量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第54回) 議事録

1.日時

令和6年6月4日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省内15階局1会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. 量子ビーム関連政策の動向
  2. 量子ビーム施設間の連携について(2)
  3. SPring-8/SACLAの中間評価について

4.出席者

委員

小杉主査、高原主査代理、石坂委員、川北委員、岸本委員、阪部委員、高橋正光委員、高橋瑞稀委員、唯委員、古川委員、森委員、矢橋委員、山重委員

文部科学省

稲田研究環境課課長

オブザーバー

総合科学研究機構柴山センター長、高輝度光科学研究センター山口理事、坂田理事

5.議事録

【稲田課長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第54回の量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。
 本日はお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。本小委員会の事務局を担当させていただいております研究環境課の稲田と申します。
 本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催してございます。委員は、大竹委員以外の13名が御出席です。内訳としては、対面による御参加8名及びオンラインでの御参加5名です。
 なお、議題の2、量子ビーム施設間の連携に関しまして、総合科学研究機構より柴山センター長、高輝度光科学研究センターより山口理事にお越しいただいております。
 また、議題3「SPring-8/SACLAの中間評価」に関連しまして、JASRIから坂田理事にお越しいただいているところであります。
 続きまして、オンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。
 1点目でございますが、通信を安定させるため、御発言される方以外に関しては、可能な限りマイクをミュートの状況にしておいてください。2点目でございますが、御発言される際は、ミュートを解除することを忘れないようにお願いします。
 3点目でございますが、議事録作成のために速記者を入れております。お手数ですが、発言の前には御発言者のお名前をいただいた後に発言いただけるようお願いいたします。
 4点目でございますが、会議中、不具合などのトラブルが生じた場合に関しましては、事前にお知らせしております事務局の電話番号までお電話を御一報いただけるとありがたいと思います。
 5点目、本日の会議は会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるユーチューブでの傍聴を認めておりますので、御了承いただけるとありがたいと思います。
 それでは、次に、配付資料に関して確認させていただきます。現在、Zoom上で画面共有してございますが、資料に関しては資料1から資料3-4まで、及び参考資料に関しては1から3を準備してございます。会場にいらっしゃる皆様方の中で乱丁、落丁等ございましたら御指摘ください。また、ネット上で何か不具合がある方についても、先ほど申し上げた電話番号まで御連絡いただけるとありがたいと思います。
 何か御不明な点ございましたら、事務局までお電話いただけるとありがたいと思います。
 1点、本日の参考資料において委員名簿を添付させていただいておりますが、委員の御就任をお知らせします。本日より国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の川北副ディビジョン長に御就任をいただいております。
【川北委員】  原子力機構のJ-PARCセンターの川北と申します。私は大学卒業後、大学のほうにもしばらくいまして、そのときにはSPring-8等も使わせていただいたりとかしておりました。2010年に原子力機構に移りまして、J-PARCセンターに参加することになりました。現在、副ディビジョン長を努めております。よろしくお願いいたします。
【稲田課長】  それでは、議事について、小杉主査、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  それでは、議題に入りたいと思います。本日は3件ありますが、最初は、「量子ビーム関連政策の動向」についてとなっております。政策文書の検討状況、最近の状況など報告いただくとともに、関連する要望書等を事務局より説明いただきます。
 それでは、稲田課長、よろしくお願いします。
【稲田課長】  資料1を御覧ください。
 大きく分けて3点の話題提供がございます。
 1点目がNanoTerasuの運用開始です。NanoTerasuに関しましては、4月1日運用開始以降、9日にコアリション、パートナー側の利用の開始が行われ、また、5月18日には、運用開始の式典が開かれるという状況になってございます。なお、非常に順調に立ち上がってございまして、成果を利用した初めての学術論文ができるであるとか、成果について幾つかプレス発表がなされるなど、現在、順調に立ち上がりを見せているところ、これが1点目でございます。
 2点目でございますが、SPring-8-Ⅱに関する産業界及びユーザーからのニーズの高まりを反映した要望活動が幾らかされているというところでございます。主要な要望書に関しましては、参考資料2と3として今回お配りしておりますので、このような要望があるということを今後の議論の中では参考にしながら御議論いただけるとありがたいと思います。
 3点目でございますが、国際的な動きであります。5月20日、22日に、NanoTerasu及びSPring-8に対して、各々MAX Ⅳとの間で協力協定が締結されるなど、国際連携が進んでいる状況であるというところでございます。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、何か質問、議論などございますでしょうか。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いします。オンラインの方も。
 特にありませんか。SPring-8、NanoTerasuの設置者側で把握されているようなことは特にございませんか。
 それでは、次の2つの議題のほうは時間を取りますので、議題2に移らせていただきます。2番目の議題は、「量子ビーム施設間の連携について」の2回目ということになっています。前回、有識者による発表及び委員の皆様に議論いただきましたけれど、「量子ビーム施設間の連携」について、SPring-8及びNanoTerasuの登録機関であるJASRIと、それから、J-PARCの登録機関であるCROSSから、資料2に基づいて説明をお願いします。
 説明者はCROSSの柴山センター長がまとめて説明されると伺っておりますので、よろしくお願いいたします。
【柴山センター長】  CROSS、総合科学研究機構の柴山でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。JASRI、CROSSを代表いたしまして、15分ほど御説明させていただきます。
 まず1ページ目ですけど、そもそも量子ビームゲートウエイというものに関しましては、私たち、ここ10年以上、こういうプラットフォームの構築ということに対して、非常に強い要望が、ユーザーからも施設からも上がっておりました。
 また、先月、先々月ですか、4月19日の量子ビーム小委員会におきまして、この話題についていろいろ御提言、御意見いただきまして、ありがとうございました。小安理事長、岸本委員、雨宮センター長と、ほかの皆様から非常に貴重な御意見をいただきました。それらを参考にさせていただきまして、本日の提案とさせていただくわけであります。
 それでは、内容に移らせていただきます。2ページを見ていただきたいと思います。ここでは1番から8番まであります。1番のところにおきましては、量子ビームゲートウエイのビジョンとして、そもそもこのゲートウエイとはどんなものかということをまず御説明したいと思います。2番のところでは、放射光・中性子の量子ビームゲートウエイとして、このビジョンをブレークダウンした形で、それぞれの項目について御説明いたします。3番から8番におきましては、そのパーツ一つ一つにつきまして、具体的に御説明、御提案させていただこうと思っています。例えば3番のところですと、協働支援型コンシェルジュの役割と人物像、4番では、共通課題申請システムの構築等々でございます。
 補足資料の1から3におきましては、時間の関係上、説明は割愛させていただきますが、参考資料としていただければと思います。
 それでは、内容のほうに移ります。1番のところ、ページ3です。「量子ビームゲートウエイ」のビジョン。これはNanoTerasu、SPring-8、そして、J-PARC MLF等々、多彩な量子ビームの世界最先端の施設を持っているわけですが、そこをさらに有効に使っていくということを想定して、検討したものであります。
 多彩な量子ビーム利用を通して、我が国の物質・材料研究基盤を構築することを目的としております。国プロ等々でもありますように、グリーンエネルギー、エネルギー材料、新物質開発、ナノサイエンス、創薬、文理融合、様々な分野に対して貢献するべく、この提案をさせていただいております。
 まず利用者として想定しているものは、大学、企業、国研等、一般のユーザーになります。その中では、まだ利用したことがない方も多くおられますので、そういう人たちをまず対象としまして、課題、悩みを相談するところからはじまります。もちろんヘビーユーザーに関しましても、コンシェルジュを通して、より一層の利用をいただきたいと考えております。
 ここではまず、これから利用しようとする方を想定した説明をまずさせていただきたいと思います。ここでは協働支援型コンシェルジュによる一元的マネジメントとしまして、課題解決に最適な施設・装置に案内することを目的としております。下の長丸で書いているところですが、取りあえずは、SPring-8、NanoTerasu、J-PARC MLFという特定先端大型研究施設から始めまして、それを順次広げていくことを想定しております。その他の放射光施設、中性子施設、ミュオン。それから、先日、小安理事長からも御説明、御提案がありました先端研究設備プラットフォームや、さらには、コアファシリティ構築支援プログラム、これは文科省中心に進めておられるプロジェクトでありますが、そちらのほうも視野に入れていきたいと思っています。
 このような協働支援型コンシェルジュによる一元的マネジメントによって、ユーザーを誘導し、そして、実験に持っていきます。そして、協働型支援を通じて、実験終了後、総合的解析をした後、それが学界へとフィードバック、あるいは産業界へとフィードバックすることを考えております。
 ここでのゲートウエイ構想ですが、下の赤いところに囲ってある部分です。複数量子ビーム施設のタイムリーな利用とDXを見据えた相補的利用研究を活性化すること。最適な量子ビーム利用研究を牽引するとともに裾野を拡大すること。また、将来の量子ビーム科学を支える優れた産官学人材を育成することであります。
 次のページにしていただけますか。このビジョンの下で、ここでは放射光・中性子の量子ビームゲートウエイということを考えております。標語としては、「いつでも、だれでも 量子ビームを」ということで、「いつでも」、頻繁な課題募集をすること、それから、「だれでも」というのは初心者からヘビーユーザーまでということを想定しております。現在の課題としましては、我が国には世界有数の先端量子ビーム施設が複数ありますが、種々の量子ビームも駆使して顕著な成果を上げている利用者は非常に限られています。潜在的ユーザーにとってはどの施設のどの装置を利用することが最適か分からないというのが現状かと思います。また、課題申請システムが非常に複雑です。一方、企業のほうは、課題解決のため、大学や学術機関とつながる手段・人材を必要としています。
 こういうような現状を鑑みまして、以下のゲートウエイを考えております。
 まず、利用者が悩み、課題を相談する。その受皿として、協働支援型コンシェルジュがあるわけです。この協働支援型コンシェルジュは、右側のコンサルティング、コーディネーション、それから、コワーキングと、この3段階になっております。例えばコンサルティングでは、課題/問題の相談、課題申請書作成の支援、連携利用の支援等々があります。また、コーディネーションにおきましては、研究者の紹介、専門機関への橋渡し、最適な施設・装置への案内、連携利用支援等々があります。ここにおいては、外部の人たち、すなわち大学、研究機関、公設試、あるいは異分野研究者、さらには、大学の研究室の紹介リストなどを持ちまして、紹介するということを想定しております。
