても時間が遅れてしまうという、5分前には限界ということもあったため、MPレーダの方を使うことによりましてより細かくメッシュ化して遅延も少なく実施しているという形になっております。
 こちらの方は御存じのとおりMPレーダから得られるデータということで、Cバンドのときは1番と2番のPrh-NORとMTI、あと12番の一次処理といわれるRrしかなかったのが、より大量なデータが得られるということになっております。当然データが多くなってくるということもあって蓄積とかも課題があるのですが、これだけの大規模データを得られるようになっているという形になっております。
 そういったものをまず一次的には我々川の防災で情報を提供して、住民の方々自らが見て危険を感じてもらうという取組を当然しております。その他にも、気象庁と連携しながらより防災情報の提供ということで自治体とかに提供して避難ということを、当然そういったレーダ等から洪水予報とかそういったものとかも含めて提供することを実施して、災害から命を守る的確な行動を取れるように、これからももろもろの機器の監視等をやっていきたいと思っております。
 最後に、こちらのデータ雨量等をDIASにも提供しているということを実施しております。こういったビッグデータの活用というのは我々に限定せずに多数の依頼主とも連携しながら使っていきたいというふうに思っております。簡単ですが以上となります。
 
【栗林上席研究員】  土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)の栗林と申します。本日はこのような機会を頂きまして、どうもありがとうございます。続きまして、ICHARMにおける取組を紹介させていただきます。4つありまして、1つ目が衛星データを活用したICHARMの研究、2つ目が実施方針3に関することとしてブラジルの研究例、それから3つ目として実施方針5に関することとしてスリランカ、フィリピン、西アフリカの例をそれぞれご紹介します。最後に国際洪水イニシアチブ(IFI)を通じた国際貢献について紹介させていただきます。
 こちらのICHARMですが、統合的な水資源・災害管理システムの構築を行っておりまして、本システムでは地上雨量計データとかあるいはGSMaPの衛星データの降雨量データの収集から始まりまして、WEB-RRIモデルを用いた水文解析による洪水予測や干ばつ監視を行っております。そしてそれらを活用してハザードマップを作成・リスト化、あるいは洪水早期警報システムの構築とか、そういった社会経済的な利益に至る一気通貫のシステム開発を行っているというのが特徴です。また、植生動態に関する衛星データを活用することで干ばつ、干害に関する対策・評価等も実施しております。
 このような衛星データによりまして精度の高い洪水・渇水の予測が可能となりましたが、その一方では膨大なデータを扱える環境整備が必要になります。ICHARMではそういった高性能・高容量なコンピューターシステムをするDIASを活用することで、降雨等の気象や水に関するビッグデータを高速・高精度で解析することができるようになりまして、短期間の豪雨・洪水の予測ですとか、あるいは長期間の気候変動による影響評価を実施しております。こういったことで、グローバルであることながらデータ量が膨大になる衛星データを扱うことができるDIASとの連携によりまして、国内だけでなくて地上観測体制が充実していない途上国でも衛星データを活用した洪水予測が可能になります。
 続いて、具体的な研究事例について紹介させていただきます。まず、ブラジルでの例として、世界銀行プロジェクトとして実施した「農業的干ばつのリアルタイムモニタリング・季節予測システム開発」について紹介します。本プロジェクトでは、DIAS上で各種衛星データをリアルタイムで収集・統合し、それらデータを陸面における水循環と植生成長を計算できるモデルに入力して、データ同化するシステムである植生動態-陸面結合データ同化システム(CLVDAS;クラブダス)を開発しております。これによりまして農業渇水評価において最も重要な水源でありながら見えない水であるグリーンウォーターを定量評価することが可能になっております。
 今説明しましたCLVDASと我々ICHARMが開発しております高解像度の分布型水循環モデルであるWEB-DHMを統合して、北東ブラジルにおけるグリーンウォーターモニタリング・季節予測システムを開発しております。さらに、現地機関から提供されたセアラ州の穀物データベースを用いることにより、セアラ州における干ばつシステムのLAI出力を用いたセアラ州の穀物収穫高・必要灌漑水量推定手法を考案しております。これらによりまして穀物収量のモニタリング・季節予測が平年並みの収量を得るために必要な潅漑水量の推定手法を確認することができます。
 続いて、スリランカの事例を紹介します。スリランカでは2017年に発生した大規模な豪雨災害を受けまして、ICHARMにおきましてDIASを活用した降雨量予測管理システムを構築しております。本システムでは地上観測雨量ですとか、あるいは人工衛星雨量等を活用したリアルタイムでの氾濫解析を行って、河川流量ですとか、あるいは水位、氾濫発生域を予測し、その結果をWeb上で表示できるシステムを開発し、スリランカ政府の関係機関に提供しております。
 具体的にはこちら6カ所の地上観測データを用いて衛星観測雨量をリアルタイムで補正して、それをこちらの降雨流出氾濫モデル(WEB-RRIモデル)に入力することによって、リアルタイムで500 mメッシュ、そして1時間ごとの洪水氾濫のモニタリングを可能としております。こういったシステムをWebサイトを経由してスリランカの現地機関と共有しております。
 続いてフィリピンでの事例を紹介します。フィリピンではDIASを活用してオンライン知の統合システム(OSS-SR)といったシステムを構築しております。このシステムは、スリランカと同様に地上雨量計データを補正した人工衛星データによるリアルタイムの氾濫解析を実施して現地機関に提供しております。この他このOSS-SRというシステムを活用して、こちらの気候変動影響評価ですとか、あるいはeラーニングを現地機関と共に実施しております。OSS-SRですが、補正されたリアルタイムの衛星雨量情報ですとか、あるいは将来気候下の極端洪水の浸水アニメーション等の表示、それから現地情報の投稿等を行うことができるとともに、現地のステークホルダーに対してトレーニングを実施して、彼ら自身がこういった3Dの洪水ハザードマップですとか、このストリートビューによる浸水深と自宅の比較、こういった成果物を作成することにつながりまして、これら作成された成果物を用いて現地の感覚を基に議論が進められているところです。
 続いての例は、ユネスコや東京大学、現地機関と共に実施しました西アフリカでのプロジェクトの事例です。こちらもDIASを活用してニジェール川、ボルタ川を対象として洪水早期警報システムを構築しております。スリランカ、フィリピンの事例等と同様に、GSMaPによるリアルタイム降雨情報を降雨流出判断モデルに入力して得られる河川水位や氾濫域をリアルタイムに1時間ごとに自動計算して出力・更新しております。また、この図にありますとおり洪水危険地点での想定最大浸水深の情報も提供しております。
 最後のスライドですが、以上の取組はICHARMが事務局を務める国際洪水イニシアティブ(IFI)の主要な活動である、「水と災害に関するプラットフォーム」の活動に深く関連しております。こちらのプラットフォームですが、各国において水災害に係る多様な関係機関が共同して、OSS-SRを活用しながら各国におけるより良い洪水対策や気候変動適応策の立案や実施につなげていく枠組みでありまして、ICHARMはその構築や活動を支援しております。こちらの各写真はこの1年間で各国で実施したプラットフォーム会合の写真です。フィリピン、スリランカ、タイ、インドネシアといった国々で実施しております。このようにICHARMはグローバルに活用できる各種衛星データとDIAS、それからプラットフォーム活動といったものを組み合わせて、世界における水災害被害軽減に向けた研究及び活動も推進しておりまして、今後も継続して行う予定にしております。以上です。ご清聴ありがとうございました。
 
【山崎課長補佐】  いま各局からご紹介いただきましたとおり、国交省では非常に多岐にわたる地球観測の取組を実施しているところです。今後、次期の地球観測実施計画や実施方針の議論がなされると思いますが、引き続き国交省としてはこういった地球観測の取組を切れ目なく行ってまいりますので、引き続きご指導、ご協力を頂ければ幸いです。以上で国交省からの説明を終わります。ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  山崎様、皆様、ご説明いただきましてありがとうございました。では、ここから部会の委員の皆様からご質問、ご意見を受けたいと思います。挙手をお願いします。まず、岩谷委員、お願いします。
 
