今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会 (第4回)議事録

1.日時

令和6年3月11日(月曜日)10 時 00 分~12時 00 分

2.場所

WEB開催(傍聴はYouTube Live上のみ)

3.議題

  1. 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証について
  2. その他

4.議事録

【無藤座長】  定刻となりましたので、ただいまから、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会(第4回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございました。
 本日の会議の資料等につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  本会議は、Zoomを用いたウェブ会議方式にて開催をさせていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をお掛けすることもあるかと存じますが、何とぞ御理解のほどよろしくお願いします。
 また、本日は、傍聴の御希望をいただいた報道関係者と一般の方向けに本検討会の模様YouTube Liveにて配信をしております。加えて、報道関係者の方々から撮影及び録音の申出を頂戴しており、これを許可しておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 本日の会議資料については、議事次第にございますとおり、資料1から4まで、加えて参考資料1から3となっております。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  それでは、議題1に入ります。主な論点、参考資料1ですけれども、1、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証について、更に意見交換を行ってまいりたいと思います。
 本日でございますけれども、意見交換を行うに当たり、主に幼児教育と小学校教育の接続の観点から、3名の委員の皆様方に御発表をお願いしてございます。まず、事務局より説明を行った後に、3名の委員より御発表いただき、その後に皆様方との意見交換を行いたいと思います。
 それではまず、事務局より資料の説明をお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  まず、参考資料1になります。ただいま無藤座長から御説明があったとおり、本日の議題も前回に引き続き1番となっておりまして、その中でも委員の先生方より幼保小接続に関する御発表をいただける予定となっております。
 次に、参考資料2を御覧ください。こちらは前回の有識者検討会において、3名の先生方から有識者や実践者としてのお立場から御発表いただき、その後に委員の皆様からいただいた御意見などを取りまとめたものです。保育のプロセスの質評価の検討の必要性や、3要領・指針において、いまだそれぞれに十分でない概念があるのではないかといった御意見。また、共生社会の視点を更に入れていくことや、研修のネットワーク、語り合いの重要性など様々な御意見をいただきました。
 そして、本日は、参考資料3の76ページから御覧いただければと思います。前回も幼保小の架け橋プログラムの概要について御説明をさせていただきました。本日は、その続きとして、資料76ページから架け橋期のカリキュラムについて、モデル自治体の中から滋賀県と高知県と秋田県大館市のカリキュラムを紹介させていただきます。
 まず、こちらは滋賀県の架け橋期のカリキュラムです。滋賀県におかれては、画面中央に映っています共通シートと、画面右側の実践記録の2枚のシートについて開発が進められているところです。
 共通シートは、こちらの左側から御覧いただきたいんですけれども、左側に示されているとおり、期待する子ども像、期待する子ども像に関連がある幼児期の終わりまでに育ってほしい姿、そして、期待する子ども像に迫るために大切にしたいこと、環境と単元や、先生の関わりなどの視点から作成がなされています。そして、これらの共通の視点で理解をしながら、互いに実践をし、互いに振り返って、保育・教育の質向上を図っていくことを目指して取り組まれています。共通シートの下の欄に、実践を振り返るための振り返り枠が設けられておりまして、この振り返り枠の設定により、そこから保育・授業を改めてデザインをし、実践し、振り返るというサイクルを促進していくこととされております。
 そして次に、高知県になります。小学校区の園と小学校が集まり、校区内の子供の現状を共有し、そこからめざす子供像を検討されています。めざす子供像は、これまでのコミュニティスクールの取組により策定されていた子供像を基に、チャレンジ精神、自尊感情、コミュニケーション力、郷土愛が選定されています。
