高等教育の在り方に関する特別部会(第4回) 議事録

1.日時

令和6年3月27日(水曜日)10時~12時

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)伊藤公平、大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、寺門私学部長、西條大臣官房審議官、伊藤文部科学戦略官、奈良文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、吉田学生支援課長、神山私学行政課長、桐生私学助成課長、村上私学部参事官、髙見高等教育政策室長、篠原私学経営支援企画室長、下岡参事官(国際担当)付留学生交流室長、中村高等教育局視学官、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長ほか

5.議事録


【永田部会長】  おはようございます。第4回の特別部会を始めます。年度末に集まっていただき、ありがとうございます。
 本日もハイブリッドの形式で行います。オンラインで御出席の方々は、正確に、自由に発言できる環境であるという前提です。
 事務局から連絡事項とこれまでの議論の経過等の概要について、御説明をいただきます。
【花田高等教育企画課課長補佐】  失礼いたします。本日はハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言ください。また、御発言後は再度、挙手のボタンを押して表示を消していただきますよう願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど、御配慮いただきますと幸いです。
 本日の会議資料は、事前にメールでお送りしているとおりでございますので、御確認願います。また、会場のiPadには、本日の会議資料をチャットにてお送りしておりますので、併せて御確認いただければと思います。以上です。
【髙見高等教育政策室長】  続きまして、私のほうから主な意見の整理等についての状況を報告したいと思います。
 資料1-1を御覧いただければと思いますが、これまで特別部会等における主な意見の整理ということで、事務局のほうで改めて整理し直したものを提示しております。特に2ページ目以降の点線の中で主な意見ということを明示した上で、それらを整理した考え方というのをゴシック体で示しております。
 また、6ページにあるとおり、前回、留学生や社会人、そういったことの議論を中心に、議論を深めていただくとともに、また、7ページにありますように、地方圏でのアクセス維持の方策についても、多々御意見いただいたところです。
 これまで諮問事項の1である高等教育の目指すべき姿や、諮問事項2の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育のアクセス確保の在り方に該当する事項として、1ポツから5ポツまでの事項を中心に御議論を重ねていただきましたが、その中でも、例えば、都市部、あるいは東京圏における取扱いや、規模の適正化に向けた連携再編の在り方を含めて、引き続き議論をいただく観点もあるかと存じますので、本日の討議の中で御議論いただければと考えております。
 また、資料1-2では、前回特別部会でいただいた主な意見、そして資料1-3では、3月12日に開催されました大学分科会でいただいた主な意見を参考として添付しておりますので、併せて御確認いただければと存じます。
 それから、参考資料、参考データにつきましても幾つか追加しておりますので、主立った内容について御紹介したいと思います。
 まず、参考資料1の参考データ集75ページを御覧いただければと存じますが、こちらに学部段階の入学者につきまして、留学生、社会人の内訳を明記するとともに、従前試算としてお示しした2040年値の推計も含めて、学部段階の入学者に関する全体の規模感を整理した資料を新たに追加してございます。
 それから、データ集149ページでは、民間の研究団体が調査を行ったものとして、学校の定員削減や募集停止について取り組んでいる実態について行ったアンケート結果を追加するとともに、150ページにあるとおり、学校再編に取り組む上での課題について、規模別に整理したもの、さらに、151ページにあるとおり、大学経営に対する将来見通しや、152ページにあるとおり、新たな需要獲得方策についても資料としてお示ししているところです。
 また、参考資料2の参考資料集では、51ページにあるように、主要国における大学の設置認可、また、質保証制度の状況に関する資料を追加するとともに、103ページから107ページにかけて、定員管理に関する大学設置審査、あるいは基盤的経費の配分に関する扱いについて、定員超過の定員充足に分けて、現時点の状況を整理したものを追加しています。
 ページ数が黄色になっているところが新たに追加したものですので、こちらも併せて御覧いただきながら御確認いただければと存じます。
 それから、参考資料3を御覧ください。博士人材の社会における活躍促進に向けたタスクフォースを文部科学省において設置し、昨年11月から、盛山文部科学大臣の下で議論を深めておりましたが、昨日、「博士人材活躍プラン 博士をとろう」として取りまとめられました。
 まず、2ページ目を御覧ください。文部科学大臣のメッセージとして、学生、大学関係者、産業界の皆様に向けたメッセージを記載しております。
 また、3ページ目、意義、目的でありますけども、博士人材というのは深い専門的知識、あるいは汎用的能力に基づいて、社会全体の成長発展を牽引することができる重要な存在であるということとした上で、我が国では博士イコール研究者というイメージが一般的ですけども、グローバルスタンダードというのは複雑な課題への解決策を提示できるものに与えられる国際的な能力証明であることが、社会に十分に共有されていないという課題があるとしております。その上で、社会がより高度化、複雑化する中で、大学院教育の充実や、社会全体で博士人材の価値を共有しながら、国内外の様々な場で活躍できる関係を構築することによって、博士人材の増加を図ることが必要としているところでございます。
 また、4ページ目の目指す姿では、博士人材がアカデミアのみならず、多様なフィールドで活躍する社会の実現ということを示しています。
 さらに、5、6ページの課題、現状では、特に5ページ目の左のグラフにございますように、主要国における博士取得者数、これ、日本が低迷している状況ですけども、欧米各国の先進国のほうでは、非常に博士取得者が多いということですので、その辺りの実態について掲載しているところでございます。
 それから、7ページ目の取組の方針では、産業界と連携した幅広いキャリアパスの開拓、また、教育の質保障や国際化の推進などによる大学院教育の充実、そして、博士課程学生が安心して研究に打ち込めるための経済的支援の充実、そして初等中等教育段階からの切れ目ないモチベーションを高める取組を掲げた上で、8ページ目以降でございますが、この取組方針を踏まえた具体的取組として、第1に、社会における博士人材の多様なキャリアパスの構築として、例えばジョブ型研究インターンシップを推進していくこと、さらに10ページ目、第2に大学院改革と学生の支援充実として、世界トップ水準の大学院教育を担う拠点形成に向けた大学への支援や、優秀な博士課程学生への経済的支援を充実していこうと。
 さらに、12ページ、第3の柱としまして、学生本人への動機づけの取組として、初等中等教育段階での探究学習ですとかキャリア教育の充実を掲げております。
 さらに、13ページ目からになりますが、文部科学省から始めますということを書いております。中央省庁におきまして、博士人材の活躍がまだまだ進んでいるとは言い難い現状があるということを踏まえて、数、まずは隗より始めよということで、博士人材の採用目標の設定ですとか、昇格スピードを早める措置など、文部科学省が率先して様々な取組を行って、各省庁へ横展開を行っていくといったことも示しております。
 また、14ページには指標ということを示しておりますが、この中では一番下、大目標ということを掲げておりますが、この中で2040年における人口100万人当たりの博士号取得者数を2020年度比約3倍、世界トップレベルに引き上げるといったことも目標として掲げているところでございます。
 さらに、15ページでございますが、産業界の協力とお願いということで、文部科学大臣名で、昨日付になりますけども、博士人材の採用拡大、処遇改善や、従業員の博士号取得支援、こういったことを依頼する文書を経済団体、もしくは業界団体の長宛てに送付しているところでございまして、文部科学省とて、関係省庁、大学、産業界ともしっかり連携しながら、博士人材の活躍に向けた取組について、着実に施策を実行していくという予定です。本日の議論においては、これらも参照いただきながら、御議論いただければと存じます。
 私からは以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。続きまして、留学関係です。
【下岡留学生交流室長】  国際担当の参事官付の留学生交流室長をしております、下岡と申します。
 私からは前回の部会で宿題をいただいておりました主要国の留学生受入れ戦略につきまして、参考資料4に基づきまして、御説明をさせていただきます。3枚ものになっておりますけれども、1、2枚が主要国の受入れ戦略でございます。
 まず、各国の受入れ戦略、それぞれ各国とも、米国以外ですと戦略文書のようなものが最近つくられているものがございますので、その内容、概要を御説明したいと思うのですけれども、その前提としまして、今、各国の主要国の戦略として取り上げました、米国、英国、オーストラリア、ドイツ、フランス、そしてアジアから韓国、そして日本、それぞれの留学生の受入れ状況がどうであるかということを議論の前提としまして、資料の上のほうに少し記載しております。
 留学生のまず、受入れ人数、留学生とここで言っておりますのは、学士、修士、博士の学位取得留学の数でございまして、OECDのEducation at a Glanceから取った、最新が2021になりますけれども、そのデータでございます。推移が分かるように、5年前と比較したものを示しております。
 状況としましては、米国のみが受入れ数が減っておりますけれども、それ以外は増えておりまして、特に英国40%、それからドイツや日本は50%、韓国ですと90%も増えているという状況でございます。
 そしてまた、特徴的でありますのが、それらの国の受入れ元、どういうところから受け入れているのかというのが、非常に特徴がありますので分かるようにお示しをしております。中でも、その国からの、受入れ元からの人数の比で、20%以上の人数の増減があったところに、国の横に矢印、上向き下向き、それぞれ矢印をつけておりますので、大きな変動があったところが分かるようになっております。
 全体的に、例えば、各国とも伸びておりますけれども、米国は全体減っておりまして、インドも20%以上減っているという状況でございます。受入れの、特に地域を問わず、押しなべていろいろな地域から増えている、受入れが増えているという国もございまして、例えば英国、ドイツ、それから韓国、日本などは、どこからも増えているというような感じでございますけれども、例えばオーストラリアなどは、特定のところから大きく増えているというところが特徴的かと思われます。
 また、全体から増えているといいましても、例えば英国などであれば、インドからの受入れがこの期間、2016から21の期間に、インドから5倍に増えたであるとか、全体は増えているけれども、やはり特に増えている地域があるという国はございます。また、韓国も全体が増えておりますので、顕著に増えている地域が幾つもあるという状況でございます。