【岩谷委員】  ありがとうございます。オフィス気象キャスターの岩谷と申します。私は気象情報の分野をずっと仕事としてやってきております。2つほど質問があるのですが、まず、国土交通省は道路や堤防等のハードの分野もある中で、地球観測によるソフトの避難というところなのですが、まず1つはそういう観測の予算というのは現時点では十分確保できているのかというところを伺いたいのと、例えば限られた予算の中で何か工夫されていることがあればお聞かせいただければと思います。
 それからもう1点は、非常にこの防災分野に携わる分野は非常に精度のことがシビアになるかと思うのですが、一方で、地域に住んでいる方が避難してもらうためには、例えば河川の観測とかですごく密度を上げる必要もあるのですが、そういう限られた予算の中で観測の密度を上げて正確性が求められるところについての工夫等があれば教えていただきたいのですが、お願いいたします。
 
【山崎課長補佐】  国交省の山崎です。岩谷先生、ありがとうございました。こちらでも予算すべてを把握できてはおりませんが、おそらく各局とも頂いた予算の範囲でやるということだと思いますが、水局や地理院で、何か感触として思われていることがあればコメントいただけると大変助かります。
 
【成島企画専門官】  国交省水局です。おっしゃるとおり予算の範囲内というのはあるのですが、最後に少し言って中途半端になってしまったのですが、昨今予算が結構厳しいということもあってなかなか思ったところを更新できないとかいろいろ課題もあるのですが、その辺は必要性を訴えながら、正に先生方の御協力を得ながら何とか更新していきたいというふうに思っております。以上となります。
 
【石山技術政策企画官】  国土地理院です。予算関係のお話ですけれども、どうもありがとうございます。地理院も基本的には測量を実施するための予算として頂いたものでございます。基本的にはベースになるものなのですが、毎年いろいろな形でなかなか厳しい折衝をさせていただいているところです。今水局がおっしゃったとおりで、我々が作った観測データを広くご活用いただくということが予算確保の上での後押しになりますので、ぜひご活用いただき、論文にも地理院のクレジットを入れていただけると、我々としては予算要求の際に勇気をもらえるかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 
【成島企画専門官】  水局です。先ほど例で河川の方をお話しいただいたのでコメントさせていただくと、やはりおっしゃるとおり密度の方は重要ということもあるのですが、増やせば増やすほど維持管理費も上がってくるということで、この辺もおっしゃるとおり非常に悩ましいところであるのですが、一昔前だとやはり壊れてはいけないということで結構高いセンサとかを付けていたというのがあるのですが、昨今は我々は少し考えを変えて、1個でそういう頑丈なものを付けるより、2個でより安価なものを付けた方がいいということで、技術公募とかでもいろいろ少し安価なセンサということを公募しながら、そういったところを工夫して、逆にいうと壊れるものだぐらいな形にして、できるだけ安価なものを活用していきたいということで、昨今でいうとスタートアップ企業とかでそういったところもあると思うので、いろいろ公募とかしながら積極的にそういったものを取り入れていきたいというふうに思っております。
 
【岩谷委員】  大体理解しましたので大丈夫です。どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。では、次に赤松委員、お願いします。
 
【赤松委員】  国際航業の赤松でございます。大変素晴らしいデータを多岐にわたって整備いただいているということがよく分かりました。最初に国土地理院の石山様にご質問差し上げたいのですが、今回衛星に関してはレーダの話があったのですが、光学衛星を活用した地図の整備ですとか更新ということに関して、ALOS-3が失われた状況の中で今後どのようにお考えになられているか何かご予定がありましたらご説明いただきたいのですが。
 
【石山技術政策企画官】  国土地理院の石山です。ご質問いただきましてありがとうございます。いわゆる光学衛星の活用ということで今お話がありましたように、ALOS-3が失われて、今JAXAの方でもいわゆる光学衛星のミッションを進めているというふうに聞いております。我々もその内容についてもある程度情報を集めているところですが、そこにも期待をしているというところです。ただ、この新しいミッションはすぐにというわけでもございませんし、まだ数年掛かるかというのが我々の認識であります。
 光学衛星はどういう利活用方法があるかということで、国土地理院ではいわゆる高解像度衛星を用いるというのが普通の考え方かと思いますが、そこだけではなくて、中解像度とある程度解像度がないものに関しましても活用していきたいと考えていて、今進めているのが中解像度衛星を用いて国土の変化情報を集中的にAI等を活用しながら自動的に収集するというのを行っています。そうすることによって、どこに資源を投入すれば効率的に地理空間情報の整備が効率的にできるのかという観点から、そういったことも今試行錯誤しているところであります。これが軌道に乗って高解像度衛星でなくても中解像度衛星でも利用用途があるのだということになれば、中解像度衛星は結構安価に手に入れることができますので、そういったものの活用を考えているというところであります。以上です。
 
【赤松委員】  ありがとうございました。ということになりますと、中解像度ですと例えば日本の衛星ではないデータもあるかと思うのですが、それを活用することで割と早い段階から動かしていくこともお考えになられているということですか?
 
【石山技術政策企画官】  今我々が試験的に行っているのは日本の国内の衛星を使ってやっているところです。基本的に国内衛星を中心に考えていきたいと。国内のものをなるたけ使うことによって産業等にも貢献できればよいかというふうに思っております。
 
【赤松委員】  分かりました。そうしますとやはり次のバックアップ衛星が整備される数年後辺りを実用面でのターゲットとしながら進めていくという感じですか。
 
【石山技術政策企画官】  そうですね。ALOS-3の衛星がどういった形で上がるのか、どういう精度、技術的なレベルなのかを見極めつつ、あと、やはり世界的な技術の進歩の度合いも見ながら、非常に技術進歩が早いですので、その都度どういった活用の可能性あるのかというのは柔軟に考えていきたいと思っております。
 
【赤松委員】  分かりました。ありがとうございました。もう一つは山崎様にお伺いしたいのですが、今日のご発表の中でICHARMと水局の方はデータをDIASに連携させているというお話があったのですが、今後は例えば国土地理院ですとか海上保安庁ですとか、他のデータもDIASに連携させていくとか、そういうご予定はございますでしょうか。実は今回検討している次期戦略の中で、データプラットフォームですとかデータバリューチェーンが非常にクローズアップされているので、そこにどういう形でこのデータが連携できるのかということが少し気になったので、ご質問差し上げております。よろしくお願いいたします。
 
【山崎課長補佐】  どうもありがとうございます。DIASは非常に良い仕組みだと思っておりますが、まずは国交省の中でどの程度知られているかという点もあろうかと思います。もちろん連携できるものはしていった方が当然良いと思いますので、貴重なデータを国交省としても出しておりますので、そこはしっかりと連携できたら良いと考えます。
 
【赤松委員】  ありがとうございます。ぜひそういう形でデータを流通できる仕組みがしっかりと整備される方向でご協力を頂ければと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。私からは以上です。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。続きまして、お三方、嶋田委員、浦嶋委員、前島委員にお願いします。すみません、時間の都合もありましてそれぞれ簡潔にお願いします。まず嶋田委員、お願いします。
 
【嶋田委員】  埼玉県環境科学国際センターの嶋田でございます。ご説明ありがとうございました。国交省が本当に網羅的に災害に関わるようなデータを集められているということがよく分かりました。その上で質問なのか意見なのか、もしコメントいただければ有り難いのですが、国交省は膨大なインフラを管理されていて、そのインフラの管理に伴って様々な気象データを取られていると思うのです。道路気象観測網であるとか、あと河川だとかダムとか、そういったところに気象観測装置はたくさん置いていると思うのですが、なかなかそういうデータというのは十分使われていたり共有できていたりしていないな、一部公開をされていたりすると思うのですが、例えばアメダス等は埼玉県内だと14カ所しかないということで、非常にまばらだということもあって、より高い密度のデータがあると様々な使い方ができるというふうに感じています。もちろん気象業務法の関係とか限定があるかないかとか制度の問題とかいろいろあるとは思うのですが、そういったものに対する動き、ビッグデータとして使うような活用方法とかも考えられると思うので、そういったものは国交省の中にあるのか、もしなければやはりそういう方向性というのを進めていただけるとすごく良いなというふうに思っています。質問は以上でございます。
 
