中央教育審議会教育振興基本計画部会(第9回) 議事録

1.日時

令和4年11月4日(金曜日)10時~12時30分

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画の各論について

4.出席者

委員

荒瀬委員、内田委員、清原委員、小林委員、清水(敬)委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村田委員、岩本委員、大森委員、川口委員、河野委員、黒木委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉田信解委員、吉見委員、渡邉部会長
 

文部科学省

藤江 総合教育政策局長、里見 大臣官房審議官、森友 総合教育政策局政策課長 等

5.議事録

【渡邉部会長】  それでは,定刻となりましたので,ただいまから第9回中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催させていただきます。本日も大変御多忙の中,御出席いただきまして,ありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらないものですから,今日も会場とウェブでのハイブリッド開催とさせていただいております。
 それから本日は,次期教育振興基本計画の策定に向け,いよいよ各論のたたき台について御議論いただきます。ただ,指標と非常に強い関係があるものですから,併せて二つの議論をしていただければと思っております。
 それではまず,本日の会議開催方式と資料につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  事務局の川村でございます。本日もウェブ会議での会議開催とさせていただきまして,傍聴につきましてはユーチューブにて配信しておりますので,御承知おきください。
 御議論の時間におきましては,「挙手」ボタンを押していただければと存じます。部会長の御指名により順次御発言をお願いいただきます。御発言以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日,資料は指標・各論たたき台に関する資料として,資料の1・2・3,また,先週の中央教育審議会総会にて御報告いたしました基本的な考え方に関する資料として,資料4・5・6でございます。資料4につきましては,前回のこの計画部会での御議論を踏まえましての総会での御報告までに加えた修正の見え消し版,資料5はその反映版,また,資料6は本文修正を踏まえた概要資料の反映版となっております。これらの資料は本日御説明いたしませんけれども,御参照いただければと存じます。
 最後に本日は全体30名の委員のうち,25名の御参加予定でございます。お忙しいところありがとうございます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。それでは,議事に入らせていただきますが,本日は,国立教育政策研究所の宮﨑総括研究官にもお越しいただいております。
 教育振興基本計画は都道府県,それから政令指定都市等については定着しているのですが,市区町村への定着が今後の課題でもありますので,市区町村教育委員会が用いる評価指標の現状について,お話を頂きたいと思っております。
 それでは,事務局に資料全体について説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  それでは,資料を共有して説明させていただきます。
 こちらはまず資料の1でございますけれども,次期教育振興基本計画の指標設定に当たっての検討の視点ということでございます。今回指標につきましては資料の1,資料の2に基づきまして,今後設定をしてまいります指標の考え方ですとか現状について御報告をするということでございます。
 まず,次期計画の指標設定に当たっての検討の視点の案でございますけれども,8つの視点をお示ししております。
 1点目として,現行計画の指標設定の方法を踏襲しまして,各教育政策の各目標に対して達成状況を把握するための指標を設定するということ。
 2点目として,現行計画策定時に指標設定して以降の進捗状況,重点的に取り組むべき政策などを踏まえまして,設定指標を検討するということ。
 3点目として,文部科学省で毎年度政策評価を実施しておりまして,ここでの測定指標の設定もございますので,こういったことも参考にしつつ新たな指標を検討するということ。
 4点目として,インプット,アウトプット,アウトカム,それぞれ指標がございますけれども,政策の進捗状況の段階に応じて検討しまして,可能な限りアウトカム指標を設定するよう努めるということ。
 5点目として,今後次期計画の期間中に指標を見直すべき状況が発生することが想定されますので,継続的に把握する基本的な指標の設定と,一定の柔軟性をもって指標を見直すということも可能とする取扱いも検討してはどうかということ。
 6点目として,政策目標達成のために,地方公共団体における教育振興基本計画の策定・指標との連動性に留意することが必要でございまして,この地方公共団体における計画策定・指標設定に資する観点からの検討が必要ではないかということ。
 7点目として,データの把握に当たりましては,文部科学省のWEB調査システムであるEduSurveyの効果的な活用。
 また,8点目といたしまして,これまでの調査等において把握していないもの,これも今後の調査により把握することも含めて設定指標を検討するということ。その際,学校現場の負担が増えないように配慮するということ。こちらを検討の視点の案としてお示ししております。
 その次のページ以降に,次期計画における各論の項目(案)ということで,前回御議論いただきました次期計画の目標,それから方針との対応関係,また基本施策ということで,前回の御議論を踏まえて,また一部整理をしまして,全体として1から16までの項目がございます。これらの項目に従いまして指標を設定していくということになろうかと考えております。
 それから,現行の計画における指標を測定指標と参考指標,次のページ以降で御参考としてつけておりますので,こちらを御参照いただければと思います。
 続きまして,宮﨑研究官から御報告をお願いいたします。
【宮﨑国立教育政策研究所総括研究官】  こんにちは。国立教育政策研究所の宮﨑と申します。本日は,市区町村教育委員会が用いる評価指標の現状について話題提供をさせていただきます。
 多くの教育委員会では,各自治体の教育振興基本計画等に示された教育施策が毎年点検・評価報告書の中で評価されています。そこで,本日は点検・評価報告書の中で示された評価指標の現状について,当研究所で昨年度まで実施していたプロジェクト研究の成果を基に紹介いたします。
 インターネット上で収集できた2018年度の教育施策を対象とした点検・評価報告書について調査をいたしました。例えば,全国学力・学習状況調査の正答率のような具体的な数値,つまり定量的指標を用いて評価していたものは全体で46.4%となっておりまして,この割合は,大規模市区町村ほど高い傾向が見られております。
 実際に用いられている指標は多岐にわたるということもありまして,スライドに示したような「ロジックモデル」として知られるような政策の流れを考慮した指標分類を基に整理することにいたしました。ロジックモデルの枠組みで考えると,アウトプット,アウトカム,インパクトによる成果を表す指標を用いることが望ましいと考えられます。
 各教育委員会が出しているたくさんの点検・評価報告書で用いられた指標を見ると,施策等に関連した指標が分類に関係なく挙げられている事例というのがほとんどでありました。その中でこのスライドで示しているように,大きく分けて2種類の特色ある事例が見えてきました。
 1つ目は,施策の実情に合う分類の指標を用いて評価する事例で,仙台市がこれに該当します。
 2つ目は,1施策に対して複数分類の指標を用いて評価する事例で,静岡県島田市をはじめとした54市区町村がこれに該当します。
 それでは,次のスライド以降で,それぞれの事例をもう少し詳しく説明してまいります。
 まず,施策の実情に合う分類の指標を用いて評価をしている事例として,仙台市の事例を紹介いたします。仙台市では,施策を評価するための指標をアウトカム型・アウトプット型・ロードマップ型・例年実施型という4種類に分けております。施策実態に合う分類の指標で,全ての施策を網羅的に評価するようにしているという状況となっております。
 教育振興基本計画の策定時に設定した評価指標で評価をしていますが,計画の実施期間中でも,施策の進捗等に応じて評価指標を分類ごと見直すというふうな事例も見られております。施策の導入初期はロードマップ型の指標を用いて,普及後は例年実施型の指標として変更する例などもあることが見られています。
 実態としては,施策の特性に応じて,定性的記述で評価せざるを得ないことも多くあるようですけれども,可能な範囲で定量的指標を用いた評価をしようとしていることがうかがえます。
 教育施策は,定量的な測定が難しいということが多いですけれども,施策によって評価分類を変えるというふうな工夫をして,網羅的に評価をしているところが仙台市の施策評価の大きな特色と言えます。
 次に,1施策に対して複数分類の指標を用いて評価する事例として,静岡県島田市の事例を紹介します。島田市では,点検・評価報告書の中で「事務事業評価シート」というのを事業別に作成しております。この中では事業概要・実績・成果・コストを示した上で,有効性,必要性,効率性,公平性という多角的な視点から評価をしています。この際に事業の実績(アウトプット)と事業の成果(アウトカム)という2種類の数値で示せる評価指標を併用しているという状況となっています。
 さらに,実際には数値で示せない実績・成果を示す欄もシートの中で設けるということで,定量的指標だけではなく定性的側面からも評価をしていると工夫をされています。
 先ほどの仙台市のように,網羅的に施策を評価するということは難しいですけれども,1事業に対して,アウトプットとアウトカムという両面の定量的指標を用いていることや,定性的側面もうまく評価に含めているというところ,そういう工夫が島田市の教育施策の特色となっています。
 私からの話題提供は以上となります。限られた時間の中での報告ですので,説明不足等もあると思いますが,御関心を持たれた方は,国立教育政策研究所のホームページに掲載している報告書等も後で御覧いただけると幸いです。
 御清聴いただき,ありがとうございました。
【川村教育企画調整官】  それでは,続きまして各論に戻りまして,川村から資料3に基づきまして,説明をさせていただきます。
 資料3でございますけれども,次期教育振興基本計画の各論のたたき台ということでございまして,これまで御議論いただきました基本的方針,それから,次期計画の目標と基本施策,こちらの項目まで御議論いただいておりましたけれども,これに基づいて,項目ごとに基本施策ということで,この各論のたたき台を作成してお示しをするものでございます。
 基本的方針につきましては,1から5でございますけれども,その下,目標1からということでございまして,目標1につきましては,確かな学力の育成,幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成ということで,今回,学校段階を通じたということでございますので,初等中等教育段階から高等教育段階を含め,この目標1で確かな学力等々ということで,一括してお示しをしております。資料,大部でございますので,かいつまんで説明をさせていただきたいと思います。
 まず,個別最適な学びと協働的学びの一体的な充実でございますが,『令和の日本型学校教育』の答申に基づきまして,この個別最適な学び・協働的な学び一体的に充実するために1人1台端末の円滑な活用,また教科書,教材,関連ソフトウエアの在り方等々につきまして,現在,初等中等教育分科会の特別部会において検討が行われておりますので,その結果を踏まえた必要な取組の推進ということでございます。
 主体的・対話的で深い学びと学習指導要領につきましては,この観点からの授業改善の推進,また,カリキュラム・マネジメントの確立といった新しい時代に求められる資質・能力の育成に向けた指導要領の趣旨が学校で理解され,着実に実施されるような実践事例の情報提供等,また,研究開発学校等における実践研究ということでございます。
 全国学力・学習調査状況調査の実施・分析・活用につきまして,本体調査の毎年度悉皆(しっかい)実施,また経年変化分析,データ貸与の取組の促進等通じまして,分析また結果の活用を図るということでございます。また,このCBT化を進めるということについても記載をしております。
 幼児教育につきましては,その教育内容の充実,また,幼児教育推進体制を活用した地域の質向上を図るための取組の推進,そして,幼児教育と小学校教育の接続の改善に向けたカリキュラムの開発・実施,また,大規模実態調査の実施でございます。
 高等学校教育改革につきましては,「社会に開かれた教育課程」の実現に向けての普通科改革,探究・STEAM教育,先進的なグローバル・理数系教育,産業界と一体となった実践的な教育等を通じた魅力化・特色化,また,この地域,関係機関等との連携,協力体制の構築を担うコーディネーターの配置促進等々でございます。
 大学入試につきましては,多面的・総合的な評価を行う観点からの改革の推進,また,「大学入学共通テスト」の実施,個別大学の入学者選抜の改革を通じた学力3要素の,評価の改善の促進でございます。
 学修者本位の教育,こちら高等教育段階でありますけれども,「教学マネジメント指針」の考え方を踏まえた「3つの方針」に基づく学修目標の具体化,また,情報公表等の促進,それにより各大学における取組の推進,また,アクティブ・ラーニング等の教育方法の工夫等々でございます。
 また,各高等教育機関の資源を有効活用するという観点からのe-ラーニング,また,地域のプラットフォーム,大学等連携推進法人制度の活用,また,大学生の学修成果,また,大学全体の教育成果等に関する情報公表の促進でございます。
 文理横断・融合につきまして,幅を広げるための教育プログラムの構築・実施する大学等の取組支援,また,その普及・展開。更に地域社会のリソースを結集したプラットフォーム形成を通じた文理横断型の教育プログラムの構築等々でございます。
 キャリア教育・職業教育につきましては,幼児教育から高等教育までの学校段階を通じた体系的・系統的なキャリア教育の推進ということで,初中段階における「キャリア・パスポート」の活用,また,学ぶことと自己と将来のつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要となる資質・能力の育成の取組推進。それから,専門高校の取組の成果普及。それから高等教育段階におきましては,産業界と連携した適正なインターンシップをはじめとするキャリア形成支援,ボランティアの位置付け,単位化の促進。また,専門職大学,専門職短期大学,また,専門職学科,それから専門職大学院における教育の充実。専門学校における企業と連携をした職業実践専門課程の活用促進,その質の保障。更に大学等におきましては,社会人や企業のニーズに応じたプログラムである「職業実践力育成プログラム」の活用促進ということでございます。
