今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会 (第7回)議事録

1.日時

令和6年5月28日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

WEB開催(傍聴はYouTube Live上のみ)

3.議題

  1. 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証について
  2. その他

4.議事録

【無藤座長】     それでは、定刻となりましたので、ただいまから、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討委員会(第7回)を開催いたします。
  本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。
  本日の会議の資料等につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】    本会議は、Zoomを用いたウェブ会議方式にて開催をさせていただきます。
  ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
  また、本日は、傍聴の御希望をいただいた報道関係者と一般の方向けに、本検討会の模様をYouTube Liveにて配信しております。加えて、報道関係者の方々から撮影及び録音の申出を頂戴しており、これを許可しておりますので、あらかじめ御承知おきください。
  本日の会議資料については、議事次第にございますとおり、資料1から資料5まで、加えて参考資料1から4となっております。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】     ありがとうございました。
  それでは、議題の1にまいりたいと思います。本日でありますけれども、主な論点、参考資料の1)の1.幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証でありますが、それをめぐっての意見交換を行ってまいりたいと思います。
  また、本日、意見交換を行うに当たり、いわゆるヒアリングを実施するわけでありますが、まず、1番目、2番目として、特別な配慮を必要とする幼児への指導という観点でお二方、東洋大学の内田教授、東京家政学院大学の和田教授にお願いしてあります。3番目に、研修や評価などのプロセスの質向上の観点から大豆生田委員、そして国立教育政策研究所幼児教育研究センターの堀越副センター長に発表をお願いしてございます。
  それでは、まず事務局より説明を行った後に御発表いただきたいと思います。
 事務局より、資料の説明をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】   それでは、参考資料3の96ページを御覧いただければと思います。
 障害のある幼児への対応につきましては、幼稚園教育要領などでは、個々の幼児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の区分を組織的かつ計画的に行うため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し、活用することに努めることが定められています。また、解説のほうでは、園長は特別支援教育実施の責任者として園内委員会を設置して、特別支援教育コーディネーターを指名し、園務分掌に明確に位置づけるなど、園全体の特別支援教育の体制を充実させて、効果的な幼稚園運営に努める必要があることなどが示されています。
 次に、必ずしも診断や手帳を有しているわけではないですけれども、園の認識において障害を有すると判断した幼児数ですが、1園当たり、幼稚園全体では7.5人というふうになっています。また、幼保連携型認定こども園のほうは、1園当たり全体で7.0人という状況になっています。
 具体的な取組といたしましては、幼稚園、幼保連携型認定こども園ともに、カの「小学校に対して、園での幼児の様子、具体的な支援方法や内容などの引継ぎ」というのが最も高い割合となっておりまして、約9割の園で取り組まれているところでございます。
また、こちら棒グラフになりますけれども、青いグラフの個別の指導計画や、オレンジ色の個別の教育支援計画の作成状況ですが、小中学校と比較いたしますと、幼保連携型認定こども園や幼稚園は、やや作成状況が低いという状況になっております。
 また、体制整備としては、真ん中の実態把握は9割以上の園で行われているものの、校内委員会の設置ですとか、また、コーディネーターの指名率というのは、やはり他校種に比べると、やや低い状況というふうになってございます。
次に、日本語の習得に困難のある、いわゆる外国籍等の幼児につきましては、幼稚園教育要領などでは指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとしており、解説では、温かい触れ合いの中で、自然に日本語に触れたり、日本の生活習慣に慣れたりすることができるように配慮することや、様々な背景を持った幼児が生活を共にすることは、違いを認め合う貴重な経験につながることなどを示しているところです。
そして、このような日本語指導が必要な外国人幼児につきましては、1園当たり幼稚園全体では4.1人、そして、幼保連携型認定こども園全体では3.2人という状況になっております。
 具体的な取組としては、幼稚園、幼保連携認定こども園いずれも、選択肢オの「小学校に対して、園での幼児の様子、具体的な支援方法や内容などの引継ぎ」が最も高い割合となっておりまして、40%から50%の園で取り組まれているところであります。
 また、保護者への支援としては、園行事や園だよりなどの翻訳や通訳などの取組が、3割の園で行われているというような結果も出ているところです。
また、本日は参考資料4として、今年の3月に国立特別支援教育総合研究所におきまして、保育所、認定こども園、幼稚園における特別な支援を要する子供の全国調査の結果が取りまとめて公表されましたので、そちらについても御紹介をさせていただきます。
 その資料の8ページになりますけれども、医療機関等による診断のある子供が在籍する園の割合を示したグラフになっておりますが、在籍する割合が高い順に、ASDが67.8%、ADHDが25.6%、知的障害が24.2%というふうになっております。
 また、こちらは22ページに飛ぶんですけれども、特別支援教育コーディネーターが指名されている割合は51%というふうになっておりまして、下の図になりますが、どんな方が指名を受けているのかにつきましては、主任教諭などが一番多くて37.4%というふうになっている状況です。
 また、加配などの人員配置を行っている園につきましては、78.1%の園が行われているということで、そのための財源といたしましては、園の財源と自治体からの補助金を活用しているケースが40%ということで、一番高い割合となる結果となっているところでございます。
 時間の関係で一部の結果の御紹介のみとなり恐縮ですが、本日の事務局からの説明は以上となります。どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 ただいまの資料とも関係する御発表を次にお願いするわけでありますけれども、御発表いただく方4名ですが、テーマは大きく2つに分かれてございます。まず、初めに、内田教授、和田教授の順に御発表いただきまして、その後に一度、皆様方からの意見交換と質疑応答を行うというふうにしたいと存じます。そして、それが済んだ後に、今度は大豆生田委員と堀越副センター長より御発表いただいて、同様に意見交換と質疑応答を行うということであります。
 いつものことですけれども、御発言を希望される方は、挙手のボタンを押していただきまして、その方について、その順番に指名させていただくようにいたします。指名された場合にはミュートを解除し、発言し、発言が終わりましたら、また手を下げるボタンを押して挙手を取り下げていただくということであります。また、私が気づかないところが多いので、事務局のほうで適宜御指摘もお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず最初に、内田教授からの御発表お願いいたします。よろしいでしょうか。お願いします。
【東洋大学内田教授】   ありがとうございます。画面共有をさせていただきます。資料もお手元にあるかとは思いますが、「文化的・言語的に多様な子供たちが共に育つ保育」と題して御報告をさせていただきます。東洋大学の内田と申します。よろしくお願いします。
 先ほども事務局からいろいろな資料で御提示がありましたけれども、少し違う角度から、また違った資料を御提示したいと思います。外国人がたくさん集まっているところといいますと、人数が多い順に考えがちなんですけれども、この左側は数が多い順なのですが、右側は比率で多い順に示してみました。比率にすると群馬県、三重県、岐阜県、大阪府、静岡県、千葉県といった順序になり、また違った様子が見えてきます。
 また、文部科学省で日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の学校種別在籍状況というものも出ているんですけど、これも見ていただくと、人口の多さとはまた違った傾向が見られますので、また御覧になっていただけたらと思います。
 市区町村別に見ると、県全体とはまたさらに違った印象になりますが、それぞれの地域で対応の難しさがあります。先日、市町村別の外国籍の方の人数を調べましたら、ほぼ全ての市町村に外国の方が住んでいるという状況に、今、日本はあるようです。昔から外国籍の方が住んでいる地域も国籍が多様化するなど変化し続けています。
 ところでここに挙げています外国籍幼児と呼ばれるお子さんたちなんですけれども、実際には日本語指導が必要な統計を取るときに、外国籍の児童生徒数と、それから、日本国籍の児童生徒数というふうに分けて取られています。ただ、実際に指導とか配慮が必要なお子さんたちというのを一括して考えるために、よく外国につながるお子さんたちとか、外国につながる人たちというような表現もされたりしております。
 こちらは日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査結果を、平成20年度から令和3年度までのデータを示されているものです。見ていただくと、言語がどんどん多様化していき、一番最近のものでは、この赤いところは日本語が家庭の言語で日本語指導が必要な児童の割合が増えてきました。外国籍の児童生徒の家庭の言語が日本語というのは、国際結婚だったり長く日本に住んでいる保護者の家庭もあるというふうに、どんどん多様化が進んでいるということも分かります。
 先ほどもお話がありましたけれども、幼稚園教育要領ではこうした状況を受けて、第1章の総説の第5節の特別な配慮を必要とする幼児への指導のところで、先ほどもありましたけれども、とても大事な3ポイントがここに書いてあると思っているんです。まず、安心して自己を発揮できるように、文化が違っても、言葉が違っても。そして、個々の幼児の実態をしっかり把握して、そうして担任1人が抱え込むのではなくて、園全体で組織的かつ計画的に指導内容や指導方法の工夫をしていくのが大事であると述べられています。
 保育所保育指針も参考に見てみますと、保育の前提に関わる事項の中で、「子供の国籍や文化の違いを認めて互いに尊重する心を育てる」ですとか、「子供の性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けることがないようにすること」とあります。こうした要領・指針では、多文化共生保育や多様性の中で生きる子供たち、将来の子供たちの育ちを支える理念や実践の方向性は示されているわけです。けれども、今のところかなり現場の努力と工夫に任されている部分が多いのではないかと思っております。