 実際にこちらがカリキュラムになっております。左側になりますけれども、めざす子供の姿や、予想される活動、遊びや学びのプロセスで大切にしたい経験、指導上の配慮事項などの視点から作成されています。中央の欄の遊びや学びのプロセスで大切にしたい経験を御覧いただきたいと思いますが、こちらでは「探究」をキーワードに、それぞれの施設での遊びの内容が異なっていたとしても、共通して育みたい資質・能力が記載をなされています。また、ここでの大切にしたい経験に関しては事例集も作成されており、資質・能力を育む園における実践の参考資料も提供がなされているところです。こちらが5歳児のカリキュラムで、こちらが小学校1年生時のカリキュラムとなっております。
 次に、大館市の御紹介をさせていただきます。大館市におかれては、大館市が、市の共通版架け橋カリキュラムを作成し、示しております。市内のどの園・小学校においても、発達に必要な経験、生活や保育・授業が保障されることを目指して作成されています。カリキュラムの左側になりますが、大館市さんでは、ねらい、身に付けたい資質・能力、交流活動、環境の構成・援助のポイント、家庭との連携の視点から作成がされています。幼児期に育みたい3つの資質・能力については、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関係も示されています。小学校への適応を急ぐのではなくて、就学前の学びや体験の延長線上に発達の特性に応じた学びを積み上げていくことを目指して作成がなされています。こちらが幼児教育版で、こちらが小学校版ということになっています。
 そして、市の共通版カリキュラムを基に、小学校区で作成されたカリキュラムの事例がこちらになっております。御参考として掲載させていただいております。
 本日、3つの自治体の例を簡潔に御紹介させていただきましたが、いずれのカリキュラムも飽くまで作成途中の段階のものとなっております。他のモデル地域も含めて現在、改善がなされながら取組が進められているところです。来年度にはモデル事業の最終年度として、一旦事業としての成果を発表させていただく予定です。
 資料の62ページなりますが、手引きを紹介させていただいております。手引きではフェーズ1からフェーズ4まで分けて、できるところから始められるようお示しをしておりますので、モデル地域の成果報告と一緒に参考にしていただきながら、他の地域においても架け橋プログラムに取り組んでいただけるよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。
 最後に、本年度取り組んでおります文科省の幼児期及び幼保小接続期の教育の理解促進事業について御紹介をさせていただきます。この事業は、1番の事業の趣旨にありますとおり、昨年2月に取りまとめられました架け橋特別委員会の審議まとめを踏まえて取り組んでいる事業となります。具体的には、2番の取組の内容のところにありますが、2つのものを作成しています。1つは、幼児教育及び小学校教育との接続について相互の理解を促進するための資料、2つ目は、幼児教育の特性や重要性などについて家庭や地域などの理解を高めるための動画でございます。
 本日はまだ完成に至っていないため資料に入れることはできなかったんですが、丸1に関して、画面共有のみとなりますが、簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。
 大きく3つのパートから作成をしておりまして、まず画面左側から御覧いただきたいと思います。こちらは算数の例ですが、全教科で作成することとしております。どの教科においても、幼児教育と小学校教育の先生がペアになりまして、まずそれぞれ担当者からのメッセージとして、小学校の先生には幼児教育の先生たちに向けて、算数はこんな教科ですよというようなメッセージ、そして、幼児教育の先生からは小学校の先生たちに向けて、幼児期には遊びを通してこんな体験をしていますよということを書いていただいています。
 そして、次のページが画面中央になりますが、幼児期の遊びを通した学びでは、実際にどのような遊びが幼児教育施設で行われているのか。その遊びの中でどのような学びがあるのか。そして、それらはどのような姿として現れ、どのような資質・能力の育成につながっているのかといったところを示しています。
 そしてさらに、次のページが画面右側になります。それぞれの幼児期の体験や育まれた資質・能力を生かしながら、実際に小学校の教科・単元においてどのように授業を展開していったらいいかという例をお示ししています。幼保小の要領や解説におきましては、幼児教育側は小学校教育を見通す、小学校教育側は幼児期の成果を踏まえるといったことが求められておりますけれども、本資料はそのつながりを実際に可視化した参考資料であり、幼保小の相互理解や幼保小の接続を図ることの意義を理解していただくことの一助になるものであると考えております。
 特に幼児教育の遊びを通した学びということについて、小学校教育における学びと結び付けながら見える化を図るというのは、遊びを通して学ぶという幼児教育が大切にしている特性そのものの理解につながると考えておりますし、また、そのような教育方法で子供の学びを支えている幼児教育の先生方への理解にもつながっていくものであると考えております。動画につきましても、完成をしましたら御紹介をさせていただければと考えております。
