量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第53回) 議事録

1.日時

令和6年4月19日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省内15階局1会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. NanoTerasu の今後の共用ビームラインの整備について
  2. 量子ビーム施設間の連携について
  3. その他

4.出席者

委員

小杉主査、高原主査代理、石坂委員、大竹委員、岸本委員、阪部委員、高橋正光委員、高橋瑞稀委員、唯委員、古川委員、森委員、矢橋委員

文部科学省

稲田研究環境課課長

オブザーバー

量子科学技術研究開発機構小安理事長、伊藤理事、高エネルギー加速器研究機構雨宮教授、高輝度光科学研究センター雨宮理事長、総合科学研究機構柴山センター長

5.議事録

【稲田課長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第12期量子ビーム利用推進小委員会の53回を開催いたします。
 本日は、委員の皆様におかれてはお忙しい中、御出席賜りまして、ありがとうございます。事務局を担当させていただきます研究環境課の稲田と申します。
 本日ですが、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催しております。全委員のうち、山重委員以外の12名の委員の皆様に出席いただいております。
 なお、議題2、量子ビーム間の連携に関連しまして、量子科学技術研究開発機構より小安理事長及び伊藤理事、高エネルギー加速器研究機構より雨宮教授、高輝度光科学研究センターより雨宮理事長、それから、総合科学研究機構より柴山センター長にお越しいただいています。
 続きまして、オンライン会議の留意点について御説明させていただきます。
 1番目でございますが、通信を安定させるために、御発言いただくとき以外については可能な限りマイクをミュートの状態にしてください。また、御発言されるときにはミュート解除を忘れないようにしてください。また、議事録を作成いたしますため、速記者を入れております。このため、発言前にお名前を言っていただいた後に発言いただくよう、お願いします。
 会議中、不具合などトラブルが生じた場合に関しては、事前にお知らせしております事務局の電話番号まで御連絡をお願いします。
 本日、会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるユーチューブの傍聴を認めておりますので、御了承いただけるとありがたいと思います。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。現在、そちらの画面あるいはZoom上の画面で共有されているところでありますが、皆さん、お手元に資料があるかどうかについて御確認いただけると思います。
 配付資料に関しては、資料1から2-4まで及び参考資料を配付しております。
 なお、乱丁、落丁ございました場合は事務局までお申しつけください。正しいものと交換させていただいております。
 何か御不明な点ございましょうか。会議中、御不明な点ございましたら、事務局までお電話いただけるとありがたいと思います。よろしいでしょうか。
 本日、参考資料について委員名簿を添付させておりますが、年度が変わりましたので、委員の御就任についてアナウンスメントさせていただきます。
 まず、本日より量子科学技術研究開発機構NanoTerasuセンターの高橋センター長に委員に就任いただいております。高橋委員、御挨拶をお願いできますでしょうか。
【高橋正光委員】  御紹介ありがとうございます。量子科学技術研究開発機構、NanoTerasuセンター長の高橋と申します。今回から量子ビーム小委員会の委員として加えさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。NanoTerasuは、我が国の軟X線領域の研究者が長く待ち望んできた高輝度軟X線放射光施設になります。そこをあずかる立場とともに、量子ビーム利用推進全体に対して微力を尽くさせていただきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【稲田課長】  併せて、脇本委員が御異動の都合で3月末に御退任となっております。現在、事務局のほうで、次回委員会までの委嘱を念頭に中性子関係の委員の委嘱を進めておりますので、御紹介させていただきます。
 長くなりましたが、それでは、小杉主査、よろしくお願いいたします。
【小杉主査】  小杉です。始めたいと思います。まずは議題1、NanoTerasuの今後の共用ビームラインの整備についてということで進めたいと思います。NanoTerasuは、御存じのように、この4月から運用を開始しておりますけれど、その状況を説明、紹介いただくとともに、量子科学技術研究開発機構、QSTにおける検討委員会等が開かれておりますので、その辺りを、新しく内海委員の後任に入られたQSTの高橋委員から説明いただきたいと思います。
 それでは、高橋委員、早速ですけど、よろしくお願いします。
【高橋正光委員】  承知いたしました。それでは、資料1-1に基づきまして、NanoTerasuの最近の話題から御報告させていただきます。表紙をめくっていただきまして、前回の量子ビーム小委員会までにもNanoTerasuの進捗状況については適宜報告させていただいてきたところですので、今日は、その後の動きについて御報告させていただきます。
 2ページ目に書いてありますのは、2024年の3月15日に行われた施設検査についての報告になります。NanoTerasuに関しては、使用するまでに幾つか登録機関による検査を経て、それで使えるようになるわけですけれども、これまで、一番最初は4月の使用前検査、ここはライナック、それから、蓄積リング棟に関わる使用前検査、これを最初に、皮切りにいたしまして、6月、11月と検査を進めて、無事それをクリアするというステップを踏んでまいりました。この一連の施設検査の最後の段階に当たる使用時検査、蓄積リング棟、リングトンネル及び実験ホールの放射線漏洩の検査を中心とする検査が去る3月15日に実施されまして、その下に合格証を並べて書いてありますけれども、その右側のほうがこの検査に対する合格証になります。こちらにお示ししておりますように、最後の施設検査に無事合格をいただきまして、これで全ての検査に合格したということになって、共用ビームライン3本、それから、コアリションビームライン7本、計10本のビームラインの使用が全て許可されるということになりました。これによって、本来ですと、この3月15日、即日、運用開始することができるんですけれども、こちらの施設の判断といたしまして、4月1日から運用を開始するということに決定をいたしました。
 めくっていただきまして、3ページ目になります。これを受けまして、4月1日から、NanoTerasuが無事、運用開始をいたしております。これに関しましては、QSTと、それから、PhoSICの合同のプレスによって運用開始を発表いたしております。主な内容になりますけれども、12月のビームラインの放射光導入に成功し、3月の施設検査合格を経て、4月1日より、予定どおりの稼働をいたしております。これによって様々な先端分野、それから、産業利用までの幅広い利用が可能になりましたので、日本の競争力の強化に大きく貢献する。学術、それから、イノベーション創出、産業の2つの利用制度を両輪として、産官学の多様な利用ニーズにこれから対応してまいりますという内容になります。これに関しましては、4月1日、ここにお示ししてあるように、各局によってテレビ等で報道されております。
 それから、めくっていただいて、4ページ目ですけれども、4月1日からNanoTerasuの管理運用体制についても変化がありました。整備のときは、国側は、QSTが加速器と共用ビームラインを担当する。敷地建物及びコアリションビームラインに関しては、地域パートナー、その代表機関がPhoSICですけれども、こちらのほうが担当するという形で、官民地域パートナーシップで進めてまいったわけですけれども、これに4月1日からの運用に当たっては、登録施設利用促進機関といたしましてJASRIさんが加わりまして、この3者で運営していくという形になりました。この3者が密接な連携、協力をすることによって、NanoTerasuを今後運営していくということになります。QSTは施設設置者となりまして、加速器の運用。それから、共用ビームライン、先端技術開発を担当いたします。JASRIさんのほうは共用課題の募集・選定と利用促進ということを担って、この2者の協力の下、国側の施設運営をして、共用ユーザーさんに提供していくということになります。一方、地域パートナー代表機関のPhoSICさんのほうはコアリション利用のマネジメント等を行いまして、コアリションメンバーの利用を支えていくということで、この連携の下でNanoTerasuの利用が進められていきます。この3者にまたがるような事項につきましては、QSTの中にNanoTerasu総括事務局というのが設置されまして、こちらで3者連携する形で運営を進めていくということになります。
 次に行きますけれども、このような形で運用を開始いたしまして、実際にユーザーさんのほうにビームの利用を開始したのが4月9日になります。この4月9日の時点で利用開始されたのは、PhoSICさんの担当するコアリションビームライン、ここに示しております4本のビームラインになります。こちらのほうは最初ということですので、プレス公開をさせていただきまして、ここに示しましたように、研究者と、それから、実際に使いに来てくださるユーザーさんから、ビームラインの公開と、それから、そこで行われている研究の紹介ということをいたしまして、マスコミ等に説明をいたしました。
 次のページに行きますけれども、このコアリションビームラインで、特に特徴的なのは、BL08Wにおいて、ここはウィグラーのビームラインになりますけれども、このウィグラーのビームライン、大きなビームであることを利用して、そのビームを分岐して、複数の実験を同時並行で進めるということを実現することに成功しております。
 その次ですね。7ページ目になりますけれども、こういったプレス公開の内容というのが、4月9日、各局、テレビ局にも報道されておりますし、あと、各新聞、それから、インターネット等においても記事が配信されております。
 めくっていただいて、8ページ目になりますけれども、今後の運転計画になります。2024年度ですけれども、上半期の運転スケジュールは既に決定しておりまして、これに従って、今、運転が進められているところです。2024年度全体を通してのユーザータイムは3,500時間から、加速器/BL調整等のための時間が2,500時間で、計6,000時間の運転が予定されております。
 今後ですけれども、5月18日にはNanoTerasuの運用開始記念式典、また、試験的共用開始が予定されております。3月からは、コアリションビームラインに引き続き、共用利用のユーザーの受入れも開始されるところになっております。
 最後、運用開始記念式典・祝賀会の御案内になりますが、NanoTerasuの運用開始記念式典が5月18日、QST、PhoSIC、JASRI、3者の主催によって予定されております。場所は、NanoTerasuの実験ホール、こちらに招待客の方に入っていただきまして、実施することになっております。その後、15時30分からは、NanoTerasu運用開始祝賀会ということで、場所を市内のホテルに移動いたしまして、こちらは、県、市、それから、東北大学、それから、東北経済連合会のほうにも主催に加わっていただきまして、祝賀会を行うという予定になっております。式典、祝賀会とも招待制で行う予定になっております。
 NanoTerasuの最近の話題としては、以上となります。
【小杉主査】  引き続きお願いします。