 左側に行きまして、コワーキングにおきましては、実験/解析の協働、データの分析支援がそれに当たります。
 また、4番としましては、共通課題申請システムを構築しまして、一元的な対応を考えております。これに関しては量子ビーム施設との連携が不可欠であります。
 もう一つのゲートウエイのパートとしましては、広報機能の強化、情報提供・成果分析、これらを見える化という形で実現していきます。具体的には、ウェブやSNSを活用した露出、AIを使った情報収集と分析があります。
 そして、データを活用するということで、実例のキュレーション、データリポジトリの整備を考えております。さらには、ユーザーマーケティング、いわゆるビジネスの世界でよく使われていますユーザーマーケティングという考え方をここに応用します。潜在ユーザーの利用機会の提供、顕在ユーザーニーズに最適化したアプローチ等々を想定しております。このような活動を特定先端大型研究施設でスタートし、順次拡大していくということを想定しております。
 それでは、3番以降、説明させていただきます。次のページ、お願いします。協働支援型コンシェルジュの役割と人物像、こういった提案をする場合、常に問題となる、考えるべき、必要となるのは人物像等々があるかと思います。まず左のほうでは、協働支援型コンシェルジュの3つの役割として、コンサルティング、コーディネーション、コワーキングがあります。これは先ほども申しましたが、課題の相談、実験計画策定、課題申請書の作成支援等から始まりまして、研究者の紹介等々。それから、重要なポイントとして、実験及び分析の協働、データ解析支援、価値あるデータのフィードバックというところがあります。特にこのコワーキングというのは今回の提案の重要なポイントであります。
 右側に行きまして、協働支援型コンシェルジュの人物像というものを我々の中で考えてみました。バスの絵がありますが、左側としては、利用ニーズ、ここでは国プロをはじめ、様々なユーザー、あるいは産業界が求めている新しいテクノロジーといいますか、そういう課題に対して、一方では、リソースを持っているところとして施設が右側にあります。量子ビーム施設や、連携先としてSPring-8、J-PARC、NanoTerasuにとどまらず、大学、分析会社、公設試を想定しております。この間を取り持つのがコンシェルジュであります。
 現行の登録機関による支援というものは、計測の専門家による支援でありまして、どちらかというと受け身的な支援にとどまっているかと思います。そこでゲートウエイで新しく加わる支援としましては、多角的な視点に基づく課題解決、最適な施設や装置への橋渡し、利用者と協働した支援であります。
 ここに2つのキーワードがありまして、マルチプローブを対象としているし、それから、装置オリエンテッドではなく、ニーズオリエンテッドなコンシェルジュ活動をするということでございます。
 次のページをお願いします。4番の共通課題申請システムの構築でございます。左下をまず見ていただきますが、現行の課題申請システムは、ユーザーが自ら課題申請書を作成し、それぞれの機関に申請します。具体的に言いますと、SPring-8、あるいはMLFでございまして、MLFは、基本的には英語、産業界の利用に関しては日本語も可能となっておりますが、それぞれ入り口が別々であります。そして、上位の分科会で審議され、そして、最終的に選定委員会で承認されて実験に移ると、このような形になっております。これを統一していこうというのがこの目的であります。
 そして、共通課題申請システムをつくるということ、それから、赤字で書いてありますが、「課題は随時募集する」ということで、頻繁にユーザーニーズに対応していくことを考えております。赤で囲ってあるところは現在検討中でありますので、また次の機会に譲らせていただきます。
 いずれにしてもこのような形で、ユーザーが協働支援型コンシェルジュと相談することで、共通課題申請システム並びに随時募集を実現していくということを考えています。
 次、5番のほうに移らせてください。次にデータ活用ですが、量子ビーム情報やデータのアクセス手段の充実であります。現在のところ、残念ながら、まだ十分なデータ蓄積あるいは公開等に至っておりません。それを考えまして、左側に潜在ユーザー、ライトユーザーに対して、右側としては既存ユーザーに対して御説明したいと思います。
 まず左側ですが、多彩な実例のキュレーションサイトによる積極的なアプローチを考えております。既にJASRIのほうでは、SPring-8の産業利用成果というものが非常に分かりやすい形でウェブサイトに紹介されております。これをさらに充実する形で、論文、報告記事、プレスリリース等の多様な実例を掲示していくことを考えております。
 一方で、既存ユーザー、ヘビーユーザーに対しましては、測定データの集約管理体制の構築による利便性の向上を目指していきたいと思っております。さらにそこでは、現在、オープンデータ時代に不可欠な測定データ証跡の提供でございます。例えば論文を書いたときにそれがどこで取って、その論文、そのデータに信用性があるかどうかというのを担保するのが大型施設の責務であります。これに鑑みまして、この分野を充実していくことを考えております。さらには、NII Research Data Cloud等々の量子ビームデータの連携も視野に入れております。このような形でDXを推進していくことを考えているわけです。
 次のスライドをお願いします。6番です。ユーザーマーケティング。ユーザーニーズの的確な把握と解決策の提案でございます。ここではカスタマージャーニーマップによる潜在ユーザーの掘り起こしを想定しております。ペルソナとして、これまで量子ビーム施設を利用したことがない研究者を想定しまして、ステージが、認知、検討、相談、利用というような4セットの形で提供していくと。ユーザーマーケティングあるいは相談していくことを考えております。
 具体的には、まず認知におきましては、利用者の行動として、漠然とした課題を持ち、解決法を探している段階であると。それに対して、ゲートウエイとしてのタッチポイントとしては、ウェブサイト、SNS、セミナー等が考えられます。
 次に、検討段階に入ったときに、利用者の行動としては解決事例を知るということになりますが、それに対するタッチポイントとしては、国内外の事例集があります。このような形で、相談、利用と進めていくことを想定しております。
 次に、CRM、Customer Relationship Managementを応用した、それを量子ビームに応用した量子ビームCRMを考えております。これは何かといいますと、ユーザーとのよい関係を維持するためのツールでありまして、例えばコンビニ等々がユーザーマーケティングして、それをビジネスに反映すると、そのようなイメージをこの量子ビームに想定しております。具体的にはユーザーデータを収集する、すなわちユーザー情報、ニーズ情報、ウェブログのデータ等々を収集しまして、それを分析し、情報確認・共有という形でフィードバックをかける。さらには、それを生かしたウェブサイト、SNS、メール等々でニーズに最適化したアプローチを提案していくということを考えております。
 7番目、次のページでございます。今度は専門人材の育成、このような案が出てきますと、常に問われるのが、そういう人材がいるかどうか、さらには、人材育成をどうするかという観点かと思います。それについては、私たちは、コンシェルジュ、各ビームラインを担当する計測の専門家、いわゆる施設人材と利用者のみんなが成長する実践型人材育成を考えております。
 専門・技術の異なるシニア、中堅、若手から成る協働支援コンシェルジュチームが利用者に最適なマルチプローブ利用を提案し、施設人材と協働することによって、実践的に人材育成を行うことを考えております。
 左下の絵がありますが、コンシェルジュとして、こういうようなチーム、経験度の違う、熟練度の違う、知識等も違う人たちがチームを組んで、利用者にコンシェルジュ活動を行う。一方では、計測の専門家である施設の方々とタッグを組んで行うということであります。これにおきましても、現行では、計測の専門家が相談を受けたことに対して支援するという状況から一歩進んで、計測の専門家プラスコンシェルジュが働いていくということを考えています。そして、登録機関あるいは施設において新しいキャリアパスの形成をここで考えるということを考えております。これによってマルチプローブ測定のレシピ化、そのフィードバックにより専門人材のさらなるスキルアップ、利用者、施設人材から専門人材プールリストを作成していると。このような活動を通じて、コーディネーションや人材発掘につなげるということを考えております。
 次のページをお願いします。8番です。量子ビームゲートウエイの実施体制と連携でございます。JASRIとCROSSで量子ビームゲートウエイの運営に関する協定、協力協定を結びまして、その下にゲートウエイが活動します。具体的には、プロジェクトディレクター、サブディレクターを中心として、下に四角で囲ってあります、少なくとも6つの組織が活動するということでございます。
 量子ビームゲートウエイの連携の考え方として、背景にあるのは、これまで連携が進んでいなかった理由を我々なりに分析しまして、これらの以下の点を挙げております。例えば、実施主体が不明瞭であった。そして、登録施設利用促進機関が行う場合の例を見ておりますと、予算費目等に制約があってなかなか進まなかった。あるいは各施設・機関のミッションを超えて、本事業に協力する根拠・理由・指示が必要ということで、なかなか協働的な運営ができなかった。それから、各施設のシステムの共通化が非常に難しかった等々があります。これらの問題をこのゲートウエイにおいて解決することを考えております。
 そして、2つ目の矢印ですが、特定先端大型研究施設を先行的に開始することから、このプロジェクトを進めていきたいと考えています。その背景として、我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方を令和3年2月に提案されておりますが、これを踏まえて、それを実践していくというものを今回提案させていただいているわけです。特定先端大型研究施設を先行的に対象として開始し、特定先端大型研究施設以外の施設に展開していくことを考えています。例えば、中性子の分野では、J-JOINが既に令和3年から始まっておりまして、この施設を実践的に、試行的にやっているところでございます。そこの対象としては、放射光、中性子、ミュオンがございます。そしてさらに、その他の放射光、中性子施設へと拡大していくことを考えております。
 私からの説明は以上でございますが、JASRIのほうから補足説明がございましたら。お時間いただいてよろしいですか。
【小杉主査】  はい。
【柴山センター長】  ということで、では、お願いいたします。
【山口理事】  JASRI常務理事の山口でございます。よろしくお願いします。JASRIとしましては、CROSSさんと連携しまして、ぜひよりよい施設運営を進めてまいりたいと思います。考え方としましては、施設をよく利用されるヘビーユーザーの方はもちろんのこと、一般の利用者に対しても、さらに、あまり利用されない潜在ユーザーの方にもそれぞれの要望に沿った対応が重要だと考えています。特に潜在ユーザーが利用者になっていくというような、裾野を広げることが大事だと考えているんですけども、いまだにどこへ相談してよいか分からないという声もよく聞きます。今回の提案のコンシェルジュがその答えの一つになるのではないかと考えています。
 あと一つ、資料について補足説明させていただきますと、P4のAI活用のところですけれども、画面は戻って、4ページを。AI活用ですけども、近年、IT技術が大幅に進展しておりまして、登録機関としましても、蓄積している課題、利用課題情報を学習データとして活用するということを行いまして、コンシェルジュ機能のAI化とか、課題申請、審査のDX化という推進を進めたいと考えています。昨今、人口減少による人材確保が非常に困難になっているということがございますので、必須の取組でないかと考えております。よろしく御審議お願いいたします。
【小杉主査】  ありがとうございました。では、今の御説明に対していろいろあるかと思いますので、よろしくお願いします。
 岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  岸本です。御説明いただきまして、ありがとうございます。前回、私、プレゼンさせていただきました内容と同じ方向性で、具体的になっているので、非常にすばらしいなと思って聞かせていただきました。特にユーザーの対象がヘビーユーザー、ライトユーザー、そして、新規ユーザーの掘り起こしというところに焦点を当てた全体的な取組として、非常にこの辺り、ターゲットも広くていいなと思って聞かせていただきました。その中で一つ重要なところとしてCRMの話があったと思うんですけども、8ページですか。多分これまでは、ユーザーに対して施設の方々がこういう情報があればいいだろうという形で発信されていたものが、ユーザー側がどんな情報が欲しいのかというところを、CRMの仕組みを使って発信していかれるということだと思っています。これは、私が前から言っていますように、いかに気軽に使える施設になるのかという点においてとても重要なところであり、一つの入り口になっていけば、非常にいいなと思っています。
