核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第33回) 議事録

1.日時

令和6年3月14日(木曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)原型炉実現に向けた基盤整備について
(2)フュージョンエネルギーの早期実現に向けて

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

有識者

市口勝治核融合科学研究所教授、笠田竜太東北大学金属材料研究所教授

文部科学省

千原由幸研究開発局長、林孝浩大臣官房審議官(研究開発局担当)、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【坂本瑞樹主査】本日は御多忙のところ、御参加いただき、ありがとうございます。定刻になりましたので、第33回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)を開催します。
 司会進行につきましては、本TF主査である私、坂本が担当します。
 それでは、議事に入る前に事務局より定足数及び配付資料の確認をお願いします。
 
【吉原専門官】核融合科学専門官の吉原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは本日の委員の御出欠でございますが、本日の御欠席は、伊神委員1名でございます。本日は15名中14名の委員に御出席をいただいております。過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。本日の配付資料は、議事次第の配付資料一覧に示しております資料1及び資料2となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。
 各委員におかれましては、御発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 また、本日は文部科学省研究開発局の林審議官も参加しておりますので、御紹介申し上げます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。本日は議題1において御説明いただくため、核融合科学研究所(以下、NIFS)の市口教授、東北大学の笠田教授に御出席いただきますので、御承知おきください。
 本TFは、核融合科学技術委員会(以下、委員会)運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は、議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、本日の議題に入ります。議題1「原型炉実現に向けた基板整備について」です。1月30日に開催された前回のTFでは、量子科学技術研究開発機構(以下、QST)、NIFS、アウトリーチヘッドクォーター(以下、HQ)からの御提案内容について意見交換を行い、様々な御意見をいただきました。これを受けまして、QST、NIFS、HQに再度御検討をいただきました。
 本日は、研究開発、人材育成、アウトリーチ活動の順に御説明をいただき、最後にまとめて意見交換を行いたいと思います。
 それでは、研究開発について、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】資料1に基づきまして、原型炉実現に向けた基盤整備について、前回1月のTFの議論を踏まえ、来年度以降どのように実施していくか、本日、改めて今後の方向性について御紹介させていただきます。
 こちら目次ございますが、戦略を踏まえた政府予算案について説明した後、研究開発、人材育成、アウトリーチ活動、それぞれについて、事務局からの説明の後、具体的な事業の取組について、研究開発はQSTの大山委員、人材育成はNIFSの市口先生、アウトリーチについてはHQから笠田先生にお話しいただき、まとめて質疑の時間を設けたいと思います。
 まずこちら、フュージョンエネルギーに関する来年度の政府予算案です。来年度、右下にございますとおり、原型炉実現に向けた基盤整備に向けて、BA補助金の内数として、来年度初めて予算が計上されております。
 現在行われている国会・参議院での審議を経て予算が成立した暁には、4月以降、事業を進めていくことになります。前回の指摘並びに今回の議論も踏まえて具体的な取組を進めていきたいと考えております。
 併せて、本日は説明を省きますが、その下にあるムーンショット型研究開発制度については、未来社会からのバックキャスト的なアプローチによる挑戦的な研究の支援を強化することとしており、本TFの主査代理も務めていただいている武田先生を含め、文科省の設置した核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会の最終取りまとめを踏まえて、12月には総合科学技術・イノベーション会議(以下、CSTI)で決定したムーンショット目標に基づき、1月の国際ワークショップ、2月の委員会での議論を踏まえ、今月中には科学技術振興機構(JST)から公募を開始する予定なので御承知おきいただければと思います。
 それでは、研究開発について御説明いたします。こちらは前回、御説明した資料と同じものになります。これまでのTFの議論も踏まえ、体制図を右上に記載しております。フュージョンエネルギーの早期実現に向け、戦略を踏まえ、QSTを中心にアカデミア、民間企業を結集して技術開発を実施する体制を構築し、将来の原型炉開発を見据えた研究開発を加速したいと考えております。
 今回、QSTを中心としつつ、大学や企業等も参画する実施体制を構築することを予定しております。原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)に基づき、項目別に公募を実施するなど、大学や企業等の更なる参画を促すための仕組みを導入するとともに、研究開発の進捗や取組状況については、委員会、TFにおいても随時確認していきたいと思っております。
 この後、5ページ以降を用いて前回の議論を踏まえた修正案について大山委員のほうから御説明していただきますが、前回の議論の中では、今回QSTから提案いただく、例えば競争入札、参加者確認公募、そういったものが大学関係者にとってあまりなじみがないというような話や今後のスケジュール、見通し含めどのようなことを考えているのか、コミュニケーションを図っていただきたい。また、競争入札等で単に金額のみで決まってしまうのではないか、研究開発要素が少ないのではないか、そういった御意見があったかと思います。
 さらに、この後御説明ありますが、優先的に実施すべき研究開発項目についても、優先順位に基づいて整理されていることは理解しているものの、令和6年度にやらないと整理されているものの中には日本が得意としているものも含まれており、そういった強みがしっかりと発揮できるようなものを優先して実施するというような視点も必要でないかというような御意見もあったかと思います。
 さらには、先ほどの体制図にもありますが、原型炉設計合同特別チーム(以下、特別チーム)の中から公募に手を挙げる者も出てくるため、特別チームの中にいる企業の位置づけ、在り方、そういったところも整理することが必要ではないか、そういった御意見もあったかと思います。
 我々としても、分かりやすくシンプルに、さらに強力に推進できる体制をこの機会に作っていただきたいと思っておりますし、また、QSTだけが抱え込むことにならないようオールジャパンの体制を作っていただきたいと考えているところでございます。この辺りについてもこの後御説明いただければ幸いでございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて、活動内容案について、大山委員から御説明をお願いします。
 