 こうした実態も少し念頭に置きながらでございますけれども、その下に各国の留学生の受入れに関する国家戦略について、簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。米国は一旦飛ばしますけれども、英国と、それからオーストラリアが少し似ている部分があるかと思います。両国とも留学生交流、留学生の受入れをビジネスとして捉えて、経済効果などによく着目しながらプランを立てているというところが、共通点があろうかと思います。英国の場合は、留学生の受入れを60万人に増やすという目標を立て、これはもう達成しておりますけれども、オーストラリアは具体的な目標、数字の目標はないという状況でございます。
 それぞれ留学生受入れの考え方が戦略文書上にも、例えば英国ですと、経済成長に重要な貢献をして、投資や雇用を生み出すであるとかということがはっきり書いてありまして、教育輸出を350ポンドに増やすと、そういう書き方がされております。また、オーストラリアの留学生受入れの考え方におきましても、国際教育というのは、同国、オーストラリア最大のサービス輸出であると位置づけて取り組んでいるということでございます。
 そして、こうした考え方を下に、留学生受入れに関する主な取組、1ページ目の下のほうでございますけれども、イギリスですと、例えば英国の教育についての広報のキャンペーンを強化するであるとか、受入れ環境を整備するとともに、政府全体として取り組む。そもそもイギリスの戦略自体が、教育省だけではなく、教育省と国際産業省が共同でつくった戦略でございまして、政府全体で取り組むであるとか、また、産業的な教育輸出のデータをしっかり取るというようなことを、はっきりと重要なアクションとして掲げているということでございます。また、これに基づいて、もっと細かい23程度のアクション計画というのがありまして、そこには例えば留学生に対するビザの見直しとか、そういうものも含まれているということでございます。
 一方、オーストラリアのほうは、一つ特徴的にはっきり書かれていますのが、留学生受入れの考え方の最後のところにも少しあるのですけれども、多角化、受入れ出身国の多様化というものをしっかり、はっきり出しているということでございます。実際、オーストラリアの、ちょっと戻りますけれども、先ほどの受入れ元のところの少し記載していますけれども、中国からの受入れの割合というのが、パーセンテージでいうと8ポイント減、もともと中国から33%程度、中国が占めておりましたけれども、これをはっきり減らしているということもありまして、留学生の出身国の多様化ということを戦略文書上で随所にはっきり書いて取り組んでいるということが、一つ特徴的でございます。
 また、それからオンライン教育にもかなり力を入れているということ、また、それからオフショアプログラム、海外でのオーストラリアの教育の展開にも力を入れているということでございます。また、留学生の受入れ分野につきましても、もともと半数程度、ビジネスや商業に集中していましたけれども、進化する技能ニーズに合わせたような、例えば光学、テクノロジー、健康関連などのほうをしっかり増やしていきたいということも書かれております。
 オーストラリアですけれども、実は、この戦略には書かれていない直近の動きとしましては、文字になっていなくて申し訳ないのですけれども、昨年12月にオーストラリアは移民政策の見直しを発表しておりまして、留学生に求める英語力の水準なども引き上げるという意味で、純粋な就学目的でないような学生ビザ申請をかなり抑止するということで、恐らく留学生の受入れにもかなり影響が出るのではないかということが報道などでは出ているという状況でございます。
 それから、次に、ドイツ、フランスのところを御覧いただきます。ドイツの留学生受入れの考え方ですけれども、ドイツは大学の質の向上のためということをはっきり書いているということでございます。取組についても、詳細は書いてありますので、ここはお読みいただければと思います。
 フランスの留学生受入れの考え方は、フランスは留学生がソフトパワーであるということ、そしてまた、地域経済や教育機関の収入をもたらすということ、そしてまた、留学経験者は最高の、その国にとっての広報大使になるということなどを挙げているということでございます。フランスで特徴的な取組としましては、留学生の授業料の値上げをする、そして、それに伴って受入れ環境の改善を図る。そして、それとセットで奨学金の3倍増をするという、この3つを組み合わせた新戦略によって、質の高い教育を求めるような留学生をきちんと受け入れるということを掲げているところが特徴的でございます。
 最後に、韓国と日本でございますけれども、韓国の目的のところは結構はっきりしておりまして、優秀人材の確保、それからその後の就職、定住ということがはっきり書いてある。そしてまた、大学の質の向上ということも書いております。学問的多様性ですとか研究力の向上、それから学生の異文化理解、グローバル感覚の涵養ということを書かれております。
 受入れの取組としましては、詳細を書いてございますので、お読みいただければと思いますけれども、特に例えば先端分野人材、理工系など、新産業の牽引人材をしっかり受け入れていくというようなことがはっきり明記されているということでございます。
 我が国におきましては、留学生受入れの考え方は随所、例えば教育振興基本計画などでは書かれておりますけれども、3つ目的がございまして、大きく分けますと3つ、まず、国際交流や相互理解の促進ということ。それから大学の教育研究力の活性化や水準向上に資するということ、それから高度外国人材の確保という、こういった3つの観点を持って受入れを進めているということでございまして、取組に関しましては、留学生の受入れ、それから日本人学生の送り出し、それから大学の国際化、これが相互に作用して循環するような移行システムを構築していけるようにということで、総合的に取り組んでおります。
 次のページになってしまいますけれども、こういった考え方に基づく、ある程度、留学生向けの授業料ですとか、奨学金に表れてくるところがございまして、恐らく御議論に資するかと思って、一応データはつけておりますので御覧いただければと思いますけれども、米、それからオーストラリアは学費も高うございます。そして、オーストラリアは奨学金もある程度限られたものしかない、あるいは連邦としてのファンドがないという状況でございます。
 一方、ドイツやフランスのところだけ簡単に御紹介しますけれども、こうしたドイツやフランスはもともと学費のかからないような国というのが、基本的なことだったと思いますけれども、ドイツでは、もともと州立大学で学費が、基本的には授業料かからなかったところ、一部少し最近の動きとしましては、留学生に向けての動きですけれども、バーデン、ヴュルテンベルク州の州立大学の場合は、EU以外からの留学生は、1学期当たり1、500ユーロの授業料を支払うということに、最近の動きとしてなっております。
 また、フランスでも、先ほど授業料を上げることと受入れ環境改善、それから奨学金の3倍増がセットだと申しましたけれども、留学生だけの特別の学士課程の学籍登録料というものが課された、近年課されたというところでございます。
 全て申しますと少し長くなってしまいますので、1、2枚目はこのくらいにしまして、そして、最後の3枚目は、これは日本の戦略、一番右の細いところにはなかなか書き切れなかったので、資料としてつけさせていただきましたけれども、日本でも戦略的な留学生交流というのはどうしていくのかということで、これは文部科学省内の有識者会議で昨年、御検討いただいた結果でございまして、恐らく、大きな資料の中ほどのところに、左側に分野戦略、そして、右の3分の2ぐらいのところに地域戦略というのが書かれております。地域戦略として、例えば東南アジアであるとか、それから南西アジア、特にインドのあたりであるとか、それから教育研究力の高い大学もあるような、G7をはじめとする欧米の国であるとか、こういった国との留学生交流は特に強化していくというようなことも、戦略としてはまとめたということでございます。
 以上、簡単ではございますが、一旦ここまでとさせていただきます。
【永田部会長】  ありがとうございました。適宜、今、御説明いただいた内容を資料とともに参照いただければと思います。
 それでは、伊藤委員と両角委員から御発表いただきまして、その後、高等教育の部会に課せられている話題、後で説明いたしますが、幾つかに絞って議論を行いたいと思っております。最初に、伊藤委員から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤委員】  ありがとうございます。資料2-1に基づいて、お話をいたします。表紙に大学教育の多様化に向けてということで、1と2という項目が書いてありますが、ページをめくっていただき、ページ番号1のところに提案要旨が書いてあります。
 1番目、人口減少時代における大学教育の在り方ということで、要は18歳人口の6割が大学、短大に進学する現在、高等教育の多様化と高度化により、学生一人一人の志と能力と生涯にわたり、学び続ける力を高めていくことが大学の極めて重要な役割であるということで、そのために国立大学と公立、私立大学の文系学部において、学部修士課程をセットとする5年生のディプロマコース教育体系を国レベルで系統的に導入するということを提案します。この趣旨に関しましては、後でもう少し詳しく述べますので、お待ちください。
 2番目は、今どのように高等教育を整備するかということが、今この議論の対象なわけですけども、国立、公立、私立大学の協調と競争を促す学納金体系の確立ということで、これは私が毎回申し上げていることですけども、国立大学の学納金を150万円、年程度に設定してもらいたいということです。国立大学の収入体系の中で、利益者、受益者の負担率を上げながらも、運営費交付金のレベルは調整することで、各国立大学の全体収入は現状からの増加を目指してほしいと、公立大学も同様な扱いとしてほしい。このことで、大学生の8割近くが通う私立大学と短大は、要は、公平な土壌で建学の精神に基づく経営努力に取り組むことができるということであります。ですので、そこのところはお願いしたいということであります。その上で、学生それぞれの事情に応じた経済的負担軽減のための奨学金及び、貸与制度を、国公私立大を通じて、共通の土壌で整備していくべきだということであります。
 ページめくって、2ページ目、これはもう資料でよく御存じのことであります。大学等の進学率は60%以上に上昇している。その一方で、先進諸国に対して、下のところですけど、日本は修士号、博士号の取得者が少ないということです。
 ページめくっていただき、3ページ目、そこで1番目の人口減少時代における大学教育の在り方というところで、大学院が大切だということを少し述べたいと思います。右下の図は、関西学院大学の前学長の村田さんが中心にまとめたものであります。縦軸が労働生産性で、横軸が大学院の修了している、その国ごとの比率です。これを御覧になっていただくと、見れば分かるとおり、大学院の修了している国での比率が高くなればなるほど、労働生産性が上がっているということで、高等教育が今、非常に大切になっているということであります。
 この部会で、役割ということを国立大学、公立大学、私立大学と分けるのではなく、高等教育をさらに進める役割を担う大学ということを、もっと考えていくべきだということであります。ということで、従来の4プラス2の修士、学部4、修士課程2という、4プラス2の修士課程や、4足す2足す3の博士課程に加えて、特に人文科学、社会科学等においては、4プラス1という5年間で修士課程を修了するパッケージを標準化するべきではないかということであります。