 学校段階間・学校と社会の接続につきまして,小中一貫教育ですとか,また高大接続改革,専修学校と業界団体との連携促進等々でございます。
 目標2は,豊かな心の育成でございまして,まず,子供の権利利益の擁護ということで,児童の権利条約,また,こども基本法を踏まえた子供の権利の理解促進,人権教育の推進等々でございます。
 また,主観的ウェルビーイングの向上ということで,日本社会に根差したウェルビーイングの概念整理を踏まえた上での幸福感や自己肯定感,他者とのつながりなどの主観的なウェルビーイングの状況を把握し,学校教育活動全体を通じた子供たちのウェルビーイングの向上。
 道徳教育につきましては,この「特別の教科 道徳」を要とした道徳教育の推進。また授業改善・指導力の向上に資するこの優れた授業動画とアーカイブの充実等々でございます。
 いじめ・人権教育につきましては,いじめの現状を踏まえました引き続きのいじめ防止対策の推進,また,関係機関等との連携の推進,「ネットいじめ」に関する対策,また,こども家庭庁との連携・協力ということでございます。また,問題行動を起こす児童生徒に対する必要な指導・支援。それから,警察官経験者等の学校への派遣。自殺防止に向けた取組の推進。体罰に関する根絶に向けた研修や相談体制の整備。人権教育の参考資料の作成・周知,また,この取組の改善・充実。
 発達支持的生徒指導。こちら,新しく改定した生徒指導提要を踏まえた取組の対応ということで,全ての児童生徒を対象に児童生徒が自発的・自主的に自ら発達させていくということを尊重した,この側面に置いた働きかけを進めるということ。
 生命の安全教育につきましては,この性犯罪・性暴力,重大な悪影響を及ぼすということで生命(いのち)を大切にし,子供たちを性暴力・性犯罪の加害者,被害者,傍観者にさせないためのこの「生命(いのち)の安全教育」の全国展開の推進。
 体験・読書活動につきましては,青少年教育施設等における体験活動の推進,また,読書不読率の低減に向けた様々な取組の推進ということでございます。
 伝統文化につきまして,我が国の郷土や伝統を受け止め,それを継承・発展させるための教育の推進,また,そのための機会の確保,文化技術を含むということでございます。
 青少年の健全育成につきましては,情報モラルを含む情報活用能力の育成,また,生活習慣の定着に向けた家庭における取組推進,また,保護者がこのインターネットを適切に管理できるような取組,「親子のルールづくり」,家庭等での生活習慣を見直すための啓発活動等々でございます。
 文化芸術による子供の豊かな心の育成でございますけれども,これについては,学校における芸術教育の改善,また,文化部活動の地域連携やこの地域文化クラブ活動への移行に向けた環境の一体的な整備でございます。
 目標3,健やかな体の育成,スポーツを通じた豊かな心身の育成でございますが,学校保健・学校給食,食育等々でございます。子供たちの心身の健康を保持増進するための複雑化・多様化する子供たちの現代的な健康課題に対応するためのがん,薬物乱用防止,心の健康に関する指導等々,学習指導要領に基づく体系的な保健教育の充実。また,職員のみならず様々な機関等と連携をした取組の推進。また,食育に関しまして,学校給食を活用した指導,学校給食における地場産物の活用等々でございます。
 生活習慣の確立につきましては,「早寝早起き朝ごはん」の国民的な継続推進等。また,体力や技能の程度,性別や障害の有無にかかわらずということで,運動が好きな子供,日常的な運動に親しむ子供を増加させるということに向けた取組の推進でございます。
 運動部活動の改革と身近な地域における子供のスポーツ環境の整備でございますけれども,地域連携,地域スポーツクラブへの移行に向けた環境の一体的な整備等々でございます。
 アスリートの発掘・育成,優れた能力を有するアスリート発掘に向けた取組の推進。
 また,体育・スポーツ施設の整備充実に向けた取組。
 スポーツ実施者の安全・安心の確保に関する指導者の養成等の取組,また,研修等の実施。
 スポーツを通じた健康増進に関して,第3期スポーツ基本計画を踏まえた取組でございます。
 また,東京2020パラリンピック競技大会のレガシーを踏まえた性別や年齢,障害の有無にかかわらないスポーツの価値の享受に向けた取組でございます。
 目標4は,多様な教育ニーズへの対応と社会包摂ということでございまして,特別支援教育の関係でございますけれども,この障害者権利条約,障害者基本法に基づくこのインクルーシブ教育システムの構築への,一層の取組。また,その保護者,本人の意向を尊重した適切な進学先の決定に向けた取組。校長のリーダーシップの下での,理解の促進。医療的ケアが必要な児童生徒への対応,病気療養児の教育支援,ICTの活用。学校施設のバリアフリー等々でございます。
 不登校児童生徒につきましては,教育機会確保法等の学校現場への周知・浸透。また,不登校特例校の設置促進,ICTを活用した教育センターの機能強化等,また,1人1台端末を活用したスクリーニング体制の整備等々でございます。
 ヤングケアラーにつきましては,その概念の周知,また,その早期発見に向けた取組の推進,関係機関との連携ということでございます。
 子供の貧困につきましても,教育負担の軽減ですとか教職員定数の加配等による教育の充実。
 それから,高校の中退に関して社会的・職業的自立に向けて必要となる資質・能力の育成,また,地域若者サポートステーション等との連携ということでございます。
 海外で学ぶ日本人・日本で学ぶ外国人につきまして,在留邦人の教育を担う在外教育施設での,教育の保障のための教員派遣等々の取組。また,外国につながる子供の多様性を尊重するということで,そのための様々な取組をこちらに記載いたしております。
 それから,夜間中学におきましても設置促進に向けた取組,ここにおける義務教育未修了者に加えたニーズへの対応ということでございます。全ての都道府県・指定都市に少なくとも一つの夜間中学の設置。
 定時制・通信制につきましては,中途退学と不登校の経験者等の,受入れのための展開,また,質の確保に向けた取組。
 高等専修学校につきましては,その認知度の向上のための取組。
 日本語教育につきましても,在留する外国人に対する日本語教育の総合的な体制づくりの支援,また,日本語教育機関の認定制度,また,その資格制度の創設を目指すということ。
 教育相談につきましては,「チーム学校」による教育相談の質的・量的充実の観点からのスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置等。
 また,特異な才能のある児童生徒への対応ということで,実証研究を通じた実践事例の蓄積等でございます。
 大学における学生支援に関する取組,それから,障害者の生涯学習に関する取組についても記載のとおりでございます。
 障害者の文化芸術活動につきましても,こちらに記載をしております。
 目標5でございますが,主体的に社会の形成に参画する態度の育成ということで,子供の意見表明に関して,ルールの制定や見直しに子供自身が関与するということの先進的な取組事例の周知。
 そして,主権者教育についての取組の推進。
 また,ESDにつきましては,ユネスコスクールの活動の充実。
 そして,男女共同参画の取組ということで,アンコンシャス・バイアスの払拭等の意識醸成。
 消費者教育については,学習指導要領に基づく取組の推進等々でございます。
 環境教育につきましては,各府省が連携した指導者に対する研修。また,脱酸素社会の実現に向けた学校施設のネット・ゼロ・エネルギー・ビル化等々でございます。
 災害復興教育についても記載をしております。
 目標6は,グローバル社会における人材育成でございまして,日本人学生・生徒の海外留学ということで,高校段階からの留学支援のための関心喚起に向けた取組等々。また,海外の大学での学位を取得する長期留学,又は短期留学の,それぞれの支援の促進。「トビタテ!留学JAPAN」の発展的な推進でございます。
 外国人留学生の受入れにつきましては,高等学校段階からの戦略的な外国人留学生の受入れのための,奨学金等の経済的支援ですとか受入れ環境の整備。また,専修学校での,受入れの加速化のための取組でございます。
 また,高校・高専・大学等の国際化に向けた取組の推進として記載のとおりでございます。
 外国語教育の充実につきましても,教材・指導資料等,また研修等の充実,また,「英語教育改善プラン」の策定と取組促進によるPDCAサイクルと。また,大学入学者選抜における4技能の適切な評価ということでございます。
 国際教育協力と日本型教育の海外展開についても記載のとおりでございます。
 在外教育施設の,魅力化の向上のための取組。
 また芸術家等の,文化芸術の担い手の育成も記載しております。
 イノベーション担う人材育成につきましては,探求・STEAM教育ということで,高校段階における学習指導要領を踏まえた教科横断的な指導の充実。「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた推進。また,探究・STEAM・アントレプレナーシップを支える企業,大学,研究機関等との連携。高等教育段階におけるデジタル・グリーンをはじめとする成長分野を牽引(けんいん)する高度人材の育成の取組ということでございます。
 大学院教育改革につきましては,審議まとめを踏まえた進学促進ですとかキャリアパスの多様化の取組等々でございます。
 若手研究者・科学技術イノベーション担う人材育成につきましては,博士課程の後期課程の処遇向上,キャリアパスの拡大,それからURA等の取組,専門人材に関する取組の推進ということでございます。
 高等専門学校の高度化,また,専門人材の育成に関する取組についても,こちら記載をさせていただいております。
 理工系をはじめとした女性の活躍推進につきましては,女子中高生の理工分野への興味・関心を高めるための取組。それから大学における女子学生・教員の情報開示の促進等々,また,女子学生の修学支援の取組でございます。
 優れた才能・個性を伸ばす教育につきまして記載のとおり。
 また,アントレプレナーシップ教育につきましては,第6期の科学技術・イノベーション基本計画に基づく取組の推進ということでございます。
 大学の共創拠点化に関する施設・キャンパスの整備,こちらも記載をしております。
 目標8は,リカレント教育をはじめとする生涯学習の推進で,大学等と産業界の連携によるリカレント教育のための大学等における「職業実践力育成プログラム」の認定の活用促進等々でございます。
 また,働きながら学べる環境整備ということで,こちらにおきましても職業実践力育成プログラム,また,放送大学における取組の推進を記載しております。
 リカレント教育のための経済支援・情報提供ということで,教育訓練給付金との連携,また情報発信でございます。
 女性活躍に向けたリカレント教育,それから,高齢者の生涯学習推進に関しても,こちら取組を記載しております。
 リカレント教育の適切な評価・活用ということで,リスキリングに資するプログラムの開発・実施,又は企業におけるこの評価活用の促進のための,調査研究の実施等々でございます。
 学習履歴の可視化に関しましては,デジタル技術を活用した取組,また「マナパス」の機能強化等々でございます。
 生涯を通じた文化芸術活動の推進についても記載しております。
 学校・家庭・地域連携・協働による地域教育力の向上につきましては,コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進ということで,全ての公立学校にこういった体制を構築することを目標とした一層の推進を図るということでございます。
 家庭教育の支援につきましては,家庭教育支援チームの普及,訪問型家庭教育支援の推進。
 また,部活動の地域移行もこちらに記載をしております。
 目標10は,地域コミュニティの基盤を支える社会教育ということで,社会教育施設の機能強化,公民館におけるこの地域コミュニティ拠点機能の強化ですとか,公民館への社会教育士の配置推進等々でございます。
 また,社会教育人材養成ということで,社会教育主事に係る制度整備等々でございます。
 また,地域コミュニティにおける基盤強化ということで,この公民館との社会教育施設の活性化ですとか,それらと他の政策分野との連携推進でございます。
 教育DXにつきましては,1人1台端末の活用ということで,実践的な事例の創出・横展開ですとかICT支援員の配置の充実,GIGAスクール構想の推進ということでございます。
 情報活用能力の育成につきましては,学習指導要領において位置付けられた育成のための,端末の利活用の日常化の促進,また,優れた事例の創出等々でございます。
 教師の指導力の向上につきましては,ICTの活用事例の提供,また,プログラム教育の必修化に対応した研修,また,コンテンツの拡充,最新情報の提供等々でございます。
 教育データの標準化につきまして,教育データの意味や定義をそろえる標準化が進められている中での取組の加速化。
 また,基盤ツールの開発・活用につきまして,文部科学省のこのCBTシステムの活用をふだん使いにしていくということですとか,今後のEduSurveyの基本的な活用。
 また,教育データの分析・利活用につきまして,このデータセット,また,分析フォーマットの策定の方策を推進していくということ。
 デジタル人材育成につきましては,高等教育段階においての取組でございますけれども,各大学における優れた教育プログラムを国が認定する制度等の活用による人材育成,また,教育環境のデジタル化に関する記載をこちらでいたしております。
 また,社会教育分野のデジタル活用についても,社会教育施設におけるデジタル技術の効果的な活用等々の取組を記載しております。
 目標12は,指導体制等々でございまして,こちらも初中段階と高等段階をまとめて記載しておりますけれども,指導体制の整備につきましては,義務標準法の改正による計画的な整備の推進,また35人学級についての小学校における多面的な効果検証を踏まえ,中学校を含めて学校の望ましい教育環境や指導体制の構築に向けて取り組むということ。また,校長マネジメントの下,教諭のみならず職員,また,支援スタッフが連携した「チーム学校」の一層の推進。スクールカウンセラーの全公立小中学校への配置,スクールソーシャルワーカーの全中学校区への配置,また,各自治体のニーズに応じた配置促進でございます。
 働き方改革の推進につきましては,更に加速をさせるということで,令和2年に策定されたこの勤務時間の上限を定める指針を踏まえまして客観的な把握,また,PDCAサイクルを構築するということ。また,小学校35人学級の計画的な整備等々による校務体制の充実,また,現在実施中の教員勤務実態調査における実態把握を踏まえまして,給特法等の法制的な枠組みを含め,教師の処遇の在り方を検討するということ。
 校務DXについては,これらの取組を記載しております。
 教師の資質能力の向上につきましても,先日の答申素案を踏まえた取組を記載しております。