【大山委員】令和6年度の原型炉研究開発の進め方の案について説明させていただきます。
 今表示されております1枚目と次のページの2枚目につきましては前回のTFと同じ内容でございますので、本日は3枚目から説明させていただきます。
 こちらの表では、令和6年度に優先的に実施すべき研究開発項目について、QSTが直接実施するもの、大学・産業界等への公募により実施するものを分けて掲載しております。前回のTFで御説明しましたように、表に丸が記載されていないAP項目の研究開発を実施しないという意味ではなく、QSTのリソースの範囲内で各項目の研究開発を継続する予定となってございます。
 前回のTF後にQSTと大学や産業界との意見交換等を踏まえて見直した部分につきまして赤字で記載してございます。
 まず、0の炉設計におきましては、APに記載されております項目名、「概念設計及び小規模技術開発」という項目名をそのまま大学・産業界等への公募というところの内容として記載しておりましたけれども、実際には小規模技術開発の部分は公募、概念設計の部分はQSTで実施して、QSTで実施した結果を「機器設備の操作性検討と開発項目の抽出」のほうに反映していくということでございますので、そのことが分かるように記載のほうを見直しているというところでございます。
 1.超伝導コイルにおきましては、ITERよりも大きな導体電流値が必要となります原型炉用超伝導導体の見直し、これを第2回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR2)までに得ておく必要があるということから、このたび優先度を見直しまして、「超伝導導体の試作・試験」に関わる公募を追加しているというところでございます。
 4.加熱・電流駆動システムでは、日本の強みを生かしつつ、大学や企業の参加を促して実施体制を構築するという観点から、「原型炉用高周波負イオン源の開発」に関わる公募を追加しているというところでございます。
 9.安全性でございますが、公募する内容を具体的に分かりやすくする観点から、公募する研究開発の項目名を「安全性評価コードの開発」と見直しているというところでございます。
 公募事業としての研究開発項目の実施に当たりましては、QSTのウェブサイトで公告する「競争入札」、若しくは「確認公募」により委託者を決定していくという予定でございます。こちらにつきましては前回の説明と同じでございます。
 この中で、まず競争入札案件につきましては、4月から5月にかけて公告を開始し、各案件の公告期間が終了しましたらその後入札を実施するという予定でございます。
 2つ目の確認公募案件につきましては、委託研究の想定委託先との仕様の検討、こちらを3月から4月にかけて実施し、その結果を踏まえた確認公告を4月から5月にかけて掲載予定でございます。
 この公告期間中に想定委託先以外からの受託希望者が現れない場合、想定委託先との随意契約を締結する、そういった段取りでございます。
 これらの公募案件、入札案件につきましては、今画面に記載しておりますURL、こちらのほうにアクセスしていただきますと、右上に示す図のような調達情報のページが開きます。この調達情報のページの右側に表示されるリンクのうち、赤丸で囲っておりますけれども、「六ヶ所研」又は「本部・千葉地区」というところを選択することで、各地区の入札公告一覧を確認することができます。
 なお、競争入札案件と確認公募案件のどちらにつきましても、特別チームに参加されている大学、企業からの応募は可能でございます。このあたり、利益相反にならないように、QSTの中で仕様の作成ですとか公募の手続などを進めるに当たりましては注意深く進めていきたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて、人材育成について、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】人材育成についても、前回御説明した図に基づいて改めて位置づけを説明させていただければと思います。
 繰り返しになりますが、フュージョンエネルギーの実現には長期にわたる研究開発が必要であり、そのためには連続的かつ長期的な人材育成確保が必須であるということ。
 そのためには、今回、原型炉開発などに携わる人材を戦略的に育成するために、関連人材の母数を増加させるため、BA補助金に原型炉実現に向けた基盤整備を新たに措置したところでございます。
 本TFでも過去に議論してまいりましたが、原型炉開発に必要な人材確保に向け、委員会での議論も踏まえ、大学共同利用機関であるNIFSを中核機関として、共同研究ネットワークや各国との協力事業の枠組みなども活用し、大学間連携による総合的な教育システムを構築してはどうかと考えております。
 併せて、大学院教育と国内外の大型研究装置との連携を促進するため、QSTとも連携し、JT-60SA、ITER等を活用した人材育成を実施したいと考えております。
 研究開発同様、人材育成の進捗や取組状況についても、委員会、TF等においても随時確認していきたいということが必要だと考えております。
 11ページ目以降は、前回も御説明した資料なので詳細は省きます。こちらは平成30年に委員会で取りまとめていただいた人材の育成確保についての提言書の概要です。
 この中でも、例えば左下、具体的取組として記載されている大学間連携による総合的な核融合教育システムの構築や、その隣のITER機構への階層ごとの人材派遣制度の設計などが当初から提言されており、今回、それを具体的な取組に落とし込み、さらに推進・加速していきたいと考えています。
 こちらも前回説明したものです。大学間連携による総合的な教育システムの構築については、俯瞰的に学習できる教育プログラムを提供することや、大学院教育と国内外の大型装置との連携を促進し、国内外の大規模研究施設での研究・実験に参加する機会を拡大することが重要であること。
 そのため、NIFSを中核機関とし、筑波大学、九州大学、大阪大学などの双方向型共同研究ネットワークや、日米、日韓など政府間の科学技術協力協定に基づく協定の実施機関としての役割をNIFSが担っております。こういった各国との協力事業の枠組みなども活用して、追加的に人を送るだとか、試行的な取組をするとか、そういったことをやりながらさらに拡大していきたいと思っています。
 その際には、関連の学会、また今後設立される核融合産業協議会(以下、協議会)、そういったところとの協調により総合的なシステムを構築してはどうかと考えております。
 さらには、大学の履修制度、参加者の関心、また技術の動向、そういったことにも配慮し、教育プログラムの設計段階から大学と密に調整を行うことが必須だと考えております。
 JT-60SA国際核融合スクール(以下、JIFS)については、昨年12月に盛山文部科学大臣と欧州側の委員とで署名した共同プレス声明に従い、現在、QSTにおいて実習内容等の強化に向けEU側と調整している段階と理解しております。この辺りの最新の進捗状況についても後ほど質疑の中で大山委員から御紹介いただければ幸いに思います。
 ITER機構との連携については、前回のTFでもインターンシップの募集が始まりますというような宣伝をしたと思います。この実績などについては、今後我々もフォローアップしていきたいと思っております。
 また②、ITER国際スクール(以下、ISS)については、この後市口先生からも御報告があるかと思います。どのようにやれば多くの学生、研究者が集まるかというところ、重要な機会かと思いますので、最新の準備状況、検討状況について御説明いただければと思っております。
 この後市口先生にこちらの資料に基づいて御報告をお願いしたいと思いますが、前回のTFではこういった意見があったかと思います。
 NIFSから提案のあったフュージョンサイエンススクール(以下、FSS)について、合宿形式ではなくて、既存のいろんなネットワークや各国の事業の枠組みなどを活用して国際的にリーダーシップを発揮できる人材の育成に寄与するようなプログラムが望ましいのではないかといった御意見。
 また、プログラムの対象に学部生を加えて、大学院進学など早いうちからの動機づけにつなげていけるようにすべきといった御意見。
 さらには、ISS、JIFSとの重複感に加え、原子力など他の人材プログラムがたくさんある中で、それらに埋もれないよう特色を出していくことが必要ではないかといった御意見。
 他方、企業のニーズや社会人の学び直し、キャリアチェンジ、そういったことにも適切に合ったプログラムにしていく必要、職業訓練としての教育が重要ではないかといった御意見。
 イギリスの事例、後半でも御紹介したいと思いますが、5年で2,200人を育成するためのプログラムを実施するという中で、日本に必要な人材を考えた時に、前回提案のあった20人という人数だと諸外国の規模には必ずしも達することはできないのではないか、数千人規模で実施するべきということも考えたほうがいいのではないかといった御意見があったかと思います。
 今回市口先生のほうからそういった様々な御意見を踏まえて、来年度の方向性について御説明いただければと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて活動内容案についてNIFSの市口教授から御説明をお願いいたします。
 