【高橋正光委員】  引き続き、今度は資料1-2を使いまして、NanoTerasu共用ビームライン整備検討委員会の中間取りまとめの報告をさせていただきます。この共用ビームライン整備検討委員会というのは、QSTが今後、NanoTerasuの共用ビームラインを整備していく上で、どのようなビームラインを造っていくことがふさわしいかということを外部有識者の先生方にお願いいたしまして、議論していただいたものです。こちらのほう、まだ最終的な報告書に至る前の中間取りまとめという形ではありますけれども、実質的な審議といたしましては終わっておりまして、最終的な報告書の概要、主要な部分について、今回御報告させていただきたいと思っております。
 めくっていただくと、目次ですけれども、ちょっと分量が多いのですが、2ページ、3ページ目から9ページ目までは、前回、内海前委員より説明された内容と同じ内容ですので、今日は割愛させていただいて、10ページ目から検討の骨子について御報告させていただくことにしたいと思います。
 10ページ目の共用ビームライン増設、考慮した項目というページからになります。増設の共用ビームラインのラインアップを検討するに当たって、考慮したポイント。いろいろな観点からの議論をいただきましたけれども、それを4項目に整理するという形で書いてございます。
 一番上の第1期整備共用ビームラインというのは、既に造られている3本の共用ビームラインのことになります。こちらでは学術の最先端を開拓するということで、3本の軟X線ビームラインの建設も行われて、今、立ち上げて、調整中になっております。それに引き続く増設のビームラインに関しましては、重視したポイントといたしましては、まずはユーザーニーズ、特に国際競争が激しい国の戦略分野において、研究機会が奪われないように、特に早期整備が必要であるということの観点から考えたものになります。それから、分野多様性、これは研究活動、多様な分野で高インパクトな研究を生み出せるビームラインがどういったものかといった観点になります。
 また、次は、NanoTerasuの強み、御承知のように、軟X線からテンダーX線領域での高輝度コヒーレント光源という強みを持つNanoTerasuを生かすにはどうすればいいか。また、それと並んで、NanoTerasuには、SPring-8等、既存施設の偏向磁石光源の10倍の明るさを持つ光子フラックスを提供する白色光源が設置できます。こういった2つの強みをどういうふうに生かしていくかという観点からの議論を行っていただきました。
 それから次は新規性開拓になりますが、いろいろな科学技術の中で、新しい、先端的な計測を開拓していく必要がございますので、そういったことをやっていくためにはどういったビームラインがふさわしいか。先を見据えた革新的な光源ビームライン開発に早期着手するという観点から議論をいただいたものになります。
 この4つの観点に基づきまして、次に、このビームラインをどういうふうに造っていくかという計画を検討いたしました。ビームラインを造っていくやり方ですけれども、11ページになりますが、その利用ニーズと大きさ、社会的動向、技術開発状況などに鑑みて、造っていくビームラインを幾つかのグループに分類させていただきました。ここに、左側、整備期共用ビームライン(グループ1)、高ユーザーニーズ共用ビームライン(グループ2)、それから、応用拡大共用ビームライン(グループ3)、先端利用共用ビームライン(グループ4)、それから、R&Dビームライン、このような形でビームラインをグループに分類して、それぞれ各期間にわたりまして、フェーズⅠは既に終わっているものですけれども、フェーズⅡ以降、どのようなフェーズに、どういった活動をして、それぞれのグループのビームラインを実現していくかということを議論してまいりました。このフェーズ、建設期間を考える、検討するに当たっては、SPring-8-Ⅱの改造による停止期間が2027年度に想定されているということも考慮に置きながら、どういったものを、そこに合わせるような形で造っていくことが必要かと、そういう観点も意識しながら立てていった計画になります。
 まず順番に説明していきますけれども、グループ2、ビームラインの選定になります。こちらのグループ2のビームラインに関しましては、共用ビームラインの目的である個人探求型・シーズプッシュによる科学技術の研究開発の分野の開拓を可能にする。多くの利用者に開かれたビームラインを整備するということが主眼になっております。このビームラインにおいては、利用ニーズが非常に高くて、かつ、需要に対してビーム供給が不足している分野、そこを重点的に整備するということを特に主眼に置いております。
 また、一方で、イメージングというところも非常にニーズが高いところですけれども、その中でも、軟X線イメージングという分野は、日本全体あるいは世界全体を見ても、そういったことが可能なビームラインの供給ということが非常に限定されたものになっておりますので、ここはNanoTerasuの特徴が特に発揮できるところであるということから、これに関しても、このグループ2のビームラインで、特にニーズの高いビームラインということで設定させていただいております。
 こういった考え方に基づきまして、具体的なビームラインのラインナップというのが13ページに一覧として書いてございます。グループ2の高ニーズ共用ビームラインということで、多極ウィグラーを光源とするビームライン4本、それから、軟X線の領域のアンジュレータを光源とするビームライン1本、計5本をここに、このグループにまとめさせていただいております。
 マルチポールウィグラーのビームライン4本に関しましては、ここ、エネルギー3-25keVと書いてございますが、NanoTerasuの強みである3-10keVというテンダー領域がもちろん主眼にございますが、光学系の僅かな拡張によって達成できる領域においては、出せるように、提供できるようにしておいたほうが施設としては多くのユーザーを受け入れられるということで有利であることから、25までと書いておりますけれども、あくまで主眼は3-10keV、テンダー領域での利用というところに置いたらいいという考え方になっております。
 続きまして、グループ3のビームラインのラインナップということになります。こちらはグループ3以降のビームラインに関しましては、時期としましては、2027年よりも後のフェーズⅢ以降に実際のビームラインが建設されていくことになりますけれども、そちらの整備計画につきましては、状況を見ながら、整備の計画を最適化していくということを前提にしたことを書いた計画になっております。フェーズⅢにおいては、拡大する応用範囲への対応を目的とした共用ビームラインを整備する計画をしております。
 拡大する応用範囲への対応というのはどういうことかと申しますと、各測定において様々な需要が生まれてまいります。普通の試料だけではなくて、例えばガス雰囲気中ですとか溶液中、あるいはいろいろな外場をかけたり、圧力をかけたりといった極限環境、特殊環境、あるいは、今までやられたことのない先進的な環境での利用、そういったことが出てくると考えられます。こういったことに対応できるXAFSやX線回析といった、特に汎用性の高い測定の整備ができるようにという、対応できるようなビームラインを整備するということがこのグループ3にまとめられたビームラインの特徴となっております。これはこういうガス雰囲気下や溶液中など、そういう実際の使用環境、動作環境あるいは製造環境に対応した、いわゆるオペランド測定、あるいは、その場測定の利用ニーズというのは非常に高いので、フェーズⅡにおいて整備されるXAFSのビームライン、あるいはX線回析等のビームラインにおいても、こういった測定は、一定程度、実際に行われるということは想定されます。
 しかしながら、こういったことを行っていくためには、有毒なガスに対する安全対策ですとか、あるいは実際に発生したガスの除害対策、そういったことを、そういう特殊な設備を必要とする場合があります。そういったものをユーザーさんが入れ替わるたびにビームラインで設置して、また、違うものと置き換えてといったことをやることは、汎用性の高い、すなわちニーズが高いビームラインで、それを頻繁に行うということは、ビームラインの効率的な利用ということから、ある程度困難が予想されます。そういった認識に立ちまして、フェーズⅡにおける、グループ2のビームラインの利用状況を見ながら、ある一定のニーズが想定される特殊環境の測定についてはそれを独立させて、別のビームラインで専門的に実施するような形にしたほうが、全体としてはビームタイムの効率的な利用につながるという観点から、このグループ3というビームラインを設定して、そちらで実施するという計画になっております。
 続きまして、今度はグループ4になりますけれども、グループ4の整備計画も状況に、技術の発展等に応じて最適化をしていくことが前提となります。このグループ4のビームラインにおいては、これはより先端的なビームラインということで、例を挙げますと、例えばマルチプローブ多機能放射光走査プローブ顕微法、SPMと放射光の組合せ、あるいはコヒーレンス、イメージングなどの先端的な手法、そういったものを積極的に取り入れて、サイエンスピークの創出を目指すという観点に立ったビームラインになります。こういったビームラインを実現するためには、光源の技術だけではなくて、複数の測定手法を組み合わせる必要があるマルチモーダル測定技術、あるいは、SPMの場合などですけれども、非常に高度な除振・安定化という、研究環境を最適化する技術など、技術開発課題の解決が、それが条件になるようなビームラインが含まれます。こういった課題は、大体5年ぐらい開発期間を見込んでおりまして、それを克服することなしには、共用ビームラインとして安定な整備が始めることができないという認識がございます。そのために、既存のNanoTerasuビームラインですとか、あるいは他施設のビームライン等も活用して、早期に、フェーズⅡの期間から研究開発等に着手して、技術課題の解決に努めまして、それを基にフェーズⅣにおいて共用ビームラインとしての整備、検討を確実に進めるという観点からまとめられたビームラインになります。
 次のページになりますけれども、この技術開発課題を抱えているビームラインというのは、エンドステーションの課題だけではなくて、光源や光学系といった、さらに上流の部分のR&D、研究開発が必要とするビームラインもございます。こういったものは、なかなか他施設ですとか、あるいは既存のビームラインで実施するということができなくて、ビームラインそのものに関わるところですので、施設者として、施設、そこのまさにNanoTerasuのその場でしか実施できないR&Dになります。こういったことは、先ほどのグループ4の中で実施するということはなかなか難しいわけですので、R&D、ビームラインという形で独立させて、ここで実施するということが必要であるということになっております。特にここで想定している技術開発課題というのは、NanoTerasuの強みであるテンダーX線を有効に活用できるような光学系、光学素子の開発ということで、これが非常に最重要課題と位置づけまして、これによって、例えば磁気デバイスですとか、電池、溶液などのオペランド測定、あるいは量子生命科学等、インパクトが大きく、新規性の高い計測技術の開拓を狙って、こういったビームラインを造っていくということを、そのために必要な光を提供できるようなビームラインを開発していくということを目的としています。ここにアンジュレータとウィグラーと2本、1本ずつ、こういったことを目的とするビームラインを設置していきたいと考えております。
 最終ページになりますが、こちらはまとめになります。各時期でどういったビームラインが、どのようにNanoTerasuの各ビームラインのポートが埋まっていくかということをまとめたものになりますけれども、まず最初の時期のフェーズⅡにおいては、グループ2のビームラインが建設されて、現状の3本のビームラインと併せて、合計8本のビームラインができる時期になるということで、ここの状況になるべく早く持っていきたいというのがQST側の計画となっております。その後、フェーズⅢ、フェーズⅣと行くに従いまして、先ほどのグループ3あるいはグループ4に相当するビームラインが加わっていって、このようなサポートの配分になっていくということを想定しております。
 以上、NanoTerasuの共用ビームライン整備検討委員会の報告となっております。