 4ページ目にお進みください。その理由です。大学生の66.2%が文系に分類されます。文系の分類の定義は下に書いてあります。しかし、文系学生の多くが、3年生から就職活動に注力し、就職活動が終了すると、勉学意欲を失う例も散見されます。ひどい場合には、就職活動だけのために3年生、またはもっと早くからゼミに入り、就職内定が得られると、ゼミを辞めるという学生がいます。これでは本当の意味での高等教育とは言えません。2年生だけを見てみても、2年生のいわゆる授業以外の自由時間で、予習、復習、宿題、課題といった学習に充てる時間は、理系も含めた全分野平均で、週5時間以内が49%と、高等教育というには非常に低水準です。卒業論文に費やす総時間も、社会科学系で53%、人文科学系で、人文学系で37%が、卒業論文を仕上げるのに、全て、総時間として5時間以下と。卒業論文というものを書き上げるのに5時間以下しか使っていないと。全分野でも10時間以内というのが54%という低水準です。これらは全て、この部会でいただいているデータ集とかから取ってきているものであります。
 そこで、まず、全ての国立大学と、高度人材育成を目指す一部の公立、私立大学では、文系学部において、学部プラス修士課程をセットする、5年生のディプロマコースを国レベルで系統的に導入するべきではないか。ディプロマコースを、国際卓越性や特色ある研究大学を目指す大学の文系全学部の標準として、高等教育修了者のレベルを引き上げて、高等教育の多様化を図るということです。
 ディプロマコースでは、基本的には5年を終わらせなきゃいけない。例外的に、例えばロースクールに移転するとか様々な形で、ほかの大学院に進む場合にのみ、4年で卒業、学士を与えることを認める。または、永遠に卒業できない、修士が得られない学生に関しては、残念賞として4年間の学士号を授与するといったようなことを考えたらどうかということです。
 5ページ目、文系ディプロマコースの効用です。ディプロマコースを設計するという挑戦が、66%の学生が通う文系学部の新しいカリキュラムの在り方を創造する契機となります。少なくとも、3年生の終わりまでは、就職活動に煩わせることなく学問に集中し、また、5年生の修士修了時には、先ほど5時間以下といったようなことがなく、しっかりとした時間を、ものを書くと。AIの時代にAIの上を行くものを書く力が必要なので、そのような当たり前のような高等教育を施すことができる。そして、最初の3年間の学び時間の実質化により、学問の楽しさを実感できるようになり、学びを積み重ねる実力をつけ、学者や専門職を目指す学生も増えるでしょうし、社会人になっても新しい挑戦のために学びを続ける実力をつけることができます。そして、大学ごとに文系学部の特色をうたう多様性も生まれてきます。さらには、理系学部への波及効果も大いに期待できます。ということで、様々な今の理系学部の体系を軸として、新しいシステムの構築を議論する発端ということにもなります。
 ここまでをまとめますと、要は、国立大学、公立大学、私立大学という枠組みで役割を議論するのではなく、高等教育は、もう57%が大学に進むわけですから、その中でさらに新しい、上に行く高等教育を目指す部類をつくるべきだということであります。
 6ページ目、国立、公立、私立大学の協調と競争を促す学納金体系ということで、右の図を見ていただくと分かるのですが、私立大学は、平均で、1年間で124万円の学納金を納めるということになっています。茶色の部分です。その一方で、国からいただける補助、いわゆる私大助成というのは、1人当たりおおよそ18万程度、水色の部分になっています。一方、国立大学は、国からの補助が86の国立大学で、平均で229万円あり、それに対して、受益者、学生が払う学納金というのは54万円プラスということになっています。335万円と右上に書いてありますけど、おおよそ、青と茶色を足すと283万円、国立大学は1人の学生当たり283万円の収入を得て、経営をしているということであります。これが多いか少ないかというと、理系も含む国立大学としては、これは少ないです。ですので、国立大学としては、284万円、または335万円というのをもっと増やしていく必要があると私は思います。
 ただし、公平な競争環境を整えるという意味では、右の国立大学の54万円というのを150万円程度、受益者負担にしてほしいということであります。これにより、地方の一部の私立大学は、例えば、学納金を120万円に押さえていれば、経営努力により、そちらに向かう学生もできるということで、地方でも皆、国立が第1志望ということが、一方的に決まっていく状況が変わっていく経営努力ができるということであります。そのようなことで考えているということでございます。
 一方で、国公私立大学の設置形態に関わらず、個人の経済状況に応じた奨学金制度は設計しておき、お金がないうちから国立大学に行く人には、それなりのしっかりとした奨学金を用意するということ、また、修士課程の学納金も、学部同水準にするということも今後の方針だと思います。
 次のページ、ページ番号が消えていますけども、次のページの図です。米国大学学納金の推移というのを御覧ください。一番上の青色がスタンフォード大学、私立大学です。それに対して、バージニア州の州立大学、ウィリアムアンドメアリー大学とカリフォルニア州の州立大学、UCバークレーの学納金の推移がそこに示してあります。
 要は、ヨーロッパでは国立大学が中心なので、先ほど話があったように学費はただに近いです。しかし、国立大学と私立大学が一緒になっている、または公立大学と私立大学が一緒になっているという状況においては、ここの図にあるとおり、州立大学においても、アメリカでは学納金が一番下の点々が、州立の中で州民に対する学費ですけども、2000年は5、000ドル程度だったものが、今や2万ドルを超えるところまで来ているということ、2万ドルというのは、学納金300万円です。そこまで上がってきているということです。
 次のページを御覧ください。次のページでは、国立大学と慶應義塾大学の学納金の推移を示しています。2000年から2022年のところで青い線を引いていますけど、2000年の国立大学は49万円程度、それから、22年たって、僅か5万円、6万円しか上がっていません。それに対して、慶応義塾はやむを得ず、全学部平均で、2000年の90万円から、今は140万円まで上がってきています。ということで、でも、これ以上、上げたいところなのですが、やはり国立が55万円ということになっていると、どうしてもこれ以上、上げることは難しいという状況であります。
 一方で、もっと、先ほど言いましたように、学費を国立が下げて競争したい地方大学もたくさんあるということであります。ということで、このような、ずっとお金を押さえている、国立大学、公立大学が押さえている状況では、800ある日本の大学、特に私立大学を整理しようと思っても、公平な状況では整理できないというのはよろしくないというのが私の考えであります。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御発表について、御意見は後ほどいただきますが、御質問があればお受けしたいと思います。この辺りが分からないとか、もう少し詳しく説明してほしいというようなことです。よろしいですか。
 伊藤委員、ありがとうございました。
【伊藤委員】  ありがとうございました。
【永田部会長】  それでは、両角委員から御発表をお願いしたいと思います。両角委員はオンラインでしたか。
【両角委員】  オンラインです。
【永田部会長】  よろしくお願いします。
【両角委員】  よろしくお願いします。では、画面共有して進めていきたいと思います。御覧いただけていますでしょうか。
【永田部会長】  はい。
【両角委員】  では、発表していきます。少子化の急速な進行と高等教育の在り方ということで、私が考えていることをまとめてきました。
 まず、急速な少子化、しかも少子高齢化という問題は日本だけではなく世界中で今後、進んでいくのだということも視野に入れたほうがいいかなと思っています。こちらの図で、2050年までに人口増加が見込まれるのは8か国のみですし、アフリカなどで増えているといっても長期的には減っていくわけなのです。日本だけではなく、世界の多くの国で少子高齢化の中、18歳人口が減るということは、急速に厳しい大学が出てきてどうするのだという文脈を超えて、世界中で少子高齢化が進むってどういう社会になるのかということから高等教育のあり方を考えていく必要があるのではないかと思っています。
 つまり、これまでの普通に成り立ってきた社会インフラ自体が、もう崩壊していくような、そういったところで高等教育は何ができるかを考えていかなければならない。そうなると、これ未来工学研究所の報告書から持ってきたのですけれど、より複雑な社会問題に私たち社会は直面していくわけです。この部会での議論の前提として、改めて確認しておきたい基本的前提は、こういった少子化で生産年齢人口が減る中で、グローバルな課題、ローカルな社会課題の解決が求められる中で、大学は社会の総合的な知の総和を高めていくために担うべき役割が極めて大きいということです。ここを一番の前提として置いておきたいことです。
 翻ってみて、日本の大学の現状はどうかということを、国際比較の観点を中心に、周知のことかもしれませんが、改めて見ておきます。18歳から22歳の伝統的な学生が多く、社会人とか留学生が少ない。今日の事前の資料にも出ていましたが、人口当たりの、要するに大学院生、修士、博士卒が少なくて、低学歴社会である。また、低コスト、ちょうど今、伊藤先生からも話が出ていましたが、国際的にみれば授業料が安い。経済的支援も近年、変化はしつつありますが、ほかの国と比べれば圧倒的に給付奨学金が少ない。何でこうなっているかというと、GDPに占める高等教育への公財政支出の割合というのが低いまま維持されているからです。
 大学教育の質向上政策というのも、2000年代に入ってから、政策や大学も力を入れてきましたけれど、社会からその成果が分かりやすく伝わっているかというと、まだ課題は大きいかなと思います。諸外国と比較してみますと、例えばアメリカのカレッジスコアカードとか、イギリスのDiscover Uniとか、あるいは教育評価の結果を金銀銅と示していたりしますが、そうした諸外国の状況と比べると、透明性、つまり、誰もが見て分かりやすい形で大学教育の質が提示されているかというと課題が大きいです。
 低コストという中で、教員も職員も非常勤化が進んでいます。非常勤化が多いというのは、普通に考えれば質が下がるということだと思いますし、非常勤化が進むことで、内部管理も複雑化しています。少し古い研究がベースになっているのですけれど、日本の大学は研究志向も偏っていると言われていまして、純粋研究とか純粋応用研究に比べて、実用志向の基礎研究が弱い傾向があるようです。
 ただ、日本の大学がすべて悪いのかと言われると、例えばOECDのPIACC調査で、成人の学力というのは極めて高いということなども言われていて、そういった良さというものを改めて維持して考えていく必要があると思います。
 最近の高等教育政策はどうだったのかということを、濱中委員が出してくれた質、アクセス、規模という視点から振り返ってみたいと思います。質というところでいうと、この20年近く政策の中心課題でした。大学教育改革状況調査に見るように、大学の改革努力は進んでいますが、こちらの図にあるのですけれど、教育を提供している教員自身が、そういったことによって現場の教育改善が進んだかと聞くと、半分以上はあまり評価していません。学生や社会がどう感じているのかというのがさらに大事で、社会については、やや古い調査しかないのですけれど、大学が企業や社会が求める人材を育てていることができると思うかというと、あまり思っていないという方が多いです。大学が教育力を上げようと努力してきた中で変わってきたかどうかという調査を探したのですけど見つからずに、これを示しています。大学生自身は成長を実感しているというのですけれど、18歳から22歳というのは成長する時期でもあるので、82%という数値をどう捉えたらいいのかということも、慎重に考えたほうがいいかなと思っています。