【市口教授】前回の議論をいただいたところについて、特に来年度の活動内容について御説明させていただきたいと思います。
 まず最初に書きましたのは、先ほど戦略官のほうからも少し御紹介がありましたISSでございます。第13回ISSをNIFSが主催するという形で今始めているところでございます。
 これはかなり大規模なイベントになっておりまして、これがまず来年度の第一義的に注力すべきイベントだと認識して今活動を進めているところです。
 今回13回目になるわけですけれども、トピック等が設定されて、それに基づいていろいろ講義などその内容が構成されるという形になっております。
 今回、すでにITER機構側と何度もやり取りをしておりまして、そういう意味で、トピックとして両者の間でMagnetic Fusion Diagnostics and Data Scienceという形で進めていくことになっております。。文言に関しましては、少し修正がこの後あるかもしれませんが、DiagnosticsとData Scienceというところは変わらないと思っております。
 ちなみに前回、これはマルセイユで行われたんですけれども、この時はImpact and consequences of energetic particles on fusion plasmasという形の講義がなされておりました。
 対象者ですが、国内外のポスドク、それから博士課程の学生がメインのターゲットということで、この人たちのレベルに合わせたような内容にするということがITER機構側からも了解をいただいているところです。
 参加人数としては、昨年度は150から160人ぐらいということでしたが、今回は日本での開催ですので、アジアからたくさんの方が来られるかもしれないということで、我々としては200人程度で準備を進めているところです。
 内容の構成としましては、トピックスの関連の講義、これが大部分を占めるわけですけれども、座学の講義と、その後に参加者によるポスター発表の時間をとります。これに関して参加者に対して優秀賞を授与するということも考えております。
 それから、我々、NIFSが担当いたしますので、NIFSの見学もここに含めたいと考えております。また、参加者間での食事会、これはある意味非常に重要なことでして、せっかく国際的な場でいろんな方々と交流を深めていただく非常に重要なチャンスであると考えております。
 それから、実施の会期でございますが、今のところ、秋、9月から12月の間の5日間、これは例年5日間で行われているということで、今、ITER側ともいろいろ日程調整を進めているところです。
 それから会場に関しましては、名古屋近辺で検討しております。これはNIFSの見学も考えますと、あまり遠いところであると少し大変だということと、それから、ITER機構側からの要請としまして、合宿形式で宿泊をホスト側で用意してほしいということで、そういうことも考えまして、名古屋近辺で今、会場を検討しているところです。
 運営体制としましてですが、ITER側と綿密に打合せをしながら進めていく必要がありまして、日本側としましては、こちらでHost Country Committeeというものを考えております。これは日本側の委員会の総体の名前としてこういうことにしました。
 Host Country CommitteeはLocal Advisory BoardとLocal Organizing CommitteeとProgram担当いうもので構成するとしております。
 Local Advisory Boardというのは、大学の先生、QSTの先生、また産業界の先生、そういう幅広い分野の先生方に集まっていただきまして、大所高所から御助言いただくとともに、ぜひこういうせっかくのスクールですので、たくさんの方に参加していただくように、募集段階での御協力もいただきたいと考えているところです。
 それから、Local Organizing Committee、これは一般的には現地実行委員会に対応するものです。これは実際の実働が必要ですので、NIFS内のメンバーで今構成を行っているところです。
 それから、Program担当ですが、講義等に関して講師の選定段階でITER側と協議をしてもらうことになります。、ITER機構側からの要請で、日本側から2人とITER機構側から2人を出して、そこで協議するということになっております。早く決めてほしいということでしたので、NIFSのほうの横山雅之先生と田中謙治先生にお願いしているところです。
 以上が、今、ISSとして進めている状況であります。
 今回、ISSを開催するということですが、1回きりで終わるというのは非常に残念なところですので、これを連続的に発展させたいということで、前回御紹介いたしましたFSS、こちらのほうに引き継いでいきたいと考えています。
 ISSでの知見とか、そういうものを蓄積して活用していくという意味で、FSSのほうはISSの相似縮小版のような位置づけで検討していこうと考えているところです。
 これと併せまして、大学間連携による総合的な教育システムの構築も検討していくということで、令和6年度におきましては、国内外の大学や関連学会、協議会との意見を集約させていただいて、オールジャパン体制で教育システムの構築に関する検討を開始していくという段階を考えております。
 これによりまして、共同研究ネットワーク、各国の協力事業など、NIFSのほうにも様々な協定がございますので、そういうものの枠組みなども活用しまして試行的取組を実施していければいいのではないかと考えているところです。
 こういうところで体験型の学習の機会の拡大であるとか、人材交流、ワークショップの追加実施、派遣調査、ニーズ調査なども検討していきたいと考えています。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、ここで人材育成に関連して、次回のJIFSの開催スケジュールについて、大山委員から情報提供をお願いいたします。
 
【大山委員】令和6年に開催するJIFSの検討状況について紹介させていただきます。
 まず日程につきましては、令和6年8月26日の月曜日から9月6日金曜日までの2週間で開催するということが決定しているというところでございます。
 プログラムの詳細につきましては、日欧で調整中でございますが、今回、人材育成の予算を措置していただけるということになりましたので、ITER機構を含む欧州研究機関への見学というものも含めたようなプログラムにする方向で調整しているというところでございます。
 3月中に公募を開始する予定としてございまして、JT-60SA、QST、プラズマ・核融合学会のウェブサイトなど、幅広いチャンネルで周知していきたいと考えているところでございます。
 まだ公募前ということもありまして、こういった情報提供の範囲でございますけれども、皆様、今後の公募が開始されるのをお待ちいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。早速、原型炉開発の予算が生かされる形で非常によいものができると思います。QSTにおかれましては、事務局として大変かと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 続いてアウトリーチ活動について、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】アウトリーチ活動について御説明します。こちらの資料についても前回御説明したとおりかと思います。国家戦略を踏まえ、体制を強化するとともに、アウトリーチ活動の充実を図りたいと考えております。
 以前のTFでも御報告いただいたとおり、社会的合意を形成するまでの活動内容を、右下にございますとおり、ターゲット層と共に段階的に整理し、戦略的に推進していきたいと考えております。
 また、このアウトリーチ活動の進捗・取組状況については、委員会、TF等においても随時確認していくということを予定しております。
 こちら、今後の推進体制を記載しております。NIFSにおいては、原型炉実現に向けた基盤を整備するため、HQが示す方針を踏まえ、関係機関との連携、大学はもちろん産業界とも連携した上で、フュージョンエネルギーの国民理解を深める活動を推進していただきたいと考えているところでございます。
 HQ自体、平成31年、今から10年以上前に設置されているものになります。若干記載が古くなっている部分もございましたので、この機会に見直しを少し考えようと考えております。
 事務的な部分にはなりますが、例えばHQのタイトル、核融合エネルギーというところをフュージョンエネルギーというような形に変えさせていただいたりだとか、あとは、2ポツにある構成員の中には、これからできる協議会にも、まだ設置されていないのでこれから調整にはなるのですが、推薦いただく方にも入っていただきたいと考えております。
 また、今回、アウトリーチについては、NIFSでBA補助金の枠も使いながら責任を持ってやっていただくという趣旨から、(1)の庶務の部分は、もともと書かれていたQSTの部分を消させていただいて、NIFSが行うというところを明示するとともに、先ほど申し上げたとおり、原型炉実現に向けた基盤を整備するため、HQが示す方針を踏まえ、関係機関と連携の下、活動を推進するというような記載に変えてはどうかと思っております。
 また、実はHQの中では人材育成などについてもしっかりとNIFSでやっていただきたいという期待も述べられていたところ、HQの所掌にも入れてもいいのではないかという御意見も確かにありました。
 ただ、タスクが増えると目的が少し不明確になってくるところもあるので、まずはアウトリーチ、社会受容性の向上というところに注力いただきながら、当然ながらHQとして人材育成と必要な連携を図るというような御指示をいただければ、それに基づいてNIFSのほうでも対応していただけるのではないかなと思っています。
 こちらについてはまだ一部改正案ということで、今後、協議会などの下の機関とも連携していかなければいけないというものにはなりますが、この機会に必要な修正をしたいと思っているところでございます。
 加えてこの後、前回も御報告いただいた笠田先生のほうからHQの検討を踏まえた活動内容の案についても御説明いただければと思っております。
 こちらについても、前回、サイエンスコミュニケーターの位置づけやHQの立ち位置、また、HQとしての認知度向上、情報発信の強化についても御意見があったかと思います。
 そういったことも踏まえて、HQの中で検討してきた内容について御説明いただければ幸いでございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて活動内容案について、HQを代表して東北大学の笠田教授から御説明をお願いいたします。
 