 一方、そういった情報をもとに、実際に、特に新規ユーザーですけど、ちょっと使ってみて、感触をつかんでみたいということがたくさんあるんじゃないかなと思っているんですが、そういったところの施策は何かお考えとかありますか。
【柴山センター長】  いろいろなパターンがあるかと思います。一つの例としては、特に茨城県のビームラインにおきまして、お試しもありますし、それから、積極的に施設のメンバーや、担当している中性子産業利用推進センター―(登録機関ではない)のメンバーが学会等に、あるいは研究会にお邪魔して紹介すると。そして、お試し実験まで持っていくということをやっております。一方で、MLF、中性子のことを私から説明しますと、MLFに関しましては、マシンタイムは結構厳しい状況にありますが、ニューユーザープロモーションとか、お試しの形で、いつでもそれは対応するような形になっております。特にニューユーザープロモーションというプログラムに関しましては、全く初心者を対象とした形で、相談から始まりまして、実際に使っていただくと。それでうまくいけば、実際に申請していただくというような形がもう既に行われていまして、それを踏まえた形でこういう提案に結びついているかと思います。
 JASRIさんからどうぞ。
【山口理事】  お試し測定、御存じかもしれませんけれども、従来から産業利用準備課題というものを設けていたんですけど、それを名称を変えまして、成果専有時期指定(時間単位利用)という、名前を変えて、お試し測定がしやすいようにしているということと、あと、それを従来は産業利用の3つのビームラインで主に使われていたものを広くほかのビームラインに広げていくということをやっていきますので、より使いやすいようになっているかと思っております。
【小杉主査】  ありがとうございます。やはりこういう仕組みを通して、トライアルユースなりができて、有効性が確認できるというのはユーザーにとって非常に有効な方法だと思いますし、恐らくこれまでどこに相談していいのかというのが、いろいろと分散していたものが一つにまとまって相談できるというのはやはり非常に壁が下がると思うので、その辺り、非常に期待しています。ぜひ実現に向けて御検討いただければと思いますので、よろしくお願いします。
【柴山センター長】  ありがとうございます。
【小杉主査】  それでは、オンラインから高原委員、お願いします。
【高原主査代理】  今日は学会がありまして、高分子学会のために前入りしておりまして、参加できず、大変失礼いたします。
 今、柴山先生からもお話、ちょっと触れられたんですが、4ページ目に戻していただけますでしょうか。4ページ目と5ページ目のところですけれども、学会をうまく利用するということをやられてはどうかなと思います。日本の場合は材料別にいろいろな学会がありまして、そういったところではかなりいろいろな量子ビームも活用されている方がたくさんいらっしゃいますので、そういった組織、あるいはSPRUCのような研究会を利用して、コーディネートしていただく方の人材発掘をうまくやっていければ、そういう形での学会活用というのもあるのではないかと思いますので、その辺りもぜひ検討されてはいかがかと思います。
 以上です。
【小杉主査】  何かコメントございますか。
【柴山センター長】  どうも御指摘ありがとうございます。既に頭の中には入っていたんですけど、今、御指摘の点は、恐らく4ページの右の赤の四角のところに「学会」という文字が入っておりませんので、これは追加すべきだと改めて思いました。実際問題、例えば中性子科学会におきましては既にこの案について説明させていただきまして、御賛同いただいておりますし、放射光等とも恐らく同じようなペースで進んでいるかと思います。ただ、こういうところに明示しないと、やっていないことになってしまいますので、ありがとうございました。大変重要な点だと思います。
【高原主査代理】  よろしくお願いします。
【小杉主査】  ほか、ございますか。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  どうもありがとうございました。拝聴しまして、全体の構想、趣旨はすばらしく、全体としては大いに賛同いたしますが、これの成否は、まさに9ページのコンシェルジュだと私は思います。コンシェルジュという言葉をいろいろなところで聞きますが、ほかの分野でこういった、コンシェルジュがうまく機能しているという参考事例はあるでしょうか。「コンシェルジュ」という言葉だけ書きますとスマートに収まっているのですが、これは兼任なのか専任なのか、この立場の人のやりがいや給与と待遇はどうか。そのようなことも考えて、そういう人材を早急に育成できるのでしょうか。全体の成否はコンシェルジュ人材育成の具体的な戦略が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【柴山センター長】  全く御指摘のとおりだと思います。まずコンシェルジュのことに関しましては、どちらかというと、ボランティアベースといいますか、登録機関のそれぞれの個人に任された形で、かなり積極的な支援活動はしております。ただ、あくまでもそれは本務に結びつけるため、あるいは本務とは別のところでやっているところも多くて、限界があるわけですね。ですから、今回、ここで提案させていただきますのは、あくまでも専務としてこういう機能を独立、分離させると。もちろんそこの中では、現行の支援者との協働等々が当然含まれるわけですが、そういう意味では、今までのボランティアベースをもう一歩進めて、充実させて、強力に行うということを考えております。
【阪部委員】  そうですね。やはりそういう方向へ向けた具体的な戦略を立案していくことが重要かと思っています。
【柴山センター長】  ありがとうございます。
【阪部委員】  中でも、特に日本の少子化の現状を勘案すると、過渡的には定年退職したシニアの人材をもっと活用するのが有効かと思います。今、大学でも定年は大体65歳になりましたが、日本の現在の生産性を維持しようと思ったら、74、75歳まで働かないといけないらしいですから、この分野でももっとシニア人材を活用して、組織運営を進めながら、若い人を教育するという戦略を立てられたらいかがでしょうか。
【柴山センター長】  ありがとうございます。全くそのとおりだと思っておりまして、特にシニアの方は、熟練、中堅、若手の、その熟練のところに当てはめて、豊富な人材がおられますので、そういう人たちをぜひ活用していければと思っているところであります。
【阪部委員】  どうもありがとうございました。以上です。
【小杉主査】  では、オンラインから唯委員、お願いします。
【唯委員】  名大の唯でございます。2つあって、1つ目が今の御質問と関連するんですけれども、コンシェルジュで、特に若い方にこういういろいろなところをつないでいただくことを育てていく上で、やはり評価のシステムということがここに反映されてくるということが非常に大事かなと思いました。例えば研究を専門の方がボランティアでやるということではなくて、こういったところの成果というのが彼らの、若い世代にとっての評価の指標になるような仕組みというのは何か考えておられますか。
【柴山センター長】  これについては、私の個人的な意見も入ってしまうかもしれませんが、特に若手は当然、キャリアップというのは重要でございます。ですから、フルタイムでサポートということではなく、共同研究という形を通じて自分の研究としてやっていただきたい。そして、さらには別の時間のところで御自身の研究をやっていただくと、そういう形で各施設あるいは登録機関、あるいは学会等で評価していただくようなことを想定しております。ですから、例えばポスドク、あるいは大学研究室だとクロスアポイントメント等々も含めた形で、特に若手にフォーカスして、このコンシェルジュに加わっていただくということを考えております。
【唯委員】  分かりました。あともう1点ですけれども、量子ビームという、実験室レベルとは違う、非常に特殊な実験のところで、プラットフォームということで、裾野を広げるという意味では非常にいいかなと拝見していたんですけれども、同時に、先端部分を引っ張る部分の枠組みというのは、これとはまた切り離すような形になるのか。それともここの中に大学のアカデミアが、ある意味、中核になって、いろいろな産業界と一緒にやっていくようなこと、システムというのも組み込まれるんでしょうか。
【柴山センター長】  もちろん後者のことを考えておりまして、これは大学の研究室等々との協働をなくしてできないものでありますし、若手あるいは人材育成というのは、当然大学において主になされていますので、連携というのは非常に重要かと思います。やはり町工場的な施設の段階ですと、大学の先生が大きく施設建設等々にコミットした時代はありますが、これだけ施設が大きくなりますと、施設が独立して動いてしまう。そうすると、大学と施設のギャップが少しずつできてきてしまっているのは、ひょっとすると現状かもしれません。そういうことも考えると、なおさら、より一層、大学あるいは学会等とのコミュニケーションあるいは連携が必要だと考えております。その一助になるかと思っているところであります。
【唯委員】  大学の先生からも計測のサポートという位置づけだけではなくて、やはりいろいろな社会課題を含めたチャンネルをここから持てるというような形で組まれると非常にアカデミアのほうにもメリットが大きいかなと思いました。
 以上です。
【柴山センター長】  大変貴重な御意見ありがとうございます。参考にさせていただきます。
【小杉主査】  いいですか。高橋委員。
【高橋瑞稀委員】  高橋です。これまでの議論をよく反映していただいた提案で非常にすばらしいと思いました。1点だけ。産業利用の企業の側としてコメントさせていただきたいんですけども、利便性を高めるといった視点は非常に強く感じたんですけども、それに対して、企業として気にされることがセキュリティー、秘密保持といった点がありまして、それは産業によって、会社によって、状況によって本当にばらばらだと思うんですよね。どれぐらいセキュリティーを求めるかというバランス、そのタイミングや内容によって、会社、産業、業界ごとによって非常に多様なレベルでのセキュリティー意識がありまして、それに対して、利便性を求めれば求めるほどセキュリティーが足りないように感じてしまう企業側が出てくることを恐れていまして、なので、相談のときに例えばCDAを結ぶことが容易にできるですとか、1人のコンシェルジュの方がいろいろな相談を受けると、そこで情報が混ざってしまわないかと心配になられるとか、そういったことをケアできるような仕組みがどこかにあると、安心して最初の取っかかりができるかなと思いました。
【柴山センター長】  御指摘ありがとうございます。ここには全く書かれておりませんが、それはもう最初の第一歩と考えておりまして、例えばCROSSにおきましては、新事業展開部におきまして、量子ビーム分析アライアンスということで、企業14社を対象に活動しているわけです。利用支援活動。そこでは当然守秘義務を守るというか、契約書から始まっていきますし、そのレベルに応じた契約書が何本か用意されて、実施に移しております。恐らくそれと同じようなパターンがここで実現されると思っています。
【唯委員】  ありがとうございます。場合によっては、例えばAIの学習データに使われることをよしと思わない会社があるかもしれませんし、また、バランスがいろいろあると思うので、それぞれのニーズに応じた対応ができると非常にありがたいと思います。ありがとうございます。
【柴山センター長】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかに何かございますか。川北委員、お願いします。
【川北委員】  我々、J-JOINという活動をしていて、それからするとはるかにいい部分が幾つもあるという気はします。特にJ-JOINだと、中性子、ミュオンを使ってみようという人しかやってこないというところがある。とにかく量子ビームで何かできないかという人が相談、その窓口が広がるというのはすごい大きなことだと。あと、J-JOINの場合は、ある意味、コンサルティングを受けた後、装置側にポンと渡してしまっている。そこで、ここではコンシェルジュというのがちゃんとコワーキングができて、いろいろな量子ビームとの間での協働ができるということはすごい重要なことだなと思っております。
 そういう意味で、その経験が蓄積されていくシステムというのがやはり必要かなという気がしています。若い人が、先ほどキャリアパスということも考えられており、その人が育って、そこから出て行くだけでは意味がないかなという気がして、その人の経験がどんどん蓄積されていくようなことが必要かなというのがまず1点。