 それは言語的・文化的多様性の配慮の経験が、国内では少し海外に比べると少ないようだということもあるかと思います。文化や言語が違うお子さんたちに出会うとき、そのときには個別の状況が多様で、これまで自分がしてきた保育ですとか支援の過去の経験が使えなかったり、言葉が違うので配慮の意図が伝わりにくかったりすることで、かなり保育者の困難感につながっています。国際比較調査でも、研修等で学ぶ機会が海外と比べると少し少ない。そしてまた、取り組んでいる地域や園はあって、いい実践もあるはずなんですけれども、それが周囲に伝わっていかない。そして、こういった状況がありますので、養成研修ができる人材がまだ少ないこと、それから、保育者たちは、全幼研の調査によれば、保護者がなかなか変わっていかないことについて、それからこちらの意図がなかなか分かってもらえないときに、しんどさを抱えているようです。
 参考までに、欧米などではどのようにこうしたことに対応しているかということを見て見ますと、多様性は公正性と包摂性とセットで捉えられています。全ての子供の育ちを支えるのが保育者の責務であり専門性である、そして多様性の中で生きる次世代の人材を育てているという認識があります。この辺りは日本の要領や指針でも目指しているところとかなり重なっていると思います。ただ、海外では養成教育や研修に、言語的・文化的背景が、保育者自身と異なる子供と家庭への対応が組み込まれていて、また言語を習得した後の公正性の課題についても考えられています。
 園生活の見通しを考えてみますと、子供たちが園に入ってから、それから小学校に移行していく、こうした流れの中で、新たに文化的な視点を考えていくことになります。そのとき受入れ期と、それから、園生活が充実していき、そして接続期として捉えていくとよいのではないかと思っています。このとき、包括的に子供を理解して、そして多言語での育ちを支援していく時に、一番基盤になるところが、ありのままの自分や家族が受け入れられる実感、所属感が持てること、です。この所属感を持てるようになるためには、保育者自身が異なる文化に対してどのように自分の態度があるかということをしっかり捉えていくこと、保育者自身の文化が実践に与えている影響に自覚的になることが大事かと思っています。
 現在、子供たちの様子の研究調査をレビューしていきますと、課題になっていることとして、小学校に行ってから言語力に差があることが表面化するケースがあります。日本生まれのお子さんたちの中にも、ダブルリミテッドと呼ばれる、母語も日本語もしんどい、そういうお子さんたちがいます。おそらく、日本語の場所にいるからよいと安心できるわけではなくて、その言語環境の質が大事になり、豊かな経験の保障が不可欠になります。さらにはほかの日本の子供たちが、この外国につながる子供たちを受け入れるに当たって、多文化保育や教育が必要なのではないかと思っています。
 また、保護者は、母子保健・子育て支援が届きにくい状況にあります。情報弱者になりやすいということ、それから、いろんな要因があるときに、この後の和田先生の御発表でもあるかと思いますが、特別支援の対象になっている、それで外国につながるお子さんたちというのは、非常にリスクが高くなります。さらに、母国の制度との違いから、どこに必要なサービスがあるかにも文化的な特性があって、こちらは情報を提示しているつもりでも届いていないということがよくあるようです。
 まとめです。多様な子供・家庭と共に歩むためには、様々な保育のチャレンジがありますけれども、その子供たちと共に育つ保育というのは、新たな可能性を生んでいくと思います。子供理解を大事にして、そこに発達の見通しを持って、そうして言語・文化的視点を持った保育を日本でも目指していければと考えています。そのときに、地域とのつながりやネットワークが重要になります。これまでの保育を問い直し、保護者同士の関係づくりに向き合いながら、そうして今までの保育で当たり前になっていることの意味を考えて、子供・保護者にとっての意味を考えるような保育ができるように、先生方を支援していく必要を強く感じております。
 1枚残っていますが、以上にさせていただきます。ありがとうございました。
【無藤座長】   御発表ありがとうございました。
 それでは、次、和田教授よりお願いいたします。
【東京家政学院大学和田教授】   よろしくお願いいたします。それでは、発表させていただきます。東京家政学院大学の和田美香と申します。よろしくお願いいたします。
 こちらが発表の概要です。特別な配慮を必要とする幼児の中でも、特に発達障害の幼児を想定した内容になります。
 幼稚園教育要領の該当箇所です。赤字のところが次のスライドに反映するのですけれども、こちらについて発表させていただきます。まず、集団の中で生活することを通してというところ、それから、外部の助言や援助を活用するという点、それから、指導内容の工夫という点、これらの現状と課題について、併せて述べさせていただきます。
 まず、集団の中でというところですけれども、保育の現場では、特別支援教育がスタートする以前から、集団での育ち合いを重視して、障害児保育の実践を積み重ねてきました。統合保育と言われるものです。小学校以上のように、特別支援学校や学級がほとんどありませんから、一緒の場で育つことは当たり前の世界です。一方で個別支援については、いわゆる取り出しですが、こちらは療育センターなどにおいて具体的な方法が検討され、研究が積み上げられています。園でもその方法を独自に取り入れているケースがありますが、集団の中でどのような配慮をしたらいいのか、そして、どのようにしたらその子供の能力がより発揮されるのかということについては、明確に示されている研究は少ない状況です。現在、その実践は個々の保育者や園の努力に委ねられている現状があります。これは先ほどの内田先生のお話に重なるなと思いました。
 次に、外部の助言を活用するというところですが、これは他組織との連携が前提にあるということになります。他組織との連携はとても重要なことだと思いますが、実際には連携先の確保やタイミング、支援が必要な子供の数の増加などの面から課題があります。このグラフは令和元年度に行った調査の結果ですが、外部からの助言については、多くの園が得られていると回答しています。しかし、ヒアリング調査をしたところ、連携はしているけれどもなかなか順番が回ってこない、半年待っても見てもらえない、今ここで起こっていることについて、外部との連携を待っていられないというような声がありました。
 こちらは外部の助言を受けた関係機関等の内訳です。特別支援学校からの助言は相対的に少ない結果となっています。
 関連してですが、指導の方法の工夫のところでは、その具体的な方法が分からず、保育者が困っているという状況があることが分かっています。これは多くの研究から明らかになっております。私の調査では、保育所の困り感について、経験年数による差はほとんどありませんでした。つまり、ベテラン保育者も、とても困っているということです。
 以上の現状を踏まえ、子供が集団の中でより力を発揮できる環境を整えるために、継続して保育者を支援するシステムづくりが必要だと考えます。それは他組織の介入だけではなく、園内における専門的知識の充実が求められていると考えます。一人一人に合ったよりよい環境や関わりについて、具体的な知識です。保育者は幼児の特性を認識した上で環境を整え、幼児自身が選択できるリソースを柔軟に用意していくことが必要だと考えます。
 ここからは、幼稚園での実践を示しながらお話しさせていただきたいと思います。この園は20年くらい前から、こだわりが強い、パニックになるなど、特別な配慮が必要な子供が増えてきました。副園長の小林先生からお話を伺いましたが、当時、この状況をどうしたらよいか悩む日々であったと言います。まず、全員が研修を受けることにしました。さらに特別支援コーディネーターを中心に、一人一人の特性に合った環境づくりを進めてきました。ちなみにコーディネーターは副園長の小林先生と、保護者のサポーターです。保護者を支える親の会も、月1回行っています。すると、子供たちと保護者に変化があらわれてきました。最初の頃は、障害児探しの園と揶揄されることもありましたが、20年かけて、「診断は受けたほうがお得、特別な支援は受けたほうがお得」ということで、園の文化が変わってきたそうです。
 「育ち方、学び方はいろいろ、一緒にその子の幸せを考えましょう」というスタンスで、保護者を巻き込み、学び合う関係ができています。そして、学んだ保護者は、子供が卒園するとさらに研修を受けて、園のサポーターとして活躍するという循環ができています。小林先生は、本当は外から専門家を呼んできたいけれども、それが難しいので自園で育成したと語ってくださいました。本当に何人もの元保護者が、パートタイムや常勤のサポーターとして働いていました。加配保育者として自治体の補助を受けているということです。ただ、それはこういった資源のない園では難しいので、そこが課題だと思っております。
 保育者全員が研修を受けて、その底上げもしていますが、対応の判断の全てを保育者に委ねるのは無理があるという実感もあるそうです。その責任の全てを保育者に求めたら、保育者は潰れてしまうとおっしゃっていました。つまりこのシステムは、園内での多職種の連携を目指しているということです。保護者を巻き込んで専門家を育成していくことは、この辺りの課題をうまく解決している事例だと言えます。
 これは保育室の片隅にある仕切られた空間です。ある子供は、3歳の頃は自分の感情をコントロールできず、部屋を飛び出したり癇癪を起こしたりしていましたが、年長になると、「僕ちょっとあそこに行ってくる」と言って、自分で決めて動くことができるようになっています。人はみんな安定的に心地よく生きたいという思いがありますから、幼少期からそこを感覚的に選ぶ経験はとても大事だと思います。「僕はこうしたらみんなと一緒に話が聞ける」「この方法なら一緒に活動できる」と、次第に自覚して自ら伝えたり、選択したりするようにしていくことが、自立に向けての一歩だと考えます。
 このように仕切りのある机やテントが、広い園内のあちこちに用意されています。ついたてで緩やかに仕切られたスペースがあることで、みんなの気配を感じながらも、情報や気持ちのコントロールができます。この環境があるから、逆にみんなと一緒にいられるというわけです。
 これは椅子に敷く座布団です。このような刺激があれば、座って話を聞ける子供もいるのです。どれがいいのか、要らないのかは、子供が選んでいます。
 これは揺れていたほうが落ち着く子供が使うものです。足を乗せるとゆらゆらします。揺れる椅子に座って、クラスで先生の話を聞く子供もいます。クッションの中に埋もれていると落ち着くという子供もいます。感覚の敏感さや鈍感さは人それぞれです。お話を聞くときはお背中ピンですよというような、一律にこうしなければならないと考えるところから、保育者の思考をまず崩していくことが必要になります。その思考の転換が課題です。
 1つ事例を紹介します。多動の子供で、何度注意しても歩きながらはさみを使う子がいました。以前は危ないと止めていたそうです。でも、座った途端に「切れない!」とパニックになってしまうので、困った保育者は、床に円を描いて、この中なら歩いてもいいよと伝えたそうです。そうしたら足踏みをしながらはさみを使い、なんととてもきれいに切れたそうです。座ることにエネルギーを使ってしまうと、はさみを使うエネルギーが残らない子供もいるのです。このときに、「危ないでしょう、何度言ったら分かるの」と叱られ続けて、自己肯定感が低くなってしまう子供と、「この方法なら僕、うまくできる」と自覚できる子供のどちらがその後、自身の力を発揮して育っていけるかは、考えるまでもありません。その子供に合った環境づくりをすること、そうすると、こんなにできることが増えるのかと実感できると小林先生はおっしゃっています。
 まとめです。これからの園の課題としては、園内に専門家が配置されること、そして、その知識を園内で共有し、子供の力がより発揮される環境をつくっていくことです。このことは、この先、子供が自立した学習者になっていく大きな助けになると思っています。自分にとってパフォーマンスが高い最適な環境について自覚することは、個別最適な学びのスタートであり、さらにこういう工夫をすればみんなと一緒に学べるという協働的な学びにもつながると考えます。
 こちらが引用文献です。
 以上で発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