【笠田教授】それでは、資料に基づきましてHQでの検討の結果を御報告いたします。
 まず、活動内容の案としまして、この5つのカテゴリーでまとめております。
 まず1つ目に、サイエンスコミュニケーター等による専門的な支援というものを重要視しているところを述べます。原型炉の実現に向けて、リスクコミュニケーションの観点から、国民と適切に意思疎通を図るための手段の検討、また、各機関の求めに応じてアウトリーチ活動に関する助言を行うため、サイエンスコミュニケーターを雇用するべきだと考えております。
 また、次から御説明します2番から5番の活動において、組織的かつ効率的にサイエンスコミュニケーターを活用する必要があります。この観点は、雇用したサイエンスコミュニケーターだけではなくて、外部の様々なサイエンスコミュニケーションを行う方々との連携ということも含めての意味となっております。
 こういった活動を円滑に進めるためにはNIFSの事務局機能を強化する必要がございますので、必要な人員を雇用していただきたいと考えております。
 そして、具体的に活動内容として、(2)は、まずHQ主催のアウトリーチイベントの開催です。原型炉実現に向けて、国民にまずは周知をするという段階的なアウトリーチの中で、最初の部分、HQ主催によってアウトリーチイベントを行う必要がございます。
 実施に当たっては、HQで定めた中長期的な目標及び年度別のターゲット層に適合することと、核融合に関する国の検討状況等も踏まえながらイベントの内容、回数、開催場所等を検討して実施していくということをお願いしたいと思います。
 (3)は、公募による新規アウトリーチ企画になります。こちらのほうは、これまでいろいろな機関でアウトリーチ活動を行ってきていますけれども、原型炉実現に向けて、そのようなアウトリーチ活動の活性化を図るために、各種機関におけるアウトリーチ活動に関する企画を公募し、開催費用の一部あるいは実施についても支援していくというようなことも必要かと考えております。
 (4)としましては、実態把握調査の実施に向けた検討です。やはりアウトリーチを行う上で、やっただけで終わっては実際にその効果があったのか分かりませんので、きちんと効果測定を行うということになります。エビデンスに基づいたアウトリーチ活動あるいは原型炉の社会受容性の向上ということで、こういった活動をしていければと考えております。
 令和6年度は、翌年度の実施に向けて調査項目等について検討するとともに必要な準備を行うことになるかと思います。そして次年度以降に実態把握調査を実施して、エビデンスを積んでいくということになります。
 そして、(5)、ホームページの改訂等による対外的発信の強化です。実際に外部の方がアウトリーチ活動を行う際にも使用する教材が不足していることが活動の遅れにつながることがないよう、フュージョンエネルギーに関するコンテンツを整理し、ホームページの改訂や新たなコンテンツを作成します。これによってそういった方が自由に使えるコンテンツを増やしていきます。また、あるいはHQのこういった活動の周知を促進していくということになります。
 また、これらに加えて、すでに核融合エネルギーフォーラムが実施しているITER/BA成果報告会もアウトリーチ活動の一環と明確に位置づけ、一体的に推進していくということも大事かと思います。
 これらの活動によって、国民との多様な対話の場の形成を進め、原型炉実現に向けた基盤を整備するということが重要になります。
 繰り返しなりますけども、こういった活動、我々、既存の核融合コミュニティーだけでやっていくのはやはり難しいところがございますので、サイエンスコミュニケーションを行う、大学でいうとURAとか、あるいはサイエンスコミュニケーター、そういった方の活用を多角的に行って、多角的に支援、あるいはこの中で実施していくということが大事かと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、ただいま、研究開発、人材育成、アウトリーチ活動について御説明をいただきましたが、御説明に対して御意見、御質問などがありましたらお願いいたします。挙手のボタンを押してください。福家委員、お願いします。
 
【福家委員】アウトリーチ活動で、今御説明のあったサイエンスコミュニケーターについてなのですが、これは具体的にどこの組織がどれぐらいの人を雇うとかという、そういう計画はあるのでしょうか。
 
【笠田教授】非常に大事な観点でして、まず、NIFSの事務局機能というものを強化しないと、外部のサイエンスコミュニケーターだけではなかなかこういった活動の知識とか知見が蓄積できませんので、コントロールタワーというか、きちんと集約する意味でもそういった方をNIFSで雇用していただきたいと考えております。その雇用形態は、こういった御時世ですので、いろいろな形があると思います。遠隔地の勤務でもいいかもしれませんし、クロスアポイントメントみたいなのもあり得るのではないかというお話はしています。
 あと、雇用するだけでは、1人あるいは2人といった体制だけではもちろんいろいろカバーできませんので、やはりサイエンスコミュニケーションあるいはリスクコミュニケーションを行うようなことを専門としているような企業がございますので、そういったところにある範囲を区切って発注していくというようなことで、そういった発注した結果で得られたものをこちらの我々の原型炉に向けたアウトリーチ活動にフィードバックしていく、そういった形が想定されるのではないかと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】武田委員、お願いします。
 
【武田主査代理】本日、私からは2点御質問をさせていただきたいと考えております。1点目でございますが、まずはQSTのほうから御説明のあった公募の課題の一覧でございますけれども、今回、安全性のところで、「安全規制法令に関する予備検討」というところが二重線で打ち消されております。こうした検討は当然重要でございますので、公募以外の方法で今後実施をしていくと理解をしているのですが、こうした安全法令ですとか安全規制に関する御検討がどういった方向で、どういった場で検討がなされていくのかということについて、共有いただけますでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】まずは1点目から、大山委員、お願いします。
 
【大山委員】この二重線で消された部分でございますけれども、安全規制法令に関する予備検討を進める上で、安全性評価コードを開発して、その評価コードに基づいたいろいろな評価の結果を踏まえて安全規制法令に関する予備検討を進めるということでございます。なので、予備検討をしないというわけではなくて、予備検討を進めるに当たってどういった公募をするのかというところを明確化したと御理解いただければと思います。
 
【武田主査代理】政府のほうでもこういった安全性の議論はされると理解をしておりますので、そういった技術的な補強といいますか、そういった公募がなされるものと理解いたしました。
 もう1点でございますが、後半の人材育成とアウトリーチに関する議論でございますが、こういった議論というのは幅広いといいますか、鳥瞰的な視点からの戦略というものが非常に重要であると私個人は考えております。この観点から申し上げますと、全体の戦略観として、人材育成やアウトリーチによって何を達成しなければいけないのかという戦略観の議論と、その下にあるような施策の議論、どういったプログラム、どういった取組でそれを達成するのかという議論が、2つ層が違うと考えているわけですが、どうしても本日の議論は、このうち施策の検討の議論が多かったように感じております。そういった意味で、今後の方針といたしまして、人材育成やアウトリーチに関する全体的な方向の指針というものは引き続き委員会のような場で議論をされるのか、それともそういった全体感も含めて、HQですとかNIFSのほうでも議論が行われるのか、そういったところについてももし御共有があればと思っております。現段階で方針がないということであれば、そういったことを検討するべきというコメントとさせていただきます。
 
【坂本瑞樹主査】大変貴重な御意見ありがとうございます。事務局から回答していただきたいと思います。
 
【馬場戦略官】御指摘ありがとうございます。ぜひ後半の議論でもそういった御指摘、御議論をしていければいいかと思っております。
 私も、かつての委員会での指摘、実は今読み直しても当てはまる部分も多く、大事なことは、それをしっかりと執行するというところが今回の取組のまずは肝になっているかと思います。
 加えて後半では、これだけではなくて今後さらにそれを拡大、拡張していくためにはどうすればいいのかというところについては、国並びに委員会、TFでも大枠は議論していくべきなのかなと思っています。
 ただ一方、人材育成、アウトリーチ、どちらもマイクロマネジメントまでを委員会、TFでやろうとするとどうしても手いっぱいになってしまいかねないというところもあるので、大きな方向性、マクロなトレンド、そういったところを明確に示していただくことが重要かなと思っております。
 また、先ほど1つ目の質問で大山委員が答えられていましたが、当然安全性の部分については政府でないとできないというような部分もあると思っています。その部分も、QSTで今回取り組んでいただくべきところも踏まえながら政府として取り組まないといけないというところは、今後、国家戦略を踏まえれば、内閣府中心に検討していくということを予定しており、自分も内閣府の立場としてそういったものをこれからやっていくと思っています。来年度以降、本格化できるかと思います。それについても次回のTFで御報告させていただければと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】市口先生が今日御説明くださりました人材育成の部分、原型炉開発を推し進めるために必要な人材育成の部分で、ISSの開催を第一義的に集中して行われるということで、今日、ISSの他に大山委員からJIFSというものも御紹介いただきました。それらは毎年若しくは隔年で開催されているものと思います。それに加えてFSSの実施ということで、合宿形式のものが、少し類似していると思われるものが似た時期に開催されるというようなことになっています。先ほど武田委員からもありましたけども、人材育成に関しては、プラズマのみならず、幅広い範囲、サイエンス、非サイエンス含めて広く捉える、俯瞰的に見るべきだろうとは考えておりまして、そういったグランドデザインの観点から、こういった合宿形式のものがどう相互に連携していて、さらにもっと言ってしまうと、学生から見た時に、どれにどう参加してどのようにキャリアを積んでいくのかというのが見えるようになるといいかなと思いました。その辺り、特に来年度以降、大学院連携で推し進めるであろうFSSについて、どういったお考えがあるかというのを教えていただきたいというのがまず1つ目です。
 