 以上になります。ありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございました。最近の状況と、それから、ビームラインの整備計画については、これまで2回聞いていますので、3回目の御説明でしたけれど、詳しく説明いただきました。それを踏まえて、資料1-3と1-4がつくられておりますので、その部分について事務局より説明をお願いいたします。
【稲田課長】  それでは、1-3、1-4について御説明させていただきます。1-3と1-4の関係でありますが、1-3が正本でございまして、1-4というのはそれを、ある意味のまとめ、かつ、対外的に説明するために図示をしたと、こういう構成になっております。資料1-3の内容について、まず御説明を差し上げます。
 まず第1、構成ですが、「はじめに」というところで、NanoTerasuの置かれる現状を書いた上、28本あるビームラインのうち18本はまだ埋まっておらず、今後の課題として指摘されているところであると。それを踏まえまして、今後のビームの増強計画に合わせて、特に国側の増強に関する計画を取りまとめるという性質を説明した上で、2ポツの共用ビームラインの増設について記載しております。
 丸の2番目でありますが、NanoTerasuの強みについて、先ほど高橋委員からあったように、長直線部からのアンジュレータから取り出すことができる軟X線からテンダー領域への最高輝度の光源と、それから、短直線部の多極ウィグラーから取り出すことのできる3keVから10keVの、これはテンダーX線領域になりますが、白色光を強みとしているということ、それから、ユーザーニーズ、分野多様性、新規開拓性も考慮した上で、共用ビームラインの諸元について設定するということ。先ほど高橋委員から説明ありましたように、共用ビームラインの計画については、段階的、計画的に整備することとしておりまして、今まで既遂されたものをフェーズⅠとした上で、フェーズⅡ、Ⅲ、Ⅳの3段階で増設することを言っており、フェーズⅠのところに関しては現状を説明した上で、フェーズⅡにおいては、ベンダーでは足りなかった高ユーザーニーズという観点から、主にウィグラーを光源としつつ、X線吸収微細構造であるとか、X線回析、X線イメージングといった基本的なビームラインの用途を持ったビームラインの5本の建設・整備を行うことが望ましいというところを書いてございます。
 また、フェーズⅢ以降に関しては、先ほどあったように、技術開発、その他の状況を踏まえて検討することとしておりますが、フェーズⅢにおいては、特殊環境下においての実験ニーズに応えることを目的としたビームラインを整備することが望ましい旨を記載してございます。
 併せてフェーズⅣ、それから、技術開発の部分についてのところが次の言及でございまして、今後の技術開発の必要なものに関しては、技術的な開発が必要であり、これを確保しないと、共用ビームラインとして共用することはできないけれども、エンドステーションの研究開発を主として行うものについては、フェーズⅢを目途に技術課題を解決し、フェーズⅣにおいて装備することが望ましいということ等を既に示しているところでございます。
 3ポツに関しては、パートナー側、コアリションユーザー側のビームラインの増設でありますが、これに関しては、最初の丸で基本的な考え方を示しつつ、2番目の丸において、産業ニーズを踏まえたセキュアラインの計画があることを記述し、併せて、3番目のポツでありますが、具体的な方策、整備に必要な財源、時期について、共用ビームラインと合わせて、PhoSICにおいて検討を具体化することを記載しております。
 4ポツに関しまして、これに関する小委員会からの留意事項としてまとめているものでございまして、2ポツ及び3ポツのビームライン増設計画は、軟X線領域における世界最高水準の放射光施設として成果を最大化するために妥当であるということの一般的な考え方を示しつつ、NanoTerasuは先端を常に目指すべきものであり、早期に整備することが望ましい。また、硬X線領域のフラッグシップであるSPring-8のすみわけに関しては、両施設間で十分な調整を行う必要があるということを注記してございます。
 ビームラインを増設する際においては、各ビームラインの特徴や強みを分かりやすくユーザーに対して示す必要があり、既存のビームラインとNanoTerasuにおいて新設されるビームラインの比較、及び、どういうふうな整備意図を持っておのおの使ってほしいのかというところに関して、ユーザーに対して丁寧に説明すべきであるということを記載してございます。
 併せて、最後のポツでありますけれども、不断のアップデートを行わなければ、NanoTerasuの陳腐化は避けられないということ。それから、世界最高水準の軟X線の放射光施設の恩恵を最大限利用するためには、早期にビームラインの空きポートを埋めることが必要であること。それから、パフォーマンスを最大化するためにも既存のビームラインを高度化する必要があるほか、自動化・遠隔化など、研究環境を整備する必要があるということ。加えて、これらを運営・高度化を担う人材の育成、確保についての取り組む必要があることをまとめているところでございます。
 次のページ以降、別紙でございますが、これはQSTから御説明のありました整備計画について、現在のところに参考として示しているところであります。
 なお、具体の設計であるとかスペックというところについては、今後の詳細設計が行われることを想定しておりまして、例えばスペックの、どのぐらいの波長領域を目指していくのかというところに関しては、あえてここに書くことによって、それに縛られるのもあれですので、落とした上の記載としてございます。
 資料1-4がそれを踏まえてのエグゼクティブサマリーでございまして、資料1から4に関する簡単な考え方というのを図示するというところを、先ほど読み上げたものに加えて、図示しているところ。それから、セキュアゾーンについてどういうところに整備するかというところを右下に絵として図示しているところでございます。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、今の資料の1-1から4までの議論をしたいと思いますが、今回の小委員会のミッションは、この資料1-3と資料1-4を仕上げることですので、その辺りの観点で議論いただきたいと思います。
 資料1-3をベースにフェーズⅡの概算要求等の話に持っていくという流れになると思います。フェーズⅢ、Ⅳについてはまだ先の話なので、主にフェーズⅡについての何か御質問等、高橋委員の説明にありましたらお願いいたします。では、どなたでも質問等ございましたらお願いします。
【高橋瑞稀委員】  本質的ではないかもしれないんですが、いいですか。半分、好奇心なんですけれども、2024年度の計画のところで、上半期分8月までという予定で示されていらっしゃるんですけども、後半というのは9月からなんですか。10月からなんですか。一番最初の資料で。
【高橋正光委員】  最近の話題のほうですか。1-1のほうですね。すみません。ちょっとお待ちください。
【高橋瑞稀委員】  と申しますのは、これまで放射光施設、夏の期間のシャットダウンが長くて、夏の後、いつ始まるのかというのが利用者の目下の協議事項でありまして、9月に始まる予定でいるのか、それとも9月中は調整期間であって、10月からを下期とするのかといった点について、今年度の予定がもしあればというのと、今後もそういったことは考慮されるのかといった視点でいただけるとありがたいです。
【高橋正光委員】  お答えいたします。9月は現在、すみません。今ちょっと忘れてしまいましたが、20日過ぎからの運転開始の予定になっております。
【高橋瑞稀委員】  8月後半から9月中旬まで、今年は整備期間ということになるんでしょうか。
【高橋正光委員】  はい。そういうことになります。これはいろいろな事情というか、背景がありまして、一つには、東北大学全体での施設停電というのがございまして、その間はどうしても運転できないなどの状況によって、このようなスケジュールになっております。
【高橋瑞稀委員】  実際、もちろん2024年にすぐ使うわけではないんですけど、そういった意味で、将来的に夏休み、夏季のシャットダウン期間をどのように考えるのか。それをSPring-8やほかの施設との兼ね合いといった点で何か調整されている点があるか。そういった点は何かありますか。
【高橋正光委員】  特にSPring-8及びほかの施設とスケジュールを調整してスケジュールを決めるということは、少なくとも今年度に関しては特に行ってはいないのですけれども、基本方針として、全ての月になるべく均等にビームのユーザータイムが提供できるようにということは配慮した上です。ただ、その上でも、全体の設備の点検ですとかそういったことはどうしてもありますので、そこはNanoTerasuだけでは動かせないところがありますので、そういうことも受けて、この8月のところについては、特にそういう形でシャットダウンの期間が設定されているという状況になっております。
【高橋瑞稀委員】  もちろんそれぞれの御事情があることはよく分かっていますので、ユーザー側のニーズとしてそういった意見があるということだけお伝えしたく。分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  もともと夏場もできるだけ動かすという話があったので、今年度はいろいろな意味で、立ち上げでバグ出しもあるでしょうから止めざるを得ないでしょうけど、今後に期待ですね。
【高橋瑞稀委員】  はい。来年以降に期待しています。
【小杉主査】  阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  教えていただきたいのですけども、資料の読み方ですが、資料1-2の17ページ、フェーズⅡで、共用ビームラインのアンジュレータとウィグラーがそれぞれ4と4で合計8になるのが2027年ですか。
【小杉主査】  フェーズⅠを足してですか。
【阪部委員】  フェーズⅠからで5本を増設するということですね。
【高橋正光委員】  はい。
【阪部委員】  そのうち5本はウィグラーが4つアンジュレータが1つということですか。
【高橋正光委員】  はい。
【阪部委員】  現行では、ウィグラーはなしということですか。
【高橋正光委員】  はい。
【阪部委員】  アンジュレータだけということですかね。
【高橋正光委員】  はい。そうです。NanoTerasuにおいては、アンジュレータとウィグラーそれぞれ14、同数設置できるポートが存在しております。現状、アンジュレータのほうがかなり多く使われておりまして、ただ、NanoTerasuの強みとしては、冒頭御説明いたしましたように、アンジュレータとウィグラーと両方それぞれありますので、そこを有効活用していくという立場から、ウィグラーを使った汎用的なビームラインをまず優先的に整備すべきという、そういう議論を踏まえた結論になっております。
【阪部委員】  はい。分かりました。あともう1点すみませんがうかがいます。先ほど年間スケジュールの話が出たのですけが、立ち上がったところなのでこのようになっているとは思うのですが、将来ある程度定常的になった場合、この加速器、ビームライン、調整等の時間の割合はどれぐらいになるでしょうか。これを見たときに、相当調整のほうがユーザー利用に比べて多いなという印象を持ったのですが、調整などの時間は将来的にはどれぐらいの時間が必要になるでしょうか。
【高橋正光委員】  今、御指摘というか、おっしゃっていただいたとおりで、2024年度最初ですので、やはり加速器及びビームライン双方とも調整項目、やることによって最終的な性能に達する必要がございます。ですので、調整時間は多めに取ってございまして、ユーザータイム3,500に、調整時間2,500という、合計6,000という、そういう配分になっております。これが2025年には、予定ですけれども、ユーザータイム4,500、加速器、BL調整を1,500、2026年度以降は5,000と1,000というふうにユーザータイムのほうを増やしていくという、そういうところが予定になっております。
【阪部委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  ほかに。高原委員。
【高原主査代理】  NanoTerasuのビームの有効活用のためには、やはりテンダーの下の領域のところをどううまく使っていくかというのが重要だと思いますけれども、これは今回のグループ2のところで、下限が3keVになっていますけれども、これはどこまで下げることが実際可能なのでしょうかという、かなり難しいところかもしれないんですけど。