 もう1点は、J-JOINの中には、要するに、共用ではないところもちゃんと含まれているというところがありまして、最終的には、赤の点線ですかね。3ページの赤の点線の部分まで広げていこうということがまず、もう頭にあるということがあると思うんですけども、そこまで広げてもらわないと、まずJ-PARCとしてやりにくいなというところがありまして、特定先端大型施設で始まるというのはもちろんいいと思いますが、そこで始まった上で、その先のことも少し視野に入れていければなと思いました。
 以上です。
【柴山センター長】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほか、ございますか。いいですか。では、矢橋委員、お願いします。
【矢橋委員】  理研の矢橋です。ありがとうございます。2つ、コメントをさせてください。
 まず1つ目ですが、ちょっと使ってみたいという岸本委員からのお話がありまして、それに対して、CROSS、JASRIで現状でこういう制度がありますという説明がありましたが、まず一般的に見ますと、お試し利用のところでやはりいきなりお金がかかるというのは少しハードルが高いかもしれませんので、無償がいいかなというところはあります。一方で、枠に対してある程度の制限をかける必要もあるはずで、そのバランスを取ることが必要になってくると思います。例えばSPring-8で言うと、JASRIがやっておられる講習会の制度がありまして、施設から見てプッシュ型、ユーザーから見てプル型の制度ですが、逆に、今回のようなお試し利用というのをユーザーからプッシュしていただくような機会にして、講習会を一部再定義されるとそういうところがカバーできると思いました。また、講習会の枠の中でやる分には自動的にリミットも設けられます。
 それから2点目が、これは委員の皆さんからコメントがありましたように、全体の理念というか、ゴールとしては非常によく考えられていると思いますが、実装するときにやはりいろいろ課題が出てくると思います。そもそもこういう施設間の連携が難しいという一つの原因としまして、各施設の中もシングルエンティティではなくて、複数の機関がいろいろな役割を持ってやっているという現状がありまして、それを鑑みると、各施設の部分的なところを取り出して何かやろうとするのは、ある一定の限界がある、そこをどう捉えるかということがあると思います。
 ロジカルに考えると多分3つぐらいソリューションがあって、一つは、各施設の複数にまたがっている機関を全部統一してしまって、場合によっては施設も全部統一して、シングルエンティティでやるというのが一つの究極としてあると思います。恐らく今回はそういう話ではないと思いますので、もう少し現実的、短期的なところで言いますと、今ある施設の中の構造体は既にあるものとして、前回のこの場でも申し上げましたが、ウィークリンクの場としてこういうゲートウエイをつくるのか、それとも、かなり中に入り込んでつくるのかというところで、つくり方が違ってくると思います。特に中で入り込んでやろうと思うと、なかなか難しいところもあると思うので、つくり方の議論については、施設者としてもしっかり注視していきたいと思います。
 もうちょっと具体的に言いますと、例えばデータ活用の7ページ目のところがありますが、この部分もSPring-8で言うと、施設者の理化学研究所のほうで、データセンターの整備を進めておりまして、連携をどう取っていくか、あと、先ほど共用でないところも使いたいというコメントがございましたが、SPring-8の中でさえも、共用ビームラインというのは、本数でいくと、全体のリソースの半分以下でございますので、その他のビームラインをどう活用するかとか。あと、さらに大事なのが、こういった広く課題解決を募った場合に、きっと今のリソースでは解決できない課題というのが出てくるはずで、そういうものをしっかりピックアップして、将来の施設の高度化等につなげていくというチャンネルは非常に重要だと思いますので、その機能をどういうふうにしていくかとか、その辺りも含めて、つくり方のところをしっかり議論していく必要があるのかなと思いました。
 以上でございます。
【小杉主査】  ありがとうございました。何かございますか。
【柴山センター長】  はい。これは質問と捉えていいのか、あるいは、問題点の御指摘と捉えていいのか。
【矢橋委員】  コメントです。
【柴山センター長】  コメントですね。何点か私の答えられる範囲でお答えさせていただきます。ちょっと使うという話から始まりまして、これについては、このコンシェルジュは、ゲートウエイは基本的に無償ということで取りあえず想定しています。その相談の中で、これは有償がいい、あるいは秘密でやりたいということは、当然そこから有償利用につながっていくかと思います。
 それから、プッシュ、プルの話もありましたが、これに関しては、既にJASRIさんも勉強会をやっておられますし、講習会をやっておられますし、実習を何度もやっておられます。CROSSのほうも、CROSS Roadsワークショップという勉強会をやったりしておりまして、盛んにアピールといいますか、プッシュをやっているわけですね。それが一つ母体になっておりまして、今、このゲートウエイにそれを実装するかどうかは両者で検討させていただきたいと思っているところであります。
 それからあと、実装するものの課題、これはまさにおっしゃるとおりで、いろいろなところで問題があると思います。これは一つ一つ工夫していくことが必要で、できるところから始めていこうと思っております。その中で、先ほど構造体のウィークリンクどうのこうのという話がありましたが、私のイメージの中では、ウィークリンクという形で、あくまでもできるところで共通課題、共通問題を取り上げていくと。そういうことをしないと、いつまでたっても個別事象で終わってしまいますので、そういう形で考えております。
 それから、データ活用に関しましても、データの中身、それから、性質、それから、蓄積度等々も全てそれぞれでありますので、できるところから実装していきます。例えばMLFにおきましては、比較的データを蓄積、解析しやすいところ、例えばディフラクションのデータなどはそれができるでしょうし、弾性散乱とか、それからあと、非常に膨大なデータなり、イメージング等々、これは少し時間がかかるかなと。これについても今後、JASRIさんと相談させていただいて、進めていきたいと考えております。
【小杉主査】  ほか、ございますか。古川委員、お願いします。
【古川委員】  今、いろいろな話を聞いていて、私も最初のときに、広報発信とか人材確保とか、あとビームタイムの確保とかが検討事項に上がるかなと思いました。その中で、ずっとお話を聞いていてちょっと思っているのが、若手の方の、さっきの評価システムというか、評価されるのかというか、それが基に、評価になって、続いて、その人の将来の転出につながるのかという話があったんですけども、そこでちょっと考えがありまして、計測の専門側というのは装置についている方たちだと思っているんですが、そうだと、そこにも若手はいて、その人たちも転出するためには、そこに来た課題にどれだけコミットして、自分が、解析等々もそうですけれども、論文の名前がどれだけ上のほうに載るのかというのがかなり重要になってくるんだと思うんですね。このコンシェルジュ型の広い知識を持っている、多分そういう方を育てるためには2拠点で仕事して、ドクターを取るというような方になるんだと思うんですけれども、そういう方たちの将来に向けて、課題、コントリビューションを評価していくというのをすると、今の既存システムの中で頑張って、若手を育てている。ある意味、各施設で育てているわけですけども、そういう人たちとのバランスはどうなるのかなというのはあるので、それは検討事項なのかもしれません。私は今、聞いていたところでは、むしろ熟練の人というか、ある意味、施設をよく御存じの方たちがコンシェルジュというような立場を、言葉の意味でのコンシェルジュを取っているのはバランスが保てるような気がしたんですけど、そこに若手の将来、将来を持つ若手のところをどう担保していくかがちょっと分からないなと思いました。すみません。これで大丈夫ですか。
【柴山センター長】  それについては、私の経験も踏まえた上でお話ししますと、大学にいたときに学生さん、あるいは若手の助教さんレベルと一緒に、例えば企業との共同研究をする際にですね。実際に体を動かすのはやはり若手になります。ですから、年配の方がコンシェルジュ、頭だけ使っているということでは、このコンシェルジュというか、ゲートウエイは成立しませんので、特に若い人たちが実際に働く。その中で経験を積んでいくということが非常に大事かなと。装置にも詳しくなったり、あるいは装置の高度化等々にも関わるということを実際やってきた経験がありまして、そういう人たちを想定しています。
 研究に関しては、いろいろな評価軸があるかと思うんですが、例えば論文を書いて評価していただくのもあるし、どれだけサポートしたかという評価軸もあるかと思います。それはその人のキャリアアップの方向によって違ってくるかなと思います。いずれにしても、そこはあまり狭く考えないで、いろいろな形で若手の人材育成を考えるべきだと考えています。ですから、それはポスドクの方が自分の研究をやりながらサポートすると。例えばフィフティー・フィフティーでそういうことをするとか、それはいろいろなパターンがあり得るかなと思っております。
【古川委員】  このコンシェルジュに対して専任をつけてというお話だったかと思っているんですけども。
【柴山センター長】  そうです。それは全て専任というパターンもあるし、もう少し柔軟に、パートタイム的な形でサポートに入るケースもあるだろうということで申し上げていて、基本的には専任がいていただければ、それにこしたことはないです。そのためにはキャリアパスも用意しなきゃいけないなと思っております。
【古川委員】  かなり広い分野の課題が来るのをある程度待つというか、自分の今までやっていた専門と全然、ちょっと違うところかもしれないんだけど、それが自分の専門ですと言って、その成果をもって次のところに出ていくということを想定されている。
【柴山センター長】  はい。例えば前回、雨宮センター長からもお話がありましたように、マルチプローブ、いろいろなプローブを使いこなす人が必要だというお話があったかと思いますが、それも一つのパターンとして、そういう若手人材を想定していると思っていただければいいかなと思います。
【古川委員】  分かりました。
【小杉主査】  では、QSTの高橋委員。
【高橋正光委員】  QSTの高橋です。コンシェルジュの人材確保という意味で、このコンシェルジュの方のある意味、やりがいみたいなのがどういう形でフィードバックがあるのかなというのがちょっと疑問に思ったんですけれども。というのは、ユーザーさんが課題申請して、実際に実験を行って、成果を出すという、その上流のほうにかなり位置している立場だと思うんですけれども、上流に行くほど、成果に対するコントリビューションがどの辺にあるのかというのが非常に見えにくくなるという傾向があるように思うんです。例えば課題申請のシステムでも、実際に自分が課題審査をした人というのは、自分の審査のジャッジが正しかったか、間違っていたかみたいな、結果にかなり影響しているはずなのですけれども、それが多分ダイレクトにはなかなか評価しにくいような感じで、コンシェルジュはさらにその上流にいるので、その辺、自分の判断みたいなのがどれだけ生きたのかをどんな形で感じることができるのかというのがかなりやりがい、あと、人材確保というところにつながってくるのかと思いました。
【柴山センター長】  これもコメントしてよろしいですか。
【小杉主査】  はい。
【柴山センター長】  まずコンシェルジュの、今、このページで、熟練に相当する方は例えば退職された方で、まだまだ若くて、頭脳明晰の方はたくさんおられます。この人たちは別に報いといいますか、評価というのはそれほど期待する必要はなくて、もう自分はされてきたと。ですから、むしろ若手育成とか研究の進展に寄与できれば、例えば私はそう思うんですけど、それで十分だと思います。一方、若手はこれからどんどんキャリアアップしなきゃいけませんから、若手にどんどんいい機会を与えて、そこで共同研究なり、あるいはその研究、サポートをきっかけに自分の研究を進めていただくという形で進めるのが一番いいかなと思っているところで、ですから、そこにはちゃんとそれぞれの層における満足度は期待できるのかなと私の中では思うんですが、いかがでしょうか。
【小杉主査】  共用施設の間でシステムをつくれば、その中でいろいろな人材の育成の仕方があって、コンシェルジュだけでなくて、例えばビームラインのハードウェアに行く人もいるし、ユーザーサイドの研究成果を出すほうにも行くし、その辺りは共用施設の間でこのシステムができている限りは、いろいろな戦略は打てると思うので、そこはあまり心配していないんですけど、川北委員の言うように、ほかのところにまで広げた場合は非常に難しくなってくるので、いいモデルを共用施設の中でつくっていただくのが先のような気がします。