【市口教授】確かにおっしゃるとおり、来年度、JIFSとISSが並立するという形にはなります。ただ、少し開催の趣旨とか、それから対象となる方々も、若干違うところを向いているのかなというところで、必ずしも同じものを繰り返しやっているというふうなことにはならないとは思っております。
 特に今回、ISSに関しましては、非常に大規模な形でいろんな方々が参加されます。国内外のいろいろな方々、日本ももちろんそうですけれども、アジア圏であるとか、特に欧州にこだわらず、アメリカとか、そういう国々の方々もいらっしゃいますので、そういうところの交流を非常に大規模で進めていけるというところが、ある意味特色として考えられるところではないかと考えております。
 こういうところを実績としましてFSSのほうにつなげていきたいというのが我々の考えです。FSSのほうではさらに対象はいろいろと広げられますので、いろいろ他の分野の方々にも参加できるような、非常に柔軟にテーマを設定して参加していただけるような形を想定しています。これももちろん1回で終わるという形ではございませんので、いろいろな幅広いテーマに対して柔軟性を持ってやっていくことによってその特色が出ると思います。最終的には、前回も申しましたように、原型炉開発の人材の母数を広げていくというところにつなげていければいいと考えているところです。
 
【近藤委員】市口先生から御回答いただいたように、最終的に何を目指していくのかという、原型炉に対してどういった人材をどういったタイミングでどう整備していくのかという、そういったところから逆算しながら、必要な人材がしっかりと整うような、そのようなグランドデザインを描いた上で、合宿形式に限らず、そういった合宿形式を取り込んだ有機的なネットワークのようなもので核融合人材をしっかりと維持していってほしいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】大変重要な御指摘だと思いました。奥本委員、お願いします。
 
【奥本委員】皆様の議論にもありましたように、私も、アウトリーチも人材育成も、例えば初めての方に対してはオンライン授業を活用したり、様々なステークホルダーを設定したりというふうに、手法においても、そして対象においても多様性が必要な企画なのではないかなと思います。
 そのため、QSTやNIFSが代表機関にはなっているのですが、そこが戦略のワーキンググループみたいな部分をしっかりと編成していただいて、NIFSやQSTだけで戦略全てを担うというより、より多様な多角的な視点で専門家のワーキンググループを作って、そして実施されてはいかがかなと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。これも非常に重要な御指摘だと思います。梶田学術調査官、お願いします。
 
【梶田学術調査官】奥本先生の御意見もありましたけれども、やはり人材育成とアウトリーチ活動、すごい深く関与しているということを感じました。今御説明ありましたとおり、HQが、新たに規定も改定しながら、具体的な方向づけをされながら進んでいくというのは素晴らしいと思いました。一方で、人材育成とアウトリーチが深く関与しているという中で、前回も車の両輪のようなものだということがあって、本当にそのとおりだと思うわけですが、人材育成がアウトリーチ活動の中で、具体的にHQの中で議論していけるのがいいのではないかなということを重要だと思いました。
 そのためにも規定の中に、可能であれば、そのことを盛り込んでいただいて、具体的に動けるようにしていく必要があるのではないかと思いました。
 これまで2年間、HQの会議に参加してまいりましたが、そのことで負担が生まれるということはないかなと感じております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。戦略官も言われましたが、HQで人材育成をしっかりみていくということを実効的にするということは非常に重要なことだと思います。吉橋委員、お願いします。
 
【吉橋委員】QSTの公募に関してお願いがあります。優先的に実施すべき研究開発項目で二重丸がついているところがいくつかありますが、先ほどQSTのところに出ている二重丸であるとか、ここでは挙げられてない項目は、これまでどおりQSTでいろいろな共同研究等で進められると思いますが、やはりそういったところももっと見える化できるほうがいいと思います。今後、こういった原型炉を加速させていくには、どういった項目が議論されて、どういった項目が検討されて実施されているのかということをもう少しこういった場で見えるような形にしていただけるといいなということを思いました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それではこのセッション最後に、古賀委員、お願いします。
 