 事務局からの説明は以上となります。
【無藤座長】  ありがとうございました。最初の方のモデル地域は、御存じのように19自治体の中から選んでいただいたわけですけれど、それらは現在この年度が2年目ですけれど、それが終わったところでそれぞれに公開されていくと思います。それから、広報資料については、今御紹介いただいたことで、多分4月早々にでも世の中に出ていくということで、研修等にお使いいただけると聞いております。
 それでは、本日の次第ですけれども、3名の委員の皆様方に御発表をお願いしたいと思います。お一人5分程度、短い時間で恐縮ですけれども、まず、田中委員から御発表をお願いいたします。
【田中委員】  失礼いたします。そうしましたら、画面の共有をさせていただきます。
 5分程度ということで、早口になるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。私の方からは、神戸大の附属幼稚園で文部科学省の研究開発学校等の取組で、幼小の接続を指向してカリキュラム研究にずっと取り組んできた過程の中で見えてきたこと、その見えてきたことを地域の先生たちと共有しながら研修に取り組んで、先生たちからいただいている感想も含めて提案させていただきたいと思っています。
 平成12年度からは一貫して子供の自立に基づく学びを基にしたカリキュラム開発を継続してきています。平成12年度から14年度は、子供の学びを幼小中の教師で見取って、どういう学びが学校・園においてあるのかというのをずっと見取って、学びの一覧表で、子供の学びがどんなふうに積み上がっていくのかというふうなものを作っていったような取組をしました。
 平成22年からの取組は、5領域に代わる何か、その当時は分野という言葉を使っていましたが、そういうものを見いだすことができないかということで、その前の研究開発の続きで、子供の学びから見いだした詳細な観点ごとに、子供の学びの道筋をねらいの道筋としてお示しして、10視点カリキュラムを提案させていただきました。そのときには、日本の幼児教育現場においても実現可能な様々なドキュメンテーションの取組も含めて提案させていただいたと思います。
 そこを発展させて、その詳細な観点に基づいたカリキュラムを資質・能力のフィルターを通してもう1回見直したという作業を幼小で行いました。平成25年から7年間かけて資質・能力のカリキュラムを開発して、保育者の資質向上と保護者の幼児教育への理解促進を同時に実現する仕組みも併せて提案させていただいたと思います。それは現在も引き続き取り組んでいまして、幼児教育現場において子供の学びを見取る観点としても、ねらいの観点としても使いやすく、また、小学校の先生方にとっても理解しやすい詳細な資質・能力の観点を整理していきたいということで実践記録を集積して検討を重ねている最中です。
 こちらが本校・園で見いだしている資質・能力の観点なんですが、文部科学省から示されている三つの資質・能力と親和性の非常に高いものが多くあります。横並びには示しています。ただ、表現力については、本園が見いだしている資質・能力では、固有的資質・能力とか知性につながる資質・能力ということで表わしていますけれども、そういったものに位置付いていて、相違点もやっぱり見られます。ここら辺りをもう一度整理しながら、新たなねらいの枠組みを提案できればということを考えています。
 親和性が高いんだけれども、やっぱり違っているもの。文科省の示しているものともう1回整理し直すことができれば、先生方にとってもより使っていただきやすくなるのではないのかなということを思っています。ただ、実際に使っていただいているということはこれまでもあります。
 次のものになりますけれども、様々、今、1から6までいろいろな形のものをお示ししていますが、研究開発の過程で見いだした様々な知見をいろいろな形で地域の先生方に使っていただいています。その中で、使っていただきながらその使い勝手みたいなものの御意見もいただいているんですが、丸ごと使っていただいていくというよりは、この中の例えば一番取っ付きやすいのが、2番目の指導案のフォーマットを工夫することで、教師が資質・能力の育ちを自覚的に援助する環境の構成を具体的に構想するということにつながるような書き方みたいなものが、一番取っ付きやすくて使っていただいている範囲が広いかと思います。
 そのほか、これは尼崎市なんかがかなりうちの資質・能力の観点を使って尼崎市の教育研究を進めるということを今年度まで引き続いて4年ほどされていて、今年発表されていますけれども、そこでも細かな観点があることのよさをかなり実感されているような御意見をいただいています。ほかの地域の先生方がうちの園にやって来て、うちの園でやっているカリキュラムのマネジメントの過程を体験していただいて一緒に学んでいきたいという取組もずっと継続して行っています。平成14年度から参加型の研修会を行っているんですけれども、平成28年度までは10視点カリキュラム、平成29年度には10の姿を使って、それから、平成30年度からは、先ほどお示しした資質・能力カリキュラムを使って研修をしています。