【山崎課長補佐】  貴重なご意見ありがとうございます。確かに各分野でいろんなデータを持っておりますし、すでに共有できるものはしていると思うのですが、特に先ほどおっしゃった制度の関係であったり権利の関係であったり法律の関係でなかなか出せないものも当然あるとは思っています。ビッグデータになってくると人流のデータや物流のデータなども出しているのではないかと思いますので、こちらも先ほどのDIASと関係するかもしれませんが、共有できるものはしっかりしていくというスタンスで引き続き取組を進めてまいります。
 
【嶋田委員】  ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。では、浦嶋委員、お願いします。
 
【浦嶋委員】  MS&ADインシュアランスグループホールディングスの浦嶋です。ご説明どうもありがとうございました。国交省の今のご説明で、19頁目にいろいろなデータを取っていらっしゃるというお話だったのですが、その中に1項目生物というのがありまして、そこについてどういったことを実際に取られていらっしゃるかということを教えてもらいたいと思いました。といいますのは、最近やはり自然を活用した防災・減災という、生物多様性を保全しながら、例えば湿地を保全しながらそういうところに水を逃がすことで防災効果を発揮させるというような、そういう考え方が世界的にも注目を集めている中で、国交省がその水系のデータを取りながら生物のデータも取っていらっしゃるというのはとても素晴らしいと思って、どんなデータを実際取っていらっしゃるかということを教えていただきたいと思いました。
 あともう2点は、ICHARMの取組で、先ほど世界銀行のプロジェクトでグリーンウォーターの調査をされているというふうにおっしゃっていましたが、実際に渇水が生じることによって農業者が非常に収入減少ということに見舞われると思うのですが、世界銀行としてその後のファイナンスに何か関連付けたプログラムだったのかということと、あと洪水に関する国際的な取組を支援されているというお話だったのですが、これも各国水災保険に関わるようなファイナンスとかインシュアランスを付けていくというような動きと連動した形になっているのかということを教えていただきたく質問させていただきました。よろしくお願いします。
 
【成島企画専門官】  国交省水局の成島です。1つ目の質問の生物の関係は、今画面共有をしたのですが、水文水質データベースというところとか河川環境データベースもありました。この辺はごめんなさい、担当ではないので詳しいことを言えないのですが、生物目録とかそういったところが関係するかというふうに思っています。ご紹介だけなのですが、こういったところのことを整備というふうにさせていただいております。以上となります。
 
【浦嶋委員】  ありがとうございます。よく分かりました。
 
【栗林上席研究員】  ICHARMの栗林です。2つ目のご質問で、ブラジルの世界銀行のプロジェクトについて、その後この世銀のファイナンスに何か動きがあったのかというご質問かと思うのですが、今のところそういったフォローアップについてはまだ聞いていないというのが実情です。なので、これはプロジェクトベースとしては実施したものの、その後例えば世銀からブラジルに対して何かそういった継続的なものがあるとかそういったことはまだ私は把握していないというのが実情です。すみません。
 3つ目のご質問は保険に関する動きと連携してはどうかというご質問かと思うのですが、ICHARMとしてはまだその保険については取組めていないのが実情でして、この後そういった世界の動きを見ながら保険についての取組を進めていけたらよいなと個人的には思っているところでございます。以上です。
 
【浦嶋委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  浦嶋委員、よろしいでしょうか。ありがとうございます。では、この議題の最後の質問になります。前島委員、お願いします。
 
【前島委員】  JAXAの前島です。先ほど赤松委員からお尋ねがあったALOS-3の後継のミッションの報告をさせていただきたいと思うのですが、今JAXAが進めておりまして、次期光学ミッションと称してミッション要求検討を進めている段階です。これを着実に実施していきたいと思いますので、よろしくお願いします。コメントのみでした。
 
【村岡部会長】  前島委員、ありがとうございました。皆様よろしいでしょうか。最後に私から一点だけ栗林様にご質問したいのですが、DIASをプラットフォームとした国際貢献・国際連携のお話は特にOSS-SRの話を例にしながらお話しいただきましたが、この取組がおそらくGEOあるいはAOGEOとの連携においてもこれまで長年にわたってステークホルダーとの連携、あるいは様々なデータをモデルを介してつないでいくという、そういう意味でのプラットフォームにもなっているかと思います。そういった国際的な連携、あるいは国内連携、あるいは観測データとモデルと様々をつなぐというプラットフォームにおいて、今後の重要性、特に予測の研究を展開するということ、あるいは人材育成といった観点でも一言もしいただければよろしくお願いいたします。
 
【栗林上席研究員】  ありがとうございます。ICHARMの栗林です。人材育成の観点からは我々ICHARMは研究だけではなくて研修事業を実施しておりまして、これはアジア、アフリカ、そういった途上国から行政関係者を招いてトレーニングをするということなのですが、そこで1年間の修士課程と3年間の博士課程を持っています。そういった中でも学生は自らの国の流域のデータを用いてDIAS上で分析をして論文に書くという取組を行っていまして、具体的には例えば、これまでに修士・博士学生だと27名ぐらいがこういったDIASのシステムを活用して論文等を書いているというところです。それから、現地でのトレーニングということでは、フィリピンですとかミャンマーとか、そういったところでもこういったDIASを活用したトレーニングを実施してきておるところでございます。以上です。
 
【村岡部会長】  どうもありがとうございました。今人材育成についてお聞きしたのは、この部会でも特に若手、次世代の人材育成がやはり地球観測分野あるいは観測データを用いた付加価値の創出というところで重要だという議論をしていましたのでお伺いしました。どうもありがとうございました。では、議題2において説明いただいた皆様、本日はどうもありがとうございました。
 続きまして、議題3に参ります。議題3は「地球観測データを用いた防災・減災の取組について」という題で、山口県の取組についてご説明いただきます。山口大学の長井先生から、資料3に基づきましてご説明をよろしくお願いいたします。
 