【古賀委員】15ページのところでNIFSの市口先生から御説明いただいた人材育成の2番目のところ、大学間連携による教育システムの構築ですけども、やはりきちんとしたものを作るには結構時間をかけて相談しないといけないというのは分かるのですけども、ぜひ令和6年度に検討開始というだけではなくて、上半期ぐらいで案を作って、下半期では少し動いてみる必要があると思います。改良を加えながらコミュニティーの意見も取り込みながら進化させていくというような形で、ぜひスピード感を持って進めていただければと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。皆様から大変貴重な意見をいただきました。
 それでは、来年度の原型炉実現に向けた基盤整備については、御提示いただいた内容で進めさせていただければと思います。本日事務局から御提示いただいたもので進めさせていただければと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 本日、いくつか御意見いただきましたので、いただいた意見も踏まえて、来年度から原型炉実現に向けた基盤整備が円滑に進められるよう、QST、NIFS、HQを中心に準備を進めてください。
 また、TF委員の皆様におかれましても、引き続き御協力をお願いいたします。
 それでは、続いて、議題2「フュージョンエネルギーの早期実現に向けて」に移ります。まずは、この議題に関して事務局から御説明をいただき、その後、各委員から御意見をいただきたいと思います。それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】資料2に基づきまして、フュージョンエネルギーの早期実現並びに国家戦略の加速に向けて、今後どのような取組をすべきか、事務局からの説明の後、委員の先生方から御指導いただく時間を設けたいと考えております。
 まず、3ページ目、改めて国家戦略の概要です。これは繰り返し御説明しておりますので、詳細は省きますが、この3本柱に沿ってこの1年間どのような取組を推進してきたのか改めて説明したいと思います。
 先月開催されたCSTI、総理を議長とする場の資料ですが、その抜粋を入れております。こちらの場でも御報告させていただきましたが、まず左側、産業育成戦略については、現在、協議会の設立に向けて21社の発起人の方と議論を重ね、ようやく最終段階に来ており、近々公表できる見込みです。
 名前は仮称から変わる予定ですが、来週には、お披露目の場ではないですが、アメリカ・ワシントンDCにおいて、アメリカの業界団体と共催のイベントを開催するということなども予定しております。
 その下、スタートアップに対する支援については、TFでも御報告をいただいているとおり、4社に対する支援をこの秋に発表したところです。
 右側、技術開発戦略については、政府として、10個目の目標として、フュージョンエネルギーに関するムーンショット目標を決定し、今月には公募を開始する予定です。
 加えて、JT-60SAについては、繰り返しお話ししているとおり、初プラズマを生成し、日欧共同プレス声明にも署名したところです。
 さらに、下の推進体制については、前半議論したように、今回初めて原型炉基盤整備の枠組みで予算を措置し、QSTを中心にアカデミア、民間企業が参加する実施体制を構築するとともに、大学間連携による教育プログラムの提供、これは先ほどコメントがあったとおり、できる限り早く我々も進めていくべきだと思っております。こういった部分やITER、JT-60SAを活用した人材育成を推進していきたいと考えております。
 一番下に今後の方針を書いております。ITER、JT-60SA等で培った技術や人材を最大限活用して、国際連携も活用し、原型炉に必要な基盤整備を加速すること。
 また、協議会とも連携し、安全確保の基本的な考え方、これは内閣府のほうで近々本格的な議論を開始したいと思っております。基本的な考え方を策定するなど、フュージョンエネルギーの早期実現、関連産業の発展に向けた取組を加速していくということが、CSTIの中でも示され、了承されております。
 本日は、書かれている取組を、具体的に何をすればいいのか、まさにビッグピクチャーの部分をぜひ先生方からのバックラウンドを踏まえた問題意識を我々のほうに御指導いただければありがたいと考えております。
 まず、その外形的な要因として、海外の状況について改めて御紹介したいと思います。
 「国際競争の激化」というタイトルにしております。まず、左下、こちらNHKの報道の写真を持ってきておりますが、私も昨年末にアメリカに出張してまいりました。政府機関だけではなくて、産業界含め、日本の技術、人材の高い期待を肌で感じることができました。ぜひ協力したいと、どこ行っても皆様からおっしゃっていただきました。
 ただ、問題意識としては、海外のスタートアップで本当に多くの日本の方々が活躍されているというところを見ることができて誇らしい面がある一方、海外からではなく、日本からの出資も受けているスタートアップも数多く存在しておりました。そういったものを見ると、やはり日本には必要な人材、技術、さらには資金があるはずなのに、海外のスタートアップにそのまま流れてしまっているということが、一方向になってしまうということはやはりマクロのトレンドとしては問題ではないかと改めて危機感を持って帰ってまいりました。
 前半、議論した人材育成もそうですが、これから必要な人材を逆算的に考えて養成するということが必要だと思っておりますが、そういった彼ら、彼女らが行き先がなく双方向ではなく一方的に海外に流れてしまうというところは避ける必要があるのではないかと考えております。
 また、右下、中国の施設です。こちらイメージ図ではなくて、実際の施設の写真となっております。1月に日中韓の政府間会合があり、こちら、中国の安徽州合肥にある核融合施設を視察する機会がございました。皆様も御案内のとおり、中国、こちらには先進型超伝導トカマク実験装置(EAST)というものに加えて、CRAFTと言われる、原型炉に向けた実証施設をすでに建設しており、中国国外からも人材や投資を獲得するため、例えばこの施設の中には大規模の会議場や宿泊施設、科学館、さらにはジムのようなスポーツ施設なども整えており、魅力的な試験施設はもちろん、国としても、州政府としても積極的に取り組んでいくというような姿勢を見てとれたという中で、我々日本としても適切な対応をこの機会にしていかなければならないと改めて思ったところではあります。
 各国における取組です。まず米国については、先ほど申し上げたとおり、スタートアップについてNHKなどでも報道されておりました。TAEテクノロジーズ、これは皆様御案内の方もいらっしゃるかと思います。多くの日本人が活動をしており、また、民間からの大きな資金を得ておりますが、例えば、NIFSであったり、日本大学であったりとか、そういったところとも長年研究協力をしているところになっております。
 また、下にアメリカのフュージョン・インダストリー・アソシエーション(FIA)というところのインタビューも掲載されておりました。こちらはメンバーリストが載っておりますが、日本のスタートアップや企業もメンバーとして多く加わっているというような状況になっております。
 米国の政策動向については、パイロットプラントの運転を開始するため、パブリックプライベートパートナーシップでスタートアップに対しての支援措置などが進められているのに加えて、先ほどの議論でもありました規制に関しても、先行して議論が進んでおり、核融合施設については、核分裂の規制とは異なり、加速器等に適用する規制を基にするというような方針をすでに公表し、いろいろな議論が進んでいるというところでございます。
 10ページ目、これも前回御報告しましたが、昨年10月のCOP28において、ケリー特使がアメリカのフュージョンエネルギーの実現に向けた国際連携強化の戦略を発表しております。
 5本柱で構成されておりますが、研究開発、人材育成に加えて、最後の理解増進など、どの分野を見ても日米協力できる余地があると思っております。
 我々としては、こういった同志国との連携をうまく活かしながらフュージョンエネルギーの実現に向けた取組を行っていくというところが必要かと考えております。
 中国についてです。中国は先ほど申し上げたとおり2050年代の発電実証に向け、圧倒的な予算を投じ、政府主導で計画を進めています。
 左下にある核融合の要素技術を獲得するための大規模試験施設群、CRAFTというものを2019年建設開始し、核融合に必要な機器ごとに大規模試験をすでに実施しております。
 イギリスです。イギリスにおいては、2023年10月に、もともと策定していた戦略を更新し、2040年までに原型炉に相当するSTEPという球状トカマクの炉を建設するというような方向性を示しています。さらには建設地を選定するとともに、2024年までの予算措置としてすでに金額含めて公表しております。
 また、規制についても、このTFでも御報告しましたが、日英、またカナダを含めて、Agile Nations(アジャイルネーションズ)の枠組みがありますが、イギリスにおいては、核分裂の規制を核融合施設に適用しない旨を記載する法律が昨年10月に成立しております。具体化はこれからかと思いますが、中身というところについて検討がさらに進んでいくということが予定されています。
 イギリスにおいては、EURATOMからの離脱とともに、研究開発だけでなく、人材育成の取組など総合的な取組を問題意識、危機感を持ちながら進めている中で、彼らからも日本とぜひ協働していきたいというような働きかけが実際にあるところでございます。
 欧州においては、当然BAの枠組みがありますが、欧州自身においても核融合発電に向けたロードマップを改定中と聞いております。ITER、DEMOの意思決定の接続性を減らすため、並行化を志向しております。
 また、我々が協力できるところとして、人材育成、JIFSなどの取組において大臣級の意思表明などもしております。
 最後、議論に向けたアイテムをお示ししたいと思います。ITER機構長が来日した時に総理の表敬をしております。この中でも述べておりますが総理からもフュージョンエネルギーというような言葉を政方針演説でも取り上げていただいております。バイオ、量子と並んで、フュージョンエネルギーについても中長期的視点を持って取り組み、投資促進、規制改革を進めるというような意思を国としては示しております。
 改めて我々としては、フュージョンエネルギーの早期実現に向けた取組を加速する必要があるところではありますが、具体的に何をしていくべきか、この機会に委員の先生方の議論をお伺いしたいと思っております。
 これまでの議論を踏まえて必要な取組例を次のページに記載しております。現在、世界各国が大規模投資を実施し、自国への技術・人材の囲い込みがさらに加速しております。日本の技術・人材の海外流出を防ぎ、世界のハブとなるため、我が国のフュージョンエネルギー・イノベーション拠点化を推進するなど、エコシステム構築に向けた取組を強化するべきではないかということを考えています。
 こういった問題意識、また事前の先生方のディスカッションを踏まえて、8個、取組例として記載しております。
 この後ぜひ先生方から、さらに強化すべき取組や抜けている観点などございましたら、先生方の御知見、問題意識に基づいて御指摘いただければ、我々としても、今後、政府部内の調整においてしっかりと取り組み、打ち込んでいきたいと思っておりますので、ぜひ御指導、御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 
【坂本瑞樹主査】大変ありがとうございました。加速に向けた力強い取組例を出していただきました。
 それでは、委員の先生におかれましては、お一人、一、二分で、フュージョンエネルギーの実現に向けて今後どのような取組が必要と思われるかについてお話しいただきますが、まず武田主査代理から御説明いただき、その後は名簿順に従って大山委員と続いていきますので、よろしくお願いいたします。それでは、武田主査代理、お願いします。
 