 アクセスについては、近年地方分散の政策というのは、一時的に23区の抑制とか単発的にありましたけれども、そういった考え方での一貫した政策というのはありませんでした。また、2020年からは修学支援の新制度というのが政治的に導入されたわけで、一部の問題は改善しているけれど、進学格差の問題は全く解消していないと思います。一部改善したというのは、例えば住民税非課税世帯の進学率が伸びていることです。他方で、解消していない進学率というのは、例えば、大学の学部進学率が、2007年時点で最も高かった東京、京都と最も低かった岩手、鹿児島を例に出しましたが、2022年の状況と見ると、どれも増えているのですけど、格差は安定的で、解消しないまま増えているということです、何らかの手を打たなければ解消するはずがないだろうというようなことは思います。
 規模については、この後、韓国の例を紹介しますけれど、直接的な政策を打ってきたというより、設置認可とか補助金ルールとかで、間接的に、いわゆる文科省政策でいう「適正化」を促すような政策がずっと行われてきました。その結果、何が起こったかというと、小規模校がますます小規模になっています。これは学生数の変化ですけれど、エビデンスは他にもあります。例えば私たちが行った調査を見ると、小規模校では、もう既に専任教員も減らしていて、授業料の値上げなんかとてもじゃないけどできない。新しい学部の設置とか、伝統的学生以外の学生獲得なんていうものは視野にも入りにくい。小規模化して余力がなくなる中で改革がしづらくなってきて、二極化がますます進んできた。これまでの、こういうことが起きてきたということではないかなと思います。
 韓国の例を紹介したいと思います。私は、「韓国のようにしろ」とは、一言も言ったことはないのですけれど、たまに誤解を受けるので最初に申し上げておきます。一つの社会実験というか、日本と同じように18歳人口が減っている、私学が多いというところで、参考になると思って韓国を見ていまして、その動向を紹介したいと思います。
 韓国は、今の質、アクセス、規模という点では日本とは全く異なる政策を取ってきたと思っています。18歳人口が減ってくる中で、もちろん留学生とか社会人の増加を目指してきました。先ほど御紹介いただいたように、留学生も日本よりもずっと多く獲得しているのですが、ただ、18歳人口の減少をカバーするほどの十分な期待された効果はなかったので、やむを得ず、統廃合、定員削減、あるいは「もう駄目だ」と判断された大学に退出してもらうということをやってきました。
 それぞれの政権ごとにどういうことをやってきたのかということと、実際にどういうふうに定員を減らしてきたのかということをまとめました。盧政権のときは、最初なので国公立を中心に定員削減し、統廃合しました。構造改革と言われる、かなり激しく定員を減らしていくようなことを行ったのが李政権以降ですけれど、特に朴政権のときは、大学の定員、質と言っていいのかどうか分かりませんけれど、学生充足率とか教員確保率とか就職率とか、様々な指標を使って大学を評価して、A評価以外は強制的に定員を削減するという、かなり強権的な改革を行いました。御覧いただくと、そういう政策をすると、地方ほど、学生数が急減してしまうということが起きまして、反動で文政権はそういったやり方をやめて、定員削減を市場にまかせて、定員の減らし方といったところでは一旦弱まったのですけれど、その結果として、アクセス、すなわち進学の地域格差の問題が深刻化しました。
 現在の尹政権で何をやっているかというと、大学の設置運営に関する権限と予算の一部を地方に移譲するというRISE政策といったものを始動しています。教育部による画一的大学支援から、自治体主導の地域に合わせた大学支援へというようなことをキャッチフレーズにやっていて、私も12月に、ある地方のRISEセンターといったところに調査に行ったのですけれど、あまり今まで地元の大学に関心を寄せていなかった自治体が、大学を真剣に見始めているという可能性も感じる一方で、人材の問題とか、あるいは、その地域で誰が政権を取っていくかとか、いろいろな要因によって左右されやすいとか、懸念点もいろいろありそうだということも改めて感じました。
 では、日本の高等教育政策といったところで、韓国を見直してみて改めて思うのは、資金的な裏づけが十分でないまま、大学教育の質的転換政策が行われてきたということです。お金は与えないけど、こっちの方向に向かって頑張れというような感じで、改革の小道具がたくさん示され、関係者は努力しているのですけれど、ただ、非常に細かいマイクロコントロール化が進んでいることは、私は望ましくないのではないかと懸念しています。
 また、高等教育支出全体で見てみると、機関補助というものは伸び悩んでいるのですけれど、修学支援の新制度など、個人補助が急速に増えてきています。機関補助から個人補助へという形で、シフトがもう現実に既に起こり始めているのではないかなと思います。次の図を先にご覧いただいたほうがいいと思うのですが、機関補助は増えないし、配分ルールも細かに変わって、確実に取るのは結構大変だという感覚が大学側にあると思います。大学側が見ている予算というのは、左側の機関補助が中心だと思うのですが、社会からすると、大学も大事だけれど、他にもいろいろ大事なことがあるから、国民の税金を使うことの優先度は低いという研究もあります。、しかも、新聞などでぱっと見えやすいものとしては、10兆円ファンドという、実際はともかくと書きましたけれど、10兆円運用して毎年3000億を配分する政策や、高等教育の修学新制度というのもこれだけの予算がついていて、社会から見れば高等教育投資は増えているのではないかという印象を持たれているのではないかと思うのです。
 高等教育全体への投資が増えてくると、高等教育の質に対する社会の目というのは、私はより厳しくなっていくのではないかと思います。時間がないので今日はあまり紹介しませんが、実は世界の多くの国で、高等教育の政治化や大学への信頼低下で様々な問題が起きています。その背景は非常に複雑ですけれど、高コストな授業料とかローン、そういった投資に見合った効果を感じていないという社会の認識が根本的な背景にあるのではないかなと思っています。
 それに対して、日本では大学側の行動を規定するインセンティブというのは、機関補助の影響が極めて大きい。設置認可とか運営費交付金、私学助成のルール、あるいは修学支援の機関要件、そういったものが大学の経営行動にとても大きく影響しています。個人補助は増えているのですけれど、増えているといっても、それをどういう形で大学が、その投資を呼び込めるかというと、なかなか努力のしようもないような面もあるかなと思いますし、このインセンティブがよくも悪くも働き過ぎちゃっているという気がしています。18歳人口の減少なんて随分前から分かってきたのに、なぜ大学が積極的に社会人や留学生を獲得に行かないのかというのを考えると、既存のこういった仕組みのインセンティブが強いからではないかなと思います。
 例えばアメリカでは、1980年代に18歳人口が減ったときに社会人を必死に獲得しようとして社会人学生が増えたのですがコロナ禍で、アメリカも大学に入学者方が減ったのですけれど、そうしたら、そういった文脈からも、成人学生を獲得しようという努力がかなり進んでいます。そういう取り組みを助けるような企業とパートナーシップを組んだり、オンラインを積極的に活用するなど、いろいろな形で社会人を取ろうとしているような動きが見られるのですけれど、そういったことと比べると、日本の大学は既存の制度のインセンティブが強過ぎるがゆえに、そっちに努力が向きにくいのではないかという印象を受けています。
 何が必要なのかということを、最後まとめてみたのですけれど、1つ目は、これまでもやってきていることですけれど、教育の質の担保とその見える化ということで、ただ、マイクロコントロールではなく、教育の質というのはもう少し自立性を持った形で、ただ、質の担保は見えやすく、分かりやすく、透明な形で示すというような努力の方向性が必要になっていると思います。
 2つ目は、社会との直接の接点を様々な形で充実させていくことです。最初に示したように、各地域、世界レベルで難しい社会問題が生じていて、大学と社会は組むしかないですし、難しい問題を解決していくためには、高度な知というのがどの地域でも必要になってくるかと思います。従来の産学連携のみならず、教育の面で連携するとか、あるいは社会人というのは総合的な問題というか、現実の問題を持ってやってくるので、そういった学生が来ることで、大学側も変わっていくような面もあるかなと思います。そういう形で社会との接点が増えていくと、教育とか研究も、従来の一つの学問だけでは解決できなくなってきて、いろいろな形で、教育研究の指向性も変わっていくと思います。
 また、現在の大学ってやはり努力していると思っていて、社会人の学生さんと話していると思うのですけれど、学生時代と、社会人に戻ってきて今の大学を見たときに大学の評価が変わると、良くなると、だから、こういう接点を増やしていくことで、大学を見る社会の目も変わっていくのではないかなと感じています。そういう好循環を生み出すインセンティブを設計すべきだと思うのですが、その辺りが、今の制度的なところで十分に働いていない点に課題があると思っています。
 最後、3つ目が安定的で明確な支援枠組みです。2040年に向けたグランドデザイン答申でも、高等教育の将来像について議論しましたが、財政的な面については、はっきり言ってほとんど議論しなかったように記憶しています。国公私立のいずれにおいても、国からの支援の枠組みは、その時々の必要性に応じて対応するので、どんどんどんどん複雑になりますし、頻繁に変わる。また、競争的資金も長期的な見通しがしづらい。また、修学支援新制度など、個人補助のような形で大きく支援が広がって、それによって、経済的に厳しくて、進学を諦めた子供たちが進学できるようになって、評価できる点もあるのですが、支援対象の考え方が、高等教育政策との整合性といった面では課題があると思います。高等教育政策、中教審などで、個人補助のほうについて、あまり十分に、系統だって関連づけて議論できていなくて、ただ、そういったことを総合的に議論していかないと、これからの先のことを考えられないのではないかなと思っています。
 最後が参考文献になります。私からの発表は以上です。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは、先ほどと同じように議論ではなくて、疑問点等あれば、いかがでしょうか。
 私から一つだけお聞きしたい。両角委員がおっしゃっている社会からの評価というところがあるのですが、その形成基盤、もしくは形成メカニズムで端的にお答えいただけることがあれば、おっしゃっていただきたいと思うのです。
【両角委員】  そうですね。社会からの評価、なかなか難しいのですが、自分や子供が受けた教育、大学教育とかをどう評価しているかということではないかなと思います。そういう意味で、今、良い教育を受けていって、大学に対する信頼が出てきている面もあるのですが、かつては割と楽に大学教育を出てしまって、そのまま社会に出ている方々が多い中で、大学ってそんなに頑張っているのかという疑問や、役に立つという認識は持たれていない状況にあるような気がしています。ただ、大学と関わった企業とか、社会人の方と話すと、そうした印象は変わるので、できるだけ大学と社会、社会人等の接点を直接に増やして、その評価を得ていくことではないかなと思います。
 あまり端的でなくて、すみません。
【永田部会長】  ありがとうございます。大変示唆に富んでおります。
 メディアや省庁の言動は結構大きいと思いますが、今、ポジティブに考えれば、学んだ人たちの意見が高まることが重要だとおっしゃったのだと思います。それは一理あると思います。
 そのほかいかがですか。よろしいですか。大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  両角先生、ありがとうございます。大森です。
 単純な質問で、5ページの規模のところで出していただいたグラフなのですけど、もう既に資料に出ていたものだと思うのですけど、私がキャッチアップできていなくてすみません。入学定員別の10年後の定員変化というところで、青いところが減少というのは、定員が減少しているということでしょうか。つまり、大規模大学のほうが減少している。学校が減っている。