【無藤座長】   ありがとうございました。
今、お二人から発表をいただきました。その2つについて、委員の皆様方から御意見なり御質問なりお出しいただければと思いますが、鈴木委員と河合委員が早めに御退室と伺っていますが、特にありますか、鈴木委員、そして河合委員。
【鈴木委員】   ありがとうございました。とても勉強になりました。
 やっぱりそれぞれの中での受け止め方をどう広めていくのかなという現場の意識改革みたいなところにすごくちょっと思いをはせました。ありがとうございました。
【無藤座長】   ありがとうございます。
河合委員もいらっしゃいますか。どうぞ。
【河合委員】   河合でございます。ありがとうございます。
 本当に私たちの価値観とか、当たり前に思っている、気がつかない無意識のアンコンシャスバイアスとかいう言葉でよく言いますが、そういうことを改めて一人一人が考えていく必要があるなと自分の中でも問いながら、今伺っておりました。
 幼児教育はもとより、一人一人の特性に応じた教育ということも含めて、いわゆる特別支援教育との理念の親和性は高いなと常々思っておりました。本日の御発表では、内田先生からは、そうした保育に加えて言語とか文化的視点を加えていくこと、それから和田先生からは、その子その子で選びながら、自分の力を出せる環境を専門的な知識などをもとに加えていくことの重要性を学ぶことができました。ありがとうございます。
 特に幼児教育は、子供たちがそもそも一人一人違うという私たちも認識もありますし、子供同士も、誰がどうというよりは一人一人のことを受け止めながら大きくなっている段階ですので、その子に合った必要な支援がその子の特別なものになってしまい過ぎないように、子供たち、先ほど環境の中でも誰もが使えるということもキーワードだと考えました。どの子にとってもそこにアクセスして一緒に楽しめるような、そういうアレンジをしていくことは、保育をする先生方の得意な分野かと思いますので、専門家と力を合わせながら、こうしたことを考えていくことの重要性を改めて思っています。
 そして、様々な好事例は、自分の園でどうしたらいいだろうかと考えるときのデータとして蓄積され、アクセスができることも、これからとても有意義ではないかなと考えさせられました。どうもありがとうございました。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 それでは、これから、どの委員の方でも結構ですけれども、御質問、御意見について挙手をお願いできますか。どなたかありますか。どうぞ、順番を問いません。では、那須委員からお願いします。
【奈須座長代理】   よろしくお願いします。子供の多様性に全面的に応じていくことによって、子供の学習権、発達権をしっかりと保障するというのは、幼児教育に限らず全ての教育段階で大事になってくる、その認識がようやくしっかりしてきたんだと思うんです。その中で、やっぱり特別支援教育と幼児教育に学んでやっていくということはとっても大事だなといつも思っていますけど、今日お二人からは、幼児教育の中でどんな取組があるか、どんなポイントがあるかということを明確にお示しいただいてとても勉強になりました。
 どっちかというと幼小連携とか、それ以降のこととの関係で幼児教育をどう考えればいいかなということに関心があるものですから、ちょっと和田先生に教えていただきたいんですけど、さっきの例えばはさみの子、本当そうだなと思うんです。小学校以降でも本当にああいうことはあるんです。ところが、小学校以後は決まった形、決まった枠組みの中でやらなきゃいけない、だから落ちているということがすごくあって、できないんじゃなくて、できるような状況に置いてやればいいんだと僕らもよく思うんですけど、一方で、そういう状況というんでしようか、それは発達的に変化していくのか。僕はあれは別に問題だとは思いませんけれども、歩きながらでもはさみ使っていいよということで、はさみをどんどん使っていく中で、その子が望めばですけど、そのうち歩かないでも上手に切れるようになったり、座っていても切れるようになったりということをしていくのかなと思うんですけど、その辺の見通しというか経験がどうなんだろうと。つまり小学校以降、あるいはもっと先の学年でも、どのぐらいの多様な状況を保障してやることが大事かみたいな話がやっぱり出てくると思うんです。
 私は小学校以降でも似たようなことはずっとあるし、できるできないじゃなくて、その子が気持ちよくやれるとか、楽しくやれるということが大事で。そう考えると、もっと先まで含めて、先ほどのいろんな座面の高さの家具であるとか、柔らかい状況であるとか、色調なんかもそうだと思うんですけど、ヨーロッパなんかはむしろそれが小学校以降も普通で、そうしていくといろいろできるなと思うんですけど、一方で幼児教育段階で、むしろそういうことを多様に保障していくことで、その子たちの発達的な変化が促されていって、もっといろんな場面、状況でもできるようになるとすると、小学校で締める必要は全くないんですけども、変わってくるのかなと。何かその辺の話、ちょっと教えていただければなと思っておりました。
【無藤座長】   御回答のほうは何人か出るかもしれませんので、最後にまとめて指名させていただくのでよろしくお願いいたします。
 それでは、尾上委員、よろしいですか。
【尾上委員】   御指名ありがとうございます。お二方の先生、本当に発表ありがとうございます。
 まず、内田先生の文化的・言語的に多様な子供たちが共に育つ保育は、教育要領第1章総説、第5節に、安心して自己を発揮できるよう配慮するなど、個々の幼児の実態に応じ、指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画に行うということはごもっともであると思っておりますが、実際には特別支援が必要な幼児への対応と同様に、幼児教育施設における教職員全体の理解と協力による、いわゆるチーム幼稚園を構築し、分厚い基礎的環境整備を整える必要性があるというふうに、私ども現場では認識しております。
 言葉が分からない中での見よう見まねでの園での生活は、幼児集団にいながら孤立状態となり、周りに適応できない状況を生み出すことが多いと。まして発達障害の子供さんの場合には、見よう見まねすることさえ気持ちが向かわないということの対応も必要となります。今後とも教育要領においては、内田先生もおっしゃっている、多様性は公正性と包摂とセットで捉えられるということを現行の前文の文章に加えて、全面的に押し出すことが大切だと私は考えます。
 また、言語が理解できる、できないという視点だけではなくて、それ以前に園にきちんと居場所があるということが重要でございまして、これ、和田先生の事例発表にございましたように、全ての子供に保障することが必要だという認識を、今のお二方の先生のお話を聞いてさらに認識を深めたところでございます。
 感想でございました。本当にありがとうございました。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 それでは、若山委員、お願いします。
【若山委員】 富山大学の若山です。内田先生と和田先生にお尋ねしたいことがありまして、お願いします。
 まず、内田先生の御発表を伺いまして、現行の3要領・指針下で、保育者の先生方がどんなことに直面して、どんな保育をされたりとか子育て支援をされているのかということを理解することができました。ありがとうございます。
その上で質問なんですけれども、内田先生の資料を拝見しまして、要領・解説等にはないニュアンスというか、内田先生独自の御私見かなと思ったのが、言語発達を支える保育を深めるというスライドかなと思いました。現行の要領・解説では、冒頭の事務局から説明もあったように、自然に日本語に触れたりとか温かい関係の中でといった書き方で、あまり強く言語発達を強調していないかなというふうに読めます。ですが、先生が関わられている中では、実際の場では解説のニュアンスとは違って、言語発達に関してもう少し積極的な環境構成であるとか、先生側の援助とかが多く行われている実態があるのかとか、そういう課題があるのかというふうに理解してもよろしいのかということをお尋ねしたいと思いました。
 もう一つ和田先生にお尋ねしたいのは、特別な配慮を必要とする幼児への指導を考える際に、保育所の先生方は、3要領・指針の5領域の領域の意義づけであるとかねらい、内容の取扱いの章をどのように活用されているのかということをお尋ねしたいと思いました。また、第5節、特別な配慮を必要とする幼児への指導は総則に位置づけられているわけですけれども、総則の第2、幼稚園教育において育みたい資質・能力と、あとは10の姿というのは、この第5章の特別の配慮を必要とする幼児への指導と関連づけて、どう先生方に指導の際に理解されているのかという実態を教えていただきたいなと思いました。そうした活用や関連づけにおいて先生方が使いづらさを感じておられるなど、そういう実態はあるのかなと思い、お尋ねするところです。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。これも最後によろしくお願いいたします。
 それでは、坂﨑委員、お願いします。
【坂﨑委員】   坂﨑です。よろしくお願いします。
 内田先生のほうには、私、田舎に住んでいるので、なかなかそういう外人の子供たちが少なくて、どういうことを準備していくことが必要なのかという初歩的なことをお知らせしてくださればありがたいと思います。
 和田先生のほうは、とても感慨深く聞かせていただきました。先ほどの文科省様の説明に関連することを話します。私は今、児童発達支援事業を2か所やっています。それと園の中に児童発達支援事業所を、日本で最初につくりました。自分で、園の園長でもあるんですけれども、園の中にある児童発達支援事業の、児発管を持って管理者もやっています。非常に珍しいパターンだと思うのですけれども、基本的なことを少し話をするんですけれども、文科省さんのほうから5割ぐらいしかコーディネーターが置かれていないという状況が最初にあったかと思うんです。けれども、例えば、小学校と放課後デイの関係を考えると、小学校出てから放課後デイというのが対応されるのに比べて、乳幼児期であれば、園で生活をしている中で児童発達支援事業に通うということがあるので、直接指導をするということと、外部に任せるというところが非常に融合してしまっているので、小学校に比べて高い数字が出ていかないのではないかなと思います。しかしながら、外部に任せたからといって、専門的な知識がないということでは決してないと思いますので、キャリアップ研修も含めて、これから進めていく必要があると思います。
 大切な1つ目には、園長先生に一番必要なのは、園内の組織をつくっていくということはもちろん重要なわけですけれども、もう一つは、外部に対してどういうふうなアクセスをしていくのかというのはとても大きな仕事になると思います。そのことが少し欠けているのではないかというふうに思います。1、2歳児からの発達をどういうふうに支援していくかということが、小学校の接続まで考えていくと大きな課題であると思いますので、そういうことが非常に問題だと思います。
 2つ目は、和田先生から聞いて非常に感銘したのが、やっぱり幼児教育アドバイザーも含めた形での障害を専門として、すぐ聞けるような人というのがどういうふうに位置づけられていくのか、例えば幼児教育センターの中で。障がいの予算は自治体において、やはり一般財源であるので、そういう指導をしていく人たちの質をどう上げていくのかというのは、これからも大きな課題だなと思います。
 蛇足ですけれども、保育所保育指針等における5領域と、また療育に関するガイドラインの5領域があって、そういうことをどういうふうに関連づけていって、逆に言うと現場に戻すのかというのは、これからのまた課題なのではないかと思います。
 少し面倒くさいことを話して申し訳ありません。以上です。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 それでは、田中委員、お願いします。