 ICT環境の充実につきましても,1人1台端末の持続的な活用等々によるGIGAスクール構想,将来を見据えた端末の更新に向けた検討を進めるということ。
 また,教育研究の質向上に向けた基盤の確立,こちら高等教育段階でありますけれども,大学運営ですとか,また国立大学運営費交付金,私学助成の確実な措置等々の記載をいたしております。
 高等教育機関の連携・統合につきましても,この戦略的な取組,また全体規模についての検討,「地域連携プラットフォーム」,また,国公私立の枠を超えた連携・統合に向けた推進という形でございます。
 教育費負担の軽減,経済的状況,地理的条件によらない学びですけれども,幼児教育,義務教育,後期中等教育,高等教育における取組を記載いたしております。
 へき地,過疎地,また災害時の学びの支援についても記載のとおりでございます。
 目標14は,NPO・企業・地域団体等との連携ということで,NPO,フリースクールなど民間施設等との連携。
 企業,スポーツ・文化芸術,医療・保健機関,また,福祉機関,警察・司法との連携について記載をしております。関係省庁との連携についてもございます。
 目標15は,教育研究環境の整備,児童生徒の安全確保ということで,学校施設の整備につきまして,長寿命化対応ですとか老朽化対策,また防災機能の強化等,公立学校また国立大学,私立学校に関する取組を記載しております。
 教材の充実につきましても,教材また学校図書館の整備等々でございます。
 私立学校の教育研究の基盤整備につきましても,私立学校における施設設備の整備,また寄附の促進に向けた取組,また,経営力強化についての取組,こちら記載をしております。
 文教施設の官民連携,また,学校安全につきましては,この第3次学校安全推進計画を踏まえた取組でございます。
 目標16は,各ステークホルダー(子供含む)ステークホルダーからの意見対話に向けた取組を記載しております。
 お時間がかかって恐縮でございますが,以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。恐らく,従来様々なところで議論されてきた教育行政に関わる項目はほぼ網羅されていると思います。ただ,今後5年間で,この網羅的な項目にどういうアクセントをつけていくのか,5年間で重視すべき指標とはどう見るべきなのかといったことが,各項目と指標との関係性を考える中で出てくると思いますので,長時間になりましたけれど,今日は一緒に説明させていただきました。そういう趣旨でございますので,その辺を念頭に置いて御議論いただけたらと思います。早速,今御説明いただいた指標と各論のたたき台について,その関係性も含めて御意見を賜れればと思います。今日は御意見を承るステージにしたいですので,できるだけ多くの方に御発言いただきたいと思います。
 それでは,オンライン出席の方は挙手ボタン,こちらの会場では挙手でも結構ですから,よろしくお願いします。
 吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。
 毎回同じことを言ってしまうのですけれども,全体として,どんどん分子が足し算で増えている印象を受けるのですね。しかし,一番重要なのは,分母をどうするのかということです。つまり足し算から割り算にどう展開していくのかがやはりキーです。
 基本方針のところで5つの柱が挙がっていますけれども,ここで出ているキーワードは,ウェルビーイング,グローバル化,地域と家庭で共に支え合うこと,デジタルトランスフォーメーションです。しかし,この4つはどう折り合いをつけていくのでしょうか。
一方のグローバル化と,他方のローカルな地域や家庭,これは一見矛盾します。一方のウェルビーイング,みんなが支え合う,誰も取り残さないということと,他方でDXの中でグローバルな卓越したリーダーを育てていくことも矛盾していく面を含みます。これら全体がきれいに割り切れる分母をどう見つけていくのかということが重要で,私は最終的には会長がおっしゃっていた不易流行あるいは温故知新というところがポイントだと思っていますけれども,幾つかの媒介変数が必要になります。
 その媒介変数ですが,前回,牧野委員がお話になっていたことがキーだと私も思っています。つまり,これまでの段階論的な考え方から,むしろパラレル,複線論的な考え方への転換が必要です。これまで国民全員が同じように幸せになることが目指されていたとするならば,これからはそうではなく,それぞれが異なる線の上にいて,そこには価値の多様性がある。その多様な複線のそれぞれが,それぞれの仕方でウェルビーイングを実現する社会のイメージです。これ以上の説明は,今回は省かせていただきます。
 ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。非常に重要な御指摘を頂いたと思います。
 今日はできるだけ御意見を伺う機会にしたいので,引き続きお聞きしていきたいと思います。それでは,村田委員,お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。私は,各論のたたき台の方で少し意見を述べさせていただきます。
 まず1つ目が,2ページ目から3ページ目にかけての文理横断・文理融合のところです。これもいろいろな議論をされていると思うのですが,高等学校の理系と文系が分かれていること,更にそれに関わって入学試験,大学入試のところで文系と理系が分かれてしまっている。ここがやはり文理横断・文理融合で非常に重要なキーポイント,特に文系と理系が分かれている高校でのこの文理分断,これをどうするかが一番大きなキーワードだと思いますので,これをやはり言及していただきたいなというのが1つ目です。
 それからもう2つありまして,もう1つが,イノベーションを担う人材のところで16ページなのですけれども,理工系分野をはじめとした女性活躍,確かにこれは教育未来創造会議で挙がってきている項目ではあり理解はできるのですけれども,イノベーションを起こすためには理系の人材を,あるいは理系でありながら文系も分かった人材,それこそ文理横断の人材が必要だと思います。女性活躍は分かるのですけれども,やはり理系人材の育成ということを特にどこかで項目として挙げておいた方がいいような気がいたしました。もちろん女性の理系の人材がいろいろな形で,親の少し勧めによって理系をやめてしまうようなことはあるのは分かるのですが,理系全体を上げていくことを視野に入れておくべきではないのかなと思いました。
 それから最後3つ目,これは少し小さな形なのですけれども,目標の11のところの,21ページのところの教育データの標準化あるいは基盤的ツールあるいは教育データの分析・利活用とあるのですけれども,我が国は非常にこの教育データの整備が遅れているなと思っています。むしろ教育のデータを整備して分析することが,何か個人情報のこともあるのですけれども,少しそれに対する忌避するような傾向があるような気がしてならないのです。
 例えば私は大学の教員ですから大学について言いますと,アメリカではそれこそアイビーリーグの大学の,卒業生の年収のデータは各大学が整備していまして,むしろ整備することが義務づけられているのです。日本は全くされていません。正にアウトカムの時代であるときに,そういうことをすることも少し書き込んでいくことが必要なのかなと。
 最低やっていただきたいことは,就業構造基本調査のデータなのですけれども,2007年からようやく大学院が分離されたデータになっているのですが,まだ修士と博士が分離されていないのです。これも今,大学院の時代で大学院どうするか,理系は特に博士をどうする,文系は修士をどうすると言っているときにこのデータが分かれていない,あるいは,専門職も分かれていない。データが分かれていないときにデータドリブンな分析をと言っているときに,是非このことをやれる方向に進めていただかないと,結局何もできないのではないかと危惧をしてございます。
 私からは以上でございます。
【渡邉部会長】  大学分科会等で議論いただいている内容も言及いただきまして,ありがとうございました。最初の理系人材のところは探求・STEAM教育というような形で,ある意味では従来の理系や文系という概念ではなくて,STEAMという概念で表現していくというように整理されていると思うのですが,その辺は今後どういう調整がいいのか一つの視点かと思いました。
 それでは,引き続き御意見を伺っていきたいと思います。大森委員,お願いいたします。
【大森委員】  御指名ありがとうございます。大森です。よろしくお願いします。
 私から4点お話をしたいと思います。まず,初めに指標についてなのですけれども,目標ごとに指標を考えていただくことになると思うのですけれども,アウトカムとしては,やはり先ほどのそのパラレル思考と関連してくると思うのですけれど,基本的方針が達成できたかというところが重要になるのだろうと思います。
 各目標と基本的方針の対応関係にのっとってロジックが形成されていって,その集合として,基本的方針が達成できたかどうかを確認していくとなるという理解をしています。これは確認です。
 その上でなのですけれども,今回ウェルビーイングを方針の中心に据えることになりますので,ウェルビーイングに向かって変化したのかどうかというのがやはり最も重要な指標になっていくのだろうと思いますね。そうすると,そのウェルビーイング指標などを用いた評価をするのか,つまり各目標の積み上げのみならず,基本的方針であるウェルビーイングそのものを評価するのかどうかというようなこと,世の中にはもうウェルビーイングの指標などが,これは私よりも内田先生が詳しくていらっしゃいますが,出ていますので,それも今日結論を出すということではなくて,御検討いただく必要があるのではないかと思ったというのが1点です。
 2点目,その指標と関連して前回,私,欠席してしまったので少し後戻りの議論をしてしまうかもしれないのですけれども,各論項目と基本方針との対応関係についてです。これもその対応関係に応じて,指標の総体としての基本的方針の評価ということになるとすると,例えば基本的方針の3,地域や家庭でというのは,ニュアンスとしては社会教育領域をイメージするものだというのは重々理解をしているのですけれども,一般的に地域で共に学び合うという文言で考えると,「なぜ学校教育は地域や家庭とともに学び,支え合わないの?」みたいに見えてくるということがあるかなと思っています。
 さらに,学び全般にとって,3はより重要な観点になっていると思うのです。例えば目標の1には,学校と社会の接続とあるわけですけれど,ここに3がないとか,目標の5,7,13,14にも3が加わっていない。それらが,加わっていいのではないかなと感じました。
 もう1点,基本的方針の1,ウェルビーイングですけれども,少し極端な例で言うと例えば目標13は,正に誰一人取り残さないということにつながる目標なわけですけれども,それはなぜかといったらウェルビーイングな共助型社会を形成するためですよねということになると,1がないのはあれ?と思うと。そういう観点で各目標を見てみると,DXにせよイノベーション人材育成が必要なのも,それはウェルビーイングな社会に向けてのことでして,先ほど申し上げた指標とも関連しますけれど,実は1というのは全てに関連するし,関連させなきゃいけないのかなと指標のことを考えていて思い直したというのが2点目です。
 3点目ですけれども,各論項目の基本施策の部分というか,あるいは各論のたたき台を今日お示しいただいたもので,ここは前回御議論になって基本的考え方を踏まえてのものになっているべきかと思います。
 それを各論に落とし込むときに実際の事業につながるわけですから,更に詳細になっていくと。そうすると,基本的考え方で述べられているワードが抜けてしまっているところもあるのかなと感じました。例えば年齢主義のことであるとか,例えば内部質保証という文言であるとか,これについて全て申し上げる時間ないのですけれど,基本施策の中にちゃんと方針が入っていくということが必要かなと思ったりもしたところです。
 それからもう1つは,基本施策が複数の目標に連関するものもある。例えば文理融合はどこか一つに対応するのではなくて,例えばイノベーション人材育成にもすごく必要なことなのだと,それから学校と社会の接続も地域の教育力向上にもとても必要なことだと思うので,つまり再掲という形でそのパラレルにというか,あるいは複合的に事業がいろいろな目標に向かっていけるような,そのような書きっぷりが必要ではないでしょうか。
 最後,短く4番目ですけれど,基本施策の個々についても例えば在外教育施設については,国内教育機関との連携が述べられるべきだと思いますし,大学における障害学生支援においては大学にというだけじゃなく,大学が主語というだけではなくて社会の役割みたいなものも,あるいは訪問型家庭教育においても学校とか地域との協働とか,いろいろ現場からの具体的な御提案もあるので,これは次の回にまわしたいと思います。
 すみません,長くなりまして,以上4点でした。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。是非ほかの委員の方の御意見も伺いたいと思います。ウェルビーイングの指標をどう位置づけていくかということについては,今回の基本計画の中で大変重要な要素になると思います。
 OECDの指標との関連性も考えなくてはいけないですし,今御説明いただいたように1つ目ということでいろいろな項目とひもつきで考え,積み上げていく必要があるという整理をベースにしていくと,日本発という考え方ともつながると思いました。そうすると指標のそれぞれの項目にどう位置づけられるのかということが関係してくると思いますので,それについても御議論いただきたいと思います。
 全体の御意見としては,網羅的な項目と,それぞれの関連性に関する御指摘を頂きました。地域と学校もそれぞれパラレルではなくてどういう関係性なのか,また皆さんからも御議論いただきたいと思います。
それでは,川口委員,お願いいたします。
【川口委員】  どうもありがとうございます。私からは3点ほど申し上げたいと思います。
 まず,最初はデータの利活用に関して,全国学力調査ですとかあるいはMEXCBTで得られたデータ,こういったものに関しての活用については述べられているのですけれども,このほかにも政府統計,先ほど村田委員の方から具体的に就業構造基本調査についての言及ございましたけれども,こういった幅広い政府統計の個票を使ってしっかりと分析をしていくというようなことが今後より一層必要になっていくのかなと思いますので,そういった学力調査やデジタル教育の結果として得られる以外のデータについても言及があるとよいのかなと思いました。
 それで文理融合に関してなのですけれども,文型,理系といったときに2つの考え方があるかなと思いまして,一つは方法論としてのサイエンスか人文系のアプローチなのかという方法論としての話と,あと目標というか,対象であるものが自然現象なのか人間なのか社会なのかというところで,サイエンスの方法には関心があるのだけれども,自然現象そのものには余り関心がないという中高生とかというのも結構いると思うのですけれども,そういった人たちがうまく進路選択をできるように,社会現象には関心があるのだけれども,ちゃんと数学を高校では勉強するということ,具体的に言うと,そういったことを取り入れて今の文理という分け方というのは方法論の部分と対象の部分というのが合体しているような分け方になっていると思うのですけれども,ここを分けて考えるということもいいのではないかなと思いました。