【両角委員】  これは大規模大学も減らしています。こちらじゃなくて、定員じゃなくて、学生数を持ってくればよかったですね。学生数のほうを見ると、学生数を減らしているところが全体的に多いのですが、その中で大規模大学は維持、拡大が多い傾向があります。維持、不変、そうですね、ちょっと待ってください。そうです。先生のおっしゃるとおりですね。
【大森副部会長】  先生のお話の趣旨では、小規模大学がどんどんもっと小さくなっているということなのですけれども、このグラフからは、必ずしもそれは見えない感じですか。
【両角委員】  見えないですね。違う図を持ってくればよかったです。定員の変化ではなくて、実際の学生数の変化で見たときの減り具合というのが、小規模のほうが大きいです。という図を持ってくればよかったのですけれどすみません。
【大森副部会長】  ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】  両角先生、ありがとうございました。小林でございます。
 9ページのところで、修学支援制度と高等教育政策との整合性の点で課題があるということでおっしゃっていたのですけども、これは、修学支援制度を決めるところと、高等教育政策を考えるところが違っているというような点でおっしゃっていますでしょうか。これ何が違うと理解すればよろしいか、教えていただければと思います。
【両角委員】  ありがとうございます。今おっしゃっていただいた決めるところが違っているということも影響しているのではないかと思います。財源も違うということで、決めるところが違うので、例えば今の多子世帯とか理工系といったことと、高等教育全体で、本当にそういったものの支援といったら、もう少し違う形で、例えば地方であるとか、そういった観点が出てきてもおかしくないと思うのですけれど、あまりそこが連携していないというか、本当は中教審などでも議論してもいいのではないかと思うのですけれど、ほぼ決まった状態で出てくるということを指して言っています。
【小林委員】  ありがとうございます。そもそものロジックが違うということですね。ありがとうございました。
【永田部会長】  よろしいでしょうか。
 それでは、今の韓国の状況について、事務局のほうで調べてくれました。資料2-3、韓国の高等教育政策に関するデータ等を使って御説明をいただきます。
【神山私学行政課長】  私学行政課の神山でございます。資料に沿いまして、韓国のデータなどを中心に御説明をさせていただきたいと思います。
 画面上、資料の中で1ページ目を御覧いただきますと、大学の数ですとか学生数を比べてございます。韓国に関しましては、大学という欄では190ぐらい、短大のような専門大学なども含めますと330程度ということで、日本と比べて4分の1ぐらいかという感じでございます。下のほうの在学者数を御覧いただきますと、大学や専門大学等の在学者数が2021年で287万人程度ということになっていますが、ここ数年で減ってきている様子も見受けられるかと思います。日本は、右のほうでございますけれども、300万人程度ということで、推移として最近は減っておらない状況ですけども、下のほうに人口1、000当たりというのがございまして、韓国のほうは留学生ですとか社会人といったこともあって、1、000人当たりの在学者数は55.5、日本は24でございますので、その分はかなり韓国のほうが高いという状況になってございます。
 次、2ページ目を御覧いただきますと、よく話の出ております18歳人口、急激に減っておるという話でございまして、上のグラフはこれまでの推移、18歳人口は2000年には83万いたところ、2021年には48万まで下がってきていると。さらに下の図は推計でございますけども、2040にはさらに26万人まで減るということになりますと、2、020人定員を44%ぐらいさらに減らさなきゃいかんというような状況になってございます。
 次のページを御覧いただきますと、左側は、戦後から1990年代までは拡大期でしたということを書いてございまして、右側、先ほど両角先生のお話にもございましたけども、2004年頃から大学の改革ということで、盧武鉉政権の下では定員削減の目標を立て、特に国立大学を統合し、李政権におきましては、経営不振大学ですとかを選んで学生ローンの貸出し制限などをするといった形。それから2つ目の箱では、朴政権のところで、大学基本能力診断評価というのを使って定員削減なども進めておったと。この大学基本能力診断評価について、後ろでも資料を入れてございますが、最初の1期から文政権の2期、3期という形で、少しずつ姿を変えておりますし、文政権のときには、定員削減措置などはやや縮小をしておるというような状況でございます。最後、一番下の箱にも、先ほど御説明がございましたけども、尹政権になりまして、新たなやり方というのを模索しているという状況でございます。
 次のページは、入学の定員の推移をグラフにしたもので、下のほうではどの政権時代のものかというのも書かせていただいてございます。
 その次のページの表を御覧いただきますと、これも先ほど両角先生からも御指摘がございましたが、2003年から2021年の削減の状況を書いてございまして、特に御覧いただきたいのは、一番下が「地域」というところの分類がございまして、縦に見ますと、「増減」というのが縦の欄にございますが、地域と増減の組合せのところを御覧いただくと、削減の影響というのは首都圏ではマイナス15.9でございますけれども、地方のほうはマイナス33.6ということで、大きく出ておると。地方のほうに、より削減が進んでいるような状況が見受けられるかと思います。
 続きまして、その次のページで、先ほどちょっと申し上げました大学基本能力診断評価というもの、ここでは1期、2期、3期とあったうちの3期についてお示しをしておりまして、ここでは事前評価とその後の本評価というのに分けてやっておると。2つ目の黒ポツのところで、事前評価と、こちらは最低限、その目標の基準ということを定量的な指標、右側の表の2になりますけれども、こうした指標に基づいて、その3つ充足していない、4つ充足しないといったところで判断をすると。それに基づいて奨学金の支援が得られなくなったり、そのほか、財政支援が受けられなくなったりというのが決まってくるという感じでございます。それをパスした後、本評価というのを、表の3のような項目や配点に基づいてやりまして、結果として、左側の下のほうにあるように、財政支援にそれぞれランクがありまして、受けられるものとかが決まってくるという形になってございます。
 ちなみに、黒ポツの中の4つ目にございます2025年からは、新しい仕組みということで2行目に書いていますが、既存のいわゆる認証評価に近いもの、それから、私学振興財団のようなところの診断というのを組み合わせるようなものを新たに模索するということで進むようでございます。
 次のページは、大学の質の保証の制度ということでございまして、いわゆる認証評価につきましては、韓国大学教育協議会と、KCUEというところが実施をしておるということになっておりまして、今後、この認証評価などを利用していくという方向性だということでございます。自己評価は下のほうにございますが、2年ごとに行って、その認証のプロセスの中でも活用すると。
 それから、韓国の特徴といたしまして、右側、情報公開がかなり進んでおるということで、幼稚園から大学まで含めた学校の情報公開を義務づけられておりまして、特に大学、全国大学情報というところのウェブサイトで載せると。項目、下に並んでございますけれども、4つ目などでは学生の充足率ですとか、5つ目の学生の進路なども含めて、御覧のような項目について出すということになっておりますし、一番下、私立大学に関しましては、2014年から財務会計の5段階評価も出すという形になってございます。
 実際のページの雰囲気がその次のページ、8ページのほうに入れさせていただいておりまして、こういった形でかなり見やすく、かつ、右上のところに書かせていただいていますが、教育実績や大学経営なども含めて、大学間の比較がしやすいようなサイトになっておるということが特徴になってございます。
 もう1枚おめくりをいただきますと、地方大学の支援の仕組みという2つ御紹介をしておりまして、左側のRISEについては、先ほど御指摘があったとおりでございますが、地方に権限を移譲して地方のほうの計画をつくる形で進めていくということで、その矢印のところで大学の財政など予算の50%程度を地方に移管をして、非営利法人のRISEセンターなどを中心として、自治体が主導で計画をつくって質の支援をしていくと。また、4つ目の矢印にありますように、地方の教育部から教育協力官のようなものを派遣することで、慣れていない地方が大学の教育を支援するというのをお手伝いするというような形で、2023年から7地域でモデルということで進められておるというものでございます。
 右側、グローカル大学というものに関しましては、2つ目にございますように、非首都圏の大学から10校程度2023年に選んで、将来的には30件程度にしていくということで、4つ目のポツにございますように、教育部だけではなくて、関係省庁や自治体と合わせて集中的な財政投資をしていくと。5年間で1校当たり1、000億ウォンというふうに言われてございますが、そういった形で進めていくという支援策を行っておるということでございます。
 最後、その次のページでは、私立大学の構造改革支援の施策を御紹介しておりまして、左側は、議員が発議をしている法案でありまして、一番下に書いていますように、かなり成立は不確実、厳しいというふうに言われてございますが、例えば太字になっているところにございますような残余財産、解散をするときの残余財産について、例えば解散奨励金のような形で、一定程度廃校を促していくような仕組みも、法案としては出されておりますが、成立はちょっと厳しそうだというふうに聞いてございます。
 右側のほうでは、法案とはちょっと別の話でございますけれども、仮に大学を閉じた後、廃校になった後の学事ですとかの記録を、証明書発行できるようなセンターなどを私学振興財団内に置くといったような形での支援、改善の支援というのも、行っておるということでございます。
 ちょっと駆け足でございましたが、以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。それでは、今の御説明内容についての御質問を承ります。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、ここから議論を進めたいのですが、今日お二方の、伊藤委員と両角委員からの御発表についても、次のコンテクストの中で議論いただけるといいと思います。いろいろな議論をしてきましたが、今日、集中して行いたい1つは、高等教育へのアクセス確保ということについての観点からです。ちょうど、今の韓国の事例、私から見ると、寒気がするような数字なので、10年後に滅びてしまわないかというぐらい削減をしているわけです。とても恐ろしい数字を見せてもらったのです。アクセス確保という意味は、いろいろな意味があります。1つは、地域におけるアクセス確保ということも当然あるでしょうし、それから東京地域におけるアクセス確保というのも当然あるでしょうし、それからそのための環境整備ということもその中には当然含まれます。先ほどの奨学金等も含めてです。それが、両角委員であれば、高等教育の構造改革と個人支援というのがパラレルでない、同じ議論の上に乗っていないというようなことも出てくるわけです。最終的には、今現在、先ほど最初に文部科学省から見せていただきましたように、大学の撤退が進んでいて、そうなると、学生を何とか守らないといけないという部分も実はこのアクセスの確保の中に当然出てくるわけです。そのようなことを考えると、将来生じないように、定員をどのように管理していったらいいのかという問題が含まれていると思うのです。もう一つの問題とつながるのですが、規模をどう考えるかということです。先に規模を決めるわけではなくて、このような中で規模というのはおのずとこうなるであろうということが見えてくると思います。今日は時間が十分取れないかもしれませんが、もう一度申し上げますと、高等教育のアクセスの確保の在り方、いろいろな政策も、それから学費も奨学金も含めて、それからもう一つは規模に関する意見をお聞きしたいと思います。