【長井センター長】  山口大学の長井と申します。よろしくお願いします。現在は応用衛星リモートセンシング研究センターのセンター長を務めております。この辺りの背景も踏まえてご説明させていただきます。最初に私の自己紹介ですが、山口県出身ではないのですけれども、この後に出てきます山口県の取組に伴って、それまでは東京大学の柴崎先生の下で学位を取って、2016年まで東京大学にいたのですが、その後山口大学に移ってきました。
 我々は今様々な衛星データ、宇宙インフラを使って地球の様々な課題に取り組もうということをやっています。その中で防災活動ということもいろいろな枠組みの中で積極的に活動しております。山口県の中の大きな取組といいますと、2017年の2月になるのですが、JAXAの西日本衛生防災利用研究センターというのが山口県の中にできてきました。これは山口県の産業技術センターの中にあるのですが、同時に山口大学の中にもオフィスがあります。ちょうどこれは2017年2月なのですが、その時に山口大学の応用衛星リモートセンシング研究センターというのも立ち上がりまして、同じ2017年の2月にJAXAの山口県のセンターと山口大学のリモートセンシングの研究センターが同時に開設をしました。山口大学の応用衛星リモートセンシング研究センターなのですが、JAXAのオフィスがある山口大学の中にあります。この中で、私もJAXAに在籍していたことがあるのですが、その他専門の先生、JAXA在籍の経験のある先生であったり、今は山口大学とJAXAのクロスアポイントメント制度によって4名の教員がJAXAと山口大学の両方の研究をしているということをしております。
 この中で県との枠組みということも積極的に取り組んでおります。これは先ほど私が説明した経緯なので後でお時間があれば見ていただけたらと思いますが、政府機能の地方移転というのに伴って山口県がJAXAの拠点を誘致して山口県への移転が決定したと。それに伴って山口県でもリモートセンシングを防災に利用しようということで、2番目のリモートセンシング防災利用推進協議会というのが設置され、そしてJAXAのセンターができ、山口大学の中に研究センターができたということで、様々な分野で衛星データの利用を進めているところです。
 この協定の中では山口県、山口大学、JAXAの三者協定というのを締結して、防災利用であったり産業育成であったり人材育成という様々な分野で3者で共同しながら取り組んでいるということになります。防災に関しては特に力を入れていて、災害等が発生すると山口県からJAXAに対して観測要求を出して、そのデータが山口大学に来て、その結果を山口県にお知らせをするというような枠組みで、その中に右側にありますように県だけではなくて当然市町であったり消防、自衛隊、警察、その他の国関連の機関に対しても、同じ県内にあるその他の機関に対しても情報を提供するということをしております。
 これは同じような先ほど説明した枠組みですが、山口県から観測要求を出して、その解析を山口大学が担って関係機関に提供するということをしております。これはいくつかの例ですが、山口県では私が着任してからは特に大きな災害が起きたということはないのですが、2018年の西日本の豪雨災害でも大きな災害があったりしておりまして、その都度衛星データを解析して関係機関に提供するということをやっております。
 その中でいくつか珍しい活動というのがあるのですが、これは山口県衛星データ防災利用マニュアルです。これはちょうどもうバージョン4になって昨年度末に改定したのですが、災害時にどうやって衛星データを使おうかということをマニュアル化して、これを県内の関係機関に配っております。これはその災害で解析したデータがどういう意味をなすのかとか、例えば土砂災害は赤色でとか、洪水災害が水色だとかといったような色等も含めて、どういうふうに利用者が理解するかということも踏まえながら防災マニュアルというのを作っております。これは順次更新しておりますがこういったマニュアルがあります。その他にも防災訓練、これはまた今月あるのですが、毎年防災訓練をやっております。これは今まで県だけでやっていたのですが、この協定が結ばれてからはJAXA、山口大学もこの防災訓練に参加しております。我々のところには電話が掛かってきて、訓練なので、さあどこどこで災害が発生しました、観測要求をJAXAに出しますという連絡がJAXAに行って、そこから山口大学のデータが来たので解析結果をというようなことを電話だったりメールのやりとりだったりデータのやりとりをしながら、県の災害対策本部に衛星データの結果を提供する。これはシナリオの中では第2回の災害対策本部会議の中で衛星データが利用されるというシナリオに毎年なっているのですが、それまでに何らかの結果を提供するということで防災訓練を毎年やっております。その他にも防災利用訓練ということで、これは県でやっているのですが、このデータを市町だったり消防、警察、自衛隊等にも使っていただくべく、これはZoomですが毎年研修会を開いて山口大学、JAXAから衛星データ利用の講演を行っているということになります。
 その後、今山口大学ではこういう県の活動と連携して新たな研究開発を進めております。これはもう皆様には釈迦に説法ですが、今地球観測衛星の数が非常に増えてきて、これから数年後には1,000機以上になるというふうにいわれております。その中で我々が見据えているのは、これは防災も含めてなのですが、3つの課題を掲げて研究開発を進めています。1つ目が、たくさん衛星データが出てくると衛星ごとに見え方、波長帯が違うということで、この校正サイトであったりキャリブレーションということを進めていこうということが1つ。もう1つは膨大な衛星データの解析ということで、AIを利用した自動処理。後は、たくさんの衛星データが出てくると、どの衛星データを使ったらよいか分からないというような課題が出てきて、衛星観測の最適化。これは国で進めているダイナミックタスキング等とも連携をしながら研究開発を進めています。
 我々が進めている技術のキャリブレーションに対しては、衛星データを統合するハーモナイゼーション技術ということを目標にやっております。これはほぼ数日違いで同じ場所を撮った衛星データです。GRUSだったりLandsatだったりPlanetだったりSentinelだったりいろいろありますが、これは御存じのとおり波長帯が違うので見え方は全く違います。これをこのまま計算するとNDVIの値だったり機械学習の際の教師データとか解析の精度に影響が及ぼされるので、もう我々はこれをキャリブレーション技術を使ってハーモナイズをする。どのような衛星データでも同じように見えるようにするというような技術開発を進めています。
 これをするために我々はミラーアレイというような仕組みを作りました。これは鏡を天空に向けて設置をして、このミラーの反射波を使って衛星画像を補正するという技術です。これは文部科学省の技術開発に採択をされて研究開発を進めているのですが、これも継続的にやっております。日本国内でこのミラーのキャリブレーションサイトが設置されたのは国内初であります。日本以外だとアメリカに数基設置してありますが、アメリカではこのミラーを使ってLandsat等のキャリブレーションが実施されています。
 これは時間がないので簡単な紹介ですがPoint spread functionというような点像分布関数を使ってキャリブレーションする技術になります。これを使ってキャリブレーションするというのは非常に新しい仕組みでして、これは我々が開発して進めております。これはキャリブレーションした例ですが、左側がキャリブレーション前で、右側がキャリブレーション後です。かなりぼけであったり波長帯の補正だったりということが非常によくできるということが結果としても出てきました。
 その他にも我々は衛星データの校正ということで、コーナーリフレクターを設置して開発等も進めております。コーナーリフレクターを設置すると当然反射波が上がってくるのですが、これを例えばいろんなインフラ設備で、例えば土砂災害警戒区域であるとかダムであったり、通常山の中だとPS点というような時系列の干渉解析をするときの干渉点を探すというのは非常に難しいのですが、このマーカーをいろんな箇所に設置して、このデータを使ってインフラであったり土砂災害の危険区域の観測を行うというようなことをやっております。
 AI解析の方も先ほど少しお話をしましたが、従来のAI解析というのは一つの衛星データを解析するときにそれ専用の教師データを使って、その衛星専用のモデルを作るというようなことをやっていました。これは10個ぐらいの衛星であればそれでもいいのですが、これが例えば数百機の衛星データを解析するというふうになった場合には、衛星それぞれの専用の教師データ、学習モデルを作るというのは非常に大変なので、我々は先ほどのキャリブレーション技術を使って共通の教師データ、共通の学習モデルを利用できる、これは転移学習等も使っているのですが、こういった機械学習の開発というのも進めております。これは今SIP等の中でも研究開発を進めているのですが、災害時にどの衛星データが来ても、教師データが準備していなくても、学習モデルが準備していなくても、直ちにAIを使って解析をするというような技術になります。これは既にSAR衛星等では転移学習を使ってALOSのデータを教師データとして使って、その他の海外の衛星データの解析をするということに成功しております。
 さらに、ダイナミックタスキングの方は、これは我々がSIPの中で防災科研と富士通を含めていろんな研究開発を進めております。これはいつどこが危険か、どこが観測可能かということで、多数ある衛星データの中から、どの衛星データでどの災害をどのタイミングで撮ったら役に立つかということを最適化するシステムでございます。これを使うことによって、今までは例えば2018年の西日本豪雨災害の時も岡山県はたくさん衛星データがあるのだけれども、その他の地域は余り撮られていなかったというようなことがあって、それを契機にこういうことを考えたのですが、こういったような観測の最適化ということも開発として進めております。
 現在、山口県、山口大学の中では様々な活動と連携をして研究開発を進めております。西日本衛星防災利用センターです。左上にありますように山口大学は大学の中で唯一ですがSentinel Asiaの運営委員のメンバーであり、先の能登半島地震の際も私が国際災害チャータのプロジェクトマネージャを実施しました。こういう国際的な防災の枠組みとも非常に密に連携をして活動しております。さらにはSIPとも連携をして、災害時の衛星データ利用を進めております。小型衛星としては、アクセルスペース、プラネット、フィリピン大学等の機関と協定を結んで、プラネットとは既に4年ぐらい前に協定を結んで、日本の大学でプラネットと共同研究契約を結んだのは山口大学のうちのセンターが初でございます。こういったような多くの衛星データリソースを使って機械学習・教師データの作成、さらにはキャリブレーション、ハーモナイゼーションということを行って、当然これをどうやって地域の防災に役立てていくかというような地域防災のモデルを作っていくということが一つ。
 もう一つは、今Sentinel Asia等の中でもやっているのですが、アカデミアの連携によってどうやって災害対応していくかというところです。さらには、こういった新しい技術を使ったビジネスの創出というところも踏まえながら、災害時というのは非常にたくさんの衛星データが使えるので、多くの新規技術の開発ということができます。これらを使った新しいビジネス創出をするということにも力を入れて今研究開発を進めているところです。以上です。
 