 それとキャリア教育に関しては,今述べられていることはそのとおりだと思うのですけれども,今後の社会の変化というのを考えると,実際に過去10年ぐらいの中で一番伸びている職業は福祉とか医療の仕事なのですよね。今後もう高齢化が進む中で,いわゆるそういうケアワーカーの重要性というのはこれから上がっていくはずで,そういったところでほかの人とうまくコミュニケーションが取れる,これは性格だと考えてしまえばそれまでなのですけれども,そうではなくて後天的に得ることができるようなスキルであれば,そういったものをしっかりと育成していくというような考え方というのもあるのではないかと思いました。ですので,職業教育と言うときに,特定の職業をイメージしてそこに特定のスキルを育成するというだけではなくて,社会全体としてこのように職業構造が変わっていくと思われるので,それについて必要なスキルを育成するというような少し引いた視点というのもあってもいいのかなと思いました。
 最後なのですけれども,これはかなり細かい点で,しかもここに参加していらっしゃる方で,大学の経営をやっていらっしゃる方がいらっしゃるので少し申し上げにくいのですけれども,学長のリーダーシップというのが書いてあって,それは大変結構だと思うのですけれども,それに伴う責任というのはやはりセットになっていないといけないのではないかなと思いました。
 具体的な話をすると,東京大学の国際ランキングが最近発表されて35位から39位に下がったと,京都大学も100位以内に入って,そこは61位から68位まで下がったということで,もちろんこういう指標自体が望ましいか望ましくないかとか,あるいはその資源投入が少ないのでこういう結果になりましたとか,いろいろ話はあると思うのですけれども,少なくとも説明責任はあるよなと思うので,このリーダーシップというのとアカウンタビリティというのをやはりセットにして論じないと,余りうまくいかないのかなという印象を持ちました。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。最初の,データ利活用をこれから進める必要があるというのは,EduSurveyについても付言していただいていますが,非常に重要になると思います。事務局からこれについて説明はありますか,よろしいでしょうか。また後ほど是非この辺についても説明の機会を設けていただきたいと思います。文理融合についても非常に網羅的な視点が必要だと御指摘いただき,ありがとうございました。最後のところは大学の関係者もいらっしゃるので,後ほどまた御意見があれば是非伺いたいと思います。
 それでは引き続き会場の方から,牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】  ありがとうございます。
 取りまとめ,どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。実はこの場で前回,渡邉会長から,この新しい教育振興基本計画は第4期なのだが,令和版の新しい教育振興基本計画として位置づけられるのではないか,というお話がありました。それを受けてということでもあるのですが,先ほどの吉見委員からもお話がありましたけれども,今回のこの特に目標とあと中身なのですが,何かある意味では従来いろいろなものを詰め込んできたというか,それぞれのまとまりはあるのですけれども,全体で一体何を言おうとしているのかといったこと,何が大事なのかといったことが少しぼやけてきているという面があるのではないかなという受け止めをしました。
 例えば今回資料の4,5で出していただいていますけれども,この基本的な考え方のところで,7ページ以降に基本方針5つが出されていて,説明がついていて,今回この各論に入るということになるのですけれども,5つの基本方針の前に,現状分析から,これから私たちが迎える新しい社会の在り方についての議論があって,そしてその基本方針の前ぐらいに,どういうような学びというか教育といったものを構想したいのかといったことを少し書き込んだらどうかという思いがあります。
 例えば,私は社会教育や生涯学習の立場から参加しているのですけれども,これからはむしろ先ほども議論がありましたが,学校教育,社会教育とか家庭教育とかという領域分けをするのではなくて,それが融合していく中で,人々が学んでいくことをどのように社会の中に埋め込んでいくのか。さらに,そうしたことが基本になって,例えば自治が鍛えられていって,社会負担が小さくて全ての人々が社会参加できるような新しい価値多元的な社会が出来上がっていく。その中で育てられた子供たちが学校を通して,例えばグローバル人材や,またイノベーティブな人材に育っていく。そういうイメージを持てるような形で,どのような社会を構想するのかといったことが書き込まれてあると,分かりやすくなるのではないかなとも思いました。
 実は,私たち社会教育関係者には,「学びは社会の地下水脈である」という言い方があったりするのですけれども,そういうような形での少し教育のイメージといいますか,そうしたものを提示してはどうかという印象を持っています。
 その立場から言いますと,例えば先ほどの指標と評価のお話がありましたが,それも実は私たちの立場からしますと,制度や政策や行政,施策というのはある意味で社会心理的なものであって,人々が使いたいと思えないと使えない,使ってもらえないというか,無理やり強制すると,むしろ生活が壊れてしまうといったことがよく起こっている。
 その意味では,人々がやりたいと思えるような形で,又はそれを使いたいと思うような形での何か施策があり,その評価の在り方があるといいますか,何かそうしたことを少し,私も評価の専門家ではないのでよく分からないのですけれども,何かそういうようなつくり方というか,見せ方みたいなものが必要になるのではないかとも感じています。
 それからもう1つは,今日実は,鳥取から帰ってきて,明日また北海道へ行くのですけれども,各地で様々な学びがなされていて,子供たちを巻き込んだ実践が展開されていて,そういう子供たちを巻き込んだ住民の学びの活動が活発なところほど,印象論的な話になりますけれども,子供たちの社会参加意識が高くて,また自己肯定感が高かったりします。さらに,子供たちが様々に積極的に発言して,社会に関与していこうとするような動きが強くなってきていて,子供たち自身が自らこの社会を担おうとするような動きを示しているという例がとてもたくさん出てきています。
 そして,そういうことの中で住民自身が,また,その子供との関係の中で自己肯定感を高めていって,自ら社会を担おうとするような動きが強くなっているというところが出てきています。こういう新たな社会的な動きが,行政依存ではなくて,住民たちが自分たちでやっていこうとするような動きを強めていくことと,住民相互の学びや地域で子供が育つといったこと,それと学校との往還関係の中で,子供たちが次の時代を担っていくイノベーティブな人材になっていくという筋道を見せてくれているのではないかと思うのです。
 何かそういうような形で,全体の目標が16もあって,そこにまた細かいいろいろなものが入ってきていますから,とても盛りだくさんで総花的に見えるのですけれども,全体を少し整理するような形で,基本目標の前ぐらいにそういうイメージを抱けるような何か文言が入ってくるといいかなと思います。
 それからもう1つは,これは細かな話になるかもしれませんけれども,やはり新しい時代ということで人生100年ということですとか,それから今回,不登校の子供たちが過去最多になったという報告がありましたけれども,学校が少し子供たちの在り方や社会の在り方とずれ始めているということですとか,あと,例えば現在,年金の支払いを64歳まで延ばすという議論があるような社会保障の問題ですとか,更に雇用の在り方が変わっていく,そうしたものを含めてウェルビーイングというのが今回の課題になっていると思うのですけれども,そうしたものを,学びという観点から,また教育という観点から,国民がイメージできるような形で提示していくことが大事ではないかなとも感じています。
 あと,少しこれも気になるところがあるのは,障害者の学びと社会参加が一つの項目として立てられていいのではないかと思うということがあります。それから今後,高齢化の進展の中で要介護者が増えてきます。その方々の意思決定支援をどうするかといったことが大きな課題にもなってきていて,その基盤が学びということにもなっていますので,そんなことも含めて新しい課題に対応できるような教育や学びの在り方も書かれてあると,より説得力のあるというか,魅力のあるものになるのではないかという印象を持ちました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。恐らく学校と社会の関係性が従来以上に非常に重要になってきており,生涯学習の在り方もより学校や大学との関係性が密接になってきていると思います。そうした非常に大きな変化がある中で,総論の基本計画のコンセプトや教育をめぐる現状,課題とその背景的なところは記載されております。ただ,教育振興基本計画として各都道府県や学校,社会に理解してもらうためには,おっしゃるようにより分かりやすくとか,あるいはこのコンセプト部分のところをもう少し特徴的に見せるとか,そういった工夫も含めて検討が必要だと思いました。ありがとうございます。
 それでは,松浦委員,お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。私は1点,大きなことをまとめて申し上げたいと思います。
 今,牧野委員がおっしゃったこととかなり趣旨は同じなのですけれども,今後の教育設計の正に基本原理をどこに置くかというときに,やはり一つのキーワードは接続なのではないのかなと思います。この部会でも,今,牧野委員がおっしゃったように領域を分けずに横断的にという議論をしようということはありましたし,それから,学校段階に関してもできるだけ縦のつながりということを余り分断せずに考えていこうという基本的な流れがあったと思います。
 そういう観点からしますとやはり特に目標1のところで,最後に学校段階間・学校と社会の接続が出てくるのですが,これは一番前に来て,目標1だけではないのですけれど,目標1の議論のところでもやはり学校段階間と学校と社会の接続というものを整備していくのだという,そういう教育制度設計の基本原理をきちんとポイントを押さえておいた方がいいのかなと思います。
 高大接続ということが言われてはいたのですが,接続という言葉は各論の文言の中には入ってくるのですが,項目として例えば大学入試と立てられていて,これはやはりもはや入試ではなく入学者選抜だと思いますし,学修者本位というのも大学教育の今大きな課題ですけれども,大学になって初めて学修者本位になるわけではなくて,やはりそれは前段階があり,大学で学修者本位の構造ができていくという流れになるのかなと思います。
 文理融合も最初に村田委員がおっしゃったように高校の進路分けが文系,理系となって,それは大学にも責任があるわけですけれども,高校で文理が分かれていって,大学になって初めて融合というのも,これは方針,流れとしては少し考えなければならないことです。それから,大学院教育の振興というものも,実は大学院教育を改善するためには学士課程をきちんと,大学院に進学できるような学士課程の設計というものをしていかなければならない。また,リカレントということも含めていくとやはりこの5年間で重視すべき項目というより,原理として教育制度の接続性というものを高めていく,その基盤整備をしていくのが正に渡邉部会長,前回の会議でおっしゃった新しい基本計画のポイントになった方がいいのかなと思って説明を伺っていました。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。大変共感する御発言でした。従来の,日本の教育の課題として,高校の多様化があります。高大接続の議論の際には,そこまでなかなか及ばず,入試問題だけが取り上げられてしまったので,もう1回改めて,次期基本計画の中で明確化していく必要があると思います。それは文理融合や社会との接続に関わることでもあり,キーワードとしては,接続やつながり,横断性ということが,この基本計画の中の重要テーマになるのではないかと思います。
 ただ,DXのところでよく議論されていたように,学校と社会をつなげるという視点で見ると,レイヤーごとにつながるキーを持つのがDXだという考え方もあって,その新しいつながり方や接続の仕方はどういうことなのかについては,基本計画に新しい要素として入れていく必要があるのではないかと思います。ありがとうございました。
 それでは,堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】  東北大学の堀田です。資料3の各論たたき台について2つ意見を述べます。
 最初に,次期計画の目標1のところ,1ページ目の最初のところなのですけれども,「確かな学力の育成」と書いてあります。これは長い間,学習指導要領等で用いられてきた表現ではあります。しかし,確かな学力という言葉は今のところたたき台の文言にはありません。
 学校現場では現在,子供たちの多様性,一人一人の個性を生かしながら,また,1人1台の端末で探究的に学んでいくことが推奨され,それが今日これから必要になる資質・能力の育成に向けて重点化されつつあるわけですけれど,この確かな学力という言い方が,場合によってはこの指標として使いやすい全国学力・学習状況調査等の平均点の数字を使うと。これが上がったのか下がったのかの話になりやすいと感じております。本当は,同じ学習者が受けているわけではないし,問題も毎年違うので厳密には比較できないはずなのだけれども,そういうふうに捉えられがちになる。それを誘導している表現の一つがこの確かな学力という言葉のように私は感じております。
 できれば,これはこれからの時代に必要となる資質・能力のような表現や,あるいは学力という言葉をこれからの時代に合わせて,こういうものを学力と捉えるみたいなことの大方針みたいなことが描かれた方がよいと思います。これは諸先生方がおっしゃったことと近いですけれど,最初に学校の在り方,授業の,これからの教育の在り方が掲げられた上で,この表現を使うならばですけれど,使うとしたらどうかと感じております。これが1点目です。
 2点目は,この同じ資料の23ページにあるところです。この辺り,ICTの環境整備やあるいは教育DX全体についてずっと書かれているあたりなのです。私は,これは非常にいいことだと思っていますが,この校務のDXのところだけで言えば,一つはもちろん学習指導や学校経営の高度化あるいは効率化というのはありますけれど,もう一つはやはりその上にあるような働き方改革とか教師の職場環境とか労働環境改善とか,あるいはもう多様に入り乱れた学校の業務の抜本的な見直しとか,そういうようなこととこの校務DXが関係していないといけないと思います。それが今日的な校務DXの考え方かと思います。