ほかの施設にもいろいろ拡大していくところまで考えないといけないシステムなのかというのは、最初のつくり方次第という感じもしなくはないんですけど。結局は予算がどこにつくかで、そこでしっかりやるということになると思うので、多分共用施設の間でしっかりシステムをつくるというところがまずやることかなと思います。
【柴山センター長】  はい。予算等々に関してはぜひ、こういう小委員会のような場で御議論いただきたいなと思います。私たちが今、提案できるのはこの程度でございまして、どうぞよろしくお願いいたします。
【小杉主査】  私が感じたのは2つ、現状をどうするかというのと、将来に向けてどうしていくかというのがあって、現状はやはりいろいろな裾野を広げて、成果創出にどんどんしていきたいということだと思うんですけど、SPring-8はSPring-8-Ⅱを目指して、スループットが2桁ぐらい上がるような感じになるし、NanoTerasuもこの委員会で議論したようにビームラインを増やしていくという話があるんですけど、先ほどちらっとCROSSのほうではいっぱいいっぱいという話があったんですが、こういうシステムを入れることによって、現状、余裕のないCROSSとしてどう対応するかというのはちょっと心配な部分です。
 それからもう一つ、将来に向けては、先ほど矢橋委員が言ったように、ユーザーが持っている課題解決には、今ある手法だけではなくて、各施設のビームラインで開発する新しい手法なども必要になってくると思うので、そういう将来動向を把握するにはユーザーの需要を聞く場が必要で、そういうゲートウエイの使い方もあると思いました。
現状のCROSSの問題がどうなるかというのが心配なのと、あと、単に使うだけではなくて、将来に向けてのシーズを発掘するという可能性もこのゲートウエイは持っていると思いました。
【柴山センター長】  はい。これはやはりあくまでも出発点という位置づけでありまして、厳しいマシンタイムの中でこれをやりくりするところから始めていますが、これが広く産業界に評価され、あるいはこういう小委員会等々で評価していただければ、ビーム配分の比率も変わっていく可能性があるかなと思います。CROSSは登録機関ではありますが、CROSS自身がハンドリングできるビームタイムは非常に限られております。これは施設側と協議を重ねていって考えていく必要があります。
 それからあと、昨今の電気代の問題もありますので、なかなか今のところマシンタイムを増やすことは難しいところがありますが、ぜひこれを実現していくこと、それから、将来的にはこれを足がかりにして、ターゲットステーション2ですね。SPring-8-ⅡのJ-PARC版のようなことをぜひ目指していきたいと思っております。
【小杉主査】  そろそろお時間ですけど、オンライン側でも何かございますか。よろしいでしょうか。
 これは文科省で高度専門職とかの議論もあるかと思うんですけど、そういう中で、ここでの人材の議論というのはどういうふうにつながっていくんですか。
【稲田課長】  人材の議論に関しましては、適時、技術職員や専門職員あるいは供用に携わる人材も含めて人材政策課にも情報提供してございまして、向こうの議論の中で専門、サポーティブというか、いわゆる研究者ではなくて、研究支援人材の人材育成についても議論はされることになってございます。
【小杉主査】  では、こちらからいろいろな議論が伝わっていく形になっているということですね。
【稲田課長】  はい。こちらで行っている議論については適時提供しております。
【小杉主査】  ありがとうございます。
 では、時間がそろそろなので打ち切りたいと思うんですけど、会議の後でも思いついたことがあったらまた事務局に伝えていただければと思います。
 それでは、いろいろ議論が出ましたので、登録機関におきましては、いろいろ今後も検討を進めて、いい形の提案になるようによろしく御検討お願いいたします。
【柴山センター長】  どうもありがとうございました。
【小杉主査】  それでは、議題3に移りたいと思います。議題3は、「SPring-8/SACLAの中間評価について」ということになっています。まずは資料3-1、3-2に基づいて、事務局より説明をお願いいたします。
【稲田課長】  本評価に関しましては、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に基づいて行う評価となってございまして、この中で、事前評価、中間評価、事後評価を行いなさいと、こういうふうに書いてございます。
 なお、実施期間に定めのないものに関しましては、中間評価をおおむね5年ごとに実施してください、こういうような記載になってございます。
 これに基づきまして、平成14年、19年、25年、31年に、これまで4回の中間評価を行っているんですが、今般5回目の中間評価を行うという内容となってございます。資料1が今後のスケジュール及びどのようなことをやっていくかという予定でございますが、この評価に関しましては、先ほど申しました指針に基づきまして、研究計画・評価分科会において最終的な審議をいただき決定するということになってございます。
 議論に関しましては、昨年行いましたJ-PARCでの中間評価を参考にいたしまして、およそ4回程度の議論を行うことが必要ではないかなと考えてございまして、第1回目、これは現状及び何を議論するかというところの話をした後、次、これは会議の回数に入っていませんが、現地調査を行った後、第2回として、中間評価以降の主な成果であるとか、中間評価の指摘事項に関してどのようなことをやっているのかというフォローアップの1回目を行い、第3回目におきまして、その積み残しの議論をし、第4回目において、前回の中間評価の指摘事項以外の新しく対応すべき論点を議論した上で、報告書をまとめる、こういう予定でございます。
 では、具体的に中間評価の指摘事項等々どうなっているのかというところが資料3-2でございまして、論点でございます。
 なお、実はこれは5年ごとと言いいつ、6年目なんです。これはなぜ6年目に突入したかというと、去年、SPring-8-Ⅱの議論をいたしました。これがこの議論をする前にどうしても必要な議論でありましたし、ここで行った議論の一部は、評価のときにそのまま利用可能だと考えてございまして、まずは1点目としては、そこの部分について議論したものについては議論済みであるという形にするということを考えています。
 具体的には、(参考)の4ページにどのような議論の内容をして、それに対してどのような結論が出ているかというところを簡単に示したものでございますが、このほかの部分としては、前回の指摘事項として、SPring-8、SACLAの政策的な位置づけと発展の方向に関してまとめるとともに、具体的には、経営基盤の強化であるとか、イノベーション・エコシステムの形成であるとか、あるいは国際連携をどうするべきなのかみたいな話であるというところを議論。
 2番目の柱として、研究成果の最大化についてどのようなことが行われているかというところが議論の柱となっておりまして、オープンデータ、オープンアクセス、それから、ビームラインの改廃と高度化をどのように実現しているのかという話であるとか、あるいは、3点目でありますが、ビームラインの有効利用と研究成果の最大化を、どういうことをすべきなのかというところが研究成果の最大化として挙がりました。おのおのの論点は、先ほど申し上げた表題について、丸のところに書いてございますので、後で御参照いただけるとありがたいと思います。
 3点目でございますが、産学官共用による利用促進についてどのようなことを考えるかというところでありまして、利用の促進、利用者本位の運営がされているかというところと、新たな開拓及び利用者の拡大をどのようにしているかというところを議論いただくことになろうかと思います。
 4点目でありますが、人材育成及び国民理解の醸成でございまして、人材育成、それから、広報、情報発信等について御議論いただく必要がある。これが前回の中間評価において、なお今後評価しなきゃいかんと言っている宿題事項の一覧でございます。
 加えまして、その後、科学技術イノベーションを取り巻く状況変化を踏まえた新しい論点が幾つか出てきてございます。これは第56回において御議論いただきますし、それまでに新しく適時追加するつもりでおりますが、例示としてこちらに5点ほど挙げているところについては評価する必要があるかなと事務局でたたき台をつくっているところでございます。
 以上のような論点がいかがなのかというところを、まず冒頭御議論いただいた上で、1個、資料3-3、3-4、これは現状どうなっているかというところを理研さん及びJASRIさんから御説明いただこうと本日は考えてございます。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、今、御説明あったように、資料3-3と3-4に基づいて、設置者の理研から矢橋委員。それから、登録機関のJASRIから坂田理事にそれぞれ説明をお願いします。
 それでは、矢橋委員からお願いいたします。
【矢橋委員】  理研の矢橋です。それでは、資料3-3に沿いまして概要説明を行います。めくっていただきまして、まず1ページ目、SPring-8/SACLAのミッションでございますが、これは最先端の加速器技術を駆使して、明るい光(短波長のX線)をつくる、ミクロの世界を解明する「究極の顕微鏡」として、科学技術と社会の持続的発展を支えるというものでございます。
 次のページに行っていただいて、まず、SPring-8の沿革でございます。特に、前回の中間評価が、先ほど稲田課長からありましたように、2018年10月から開始されて、その年度に終わりましたが、それ以降のところを青字で書いてあります。2020年度は、まさにこれはコロナ禍に入ったところでございまして、非常に大変だったわけですが、一方で、ここでDXの取組が一気に進みまして、さらに、SACLA入射、この後、簡単に御説明しますが、そこも進みまして、2021年4月から、いわゆるSACLA入射が定常化されて、老朽化した旧入射器を廃止しております。
 それから、21年8月には、グリーンファシリティ宣言をしまして、22年には、利用者数が累計30万人を突破、それで昨年度はSPring-8-Ⅱに向けて、文部科学省のタスクフォースの報告書が出ました。さらに、ここの委員会でも議論があり、年度末にはこのような報告書が出ております。それで今回に至っているということでございます。
 めくっていただきまして、SACLAのほうですが、これもSPring-8の2018年の評価と併せてやりまして、SACLAのこれが第1回の中間評価でございました。ほぼSPring-8とかぶっておりますが、利用者数のほうで2022年で累計1万人を突破してございます。
 それで、今までのところで、2つトピックを挙げますと、1番目が5ページ目のSACLA入射でございまして、これはもともとSPring-8の入射器、1GeVの線形加速器と8GeVのシンクロトロンというのがありましたが、非常にこれが古くなっていて、更新が問題になっていましたが、このためにSACLAの線形加速器を新たに入射器として利用しました。これによりまして、下の3つ、電力削減、それから、更新費用の削減、さらには、今後のSPring-8-Ⅱに向けた入射というのは非常に難しいわけですが、高性能な入射性能をもう既に確保したという大きなアドバンテージがございます。
 めくっていただきまして、グリーンファシリティ宣言でございますが、これは右下のところに太字であるように、ポイントが2つございまして、まずSPring-8自身を使っていただきながら、様々な研究開発活動、グリーンに関わるところを強力に支援していくというところが1点目。それからもう1点が、施設自体も一層の省エネルギー化を図るということで、これは先ほどのSACLA入射、それから、SPring-8-Ⅱの構想にもつながってございます。
 次から現状の状況を報告したいと思います。
 まず7ページ目でございますが、SPring-8/SACLAの主要データということで、これは数字を見ていただくわけですが、SPring-8のほうは、まだ非常に高い利用率を誇っておりますが、この後申し上げるように、やはり老朽化のところが進んでおります。上から3番目、MTBFという数字がございまして、これはMean Time Between Failureといいまして、ビームが落ちるタイミングの平均間隔ということで、403時間ということは、この間、およそ20日間弱、ビームが落ちずに、安定に運転できているということで、これは様々な老朽化対策を行って、この数字を維持できているということでございます。
 それから、SACLAのほうは下の数字でございますが、SACLAのほうのMTBFは0.97時間と、SPring-8に比べて非常に小さいわけですが、これは加速器の構成が違っておりまして、SACLAは線形加速器でございますので、ある意味で頻繁にビームは落ちるわけですが、ただ、毎回60ヘルツで入射しておりますので、線形加速器で言いますとこのMTBFは非常によい値ということになっております。