【村岡部会長】  長井センター長、取組についてご説明いただきましてありがとうございました。では、部会の委員の皆様からご質問、ご意見を受けたいと思います。挙手ボタンを使ってお知らせください。高薮委員、お願いします。
 
【高薮委員】  長井先生、ご説明どうもありがとうございました。このような地方自治体と大学の連携した取組というのは、防災への地球観測データの活用という意味でも人材育成という意味でも非常に重要な取組だと思います。実際に成果を上げられていることは素晴らしいと思います。2つ質問がございまして、いろいろ初にやられていることですのでまだ少ないのかとは思いますが、このような取組が他の自治体でも行われているか、若しくは今後他の自治体で活用がされ同じような取組がされていく見通し等について。
 それから2つ目は、実際に地方での人材育成というのが非常に効果的だと考えておりますが、その手応えについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【長井センター長】  他の地域の連携というのは、このちょうど後のスライドにあるのですが、実は中国・四国・九州・沖縄も含めてなのですが、これらの地域の防災だったり衛星利用の関係者が集まって年に1回協議しようというようなことをやっています。はっきりは分からないのですが、その時には当然県は高知県で災害が起こった場合には山口県がサポートしますとかというような、いわゆる認定の中で協定の枠組みが出来上がっているわけですね。こういうことも踏まえて、我々は近くの県で災害が発生したときには、県の要請等もあって災害の解析の結果を山口県ではなくてその他の地域にも提供するということをやっております。
 人材育成に関しては、都内だと一つの大学で完結しようという形にはなるのですが、今我々がやっているのは例えばこの地域でいうと山口大学は今衛星データ解析に特化をして人材育成研究を進めております。一方で、九州工業大学は趙先生が小型衛星の開発で非常に著名な先生ですが、車で行くと高速道路に乗れば30分40分で着くのですね。今アフリカ等の人材育成で同じアフリカの宇宙機関ですが小型衛星開発の人材育成を九州工業大学でやって、その上げられたデータをどうやって利用していくかというような人材育成を山口大学でやるといったような、連携をした人材育成というのを進めているところではあります。こういったことをやりながら地域でかなり連携しながらやっている形ではないかというふうに思います。
 
【高薮委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。では次に、浦嶋委員、お願いします。
 
【浦嶋委員】  ありがとうございます。大変興味深い取組で、特に最後のスライドにありますビジネス創出というところにとても興味があるのですが、先ほど来よりSIPでの研究ですとか、やはり国からの研究費、又は大学の研究費だったり、また、こうしたデータがやはり公共のものとして供されることを考えると、この防災におけるビジネスを創出というのはなかなか難しいなといつも思っているのですが、何かこういった形であれば民間のビジネスとして成立し得るというようなお考えになられているものが、もし共有できるアイデアがあれば少しコメントいただければと思っております。お願いします。
 
【長井センター長】  ありがとうございます。大学としては防災をコアにしてリモートセンシング人材を育成しようということをまず考えて最初に始めました。というのは、リモートセンシングのアプリケーションは農業だったり森林だったり環境だったりいろいろあるのですが、衛星データを防災に利用しようということが一番スペックが高いのですね。これは時間的な制約があったり、人命が関わるので精度の問題があったり、さらに例えば洪水・土砂災害・地震・火山において光学衛星の機械学習で倒壊家屋を検出したり、SARの干渉解析によって地盤変動を見るとか、衛星のフルスペックが必要なのが防災利用なのですね。なので、我々がその衛星の防災のフルスペックを利用するということで、リモートセンシング人材を育成すると。そこで育った人材は当然衛星データの解析ができるので、その人材は就職したりビジネス開発するときは例えば農業だったり他の分野でもその解析技術を応用したり利用していけるというような仕組みにしようと思っています。
 
【浦嶋委員】  どうもありがとうございます。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。では次に、岩崎委員、お願いします。
 
【岩崎委員】  岩崎です。長井先生、日頃から大変お世話になっています。JICAの岩崎です。九工大のお話もありましたが、途上国人材の育成についても山口大学、九工大の皆様には本当にお世話になっております。2点ほど質問があります。山口県の関係者とJAXA、そして大学の関係者協働による防災の取組を非常に興味深く伺いました。改めて教えていただきたいのが、衛星データを使うことによって、山口県の防災の取組にどういうような新たな付加価値が生まれたかということについて教えてください。
 2点目といたしましては、後半の方でご説明ありました複数の衛星を活用した防災の取組が進められているとのご説明がありました。これによって、更にどういうような付加価値をもたらすことができるのかということについて展望を教えてください。以上2点になります。よろしくお願いいたします。
 
 
【長井センター長】  ありがとうございました。1点目なのですが、県の防災にどのくらい役に立つのかというところは、まだ我々は準備をしてはいるところなのですが、活動が始まってから幸いなことに山口県内でまだ大規模な災害が発生していないということもあり、この成果がどのくらい役立つかというところはまだ分からないのですが、いつ起こるか分からない災害に向けて準備をしているというところで、いつ起こってもいいように準備をしたり、今までは県の活動とか大学の活動はばらばらだったのですが、現状では災害の先ほどの避難訓練だったり、定期的に協議会を開いておりますので、県がこういうふうに活動しているとか、県の防災システムにこういう更新が入ったとかというのはよく分からなかったのが、我々も今は大分分かるようにはなってきたので、それに合わせて我々も必要な解析を進めていくというように、常にアップデートするような環境ができたというふうに思っております。
 2つ目のところなのですが、災害に衛星データが使えるようになったというのは非常に最近です。というのは、今まで例えば2000年代ぐらいですと、災害が起こりました、衛星データで撮ろうと思ったときに、次に観測できるのは3日後です4日後ですというのが当たり前だったのです。そうするともうそんなのは要らないというふうになってしまうことがあります。今年の能登半島の地震ですと、もうその災害の夜にALOSで観測ができています。
 一方で、必ずしも日本の衛星が観測できるわけではないのですね。これは2019年の佐賀県の豪雨災害ですが、この時に佐賀の上空を最初に観測したのは韓国のKOMPSATでした。2019年の台風19号の時も東北地域を一番先に撮ったのはブラジルの衛星だったのですね。そうなると、要はALOSのデータが必ず先に取ってくれればモデルを準備しておいて解析すればいいのですが、最初に撮ったのは韓国の衛星でした、ブラジルの衛星でしたというふうに、例えばSentinel Asiaとか国際災害チャータを通して提供されると、こんなのはいじったこともないぞみたいなことが起こるわけですね。そうなったときに日本の衛星データとかアメリカの主要衛星、ヨーロッパの主要衛星が撮るまで待とうというと、やはり災害対応がどんどん遅れてしまうので、こういうことにも準備しなければいけないということで、正にいろんな衛星データが使えるようになったことで災害の観測のタイミングのスピードというのが飛躍的に上昇しました。
 なので、この飛躍的な上昇に対して解析の方もやはり対応していかなければいけないということで、当然転用できる学習モデルを作るということであったり、精度を上げるためのデータのハーモナイゼーション、キャリブレーションをしっかりしていく。特に海外の衛星だと精度が低いことが多いので、そういう準備を始めているということになります。
 
【岩崎委員】  丁重なご説明ありがとうございました。非常に貴重な取組だと思います。大変に期待をしております。今後ともよろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。では、最後に中北委員からお願いします。
 
【中北委員】  ありがとうございます。京都大学防災研究所の中北です。ご説明ありがとうございました。私は山口県庁で治水関連で3年ほど一緒にさせてもらったことがあるのですが、その当時も山口県と山口大学はある程度連携もされていて、山口大学には地域防災・減災センターというのが当時からできていたと思うのですが、JAXAとのお付き合いをずっとされているのも存じ上げていたのですけれども、今はそのセンターとこちらのタイアップとかいうのはどういう状況で盛り上がっているのでしょうかというご質問をさせていただいてよろしいですか。
 