 アウトプットとしては業務がどういうふうに,例えばネットワークの分離が統一化されたかとか,作業目標をつくってそれが何%というふうに,アウトプット型で当面はできると思いますけれど,本質的にはやはり先生方一人一人が働きやすくなったと感じているか,雑務に追われなくなったと感じているかというような,あるいは実際にどうやって測ればいいか分からないですけれど,そういうアウトカム的な考え方で指標へ持ち込んでいくことが重要かと思います。
 2点述べました。ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】  ありがとうございます。最初の学力とは何かということは確かに非常に大きな視点です。社会的には,偏差値などがあげられますが,それが本当に学力につながっているのかは本質的な問題だと思います。
 それから2つ目の校務DXについて,先ほど牧野委員がおっしゃっていたように,分母がどんどん膨らんでいくときに,どうそれを縮めるのかという視点で考えると,働き方改革と校務支援システムこそが全体の分母を縮める要素だと思います。従来,働き方改革とは別々に議論されているのですが,連動性を持たせる必要があると思います。DXの中でも生徒のGIGAスクールの視点だけではなくて,ここの視点が非常に重要です。ありがとうございました。
 それでは,清原副部会長,お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原です。
 まず「資料1,次期教育振興基本計画の指標設定に当たっての検討の視点(案)」について申し上げます。
 各論の本格的審議の出発点に当たりまして,指標についての検討の視点が提示されたことは極めて有意義だと考えます。計画とは必ず達成状況を把握して,進捗状況を踏まえて,適時適切に目標達成に向けた対応を進めるとともに,必要に応じて具体的な事業等を改善していく必要があります。したがって,これらの評価,検討の視点はそれぞれ重要であるとともに,実は各視点は相互に関連していると思います。
 そこで今日は提示された視点を踏まえて,2点について申し上げます。
 1点目は,6番目に「政策目標達成のためには,各地方公共団体における教育振興基本計画の策定・指標との連動性に留意することが必要であり,地方公共団体の計画策定・指標設定に資する観点から指標を検討する」と明記していただいたことは極めて重要なことだと思います。
 私自身,教育委員会と密接に連携して,コミュニティ・スクールを進め,生涯学習,社会教育等を進めてきた市長経験者として,この現場の実態を視野に入れた上での,例えば4番目の「アウトカム指標の設定に努める」であるとか,5の「見直すべき状況が発生する場合もあるので,一定の柔軟性を持って指標を見直すことも可能とする」とか,あるいは8番目に,「学校現場の負担が増えないように配慮する」という項目と関連して,まず,第一義的に6のポイントを押さえていただいたということは重要だと考えます。
 特に本日,宮﨑総括研究官が報告していただきましたように,地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づいて,各自治体が責任を持って進めているとはいえ,仙台市や島田市に代表されるように大変創意工夫をされている実態も分かりました。そのことを是非各自治体の教育委員会に共有していただいて,次期は特に「ウェルビーイング」,あるいは「リアルとデジタルの最適な組合せ」など,定量的評価だけではなくて定性的評価に工夫が必要な目標や事業が多いので,多元的評価を必要とする状況下において是非そうした情報の共有が必要と思います。
 指標についての2点目ですが,7に「データの把握に当たっては,『文部科学省WEB調査システム(EduSurvey)』を効果的に活用することを検討する」とあります。先ほど堀田委員も御指摘されましたように,学校において実は調査というのが極めて負担であるという声が働き方改革のときに表明されました。
 そこで,教育現場において評価する際も,負担なく着実に正確に適切に公正に進められるためには,EduSurveyをはじめとして,学校業務及び教育委員会業務のDX化を着実に進めること,そのことが一層重要だと思います。
 ただし,指標について最後に申し上げますが,「定量的にも定性的にも評価することが困難であるから,計画に事業を含めない」といった本末転倒がないように,まずは児童生徒,そして学習する人本位の事業が計画されなければならないと思います。
 次に,少しお時間頂きまして,資料3の「各論のたたき台」についても意見を幾つか申し上げたいと思います。
 このたたき台はこれまでの審議に基づく基本方針を基盤に,いずれも重要で必要な項目を提示していただいていると思いますが,現時点,気づいた点を5点に絞って申し上げます。
 1点目です。それは目標4の「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」,この内容は,特別支援教育に医療的ケアを含めていただいたり,不登校児童生徒,ヤングケアラー,子供の貧困,高校中退,夜間中学,障害者の生涯学習など,今期極めてやはり特徴的に提起している内容で,目標の4番目にも置いておりますので,是非このことについては評価の仕方も含めてこれから委員の皆様と議論を深めたいと思います。
 そして目標13の「経済的状況,地理的条件によらない質の高い学びの確保」も関連して,学びの保障のために連携する項目とも近い内容ですので,その辺についての関連性を留意していただければと思います。
 加えて目標5,「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成」については,特に来年の4月1日から「こども基本法」が施行されますので,トップに「子供の意見表明」を入れていただいたように,これも大変重要です。議員立法の「こども基本法」でございますので,これをどのように具体的に教育現場で反映するかということは,国会議員の皆様も注目されていますので,是非このことは強めたいと思いますし,目標16の「各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フローアップの運用」と連携をしながら,着実な各論を展開できればと思います。
 2点目,松浦委員が御指摘されましたように,「接続」,「連携」というキーワードは極めて重要です。渡邉部会長もおっしゃいましたけれども,これをいかに諮問にもありますように,「学校教育の段階を超えた接続,生涯学習,社会教育,リカレント教育との接続,つながり」として,明記していくかということが大事です。
 そこで吉見委員が提起された「段階的な発想からパラレルの発想を」とも関連するかもしれませんが,目標6の「グローバル社会における人材育成」,目標7の「イノベーションを担う人材育成」,目標8の「リカレント教育(学び直し)をはじめとする生涯学習の推進」は,いずれも「接続」という言葉と密接な連携があると思いますので,その辺りの連関性というのを強めていただくとともに,目標5に「男女共同参画」が含まれていますが,特に6,7,8については,20世紀に数少ない女性の大学院生として学び,研究してきた経験からは,是非「ジェンダー格差」がないように,しかも学際的な強みが達成できればと思います。
 3点目,目標10の「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」ですが,実はこれも「つながり」,「接続」の象徴の目標だと思っています。
 もちろん生涯学習分科会長として,委員の皆様の問題意識を取りまとめたことが目標10に明確に反映されていることを大いに有り難く歓迎いたしますが,諮問にあります教育の各段階の,連関性の中で,特に「学校教育と生涯学習・社会教育の連携によるコミュニティ・スクールからスクール・コミュニティに向けた進化」が期待されるわけで,この目標10も「接続」の象徴だと思います。
 4点目,目標11,「教育DXの推進・デジタル人材の育成」と,目標16,「各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップ」,これは実は最初に示していただいた評価の指標との関連性が極めて高いと思っています。短期的に日常の教育効果に関する評価をするためのデジタルトランスフォーメーション,長期的な計画の達成状況や実効性との関連性を進めるための各ステークホルダーとの対話やデジタルトランスフォーメーション。ですから,実は各論は計画の内容を円滑に実行していくための評価とも接続している,関連していることを確認させていただきます。
 最後に5点目です。目標12の「指導体制・ICT環境の整備・教育研究基盤の強化」は,初等中等教育,高等教育,そして生涯学習・社会教育においても,極めて重要な学びの基盤について集約して述べていただいています。「学校における働き方改革」のさらなる推進を進めるためにも,「ICT環境等の基盤整備」は必要ですし,教育研究が国際的な水準をより一層高めていくためにも基盤の確立は不可欠です。このことはつまり目標12は,全ての項目に通底する基盤でもあるなと改めて思いました。
 市長として,教育委員会の予算を計上してきた立場としては,ハードもソフトも全て教育基盤なのです。この辺を是非自治体の皆様に,教育委員会だけではなくて市長部局にも理解していただけるような発信の強化が必要だなと思いました。
 以上です。お時間いただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。冒頭の指標についての御指摘について,検討の視点として整理している内容は,今までのロジックモデル等とも関連させてこうした整理をさせていただいております。
 私どもがこの指標の背景として少し認識する必要があるのは,この基本計画自体が教育基本法の17条に基づく基本計画であって,地方公共団体はその計画を参酌して,地域の実情に合わせて教育振興基本計画を策定しなければいけないとなっていることです。御指摘いただいた,政府が閣議決定するこの教育振興基本計画と,各地方公共団体の連動性は非常に重要ですが,必ずしもその連動性が今まで確立されているものではないですから,こちら側からより連動性を意識して,指標の立て方を留意するといったことが非常に重要だと思います。御指摘いただいたことは本当に大事な要素だと思いました。
 また,そのためにも,先ほどの御指摘のようにEduSurvey等のデータ利活用を行って,連動性を深めていく必要があると思います。
 それから,後半は,指標の関係性や連携の問題ということで御指摘いただきました。本当にありがとうございました。
【清原副部会長】  よろしくお願いします。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは,次に吉田信解委員,お願いいたします。
【吉田(信)委員】  埼玉県本庄市長の吉田でございます。
 この後,所用がございますので,資料4,5も少し触れた上でお話をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
 資料3ですけれども,4ページ,主観的ウェルビーイングの向上(自己肯定感,他者とのつながり等),日本社会に根差したウェルビーイング。この言葉がこれまで日本型のという言葉だったのが日本社会に根差した,あるいは日本発のということで資料4でも出てきているということについては,私としては大いに評価したいと思っているところでございます。
 実はこのウェルビーイングとは何ぞやということを今までいろいろな議論があった中で,非常に私としてもストンと落ちている気持ちがそうだよなと思っているところが,ある先生からの御指摘の中で,日本人に例えば満足度調査などをすると,満足ですかと言われると,私だけではなくてほかの人のことも考えなきゃいけないと思って,少し何と言いましょうか,獲得的なウェルビーイングというよりも協調的なウェルビーイングを求める。この心性と言うのですかね,心の性,この精神というか,これはやはり非常に日本がこれから大いに世界に私は発信していくべきであろうし,我々自身がしっかりこれを自覚していくことが必要ではないかと。
 本当に世界に目を向けますと,果たして地球が今後存続できるのかどうかという非常に大きな岐路に我々人類が立っているわけでございまして,環境問題についてもしかりですし,いろいろな面で我々が地球環境を今後にわたって存続させていく,我々の社会を持続可能なものとして存続させていくということについて,非常に大きな岐路に立っている。
 こういうときに,この日本型のウェルビーイング,日本型というか,日本発のウェルビーイング,獲得的なその幸福だけではなくて協調するということの幸福感というのは大いに私は発信すべきだと,自信を持って発信すべきだろうと思っているのです。
 実は例えばですけれども,東日本大震災のときに多くの被災者の方々がお互いに助け合って,災害現場で,危機をみんなで乗り切ってきた,復興に向けて努力してきたという姿は全世界に発信されているわけですけれど,どうして日本人はそういう行動できるのかということは結構世界でもかなり注目されたと思うのです。
 私,実は今回の教育基本計画のことについて感じるのは,例えばですけれども,この資料3の4ページにおける道徳教育や,例えば5ページにおける伝統文化という項目ありますけれども,これ実はもっと日本発のウェルビーイングと連動させて考えることができないのかなと。実はいじめ・人権教育についてもそうなのです。
 何かというと例えば伝統文化というときに,ここに書いてあることは,いわゆる形としての伝統文化みたいなことに少し書きぶりが終始しているというか,もう少し形に表れる伝統であるとか文化の背景にあるもの,こういったことに目を向けていくべきなのではないか。それは実は日本の今まで培ってきた思想であるとかあるいは宗教であるとか,あるいは道徳であるとか,我々が過去積み上げてきたものの中に現在の日本型ウェルビーイングを形成する日本人の知恵といいましょうか,協調的なこの幸福感,これが実はマイナス面で捉えられる場合もあるのです。獲得的なその幸福感というものが少ないというのがよくないのではないかというようなことも言われることありますけれども,しかし,世界に対して自分たちの歴史的に積み上げてきたものを意識してそれをしっかり発信していくという,そういうある意味使命感的なものというのはもっともっと今のお子さんであるとか,私は教えていくべきではないかなと思うのです。それは実は子供たちも元気にさせるのではないかなと思っているところでございます。
 道徳教育についてもしかり,いじめ・人権教育もそうです。実は,他者を傷つけるということは自分を傷つけることなのだよということをやはり教えていくべきなのじゃないか。他人と私というのは分断されているものではなくて一体的なものなのだと,他者を傷つけるということは自分を傷つけるのだ。
 そういうような教え方,なぜいじめはいけないのか。ここにもただいじめはいけませんというだけではやはり子供たちが納得しないわけで,そこにももう少しこの日本型の,日本発のウェルビーイングの考え方というのはもっともっと強調されても私はいいのではないかなと感じております。