 では、次めくっていただきまして、それでは、それぞれの施設についてもう少し詳しく中身を見ていきたいと思います。まずSPring-8の運転状況ですが、運転時間を下にグラフを示してございますが、一番上のところを見ていただきますと、年間5,000時間強を維持できておりますが、これは光熱水費の最近の高騰を受けて、2022年度からは補正予算が措置されて、こういうことができているということでございます。さらに、先ほど申し上げたように、加速器本体・インフラの老朽化が進行しておりますので、SPring-8-Ⅱの早期実現の必要性があります。これは機器を更新するとともに、グリーン化によってエネルギー効率を上げるという、両面がございますので、これを一刻も早く進めていきたいと考えております。
 それで、次のページに行っていただきまして、SPring-8のビームラインマップ、これは稼働中ビームライン57本ということで、この内訳のところでございますが、10ページ、この57本のリソースがあるわけですが、前回の中間評価では、全体のリソースの活用がまだ不十分ではないかという指摘もございまして、2019年度からビームラインの再編を実施しております。これは共用ビームライン、理研ビームライン、専用ビームラインといろいろな主体がございますが、個別のソリューションではなくて、SPring-8全体のポートフォリオを定めた上で、全体ビームラインの機能を整理し、強化するということで、下にあるような3つのMeasurement、Experiment、Development。特にMeasurementのところはProduction BLと言っておりますが、この3つのカテゴリーに分けまして、さらにSPring-8-Ⅱを見越しながら、高エネルギーであったり、コヒーレンスの強化というところを図りながら、データセンター、それから、DX、制御のシステム、リモート環境といったところの整備を進めているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、57本のビームラインの中身ですが、これも前回の中間評価でいろいろな指摘があったことを受けまして、特に大口利用のところですね。今まで大口で使いたいユーザーの方は専用ビームラインを建設して、いわゆるストック型利用と我々が呼んでいるやり方が主体でございましたが、最近はフローと言いまして、利用料を払っていただきながら、施設設置の運用は施設側が行うといったところで、専用から理研ビームラインの転換が進んでいるということがあります。下のグラフの右の赤いところが増えているというのが、これを表しています。特に前回中間評価からの主な変更ということで、2019年の変更は、主に理研と共用ビームラインの間のスワップでございましたが、2020年以降は、緑のところで6本の専用施設が理研ビームラインに転換されて、それぞれしっかり活用されているということでございます。
 次のページに行っていただきまして、全体の利用課題の状況でございますが、まず下のグラフで見ていただくと分かりますが、応募課題数が顕著に増えております。これは2021年度から顕著に増えている。一方で、ビームライン再編とか、あと、DX化等によって効率化を図っておりますので、全体の採択率、紫のラインですね。これは右側の軸になります。これは何とか7割程度を維持できていますが、実は一部のビームラインの採択率が非常に低くなっておりまして、ここの共用ビームラインのうち、約3分の1が有審査課題の採択率が60%以下、ワーストスリー、ここに書いてございます。これはなかなか厳しい数字になっておりまして、もちろんSPring-8-Ⅱを進めていくと、こういうところがしっかり解消されるというところはありますが、ユーザーの皆様にとっては、それまで待っていられないというところもございますので、足元でもしっかりとこういった数字をモニターしながら、ビームラインの再編を着実に進めていきたいと考えております。
 それから、次のページに行っていただきまして、利用料収入の推移でございます。これも前回の中間評価を受けまして、理研、JASRIで様々な議論を行いまして、制度をある意味でシンプルにしながら、しっかり皆さんに使っていただくような仕組みを考えてきました。あと、ビームライン再編・DX化による効率向上というところもありまして、近年、非常に顕著に増加しているところでございます。これも皆さんにしっかり使っていただくということで、こういうデータになっております。
 次に、SACLAに移ります。SACLAは、施設の構成はSPring-8と違って、かなり加速器とビームラインが一体になっておりますので、こういう一体の絵で示しておりますが、2本の硬X線のビームラインというのがメインの加速器、上の絵ですね。ここからビームが来るのがありまして、これがBL2とBL3というところに行っております。
 一方で、軟X線の専用の加速器、これはもともとプロトタイプ器であったのをここに移設したのでございますが、この合計で3本の加速器、さらに、SACLA加速器からの電子ビームは、先ほど申し上げたように、数分に一発、SPring-8に入射されるということになっております。
 次のページに行っていただきまして、SACLAの運転状況でございます。運転時間、下のグラフで左側の赤いバーでございますが、年間5,800時間程度ですが、前回からはちょっと減っておりますが、これはいろいろ光熱水費の高騰等も受けたということもあります。しかしながら、効率化を行っておりますので、利用時間、これはSACLAのほうは3本のビームラインを利用時間の累計で示しておりますが、これはほぼ6,000時間強をキープしているということでございます。
 それから、利用状況でございますが、前回、中間評価以降、海外で3施設が本格稼働しまして、申請数が若干減っておりますが、トータルの採択率としては7割程度で推移しております。しかしながら、ここもSPring-8と同様に、実はBL3というビームラインが非常に競争率が高くて、ここがなかなか難しいということになっておりますので、ここの相方となるBL2というところの能力の拡充を図っているところでございます。
 それで17ページでございますが、こういったところで、オペレーションの状況を見ていただきましたが、そのアウトプットとして、論文の発表状況というのを端的に示したのが17ページでございます。これは2013から23年の11年間のデータを見ていただいておりますが、論文数としましては、1年当たり約1,000報ということです。
 それで、平均被引用回数ということですが、これは非常に高い数字になっておりまして、一つの論文当たり、SPring-8、SACLAとも20回以上引用されているということでございます。
 それから、TOP10%論文の占有率を調べてみますと、これはサイテーションが多いのを上から10%並べたのが、どれぐらい割合がありますかということで、平均を全部ならすと10%という値になるはずなんですね。実はSPring-8がまさに10%、SACLAは15%ということでございます。一方で、これはちょっと衝撃的なのですが、日本全体を見ますと、TOP10%論文の占有率というのは、実は5.3%と非常に低い。下の図を見ていただきまして、青いところがその数字になっておりますが、これはなかなか厳しい数字になっております。そういった中でもSPring-8、SACLAが名実ともに国の基盤を支えているというところが言えると思います。今後もしっかりとやっていきたいと思います。
 それで、次、2ページがSPring-8、SACLAからそれぞれ成果のハイライトでございます。まずSPring-8からは、京都大学の北川宏先生のグループで、これは異なる貴金属元素を原子レベルで混ぜ合わせたらどうなるかと、そういった研究でございまして、非常に面白い結果が出ております。これは8元素の合金をつくると、隣り合う原子が非常に多様な組合せを取ることができる。いわゆるハイエントロピー合金ということになりますので、それによりまして様々な化学的な活性が得られるということで、例えば水分解の触媒の活性が非常に高くなっているということが論文でも報告されておりますが、それを裏づけるものとして、実際にSPring-8でこの構造を見たとか、あと、電子状態、化学状態を見たとか、それがXRD、HAXPES、これはある意味で非常にコンベンショナルな手法でございますが、非常に精緻な計測ができますので、これによってこういった結果を支えているということが言えます。
 次のページに行っていただきまして、一方で、SACLAのほうでございますが、これも非常にとがった成果でございます。これはSACLAのX線自由電子レーザーを7ナノメートルという非常に極限的な集光を実現しまして、世界で一番強いX線レーザーをつくったということでございます。これを物質に当てるとどうなるかというところですが、右下の図を見ていただくと分かるのですが、これは蛍光X線のスペクトルを見ていますが、普通であれば、Kα、Kβでおしまいですが、非常に高いエネルギー領域にラインが出ていまして、これは何かといいますと、周りの電子が剥ぎ取られて、どんどんレベルが変化していき、最後は全部なくなってしまう。センターの横線のところが真暗になってしまうという非常に面白い現象が出てきておりまして、こういった基礎的なところも含めて様々な応用が進んでございます。
 めくっていただきまして、ユーザー満足度調査というのを、これはJASRI利用推進部のほうで実施されています。これは定期的に実施されていますが、これを見ますと、実験結果とか手続の利便性、利用制度の多様性、スタッフのサポート・専門性等、小さくて見にくいのですが、右の上の項目・ほぼ押しなべて高い評価を得ていますが、一方で、食堂、宿舎、売店等の福利厚生関係については非常に評価が低いということで、ここについては施設としてしっかり改善に取り組んでいきたいと考えております。
 最後、まとめでございます。SPring-8、SACLAの着実な運用をしておりまして、質・量ともに充実した成果が創出されています。一方で、SPring-8、特に加速器の老朽化が進行して、Ⅱへのアップグレードが喫緊の課題となっております。ここにつきましては、先ほど稲田課長からもありましたように、昨年度のⅡに関する議論もしっかりされておりますので、今回の中間評価からは議論の対象にはなりませんが、ここはここでしっかり進めたいと思います。
 一方で、今回やっていかないといけないというところは、まず足元のところですね。Ⅱに行く前の、例えば利用制度、ソフト面等の改革を進めており、一定の成果を達成しつつありますが、例えばⅡを見据えたとき、それから、先ほどの施設間連携を考えたときに、様々なさらなる改革が必要。例えばデータの扱いであったり、あと、ユーザーの認証一つとっても様々な課題がありますので、そこはしっかりやっていかなければいけない。
 それから、先ほどのページにあったように、利用者の滞在環境も要改善ということでございます。
 さらに、もう少しロングレンジで言いますと、世界のXFEL施設についてもいろいろな新たな流れが出てきておりますので、それを踏まえながら、SACLAの将来の可能性についてもぜひ検討、御議論をお願いできればと思います。
 以上でございます。
【小杉主査】  それでは、坂田理事、お願いします。
【坂田理事】  資料3-4を御覧いただければと思います。まず概要と現状ということで、高輝度光科学研究センター、JASRIがどんな機関なのか。つまり、使命や業務を説明させていただいて、その次に、5年間の活動として要約を御説明します。特に利用制度と産学連携推進についてが前回の評価でもトピックスになりましたので、その取組の事例を紹介させてください。
 めくりまして、ここの3つの、まず登録機関として、SPring-8、SACLA等の利用を促進するということを行っております。1、2、3で公正な利用者選定と効果的な利用支援、利用研究成果の最大化、学術と産業の発展と、この3つを使命としています。この使命を実現するために、ここでは経営方針として、1、2、3、4、5ということを経営方針として、取組をしております。
 その結果として、右側の学理の追求と現実の問題解決を目指しております。知の創出、イノベーションの創出、オープンイノベーションということに貢献するということがJASRIの大きな目標でございます。
 めくっていただいて、具体的な事業ですけれども、利用促進業務というものでございます。これは利用者選定と利用支援で構成されておりまして、これは特定先端大型施設の共用の促進に関する法律を根拠法定として法定業務を行っております。ここに書かれている目的を実現するための組織でございますけれども、真ん中のところで囲ってありますように、SPring-8とSACLAの共用を促進し、利用研究の質的・量的拡大を図るための高度な研究支援等を行っております。
 業務内容は、先ほどと重複する点もありますけれども、公平性及び透明性を確保した公正な利用者選定を行うこと。利用者本位の利用制度設計をすること、多様な利用者・潜在的利用者に対する技術支援、情報支援、普及啓発という内容になっております。