【長井センター長】  山口大学にある地域防災レジリエンスセンターというのは、我々側からすると一顧客ということになります。なので、我々の解析結果をその地域防災連携研究センターの先生方に提供するというような枠組みを大学の中ではあるということです。
 
【中北委員】  では防災という大きな枠組みで一緒というわけではないのですよね。あくまで衛星利用という観点でこちらのセンターはかなり特化されていて、新しい衛星の利用面というのも世界に先駆けて作っていて、それが山口県発でいろいろやっていくと。そういうイメージをさせていただいたらよろしいですか。
 
【長井センター長】  はい。その通りです。
 
【中北委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  質疑応答いただきましてありがとうございました。では、以上で議題3を閉じたいと思います。本日は長井センター長にご説明いただきました。どうもありがとうございました。
 
【長井センター長】  ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  それでは、議題4に参ります。議題4は「次期『我が国の地球観測の実施方針』について」です。事務局から、資料4-1から資料4-4に基づいて説明をよろしくお願いいたします。
 
【松原環境科学技術推進官】  それでは、これまでの部会での議論も踏まえて、資料の4-1から資料の4-4に基づき、事務局より、次期「我が国の地球観測実施方針」について説明します。まず、資料の4-1では、地球観測推進部会及び「我が国の地球観測の実施方針」についてです。前回の部会でも議論のあった実施方針の位置付けも中心として説明をさせていただきます。
 それでは、1ページをご覧ください。昨年7月の第1部会でも説明したスライドですが、地球観測推進部会の主な活動の一つとして、地球観測を取り巻く国内外の動向を踏まえ、10年程度を目途とした我が国における地球観測の取組にあたっての基本的な考え方を取りまとめた「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」を策定するということが挙げられています。現行の「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」は、来年には取りまとめられてから10年が経過をすることから、現在の第10期地球観測推進部会において次期実施方針の策定に向けてご審議をいただいているところです。
 その次の2ページをご覧ください。我が国の地球観測の方針は、平成16年に「地球観測の推進戦略」が策定をされてからほぼ10年ごとに策定をされているというところです。まず、平成16年8月に、当時の総合科学技術会議、現在の総合科学・イノベーション会議において、地球観測に関する我が国における取組の基本的な考え方を明確化するため、「地球観測の推進戦略」が策定されています。「地球観測の推進戦略」では、利用ニーズ主導、我が国の独自性の確保とリーダーシップ発揮、及びアジア・オセアニア地域との連携強化という3つの基本戦略と長期的な視点の下で、我が国が戦略的に取り組むべき地球観測の重点課題等を示しているところです。
 その11年後となる平成27年8月、現行の「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」が策定されました。この実施方針では、課題解決型の地球観測の達成が全体のテーマとなっています。また、現行の実施方針が策定されてから5年後に取りまとめられたフォローアップ報告書では、我が国は世界有数の高い地球観測能力を有しており、様々な課題の解決に貢献をしているものの、予測技術の更なる高度化や地球環境データの増加への対応等の課題等が挙げられているところです。これらの方針等の位置付けを踏まえ、次期「我が国の地球観測実施方針」の策定に向けて議論いただいきたいと思います。次のページ以降で対象期間等も含めて、我が国の地球観測の方針がどのように位置付けられてきたのかを簡単に説明します。
 3ページになります。平成16年に策定された「地球観測の推進戦略」は、我が国の地球観測に取り組むに際しての考え方、戦略的に取り組むべき重点課題等を、今後10年程度を目途として示したものです。国際的な10年実施計画への国内対応の我が国の指針となるとされており、10年間の方針とされています。
 4ページをご覧ください。現行の実施方針が取りまとめられる2カ月前の平成27年6月に総合科学技術・イノベーション会議が取りまとめた「地球観測等事業の進捗状況のレビュー」において、地球観測推進部会が我が国の中長期的な地球観測の取組を示すものとして、今後10年程度を目途とした我が国の地球観測の実施方針を作成することとされていす。また、このレビューにおいて実施方針をおおむね3年から5年を目安に地球観測推進部会が中心となって見直しを行うこととされています。
 5ページをご覧ください。現行の実施方針の第1章 はじめにからの抜粋になります。レビューを踏まえ、地球観測を取り巻く国内外の動向を踏まえた今後10年程度を目途とした我が国の地球観測の実施方針を策定するということとされています。
 6ページをご覧ください。令和2年のフォローアップ報告書では、レビューに記載されたおおむね3年~5年を目安に本部会が中心となって見直しを行うということが引用されており、それを踏まえてフォローアップを行うということが記載されています。実施方針の見直しとしては、内容を含めた見直しを指すものと考えられますので、これまでの部会でご議論いただいたとおり、10年ではなく5年程度で実施方針を見直すこと、あるいは10年の実施方針であったとしてもその途中で見直すことと先ほどレビューで示された当初の実施方針の見直しの方針は同じものであると考えています。
 参考といたして、地球観測に関連する、科学技術・イノベーション、宇宙、海洋の分野での基本的な計画の位置付けについても簡単にご説明します。8ページをご覧ください。科学技術・イノベーション基本法に基づき、政府が科学技術・イノベーション創出の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために令和3年3月に策定された「第6期科学技術・イノベーション基本計画」では、今後5年間我々はこの方向に沿って果敢に各政策を推進し、社会全体の再設計を成し遂げることとされており、5年間の計画となっております。
 最後に9ページをご覧ください。宇宙基本法に基づき、政府が宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定をしている「宇宙基本計画」は、今後20年を見据えた10年間の宇宙政策の基本方針とされているところですが、10年を経過しなくても、その途中で改定されることもあり、必ずしも10年間固定した計画ということではありません。
 また、海洋基本法に基づき、政府が海洋に関する施策を総合的且つ計画的な推進を図るために策定をしている「海洋基本計画」は、今後おおむね5年間に集中的に実施すべき課題等を具体的に定めるものであり、おおむね5年間の計画です。
 これらの計画と比較しても、我が国の地球観測の実施方針を5年程度で改定し、あるいは10年の更新であったとしてもその途中で見直しを行うことは特に問題はないとえています。
 それでは、資料4-2に移ります。資料4-2は次期実施方針の論点の資料です。これまで実施方針の論点について審議いただいていましたが、前回の部会においてデータの利用促進に関連しインフラの整備だけではなく実施体制の整備も重要であり、実施体制の整備も加えてほしいとのご意見を頂いたため、2ページの4ポツの3つ目の項目で「インフラの整備を含め」となっていたものを「実施体制を含め」と修正をしました。これまでの審議を通じて、論点について一定程度議論が成熟してきたと考えており、このため、この資料の論点も踏まえ、今後の部会において次期実施方針の策定に向けた骨子案についてご議論いただきたいと考えています。
 それでは、資料の4-3をご覧ください。資料の4-3は、次期実施方針の最初の骨子案についての資料となります。これまでの部会での議論、特に先ほどの資料の論点を踏まえて、まずこの次期実施方針の構成案としての骨子を示しているところです。2ページの資料となりますが、現行の実施方針の構成を参照しつつ、論点に示された構成も踏まえ、実施方針の全体の構成を記載しているところです。
 まず、Ⅰのはじめににおきまして、実施方針の意義や期間等について記載をしたいと考えております。
 また、Ⅱの我が国の地球観測の基本的考え方におきまして、地球観測を取り巻く国内外の現状と課題について記載をするとともに、我が国が地球観測を推進する意義、ユーザーニーズを踏まえた利活用の促進、異分野連携の促進、全てのユーザーへのデータアクセスの確保、官民の連携・役割分担等、部会で議論のあった主な論点を挙げているところです。
 また、Ⅲの地球観測に向けた基盤的取組においても、これまでの部会の議論を踏まえつつ、地球観測インフラの着実な整備や、地球観測人材の育成を含む持続可能な地球観測の推進、データバリューチェーンの実現やデータ共有の仕組みとプラットフォームの在り方、オープンデータと情報管理を含むデータバリューチェーンを通じた地球観測の利活用の促進、最先端のイノベーションに基づく地球観測の利活用の促進、国際協力を通じた我が国の地球観測分野のリーダーシップの発揮、我が国の地球観測システムの推進体制・組織を記載しています。
 最後に、分野別の地球観測では、現行の実施方針における課題解決型の地球観測の項目を踏まえつつ、生物多様性・生態系の保全の項目を追加しています。
 なお、骨子案についてはあくまで現時点のものであり、今後の部会での審議の進展に応じてより具体化していくものと考えています。
 最後に、資料の4-4になります。本日の第5回の部会では、防災・減災における地球観測を中心として審議いただいています。次回の第6回の部会は7月頃に予定しており、生物多様性における地球観測を中心に審議いただくとともに、次期実施方針の骨子案について審議いただきたいと考えております。さらに、2カ月に1回程度審議いただき、来年1月頃に次期実施方針を取りまとめていただくことを予定しております。事務局からの説明は以上です。
 