 その上でなのですけども,その上であえて申し上げれば,日本型ウェルビーイングをもっと発信すべきだと,日本発のウェルビーイングを発信すべきだという背景には危機意識があるわけでございまして,これは地球環境しかり,あるいは今の国際情勢しかり,もう少しこの危機意識というものがあって,しっかりとした教育を行っていきましょうというような精神が見られてもいいのかなということを実は感じたところでございます。
 少し取り留めのない話になりましたけれども,私は日本発の,あるいはその日本社会に根差したウェルビーイングということを大きく高らかにうたい上げていくべきだし,その発想に基づいて,その考え方に基づいてというか,道徳教育であるとかあるいは人権であるとか,あるいは伝統文化というものももう少しそういう観点で深掘りをして語られるべき,教えられるべきではないかなということを感じましたので,発言をさせていただきました。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。まさしく個別最適と協働的学びの概念と,ウェルビーイングとの関係性は御説明いただいた通りだと受け止めさせていただきました。
 ただ,世界に打って出るときにはやはりこの自己肯定感をもう少し高めないと戦っていけないということもありますので,その両方をしっかりバランスを取りながら見ていく,それが日本発のウェルビーイングになるというような整理ができればと思います。ありがとうございました。
 それでは,河野委員,お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。河野でございます。
 私も16のこの目標案,基本計画の各論項目の中に掲げられている目標案の全てが基本的な方針1から5と連携していると考えます。
グローバルに関して,総論から各論について幾つか意見を述べさせていただきます。目標6のグローバル社会における人材育成は基本方針との関係でいきますと1,2,4ですけれども,やはり3,は切り離せないような気がしております。なぜならばグローバル教育とは海外との接点ばかりではなく,身近なところから必要で,グローバルなマインドセットというのは,学校教育だけでなく地域や家庭での多様な人々との関わりの中でこそ生まれるものだと思うからです。そのために地域や家庭とともに学び,支え合う社会の実現に向けた教育の推進との関係,これは是非リンクさせていただきたいと思いました。
 それから,「グローバル人材の育成」と,「グローバル社会における人材育成」,は,少し意味が違うような気がいたします。「グローバル人材」の再定義が必要なのではないかなと考えます。
 最終的な議論が調べてみますと2011年の産学官連携によるグローバル人材育成推進会議で議論されたものが最後で,その後にグローバル人材とは何かということを深掘りして,再定義できないように思いました。その後,東日本大震災,コロナ,ウクライナ危機などいろいろなことが起きた中において,今グローバル人材とは,グローバル社会における人材育成とは一体どうあるべきなのかということを改めて考える必要があるのではないかということです。
 また,資料2の評価指標は大変共感します。ロジックモデルで考えて,願わくばインパクト指標を持ちたいところですが,最低でもアウトカム指標を全ての目標において設定することが重要ではないかなと思います。
 その点から,第3期のグローバルに関するところは英語のスコアが書かれていますけれども,できましたらばここはアウトカム指標で考えて,英語嫌いをなくしていくですとか,言葉の壁を乗り越えてコミュニケートする,そういったようなことができる人材が重要であるので,例えば,外国人との交流が日常的にある生徒児童の数,これを指標に持ってくることが考えられるかと思いました。
 それから資料3に関して各論の部分で幾つか申し上げたいと思います。
 日本人学生の生徒の海外留学に関して,これは留学の機運醸成は大変重要なことであると思います。それを官民協働で後押しする体制が整ったことは大変すばらしいことで,関係の皆様の御尽力に大変敬意を表します。
 実は留学が増えるということは大変すばらしいことなのですが,高校生の留学が増えるとトラブルも同時に数が増えていきます。そういう意味で今まで余りコメントしてまいりませんでしたけれども,留学の安全性,安心な留学,この視点も欠かせないのではないかなと思います。特に高校生というのは保護者が同意をしませんと留学が実現しません。機運醸成を図ると同時に安全な留学の推進に努めるという点をどこか表現に盛り込んでいただくことはできないだろうかと思います。
 それから,外国人留学生の受入れに関しては,高等学校段階からの受入れ推進に言及をしていただきまして,ありがとうございました。これは極めて重要な進歩であると思っております。
 それから外国語教育の充実,これは英語によるコミュニケーションだけでなくて,日本語によるコミュニケーションも非常に重要だと思います。外国語力は既に備わっている日本語力以上に伸びることは余りないと思いますので,英語で高いスコアを取っていても実務でなかなか使えなかったり,コミュニケートをしようとしない方というのも散見されます。コミュニケートする人材,これが大事かなと。世界はノン・ネーティブ・イングリッシュ・スピーカーというのが大半ですので,そういう意味でもコミュニケートにフォーカスした指標が必要ではないかと思います。
 それから最後になります。国際教育協力と日本型教育の海外展開なのですけれども,国際教育協力の要素が少し弱いのかなと思いました。日本型教育の海外展開ということだけでなくて,海外からの教員の,日本の教育視察,こういったものを促すことをしてはどうでしょうか。日本型教育の発信にももちろんつながってまいりますし,日本の教員の,異文化力の育成にもつながってくるのではないかと思いましたので,国際教育協力という観点から検討いただければと思います。
 以上です。長くなり申し訳ありません。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。御指摘のとおり,グローバル人材育成については2000年代初めの頃は非常に盛り上がっていたのですが,今は世界情勢がややブロック化に進んだことやコロナ禍の影響で,日本の鎖国とやゆされた政策の影響が大きく出ている局面ですので,この教育振興基本計画ではグローバル社会における人材育成が非常に重要になるのではないかと思います。御指摘の視点でかなり強く打ち出さないと,全体として意識もしぼんだ状態になっていますので,大変重要な視点だと受け止めさせていただきました。ありがとうございました。
 それでは,杉村委員,お願いいたします。
【杉村委員】  ありがとうございます。私からは3点申し上げたいと思います。
 第1点は,既に御議論に出ています資料2で表示されている16の目標についてです。この部会では基本的方針に基づいて5つの観点で示されています。一方,国際教育の視点から御参考までに申し上げますと,ちょうどこの9月,国連で国連総会が開催された時期に教育変革サミットという教育をメインにしたサミットが開かれました。そこで取り上げられた5つの主要分野というのがありまして,ちょうどそれと対照させたときに,私たちの考えている5つの観点と一致するところと,それから少し切り分け方が違うところがございます。その5つを御紹介しますと,1点目がいわゆる包摂性・公正・安全で健康的な学校という点で,ここには学校の建物だけではなくて当然ながら教育の内容が含まれます。次に2点目は,ライフワークのための学習とスキルということで,これも私たちの観点に入っていると思います。3つ目は少し違いまして,教員あるいは教育者の活動といった視点が盛り込まれていて,この切り分け方は,私たちの5つの観点には表面には直接でていないものかと思います。4つ目がデジタル革命とデジタルトランスフォーメーション,これは私たちの方にもありますし,最後の5番目は,教育予算とか財政でしたけれども,これは私たちのいわゆる5つ目のところとも重なるかと思います。このように,切り分け方とこの16の目標の関連性を見たときに,教育変革サミットで出された切り分け方の視点のうち,教員や教育者といった視点は,学校のプログラムや財政,あるいはデジタルトランスフォーメーションという分け方とは少し違い,異なる項目にまたがる横断的な見方であり,それによって5つの視点の切り分け方や,組合せが若干違ってくると考えます。
 第2点は,教育振興基本計画部会に参加させていただいている中で感じることとして,本分科会が教育政策の根本を決める大事な部会であると同時に,一方で,今日の世界における日本の立ち位置や,あるいは世界の中で,日本の教育が何をどう考えていくべきかというの視点も含めて考えることができるといいのではないかという点です。ユネスコで去年発表された教育の未来国際委員会が出したレポートで強くうたわれたのが連帯や協働ということでした。このことは今日の日本の教育にも求められていることであり,先ほどの御意見にあったように接続性や連携を考えるということともつながると思います。その際に,視点を日本の中の連携とだけ考えるのではなくて,グローバルな視点も考える必要があるのではないでしょうか。国際社会という視点を,表面に出してどんと掲げるというのではなくとも,書きぶりの中で入れていくことができるとよいのではないかと考えます。
 例えば一例を申し上げますと,資料3の2ページ目で,先ほどから出ている文理横断・融合という書き方があります。日本ではこういう書き方をするのが一般的ですが,今日,世界で議論される際には,学際的とか学融合的とかといった言い方がなされています。そのため,書きぶりの中にキーワードとしてそうしたものが盛り込まれたらいいのではないでしょうか。また,13ページ目にある日本人学生・生徒の海外留学や外国人留学生の受入れというところですが,今日,世界では,国際交流あるいは国際貢献というような言葉がグローバル人材には欠かせない要素として議論されています。それは国際貢献だけではなく,日本の社会への地域貢献でもいいと思いますが,グローバルに活躍するといったとき,そうした幅広い点を考慮するのがよいのではないかと思いました。12ページにあるESDについてですが,これについては,「ユネスコスクールの」とありますけれども,今日では,学習指導要領の総則,前文で,全ての学校が持続可能な開発のための創り手を育てることに取り組むことがうたわれていますので,ここは「ユネスコスクールを中心として」という形にして全ての学校を含む形で述べるのがいいかと思います。
 最後に3点目になりますが,指標との関係です。本日,宮﨑総括官から大変興味深い,またよくまとめた御発表いただきました。そのまとめていただいた指標と私たちが今議論している点を比べたとき,アウトプットを可視化するという部分が大事になってくるのは言うまでもないのですけれども,その一方で,今回この教育振興基本計画部会の議論の中には,態度の育成さやコンピテンシーの育成,あるいは教師の資質というところに関わるものがあります。それらをどのようにして可視化指標に表すかといったときに,やはり少し留意しないと,せっかくの包括的で多様な議論が指標に落としこむところで非常に極小化してしまうというか,狭められてしまうおそれがあると考えます。すぐに具体的な案がないまま申し上げて大変恐縮なのですが,指標との関連性についてはそうした点も考慮できたらいいのではないかと思いました。
 ウクライナの問題やコロナ禍の問題が起きている今日,今ほど平和や交流,連携が求められるときはないように思います。今までの振興基本計画部会の内容を,将来振り返ってみたときに,あのときこういうことが議論されていたということが伝えられるようなメッセージ性を持つものとしてまとめることができればと思います。
 ありがとうございました。貴重なお時間頂きました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。こうした今の世界情勢だからこそ,国際的な視点で日本の教育を構築し,世界からも尊敬される教育制度でなければいけないと思いました。御指摘ありがとうございました。
 それでは,関委員,お願いいたします。
【関委員】  ありがとうございます。このように取りまとめを頂き,全てのいろいろな領域が網羅されていることを改めて感じております。
目標8についてですが,リカレント教育という場合,私のイメージとしては,欧米の生涯学習の概念と極めて近いものと今まで感じて取り組んできたつもりであります。しかしながら,実際に取り組んできた内容はどうかというと,平成の時期において自治体レベルの学びの中にはリカレント教育という部分は極めて薄かったのではないかなということを反省しております。
 今回,ライフシフト,マルチステージの時代の中で,リカレント教育なるものが重要であり,学びと仕事を循環させていけるような取組を明確に打ち出していくことは本当に重要なことであると思います。
 その一方で,「リカレント教育をはじめとする生涯学習」という表現になってしまうと,今まで自治体レベル等で取り組んできた生涯学習というものとのかなりイメージの乖離(かいり)が生じるのではないかと危惧するものです。いつでも・どこでも・誰でも学ぶことのできる環境を創ろうということを生涯学習の旗印に掲げ,生きがいの創造や地域社会をつくっていく役割を担うことを求めてきたような気がするので,可能であれば,リカレントが前面に立ちすぎることのないような配慮,例えば,8の項目とは別に一つの目標をリカレント教育等に充てていただき,従来型の一人一人のウェルビーイングを実現していくような要素,あるいは生きていく上で最低限必要な学びを展開していくような形の生涯学習も一つの目標として設定していただく,若しくは10の目標の中の,社会教育の中にそれを含めていくようなデザインを御検討いただければ有り難いなというのが私の思いです。
 あともう1点なのですが,障害者の生涯学習の機会,私どもも実際に実証研究事業に取り組んでおるのですけれども,今まで,障害者の生涯学習に関わることがほとんどなかったが故に,障害者の気持ちを慮(おもんぱか)ることができず,スタートラインに立つまでに多くの時間が必要でした。誰ひとり取り残されない学びの環境づくりに取り組んでいくには,かなりハードルが高いような気がしますので,先ほど牧野先生もおっしゃっていましたけれども,本当に真剣に取り組んでいくためにも,かなり明確な打ち出しが必要ではないかなという感覚を持っております。以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。このリカレント教育の概念はもともと生涯学習のところからスタートしているので,従来の生涯学習を否定しているわけではないと思います。ただ,今の世界の,大学の動きなどを見たときに,やはり日本は産業界との関係におけるリカレント教育が弱過ぎるということなので,それをもう少し強化する必要があるという趣旨だと考えています。
 ですから,生涯学習分科会でも御議論いただいているとおり,従来の人生100年時代における生涯学習という位置づけが変わるわけではないと思います。ありがとうございました。
 それでは,小林いずみ委員,お願いいたします。
【小林委員】  小林です。ありがとうございます。