【高橋正光委員】  その3がどこで決まっているかといいますと、多極ウィグラー光源の場合は、5ページ目に多極ウィグラーのスペクトルを示してございます。多極ウィグラーの特性といたしまして、低エネルギーになるほどアンジュレータ的になってまいりまして、白色光源でなくなってしまうんですね。白色光源として使うには、今の多極ウィグラーの設計ですと大体3keVより上ということになっていまして、そこで決まっております。これを低エネルギーまで平滑になるようなパラメータを作ればということもあるんですけれども、現実になかなか難しいという状況です。
【高原主査代理】  だから、その辺りがR&Dの課題の一つになっているということなんですか。
【高橋正光委員】  ウィグラー、それも含まれるかと思いますが。
【高原主査代理】  ありがとうございました。
【小杉主査】  岸本委員、お願いします。
【岸本委員】  すみません。報告をありがとうございました。資料1-3の3ページの一番最後のところでコメントさせていただきたいです。一番最後の下から3行目のところに、「自動化・遠隔化、迅速な解析等を可能とする研究環境を整備する」とありますが、本当にこれは重要と考えています。私も、4月9日にNanoTerasuで実験させていただいて、想像以上にすばらしい施設になっていて、非常に使いやすくもあるというのは感じました。一方、目標としているビームラインの性能に対して、今、どこに現状があるのかという情報が実はとても大切だなというのが改めて分かったところがあります。ほかの放射光施設はかなり仕上げられて、どういう性能が出るのかというのは分かっているんですけど、このような新しい施設というのは、本当にデイリーで物事が変わっていくと思うんですね。どんどん変わっていくと。そういった中で、この研究環境整備の文章の中に情報をきちんと提供するようなことを入れていただきたいと思います。これはユーザーにとって物すごく大切な情報だと思いますので、そういったことをホームページでもいいと思いますので、できるだけタイムリーに提供していただけるようにしていっていただけると、ユーザー側はもっと使いやすく、また、新しい研究ができるのではないかなと思ったので、ぜひ御検討いただきたいなと思った次第です。
【小杉主査】  いろいろな意味で、試料周りが複雑化してくるということがフェーズⅣに向けてありますので、そういうのはやはり自動化で何とか使いやすくするようなことを最初から考えないといけないので、最後のところは付け足しのように最後に書くのではなくて、特出しで出していただいたほうがいいような気がします。
【岸本委員】  それとあと、今のビームラインの情報提供ですね。
【小杉主査】  そうですね。
【岸本委員】  これはやはり施設を使いに行くときに、今できることで最大のパフォーマンスを出したいと思うのが多くのユーザーの気持ちだと思いますね。
【高橋正光委員】  岸本委員、コメントありがとうございます。今の情報提供に関してコメントさせていただきますと、4月1日からNanoTerasuのホームページをリニューアルいたしております。まだ立ち上げたばかり、運用し始めたばかりですので、まだまだ不十分な点はたくさんあると思いますけれども、そこを充実させることに毎日努めておりますので、今後、ユーザーの方に有益な情報がどんどん出てくるかと思いますので、いろいろと御指導というか、インプットをよろしくお願いいたしたいと思います。ありがとうございます。
【小杉主査】  岸本委員の経験は、PhoSIC側のビームラインの経験ですよね。
【岸本委員】  はい。そうですね。
【小杉主査】  PhoSIC側のビームラインについて似たような対応、どういう窓口でお願いするんですか。
【高橋正光委員】  今申し上げた、リニューアルされたサイトというのは、共用ビームライン、コアリションビームライン両方、一緒に、一体化したポータルサイトになっておりますので、そこをまず見ていただければ、全ての情報が集まっているとなることを目標に整備しておりますので、そちらで情報を得ていただけるようにしていきたいと思います。よろしくお願いします。
【大竹委員】  よろしいでしょうか。理化学研究所、大竹ですが。
【小杉主査】  お願いします。大竹委員ですね。
【大竹委員】  はい。
【森委員】  その次、お願いします。
【小杉主査】  では、その後、森委員でお願いします。
【大竹委員】  すみません。資料1-1の4ページのところで、今年度に入ってからの体制でJASRIさんが入られている。こういった形で、もともとNanoTerasuのほう、もちろんPhoSIC、コアリションメンバーという形で新しい取組をされておりますが、この3つになったときの横串的な役割ですとか、まさに今、話題に上りました、やはりスピーディーな情報提供ですとかそういったところを統一的にやっていく、またはそういった今後の取組の御予定、計画を明確に教えていただけるとありがたいと思いますが、いかがでしょう。
【高橋正光委員】  御質問ありがとうございます。では、今の1-1の4ページの図を使って、もう一度御説明させていただきます。3者の横串的な対応する窓口がまさにNanoTerasu総括事務局という部署でありまして、こちらがQSTの中の一部署として設置されておりますけれども、こちらにPhoSICさん、あるいはJASRIさんからも実際に人を出していただいて、そこで3者一体となった運営を可能にするものとして、4月から新たに立ち上げた組織になります。この中で、施設運営の全体計画、それから、安全、施設管理、情報セキュリティー、データマネジメント、あるいは広報、つまり、この3者の全てにまたがるようなことを一手に、一括して引き受ける事務局ということになります。
 さらに、この3者の意思をまとめて、NanoTerasu全体としての経営方針を決定する機関としまして、その上に書いてあるNanoTerasu運営会議というのが設けられておりまして、こちらも関係する3者からの、東北大学さんからの構成員を基にする会議になっておりまして、こちらで統一的な運営方針を決めていくという、そういう立てつけになっております。御説明になっていましたでしょうか。
【大竹委員】  ありがとうございました。そういう意味では、東北大学さんがお入りになるのは、クレジットに入るのは運営会議のところということですかね。
【高橋正光委員】  はい。東北大学さんからも運営会議のほうには参加をいただいております。
【大竹委員】  分かりました。ありがとうございます。
【小杉主査】  それでは、森委員、お願いします。
【森委員】  ありがとうございます。4月からスタートして、利用も始まったということで、関係者の皆様の御尽力に本当に心から感謝したいと思います。NanoTerasuの強みとして、コヒーレント光が世界一のフラックスで、軟X線を使って世界一のサイエンス、および産業利用ができることを非常に期待しております。その中で、1-2の11ページのところで、今、3本ありますが、現時点から増設を考え、計画を立てるということに賛同させていただきます。
 そして、新規開拓性、つまり先を見据えた革新的な光源開発に早期着手ということで、エンドステーションだけではなくて、光源のほうも含めて、研究開発、R&Dをすることはとても重要だと思います。このグラフを見ると、R&D BLは、グループ5ということで、一番下に書いてあります。一方、2~3においてフェーズⅣに必要な研究開発に早期に着手するともありますが、R&Dの重要性というものに関して、強調されていない感じがしております。R&Dを進めながら世界一の放射光の中で新しいサイエンスを展開していくということをきちんと示したほうがいいのかなということで、どのようにお考えなのかということを聞かせていただきたいと思います。
【高橋正光委員】  質問ありがとうございます。御回答いたします。R&Dビームラインに関しては、御指摘があったフェーズⅣのところで最終的な共用化ということが書いてあるので、そこまでは何もしないのかということの御指摘かと思うんですけれども、決してそういうことではなくて、これはビームラインとして完全に提供できるのは先になるかもしれないけれども、かなり挑戦的な内容のビームラインですので、そうなるかもしれないけれども、そこに向けて必要な研究開発はもう今からいろいろな場所を使って、手段を使って進めていくというところが、「研究開発」と書きました、色が薄い、そこは主観かも分かりませんけれども、濃い緑で示してあるところでございます。
【森委員】  パワーポイント、一つ前の色の薄いバージョンを見ていました。早期に進めていかれるということも分かりましたので、是非そのようにお願いいたします。。
【高橋正光委員】  はい。これがいつ実現するかというのはなかなか、研究開発ですので、明言することは難しいんですけれども、なるべく早く実現できるように、ここは着々と進めていきたいと考えております。
【森委員】  ありがとうございます。
【小杉主査】  これはR&Dのビームラインのところは、共用とは書かれていないんですが、何か受皿としてQSTで考えるのかというところもあると思うんですけど、その辺りは設置者としてどういうふうに考えておられるんですか。
【高橋正光委員】  そこはまだ検討の段階なのですけれども、一つのやり方としましては、最終的にはもちろんテンダーX線領域の光を広く使っていただくということで共用化をするということを前提に、ただし、それを実現するためには開発期間が非常に長くかかるので、その間はR&Dを中心とした活動を進めていくというやり方でいくのが一つのやり方かと想定しているところです。
【小杉主査】  ただ、ここはQSTの中だけでやるのではなくて、広く、学術を含めたいろいろな提案を受けて、R&Dを進めるという形が必要かと思うんですけど。
【稲田課長】  少し補足させていただきますと、これは理研のSPring-8も同様なのですが、共用促進法の補助事業において共用ビームラインの建設を行うこと自身は可能となっています。したがいまして、どこの主体で、どのように運用していくかというのは、具体的に計画を立てた上でやるんですが、観念上はオールジャパンのR&Dを念頭に置いた上で、実際にR&Dをする主体が責任を持って研究開発をしていくと、こういう体制になっているのが現在の状況です。
【小杉主査】  分かりました。阪部委員、お願いします。
【阪部委員】  R&Dのほうが気になっていまして、フェーズⅣから唐突にR&Dが現れるのではなくて、フェーズⅡの段階からR&D専用のラインがあってもいいのではないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。特に資料1-3でも書いていますように、「常に先端であるべき」ということで、委員会からの留意点にもあります。そのことも勘案して、フェーズⅣから一つの共用ビームラインとしてあるのではなくて、フェーズⅡの段階からR&D用のビームラインがあってもいいのかという印象を持っていますが。
【高橋正光委員】  コメントありがとうございます。全くおっしゃるとおりで、そのように考え、そういう可能性をこの図は否定しているものでは全くございません。フェーズⅣで「共用化」と書いているのは、そこで実際にユーザーさんにビームとして供給できる。「そこ」というのもフェーズⅣと限っているわけではないですけれども、将来はそういうふうに提供するものを開発するということであって、開発そのものは前の段階から、可能ならば進めていきたいと考えております。
【阪部委員】  それを何か具体的に見える化しておいたほうが良いように思いますが。フェーズⅡのアンジュレータとウィグラーのところで、プラス1の4、プラス4の4というところとは別に、フェーズⅣにつながるようなものを考えるのはいかがでしょうか。これは概算要求、財政の問題もあるので簡単なことではないかもしれませんが、姿勢を示すのは異議があるかと思いますが。
【高橋正光委員】  研究開発にもいろいろな段階、内容がございますので、最初からビームラインを、新しいビームラインを造って、進めるだけではなく、例えば要素技術の開発といったことからやっていく必要があるという考えを持っております。ですので、それ用のビームラインの早期着手というのが、それが最適解かどうかというのがありまして、例えばテンダー領域で使えるような光学素子の開発自体は、例えば既存のビームラインですとか、そういうところをやっていきますので、できるところから着実に進めていって、なるべく早期に目的とするテンダー領域の光と、先端的な光を提供できるようにしていきたいというのが施設側としての考えているところでございます。