【村岡部会長】  松原推進官、ありがとうございました。ここから、ただ今事務局からご説明いただきました資料4-1、4-2、4-3、4-4の中で、特に4-2、4-3かと思いますが、そのことについて、まずは4-2では今まで議論いただきましたが考慮がやはり追加が必要なものがないかどうか、また、資料4-3の骨子案は今回初めてということですが、全体像について特にご議論いただきたいと思います。ここから15分ほど時間を取りまして皆様からご意見、ご質問をいただければと思います。まず、中北委員、お願いします。
 
【中北委員】  ありがとうございます。端的に述べさせていただきたいと思います。今までなかなか参加させていただけなかった中で少し具体的なことも入るかもしれませんがお許しください。資料4-3で陸域におけるインフラ整備、こういうのもしっかりと書き込んでいただいているというのは非常に重要なことかというふうに思いました。今回の防災関連も含めまして非常に大事な視点であるというふうに思っています。
 今日は防災科研のご説明のところで申し上げようと思ったのですが、本年度から火山防災に政府は力を入れているということで、地震防災研究課も地震火山防災研究課と名前が変わったということにもありますように、火山灰による防災、今までの火山噴火の起こる起こらないだけではなくて、噴火後の防災というのが非常に大事で、京大防災研でも今までの火山活動研究センターを火山防災研究センターに今改組しかけているところということで、火山灰による大規模影響、火山灰の蓄積だけではなくて航空インフラとかそういうものへの影響も非常に大事ですので、それらの監視、起こったときの監視も含めた観測というのが、もちろん衛星でも見えますし、陸域において例えば今新たにレーダ観測で火山灰の動向というのは非常に地上気象レーダによって見えるように科学的にもなってきていますので、そういうフェーズドアレイレーダとかによる非常にきめ細かな火山噴火の灰とかの観測体制というのも、省庁連携で進むようにここでイニシアティブを取っていただければと思いますので、そういったところもぜひこの中の具体性の中で訴えていただければと思いました。
 それからもう1点だけですが、2頁のところで防災も気候変動も取り上げていただきまして、特に気候変動も新たに今回の部会でご議論いただいたとお伺いしています。ありがとうございます。これに関しても、今環エネ課の方で進めていただいています気候変動予測先端研究プログラムの中で新たに衛星と気候変動のアウトプットとの連携ということを強く今研究で進められておりますので、これはもう成果が出てくると思いますので、そこらも考慮いただいた形で温暖化の監視だけではなくてモデルの検証とか衛星利用も含めて大事になってくるかと思いました。
 最後に、データベースとしてDIASの話がたくさん出ましたが、DIASももうあっぷあっぷとお伺いしております。と同時に多くの民間の方もお使いいただいているということですので、そちらに関するデータベースで上げていただいているような補強というのはやはり両輪として非常に大事なことだと思いますので、引き続きここでも訴えていただければと思いました。以上です。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
 
【松原環境科学技術推進官】  3つご指摘いただいたと思います。まず1つ目の火山ですが、文科省の中でも火山についてカバーしているところであり、火山についての地球観測や防災が非常に重要になってきていると考えておりますので、今後内容を具体化する中で書き込んでいきたいと考えております。
 それから、2つ目のご指摘といたして、気候変動あるいは防災も含めた先端プロの取組も取り上げるべきであるということについて、おっしゃるとおり、分野別の地球観測の気候変動や防災・減災のところではしっかりとフォローしていきたいと思います。一方、TCFDやTNFD、あるいは防災の中でも、予測はとても重要なになってきており、前回の昨年2月に取りまとめられた報告書の中でも、予測データに関して報告書が取りまとめられているため、例えば、2ページの一番上のところに気候変動予測データの創出・高度化ということも書いています。先ほどの分野別の取組も踏まえて、予測についてもしっかりと重要性を訴えていきたいと考えております。
 それから、3つ目のデータベース、特にDIASについてのご指摘をいただきましたが、データベースをしっかりと整備をしていくということは重要であるとともに、様々なデータベースが整備されているため、2ページの上から4行目にデータ共有の仕組みとプラットフォームの在り方というところで記載していますが、DIASをどういうふうに持続可能な形で維持をしていくのかも含めてしっかりと書き込んでいきたいと思います。
 
【中北委員】  既に多くご議論いただいている中で今回申し上げさせていただいて申し訳ありませんでしたが、大事なことですので、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  中北委員、ありがとうございました。次に赤松委員、お願いします。
 
【赤松委員】  国際航業の赤松でございます。論点の方、資料4-2の方で、先ほどコメントいただいた4番の実施体制を書き込んでくださいというのは私が前回申し上げた点だと思います。このように加えていただいたことは大変ありがとうございます。そのときに、実はここに元々インフラですね、データプラットフォームだとかデジタルツインという言葉があったのですが、それが欠けてしまったのですよね。私の言い方が悪かったのかもしれないですが、インフラの整備というのはそれはそれで非常に大事なので、その上で実施体制という言葉を加えていただくのはいかがでしょうという話だったのですが、この大事なキーワードのインフラに関するデータプラットフォームとかデジタルツインというのが、この方針の視点から抜けてしまったのが余りよくないなと思っています。なぜかというと、資料4-3の目次立ての方にはしっかりそれらは出てくるので、やはりこの資料4-2の方にもちゃんと書いておいた方がよいかと思いますので、もう一度そこのところは戻していただけると有り難いなと思います。
 
【松原環境科学技術推進官】  この項目では、インフラの整備と実施体制を両方とも書いていたところなのですが、少し記述が重複してしまうと思えたため、実施体制にインフラの整備も含めて書いていたという意図があります。おっしゃることを踏まえ両方とも書ける方法を考えていきます。
 
【赤松委員】  非常に大事なキーワードですので、ぜひ残しておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  赤松委員、ありがとうございました。次に河野委員、お願いします。
 
【河野委員】  資料4-2の方で、おそらく精神を書かれているのだろうと思いますが、骨子案を拝見すると、アクションパートがないと申しますか、基本的な考え方はどうだ、それから現在やられている取組はこうだ、分野別の地球観測はこうだということが書かれているだけで、一般論的にこういう皆さんから聞き取ったものを網羅してこれらを推進していくべきだと書いても、何をしたらよいのか分からないとなると、このまま従来通りでいいんだという話になってしまうので、例えばここにある骨子案であれば、持続可能な地球観測の推進でこういったようなことをやっていますという紹介ではなく、何をすべきだということを明確に記載するべきだろうと思います。例えば4ポツで国際協力を通じた我が国の地球観測分野のリーダーシップの発揮だとするならば、何をすべきか、地球課題解決への協力というのは何を意味するのか、GEOへの協力はどうするのかというアクションをきちんと記載していかないと、何となくただの現状の報告書になりかねないという危惧を覚えます。以上です。
 
【松原環境科学技術推進官】  これは、まだ現行の骨子案であり、項目を並べただけのものですが、実際にこの骨子案を肉付けをしていく上でアクショナブルな形にしていきたいと思います。課題を並べるだけとか現状認識を並べるだけではなく、できるだけアクションを並べていくという形にしたいと思います。もちろんその全てのものについてアクションを並べることはできないかもしれませんが、今後地球観測を良くしていくため、何をしていくのかということをしっかりと実施方針に記載をしていきたいと考えています。
 