 私からは全体の全体的な整理の仕方について1点と,個別の点について3点申し上げたいと思います。
 まず1点目なのです。資料2の基本方針,全体の各論項目,この基本方針について私はこの5点で良いと思いますが,既に皆様が御発言されているように,ウェルビーイングの向上あるいは共生社会の実現に向けた教育の推進というのが非常に大きな柱であって,それ以外の2,3,4,5というのは,実はこのウェルビーイングの向上,1を達成するための方法や,道具,ツールなのではないかと思います。なので,この5つの基本方針をどういう構成でまとめるのかということについては考えていただきたいと思います。それが1点目です。
 それから,2点目ですけれども,グローバルに活躍する人材に関して,私は河野委員の御意見に全く賛成でございます。今の分類の仕方あるいは評価の仕方では本当にこれがグローバルな人材にとって必要なのか,これで十分なのかと思います。この点はほかの項目とも関連して,整理し直す必要があるのではないかと思いました。
 3点目です。文理融合としながらも各論項目,それから各指標において,やはり文理を分けているなという印象を受けました。例えばイノベーションのところについては,STEAM教育あるいは技術ということが中心になっています。日本でイノベーションと言うとおおむね皆さん技術とおっしゃいますが,イノベーションの原点は社会課題,問題を解決するというところからスタートして,そこに何が必要かとなります。実はイノベーションを促進するためには,必ずしも理だけではなくて,やはり社会課題というものに対しての十分な視点を持つという意味で,文理関係がなく,必ずしもSTEAMだけではなくて,広い視点を持つということが重要です。全体として少し書き方ぶりが,理数系を強調し過ぎている印象です。
 また,同じ視点から,特異な才能のある児童生徒に関して,例えば飛び級あるいは飛び入学がやはり理数系と限定されていますが,ここもやはり同じ理由で,これからの社会,必ずしも理数系だけではなくていろいろな才能の子供たちの能力を伸ばしていくという前提から,文理という枠にとらわれないような発想にしていただいた方がいいのではないかと思います。
 それから4点目,これはかなり限定的なことで,もしかしたらば各論項目5番の「主体的に社会の形成に参画する」というところに含まれているのかもしれませんが,金融教育というのが全く書かれていないのですね。金融に対する知識不足が今の社会の様々なところで大きな問題の原因となっていますので金融教育についてどこかに書き込んでいただいた方がよいと思います。とかく教育の現場では金融,お金に関しては消極的になりがちですので,あえて書いていただくことで,金融がウェルビーイングにとっての重要な要素であるということを理解していただけるのではないかと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。指標との関係は先ほどから出ている御意見と同じく,どういうアクセントをつけるのかについての御指摘だと思いました。そのほかグローバル人材育成や文理の枠についても大変貴重な御意見を頂きました。
 それでは,残り時間は30分ですが,あと挙手されている方が9人いらっしゃいます。次回以降もこの各論についての議論は継続していく予定ですので,今回は少し短めに御発言いただいて,足らざるところは次回以降詳しく御発言いただくという形で御協力いただけますでしょうか。
 それでは次に,内田委員,お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。指標の話が出ましたので,簡潔に述べたいと思います。
 これだけ多岐にわたる計画が出てくると,やはり全体の構造が一般の市民や教育関係の方々に全く見えないということを一番危惧いたしますので,どういうストラクチャー,構造でつくるのかというのを今後以降,次回以降非常に検討していくことが大事だと思います。
 具体的に言うと1枚の絵にマッピングをするというようなことの作業が恐らく必要になるはずで,その際に今日話でも出ていましたように,積み上げというよりはむしろパラレルで考えていくのだということがしっかりと反映されるような,そういう図表,図版みたいなものの作成というのがコンセプトとしても大切だと思いますので,どうぞよろしくお願いします。
 それから,資料の1に関連しまして,学校の負担にならないようにということは明記されているのですけれども,とはいえ,やはり文部科学省がリリースする形で資料,指標を出しますよとなると,当然出てくる反応として自分たちが評価されるのではないかという懸念というものが出てきて,その懸念によって結局負担が増すということがあります。こうした誤解を覚めるためにも,これは何のために使うのか,要は個別の学校や地域を評価するためではなくて,飽くまで総合的に政策を評価して,本当の意味でウェルビーイングを実現するために使うのですということを具体的に明記をしておかなければ,逆に言うと不要な懸念に基づく反応が出てくるのではないかと思います。
 世界発信に向けてという話もこれまでの議論の中にも出ていたと思います。日本型のウェルビーイングの,これまでの少し欠点があったところ,それから今後伸ばしていきたいところ,それをどんなふうにバランスを取って施策にしていくのかということが明確になるような,そういう指標案というのを構造とともにきちんと示せるようにすることというのが重要かと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。全体的なウェルビーイングにも関わるような御指摘は,今までもいろいろと頂いていましたので,しっかり受け止めさせていただきたいと思います。
 それでは,徳永委員,お願いいたします。
【徳永委員】  ありがとうございます。私の方からは資料3の各論について,特に目標4のところで,これまで私が発言していたこととも重なるのですけれども,今回の基本計画の中で,誰一人取り残さないというのを重要なキーコンセプトとして打ち出しているのですけれども,この資料3を読んだときに,その基本方針が十分にそれぞれの項目で反映されていないのではないかということを感じました。
 ですので,この誰一人取り残さないとか共生社会というのが重要であれば,できるだけ関連する項目で,その視点も意識的に打ち出した方がいいのではないかと思います。
 特に目標4が大きく関係するところだと思うのですけれども,様々なキーワード,特別支援教育とか子供の貧困とかが並んでいるのですけれども,それがどのように関連しているのかとか,もう少しその多様性とか公正とか包摂性の枠組みから再度整理できるのではないかと思いました。
 もちろんヤングケアラーの問題だったり子供の貧困だったり特別支援教育,それぞれ別個の課題ではあるのですけれども,やはりそこには関連する重なり合いがあって,何か横串を刺すような視点で見ていかないと,教育課題を十分に理解したり,それへの対策を考えるということもしにくいと思いました。これまで何度も議論されているつながりとか接続というところで,目標4の中でもやはりつながりというのを意識した形でまとめ直さないと,ばらばらの問題が並んでしまうのではないかと思いました。その点についてまた今後議論できればと思います。
 もう1点は,同じ目標4なのですけれども,資料6の基本的な方針の中で,今回こういったマイノリティの子供たちの課題とか問題という弱みではなくて強みを尊重していくとか,その強みに基づいた支援をしていく,エンパワーメントをしていくというのが基本方針に出ているというのは,私はとても重要なことだと思っています。ただ,それが資料1や資料3の目標の中とか施策の中に表れていないような気がしました。
 例えば外国につながる子供のところですと,日本語教育とか就学率を高めるというところが書いてあるのですけれども,例えばそういった子供たちの母語や母文化の尊重とか,あるいはマジョリティを含めた異文化理解とか国際理解教育とか,そういったところを入れていかないと,マジョリティがどう変わっていくのかとか,そういった子供たちがどんな強みを持っているのかという視点が抜け落ちてしまうと思いました。特別支援教育に関しては障害のある子供もない子供も共に学ぶとか,共生社会という文言も何度も入っていたので,もっとその視点もほかの項目で入れる必要があると思いました。
 最後に先ほど清原委員からもありましたように,目標13の経済的状況,地理的条件によらない質の高い学びの確保というのが,今回の目標4とやはりすごく関連性があるので,順番が目標4と13でかけ離れているのですけれども,もしかしたら隣り合わせにしたり,あるいは統合するということもできるのではないかと思って読んでいました。
 以上です。すみません,ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。多様な教育ニーズ,それから社会的包摂の概念は大変広いですので,どうそれぞれを関連付けるのかというのは大変重要な視点だと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,清水信一委員,お願いいたします。
【清水(信)委員】  ありがとうございます。私も今の徳永委員に続いて,目標4のところでお話をさせていただこうと思います。
 目標4の書きっぷりのお話でございますけれども,1つ目の丸の上から3行目,「インクルーシブ教育システムの構築に一層取り組む」というところで文章が終わっているのですけれども,やはりここは一番強調すべきところではないかと私は思っております。やはり共生社会,また,ウェルビーイングにつなげていくというところで,インクルーシブ教育の環境こそが最短距離にある教育環境だと私は思っております。
 もう1つ,昨今,文科省から小中の不登校24万人,また,いじめ61万件というような報告がございました。やはりインクルーシブ教育でこの問題解決ができている部分は,私はあると思っております。私が携わっている高等専修学校というのは,学種的には小さな学種でありますけれども,既にインクルーシブ教育が全国で展開をされています。職業教育をメインとしてその中に不登校の生徒たちが毎年3割以上入学してきます。そしてまた,全体の在校生の23%が発達障害又は身体障害のある,障害のある子たちが学んでいます。
 今,国家資格また検定資格を取るだけではなくて,不登校の子供たちの学び直し,また,発達障害のある子たちの自立のための学校,そして,これは都市部ですけれども,夢を追うエンタメ系の子供たちの支援をしているという4つの高等専修学校の魅力があるわけですけれども,この教育環境の中で不登校の子たちの多くが目標を持って再スタートを切っております。非常に中退率も少ないと聞いております。
 これも今,毎年アンケート調査を行っていますので,最終的な数はまだ分かりませんけれども,不登校で入学した子が高等専修学校という学種で,将来の目標を見つけて自立していっているというのは大きな教育効果ではないかと思いますし,また,発達障害の子たちが職業訓練,職業教育を受けて,そして訓練の上に社会自立,法定雇用率で企業に就職とか重度の子たちですとなかなか企業就労はままならないため,地域の福祉作業所で働くというような形で自立を果たしております。
 また,これは資料10の10ページに,高等専修学校を明記していただいて大変うれしく思っております。また,私ども武蔵野東学園の教育を振り返ったときにも,今年度1,600人の3歳から18歳までの園児,児童,生徒の教育を今年度も行っておりますけれども,このうちの30%が発達障害の子供たちです。先日,小中24万人,いじめ61万件という報道を受けて,法人内の校長会の方でも少し話題になりました。実際その場で園長,校長に私から質問をして,現状を教えてほしいということで不登校,またいじめの件数について話を聞きました。ほとんどありませんでした。
 3歳からインクルーシブ教育の中で育っていく子たち,そして,それは障害がある子だけではなくて,定型発達の子たちもしっかり成長してくれている。やはり多様な個性の生徒たちが,日々の喜怒哀楽の中でしっかり学び取ってくれていると思っています。この高等専修学校,また武蔵野東学園の事例からも,今の,教育界の問題点の解決にもなるし,また,行く行くは共生社会,ウェルビーイングが最短距離にあるのは,私はインクルーシブ教育だと思っておりますので,是非この書きっぷりを一層取り組むだけではなくて,もっと強調していただければ有り難いなと思っています。どうぞよろしくお願いします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。インクルーシブ教育の重要性についての御指摘であると思いました。不登校については,各論の記載上も教育機会確保法等をこれからも促進すると書かれています。不登校児童生徒数が増加傾向にあるのがコロナ禍だけの短期的な要素だけなのか,それとも根本的なところで変わってきた要素があるのか,この辺を考えるのは今後の課題でもあろうかと思います。社会的にも注目されていますので,今後の方針としてどう位置づけるのかは御指摘の点を踏まえて,検討事項だと思います。ありがとうございました。
 それでは,元紺谷委員,お願いいたします。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。私からはまず基本方針から目標,そして基本施策の流れの中で御指摘させていただきます。
 先ほども大森委員もお話しされましたけれども,ウェルビーイングについては,やはり対応関係からすると全てに入ると私も思います。今の状態でいきますと,基本方針にあるウェルビーイングという言葉,そして,2番目の豊かな心のところに主観的ウェルビーイングという言葉,そしてその説明のある3か所にしか出てきません。もっとほかの目標においても,この言葉を入れるような工夫が必要なのではないかと思います。
 そして,当初からコロナとウクライナという新たな視点,いわゆる第4期,次期基本計画についてはこの視点もとても重要だという意見がたくさんありました。ですが,コロナという文言も出てこないですし,それに関わるような書きぶりもないので,ここは工夫が必要かなと思います。
 特にコロナ禍においては乳児期,幼児期,青年期ぐらいまでの子供たちにとって,どの時期にコロナ禍を経験したかがとても重要です。発達課題をクリアしないで年を取っているわけです経験した時期に配慮した施策が必要と考えます。
次に,時間がありませんので,各論については頭出しということで2つ指摘します。10ページにあります定通教育のところです。高校についての施策というと,やはり全日制が主流になってしまい,定時制・通信制はどちらかというと光が当たらないのが現状です。ですからあえて「定時制・通信制」という項目を起こすことは大変意味のあることだと思います。
 ただ,どうしても定時と通信をひとくくりにすることについては避けたい。通信制においては,質の保証ということで広域通信制のいろいろな不適切な教育活動を踏まえてかなり議論されていますので,通信制は脚光を浴びていますけれども定時制は埋もれている感があります。ただ,通信制もまだまだかなというところがあります。特に有識者会議でも養護教諭とかスクールカウンセラー,ソーシャルワーカーの必要性も叫ばれながらも,定数における標準法の改正までには至っていないという,この辺りを是非今後の各論で少し議論していければと思います。