【稲田課長】  少し補足させていただきますと、資料1-4でそれを考えた、同じ図が描いてあるんですが、ここのグリーンのところが、全てこれはR&Dでありまして、その意味だと、直ちにフェーズⅢで理解できるようなものについてはフィージビリティスタディという名前でやっているんですけど、これはどれがフィージビリティスタディであって、どれがR&Dで、どれがビームラインにおける技術開発かというところは、実際におのおのの技術を見つつ、開発フェーズに合ったものとして整理されていくと、こういう考えで、ここでは整理しているところです。いずれにせよ、緑色全体がR&D要素を持つものでございますので、その意味だと、研究開発していても早いものができるということに関しては、入れ替えというものもちろん考えますしということを示す図としてございます。
【小杉主査】  世界中の施設でR&D専用のビームラインを持っている施設は多分ないに等しいと思うので、実際ビームラインを利用しながらいろいろ開発をやっているというのが現状だと思います。だから、そういうところで、一つのビームライン、R&D専用にNanoTerasuで造るかというと、ちょっとそこは、造るとなったらまだ大分議論は必要かなという気はしますし、今ある立ち上げる中で開発要素を入れていってというところで、場合によってはほかの施設も使いながらというのはあるかと思います。
【阪部委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
【小杉主査】  大体時間は来たんですけれど……。
【雨宮理事長】  委員ではないですが、コメントいいですか。
【小杉主査】  はい。では、雨宮理事長。
【雨宮理事長】  資料1-3、1-4で、フェーズⅡでの高ユーザーニーズという点は非常に重要だと思うのですが、SPring-8-Ⅱのバックアップとか、いつまでにという時間軸がすっぽり抜けているということに関してのコメントです。資料1-2の11ページでは、フェーズⅠ、フェーズⅡは時間軸が入っています。フェーズⅡは2027と。しかも、そこにSPring-8の停止期間を考慮してと。12ページにも同じようなことが書いてあります。ところが、1-3と1-4になると、その点が抜けています。フェーズⅡは非常に重要だと思うので、どのタイミングで実行できるかというのは、予算もあるし、人もあるし、あと、営業運転しながらのビームタイムの合間にやらなくてはいけない等々、いろいろ難しい点があるので、時間軸をしっかり入れておく必要があると思います。3本造るよりも、営業運転しながら4本造るというのはすごくハードだと思うので。そこの大変さが共有できるような文言にしておいたほうがいいかなというのが印象です。オブザーバーですが。
【稲田課長】  ここの記述に関しては、おのおのの計画というところに関しては、もちろん計画として委員会では立っているんですけど、これは予算が実際ついてみてコミットできたときに、どこまで書けるかというところがありまして、その意味だと、まだ完全におのおのについて決定されていない時点において書くというのはなかなか困難かなというところで、このような書き振りにしているところでございます。
 ただ、いずれにせよ、先ほど申し上げた、指摘があったように、オールジャパンで放射光施設のユーザーのニーズをどう満たすかというところを考えたときに、当然、1個のところが止まるのであればそれを補って、そのユーザーをどういうふうに回すのか。あるいは今後、SPring-8-Ⅱというのが硬X線のところにフォーカスするのであれば、軟X線のユーザーについてはNanoTerasuのほうに集約するという話も当然出てくると思っておりまして、ここら辺、どのタイミングでどういうものをその時点での状況を踏まえてやっていくかというのは今後、これはつくったらおしまいというわけではなくて、議論しながら逐次、改定の記載、あるいは新たな計画を立てていくものと理解してございます。
 以上です。
【小杉主査】  よろしいですか。
【雨宮理事長】  はい。
【小杉主査】  古川委員、お願いします。
【古川委員】  古川です。1-3の一番最後ですけれども、ユーザー側からのコメントとして少しお伝えします。もしビームラインを使いに行くときに、何が大事と、やはり運営の状況、サポート体制というのが今現在どんな状態になっているのかというのも、使いに行くときの決心のとても重要なファクターになります。そこで、その情報を提供していただきたいという、それが一つ。
 もう一つが、高度化を担うための人材確保や育成にも取り組む必要があると書いてあるんですけど、必要があるのはごもっともなのですが、「必要がある」ぐらいの文言で止めておくとなかなか、ちょっと緩いかなと思ってしまうので、その計画とか、計画を立てて、それを公開する、または今の現状と、将来に向けた取組について何かすごく、もっとオープンに開いていると、利用者側からはすごくハードルが下がるかなという気はいたします。
 コメントです。
【小杉主査】  時間が押していますので、まだまだ御意見あるかもしれないし、資料1-3と1-4は形として出していかないといけないものになりますので、この委員会が終わった後でも意見がございましたら事務局のほうに届けていただいて、前回、SPring-8-Ⅱの報告と同じようなプロセスで、私のほうで最終的に事務局と打ち合わせて仕上げていきたいと思いますので、私に一任というところで進めていってよろしいですか。
 では、この委員会が終わった後、事務局からいついつまでに意見を出してほしいという連絡が来ると思いますので、その対応をよろしくお願いいたします。
 では、議題2のほうに進んでよろしいでしょうか。議題2は、「量子ビーム施設間の連携について」ということで、今日は御三方にプレゼンをいただくということになっております。一つ一つやっていくと、質疑応答を受けていると時間も足りなくなると思いますので、議事の進行上、3つのプレゼンをまとめて質問なしで説明いただいた後、意見交換するという形にしたいと思います。
 では、まずその前に資料2-1という、これまでの経緯を説明するのを事務局でつくっていただいておりますので、資料2-1のほうから。
【稲田課長】  はい。資料2-1についてですが、これは書いてあるとおりでございまして、これまでどんなことがあって、どういうことを我々がこれから気にしなくてはいけないのかというところをおまとめしたものでございます。これを念頭に置いた上で、各委員のプレゼンをお聞きいただけるとありがたいと思います。
 以上です。
【小杉主査】  それでは、次の資料2-2について、QSTの小安理事長からの御説明をお願いいたします。
【小安理事長】  ありがとうございます。小安でございます。それでは、御説明させていただきます。NanoTerasuの共用が開始となり、そして、SPring-8-Ⅱの開発整備に向けた検討もめどがついてきたということで、日本の放射光施設については新たなフェーズに移行したと思います。このような中で、最先端の大型施設を使い倒すということは非常に重要なことであります。それがイノベーションにもつながる。その際に、放射光施設だけではなくて、QSTや民間の施設も含めて、皆さんが、どうやってうまく使えるかということを考える必要があるというのが私の問題意識であり、その中でワンストップサービス機能について御提案させていただきます。
 最初のページに書いてあるのは、これは最先端の大型研究施設として、特定放射光施設、それから、中性子線の施設、それから、スパコンがあり、これらは共用法の対象です。その周りに、さらにやや小型になりますけど、それでも一つの大学で整備することがなかなか難しいような先端研究プラットフォーム等々があります。ユーザーが自分の目的に合った研究施設をどのように探せるのかということが非常に大事なことだと思っております。
 ページ数を入れていなくて申し訳ありません。1ページおめくりいただきまして、これは大型の研究開発基盤施設をどうやって利活用するかという問題意識です。国が、アカデミアから企業まで、多様な研究者が利活用できるよう施設を整備しているわけですから、それを皆さんに使い倒していただくためにどうしたらいいかということを考えたいということです。真ん中に記載しておりますが、当然専門家の皆さんはお分かりですけれども、ユーザーから見ると、どの施設を使ったらいいか分からないことは結構多いと思います。現在のところ、特定先端大型研究施設にはそれぞれ登録機関があり、そこに相談に行くということになっていますが、特に最近、産業界からの利用が増えている中、自分の目的、自分の問題解決に、どこに行ったらいいのかということがなかなか分かりにくくなっているのではないかという問題意識を持ちまして、こういう方々に対して、国としてワンストップサービス機能を整備、提供していただくべきではないかと考えました。
 次のページを御覧ください。ここにも同様の記載をしておりますが、あるユーザーさんが自分たちの研究開発に利用したいというときに、どこへ行けばいいのかというときに、集約された窓口があると非常に役に立つはずです。したがって、そのような窓口には、コンサルティングやコーディネーション機能を担っていただく必要があるだろうと考えています。つまり、目的に応じた最適な施設や装置などをコンサルティングして、いろいろと相談に乗る。そして、最終的にはその目的に合致した具体的な施設を利用していただくためコーディネートする。これは、現在のところは個別の登録機関へ橋渡しするということになるかと思います。
 さらに、世界の類似施設での利用例を調査することも必要になると思います。今後はいろいろな施設を複合利用することによって求める研究開発成果が最大化できると思っておりますので、先ほど情報提供が重要だというお話もございましたけど、そういう意味で、世界的な潮流、あるいは我が国でどのようなことが可能なのかという調査、その情報提供というのは非常に大事なことであると思います。それから、そのような調査に基づいて、いろいろな利用者、利用希望者からの相談内容の把握、欠けているものは何なのかということを分析する必要がありますが、最終的には利用者との連絡調整まで担っていただくと利用者にとっては非常にありがたいのかなと思います。それから、当然のことながら、得られた成果の広報機能、さらに、共用を促進するための広報にも取り組んでいただくことが大事なのではないかと感じています。
 それで4枚目は、これが一番言いたいところで、これまで述べたことをここにまとめて記載しています。トップダウンによるワンストップサービス機能の統一化をすることによって、大勢の利用者に対してサービスが提供できる。そして、これまで放射光施設を利用していなかった利用希望者にも利用していただける。また、放射光施設等と中性子施設を併せて利用していくようなことが可能になるのではないか。本当は計算機資源も非常に重要であり、私は本来、「富岳」も対象に加えるべきだと思いますが、一度に全部というのはなかなか無理があるかもしれません。NanoTerasuは日本で10個目の放射光施設であり、世界全体でも五十いくつですから、日本は実に、非常にたくさんの放射光施設を持っています。このことを踏まえると、国内の他の放射光施設とも横串でつなぐことは非常に大事だと思います。この場合には、文部科学省内の分担として科政局と振興局と所掌が異なるなどいろいろな課題はあると思いますが、これについても今後、将来の問題点としてはそういうところまで検討していただくことがいいのではないかと思っています。
 そして、そのようなワンストップ機能には、専門的な知識を有するコンサルティングを担う人材、言わばコンシェルジュですけど、そのような人材の確保、育成が必要です。そのためには、どのように適切に評価し、どのようなインセンティブを与えることができるかが非常に大切であり、この点については、皆さんで考えていただくことが大事かと思っています。
 将来的には、先ほども申し上げましたけども、この共用法の対象とされている施設だけではなく、その他の先端的な大型研究施設に対してもワンストップサービスの導入を実現することは、我が国が有する科学技術資源の利活用の最大化に繋がると考えている次第です。