 めくっていただいて、前回の中間評価からこれまでに取り組んでいたことを、利用制度改正、人材育成、普及啓発ということでまとめております。利用制度の中では、4ポツがありますけれども、タンパク質結晶構造解析用BL、PX-BLと言いますが、そこにおける自動測定が2019Bから。また、補欠課題を設定するということで、この中での時間、マシンタイムを有効にするということが2020年から行われております。
 また、3ポツ目の年6回募集ビームラインが、3本から9本に大幅に2022Bから拡大されて、現在に至っています。
 4ポツ目のイメージングCTの測定代行もBL28B2で、2022Bから行われており、非常に好評になっております。
 人材育成としては、テニュアトラック研究員というものを2020年度から始めて、若い年代の方たちを育てながら、実際にユーザーの研究にも寄与するということです。
 2ポツ目では、大学院生提案型課題というものの長期型、この大学院博士課程の学生をターゲットにしたものも2022年から実施しております。
 普及啓発としては、SACLA試験利用が2021Aから行われてきております。
 以上が2018年から2023年のものですけれども、次のページで、5年間で利用制度改正がどういう位置づけになっているのかをプロットしたもので、5ページ目を開いていただくと、上から、成果非専有、成果専有、重点研究課題ということで、背景の色が変わっているように表示してありますけれども、この中で2020Aの補欠課題設定とか、2022Bの年6回の募集拡大、あるいは成果専有課題とか、イメージングCTがこの位置づけで始まった。成果専有課題のこの時期で始まったというように、この表で示しました。
 次のページをめくっていただいて、評価のときの話題になった産学連携推進に向けた取組例として、3つ、国主導のプロジェクトと、岡山大学でのコアファシリティ構想、あるいは最後に材料データリポジトリとの連携という大きなものを例として挙げさせていただいております。
 最初に戻りますと、国主導のプロジェクトは、JASRI内に研究プロジェクト推進室というものを2018年に設置して、ここでは具体的なプロジェクトとしてはNEDOの燃料電池、AMEDのBINDS、環境省の脱炭素化のプロジェクトなどが実際に今、動いております。
 岡山大学との構成への協力では、この「検討中」という枠で囲ってあるもので、SPring-8利用ユーザーがSPring-8を使って、さらに共同機器利用で岡山大学の共用分析サポートを受けられないかとか、岡山県の地元企業の方たちが、左側から岡山大学のこういう分析装置を使った上で、さらに高度な分析をしたいという方は、ぜひSPring-8に使ってもらいたいというふうにユーザーが、左から右へ、あるいは右から左へと行くようなものが滑らかに行くようなものを産学連携推進の一つとして検討しております。
 最後のところは、材料データリポジトリとして、JASRIのデータとNIMSのMDRとの具体的なことを3つのポツで御紹介しております。
 これが本文で、詳細は御説明しませんけれども、目次にないコンテンツだけ参考資料として、10個の利用者選定業務の体制図や利用支援業務の詳細、SPring-8の利用状況、SACLAの利用状況、登録施設利用促進機関の位置づけ、運営体制、利用制度の変遷の詳細、補足、あと、施設人材の確保・育成の現状など御紹介しておりますので、こちらは別途御覧いただければと思います。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、20分ぐらい議論の時間がありますので、どなたからでも結構ですので、発言いただければと思います。オンラインでまだ発言されていない方、ぜひお願いいたします。何か質問等ございませんでしょうか。
 では、QSTの高橋委員。
【高橋正光委員】  QSTの高橋です。矢橋委員の御発表に関してなのですけど、単純な質問です。10ページのビームラインのポートフォリオのグラフで、3つのカテゴリーに分けているというよりは、横軸が連続量で何か分布させているように見えるんですけれども、これは横軸の指標というのはどういったものになるか教えていただけないでしょうか。
【矢橋委員】  これは厳密に、バシッと決まるものでもなくて、やはり連続的な移行というのがあります。これは2つ理由がありまして、測定手法そのものがそういう連続的な場合と、あとビームラインに幾つか実験装置があって、片側はプロダクションだけで、片側は実験的みたいな、そういうところもあります。ただ、意識づけとしては、プロダクションのところは一品物の実験ではなくて、オートメーションをしっかりやって、データが自動で出てくるようなイメージを持って整備をするというところをやっておりまして、それに対してエクスペリメントのところはもう少し凝った実験というところで、そういう使い分けをしております。
【高橋正光委員】  横軸の位置というのは、これは直感な、イメージですか。
【矢橋委員】  イメージですが、大体このぐらいの感じで動いてございます。
【高橋正光委員】  分かりました。
【小杉主査】  ほか。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  矢橋委員にお伺いしたいのですが、SPring-8-Ⅱの計画のお話を聞かせていただいているときも、老朽化という状況のお話がありましたが、具体的に施設の性能の劣化というのはあるのでしょうか。この装置が完成して以来今日までに。
【矢橋委員】  そうですね。パフォーマンスのところについては、特にビームラインのところについては、先ほども言いましたように、再編とか、ある程度の老朽化対策が比較的容易にできますので、そこはむしろパフォーマンスを上げていく方向でやれているんですが、やはり加速器本体の対策が難しいというのがありまして、例えば、MTBFが400時間ということは申し上げましたが、実は様々なビームアボートの要因がありまして、例えば電源系が弱ってくるとか、冷却水系がへたってくるとか、大体そういうのは決まっているんですけども、そういうところに今、絆創膏を貼りながら何とか動かしているという状況でございます。
【小杉主査】  ほか、ございますか。
【森委員】  よろしいでしょうか。
【小杉主査】  森委員、お願いします。
【森委員】  御説明どうもありがとうございます。利用状況ですけれど、利用者が増えてきて、その中でも7割程度採択されているんですが、3分の1が60%以下ということです。なかなか厳しい状況もある中で、どういうふうにこれを平滑化というか、改善されているのかというところを教えていただけますか。
【矢橋委員】  何ページ。
【小杉主査】  12ページ。
【矢橋委員】  スライドで。そうですね。
【森委員】  はい。大分凸凹があるということで、その中でも採択率が40%とか30%の装置が3件に1件あり、その運営をどのように考えておられるのかということをご説明いただければ幸いです。
【矢橋委員】  まず一つは、共用ビームラインの再編を通して、やはりニーズが多いところは、複数のエンドステーションを設けるというところはやっております。あと、一番下に書いてあるんですけども、例えば理研ビームラインと専用ビームラインのほうでも共用枠が設定できますので、そこも活用しながら、施設全体で平準化を図る。具体的には、例えばワースト3のBL13XUというところで、多軸回折計という非常に基本的な分析装置があるわけですが、非常に人気が高くなっています。そこにつきましては、今年度より理研ビームラインになりました、ビームラインの16XUというところのビームタイムの一部を共用枠としまして、ユーザーが使えるようにするということを今取り組んでおりまして、例えばこれが今年度の下半期より実施できる見込みです。このように、数字を見ながら柔軟に対応を進めているところでございます。
【森委員】  ありがとうございます。目指すところとしては、どこまでが可能だと思っておられるでしょうか。
【矢橋委員】  そうですね。なかなかこれは数字として難しいところがあります。やはり有審査課題が6割以下というのは結構厳しい数字ですので、ここが7割、全体の採択率7割ということですが、そこからのあまりに外れ値がないようにしていくというところに持っていくのがいいのかなと思います。ただ、一方で、当然、分析手法のトレンドもありますので、そういうところもある程度先読みしながらやっていく必要があるところはありますが、一方で、SPring-8は全体として見ると非常にたくさんのビームラインのリソースをもっていますので、そこをうまく活用しながら平準化を図っていくのかなと考えております。
【森委員】  ありがとうございます。理研ビームラインが増えたということで改善はされているんですか。
【矢橋委員】  そうですね。理研ビームラインが増えたというところで、改善の方向には向かっていますが、ただ、一方で、理研ビームラインでしかできない特殊な分析手法というのもありますので、そういったところは当然、共用枠に出してもすぐいっぱいになってしまいます。先端性をどんどんやっていくところと、汎用化を進めるところ、そこをちゃんと両方ともしっかりやっていくというところが必要になる、求められていると認識しております。
【森委員】  ありがとうございました。
【小杉主査】  ほかにございますか。古川委員。
【古川委員】  質問です。すみません。今、課題の募集回数が年6回と、1回当たり4割、3割の採択率のところがあるということですけど、これは6回にしたからそんな感じになっている。というか、1回当たりの与えられるビームタイムが年4回よりも少なくなるわけですね。それで、そんな感じになっているんですか。6回掛ける3割と、2回通って、年に2回実験できるのかなと。そういうことなのか、それとも、どうなんでしょう。すみません。
【矢橋委員】  坂田さん、お願いします。
【坂田理事】  ええ。そういうことだと思います。年に6回しない場合、どうだったかというのはお答えできないので、今、6回されている、例えば、今、矢橋委員が多軸回折計でと紹介されたビームラインなどは、今のお話の年6回しているビームラインです。
【古川委員】  そうですか。そうすると、何かやはりユーザー側の人たちは、落ちるので、せっせと毎回出すという感じに。
【坂田理事】  はい。そうです。
【古川委員】  そうですね。分かりました。
【小杉主査】  落ちたら、もう一度トライして出すと。
【坂田理事】  はい。
【小杉主査】  そうするとどんどん採択率が下がっていくんですか。
【古川委員】  変な質問して、ごめんなさい。
【小杉主査】  そういうわけではない?
【坂田理事】  はい。そういうことではない。今、先生がおっしゃっているのは……。
【小杉主査】  ある程度ユーザーはいて、やって。
【坂田理事】  どんどん倍率が大きくなっていくのかということですね。
【小杉主査】  ええ。だから、どんどんたまっていくと。
【坂田理事】  いや、そういうわけでは。そこは聞いていないです。
【小杉主査】  そこまで深刻ではない。
【古川委員】  年6回実験できる方と、できない方もいらっしゃるだろうし、平均2回ぐらい来る方もいらっしゃる。
【坂田理事】  おおむね好評です。機会が増えたということで、年に2回よりは、6回に応募の機会が増えたということで、私が知る限りではポジティブな意見が多いです。やめてくれというのはほとんど聞いたことないです。
【古川委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  少しずつ、6回申請可能なビームラインを増やしつつあるという状況の中で、審査からの何というか、不平不満、ちょっと困る、これだけ何回も審査するのは困るとかいう。
【坂田理事】  審査委員の方からはそういうクレームがありました。
【小杉主査】  もちろんあると。
【坂田理事】  はい。
【小杉主査】  その辺り、どうバランスを。
【坂田理事】  そうですね。そのときには、何か審査員料の上乗せは検討しないのかのような冗談まがいの話もありましたが、まだ検討中です。
【小杉主査】  その辺りはユーザーサイドに立つといろいろ御意見あるかもしれないですね。
【高橋瑞稀委員】  いいですか。高橋です。
【小杉主査】  はい。高橋委員。
【高橋瑞稀委員】  先ほどのところで、単純に質問なのですけども、採択率が低いというビームラインがあるということで、逆に、我々、たんぱくのビームラインは効率が上がって、非常に、同じビームタイムで取れるデータ量がすごく増えたことで改善したところがあると思うんですけども、そういった効率化で改善できることがあるのか、ないのか。
【矢橋委員】  もちろんありますが、例えば……。
【高橋瑞稀委員】  それだけでは限界があるということなんですか。
【矢橋委員】  効率化は進めるのですが、やはり人気の装置というところにワッと集中してしまうというのがあって、なかなか難しいところもありますが、一方で、今言われたようなDX化は非常に重要ですので、それも先ほどから申し上げているように先端と汎用を、ツートラックとして両方やっていく必要があると考えております。
【高橋瑞稀委員】  単位当たりに取れる量を増やせば解決するという問題でも。だけではない?