 あともう1つは遠隔授業,遠隔教育です。恐らく項目としては11か12に入るのかなと思いますが,文言として明示する方がいいのかなと考えております。
 以上です。
【渡邉部会長】  現実に御対応される中での御意見,ありがとうございました。
 それでは,黒沢委員,お願いいたします。
【黒沢委員】  いつもありがとうございます。よろしくお願いします。
 私からは時間もないので1点だけ。小中学校の校長としていろいろ考えていったときに,小中学生のウェルビーイングって何だろう,どうやってそれを測るのかなと考えたときに,特に不登校の子供たちが急増しているというところもありますが,共通して言えるのは,やはりコミュニケーションが苦手という子がとても多いのです。これは不登校に限らずそういう子はたくさんいると思うのですけれども,そういう部分に少しスポットを当てて,指標と考えたときに,やはりこれからの大きな項目から小さい項目にブレークダウンしていくと思うのですけれども,その小さいものの中の一つとして,やはり相手に対して助けてあげたとか助けてもらえたとか,お互い協力し合えたとか,感謝したとか,感謝されたとか,他者を理解した,理解されたとか,そういったものをどこかで入れていってもらえると,全体として子供たちのウェルビーイングが上がるのではないかと思った次第です。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。あと残っていらっしゃるのが岩本委員,黒木委員,三好委員,永田副部会長ですので,他に御意見ございます方は,恐縮ですが次回とさせていただきます。
 それでは,4名の方,御発言いただきたいと思います。岩本委員,お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。よろしくお願いします。では,手短に。
 まず指標に関してですが,今回,多様な個人と社会のウェルビーイングの実現向上を目指す中で,このウェルビーイングの指標,誰のウェルビーイング,どの範囲のウェルビーイングを見ていくのかということを考える必要があるなと思っています。
 今回見てみると,子供のウェルビーイングに関してはまずまず書かれているのですけれども,やはり子供だけではなくて,少なくとも教職員のウェルビーイングです。これは基本的な考え方にはこの教職員のウェルビーイングの必要性は書かれているのですけれども,こういったところをちゃんと見ていく。できれば保護者,家庭だとか社会教育とか含めて,多様な学習者とか教育関係者のウェルビーイングまで見ていけばいいと思うのですけれど,少なくとも教職員あたりまではちゃんと明記をして,指標として見ていく必要があるだろうというのが1点目です。
 あと各論に関しては頭出しだけにさせていただきますが,一つは初等中等教育段階で,学校段階間の連携というところは書かれていたりするのですけれども,今後,小規模化していく学校への対応において,学校間の連携,横の学校間の連携も重要ですし,更にオンラインだとか遠隔教育の推進というところも重要なところで,少しそこが書かれていなかったので,抜けている視点として一つです。
 また,今日議論ありましたグローバル社会における人材育成のところですが,海外留学にどんどん行くのはとても重要だと思います。一方で,その前段階,小学校,中学校,高校段階でもどれだけ多様な異文化への越境機会をもっていくのかというところがより高等教育とかになったときの海外というところにつながっていくということで,例えば都市農村交流だとかデュアルスクールとか,高校段階でも地域留学などがありますので,こういった多様な越境機会というようなところも入れていく必要があるのではないかと。
 最後ですが,目標12,14,16あたりに関するところです。計画の実効性確保のための基盤といったときに,私,前回も言いましたけれども,教育行政の機能強化・充実,今とても重要だというので審議もしているところですけれど,この項目が入っていなかったので,これまた是非立てていただいてやっていく必要があるのではないかということです。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。次に黒木委員,お願いいたします。
【黒木委員】  ありがとうございます。今日は途中で中座をしましたので申し訳ございませんでした。ひょっとすると重なるところがあるかと思いますけれども,どなたかがもうおっしゃったかもしれませんが,それは御容赦ください。
 私,計画が現場からは今まで遠かったなということをどうしても感じるものですから,それを何とか近づけたいという思いで発言をさせていただきます。3点です。
 まず1点は,資料1の6に連動性ということを書き加えていただきました。事前の協議のときに,市区町村を動かすための仕組みが必要ですということを,少しお話をさせていただきました。これを反映もしていただけたのかなと思って大変うれしく思います。ありがとうございます。資料1の6のこの連動性というところです。非常に大事かと思っています。ともするとどうしても議論がグローバルも大事ですし,高等教育も大事なのですけれども,初等中等教育やあるいは幼児期の子供たちをどうするかというところをしっかり見ていないと,市区町村は恐らくしっかり動かないので,是非その辺りを意識してくださいと申し上げたことでございました。ありがとうございます。
 2点目に,実際に動かすに当たっての今回アウトカム評価のことを随分学ばせていただきましたけれども,定量的な評価というのはどうしても現場でも少なからず負担感がありまして,うまくいかなかった結果等々がどうしても数字として表れてくるので,できましたら定性的な評価を中心にしていただけると有り難いなと思っております関係上,アンケート調査というのは親和性がかなり高いのだろうと思っています。
 アンケート調査では,当事者として調査に関わる人たちが出てまいりますので,それはもちろん働き方改革がありますから,EduSurveyとかを使いながらコンパクトにまとめていくことになるのだと思いますが,そういったことを意識した指標というのをつくっていくことが大事なのかなと思っています。定性はアンケートと親和性が高くて,恐らく当事者意識も育むことができますから,現場の負担感も減っていくのではないかなというロジックでございます。
 最後によく今日ウェルビーイングのお話をずっとされていて,本当になるほど,そうだなと思っておりますが,横串をどうするかという話になったときに,現場で何が一番訴えるかといいますと,恐らくは生命の尊重なのです。生命を大切にする教育をどうするのか,生命尊重とはどうあるべきか,この中にたくさんの目標が今出ていますけれども,ほとんど関わっています。同じく,いじめも不登校も人権も保健もスポーツも文化も障害に関わることも生命でございますので,そういう横串の刺し方をしていくと,ウェルビーイングもすっと落ちていくのかなという気がしております。位置づけの問題です。
 以上3点でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。続けさせていただきます。三好委員,お願いいたします。
【三好委員】  ありがとうございます。1点,資料3に関わってです。
 資料3の目標1,諮問文にもありますように学習者視点,誰一人取り残さない,一人一人の可能性を最大限引き出す,いわゆる今日もずっとお話がありますようにウェルビーイングの実現に向けというと言い過ぎなのかも分かりませんけれども,向けて,個別最適な学び,主体的・対話的で深い学びは,学習者一人一人の可能性を伸ばす,最大限に引き出すために,学習指導要領にも掲げて現在取り組んでいるところですけれども,それを実現すると。それを全国学力・学習状況調査の実施・分析・活用で測る,評価すると読めました。
 途中,堀田委員がおっしゃった,お話しされたことと重なる部分があるのですけれども,確かな学力をどう捉えるかというところ,ウェルビーイングといわゆる義務教育,学校教育というところの関係をどう整理するかということでもあると思うのです。それを全国学力・学習状況調査で評価して,教育施策の成果,課題をこれで把握して分析すると,ここに非常に違和感を抱きました。ここは是非議論を,既に議論が行われたことなのかも分かりませんけれども,ここは検討していただきたいなと思いました。
 併せて細かいことですけれども,目標1の個別最適,協働と主体的・対話的,深い学びと関わって,STEAM教育等の教科横断的な学習,これは主体的・対話的深い学びと非常に深く関わっていると考えています。ここの目標1の中に,探究的な学習であるとか教科横断的な学習の記述というものが必要ではないかと思います。併せて検討いただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。それでは最後になりますが,永田副部会長からお願いしたいと思います。
【永田副部会長】  
 今日ちょうど,アウトプット,アウトカム,インパクトという順に総括研究官から御説明いただいたので,これを使えば,ここでいうウェルビーイングとは何かということが気になります。ウェルビーイングが十人十色な感じがします。ウェルビーイングをつくるための教育という観点とウェルビーイングを受益するための観点が混ざっていると思うのです。そこを整理しないままいろいろな観点が混ざっているので,極端なことを言えば,ウェルビーイングをインパクトだと捉えるならば,そのための一つ下のアウトカムは何なのだ,それを支えるアウトプットは何なのだというふうになった結果として,社会がウェルビーイングな社会となって,その受益を受けるという循環が起こる。
 しかし,放っておくと,現在の教育現場で不幸な子もたくさんいるわけですから,それ自身も直さなければいけないので,それが混在しています。ですから,読んでいてよく分からなくなるのはその部分です。
 最後に,書きように施策部分,濃淡とか水準の高い低いが入り交じっていて,多分読む側(がわ)は何が何だか分からない。提案です。この施策,半分にしたらどうでしょうか,そうすると接続性とかいろいろな問題を増やすことは人間,容易ですが,これを減らすと最大公約数が見えるはずです。ですから,是非とも半分以下に施策を減らす努力を一回行う必要があると思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 本日も大変活発な御議論を頂き,ありがとうございました。
 時間になりましたので,今日の意見交換は終了させていただきますが,藤江局長,何かございますでしょうか。
【藤江総合教育政策局長】  ありがとうございます。2時間半超という,長時間にわたって熱い御議論ありがとうございました。本日,各論についての初めてたたき台をお示しして,国研の分析も踏まえた指標の在り方とともに御議論いただいたわけでございます。本当に幅広く貴重な御意見いただきました。
 その中で特に最後の永田副部会長の御指摘もそうですけれども,やはり基本方針との関係ということで,例えばどこにアクセントをつけるのか,あるいはストラクチャーの問題ですとか,あるいはその各項目間の関係性と評価の在り方といったところについて,多くの委員から御指摘を頂いたと認識しております。また,今回の大切なテーマとして,接続,連携,融合といったことも御指摘いただいたと受け止めさせていただいております。
 各論につきましても,貴重な御意見いろいろ幅広く頂きました。今日はハイブリッドなので分かりにくいですけれども,各担当部局も今回この会議に出席させていただいておりまして,しっかり御意見を聞かせていただいておりますので,頂いた御意見を踏まえたブラッシュアップをしていきたいと考えております。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 今日もいろいろな御議論いただきましたので,これを反映させて,次回また継続的な審議をさせていただきたいと思っております。
 今日の冒頭に,指標設定に当たっての検討の視点を御説明しましたが,この整理に基づいて次回も目標と基本施策に対応する指標設定について御議論いただきたいと思います。全体の構成は,基本的な考え方という理念を受けたものと,それから落とした5つの基本的な方針,更にそれらを指標設定にブレークダウンしていくという形です。第3期計画のときは,ロジックモデルについて大変な議論の上に整理されましたが,方向性や重要性の観点から測定指標を立て,なかなか確定値を置けないような指標については参考指標として入れていくとしていました。この測定指標化したところがアクセントになる項目だと思っています。今日挙げられている施策全てに指標を入れようということではなくて,この中で何が重要なのか,それについてはしっかりとした測定指標を入れて,アクセントをつける。こういった整理をしないと,永田副部会長の御指摘のように施策を消すとなると,行政としては少ししんどいところもあると思います。逆に今のように指標でアクセントをつけていただくと,現実的な整理ができるものと思います。その上で,今日も施策毎(ごと)の関連性やつながりについて御意見がありましたので,整理した方がよい施策は少しくっつけながら省略していく,そんな形で進めるのがよいのではないかと思いました。
 それから,ウェルビーイングについて,大変重要な視点だということで,そもそも位置づけがもっと上位にあるのではないかという御意見もございました。いろいろな置き方があると思いますが,現在は基本方針の1番目にコンセプトとしておいているのを,今後,場合によっては前文を設けて,前文の中でウェルビーイングの位置づけを明確化するとか,今日の御意見聞いて,そのような工夫もあろうかと思いました。
 それから,インクルーシブ教育について,今大変問題になっている不登校の視点での御議論がありました。各論の整理にあるように,教育機会確保法として体系がある中,コロナ禍の影響によるものと,そうではなくて先ほど申し上げたようにもう少し本質的な問題があるのかもしれません。
 教育機会確保法の議論の際は,学校教育に戻すという視点からフリースクールのような形も入れた上で,多様性の中で解決するという整理をしていたと思います。
 したがって,その延長で,インクルーシブ教育を今後どう考えるのか。オンライン学習支援等を行うさいたま市などの好事例も出てきていますので,そういった好事例や,今日も御意見のありました,ICT教育を使ってカバーしていくといった工夫を参考にして,今後の方針の中に入れていくとよいのではないかと思います。
 施策毎(ごと)の関係性については,今日も随分御議論いただきましたが,次回以降,その辺も含めて更に議論させていただければと思います。
 それでは,最後に,事務局から,次回日程も含めて御連絡願います。
【川村教育企画調整官】  次回は,11月22日火曜日15時半から開催予定でございます。次回も各論や指標について御議論いただくことを予定しております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  時間超過してしまって申し訳ありません。今日は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――