 さらに、大学共同利用機関との機能の整理や連携についても別途議論する必要があると思っております。ただし、この点については将来的な検討課題と思っております。直近の課題として、今回整備されたNanoTerasu、それから、SPring-8、SACLA、そして、中性子施設について、ぜひワンストップサービス機能を国のほうでも検討いただきたいという問題意識からこのようなペーパーを用意させていただきました。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、資料2-3に基づき、産業界からの御意見ということで、岸本委員からお願いしたいと思います。
【岸本委員】  では、資料を共有させていただきます。ありがとうございます。
 それでは、改めまして、住友ゴムの岸本でございます。当社における量子ビームの連携活用ということで御説明させていただきますけれども、我々の経験であって、全ての事例には当てはまらないとは思いますが、ひとつ御参考にしていただければなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 当社で、連携利用を推進してきた経緯を説明させていただきます。SPring-8をはじめとする放射光利用は、2001年からスタートさせてきました。その当時、放射光を利用することで多くの材料知見が得られるということは分かっていましたが、複雑材料の極みであったゴム材料の解釈というのは、我々の想像を超えているものでした。
 一方、社内のスパコンだけではなく、2005年頃から、大型スパコンの活用を進めることで、多くの仮想実験ができるようになってきました。しかし、シミュレーションモデルというのは、いかようにでもモデルが作れてしまう部分がありますので、実際を反映しているのか分からないため、私たちが知っている理論の範囲を超えるというのはなかなかできなかったという背景があります。
 そういう中で、放射光から得られる物質・材料構造を忠実に反映したモデルをつくってシミュレーションを行い、人の解析では得られない新たな知見を獲得することで、環境、エネルギー、資源に貢献するタイヤ材料の開発を加速させていきたいということを狙いとして、この産・学・施設連携というのを進めてきたということになります。
 最初の頃は手探り状態から始めてきましたが、産・学・施設連携によって、ここに示しますように、硬X線あるいは軟X線、さらには中性子といった、非常に多くの量子ビームを活用したゴムの計測技術を確立させていきながら、タイヤ材料にイノベーションをもたらすための研究を実施してきました。
 その結果、生み出してきたフラッグシップタイヤというものがこちらになりまして、SPring-8、J-PARC、さらには、SACLA、SAGA-LSと様々な量子ビーム施設を活用しながら、地球シミュレータやスーパーコンピュータ「京」を活用することで、これまで私たちが思いつきもしなかった材料開発のヒントが得られ、例えば車の燃費性能を6%向上させるようなタイヤ、さらには耐摩耗性能を51%、約1.5倍ということですけども、向上させるような材料技術、タイヤの性能を2倍長持ちさせるような技術開発などを行ってきました。
 そして、現在、最新の成果として、このアクティブトレッドというものを開発しておりまして、これは路面の環境に応じて、ゴムの性能が変化するというもので、このタイヤ開発においても量子ビームを応用させてきました。ここに示しますように、従来のタイヤというのは、ウェット路面では制動距離がどうしても長くなってしまいましたが、我々はこういった、ゴム中の分子が水に反応することによってスイッチングし、機能が変わってウェットグリップ路面でもドライ路面と同様の制動距離を保つことができるタイヤが実現でき、今年の秋に向かって生産を準備しているところになります。
 やはりここでも重要となったのが量子ビームです。こちらに分子スイッチングをUVSORのSTXMで機能を可視化した事例になります。この画像でゴム中に含まれている黒い部分が、シリカ粒子のネットワークというものになるんですけれども、乾燥時に比べて、加湿すると像が不鮮明になっています。これより水を吸収したということは分かるんですけども、さらにここのスペクトルを見ると、きちんと加湿することによってイオン化のピークが現れており、証拠を突き止めて開発技術の立証ができたということになります。また、吸水状態を中性子イメージングで可視化していまして、これはデモンストレーション的にやっていますが、縦のほうが従来ゴムで、横の糸のようなものが、今回のアクティブトレッドで用いたゴムとなります。これを吸水させてイメージングすると、このように吸水しているという証拠を見える化させることができるということになります。このように製品を作り出すために、科学的に立証して、お客様に届けていくということも必要ですし、この連携利用により多角的に研究して、イノベーションとも言えるタイヤゴム材料の開発が行われたということになります。
 それでは、当社が実施してきた連携利用の範囲について、例えばルーチンだとか、チャレンジングな実験、あるいは成果専有、非専有といった軸で整理していきたいと考えています。このような軸で整理しますと、左上は、応用や実用研究ということに該当すると思いますし、右下になってくると基礎研究に該当すると思っています。それに対して、一般的には産業利用の領域をマッピングすると、この水色の領域になるのではないかなと考えています。もちろん産業界でも、国プロなどで利用した先進的な研究では、右上のような基礎研究の要素が強い領域も実施していると思います。また、左下のこの領域ですね。この領域も今後重要になってくると思っていまして、どんなデータが出るのか、あるいは知見が出るのか分からないので成果非専有で実施するけれども、大量のデータから、情報科学により、人では得られない新たな発見ができるようになっていくと、ここは新たな応用実用研究へと進展していくトリガーになっていくのだろうと思っています。
 そして、当社が行ってきた施設連携をした領域というのがこの青の部分になります。なぜこの領域だったのかということですけども、従来の延長線上での開発ではなく、新たな知見やヒントが必要で、企業単独で達成することは困難であったため、産学施設連携が必要となったわけです。このようにして整理して考えてみると、どの範囲での連携利用ニーズが多いのかに合わせた制度設計というものを今後考えていくことが必要になるのではないかなと思っています。これはあくまで我々の事例です。
 また、これは当社の事例を基に、連携利用するときに課題だと感じた点を御紹介したいと思います。まず課題申請です。課題申請においては、施設ごとにフォーマットが異なり、書き換えないといけない。また、そういうことをやると、どうしても見落としや誤植によって、採択に影響した可能性もあるのではないかなと、そういうコメントをいただいたこともあります。
 また、それぞれの施設ごとに訴求していくので、やはり連携性を訴求し切れないんですね。書き切れないということがあります。また、目的が一つで、同じ施設で、複数のビームラインを利用する場合というのは、どうも採択されにくいのではないかと感じたこともあります。それは多くのユーザーに機会を与えるために必要だったのかもしれませんけども、そういったことを感じたことがあります。また、実験技術を記載する際に、施設に応じて高い専門性が必要で、ここはかなり難しかったということになります。
 次に、連携課題の部分採択についてです。これは前提が成果非専有で言いますが、企業の場合、一度にデータがそろわないと判断できないケースは必ずあると思っています。どれか一つのビームラインのデータが欠けても、研究開発が半年だとか数か月遅れるということは普通にあるわけです。なので、そういったところで、どれか一つが欠けてしまうと非常に痛手です。しかし、申請された全課題の順位づけなので仕方がない部分もありますし、特にチャレンジングな実験を含む場合は、それが不採択になると、次のアイデアが枯渇するということもあるので、そういったところは課題として感じたことがあります。
 また、放射線従事者登録でいろいろと文言が微妙に施設ごとに変わっていて困るようなことはあるんですけども、これは今回は割愛します。このように感じた課題は、成果専有すれば解決する部分もあるんですけども、経済合理性の観点だとか、企業規模によって解決できない場合も多いのではないかなと思っています。もし成果専有だけにしてしまうと、確実に成果が出る利用にとどまる可能性があって、連携利用の拡大につながりにくい部分もあるかもしれません。そこで、途中から成果専有だとか、準成果専有など、利用料を支払いできるような制度設計への移行も必要なのではないかなと思っています。
 表の上の2つの項目に続いて何か御提案ができないかなと思って準備したのが、次のスライドになります。それは課題申請においてDX化を推進すべきではないかという御提案です。例えばユーザーが共通課題申請システム一つで、各施設の課題申請ができればいいなというものです。例えば右のこのような画面があって、利用したい施設にチェックを入れると、その施設特有の入力項目というものが出てくると。ただ、共通の部分は全て一緒であるというようなものですね。また、これは審査員の方々への負担軽減ということですけども、全ての施設の申請情報が全部見えてしまうと読むのが大変になってくるので、各施設に応じた部分だけが慣れ親しんだ書式に落とされて、見えるようになっていくということもいいのではないかなと思っています。
 また、こういう課題審査、連携課題の申請をしたときに、やはり全体を見たいよねということはあると思うので、そのときはまた確認したいときに見に行けるようなシステムというのも重要ではないかなと思っています。また、施設にある豊富な課題申請の内容というのはデーターベースとして残っていると思うんですね。その申請内容をそのままAIで補助させるわけにはいかないかもしれませんけども、施設固有の必要情報だとか、実験条件だとかということは、タイトルや目的、サンプル情報を基にAIが提案してくれるようなことも、今では十分、技術的には可能ではないのかなと思っています。
 また、こういうBL技術相談だとかそういったところにチェックを入れると、作成途中でも施設側に申請書の中身が見えて、閲覧できるようにする。そうすると、例えばチャットなどのリアルタイムな相談ができたり、施設が大学とあらかじめNDA契約をしておいて、タイムリーに大学などと相談しに行けるようになるとかができるのではないかなと思っています。そうすることによって、新たな産学連携だとか、共同研究の加速にもつながるかと思っていますし、また、このような仕組みができれば、課題申請を書くこと自体が量子ビーム活用の研究企画・計画、いろいろなコミュニケーションが形成できるので、産・学・施設連携が加速するのではないでしょうかということで、一つの案として参考にしていただければいいかなと思っています。
 最後のまとめは御覧いただいたとおりになります。私からは以上となります。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、最後3件目ですが、資料2-4に基づいて、KEKの物質構造科学研究所の雨宮先生から、大学共同利用機関としての御意見をお願いしたいと思います。
【雨宮教授】  それでは、KEK物構研の雨宮から、我々の取組について御紹介したいと思います。そこにありますように、量子ビーム連携研究センター、通称、CIQuSと呼んでいますが、そこでセンター長をしております。
 2ページ目に行っていただいて、御承知のとおり、KEK物構研は、4つの量子ビームプローブと、最近では、クライオ電顕も含めて有していまして、その強みを生かした、いわゆる量子ビーム連携というのが従来はなかなか難しいところはあったんですけども、それを加速していこうということで、加速するという意味は、ユーザーという意味でも、我々スタッフという意味でもですけれども、それでこの2020年の4月にセンターを発足させました。
