計画の実施に当たり国の果たすべき役割
教育振興基本計画を実効あるものとするため,政府は,計画に掲げられた施策について,関係府省間の緊密な連携を図り,その成果を見極めながら,効率的・効果的に実施する必要がある。このため,教育行政と,児童福祉や職業能力開発などの関係分野の行政との連携・協力の推進に努めることが求められる。
また,教育は,多くの関係者の取組により社会全体で担われるものであり,教育振興基本計画に基づき国が施策を推進するに当たっては,地方公共団体や,教育関係事業者,NPO等の民間団体など各分野において多様な主体によって行われている様々な活動にも十分に目を配り,それらとの適切な連携を図るとともに,相互の活動がより効率的・効果的に推進されるよう配慮することが求められる。
地方公共団体に期待される役割
教育の振興に関し,地方公共団体には,国との適切な役割分担を踏まえて,当該地方公共団体の経済的・社会的条件等に応じた施策を策定し,実施することにより,住民の期待に応え,その責任を全うすることが求められる。
その際,地方公共団体の中でも,市町村と都道府県が担うべき役割はそれぞれ異なることに留意する必要がある。市町村は,最も住民に身近な立場で,その意思を十分に把握し,また,関係者との連携を図りながら,行政を行うことが求められる。具体的には,義務教育を行うのに必要な小中学校を設置し,教育活動を実施する責任を有する。あわせて,市町村立の高等学校,大学等,図書館,博物館,公民館,体育館等の設置管理,教育・文化・スポーツ等に関する各種事業の実施等を担うことが求められる。一方,都道府県は,広域的な処理を必要とする教育事業の実施及び高等学校,大学等の設置管理,市町村に対する教育条件整備のための支援,市町村における教育事業の適正な実施のための指導,助言,援助等を担う。今後,地方分権が進めば進むほど,それぞれが自律的にその責任を果たされなければならない。
改正教育基本法には,地方公共団体においても,国の教育振興基本計画を参酌しながら,その実情に応じて,当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画の策定に努める旨の規定が盛り込まれた。これまでも,多くの地方公共団体において教育に関する計画が策定されるなど,教育の振興のための施策が進められているところであるが,今後,各地方公共団体においては,国の教育振興基本計画を参考にしつつ,自らの地方公共団体における教育の総合的な振興を図っていくために,具体的にどのような対応が必要であり,そのためにはどのような計画を策定すべきかについて,地域の実情に照らしながら,主体的に判断し,より一層積極的な取組を進めることが期待される。
今後,地方分権が更に進むことが見込まれる中で,これからの時代の地域を支え,興すのは,その地域の人々の総合的な力であり,地域づくりの基本となるのは「人づくり」である。それぞれの地域ごとに置かれている条件や抱える課題は様々であり,地方公共団体においては,教育を何よりも大切にするとの立場から,その地域ならではの充実した教育の実現に向けた取組が期待される。