 もう一言付け加えさせていただきますが、これまでの議論の中で、人数が減っていくということを放っておけば、大学が撤退せざるを得なくなるのは当然のことなので、それは今のアクセスの問題と密接です。それから、両角委員のご説明でも出ておりましたが、社会における知の総和が減ってはいけない、あるいは何とか増やす方向に行かなければいけないということで、これは皆さんずっと大学と留学生や社会人の議論をしていただきましたが、もう一方で、質を上げるという意味で、学士課程の教育その他に触れるよりも、大学院への人数を増やすということで、非常に可視化された知の総和が増える施策もあるであろうということもあったわけです。先ほど文部科学大臣のメッセージも御紹介いただきましたが、大変時宜にかなったものなのだろうと思っております。
 このような具合に、大体議論、おおむねその方向で、これまではいろいろな意見があるとしても行ってきたということは一応申し上げた上で今の2点について御自由に御発言をいただいて結構です。伊藤委員と両角委員の御発表に対する御意見、御質問等も併せてお伺いをいたします。いかがでしょうか。
 吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございます。吉見でございます。
 今、永田先生からアクセス確保という話がございました。もちろん、私たちが直面している高等教育の未来をめぐる問題は、量と質の両面から考えなければならないのですけれども、質の面から考えると、私は、先ほど伊藤先生が御提案された人文社会系学部における学部と修士をセットとする5年制のディプロマコース設置案に大賛成です。これは非常に重要な提案だと私は思っています。
 なぜかというと、90年代以降、大学院重点化を多くの大学でして、それから20年以上が経つわけですけれども、人文社会系の観点からすると、なかなかクオリティの面でのダメージが大きかったと思います。どういうことかというと、重点化で大学院の定員がぐんと増えました。それぞれの大学院は定員を埋めなければなりませんから、ハードルを下げてでも定員充足をしていきました。その結果、何が起こったかというと、多くの大学院で、学部入試では入れなかった大学でも、大学院入試ならば入れる状況が生じました。印象として言えば、学部4年制よりも大学院修士課程1年生のほうが学力的にはレベルが低い状況が広がったわけです。こういう言葉は使いたくありませんが、これは「学歴ロンダリング」なんじゃないかという議論も一部にはあったと思います。
 この状況を転換させるのは、小手先の措置でも無理だと思います。先ほどの伊藤先生の御提案は、3つの点で重要な意味を持っています。1つは、人文社会系の場合、博士課程はちょっと多過ぎるのですね。定員充足だから膨らましているけれども、そんなに就職口、高給で雇ってくれる就職口は、社会に抜本的な変化が起きない限り難しい。研究職のポストだって増えてはいない。しかし、それでももう重点化してしまった大学院の定員を減らすことはできないのなら、博士課程の定員から修士課程の定員にシフトさせ、修士課程の定員を学部の定員とほぼ同じにすることによって、4+1で5年の課程ができる。学部の定員と修士の1年、1のところの定員が同じにして、博士課程の定員を減らして修士課程の定員を増やすことによって、博士課程人材の質を向上させ、修士課程のほうは、文系でも修士までは当たり前にする。そうすることによって、人文社会系の学問に対する社会的評価をもっと上げていくことができるかもしれません。
 実際、第2の点になりますが、現在の日本で、東大や早慶、多くの大学で、文系ではかなり優秀な子たちがあまり大学院には行きません。なぜなら、4年で社会に出ちゃったほうがいい就職口があるからです。文系の場合、同じ大学ならば、修士課程には行かないほうが自分を高く社会に売れるのですね。それで、大学院に行こうとする子は、「ランクが上」の大学を狙うのですが、もともと「ランクが上」の大学にいる優秀層は、学問が好きでも、合理的な判断として大学院には行かない選択をしがちになる。しかし、1年プラスというだけなら、優秀層を人文社会系でももっと確保できる可能性がある。
 さらにもう一つ、最後ですけれども、理系の学問の組立て方と文系の学問の組立て方はかなり根本的に違っていて、文系では学部後期でやることと大学院でやることは大差ないのです。だから現在では、学部後期と修士が二重になっています。ですから、むしろそれを重ねてしまい、そこに時間的余裕をつくれば、ダブルディグリー的な、つまり2つの専門を同時に系統的に学んでいくことも、文系ならば十分に可能です。
 そうすると、先ほど伊藤先生がおっしゃった多様性が出てくるわけで、大学院重点化以降、ずっと弱体化してきた人文社会系の学問、そういう窮地に追い込まれてきた人文社会系の学問を起死回生させる一つの有効な策になり得ると思います。
 あと、1つだけ別の論点ですが、韓国のことで前提として踏まえておきたいことをちょっとお話ししますと、韓国と日本では首都圏への集中度が違います。ソウル首都圏は大体2、600万人、東京の首都圏は3、600万人います。つまり、日本の場合は人口の約3分の1が東京圏に集中し、韓国の場合は、人口の約半分がソウル首都圏に集中している。明らかに、両方とも異常です。世界的に見れば、日本も韓国も人口分布が異常です。しかし、ざっくり言えば、韓国のほうがシンガポールに近い。英語化も進んでいますし、だから留学生が多いのだと思いますけれども、シンガポールを一方の極とし、日本をもう一方の極とすると、韓国は中間ぐらいにある。そういう視点で、先ほどの韓国との比較を見ておく必要があります。これは、余計な発言でございます。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。人文社会中心のお話でしたが、いくつかの大学で5年制をもう既に施行しています。それぞれのお考えは似た観点でそうなっているのだと思うのです。東工大や本学や、そのほか幾つかの国立大学で5年制のコースがもうできているということです。ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  ありがとうございます。伊藤委員と両角委員のお話を聞いて改めて納得する事がありました。伊藤委員がこのプレゼンの前提として、高度人材育成を目指すというキーワードをお使いになりました。そして公平な競争関係という話をされ、両角委員のプレゼンの中では、何が必要なのかという部分が非常に心に残りました。
マクロ経済的に予測を立てて考えますと、もはや補助金や制度だけで社会を支えていく時代は徐々に終わりつつあり、公平な競争関係の下に残ったものが中心となる社会がこれからは訪れていくと考えられます。既に欧米社会では起こっていますが、日本もそれを追いかける形で進んでいくだろうと思いながらお話を聞いておりました。
 その中で、参考資料のデータ集1の70ページから72ページを見ますと、東京の特色は、人文社会系の割合がほかの県に比べると非常に多いことが分かります。かつ、大規模大学が占めています。今後の社会の流れは、もはや文系だ、理系だという時代ではありません。その社会ニーズから考えるとリベラルアーツ的な教育への転換や、さらにもう一段進んだ形での転換が必要ではないかと考えます。
 また、参考資料2の27ページの下に、「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援」が紹介されていました。これは、政府がより理工系を増やそうという施策と思いますが、人文社会系の定員が多い東京でこそ、このような仕組みを利用して転換を図っていくべきではないかと考えます。そして、何が必要かという意味において、お二人のお話から感じたことは、公平な競争関係をしっかり国民に示していかなければいけないということです。しつこいようですが、大学の情報公開によって実情をしっかり見て頂き学校選びをする。大切な事です。
 前回の部会後、経済界でお目にかかった経営幹部の方々との教育談義の際に、大学は随分情報公開が始まっていますと紹介しました。皆さんから大学のホームページを見た感想のお電話を頂きましたが、益戸さん、情報公表の場所までなかなかたどり着けないよ、どうやって見ればよいのか。などの意見が出てきました。もっと簡単に、分かりやすく比較ができるようにしていかないと、社会課題の解決の為の進路選びには結びつきませんし、大学と社会が組む前提にもならないと改めて感じました。伊藤委員のお言葉をおかりするとしたら、しっかりした情報公表をして、東京と地域の大学で、公平な競争環境の下での大学選びが起こらないと、少子化の中、大学の数合わせ的な失敗が起こってしまうと危惧いたします。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。延長された議論になったのですが、もう一度考えてみると、東京の特殊性が今明らかになったと思うのです。異常なぐらいの特殊性があると思います。大学の数にしても分野にしても、だから、極端に言えば、伊藤委員ぐらいに切れ味のいい言い方をしたら、東京の総合大学は幾つか地域に行きなさいと、そのぐらいをしないと変わらないぐらいの偏りだと思うのです。
 しかし、こちらで勝手に指導するわけにいかないわけですから、実は東京と東京周辺だけが特別に考えなければいけない地域なのかもしれません。残りは、結構大きい町の、例えば神戸ですら地域なのだというぐらいの差があるのではないかと思います。
 ですから、この東京のことを考えたときに、今の益戸委員の公平公正というのだったら、私もそう思うのですが、本当に計画的に地域に出て行ってみたらどうだという、それでその地域の再生も全部かなうかもしれないぐらいの差があると思うのです。それを指導するわけではないが、そのようなことがあるのだということだと思います。経済界からの御意見だと思います。大変参考になったと思います。
 ほかにいかがでしょうか。大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  ありがとうございます。
 アクセスということに関してのということなので、なかなかまとまっていないところがあるのですけども、伊藤先生のお話のところで、公平な土壌というのももちろん大賛成というかそのとおりと思うし、それから大学の質を高めていくために、一定の学費というか収入、どこから入ってくるかは置いておいて、収入が必要だということも、もう本当にそのとおりだなというふうに思っていて、今日の御提案、うんうんとうなずきながら拝聴したところです。
 世界と比較したりアメリカと比較したりすると、まだ日本の大学の学費、安いところで、安さ競争になっているという感覚はやっぱりあるなというのが正直なところなのですけども、これは大学側から見るとそうで、一方で、入る人というか家計から見ると、相当に今でもかなり高いのですよね。異次元の少子化対策ということが今言われているわけですけれども、県の中で、本当に少子化対策部門の委員とかをやって議論していると、数字がどんどん暗くなっていっているというところの中でいうと、今の大学生、あるいは高校生の親御さんたちというのは、一定程度大学進学率があった時代の親御さんたちですから、自分たちも、半分ぐらいは大学に行っている親御さんで、そうすると自分の子供も自分と同じように大学なり専門学校に行かせたいと思うわけです。自分は行ったのに子供には行かせられない、それはすごくしんどい話なのですよね。なので行かせたいと思う。