 取組がそこに書いてありますけれども、左側の発掘型共同利用、これが非常に我々の特徴的なものだと思うんですけれども、これは利用者のマルチビーム化、マルチプローブ化というのを目指したものと言えます。もともと各施設にユーザーはもちろんたくさんいて、それぞれ実験されているんですけれども、自分のされている実験以外のことはあまり御存じではないというところで、ただ、内容を見てみると、やはりそれはほかのプローブも使ったほうがいいというのはいっぱいあるんですね。そういうのを我々のほうから見つけ出して、積極的に声がけをして、では、放射光を使っているあなた、中性子も使ってみませんかと、そういうことをやっていくという。そうすると、もちろんその方は、中性子は初心者ですので、サポートもしっかりしていかなくてはいけないんですけども、そういったことをやっております。それが左側に4人、写真があって、それぞれマルチプローブ利用のエキスパートですけども、このメンバー中心にこの取組をしております。
 それから、右側に行きまして、テーマ設定型共同研究。これは所内スタッフのマルチプローブ化ということになりますけれども、所内スタッフが中心になって課題を設定しまして、それをほかの研究者との連携の中で、マルチプローブを使って、課題解決していくと、そういうものです。
 それから、最後、マルチプローブ若手人材育成。いずれのことをやるにしても、人づくりというのはとても大切ですが、やはり現時点でマルチプローブに精通した人というのはとても限られている。そうすると、発掘型共同利用をやろうといったって、どうしても限定されてしまう。そういうところ、将来も踏まえて若手人材を育成すると。そのために、やはり、若いときからマルチプローブに親しんでもらうということが大切ですので、我々のところで博士研究員を雇用しまして、テーマ設定型共同研究を一緒にやってもらう。その中で、マルチプローブ利用を学んでいってもらうという取組をしております。
 3ページに行きまして、まず発掘型共同利用の実績ですが、これは2022年度の分です。左側にもともと使っていた手法で、真ん中のところに、そこから新しくこういう手法に行きましたということが書いてあるわけですけども、いろいろなパターンがあると思います。X線から中性子、中性子からX線、たまにミュオンとか低速陽電子も出てきます。一昨年度と言うんですか、2022年度には、実際、実験をやるところまで行ったのが18件ということになっております。
 4ページに行っていただいて、下の半分にこの3年間の推移を書いております。最初はやはり限定された手法でしかできていなかったんですけれども、だんだん手法も広げていきました。そこに色分けしてあるのはプローブですね。黒がX線、青が中性子となっているんですけれども、こういったことで、今は9種類だったと思います。この9種類の実験で対応ができるようになっております。たくさん並べてみると特徴がだんだん見えてきて、一番下のところ、3行、書いてありますけれども、まずX線と中性子で原理的には同じもの。回折・散乱、反射率、そういうものをX線と中性子両方でやるというのが非常に典型的なパターンです。X線と中性子で見えるものが違ってくるので、典型的なパターンだと思います。それから、物質系によっては、その物質系に特徴的な組合せというのも見えてきます。例えば磁性薄膜というところになると、中性子反射率とX線磁気円二色性というのを組み合わせると非常にいいと。そういった組合せが出てきますし、あとは、先ほど写真にあった担当者の得意の分野というのはやはり多くなってきます。
 5ページ目に移りまして、我々、全体として、マルチプローブ利用促進プログラムということで、右側が割と初心者向け、左側がエキスパート向けということで準備しているわけですけれども、一番右側にある発掘型共同利用が先ほど紹介したものになりまして、こちらは、全くマルチプローブなんて考えてもいなかったという人にまでアプローチするものですので、最も初心者向けと言っていいかと思います。そこからマルチプローブ利用相談というのが右側から2番目にあるんですが、これは正直言って、なかなか相談してきてくださる方というのは限られています。発掘型のほうが圧倒的に有効です。あと、左側に行って、物構研は昔からマルチプローブ課題、2015年から、一つの申請で複数のプローブができるというのをやっていたんですが、当時は一番左のエキスパートタイプに相当するもので、非常にハードルが高い、エキスパートでないと申請できないようなものだったのを、もうちょっと、いわゆる一般課題に近いぐらいのハードルでということで、スタンダードタイプというのを設けました。これまでにスタンダードタイプは4件申請があったんですけれども、そのうち3件は、もともと発掘型で、発掘した方が独り立ちでといいますか、申請してくださったということになっております。
 6ページは、これはハードウエアの話です。これは一例ですけれども、例えば表面構造分析といったところになりますと、薄膜のデバイスとかそういうものを考えていただくといいと思うんですけども、本当の表面、原子レベルから何百ナノ、何十ナノというところまで、マルチスケール、深さ方向のマルチスケールで調べる必要があると。それから、調べる内容についても、原子配列、化学状態、電子状態、スピン状態と、多面的に調べる必要があると。これらをカバーするために、それぞれのプローブのいろいろな手法を組み合わせる必要があるということです。ただ、表面の試料というのはどうしても大気にさらしてはいけないものが多いので、そうすると、ちゃんと大気にさらさない状態で各装置間、各施設間を運べるようなシステムを開発しまして、右側に写真が出ていますけれども、こういったもので運用しているところです。全く同じものを複数の装置で測ることができるということになります。
 7ページは人材育成で、これまで6名、これからの予定も含むんですけども、博士研究員を雇用しております。ここに書いてある3名の方は、初期というか、1期生といいますか、皆さんですけれども、やはりいろいろな分野をカバーするマルチプローブ人材という育成をしていきたいので、表面、材料、食品といったところで育成をしていきまして、今この3名の方はそれぞれ物構研の中で、卒業してからも物構研の中で活躍されています。
 最後、8ページ、まとめになりますけれども、こういった取組から見えてきたところですが、体制という意味では、マルチプローブ利用に精通した研究者がコンサルティングをしないと、なかなかうまくいかないです。どうしても実験計画から申請のところ、実施、解析まで、本当に全部しっかりと一緒にやっていかなければなかなかうまくいかない。また、先ほどもお話したように、問合せ窓口というのはなかなか機能しない部分があって、こちらからの能動的な働きかけというのは必要になってくることが多いです。
 それから、これはそういったことをするスタッフという意味ですけれども、やはり特定の施設、例えば放射光のあるビームラインにずっといなくてはいけないとなったら当然こういうことはできないので、特定の施設・プローブに縛られない環境を準備しなくてはいけないですし、動機づけですね。それはある意味、研究費という意味も含むんですけれども、なので、我々のところでは若干そういったこともやっています。スタッフにマルチプローブ実験を提案していただいて、資金的に援助するようなこともやっております。
 人材育成については、先ほども申しましたけれども、本当に広い分野でマルチプローブに精通した研究者を育成していく必要があると。利用制度について、これをやろう、発掘しようと思ったときにすぐ実験ができないと、これに1年かけていたのでは何も進まないので、随時申請・採択ということがとても大切です。放射光と低速陽電子については、それのための課題、PF-CIQuS課題と呼んでいるんですけど、それを準備してもらって、本当に素早い対応をしておりますし、中性子は例えばFast Track課題ではかなりたくさん使わせていただいております。
 PFのこの課題については、若干、CIQuSからPFに運営費の補助を出すという見返りもしております。それから、1回の実験でうまくいくことはまれということで、実際そうなんですね。やってみると、やはり1回やっても大抵何か問題が起こるので、一度始めたら複数の実験機会があるということは重要かなと考えます。軌道に乗ったらマルチプローブ課題も有効ですが、全てをマルチプローブ課題でやるべきという意味ではもちろんありません。
 それからあと、今後の課題です。ハードウエアの整備。先ほども紹介したように、一つのものを同じ条件で、いろいろなところで測定できるということ。それから、物質系に合わせた実験手法の組合せ。レシピです。それを幾つも準備していくということが重要。それから、AI/DX。先ほども課題申請のDX化というお話もありましたけれども、もちろん解析の部分も含めて、やはりマルチプローブ利用をやるとなると、どうしても新しいプローブに対しては初心者になってしまうので、そこをしっかりやっていける。あるいはもっと高度に複合解析みたいなこともできるようにしていくということが重要かなと思います。
 最後、ほかの国内ビーム施設と連携ということで、今、CIQuSの話は、物構研の中、あるいは、せいぜい東海キャンパスまでの話だったんですけども、国内の全部の量子ビーム施設と連携した人事・技術開発ということが必要になってくるかなと思いまして、これについては、物構研では新領域開拓室というのを2023年に発足しまして、そこでこれから進めていくというところになります。
 私からは以上になります。
【小杉主査】  ありがとうございました。結構盛りだくさんなのですけれど、この議論はまた次回以降も続きますので、今日は15分程度時間を取りますが、どういう切り口でもよろしいですから御意見等ございましたらお願いします。陪席の方からでもよろしくお願いします。
【雨宮理事長】  一ついいですか。
【小杉主査】  はい。雨宮理事長。
【雨宮理事長】  岸本委員が言われたことで、非常に現実的で、ハッとさせられたのが、目的が一つで、複数のビームラインを利用する場合は採択されにくいというコメントです。課題審査をするレフェリーは、研究目的に対して、この測定を行えば分かるというような記述に対しては、ああ、これはいいなと思いますが、その目的に関する一部のことが分かります、参考の情報が集まりますと書かれていると、それは方法論がミスマッチではないかと判断され、説得力が低くなってしまいます。かといって、ほかのビームラインでもやりますということになると、じゃあ、そっちをやってねみたいな話になる。だから、レフェリーがどういう視点で評価すべきか、レフェリーにメッセージをちゃんと伝えておかないと、連携というのが相対的に低く評価されるというリスクがあると感じました。
【岸本委員】  ありがとうございます。よろしいですか。
【小杉主査】  はい。
【岸本委員】  まさしくそのとおりで、だからこそ、全体像が描けるところが必要なのかなと思って、先ほど画面設計みたいなポンチ絵を出しました。共通の目的、全体像が描けるようなところがあるといいのではないかなということで、御提案というか。まさしくそのとおりだと思います。
【小杉主査】  物構研のマルチプローブ課題というのはそういうつくりをしているんですよね。
【雨宮教授】  はい。まさにそのとおりですね。
【小杉主査】  何かございますか。ネットからでも、発言いただいていない石坂委員、唯委員、何かございますか。
【唯委員】  唯です。
【小杉主査】  お願いします。
【唯委員】  先ほどの、並行して、いろいろなマルチプローブのところへの審査ということですけど、また、審査、もちろん書く側でも全体枠を大きく捉えて、そこのそれぞれの位置づけというのをはっきりしていただくとともに、審査する側がやはり相互の関係というのがなかなか、それぞれの審査にもあって、非常に見にくいというのは今現状であるように思います。一方で、例えば、こちらの課題が成立しないと向こうの課題をやっても意味がないみたいな関係が出てしまうと、その審査側のほうが今ばらばらな状況というのを少し統一して、制度としてつくる必要があるのではないかなと思いました。
 以上です。
【小杉主査】  物構研の場合は、複数の施設で、一つが不採択になると全体が駄目というのが以前のシステムだったんですけど、最近は、一つが駄目でも、ちゃんとできるようにするとか、いろいろサポートしながら最終的に全部ができるようにするというスタイルに変更しているんですよね。
【雨宮教授】  はい。スタンダードタイプを導入したときにそういったケアもしっかりやるようにしております。
【小杉主査】  その辺りのケアは必要ですよね。
 ほか何かございますか。石坂委員、ございますか。