【田中委員】   失礼します。特別な配慮を必要とする子供の育ちを支える上で、様々な機関が連携していくということが必要だ、これは言うまでもないことだと思います。本園の園医の先生が神戸大学の医学部の永瀬先生とおっしゃる先生なんですけれども、お話をお伺いする中で、連携をする機関に、連携するということを考えたときにいろいろ問題を感じていらっしゃるお話を伺いました。何かというと、例えば神戸市が障害のある子供、医療的ケアが必要な子供の支援ハンドブックというのを作られているんですけれども、そこに多くのサービスは掲載されているんだけれども、どこで何をやっているのかとか、あるいはまた、それぞれの違いは何なのかというのが分かりにくいということです。それから、医療が入っていないということを問題に感じていらっしゃるというお話を伺いました。なかなかお医者様で、そのことに問題を持ってくださるお医者さんって出会うことはないんですが、そこに問題意識を持ってくださっていて、教育とか福祉、それとか保健医療、この辺りの関係機関が連携するということは大事なんですが、ただそれぞれの機関が、どんな専門的な機能を持っているのかということを、よく考えたら自分たちもなかなか理解できてないなということがあります。それから、いろんな施設があるんですけれども、どこがいいのかというのはなかなか紹介しにくいんですね。療育なんかにしても質が高いとかということの判断基準がなかなかなくて、そこら辺りを相談させていただいても、なかなか明確なものがないんじゃないかなというようなお話を伺ったことがあります。
 実際、自分たちも悩みながら保護者が見つけてきたというか、関わっていらっしゃる療育のところとはもちろん関わっていくんですけれども、逆にこちらからの紹介がしにくいみたいなことがあって、そこらあたり何か知見がありましたら御示唆いただきたいと思います。
 また、その連携の機関、仕組みをしっかりとつくっていく中に医療なんかも入っていくというようなことは、今後考えていくのは大事なことかなということを感じましたので、お話しさせていただきました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では高橋委員、お願いします。
【高橋委員】   御発表ありがとうございます。目黒区立みどりがおかこども園の高橋です。誰1人取り残さないというのが、2つの発表からもうひしひしと伝わってまいりました。
 まず、内田先生の御発表からは、御説明をされなかった最後のスライドがとても気になり、大切なのは、質の高い保育とそのプロセスの質というところです。子どもたちの興味関心、心揺さぶられた体験からの気持ちの表現、それを友達や保育者と共有して、相互に作用して進化・増幅することで豊かな経験になっていく、また豊かな経験がそれらを生み出していくという循環が非常に感銘を受けたところでした。御説明がないので残念でした。お聞きしたかったです。私も、言語環境の有無というよりは、言語環境の質というところのスライドに関心があります。その点をもう少しお聞きできたらなと思いました。
 公立幼稚園・こども園では、特別支援教育については充実した研修に取り組んでいますが、先生の分野の多文化への対応についての研修が不足しているのではないかと感じたところでした。
 和田先生の御発表ですが、公立の幼稚園、こども園は、特別支援学校のコーディネーターの先生の御助言や、療育機関との連携、訪問指導での振り返り、心理カウンセラーとの連携など、1人の幼児を中心にいろいろな機関が連携をし、具体的な援助について話をする機会があります。それを、発達支援センターがコーディネートしているような形になっています。御発表にあったとおりで、私たちも個に応じた環境をそれぞれ工夫しているところです。そして、ユニバーサルな環境をとても大事にしていますが、研修等で知識を積み上げて実践とどう結びつけていくのかというところは、教師の力量にも左右されるところかと感じます。若い先生たちにはその点が負担感になっているところもあるのかなというふうに思っています。
 また、公立園は20%から30%、高いところではもう50%の在籍率にもなっているところもございますので、その点に関しての書類の多さや、各機関との連携や対応についての忙しさが少し負担感にもなっています。援助について、全ての子供たちへの援助にも有効的であることから、インクルーシブ教育を踏まえても学べるところは非常に大きいと思っています。
 ありがとうございました。以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 一通り御質問、御意見出していただけたと思いますので、それでは、まず、内田教授より、御質問幾つかありましたが、まとめてよろしいでしょうか。
【東洋大学内田教授】   ありがとうございます。うまくまとめられるかどうかちょっと心配なんですけれども回答させていただきます。
 機関連携とかネットワークというキーワードが和田先生の御発表の中でもあったんですけれども、外国人家庭の支援を考えるときに、やはり子育て家庭の支援は産前産後からの流れで考える必要があり、園はそのネットワークの中の1つでもあるんです。園が中心になるだけではなくネットワークの中の1つとして医療とか保健などの現場との連携を考えていく必要があります。そういうところの医療の現場も困りながらも対応を工夫してきているので、そういったところがどういうふうに対応しているのかということを、学び合えるとよいと考えています。そして、既にそのような連携している地域もあります。だから、そういうところが日本全国に広がっていくと、園の先生方も少し心が楽に取り組めるんじゃないかと思います。
 ただ、そうした好事例が、なかなか広がっていかないもどかしさもあるので、研修その他で、こういった場所があるということを知っておいていただけると、これから取り組む地域に有効ではないでしょうか。坂崎先生がおっしゃられていたようにまだ外国籍幼児がいない地域では、たくさん準備しておくのは難しいかもしれないけれども、どこに糸口があるのかを知っておく。自分の地域に外国の人たちがあまり来たことがなくても、近隣に取り組んでいるところが県単位で考えたらどこかあると思うんです。だから、どこにそうしたリソースを持っている自治体があるのかということをある程度知っておくというのが準備になっていくと思いました。
 そして、研修不足の対応のために、文部科学省の委託研究を全幼研が受けて、研修ビデオをつくってきたものがあります。ウェブにありますので、そこは誰でも見られます。今回資料に入れておけばよかったんですけれども、すみません、誰でも、活用していただけます。ただ、それをどう活用していくかというところで、やっぱり誰か、幼児教育センター等での指導できる方とかいらっしゃるのが理想かなとは思っています。
 それで、若山先生のお話にもありました、言語発達を深める保育ということと、あと言語環境の有無の質と最後に高橋先生に言っていただいたことと少し重なるかなと思うんです。自然にというんですけれども、保育ではやっぱり先生方が環境設定をしているわけです。その中で、日本語をしゃべっているところにいるから、小さい子なんだから大丈夫というのは実は迷信で、子供たちの中でも親しみが持てるところとそうじゃないところによっては、そこで話されている言葉が心に伝わるように聞こえてきたり聞こえてこなかったりしているようなんです。これは、自分の実践経験や、現場に行ったときの経験から申し上げていることなんですけれども。ですから、やっぱり自分がそこにいていいんだと思える場所であるから、日本語が自然に身につけられる。そこの関係づくりをいかに保育者がしていくかというところが大事だと思います。さらに言語環境の質、そこで話されていることが分からない子だから簡単な言葉だけで伝えるのではなくて、『やさしい日本語』も大事なんだけれども、先を見通してどんな言葉の環境にこの子たちはいるべきなのかということをある程度考えていくということを大切にしていただきたいのです。これまでの保育では考えなくてもよかったかもしれないんだけれども、そこを特別な配慮として少し考えていただけるといいのではないかなと思いまして、そこの言語発達を支える保育を深めていくということをお話しさせていただきました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 それでは、和田教授にもお願いしたいと思います。
【東京家政学院大学和田教授】   御質問、御感想ありがとうございました。何か励まされるような気がいたしました。
 ちょっと個別の先生方の名前を出して御回答というか御返事させていただいてよろしいでしょうか。
【無藤座長】   どうぞ。
【東京家政学院大学和田教授】 奈須先生からお話がありました、小学校に行ってからの適応とか先の見通しということについて御質問いただきましたけれども、多動のお子さんは、ケースにもよると思うんですけど、小学校中学年以降になると急に落ち着いてきて、多動の状態が少し見えづらくなってくる。障害がなくなるわけではないですけれどもというところは先生方、御存じのところだと思うんですけれども、そこまでの間に、「やっぱり僕できないんだ」、「僕はできない子だ」と思ってもらいたくないという気持ちが私の中にはすごくあって、そこを多様な環境を用意することで、「こうすれば僕できる」というところを経験として重ねていき、そして小学校に行った先で、みんなと一緒に座ってやりたいと思えれば、それが一番理想的なところではあるかなと思います。
 先ほどの園の先生ともちょっといろいろ話をしたときに、やっぱりその小学校がどういう小学校かというところを幼稚園のほうもすごく気にしていて、小学校が変わってくれば、今のやり方をそのまま継続していく形で推進できるんだけれども、行った先の小学校がそうではない場合には、やっぱりかわいそうな思いをさせてしまうので、そこも見ながらバランスを調整して、少し適応に向くように指導していくケースもありますということは、園の先生のお話でした。御回答になっていますかどうか、ありがとうございます。
 それから、尾上先生、感想どうもありがとうございました。
 それから、若山先生、5領域のねらいと内容をどのようにしているかということで御質問いただきました。また、資質・能力とか、いわゆる10の姿のところ、使いづらさはないのかというような御質問でした。私、先ほどの令和元年度の調査研究の中で、n78なんですけれども、個別の指導計画の様式をどういうふうに書いているかという調査をしました。78のうち、5領域の形式で書いている園は6園しかありませんでした。そのほか遊びと生活というふうに大きく分けている園が一番多くて25、それから、療育の視点、何々ができる、できないみたいな、割とアセスメント的な形式で記録を書いたり計画立てているというのが17園で、あとは記入者に任されているというのが19園ということでばらばらです。ただ5領域が少ないということは、これがどうなのかというのは私には申し上げられませんけれども、やはり5領域や資質・能力の辺りは書きづらいのかもしれないなというところは感じました。
 先ほどの小林先生のお話ですと、やっぱり5歳児の中に2歳児もいる、凸凹があるから、ねらい、内容で、これがというところになかなかこうフィットしない。ここの部分はすごくいいんだけど、この部分はうまくいかないみたいなところが、「やっぱり領域に分けて考えると少し書きにくいんです」なんていうお話はされていました。そんなところでよろしいでしょうか。
 それから、坂﨑先生、ありがとうございます。外部へのアクセスについてお話しくださいまして、ありがとうございます。やっぱりすぐに聞ける人というのは必要ですが、やはり外部の人が必要ないというわけではなくて、外部の人にいろいろアシストしていただかなきゃいけないところはあると思います。ただ、集団の中でどうするかという、その子供たちの関係性の中で、その年の子供たちのそのクラスの中でどう指導していくかみたいなことになると、やっぱり園内である程度分かって相談できる人がいたらいいんじゃないかというような話はいただいています。