【武田主査代理】大変力強い御提示をいただいたと考えておりますが、中でも第一に私のほうから申し上げたいのは、早期実現への加速ということを今回政府の中でも繰り返し力強く言及をいただいておりますので、ぜひこれを本来の意味で捉えまして、実現時期の見直し等についてもTFの中で検討するべきではないかということが私からの第1点目の発言でございます。
 その上でいかにしてそれの実現をしていくかという観点でございますが、先ほどの御説明でも中国でCRAFTのような統合施設、DT燃焼を行うようなBESTですとか、英国の中でもH3ATやRACEのような個別施設が次々と原型炉に向けて建設されているわけでございます。
 我が国も、こういった観点を考えますと、いきなりJA-DEMOではなく、それ以前に例えばDT燃焼プラズマ等の成果の実証ですとか、そういったトリチウム系の工学技術の実証、こういったことの観点で、BESTのような建設、運転、こういったことも焦点の外にするのではなく、こういったことも含めて検討がこれからできれば、JA-DEMOに向けた課題というものが大きく低減するのではないかということを御発言申し上げたいと思います。
 最後に、こういった建設等の推進に当たっては、イギリスの事例で、UKIFSという法人の設立があったという御説明がございましたが、我が国でも官民パートナーシップを目的とした新たな主体の設立を含めた検討がなされるべきであるということを御発言申し上げたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続きまして、大山委員、お願いします。
 
【大山委員】基盤整備の加速やイノベーション拠点化に関する部分につきまして意見を述べさせていただきます。
 ITER計画が開始された際は、概念設計活動の後、工学設計活動を実施し、その中で中心ソレノイドモデルコイル、ダイバータ遠隔操作、ダイバータカセット、トロイダルモデルコイル、真空容器セクター、ブランケット遠隔操作、ブランケットモジュールの大型の工学R&Dを実施しました。これらの経験があったからこそ、ITER計画では主要機器の調達を日本が分担できたものと考えています。
 原型炉研究開発ロードマップでも、CR2以降に工学設計・実規模技術開発に着手するという計画になっています。
 しかし、事務局より先ほど示された資料の「各国における最近の取組」でも紹介されましたように、特に中国では大規模試験施設群CRAFTの建設を進めるなど、核融合の要素技術の獲得に向けて大規模試験をすでに開始しており、日本の優位性は失われつつあります。
 今後日本が周回遅れになることを回避するためには、ITER計画やBA活動で得られた日本の技術や人材が散逸する前に研究開発を加速すべく、工学設計・実規模技術開発に不可欠な大規模施設・設備の整備にできるだけ早く着手することが必要であると考えます。
 具体的には、APで必要とされているトリチウム大量取扱施設、ブランケット試験施設、大規模遠隔保守・炉内機器保守技術開発施設、中性子照射施設、超伝導機器試験施設、ダイバータ試験施設、ビーム加熱・高周波加熱装置試験施設などの大規模施設・設備の整備に今から着手し、今後予定されております工学設計・実規模技術開発フェーズにおける工学R&Dを加速するということが重要であると考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて、奥本委員、お願いします。
 
【奥本委員】社会連携の部分から意見述べさせていただきます。アップストリームエンゲージメントといって、開発の初期段階、上流工程の部分から市民や社会を巻き込んで責任ある開発を行っていくというのが現在の世界の研究開発の潮流になっております。
 そのため、このような活動を加速する場合に、もちろんアウトリーチみたいに、少し倫理的な部分や感情的な部分のケアも必要なのですが、今後は、法的な整備や社会的な基盤整備のような部分も、ELSIと言われる、そういう部分も含めて検討していく必要があると思います。
 AIなど、すでに日本のR&Dでは、アップストリームエンゲージメントを政府や研究機関主導で行って、技術的な研究者とは別にしっかりとアップストリーミングエンゲージメントを行うような研究プロジェクトがもう立ち上がっています。核融合においてもそのようなプロジェクトを立ち上げる時期に来ているのかなというふうな印象を持ちます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続きまして、木戸委員、お願いします。
 
【木戸委員】やはり日本国内でフュージョンエネルギーの産業化ということを進めるためには、一本筋の通った骨太の原型炉開発というのはどうしても不可欠だと思っております。先ほど大山委員もおっしゃられていましたけど、やはりITERで培った核融合の技術のコア人材を業界に確保し続ける、国内に確保し続けるためには、やはり大規模の原型炉のR&Dを一刻も早くもの作りとして始めて、各社でベースロードを確保することが必要だと考えます。
 昨今の民間スタートアップのマスコミ報道の過熱もありまして、相対的に少し原型炉の開発の存在感が薄れているような印象があります。ぜひ、今日提案いただきました開発強化の施策を積極的に国としてアピールいただいて、姿勢を示していただくということに期待いたします。
 最後に、今の核融合の追い風に乗って世論を味方につけるためには、やはり発電を実証するということを示すことが一番だと思っておりまして、その観点では、今の原型炉、これをできるだけ前倒しするということ必要だと考えております。私個人としては、要求目標を下げてでも、小型化、コストダウン化の検討をいま一度、TFも含めて議論して、より実現性の高い炉にするということも念頭に置かなければいけない、そういう時期に来ているのではないかと思っております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて古賀委員、お願いします。
 
【古賀委員】核融合に関しては追い風が吹いているとは感じるのですけども、やはりうまく利用しないと、海外に先を越されてしまうとかなり厳しくなってくると思います。ですので、日本企業が日本の核融合ベンチャーにしっかりと出資するような、日本国内の優れた技術にしっかりと資金が注入されるような仕組みをうまく作って、協議会とか今回立ち上がりますので、そういうものでうまく政府としてもガイドしていっていただきたいと思います。
 あと、大学間連携で人材育成するというのは非常に大事なことですので、なかなか核融合の研究は小さな大学では進めにくいところもありますので、大きな施設のある大学とうまく連携を進めていくようなことがこれまで以上に大事になっていくと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】核融合に関しましては、先ほど馬場戦略官のスライドにもありましたように、インフルエンサーの方がYouTubeで取り上げるような状況になってきておりまして、さらには最近ですと自民党の中にフュージョンエネルギープロジェクトチームというのが立ち上がったというようなニュースもございました。
 こうした中で核融合炉が社会に実装されていく、今後社会に受け入れられていくようになる上で、やはりアウトリーチというものを長期にしっかり行っていくのが大事だと思っています。
 そういった意味で、先ほども説明があったのですけども、HQというものが、委員会組織のような状態でいいのか、それともさらに機能を強化していかなければいけないのかというところ、今後もしっかりとコミットしていきたいと考えております。
 さらに核融合はそもそも平和利用で、世界の平和のために我々研究しているという強い思いがございます。そういった意味では、平和というのは1つの国では達成できず、他の国と一緒に達成していくという意味では、国際連携の強化というのは欠かすことができないと思っております。こうしたことを広く推し進めるためには幅広い人材が必要と思いますので、人材育成をしていく必要がある。この辺をしっかりと押さえていくことが重要なのではないかと考えています。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。続いて坂本隆一委員、お願いいたします。
 
【坂本隆一委員】私からはNIFSにおけるフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の加速に向けたNIFSの取組と構想を紹介したいと思います。
 NIFSではフュージョンエネルギーの実現に向けて、核融合研究の中核拠点の形成を構想しています。新しいステークホルダーとして、ベンチャー等がクローズアップされていますが、このことに対応するため、ソフト面としては、すでに今年度からユニット体制や学際連携センターを設置して、学術研究、開発研究、そして産学連携の3つのフロンティアに向けた学際化に取り組んでいます。
 そして今後は、ソフト面に加えて、ハード面の取組として、建設後30年がたち、陳腐化しつつある実験棟の大規模なリノベーション、アップデートを行うことによって研究基盤の整備を行いたいと考えています。このことによって、共同研究体制の底上げを行い、原型炉実現に向けたイノベーションの指導原理を構築する役割を高める構想です。
 さらに、核融合研究では、大型の実験設備が必要であったり、安全面の管理が必要だったりしますが、このようにして整備した研究基盤というものを、NIFSが産業界、特にスタートアップ等に提供することによって、スタートアップのチャレンジをさらに引き出すことを構想しています。
 そして、NIFSに国際的かつ学際的な人流の中核拠点を形成することによって、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の加速に向けて取り組んでいきたいと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて、鈴木委員、お願いします。
 