【村岡部会長】  河野委員、ありがとうございました。確かに今後検討していくにあたって実施方針としてレビューにとどまらず、国としてあるいは各主体がそれにアクションにつないでいくという観点は非常に重要だと思いました。次に川辺委員、お願いします。
 
【川辺委員】  ありがとうございます。今拝見している骨子案で、Ⅲの2、データバリューチェーンの実現というところですが、データバリューチェーンのお話は前々から出ていたかと思うのです。観測を継続していく上で、やはりインフラを整備するところから人材育成に至るまで、非常にお金が掛かる。それを国の予算だけで維持していくのは大変で・・というところから始まったかと思います。ただ、データバリューチェーンを構築していくこと自体はとても大事だと思うのですが、これを観測の現場とか、あるいは観測体制に関わっている方たちに直に投げかけても、なかなかそのイメージをつかめないのではないかと思うのです。ですので、この利活用の流れにおいてどういうふうにビジネスが成立していくのかといった「データバリューチェーンのビジネスモデル」を提示していただけるとよいのではないかと思います。バリューチェーンというものの中で、どういう人たち、あるいはどういうビジネスに関わる人たちがいて、その方々がどのような役割を果たしながら、また、どういう付加価値を付けながら、次につなげていくのか。そしてそれらが、観測体制の強化にどのようにフィードバックされていくのか、といたイメージ、あるいはコラムでもよいですので、そういう具体的な情報を付け加えていただけるとよいかと思いました。以上です。
 
【松原環境科学技術推進官】  データバリューチェーンはこの議論が始まる前に報告書でも提示をされている概念であり、比較的新しい概念ではありますが、一方で観測のサイドでも、あるいは活用のサイドでも様々な状況が進展していく中で、さらに持続的に地球観測を進めていくために重要な概念であると思っておりますので、その概念をコラムや本文の基本的な考え方、あるいはこのⅢ.2の中でしっかり書き込んで、この報告書を読んでもデータバリューチェーンという概念が突然出てきて、その実現が語られているけれどもその意義がよく分からないというようなことにはならないようにしたいと思います。
 
【赤松委員】  ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  川辺委員、ありがとうございました。次に岩崎委員、お願いします。
 
【岩崎委員】  岩崎です。骨子案に関して現段階での一般的なコメントを2点申し上げたいと思います。Ⅲ.1.(1)地球観測システムの着実な整備で、宇宙インフラ、海洋インフラ、陸域インフラと個々の記述があるわけですが、これらが全体のシステムとして機能するということが重要だと、今日の国交省のご発表を聞いて改めて思いました。それぞれの長短というのがあると思いますので、その長短をうまく組み合わせて短所を補い長所を最大限発揮するというような、全体的に最適な地球観測インフラを作っていくというところが重要だと思いましたので、最終案の作成に向けて全体最適というようなことについても議論を深められればと思いました。以上が1点目です。
 2点目は、骨子案中のデータバリューチェーンの構築に関係することです。これまで一連の議論では地球観測データの利活用をいかに促進するかという点が重視されてきたと思います。地球観測データがいかにユーザーにとって有益な情報として利活用されるようになるかというところまでを、今後の部会でも深掘りをしていくことが重要と思いました。今日の山口大学の長井先生に紹介いただいた事例では、JAXAと山口大学が組んで、いかに県の防災関係者に使い勝手の良い情報に加工し届けていくのかについてご説明がありました。さらには、マニュアルを作成し、災害発生時に防災関係者が実践できるようになるための訓練まで行っているとの一連の取り組みは大変に参考になりました。以上になります。
 
 
【松原環境科学技術推進官】  Ⅲ.1.(1)のところで宇宙、海洋、陸域とそれぞれ示してしまっているため、ばらばらな印象を与えてしまったと思いますが、本体に実際書き込むときにはこれがひとまとまりとして書かれることになると考えています。その中で、それぞれに長所短所があると思いますので、それを補う形で最適化を目指すよう書き込みたいと思います。それがどのくらいアクショナブルなものになるかというところはあるのですが、全体最適を目指すというキーワードは入れていきたいと思います。
 また、データバリューチェーンと関連をして、データがいかにユーザーにとって使いやすいものになるかというご指摘というのはとても重要だと思っており、バリューチェーンの意義を提示していくことも含めて書き込んでいきたいと思います。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。では、あとお二方、赤松委員と原田部会長代理の順でお願いします。
 
【赤松委員】  先ほど言い忘れた点があって、この骨子案の中のⅡ.2.地球観測を取り巻く現状と課題のところでおそらく書かれることになるかと思うのですが、この10年間でできたこと、できていないことをしっかりと書いていこうというのが最初の検討のところで有ったかと思います。なので、この地球観測を取り巻く課題のところには、やはり具体的に何ができているのか、できていないのかということは明確にした上で、この基本的な考え方というのにつながるように整理をしていく必要があるかと思いますので、その点は落ちないようにお願いしたいなと思います。私からは以上です。
 
【松原環境科学技術推進官】  できる限りということになりますが、何ができたのか、できないのかというところについて検討していきたいというふうに考えております。
 
【赤松委員】  ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  それでは、原田部会長代理、お願いします。
 
【原田部会長代理】  ありがとうございます。先ほど岩崎委員からもご指摘がありましたように、やはりユーザーフレンドリーにこの地球観測データを一般社会がよりアクセスしやすくしていく工夫というのは大変重要と思って拝聴しておりました。例えば、海洋由来の災害の甚大化や、海面水位上昇等、長期的な気候変動対応というのが地方自治体の地域計画あるいは都市計画にも重要になってくると思います。
 この観点で考えますと、意識する国の政策として今日は2つ、宇宙基本計画、それから海洋基本計画を紹介していただきましたが、この2つでいいのかどうか。例えば都市計画等を含んでいる国土利用計画。災害対応の重要性が高い政策だと思いますので、地球観測データの重要性を他の政策にも反映してもらえると良いのではないか。そうすることで地球観測データを取る意義というものがさらに高まると思います。ぜひとも他の政策との密接な関連性というところの視点での記載も充実させていただけるとよろしいかと思いました。以上です。
 
【松原環境科学技術推進官】  地球観測推進部会は、文部科学省だけでなく様々な省庁が関係をしているため、他省庁とも相談しながら、国の様々な方針・計画と整合性を合わせて、書くべきものがあれば、そういうものも記載しながら作成をしていきたいと思います。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。おそらく先ほどからデータバリューチェーンあるいはユーザーとの連携、あるいはユーザーフレンドリーな形でデータや知見を提供するというご議論もありましたが、おそらく今後、以前の会議でも取り上げましたGEOの次期戦略である地球インテリジェンスの議論ともつながってくるかとは思います。我が国でいえば地球観測に基づいた総合知の創出ということになるかもしれませんが、そういった観点も入れながら、また今後皆様との議論を通じてこの実施方針を検討していきたいと考えます。また事務局と相談しながら進めて、次の部会の会議でまた皆様にご意見を頂けるように進めてまいります。ご議論いただきましてどうもありがとうございました。以上で議題4を閉じさせていただきます
 議題5ですが、その他ということにしております。この機会に委員の皆様から何かご意見、ご質問があればお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
もしまたお気付きのことがありましたら、事務局にメール等でご連絡いただければと存じます。よろしくお願いいたします。本日予定されている議題は以上となります。事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【中川地球観測推進専門官】  本日この部会の公開部分の議事録につきましては、後日事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。各委員の先生方にご確認いただいた後、文部科学省のホームページで公表いたします。次回第6回の会合については7月ごろの開催を予定しておりますので、日程調整等のご連絡をさせていただきます。事務局からの連絡事項は以上となります。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。本日は長い時間となりましたが、委員の皆様、そして話題提供、ヒアリングにご協力いただいた皆様に御礼申し上げます。以上をもちまして第10期 地球観測推進部会の第5回会合を閉会いたします。本日はありがとうございました。
 

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