 それから、田中先生、ありがとうございます。連携先の紹介のことを御質問していただいたのかなと思っていますけれども、例えば、保育者が保護者に伝えるときも、すごくいろいろトラブルがあるんです。「うちの子を障害児だと言いたいんですか」みたいなこととか、療育センターを勧めたりすると急に関係が悪くなって、「うちは大丈夫です」みたいなことになってしまったりするんですけれども、そういうときにやっぱり先の見通しで、こんなふうにすると、こんなふうな先が見えるよということとセットに、あとはこういう医療機関があるよとか、こういう連携先があるので、よかったら足を運んでみてくださいというような先の見通しをセットで今の現状をお伝えしていくと、割と受け入れてもらいやすいようなことがありましたので、保育者もある程度卒園児とか過去の先輩のママさんからとか地域の評判を聞いておいて、どんなところがよいなど把握しておくといいです。また半年ぐらいはどこも待つんですけれども、療育センターを勧める場合も「お電話だけでもしてみたらどうですか」みたいにすると、割と保護者のハードルも下がるということでした。
 先ほどの事例ですと、サポーターが保護者ですから、うちの子もこうだったのよ、ああだったのよという感じで、割とつなぎやすいという、反発を買いにくいという、そんなメリットのもあるのかななんていうように思っております。ちゃんとお答えできているか分からないんですけれども。
 高橋先生、ありがとうございました。公立園の事情を伺って、やはり少し私立園とは違うかもしれないなという感覚を私の中で持ちました。知識を積み上げていく負担感や書類の多さという点は同じだなというふうに思っておりまして、今、ちょうど科研で私がぎりぎりいっぱいで取り組んでいるのは、こういった個別の指導計画についてICTを利用して、少し楽にできないかなと思っています。保育者の負担を軽くできないか、軽減できないかなということについて取り組んでおりまして、なかなか先が見えないんですけれども、例えばICTにすると、その子の状態を串刺しに見られるというか。検索機能で、「はさみ」と検索すると、これまでのその子のはさみを使う状態が出てきたりとか、製作の活動のことがばーっと検索に引っかかって出てきたりすると、その子の歩みが見えやすいということがもしかしたらあるかもしれないので、せっかく作る書類ならば、苦労する書類ならば利用できないかなというところに、今私も同じ思いでおります。
 以上、ちゃんと答えられているか分からないんですけれども、回答ということにさせてください。ありがとうございました。
【無藤座長】   ありがとうございました。以上の議論に加えて、御欠席でございます河合委員と岸野委員から書面で御意見をいただいてございまして、その中で内田委員と和田先生に関わる部分を事務局よりかいつまんで御報告お願いしていいですか。
【横田幼児教育企画官】   先ほど河合先生、お時間が間に合って御発言いただきましたので、岸野先生のところだけ御紹介させていただきたいと思います。
【無藤座長】   ああ、そうですよね。ごめんなさい。
【横田幼児教育企画官】   内田先生の御報告から、文化的、言語的に多様な子供たちが共に育つ保育は新たな可能性を開くものであるというところが重要だと思いました。日本文化、日本語が圧倒的に前提となっている園の中では、異なる文化、言語をルーツとする子にとって訳の分からない不安な場になると思います。そうした中で、保育者はどのような環境や援助があれば興味、関心を引き出せるのか、一層細やかなまなざしが必要となると同時に、クラスや園において多様で寛容な関係性や文化を醸成していくことが必要だと思います。日本文化、日本語に触れていることを前提とした園環境を見直すことも求められると思いますというコメントをいただいております。
 また、和田先生の御報告につきましては、個々の子供の特性を理解して援助していく上で、個別最適な環境をつくっていく園としての体制が重要であると感じました。加配保育者の質の担保も課題として挙げられていましたが、加配保育者が個々の子供を丁寧に捉え援助していくのと同時に、担任保育者と子供の理解や保育観を共有して、密に連携していくことも重要であると思いましたということで、事前に御意見をいただきました。
 以上となります。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 それでは、次の御発表に移りたいと思います。大豆生田委員と掘越副センター長に続けてということで、お願いしたいと思います。
 大豆生田委員からまずお願いします。
【大豆生田委員】   玉川大学の大豆生田です。本日、出席が遅れまして申し訳ありません。それでは、画面を共有して始めたいと思います。私からは、「幼児教育の質向上につながる地域の研修」ということでお話をさせていただきます。
 概要ですけれども、幼児教育の質向上には、園における取組に加えて、地域の自治体の研修の取組が重要となるということで、全ての子供に質の高い教育・保育を保障するためには、全ての園を視野に入れた自治体の研修体制づくりが求められるんじゃないかということです。この話は、もう既に岸野委員がお話しされた福井での取組であるとか、古賀委員が話された評価のことも含めて、幼児教育アドバイザーに加えてピア評価者ということの取組なんかも含めて、あるいは伊丹市等々の自治体の取組を含めての関連の話にもなると思います。
 2つ目です。しかし、研修の実施そのものは重要だけれども、質の向上につながる、つまり実効性を持ち得るためには、研修の在り方の検討が必要になるということで、これは特に「往還型研修」と名づけている、実践を共有しながら公開保育や連続性、往還性を持ちながらという研修のお話をさせていただきたいと思っています。
 最後、3つ目ですけれども、園内での研修コーディネーター的な役割、幼児教育アドバイザーということが一つ大きな核になるわけですけれども、それに加えて、地域の研修体制を広げていく、全ての子供、全ての園を視野に入れた質向上のためには、地域のいわゆる中堅リーダー層的な人材の育成ということで、今回、Yサポという横浜の取組についてお話をさせていただこうと思っています。
 今回、保育の質の向上ということに関して、これは厚生労働省時代、汐見座長の下で、質の検討会のまとめを行いましたけど、今回、保育の質とその向上が、この検討会の中で、質の側面は多様なんだけれども、2つ目に書いてある質を確保・向上するためには何が大事かということでは、2番、3番、4番辺りのところで、園の中での語り合う風土、職場の環境づくりと同時に、地域においての互いに学び合う関係性をどうつくっていくか、マル3のところで、開かれた体制をどうつくっていくか、マル4のところで、そういう人材をどう育成していくかという観点、こうした観点から質の確保と向上を考えていきたいと思っています。今日、特に横浜市のことを中心にお話しさせていただきますけれども、そうした全ての子供に対して、全ての園で保育の質の向上を考えていくときに、横浜では「よこはま☆保育・教育宣言」というものを出しています。この策定、あるいは実際にこれを動かしていく運用協議会の委員としては、無藤先生や渡邉英則先生等も入って、一緒にやらせていただいていることです。
 そういう意味でいうと、指針や要領に書かれているような幼児教育・保育で大事なことのポイントをここで押さえていると同時に、小学校との接続も保障しますということをここで宣言に加えているところも特徴です。そして、実際にそうしたことを、宣言のものを確保していくためには、どこの園でも園内研修や公開保育ができるようなということで、こういうガイドラインみたいなものを作って、実際に以前よりもハードルを下げながら、気軽にやってみようというところからのものも作っています。
 今回の大きな一つの話の中に、じゃ、質を上げていくということが、研修を行えば質が上がるかというと、例えば、中原先生たちの研修に関する研究で、つまり、単にやりっ放しの研修では、研修転移、実際に効果が現れるとは限らないということで、インターバル研修、少し間を空けながら実践を持ち寄ってということを書いています、お話しされています。そのことに我々、かなりインスパイアされて、往還型研修、研修を受けて終わるんじゃなくて往還、行って帰ってくる、受けたら現場でやって、またそれを次回にという、そういう研修スタイルを、横浜市をはじめ、あちこちの自治体で今これを始めているということです。
 特に保育士なんかでは、キャリアアップ研修が位置づけられていて、いわゆる中堅層が特に、マネジメントの研修なんかでは、まさに園内研修のコーディネーターを養成していくという位置づけの中で、これ、1科目15時間あるので、3時間を5回に分けて実際に取り組んでいこう。そのときの特徴は、受けて終わりではなくて、自分がその研修を受けながら、研修を通して自分がどういうチャレンジテーマ、自己課題みたいなものを持って、次回までにそれをちょっとやってきて、写真を持ち寄って、実際にこれは受講者同士が高め合いながら、自分のチャレンジテーマに対して、最終的に5回目のところ、あるいは6回目のところでは、全員がポスター発表する、その成果を発表するという方法を取っています。
 実際このやり方は、実際ポスター発表している写真ですけれども、横浜市以外にも、鹿児島市、熊本市、広島市、世田谷区等々、あちこちでやっています。私たちが関わっているだけで15、16か所あるでしょうか。それ以外に、私たちの範囲でないところでもあちこちでやってくださっていることをうれしく思っていますけれども、一人一人がこんなに子供のことをわくわくと語るということが、実際私たちの手応えとして見えてきたり、アンケート調査からもそれは見えてきています。こんなふうに環境を変えたら、こんなふうに保育が変わり出した。石一つでもこんなに面白いって子供たちとの探究が始まったということを、受講者皆さんがこういうことを語られるということです。そのことが、実際にこの往還型研修を受けて、そこがどう変容していくのかというプロセスに関しては、これは保育学研究の中で、髙嶋を中心にインタビュー調査を通してまとめたものです。横浜市の受講者へのインタビュー調査からです。
 研修を受けたときから、かなり葛藤があることがよく分かっています。そのときに、実際にテーマがあることで、そのことを園の中で語り合ったりということがありながら、そこには園全体のサポートや外部講師が関わることの意義なども出てきますというふうなプロセスとしても実は、こういう往還型研修の効果があるのではないかということを話してきています。
 横浜は特に、この幼保小の接続に関しても、子供主体の遊びを中心とした幼児教育の延長線上に小学校の学びを位置づけることを接続カリキュラムとしても以前から出していますけれども、そうしたことを横浜の中では、私たちの往還型研修とはまた別に、小学校と一緒にこういうスタイルの研修を今やっていますし、横浜以外でも今年、小学校も含めた往還型研修が今動き出しています。そして、先ほどの私たちの研究の中で、外部の講師の関わりが大きいことも見えてきました。横浜が1,700以上の園があり、横浜は大きな自治体です。18区もあって、その中で、そういう体制をどうつくっていくかというときに、外部のファシリテーター的な存在の育成がとても大きなことというふうにあります。公開保育を多くの園がこれから始める体制みたいなこともつくっていきたいという流れの中にあります。
 そうしたときに、横浜の場合は幼児教育センター的な機能は多分あるんですけど、まだそういうセンターとしてはなっておりません。幼児教育アドバイザーをまだ取り組んでいないということですけれども、今、こうした横浜市の往還型研修、特にマネジメントで、いわゆる園内研修コーディネーターの学びをしてきた人が次の学びのステップがあって、そういう人たちが今、私たちのチームが、大学の教員等がファシリテーターとして入っているところに、今度は中堅人材がその役割をなすということの取組を始めて、今年度、その学びを終えた人たちが独り立ちするというスタートの年になっています。こういう中堅層以上の、いわゆる当事者的な先生たちが支援人材としての取組はもう既に先駆的に、日私幼さんの研究機構のECEQだとか、兵庫県のひょうご乳幼児マイスターなどがあるということと類似の取組と見てもよいかなと思っています。
 このYサポの取組ですけれども、この一番下からです。往還型研修のいずれかを修了ということで、この研修分野、特に私たちの場合はマネジメントの科目である園内研修リーダー育成研修を特に推奨しています。マル2の実施経験があること、施設長が認めたことということで、実際に認定を行われた人たちが、大学の教員が各園の公開保育に関わることに随行しながら、そこで実際への関わりを学んでいく、それと同時に、このYサポさん、今年6名養成しましたけれども、Yサポ同士も高め合うような取組をしながら、今これを進めていて、その学びを終えて、今年度から6人が独り立ちをして進めているということです。