【石坂委員】  すみません。少しポイントがずれるかもしれないんですけれども。
【小杉主査】  構わないです。
【石坂委員】  以前、例えば、全く同じ申請する、連携と逆の話になってしまうんですけど、全く同じ研究計画で、たくさんの施設のビームラインに出して、何か一つのサイエンティフィックなもの、計画でバーッとビームタイムをがめるというのが問題になったときがあって、そのときに先ほどの岸本さんの共通システムみたいなものができないのかというような話をしていたことがあったんですけど、実際難しいとか何とかで、なかなか難しいという話だったので、連携という意味でも、さっきのシステムはとてもいいと思うんですけども、もう少し、もっとレベルの低い話ですけど、何というか、一つのアイデアで大量に占めてしまうとかそういうことを考えても、理想的には、さっきおっしゃっていたような、全体の共通システムができるといいなとは考えています。その上で、もちろん審査がすごく、私も審査は時々やらせていただきますけど、かなり大変なので、そうですね。全体的なシステムの構築を何か検討していけるといいなというふうに聞いていて思いました。
 以上です。
【小杉主査】  施設が増えれば増えるほど、それぞれ独立で、同じ人がいろいろな施設の審査をしないといけない。自分たちの首を絞めるという状況は何とか改善してほしいというのはあると思います。
 ほか何かございますか。高原委員。
【高原主査代理】  岸本委員の図で、「国プロ利用」というのが、斜め上に上がっている図があったんですけれども、あれはどういうケースを考えられているのでしょうか。
【岸本委員】  右上ですよね。
【高原主査代理】  はい。
【岸本委員】  これは最先端のことをやっていこうと思ったら、やはりチャレンジングだよねと。だけども、ビームタイムを確保したいといったときには、成果占有のところで取っていくというのが最近は多いのではないかなと思ったので、そういう発言をさせていただきました。
【高原主査代理】  それを国プロでやるという。
【岸本委員】  というようなパターンもある。
【高原主査代理】  だから、それはNEDOなどの国プロということですね。
【岸本委員】  はい。
【高原主査代理】  分かりました。
【小杉主査】  矢橋委員。
【矢橋委員】  矢橋です。どうもありがとうございます。2つ、観点がありまして、1つ目は、小安先生の資料で、ページが、すみません。
【小安理事長】  ごめんなさい。
【矢橋委員】  いえいえ。ここのページですね。登録機関が3つあるようなページがありまして、あと、最後のところで、ワンストップ、トップダウンという言葉があります。それで、ワンストップサービスというのは非常に重要だと思いますが、ここの組織のつくり方について、トップダウンで窓口を一つにするのか、それともウェブというか、水平ネットワーク型で、どこに相談してもちゃんとたどり着けるようにするのか、という議論が必要になります人的なネットワークというのもありますので、恐らくトップダウン窓口一つだけというのでは解決は難しいと思います。また、トップダウンのところで全てを分かる人をそこに集約させるというのもなかなか現実的ではないと思いますので、ウェブ的なつながりも、何らかのインセンティブを持ってやるやり方が必要かなと思いました。
 もう一つは、ターゲットの置き方、つまり、どういう人を対象に、どういうニーズがあるかという点が重要です。例えば岸本委員の3ページ目のこういう絵がありまして、放射光だけでも、こんなにたくさん手法があって、軟X線、硬X線、さらに中性子もあるので、住友ゴムさんは非常に力を入れてやっておられるから、これを全部、自らこなしておられるということでしょうが、必ずしも全ての企業さんがそういうわけでもないと。そういったときにどういうことを期待するか。つまり、全てのターゲットに対して、エキスパートとして使いこなしてもらうことを目指すのか、それとも、あるところをメインにして、あるところは結果を返すだけにするのか。そういったところのバランスも必要なのかなと思います。まとめると、目的の置き方、及び、最初に申し上げた組織のつくり方というところがポイントになるのかと思いました。
 以上です。
【小安理事長】  今の部分に関してです。コアリションの方々とお話をさせていただくと、必ずしも、皆さんが放射光のことをよく御存じなわけではないと感じることがあります。一方、住友ゴムさんについては本当に専門家でいらっしゃるので、全てのことをよく御存じなので、こういう図になると思います。やはり材料に関して解きたい問題がある、どう解いたらいいか分からないというところに、どういうふうに手を差し伸べるかでユーザーの数が変わってくるのではないかと思う。簡単ではないことは理解していますが、そういうようなところにも、そういう人たちにもアクセスできるような窓口が必要となるのだということを感じました。
【矢橋委員】  おっしゃるとおりです。そのときは恐らく、そういう人たちは皆さん、ビームラインに行って、自分で手を動かして、全部やるということでもないと。
【小安理事長】  でもないと思います。
【矢橋委員】  はい。やはりそういう結果だけ欲しい部分に対してもきっちり答えるような何か仕組みが必要なのかなと思います。
【小安理事長】  そのときに、さきほどの雨宮先生の資料に記載されていたような顔が見えている限られた人たちだけで全部それを引き受けていたら潰れてしまうと思うので、そこをうまく間をつなぐシステムというのは一番大事なのではないかなという感じがしています。
【矢橋委員】  はい。
【小杉主査】  今の矢橋委員の最初のコメントですけど、小安先生の資料のワンストップサービスの図というのは、よく研究環境課の施策で見る三層構造の図そのものなので、これは研究環境課としてこの取組は絶対やらないといけないところだと思うんですけど、その観点からどういうふうにこれは見えてきますか。
【稲田課長】  おっしゃるとおり、この辺、ワンストップサービスの関係というのは、結局、コストとベネフィットの関係なんですよね。どこから着手し、どこの範囲を対象とし、どういうことをやるのかというところに関しては、まさにこの委員会で議論されているところ、我々として、最低限、量子ビームと称するところに関しては、これを体現の上、やろうと思っているんですが、というところから始めた上で、これは正直言って、森羅万象、全ての研究課題にとってそうなので、どこら辺のところまで広げていくかというところについては、グッドプラクティスとして始めてみようかなと思っております。
【小杉主査】  ほか、何かございますか。
【雨宮理事長】  KEKの雨宮健太さんに質問で、マルチプローブ人材育成で、博士研究員にマルチプローブをやっていると。これはファシリティーにとってはすごく重要な人材の育成ですけども、その人のキャリアパスがどのように保障されるかということ。例えばあれもこれもできるけど、一つの手法を見れば、専門家に負けるみたいなところがあると、プロモーションのところで中途半端だよねみたいなことになるリスクもあるのではないかなと。その辺の問題が付きまとうのか否か。何かコメントがあれば。
【雨宮教授】  もちろん、今たまたま3人は物構研の中で次のステップに進みましたので、我々はそういう方を欲しているので、そういう意味ではキャリアパスはあるんですけれども、全てがそうではないと思うんですね。確かに、例えば特定の施設の特定のビームラインを見ようとしたときに、全部できるというのは、必ずしも強みではないかもしれないですね。一方で、ある意味、物質を量子ビームを使って研究するという、いろいろなプローブが使えるというのは、研究者としては非常に強みなんですよね。そういった場合には、例えば大学等に行く際には、それは強みになると考えています。
【柴山センター長】  オブザーバーの柴山ですけど、よろしいですか。今のマルチプローブ人材育成の話題に関連しまして、私の経験談を少し御紹介したいと思います。私は2020年まで東大物性研で中性子の大学共同利用をやっておりました。施設の方々は、どこもそうですけど、人がいなくて、研究者はいると。一方、大学の方々は、学生さんがいっぱいいて、テーマを与えるのに苦労するような状況が結構身近にもありまして、それで、名前はよくないかもしれませんが、里親制度というのをつくりまして、大学の先生が学生さんを一定期間、そういう施設に派遣するということを行いました。そうすると、施設側は、いわゆるマンパワーが入って、装置に習熟する人ができてきますし、それから、大学からのテーマもそこで実践できるということで、Win-Winの関係ができるということがあったと思います。私自身、地方大学に居たとき、アメリカに学生さんを1年ほど派遣しました。すると、向こうのマシンタイム、具体的にはNISTですけど、そこで研究をさせていただくことができました。ですから、もしマシンタイムが余れば、こちらから試料を送って、実験するというようなことがありました。
 今、全体像を見ますと、繰り返しになりますけど、ファシリティー側は、人材育成問題やら、人が足りないというような問題があります。技術伝承においてもいろいろ問題があります。その一つの解決策として、そのような(里親制度のような制度をつくるという)観点もあるのかなと。今、私はCROSSにいますけど、インターン制度というのを使って、できるだけそれを活性化しようかなと思っております。御参考になればと。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 では、そろそろお時間ですので、この辺りで打ち切らせていただきたいと思いますが、この議論はまた次回もメインで続くと思いますので、またよろしくお願いいたします。
 では、3番目、その他が残っておりますけれど、前回の小委員会で、SPring-8-Ⅱの整備及び我が国の放射光施設の今後の在り方についてという報告書をまとめることができまして、ありがとうございました。
 聞くところによりますと、放射光学会のほうでも同様な議論が進んで、まとまっているというような話も聞いておりますけれど、その辺り、矢橋委員のほうに情報が入っていれば御紹介いただければと思います。
【矢橋委員】  ありがとうございます。矢橋です。小杉先生からありましたように、SPring-8-Ⅱの議論の背景として、世界中で第4世代の大型放射光施設がどんどんできているというのがあります。日本放射光学会でも、第4世代の大型放射光施設の整備がやはり我が国にも非常に喫緊で、絶対必要だという認識をもとに、特別委員会を結成されて、議論されています。それで、特別委員会自体はこの後、1年半ぐらい続くと伺っているんですけども、今、非常に重要なタイミングでございますので、中間提言書という形で、ぜひ第4世代大型施設が要るのだというところにつういて、取りまとめが進んでいるということを聞いています。提言書自体は内部でも承認がされていますので、間もなくパブリックに出ると理解しています。
 その中では当然、先端光源の重要性とともに、新しいサイエンスのフロンティアをどうやっていくか。それから、日本の放射光施設のポートフォリオも含めて今後議論していきますというところも含めて書かれておりますので、また逐次、この場でもレポートさせていただきたいと思います。
 以上です。
【小杉主査】  ありがとうございました。
 それでは、ほかに事務局から連絡事項等ございますでしょうか。
【稲田課長】  次回の量子ビーム利用推進小委員会は6月の開催を予定しています。追って、皆様方の日程調整させていただきますので、御回答いただけるようお願いします。本日の会議の議事録に関しては、作成次第、委員の皆様にメールにて確認いただいた後、ホームページに公開いたしますので、御了承をお願いします。併せて、本日の資料1-3及び1-4に関する意見に関してですが、来週の金曜日の12時を目途にメールでいただけますと、私どもで取りまとめた上で、先生に再来週に相談させていただこうと思いますので、申し訳ありませんが、何か御意見がある場合については、来週の金曜日の12時を目途にメールにて事務局まで御提出をお願いします。
 以上です。
【小杉主査】  では、1週間、よろしくお願いします。
 それでは、以上をもちまして、第53回量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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