 ところが、やっぱり行かせられないというところで産み渋るというか、高等教育費というのは、少子化対策とすごく結びついてくるところだろうというふうに、実際そっちのほうで議論をしていると感じるところです。だから、大学側からすると、伊藤先生のお話はもうそのとおりと思うし、私もそうしたいと思うけれども、みんなが分かっていることですけど、それをするときに、セットで、誰もが通える支援制度というものがセットになっていないと、これ以上学費を上げちゃったら、そこがセットになっていなかったら、もうアクセスはずたぼろになって、むしろ大学は学生が集まらなくなって終わるという感じもあるので、そこの担保をしてから、してからというか、同時にしていかないといけないということだけは常に言い続けなきゃいけないなというふうに思っているというのが1点です。
 もう1点、韓国のお話、これは事務局にお聞きしたらいいのか両角先生にお聞きしたらいいのかあれなのですけど、定員を縮小して、政府の方針で縮小していったときに、分野みたいなものの、例えば教育学部とか、分からないけど、幼稚園教諭とか、今日本だとそっちはかなり深刻になってきていますけど、単純に定員集まっていないよねで、カットしていくと、そういう先生を育てているところとかも縮小していっちゃって、実は世界が回らなくなるみたいなことは考えられて縮小の指示が出ていたりというようなことは分かりますかという質問です。ありがとうございます。
【永田部会長】  両角委員あるいは事務局側で、今の御質問、最後のところを先にお答えできますでしょうか。できなければ、また次回までに調べていただくということなのですが。両角委員、いかがですか。
【両角委員】  分野別は、今すぐにぱっとは出てこないですが、ただ、1つ議論で共有しておく必要があるなと思うのは、韓国は大卒就職率が日本よりかなり悪くて、ここまでやらざるを得なくなってやっているところがあります。そのため、教育の質の評価のところの観点でも、就職率といったものもかなり重視されています。だから、そういったところで、もともと教育分野の就職率がいいか悪いかとかそういうことによって影響するというか、例えば、芸術系とかは就職率がすごく低いのに、一律にやるからもうめちゃくちゃになるから配慮すべきだ、といった議論はかなり聞かれていたかと思います。
 今お答えできるのはそれぐらいなのですが、すみません。
【永田部会長】  事務局もありますか。
【神山私学行政課長】  すみません、私どもの承知している限りで、韓国が定員数を減らしていくときに分野を相当考慮に入れたような形跡がないといいますか、あまりそこを考慮されているわけではないのかなと思っておりまして、お示しした資料の中の5ページ目のところで、専門大学と4年生、表があって、先ほど地域のところだけ御紹介をした表でございますけれども、累計のところで4年制大学と専門大学のところの増減などを見ましても、専門大学のほうもかなりの割合で減っておりまして、あまり分野を政府のほうで調整をしたという感じではないんじゃなかろうかというふうに承知をしてございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。また何かあったら教えてください。
 今の会話の中で結局大切なところが鶏と卵になってしまったのですが、学費の問題を話しているうちに、韓国の経済状態の話も出てきました。日本の国家予算と比べたら圧倒的に小さい韓国でこのような状況になっているので、潤沢にお金があるなら話は違ったかもしれないということになってしまうと、鶏と卵になります。高等教育のレベルを上げて、どんどん産業も活性化して、どんどん給与が上がるような社会を産んでということになるのですが、どこかからスタートしないといけないので、それについては、しっかり考えないといけないのだろうと思いました。
 そのほかいかがでしょうか。平子委員、どうぞ。
【平子委員】  ありがとうございます。
 特別部会の命題である「知の総和」をどうやって増やしていくのかというところが本当に大事だと思っています。今日は、大学院の話も出てきておりますし、個々の知のレベルをどう上げていくのか、それがしっかり社会の中で受け入れられるのかという、この観点が非常に重要です。
 今日、両角委員のプレゼンテーションにもありましたように、その大学の学生の定義として、これは前回も出ましたが、社会人学生、留学生も今後考慮していかなければならないということです。つまり多様性をどう盛り込んでいくのかということが大事で、産業界の立場としましては、先ほどの吉見委員のご発言のような、文系の博士課程が多過ぎるというご指摘は、社会が、あるいは企業がと言ってもいいのですが、博士を受け入れて活用できる構造に未だなっていないということを物語っていると思うのです。
 私は航空会社の出身なのですけど、例えばドイツのルフトハンザ航空は社長や役員レベルの人材の多くはドクターの資格を持っています。ドイツと比較すると、日本はドクターを持った経営者は非常に少ない。したがって、もともと博士比率が非常に低い国でありながらも、それがうまく活用されていないがゆえに過剰感があるというような評価につながっているのかなと思いました。まずは、産業界はこういったドクターあるいはマスター資格を持った人材をいかに活用していくのかという観点で、もう一度雇用の在り方、あるいは会社の組織の在り方を考えていかなければいけないと感じており、今はまだ全然そういった状況になっていないことは重々承知しているわけですが、早晩そのような時代が来るように思います。これから先のジョブ型雇用が徐々に進展してくることを考慮に入れますと、2040年の時には、かなり雇用構造が変わっていることを前提とした上で、議論をしていったらよいのではないかと思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。いつぞや経団連で講義をさせていただいたときに、博士というのは一言で言うと、あしたからはやるラーメン屋を開設できる人と申し上げています。そのぐらいに追求をし終えている人なのです。ですから、当然、経済界に行っても次の日からできなければいけないので、できない人には学位を与えないので、そこの認識が少し違うと思うのです。アカデミア、アカデミアと考えるだけではなくて、現場に行って、必ずラーメン屋が開けるぐらいの能力がない人は駄目です。それだけのものを探求する力がないと、博士はやはり取れないと思うのです。
 ですから、今おっしゃったように、どんどんそのような方を僕ら生み出して、どうしてもアカデミア志向だったという悪いイメージがあるでしょうが、そうではなくて、社会の現場で知恵が役に立つように変えていかないといけないと思います。ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
【中村委員】  よろしいですか。
【永田部会長】  中村委員、どうぞ。
【中村委員】  今の平子委員のお話にも関わりますし、今回の両角委員、及び前回の小林委員のご提案にあったように、大学と社会の関わりというところを考えていくと、今までの大学でやっている多くのリカレントやリスキルは、修了して何もないというか、修了証書は与えるのだけど、例えば資格や免許を取得することができませんでした。多くの時間を割いて、平日の夜や土日に一生懸命勉強されて、しかし、結果的に修了証書の授与だけなのです。そういう意味でいうと、社会人の方を大学に招く、あるいは大学と社会の関係を密接にするためには、資格や免許を取れるような仕組みが必要だろうと思います。
 もう一つは、職業を変えていく、変えたいという方が多くいらっしゃいます。特に私は教育学部出身なので、例えば企業の方とか、あるいは官公庁の方が、教員をやってみたい、教師になってみたいという方が、かなりの数いらっしゃることを知っています。今教師が足りないと言われているのですが、そういった方々が、できるだけ教員免許を取れるような仕組みの制度改革も必要じゃないかなと思っています。4年制を出られて、あるいは短大でもいいのですけども、その後に教師をやってみたいとしたらできるだけ速やかに免許を取れるような制度です。専門職大学の教職大学院がありますから、そこをうまく使って、例えば今、教職大学院は2年制なのですが、そこを1年ぐらいでしっかり免許が取れるような制度改革が必要であると考えています。イギリスでもそういったことをやられていますけども、そういった方を増やしていって教師の質を上げていく、あるいは本当にモチベーションの高い教師を増やしていくというふうなこともこれから必要なのかなと思います。
教員のことは1例ですけども、大学側が社会のニーズや個人のニーズにしっかり合わせて改革することができるということが非常に大事なのかなと思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。そのほか、いかがでしょう。松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】  たくさんの勉強になるプレゼンテーションをお聞きして、いろいろと考えてみました。まず、韓国における基本能力診断評価というのはかなり細分化され定量化されています。一方で、15年くらい前に国大協の視察でニュージーランドの評価制度を勉強しに行ったときに印象的だったのは、一定程度の定量化の枠組みは必要なのですけれども、大学側がより自立的に自由度を持って意見を述べる機会を非常に重視していたということです。
 今回の参考資料1の150ページのところで、学校再編に取り組む上での課題として上位にあげられているのは、「学内外の再編の経営企画人材がいない」、「再編候補との健学の精神が一致しない」というような、定量的には測れない、自由な会話や表現によって寄せられる意見です。
 大学側が、自大学の理念はどういったものであって、どのようなところに特徴があって、そしてどのような卒業生を輩出していくのかというところを自律的に明確にしていくことは、アクセス確保の部分でも重要な意味を持っていくと思われます。例えば社会人を引き寄せるためにどのような計画があるのか、留学生はどのように誘致していきたいのか、修士課程に上がる学生を増やしたいのか、その部分で留学生の受入はどのように位置づけられるかといったことを既存のフレームワークをこえて大学側が自由に主体的に意見や思いを述べていく機会が必要なのではないかと思います。
 その中には、伊藤先生からありましたような5年課程のディプロマを考えるのか、これに関してはヨーロッパでは既に3プラス2が定着しておりますので、留学生を呼び込む上で学士3年修士2年を組み合わせて5年とするのか、もしくは4プラス1にするのか、この辺りにも大学の特色が現れてくると思います。そういったところを明確にしていく機会が必要だと思います。
 あと、今回奨学金のことを留学政策と併せて勉強させていただきまして、各国の留学政策に関して比較可能な形で見せていただいたのは非常に勉強になりました。この点特にアメリカでは、各大学が奨学金やローンを留学生に提供しています。この金額がかなり大きく、米国教育統計センター(NCES)によると50%に達するぐらいの留学生が、大学独自のファンディングを何らかの形で活用しています。また、RAやTAとして留学生を採用しており、これが意外と見えにくいのですけれども、かなりの留学生にとって魅力ある資源になっているという状況があります。例えば、国立科学財団(NSF)などのファンディングを大学、研究科、教員が獲得し、その研究資金から留学生もRAとして採用されます。RAやTAについて日本と少し違うのは、授業料が免除になることに加えて生活していくに足りる給与が支給されることです。ですから、確かにアメリカの授業料は高くなっているのですけども、特に修士・博士課程においては、それに耐え得るような支援制度を大学主導で提供しているという実態もあります。こういったところを踏まえながら、日本の各大学が、自分たちが受け入れる学生に対してどのようなことをしていけるのかを明確に現す機会を設けることが大切なのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。吉見委員の手が挙がっているのですが、今の議論に近い議論だったら先にやっていただきます。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  後でも構いません。