 「効果と課題について」ということで、まだ始まったばかりなので課題も満載だし、まだ市としてもどういうふうに今後進めていくかが今手探りの状態でもあるんですけれども、公開保育実施園の保育者に対して、自身の経験や自園の取組を示しながら、一緒に考え、寄り添っていたということが、つまり、当事者的・同伴者的な関わりとして、いわゆる中堅的な人たちがこうやって関わることの手応えということは、この間、保育学会の自主シンポでも発表いたしましたけれども、かなり本人たちのモチベーションが上がっているということと、現場でも効果的で、既に声もかかり始めているということです。
 2つ目です。公開保育実施園での経験をYサポが自園に持ち帰ることで、自身の園にとっての質向上につながるという効果、互恵性ということ。そして3つ目、Yサポ同士の横のつながりも広がり、相互に情報交換をしたり、互いに学び、高め合う様子が見られて、支援人材同士の高め合いということ。そして一番最後、今年度からYサポが自立して、いわゆる2人体制で園を訪問するというふうに進めることになっています。そうすると今後、バックアップ体制や、つまり、園の中でも抜けるということが出てくるので、そうした場合の体制なんかも含めて、今後いろいろ検討していかなきゃならないことがあったり、まさに18区各区にそういう存在がいるようにもしていきたいので、さらにこの育成を続けていく中で今動いているということで、効果と課題ということでお話をさせていただきました。
 ごめんなさい、時間がちょっと過ぎちゃいました。ありがとうございます。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 それでは、掘越副センター長、お願いいたします。
【国立教育政策研究所幼児教育研究センター堀越副センター長】   それでは、国立教育政策研究所幼児教育研究センターの掘越から発表させていただきます。「幼児教育におけるプロセスの質向上に向けて」ということで、国研の前プロジェクト研究「幼児期からの育ち・学びとプロセスの質に関する研究」の報告書からお話をいたします。なお、詳細につきましては報告書を御覧いただければと思いますので、QRコードを載せております。また、資料が大部になっておりますので、飛ばしながらお話をさせていただきますことを御了承ください。
 海外では、質の高い幼児教育・保育を受けた子供が、その後の人生をよりよく生きられるという研究成果が示されたことにより、質評価への関心も高まり、幼児教育・保育の質を捉えるための試みの一つとして、質評価スケールの開発などが進んでいます。こちらに挙げたようなECERSやSSTEW、CLASS、このほかにも多数あります。幼児教育・保育の質評価は、社会文化的な背景や制度・政策等の影響を受け、複雑かつ多層的で多面的なものです。そこで、日本の幼児教育・保育の文化・文脈を踏まえた質評価スケールの検討・作成に取り組むことになりました。
 研究目的で利用可能な質評価スケールを作成するということもありますが、研修等の場で、保育実践を捉えたり振り返ったりするための観点の一つとして提供して、保育実践の改善や向上に活用していくことも目指したいと考えました。その結果できたものが、「幼児教育における保育実践の質評価スケール案」というもので、少し長いので「質評価スケール案」と呼びますが、9項目112指標となっております。3~5歳児の1つのクラスでの保育実践が対象で、室内・戸外の全ての場所で研修を受けた評定者が複数で、3~4時間の保育観察と保育者インタビューを通して7段階、1の「要改善」から7の「非常に良い」で評定をいたします。この項目・指標の特徴は、プロセスの質を重視したスケールとなります。日本の幼児教育・保育の文化・文脈に沿って、「子供の主体的な関わり」「社会情緒的な育ち」「学びの芽生え」などに着目しています。要領・指針の5領域、あるいは幼児期の終わりまでに育ってほしい姿等は踏まえていますが、全てのねらいや内容は網羅できていないという限界もございます。
 こちらが質評価スケール案の9項目になります。項目Ⅰの「健康と安全への配慮と指導」を示しますが、左側のほうに、項目の下に様々な指標というものがあります。3のレベル、5のレベル、7のレベル、それぞれ3~5個の指標から成り立っております。それを1つずつ、イエス、ノーをつけてチェックをしていきます。右側のほうには、概要と評価の観点という緑の枠で囲まれた概要が示されております。その後に指標が一つ一つ示され、解説があるというものになります。
 こちらが項目Ⅳの「好奇心を育む環境構成」で、「子供の興味・関心を促し、好奇心を高めるような環境を構成する内容」ということで、緑の枠内に概要と評価の観点を端的に示しております。そして、例えば、3-4という指標について読んでみると、「保育者は、遊びや活動の場を用意するとき、子供が興味・関心を持てるように素材や教材等を一緒に準備している」と書かれています。その解説が下に示されていますが、このような指標等を1つ読むだけでも、具体的にうちの園ではどのような場面が思い浮かぶかということで、園内研での活用も考えられるところです。
 この質評価スケール案の課題としましては、7つほど挙げておりますけれども、最後の「妥当性の検証」というところで、「多様な園で実施し実施数を増やし、信頼性・妥当性を検証」することが、まだまだ新しいので必要ということです。日本の幼児教育・保育の文化・文脈に沿って、海外の質評価スケールや、様々な評価方法と共存して、選択肢の一つとして、研究や研修等で活用されるよう、今後もさらなる検討を重ねたいと考えております。
 次に、「実施上の課題」と挙げました。4つほど挙げておりますが、「評点の慎重な取扱い」についてですけれども、スコアですので数値化されます。それは分かりやすさでもありますが、リスクを伴います。また、評点を利用した安易な序列化は望ましくございません。私どもは基本的には、実施した際に評点を伝えずに、当日のよかった点や課題を改善する方向性などを伝えるように心がけております。
 また、「評定者の研修等の検討」について、例えば幼児教育アドバイザーやミドルリーダーといった方々に対して、質評価スケール案の評定実習研修などを行う必要があるのではないかと考えています。最後に、研修プログラムの検討や実施システムの構築、園内研修の実施方法等の検討がまだまだ必要だと考えており、現在、私どものプロジェクト研究で取り組んでいるところになります。
 次のページからは前プロジェクト研究で同様に取り組みました「幼児期からの育ち・学びを捉える」という3歳児から7歳児までの縦断研究の内容となります。御参考としていますので、かなり飛ばしてお話しいたしますけれども、3歳児から7歳児までの5時点の育ちと学びに関して縦断的に質問紙調査を行い、社会情緒的スキル、認知的スキル、生活スキルの関連や影響、他の要因、例えば保育実践の質等との関連について検討したものです。
 3~7歳児までの5時点全てに参加した2,000名以上の子供について、担任保育者・教師と保護者に対して調査したものです。最後の分析結果のまとめになりますが、こちらは3歳児から7歳児のどの時期においても、生活習慣の形成が子供のスキルの土台となっておりました。また、社会情緒的スキルが認知的スキルを支え、あるいは認知的スキルが社会情緒的スキルの育ちを促していました。3~5歳児においては、保育実践の質が高いと生活スキルや社会情緒的スキルの得点が高いという結果も見られました。
 さらに、社会情緒的スキルの育ちにおいては、保護者データと保育者・教師データで一部逆の影響関係が見られ、保護者データとは異なって、保育者・教師データでは、社会情緒的スキルの因子である、好奇心や自己主張と、粘り強さ、自他調整、協同性との間に一部マイナスの影響関係が見られました。この理由を考えたとき、保育者・教師が恐らく集団生活の場で、好奇心の表れた姿、あるいは自己主張の表れた姿が、時に対応が難しいと捉えているのではないかということが示唆されていると考えます。また、保育者と小学校教師の捉え方の違いなども影響しているのかもしれません。この辺も今後検討したいと考えております。
 急ぎ足になりましたが、以上で終わります。
【無藤座長】   ありがとうございました。それでは、今、大豆生田委員と掘越副センター長の御発表に対する御意見、御質問をまた伺いたいと思いますけれども、若山委員、早めに出られるということで、ございますか。若山委員、お願いいたします。
【若山委員】   ありがとうございます。では、それぞれの先生にちょっとお尋ねすることがありまして、お話しさせていただきます。
 まず、大豆生田先生の御発表を伺いまして、改めて現行3要領・指針を見たときに、幼稚園教育要領と幼保連携型認定こども園教育・保育要領と保育所保育指針の間で、研修に関する章の有無という大きな違いがあることに気がつきまして、先生に伺うことじゃないのかもしれませんが、この違いは今後埋めていくことができるのかなという大きな疑問が浮かびました。
 もう一つお尋ねしたいのは、最後のスライド、今日、先生御発表なさらなかったんですが、まとめになるかなと思うんですけれども、最後のスライドの2つ目のところで、先生が「保育の質の向上」という言葉を使っておられるんですけれども、例えば一人一人の先生方がチャレンジテーマのように自己課題を持たれて研修に臨まれたときに、どのように一人一人の先生方の保育の質を評価・測定されているのか、その方法を教えていただきたいなと思ったことがありました。
 それと、掘越先生の御発表については、感想なんですけれども、以前私、別の評価スケールの研修に参加させていただいたことがありまして、そのときに思ったのが、1つの評価項目について複数人で観察とか評価をすることで、多面的に1人の子について捉えることができるなという、その点がこういう評価スケールのメリットの一つかと思いました。多面的に幼児を捉えるという表現は、現行の要領解説でも使われているところなんですけれど、先生の御発表にもあったように、今回の質評価スケールは要領等に規定される評価の妥当性と信頼性の確保という点で有用なツールだと、御発表を伺って改めて思いました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。私がここで言うのは何なんですけれど、念のために加えたいのは、3要領・指針はかなり共通性が高いわけだけれど、幾つか違いがあるんですけど、特に保育所保育指針は、幼稚園と同様に保育所の目標とか内容を示していますけれど、同時に保育所の運営に関わる事項が入っているわけなんです。幼稚園の場合は、幼稚園は学校教育でありますので、学校教育法とその施行規則のほうにるるいろいろと書かれているので、それと併せていかないといけないという、そういうややこしい事情があることは申し上げておきたいと思います。
 それでは、そういう御質問も最後にまとめてお願いしたいと思いますので、委員の皆様から御意見、御質問。
 まず、秋田委員からお願いします。
【秋田座長代理】   ありがとうございます。学習院の秋田です。お二方ともそれぞれに独自の視点から、質をよくしていくためのシステムをつくって、そのモデルを示してくださってきているところが、海外のものをという時代から一歩大きく変わってきているところを私自身感じるところです。と同時に、この会議は、やはり全国的にどこでも、ある種、保育の質を、今回お二人とも保育者の質、専門性を上げるための取り組みと、それによって、園の運営だったり、対話によってよくなっていくという方向をお話ししてくださったと思います。そのためには恐らく、どの自治体でもできるための後方支援体制というんですか、後方支援が必要なんじゃないかと考えます。
 大豆生田先生の場合だと、横浜市はそれなりの人口と経済的な支援ができる自治体の一つだと思うんですけれども、いろいろな自治体に関わっておられる中で、どういう後方支援があるといいんだろうか、また、こういうものが実際に、ミドルリーダーの育成には極めて重要な課題であると同時に、一方で、それがカリキュラムであったり環境だけではなくて、安定的にその園の子供の経験の質を上げていくためには、距離もあり、どうしても、どこかに1個重点を置いても、なかなか時間がかかるように思うんですけれども、その辺り、どういう体制を今、保育士不足とかもある中で、その辺りでどう考えたらいいんだろうかというようなところをお聞きしたいです。