【矢橋委員】  解決する問題もありますが、そうでない問題もあると。
【高橋瑞稀委員】  そういうのもあるということで。ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかにございますか。
【高橋正光委員】  すみません。
【小杉主査】  では、高橋委員。
【高橋正光委員】  よろしいでしょうか。今の人気が集中するビームラインあるいはステーションに関して、競争率が高くなったら、例えば同じ装置でも例えばビームラインを2本つくるとか、2個置くとかという必要性が出てくると思うんですけれども、一方で、同じ装置を整備するための予算が重複を理由に認められにくいなど、整備にあたり障害を感じた御経験や、対応を工夫されたことはありますでしょうか。
【矢橋委員】  もともと装置の重複というのは実は昔からありまして、それは例えば専用施設と共用ビームラインが同じ装置を2つ持っていた、だけども、専用施設のほうには共用ユーザーがアクセスできません、といったことがありました。それが先ほど申し上げたように、ある程度理研ビームラインに移行して、その部分の共用枠が活用できるようになっていますので、重複、類似の装置であってもアクセスがしやすくなっており、そこはメリットはあります。ただ、一方で、やはり特殊なオプションをつけている装置もありますので、そこについてはやはり先ほど申し上げたようになかなか解消はできないのですが、一般的な汎用的なものであれば、機器のところで分母を増やすことで競争率が緩和するということは実際にあります。
【小杉主査】  ほか、ございますか。阪部委員、どうぞ。
【阪部委員】  少し話が変わりますが、JASRIさんのご報告の参考資料の最後のページに記載されています人材の確保・育成に関しまして、一般公募、あるいは任期付については定期公募されていますが、どれぐらい応募があるのでしょうか。
【坂田理事】  どのぐらい応募があるか。
【阪部委員】  はい。公募されて、どの程度の応募がありますか。
【坂田理事】  1回10名、若干名で公募を出すときとか、10名ぐらいとか、数字を出すときもありますけれども、最近では、テニュアトラックの場合と、定年制研究員と2つあって、今の御質問はどちらですか。この2つの表のどちらについてですか。
【阪部委員】  それぞれ、もし分かりましたら。
【坂田理事】  定年制のほうは、こういうビームラインサイエンティストとか、加速器であったり、ビームライン光学系という3つの研究系があり、それによって違いますが、ざっくりですけれども、大体、2倍、1倍から2倍ぐらいです。テニュアトラックのほうは、人数を原則指定していなくて、いい人材があったらば採りたいというのがあって、ざっくりですけれども、大体10名ぐらいの応募が、これを始めてから1回に来ます。
 特徴は、ビームラインの装置の専門家というよりは、今までユーザーさんであったり、あるいは全く放射光を使っていない方とか、そういう方も応募されています。こういう施設でぜひ働きたいと。博士号を持っていて、こういうところで、ユーザーさんというんだったらもちろん理解できるんですけれども、例えば中性子の専門家だった人が、これから放射光をやりたいとか言って応募される方もいます。いろいろな方が興味を持って、応募されているという状況です。
【阪部委員】  そうですか。
【小杉主査】  これはテニュアトラックで1年か2年で判断するというのは結構短いような気がするんですけど。
【坂田理事】  3年ですね。2年間経過してから、3年目。
【小杉主査】  3年目になると。
【坂田理事】  はい。3年目の秋ぐらいを目安に評価をしていて、これも評価を変えて、毎年評価していくとか、評価だけでなくて、フィードバック、きちっと育成しようという方向で、今、やり方を整理中です。
【阪部委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほか、何かございますか。
【坂田理事】  先ほどの質問にちょっと補足をしてよろしいですか。
【小杉主査】  補足、大丈夫ですよ。
【坂田理事】  先ほどBL13XUでは35%と低いのが、6回という理由がメインではなくて、そこのビームラインに4つの装置がタンデムに置いておりまして、そういうことで、希望者も多いという理由がある。この35%の主因ではないかというふうに。
【小杉主査】  これは時代時代によって人気のものとか、もう廃れたものとかあると思うので、その辺りは、パーセントが低いところはどういう状況なんですか。
【坂田理事】  理研とも相談しながら、やはりコストパフォーマンスを上げるため無駄な投資はしないという理研の方針でやっていますので、うまく整理整頓がいく方向にやっていると思っています。
【小杉主査】  ほか、何かございますか。あと5分程度ございますが。では、岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  コメントみたいな話になってしまい、私自身もモヤモヤッとしているんですけど、SPring-8-Ⅱへのアップグレードになって、さらに研究できることがどんどん広がっていって、スループットも上がっていくと。一方で、本日の最初のこれにゲートウエイの話があって、いろいろな施設を有効活用していくと考えたときに、その先に何があるのかというところを考えたていました。やはり今の若い人、研究者だったり、学生だったりがもっともっと放射光や中性子、量子ビームを使っていくために、どういう研究環境があればいいのかということをどこかで議論されていってもいいのかなというのが少し思っています。もちろん福利厚生というのが大きな課題でもあるんですけども、何ていったらいいんですかね。もしアンケートを取られていたときに、例えば、大学院とか大学生の人たちがどんなふうに考えているのかとか、それこそ企業の若手研究員がどんなふうに考えていっているのかというのをアンケートみたいなのを取っていくと、何か将来的に必要な施策が見えてこないかなと思っています。
 企業にいて思うときがあるんですけども、やはり一人一人、結構違う考え方をしていて、多様性を感じることが随分あると思っていまして、企業でも個人個人にカスタマイズした教育や業務を与えるみたいなことをよくやるんですよね。やはりそういう研究環境の在り方というのも議論する必要があるのかなと思って、コメントさせていただきました。何か感じることはございますか。
【高橋瑞稀委員】  すごく分かります。モチベーションとかやる気、どういうリターンがあればやる気になるのかというのは本当に人それぞれだなというのは、会社にいると思いますね。
【岸本委員】  なので、もっともっと日本の若手の研究者の方々がこの施設を利用して、日本独自のいい成果を出していくためには、人材育成という話だけではなく、将来につなげていくために必要なことも考えていくことも必要かなと思っていまして、コメントしました。
【小杉主査】  そういう観点も評価の軸に入れて。これは施設だけで何とかなるという問題ではないので。
【矢橋委員】  そうですね。ありがとうございます。これもいろいろな観点があると思いますが、一つ、こういう施設の特徴は、世界との距離が非常に近いわけですね。ライバルというか、コラボレーターが世界中にいて、ある意味で、ビジブルな成果をバンと出すと、それは施設、ユーザーにかかわらず、バンと世界にデビューができるというところがあります。そこに対する若者のエキサイトメントというか、やっていて楽しいなと思うところは、おそらく普遍的ではないかと信じまして、しっかりとキャッチして、押し上げるようなことは日々考えております。
 ある意味で、そこが施設の中でも、コアの中のコアを支えていく人材はそういうふうにしてやっていく。あともう一つ、非常に重要なのは、そういうモチベーションを持った人材は施設の中ではなくて、大学からまず出てくるものですので、大学とのコラボレーションをより一層強化していくためのいろいろな方策を考えていきたいと考えています。
【岸本委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  学生を抱えている石坂委員、何かありますか。学生の目から見て、施設はどうあったほうがいいという。
【石坂委員】  めちゃくちゃ難しいんですけれども、施設がどうあるべきかというのは難しいんですが、さっきコメントしようか迷っていたんですけど、学生さんの課題採択の話があったと思うんですけど、あれはチーム、ドクターの学生が課題申請して通ってというのは何かすごくよくて、すみません。細かい話ではあるんですけど、放射光の利用を教員が申請して通って、それに一緒に行くというのは、もちろん入り口としてはいいんですけれども、自分で考えて、計画して、申請して、通った後に、直接ビームラインサイエンティストの方とやり取りしながら計画を立ててやるというので、すごくしっかりしたというのがありまして、どういうふうに審査されているのかなとか、どれぐらい採択されているかなというのでちょっと気になっていたところではあるんですけども、非常に地べたの話ではあるんですけれども、ああいうのを経験するとすごく、放射光のいろいろなものに、サイエンスもですけども、どういうふうに運営されているかとか、そういったことの解像度がぐんと上がったなと思いましたので、単なる感想なのですけども、ああいう、地道ですけれども、そういうところが大事だなと思っています。あまり大きな話でなくて、申し訳ないんですけれども、以上です。
【小杉主査】  いえいえ。ありがとうございます。
 あと、最後、山重委員、何か。会社の立場から。
【山重委員】  トヨタ自動車の山重です。先ほど、矢橋様から御説明いただきました12ページの資料についてです。採択率について、民間企業からの成果専有課題が原因で一般課題が圧迫される状況は、ございますでしょうか。
【小杉主査】  JASRIからあります? 今の。
【坂田理事】  今のですか。すみません。矢橋さんと言ったところで、矢橋さんのほうかなと思っていたんですけれども。
【矢橋委員】  有償課題のところが今拡大していますので、実際に確かに有審査課題のところが圧迫されるケースというのはあると思いますが、結局これは前提条件としてリミットをつけるか、それとも数字を見て、迅速にフィードバックしていくか、どちらかでやっていくということで、今、どちらかというと後者のアプローチをしっかりやっていこうと思っています。もちろん、あまりに大変なことになるとよくないので、フィードバックを迅速にかけていきたいという方針で進めております。
【山重委員】  ありがとうございます。我々のほうもエネルギー領域によって、他の空いているビームラインに分散させる等、検討させていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【矢橋委員】  はい。よろしくお願いします。
【小杉主査】  では、もうそろそろお時間ですので、この議論はまた次回以降も続きますので、次回にまた発言いただきたいと思います。
 それでは、事務局から何か、ほかに連絡事項等ございますでしょうか。
【稲田課長】  次回の委員会に関しましては、日程調整を別途お願いいたしますので、よろしく御対応お願いします。また、開催日及び開催方法については改めて御連絡を差し上げます。
 本日の議事録に関しましては、作成次第、委員の皆様にメールにて送付して、御確認の後、公表することといたしますので、よろしく御協力をお願いします。
 以上です。
【小杉主査】  それでは、以上をもちまして、第54回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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