【永田部会長】  今、両角委員から出ていたものに対して御意見が出ていたわけです。大変結構な御意見だと思いますし、考えなければいけないことがたくさんあって、最後の部分、これは益戸委員から言われたこととオーバーラップしています。実はアメリカの大学が、個々の大学が学生支援をしているというのは基本的に財務基盤があるからです。財務基盤なしに議論をしてもできないことが山のようにあるので、それはそうすると、先ほど言った両角委員の個人支援という結果と、高等教育の基盤形成を強化するというのは、本当にどうタイアップして、ロジカルにパラレルにいくかという問題とぴったり一致しています。その財務基盤を十分高くしていかないと、欧米の大学と同じような議論は当然できなくて、国を頼ってしまうということになってしまうわけです。国が就学支援で奨学金を出しますというところに帰結してしまうのですが、実は2040年に向けて本当にやらなければいけないことの一つである教育研究をより高度にして知の総和を変える、少なくとも維持するということの背景の人・もの・金の人の部分は大分議論しました。留学生と社会人、金の部分はこれからですが、国に要求するお金の問題とは違って、個々に高等教育に必要なお金をどうするかという問題は根本的に考えないと、少子化対策というか、人口減対策にもなっていないのです。やれないことだけ語っていることになってしまうからです。
 一言だけ、私も授業料については安過ぎると思います、日本は。ですから、当然ながら、高いレベルの教育を与えるために学費は上がっていいだろうと思います。大森先生がおっしゃたような問題点が生じますが、財務基盤がきちんとしっかりしていれば実は出ない問題なわけです。今、急にそこに変えられるかどうかという問題は不可能なので、徐々に徐々に変えていかないと教育施策失敗に終わると思うのです。各大学が財務基盤をしっかりと取れるような支援を始めて、一体どこまで行ったら放ったらかしでもやれるかというのは正確に考えないといけないのではないかと思います。それは、マクロ的に見たときに大切な要件の1つかと思うのです。何もないところでいくら議論しても駄目だと思います。
 ですから、国立大学は運営費交付金増やせと言っている、今は増やせと言っていますが、そうではなくて、全部合わせて財務基盤が上がる方策を考えないといけないのだろうと思います。
 伊藤先生がおっしゃったのは、学費を上げて公平にということなので、公平にという部分については、多分、学費のみならず、いろいろな規制緩和についても全部公平にということになると、国がひっくり返るような議論に多分なります。なぜかというと、寄附税制であるとか、それから入学定員の設定の仕方であるとか、全部かかってくるので、学費の問題ももちろん含めて大きな議論をしないと、特に学費改定はなかなか難しいのですが、本格的に議論しないといけないだろうと思います。若干教育界には何をしても、お金がないのが基本みたいな世界、明治以来そのような観念があるので、お金の話はきちんとしましょうよということは、メモしておきたいと思うのです。運営費交付金とか私学助成という問題にとどまる話ではなくて、どちらかというと、その外側の話をきちんとしないとやっていけないということです。
 それでは、吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  すみません、吉見です。
 先ほど中心的な論点は申し上げたので、これは補足的なことにすぎませんが、今日留学生のお話も大分出ましたので、そこで1つお話ししておきたいことがあります。私、昨年末にフランスに行っていて、向こうの大学の日本研究の人たちと大分話をしたのですけど、そこで驚いたことが1つありました。今は、アメリカでもどこでも、日本研究は非常に厳しいのです。学生が減っている、それからなかなか新しい教員ポストを取れないということで、アメリカの大学の日本研究者たちは大変苦しい思いをしています。だからフランスの大学でも、日本学科とか日本専攻は大変でしょうと聞いたら、全くそんなことはない。日本を研究したいフランス人志願者が増えて困っていると彼は言っていました。学生が増えているので、先生のポストも増やしていると言っていました。
 何でそんなことが起こるのと聞くと、フランス以外の国で日本について学ぼうとする人は、だいたい日本の「経済」や「技術」が目的かもしれない。しかし、フランス人は全然違うのだと彼らは言うのですね。フランスで日本について学びたいと思う人は、みんな「文化」が目的なのだそうです。だから、日本文化、それこそアニメやゲーム、漫画から伝統文化まで、フランス人は日本の文化にものすごく関心がある。それで、日本を学ぼうとする人が、今もどんどん増えていると彼らは言っていました。
 何が言いたいかというと、留学生を集めるのに、もちろんITその他の理系的な分野は大きいのですけれども、しかし、本当は日本文化を学ぼうとする需要の喚起が、海外の留学生に向けてもっともっとできるはずだと思います。それをちゃんと英語でやるということですけれども、この留学生の行く先は、必ずしも東京ではなくて、日本文化が一番、工芸や食、伝統芸能から最先端のアートも含め、今、一番いいのはむしろ地方だったりするわけです。そうすると、地方の大学の海外に向けてのアクセス拡大策の意味で、ぜひ、理系的な分野だけじゃなくて、文系というか人文社会系の分野が非常に意味があることを、国の政策としてもっと注目していただきたいと思います。
 一言だけ、先ほど伊藤先生おっしゃった4+1と、それから松塚先生がおっしゃったEUではスタンダードになりつつある3+2。これらは、最終的に同じところに行き着くと思います。4+1も3+2も、両方5で、将来の学士課程と修士課程が統合されていく方向、取りわけ人文社会系にとっての意味は重要だと思います。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。前回も出ていましたが、留学生とか国際性ということに関しては、実は地域が関係ない、東京が有利であるということはないのだという議論は前回もしていたので、勇気が沸くと思います。ですから、そこに施策があれば、地域と国際社会がダイレクトに結びついたということは起こるので、それは1つの起爆剤だろうと思います。
 フランスは、フランスの外務省が努力しています。高等教育局ではなくて、そこの大使館もそうですが、ジャポン年間を設けるなど、非常に大使館が動いています。ですから、日本の場合も外務省にもう少し頑張ってもらわないといけないのではないかと思います。それは、外交を考える外務省の会では、各国の大使館は、もっと、経済だけではなくて、文化や教育についても活動してもらいたいというのは出ているので、多分、全般的な要望としてあるのだろうと思います。ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。そうすると、国際と地域というのは実は相性がいい部分があるということですので、これを施策に、文科省として施策に転換できるかどうかということを考えないといけなくて、東京だからではないと思うのです。
 今のような話はよくて、施策につながるから、具体的にこういうことを提案してやっていけるではないかとなります。最終的にはそれに結びつかないと、ここの会議は何の意味もないので、これをやったらこう活性化する、こうしたらここは伸びるということは大切なことです。よろしいですか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】  奨学金のお話でいうと、先ほど機関補助から個人補助のほうに変わっているというお話がありましたが、これは人口減少社会に入ってくると、選ぶ側のほうに主導権が移ってくるというのはあると思います。
 これは、企業のほうもそれに近い状況で、前回申し上げましたけが、今、大卒採用が計画を埋まっている企業は4割しかないということになっています。すると、大卒人材が非常に重要な価値になってくるので、今、国や自治体だけではなくて、企業も就職を前提とした奨学金を給付型で行うようなことも出てきています。
 そうなってくると、奨学金制度は充実してきたのですが、選ぶ側の高校生、保護者、社会人も、自分にどの奨学金が合っているのかというのが全然分かっていないというような状況が生じています。修学支援アドバイザーとか、あるいは奨学金アドバイザーみたいな、アメリカではそういう方がいらっしゃるらしいのですが、日本ではあまりそういうことを表に出さない文化もありまして、なかなか必要な情報や支援が届いていない状況だと思います。やはり、都市と地方の格差とかもありますけれども、文科省がそういったところをきちんと相談できるようなサイトを作っていくとか情報提供をしていくといったような取り組みや、よりアクセスを強化するような情報提供が、非常にこれから重要になってくるのではないかと思っております。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。情報に関しては、益戸委員からもありましたが、大学のみならず、いろいろな教育関係の情報というのは何となくアクセスしにくい感じがあるので、これを何とかしないといけないです。
 今日お話を聞いていて、高等教育へのアクセス確保と規模に関するという問題は、もう少し際どい議論をしたかったです。こちらの設定が悪かったので、もう1回この会議の進行具合も見ながらですが、もう少し明確にこちらから問いかける形でいきたいと思います。ぼんやりとしてしまいましたが、今日出た意見は大変みんなどれもこれも参考になります。アクセスという意味で、こちらの問いかけを、例えば先ほど言ったように、地域をどうするのだといったら、例えば国際とやったらいいではないかのような回答が出てくるようにセッティングをして、もう1回お伺いしたいと思います。規模のほうもぼんやりしているので、こうなるとこの規模になります、それにこれを入れるとこの規模になります、では、これをこの規模では本当にやらなければいけないことは何ですかという問いかけに変えないと、多分、具体的な話にならないということが分かりました。
 今日のところはここまでにさせていただきまして、こちらのほうでもう一度セッティングしたいと思います。最後、伊藤委員にお答えをいただいて閉じたいと思います。
伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  いろいろと御意見ありがとうございました。私の提案、2つあったのですけども、ポイントとしては、何となく私立学校が整理されているという方向の議論ではなくて、やはり全体を変えるというからには国立も変わってほしいということであります。
 ですから、一緒に変わっていきましょうということが何よりも大切なので、そういう意味では国立ではできないというふうに決めつけずに、いろんなことを前向きに考えてもらいたいという、そういう議論を具体的な政策としてつくっていければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございます。私がいろいろ申し上げていたときにうなずいていただいていたので、同じ意図で、何だろうと思いながら見ておりました。ありがとうございます。
 それでは、もう1回話題をつくり直してまた議論させていただきますので、本日はここまでとさせていただきます。
 それでは、事務局から今後の予定等についてお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 次回の特別部会は、4月26日金曜日、16時からハイブリッド形式で開催を予定しております。本日御発言できなかった内容がございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。それでは、また来年度もよろしくお願いいたします。
 
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