 それは掘越先生のご報告でも、質の評価を対話するということは大変大事なのですが、今、保育士の不足で、その時間がないじゃないかというのが最もいろんな方から出てくる意見だと思うんです。そのときに、どういう体制をうまくつくっていくことでこういうことを後方支援するとか、園の中でどういう工夫のマネジメントをしていくことによって質の向上が可能になっていくと考えておられるのかというところが伺いたいです。国と同時に自治体ができるだけ格差なくやっていけるために大事なところかと思うので、その辺りについてぜひ伺えるといいなと思ったところです。本会議は教育課程とか学習評価ともつながって、指導評価というところと関わってくる委員会だと思うので、この辺りをぜひ伺えるとありがたいと思います。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】   ありがとうございました。大変学びになりました。保育の質、学びの質を保障していくことは、もともと教師の相互作用であり、そういったねらいの研修を実施することにおいては、根拠を持って、プロセスを大切にしながら、継続的な人材育成に努める必要があることを感じた次第でございます。私から大豆生田先生に1つアドバイス、御教示いただきたいと思って質問させていただきます。私が前回も、ここの際に話させていただいたんですが、小学校のカリキュラム・マネジメントの研究をしている本校において、幼稚園の先生方に参加していただいて、幼児教育の先を見てもらおうというような形で実施をしていこうと思って年間計画を立てています。小学校に幼稚園の先生がやってきてくれる。全員じゃないんですけれども、分かれ分かれでやってきてくれます。こういった形で連携をしていくことも接続の一助になるのではないのかなというふうにして私としてはトライをしているところなんですが、こういった連携をする際について、幼小双方が留意する点はどんなものがあるのか御教示いただければと思います。よろしくお願いします。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、渡邉委員、お願いします。
【渡邉委員】   よろしくお願いします。横浜の話が出たので補足的なことも含め話させていただきます。横浜、本当に、大豆生田先生とか無藤先生も関わっていただいたりとかしながら、全体的にいい方向に進んでいるとは言えるんですけど、悪いほうの事例もいっぱい言えます。実態ってすごく難しいなと思ってはいます。ただ、保育の質を評価をするにしても、よりよい方向に変わっていくという流れを横浜市の中でどうつくっていくかという話で言ったとき、多分自治体の職員の人も替わっていったりとか、いろんなことがあったときに、研修の中で先生たちが保育のことを語るとか子供のことを語る、そのことをベースにしながら自分の中で考え保育に取り組んでみて、保育者の実感としてよりよくなったと感じられる、なかなか保育って1人では変われないんですけど、でも、往還型の研修をやっていると、保育者が1人でも変わろうとすると、園全体が大きく変わることはできないのですが、給食の食べ方を変えたとか散歩の仕方を変えたという小さなことを一生懸命考えて実践する人もいたり、いやいや、そうじゃなくて、挑戦してみて失敗しても、私、こうやってやったらうまくいったわよと言うとか、他園の先生の支えがあったりとか、各保育者のなかによくなっていく方向性みたいのが見えてこないと、園全体がよりよい方向に変わっていくといった方向に進まないだろうと思っています。
 評価されるときに、公開保育もそうなんですけど、往還型研修をやった人たちが公開保育の参加者として行くから、その保育者の悩みも知っているし、どうやってやってきたという歩みも知っている。だから、ああ、こうやってやったんだ、頑張ったねっていいところも認めてくれる。だけど、外部の人が入って、マニュアルに従って点数化をされるみたいなやり方だと、言われちゃったとか、ここは駄目と言われたなど、否定的な気持ちが強くなって、もうこれ以上やりたくないってなってしまうと、何のための評価か分からない。子供たちが育っていくということは、子供たちも育っていく中でいろいろ学んでいくんだけど、保育者も、それから園長サイドもそうでしょうけど、共になって学んでいって、あっ、こういうことって大事なんだって分かっていくというようなやり方をどうしたらいいかというのはまだ試行錯誤の段階だとは思っています。だけど、自治体が、僕からすると横浜というのは多分、こども青少年局の局長から職員全体が応援してくれていて、やれることは何かやれないかというふうになってきています。横浜市は最初は待機児童対策でとにかく保育園ばっかりつくっていたんですけど、保育の質が問題だってなったときから、本当に質のことを考えようという人たちを、行政内もそうですし、研究者もそうですし、僕ら実践者も含め、そういう流れをつくっていこうという姿勢に変わっていきました。それはまだ小さな流れかもしれませんけど、その中で何かできることがないかと模索しているところは大きいのですが、結構大きく変わりつつあるなというのが、往還型の研修だったり、それからYサポという制度です。変えていくということを本当に分かっている。大変さも分かるし面白さも分かっている人たちが声を出すということも意味があるかなと思ってはいます。そのやり方が徐々に全国に広がっていくという、まだそこまでいかないかもしれませんけれども、そういうことの手応え感はこれからも大事にされていっていいのかなというのを改めて、今日のお二人の提案を聞いて感じました。
 以上になります。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、古賀委員、お願いします。
【古賀委員】   貴重なお話、どうもありがとうございました。ちょっと声が出にくくて、失礼いたします。
 まず、大豆生田先生のお話からですが、様々な園がある巨大な横浜市で行政が主導し、また研究者の協力を得て、保育者自身が自律的・協働的な学び手であるということを前提としたシステムづくりを明確なビジョンの下に行っていることはすばらしいと思いましたし、また、いろいろな自治体のモデルとなる取組だと感じました。これを横浜市だからできるんだよねというふうに終わらせたくないなと思ったのと、また、先ほど秋田先生からのお話もありましたけれども、何をどうアレンジすればほかでもできるのか、今後の効果的な研修の基本構造として重要な要素をどう取り出すのか、自治体の状況に応じてアレンジするオプションをどう考えていくのかというところがポイントとなるのかなと感じました。
 私の提案のときにも、ピア評価者という地域人材の話をさせていただきましたけれども、Yサポのような、ある園に勤務しながら地域で活躍する人材を財源とともに考えていくときに、保育人材の公益性を、私立園が多い幼児教育分野でどう考えて整理できるかということが検討すべき課題としてあるのではないかなと考えました。また、掘越先生のお話では、日本における幼児教育の質をどのように考えて捉え、生かし、さらによいものを目指していくのかということについて、私も御一緒に考えさせていただいてきましたけれども、評価が一時点の診断としてではなく、保育の連続性、発展性を前提とし、まず、その質向上をエンパワーメントするものとして質向上プロセスに位置づけていくであるとか、また、一時点での固定的で一方向的な見方とか診断として使用することを否定し、対話的な評価を行う手だてとして活用していく在り方を徹底していくことで、日本の幼児教育のよさを守りつつ、全体として高めていくことにつなげることが重要だと思っています。一定の形となって、これから誤解のないように活用に向けて取組を加速化していくことであるとか、また、さらに改善していく必要があるところだと思っています。
 また、今日はお時間がなく紹介がありませんでしたけれども、後半のところの研究では、保育者や保護者を対象とした質問紙調査だけではなく、報告書では3歳から7歳までの幼児を対象とした発達の縦断調査の報告もなされております。国内ではかなり貴重なデータとなっています。一方で規模の問題があります。こども家庭庁のEBPM研究会の議論のまとめと今後の取組によりますと、国立教育政策研究所との連携を推進していく内容が含められていますし、当会においても、今回もそうですけれども、こういった成果や課題の検証が大きなテーマなわけですが、そういった今後の国の幼児教育・保育政策に関するエビデンスを出していこうとするときに、国研内の幼児教育を専門とする研究官の数が諸外国に比べて圧倒的に少なく、足りていません。求められる研究の規模は、当然国の機関ですから大きなものになりますが、それを実施するだけの人員がいないので、規模を縮小して実施せざるを得ず、求められるエビデンスを出すのに十分なデータが取れないというようなことが起こってしまうかと思います。このことは早急に解決すべき根本的な問題だと考えております。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございました。
 では、汐見委員、お願いします。
【汐見委員】   ありがとうございました。私、1点だけお伺いしたいんですけれども、国研で新しい評価スケールの作成を努力されていること、とてもありがたいと思ったんですが、その際、質評価のスケール案のところで御提案、今つくられている中で、9項目112指標というのがございましたが、その9項目が「健康と安全への配慮と指導」から始まって、社会情緒的な育ち、主体的な学びという、これは指導をしている先生方がそういうことをやっているかということにはなっていますけれども、実際にはこういう資質・能力を子供の中にどういうふうに育んでいくのかという視点にもつながっているんだと思うんです。ということは、この9つに分けているというのが、5領域だとか10の姿とどのように関わってくるのかということが当然議論になってくるんじゃないかと思ったんですよね。
 私は、個人的な意見では、5領域というのはよくできているんですが、既に三十数年前につくられたものでして、その三十数年間の間に、社会、文化も大きく変わっているわけですよね。ですから、今の時代にふさわしくすると、例えばOECDがいろいろエージェンシー等で提案しているとか、この間スウェーデンに行ったら、2018年にレッジョにインスパイアされた後に変えていたとか、隣の韓国なんかの課程は幼稚園、保育園一緒にということで、これは5領域の形になっているんですが、とにかくどこの国も、それからニュージーランドなんかもそうですね。大きな社会文化変容の中で、2040年、50年を担っていくような子供たちにどういう体験を幼い頃にさせておくことが一番大事なのか、それがまた同時に、社会のよさというかな、質の高さを担う、そういう人材の力にどうつながっていくのかということで、もう一回いろいろ練り直さなきゃいけない時代に入っていると僕は思っていまして、ですから、10の姿が出た、それから今の9つのあれも、そういう意味では、議論の材料としてはとても分かりやすい。ただ、そういうことをもう一回、幾つかの案が出てきているんだけれども、これは多分文科省がリードしていかなきゃ駄目だと思うんですが、改めて21世紀中盤社会の保育・幼児教育と小学校低学年あたりの共通の目標、それをもう少し分かりやすい言葉で言ったらこうなるんじゃないかということを模索しているというような、そういう視点が何かあるといいなと思って聞いていました。そのことをどう議論されているか、もしあったら教えてください。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、田中委員、お願いします。
【田中委員】   まず、大豆生田先生のお話の中で出てきましたYサポのお話、本当に興味深く聞かせていただきました。いいことの裏返しで課題もあるということで挙げてくださっている、2人体制で園を訪問する際のバックアップ体制ということと、園を抜ける場合のルールづくりということを具体的に挙げてくださっていて、特に横浜市、公立がないということもお聞きしていますので、私立の園でこういったことをすることは、かなりハードルが高いというか、今は既にもう見えてきているんだろうなということを思いましたので、ここら辺りをどんなふうに克服していこうとされているのかというのが、少しでもありましたら教えていただけたらと思いました。