【鈴木委員】私からはJT-60SAを運用している立場からお話をさせていただきたいと思います。
 まず、JT-60SA計画をしっかり進め、ITERを除けばJT-60SAのみができるような原型炉に向けた研究開発をしっかり行っていき、成果を出し、そしてアウトリーチを含めて国民に積極的に成果を発信し、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を盛り上げていくということが重要だと思います。それによって、今動きつつある基盤整備やムーンショット型研究開発制度などを最大限活用し、APを進めていくことが必要だと思います。JT-60SAの研究開発を軌道に乗せ、実績と成果を積み上げていくということが大事だと思います。
 その加速のためには、JT-60SAやITERが、本来やるべきコア技術の獲得とか、原型炉の基盤となる研究開発に加えて、先ほど大山委員からもありましたように、拠点化のための整備・運用等を、しっかり今すぐやっていくために、それらを実施する人的な資源の強化というのが加速にとって必要ではないかと考えます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて馬場委員、お願いします。
 
【馬場委員】先ほど人材育成、アウトリーチは、両輪でというお話があったのですけども、人材育成側にも関連しますが、やはり育った人の受皿というのですかね、その先の確保がやはり大事だと思っています。企業としても当然、先ほど木戸委員のほうからもありましたけれども、人材を維持するというのが大事ですが、私が言うのもはばかられますが、やはり研究者側というのでしょうか、特に原型炉を開発するに当たってQSTが主体となって行うとなった時に、予算はついたけど、そこをうまく取り仕切っていくためにどうしていくかといったことが今後も課題の1つになってくるだろうと思っていますので、そういったところはぜひ、人材育成を進めながら、もう一つの基盤として検討いただけたらいいのかなと思っております。
 あともう1点は、APについてなのですけれども、今のAPの項目を拝見しますと、やはり核融合の炉側といいますか、そちら側の開発というのがかなり主要といいますか、主体的になっています。
 一方で原型炉というのは発電実証するプラントでございますので、それを見ますと、やはり発電側の要素というのをもう少し今のうちから見れるようにしていく、明るくしていくというのが一つ大事なのではないかと思います。今のところ、炉設計の炉本体の開発項目として上がっているのですけども、もう少し見える化をして、加速するのであれば、こちらは産業界側のほうがいろいろと知見を持っているでしょうから、協議会が新しくできますし、そういったところにいろいろなプレーヤーの方々を巻き込んで、10年後の開発の工程なりというのを見える化していったらどうかと考えています。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて福家委員、お願いします。
 
【福家委員】私のほうは視点を変えまして、やはりフュージョンエネルギーを推進していくためには、国が核融合を推進していくという、そういう強いメッセージを常に出し続けていただく必要があると思っています。核融合が我が国のエネルギー政策の中でどういう位置づけにあるのか、どういうことを期待されているのかとか、こういうことを明確化していくことがきっと必要なのだろうなと思います。
 第7次のエネルギー基本計画の検討というのもそろそろ来年度始まっていくと思いますので、その辺りの検討の中で核融合の位置づけというものを明確化していっていただければなと思っております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて藤岡委員、お願いします。
 
【藤岡委員】先ほど来、原型炉開発を進める上で多様な人材が要るということがありました。そのような人材というのは、大規模な研究所とか大規模な大学だけで担えるものではありませんので、原型炉開発に関わる研究というのは、公開・非公開の線引きを明確にした上で、公開できるものに関しては、やはりオープンサイエンスのポリシーに基づいて共有していくことが必要と思います。共有していくというのは単にデータを出すだけではなくて、データに付随するメタ情報がしっかりと付与されていて、新規参入するような方でも、このデータがどのような条件で取られたものなのか、作られた装置がどのような設計図と思想に基づいて作られたものなのかというのが分かるようにしていく必要があると思います。
 ですので、このような追い風で非常に大きな形で核融合研究が進む中で、やはりオープンサイエンスというものを視野に入れて、それに資するように、単にデータを出すだけではなくて、そこに付随するデータをしっかりとつけたような形で、いろんな大学、いろんな立場の方々が研究に関われる、そういうふうなことを作るのも大事ではないかと考えています。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。続いて、横山委員、お願いします。
 
【横山委員】私の専門から安全確保という観点、安全規制、基準という観点からお話をさせていただきたいと思います。こちらにも記載のあるとおり、国際協調による規制の策定という、基準化ということがありますけれども、国際動向に注視し、日本独自という部分もあるかもしれないですけれども、国際基準を踏まえ基準を策定していくということが重要だと考えております。
 ただ、規制が厳し過ぎるということになってしまうと物事が進まないということがございますので、合理的な規制、基準といったものが必要になってくるかなと思っております。
 ただし、各国の状況を踏まえますと、原子力施設のような規制を適用しないというような方向性があるかと思いますけれども、トリチウムの取扱いということに関しては、軽んじることなく、今後しっかりと考えていかなければいけないことだなと思っております。
 先ほども申し上げましたけれども、ただし保守的過ぎずというところが重要かと、早期実現に向けて取り組んでいかなければならない課題かと思います。
 それからもう1点、これに関連してということになりますけども、社会的合意という観点からも、炉の形と形状、それから、どういうものができてくるのかということが明確にならないと一般の方々に説明するのは難しいとは思いますけれども、プラスの面だけでなく、リスクに関してもしっかりと丁寧に説明していくべきだと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。これで御出席いただいている委員の皆様から全て御意見をいただいたと思います。
 最後に主査の私から少し発言させていただきます。皆様の御専門から大変幅広い観点から大変素晴らしい御意見をいただいたと思います。ほぼ全てが出そろっていたと思いますが、少し細かいことで一つ述べさせていただくと、先ほど大山委員が言われたように、まさに基盤整備、今後に向けてやっていくことは非常に大切です。それに加えて、既存の設備、大学の設備とか、そういうものを効率的に運用していくということで、より効率的な加速ができるのではないかと思いますので、大型に加えて、大学の基盤を、すでにあるものをうまく活用するというシステムを作っていただければと思います。
 あと、少し精神論になりますが、やはり日本は個々の力は非常に強いのだと思います。ただ、この強い力のベクトルがそろわないといけないと思います。ラグビーのスクラムでも同じ方向にみんなで押す、引きつけ合って押すということで大きな相手を押していけるということですから、アメリカや中国の今の流れを押していくためには、QST、NIFS、各大学、文科省、政府も含めて、原型炉開発、原型炉を早く進めるんだというところの同じ方向に向かってしっかり連携しながら推進していくことが大事だと思います。
 そういう意味で、人材育成も、アウトリーチ活動も一体化して、原型炉開発に関しても、QST、NIFS、大学を巻き込んで同じ方向で、みんなの力を結集して進むべきと思いますので、そのシステムに関しては、事務局のほうで知恵を絞っていただいてよいシステムをうまく作っていただければと思います。
 それでは、これで全員の意見がそろいました。いろいろな大変素晴らしい御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 事務局におかれましては、今後のフュージョンエネルギーの実現に向けて様々な施策を検討する際に本日のTFの意見も活かしていっていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 次回のTFは5月頃開催を予定しております。追って事務局から日程調整をしていただいた上で、改めて開催日時を御連絡いただきます。
 本日のTFはこれで閉会といたします。御多忙中、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

   髙木、樋口
   電話番号:03-6734-4163