 あと、掘越先生のほうも、日本の保育のよさが適切に評価されるように、海外のものをそのまま持ち込むんじゃなくて、日本の保育文化に合った質評価スケールがよりよいものになっていくということは本当に意義深いと思いました。指標と解説が、保育でのイメージも湧くように言語化してくださっていて、お話しいただいたように、この部分だけでも研修に使えそうだなということを思いました。数値化のリスクや、序列化は望ましくないといった活用に向けて様々配慮されていることもおありだということで、こういったことが併せて広く周知されることをぜひ期待したいということを感じました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、坂﨑委員、お願いします。
【坂﨑委員】   よろしくお願いします。掘越さんのお話を聞いて、国立政策研究所の幼児教育センターがこういうふうに進められていることに、とても感銘をしてお話を聞きました。大豆生田先生のところに関係するんですけれども、今年、うちの園が公開保育9年目です。先ほどの秋田先生のお話をすごく感じるところがあって、秋田先生が子ども・子育て会議の委員長をやっているときに令和2年から、公開保育と施設関係者評価、学校評価を一体型として、保育所は該当していませんけれども、加算という仕組みをつくってくださっているわけです。それって、私のような非常に小さな村でも行うことができる質の評価の一つでありますし、その中で私、大豆生田先生のいつもお話をしてくださっている往還型の研修を取り入れて行っているわけです。いろいろな質を上げていく中で、国の施策を進めていくことを一緒にやっていくことが、ある意味では、大きい横浜でも小さな過疎地でもできるような仕組みなのではないかと考えます。そういう意味で、保育の質の均一化ということはなかなか難しいと思いますけど、質を上げていく1つの仕組みに公開保育とか関係者評価があるのだなということを、大豆生田先生のお話を聞いて本当に強く思いました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。
 では、尾上委員。
【尾上委員】   時間がありませんので、一言、大豆生田先生に御礼を申し上げます。ECEQを御紹介いただきまして、ありがとうございます。何だかんだ言ってもう12年目に突入しまして、頑張って、また、いろいろ御教示いただきたいと思います。無償化も進んで、幼児教育の評価が当然今から必須になってまいりますが、保育はプロセスの評価という先生方の御意見を内外により広めていきたいと思います。ありがとうございました。
 以上です。
【無藤座長】   ありがとうございます。では、お答えいただくということで、大豆生田委員、お願いします。
【大豆生田委員】   先生方、ありがとうございました。少し早口になりますけれども、先生方のお名前を挙げさせていただきながら、私なりのコメントをさせていただきます。
 若山先生、ありがとうございました。要領・指針での違いの中でということで、私がそれに答えられる立場ではないんですけれども、研修の体制も含めて、これが共通化していく方向みたいなことができないかという思いも含めて、ここでお話しさせていただいているということがあります。実際、手続上のことは、申し訳ない、私、分かりません。けれども、多分その方向性みたいなことが今後大事だろうと思いながらです。
 2つ目の御質問で、質の向上、チャレンジテーマを持ちながらの評価測定はという質問ですけれども、基本的に測定という考え方はここでは取っていません。基本的なプロセスそのもの、自分の問いに対して、そのことを対話し、最終的に発表という形にするところまでということも含めたプロセスや対話を重視しているという点です。ということで、拙いですけれども、ありがとうございます。
 秋田先生からは後方支援ということで、一番大きな課題をいただいたと思っています。そのことに関しては我々、研究も含めてこのことの成果をどう出していくかということを課題ということで、今、質的研究の1つを挙げさせていただきましたけれども、Yサポも含めて今科研費を頂いていますので、このことをどう成果ということを出していくかということが大きな1つです。それはもう既に先ほど古賀委員が少しフォローしていただきましたけれども、財源として公益性にどうつなげるかということもその一つだと思います。
 それから、文科省、こども家庭庁がやっている中央セミナーみたいなことをどう活用していくかということがとても重要だと思っています。そうしたことの中で、自治体間でどういうふうに高めていくかということが大事だったり、結局動いているところは、こういうことが大事だということが行政の人にどう伝わるかということだと思います。そこにはキーパーソンが、現場のキーパーソン、研究者のキーパーソンがいるというこの3者の関係性が重要だということも思いながら聞かせていただきまして、これも十分でありませんけれども、ありがとうございます。
 佐藤先生から、小学校と幼稚教育とのカリキュラム・マネジメントということで、留意する点ということでお話しくださいました。今、私、栃木県の幼児教育センターに関わらせていただいていますけれども、そこで、個別に実際に自分たちでカリキュラムをつくってみるということがすごく効果的だなということを実感しています。そういう意味でいうと、そのときに多くの方が今、ある研究でそのことをしているんですけれども、それぞれを見合うということはあまりにもしていないということが見えてきていました。互いのよさを、これ、すごくよかった、これ、やってみようということをするところから始めることがとても重要だなということを私が今学ばせていただいています。ありがとうございました。
 それから、渡邉先生からは、まさに今、横浜の中でということでお話しいただきましたけれども、後でこのことに関しては、田中先生がYサポが2人体制で園のバックアップ体制が必要だというふうな問いに関しては、実は渡邉先生のところで私立から、6人養成しているうち2人が私立、民間です。4人が公立です。ですから、渡邉さんのところでの私立園から出すということの中で、田中先生の問いに、渡邉先生、後で答えていただけると幸いです。ということで、よろしくお願いします。
 古賀先生、ありがとうございます。古賀先生が前回お話しいただいたピア評価者ということ、その後の掘越先生の話ともつながりますけれども、このことをいわゆる評価スケールみたいなこととこういうことがどう絡んでくる可能性があるのかということは重要な課題と受け止めているし、これ、実は横浜市だからではないっておっしゃってくださったこと、まさにそうで、今かなりの自治体で、しかももう既にYサポと同様なものを、今ここでは言えませんけれども、もっと全然小さい市で養成、動いていることもあることを報告させていただきます。ありがとうございました。
 田中先生からは、渡邉先生に答えていただきたいということと、それから坂﨑先生、ありがとうございます。過疎地でもできるというのは、本当にありがとうございます。私が今結構力を入れていることが、島だとか、人口がいなくなっているところで往還型研修を取り入れたり、数園しかないところでも取り入れたりだとか、そのことが成果を持ち出しているなということを、私、あっちこっち伺いながらやっています。ということを考えると、まさに坂﨑先生がそのことをおっしゃってくださることは本当に力になるなと思います。ありがとうございます。
 尾上先生、ECEQの件、ありがとうございます。むしろ私たちが学ばせていただいています。感謝です。ありがとうございました。
【無藤座長】   掘越副センター長からも何かありますか。
【国立教育政策研究所幼児教育研究センター堀越副センター長】   お時間のない中、皆様から御意見をいただきまして、感想等を含めてどうもありがとうございました。
 秋田先生のお話の全国展開と後方支援というようなことになるかと思いますが、時間がない中でどのようなシステムで回していくかというお話、これから考えていかなくてはならない課題だと思っています。質評価の評定者の育成を手がかりとして、まず、幼児教育センター等と協力して、現在、4つの自治体で取り組み、アドバイザーの力量、資質の向上へつなげていこうと動き出しているところです。このような方法がうまくいきそうならば、さらにほかの幼児教育センターや自治体と協力しながら進めていくことができるのではないかと思っています。
 その際、どのように園に伝えていくかという点について、評定者、幼児教育アドバイザーの養成においても、園の先生にとって励みになるような伝え方がとても大事なのかなと思っております。そのことも含めて「保育をみる」視点を豊かにしていくことができたらよいなと思いますし、今後も検討し考えてまいります。
 また、汐見先生からも大きな視点からアドバイスいただきまして、ありがとうございます。ウェルビーイングにも関わる内容だと思いますし、エージェンシーに関わる内容などもこの質評価スケールにはあります。さらに日本で今後スキルとして伸ばしていく必要性のある、探究心などの項目も設定しているところです。さらに乳幼児期から低学年の視点を踏まえて、今後も検討してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
【無藤座長】   渡邉委員にも質問を向けられたので、簡単に。
【渡邉委員】   簡単に話します。今、園には大豆生田先生とか大学の先生たちが入ってはいるんですけど、Yサポには謝礼的なものが園に入ってきます。園でパートの保育者を雇ったりということもできるような形になっています。ただ、それよりはYサポで外に出ていくというよりは、Yサポでうちの保育者が学ぶことが多くあるということです。うちの保育者がすごく思っているのは、大学の先生達が園に入ってもあれこれ教えないんですよ。こうやったらいい、ああやったらいいと言うんじゃなくて、どうやってやるか、子供はこうだよねとかって話しながら、保育を本当に一緒に考えていくということをしています。それを見ながら、Yサポの保育者も自分自身の勉強や学びになるみたいなところが素敵だと思っています。Yサポになって外に行っているというのは研修に行っているみたいなところもあり、もちろん本人たちにその対価は出していいんですけど、園として、足りない人がいたら保育者を雇ってもいいよというような、そこのサポートもしてくれながらというような形で横浜市がバックアップしてくれているのはすてきだなって思っております。Yサポになって他園に出ていくことを勝手にやりなさいじゃなくて、出ていけるような体制をどうつくるかを一緒に考えてくれているのが横浜市かなと思っております。Yサポ同士の結束もあり結構学びが多いかなと思っています。
以上です。
【無藤座長】   ありがとうございました。御欠席の河合委員と岸野委員からもお二人へのコメントはあるんですが、これまでの議論と重なると思うので、省くのでいいですか。発表者の方には伝わるようにしてありますので。
 ということで、本当に時間ぎりぎりになりましたけれど、今日はここまでとさせていただきたいと思います。発言時間が短くて、はしょったり発言を控えた方も多いと思いますので、ぜひメール等で事務局に御意見、御質問をお寄せください。
 最後に、事務局より連絡事項をお願いしたいと思います。
【横田幼児教育企画官】   次回の検討会は、資料5のとおり、6月19日水曜日10時から12時を予定しております。議題につきましては、無藤座長と御相談の上、改めて御連絡をさせていただきたいと思いますので、委員の皆様におかれましては、引き続き御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤座長】   次回以降、この検討会のまとめに向けて、また、御発言いただきながら、事務局と一緒になって、まとめの調整をして、報告書の形を模索していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日予定した議事は全て終了いたしましたので、これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――