 総合的に指導するということを言うんですけれども、様々な観点から学びを捉えられるということが総合的な指導をするために必要だな、不可欠だなと思います。そのためにはやはり詳細な観点があることがすごく有効に働いて、1つの場面を見ても、この観点からの学びはこうだ、この観点からの学びはこうだということをかなり細かく見ておられるんですね。だから、そこで細かな観点が非常に有効だなということを思っています。
 これは保育を参観した後、学びのカードを記録していただくんですが、このときも、事実と解釈をしっかり分けて、きちんと子供の事実に基づいてカリキュラムの改善をするんだよということを研修の中でやっていただいています。地域に持って帰っていただくためのいろいろな研修を深めるための道具なんかも提案しながら行っているような取組です。
 グループ協議の方法も提示して、思い込みとか先入観で保育を語るということはしないで、きちんと事実に基づいてカリキュラムのマネジメントをする。そこで見いだした知見を次のカリキュラムに生かすということの一連の取組を体験的に経験していただくということをしています。
 これが今の参加型の研修会の一番新しいところのアンケートの結果です。非常に肯定的に受け止めてくださっていて、特に今日は資質・能力の観点が詳細で明確にあることのよさを提案したいと思いますので、今少し色を付けているところの具体的な記述を次の資料に提示しています。
 詳細になることで、今の幼児の育ちに応じた必要な援助や環境の構成をより具体的に考える手だてとなるだとか、教師の意識できていなかった資質・能力があることに気付き、教師の資質向上につながり、保育の充実につながるとか、すみません、黄色いところだけ読んでいますが、どのような資質・能力が育っているのか考えたり話し合ったりしやすいと感じた。それから、10の姿をより具体的に考えたり、小学校や保護者への保育の可視化、連携にも分かりやすくよいと思った。より具体的に子供の学びを考えることにつながり、今日だけでも幼児理解が深まったと感じた。資質・能力が詳細で分かりやすいので、保育のねらいをピンポイントに定められる。ねらいに対しての環境構成、援助配慮がより深く丁寧に設定することができる。職員同士で何を育てたいのか、今は何が必要なのかを共通理解する上で詳細に分けてあると分かりやすい。このような意見をいただいています。
 ただ、これもよくあるんですが、一番下の水色のところ、「ただ覚えるのが大変なのかな?」は、もう率直な御意見だと思います。これもよくいただくんですが、実は3要領・指針のねらい・内容の数と比べていただくと決して多くはないんです。恐らく内容の数で考えると53でしたっけね、ねらいが3つずつあって15で示されていますが、内容は53ほどあるので、そこら辺り本当はしっかりと自分のものにして保育をするということが望まれると思うんですが、それに比較すると決して多いわけではないということです。しかもタグが付いていて、こういう資質・能力ですよということのネーミングが付けてあるので、覚えやすんじゃないかなということを、実際、長年継続して使っていただくとそういう印象も受けています。
 そういった取組で提案したいこととしては、資質・能力を育むという考え方になっている今となっては、子供の学びを見取る観点も、それから、ねらいの観点も全て資質・能力の観点に統一することがより理解しやすくなるのではないかなと考えています。3つの資質・能力の大きな枠組みはそのままに、その大きな枠組みの中の更に詳細な資質・能力の観点から要領とか指針の流れを整理して、明確に示していくということを提案したいと思います。これは中身を触ると決して5領域とそんなに大きな違いはないような気もするんですが、そこの整理のし直しをすることでより資質・能力への意識が高まるんじゃないのかなということを思います。
 こういうことをしていくといろいろな効果があるだろうなと思うのが、幼児教育において更に資質・能力の考え方が浸透するだろう、それから、遊びや生活の中で資質・能力が豊かに発揮・伸長されていることをより分かりやすく発信しやすくもなるだろうと思います。小学校においても資質・能力の3観点で評価されていますので、小学校の教師にも幼児教育が理解しやすくなると思いますし、幼小における子供の学びの見取り方とか指導方法なんかの相互理解の深化が図れるんじゃないかと思います。
 本園としても、地域の先生方、使ってくださっている先生たちと共に本園において見いだしている資質・能力をより精緻に検討することを続けて、より幼児教育において育みたい資質・能力を明らかにしていく方向で研究を継続したいと考えています。
 これは蛇足にはなるかもしれませんが、3要領・指針と小学校学習指導要領の用語についても、用語が同じで同じ意味に使うようにすると変な誤解がなくなるだろうなということも思っています。幼児教育独自のものはやっぱり別の用語に置き換えて使っていくことで、幼児教育と小学校教育でのカリキュラム作りにおいても、言葉の認識でずれが起こっていて相互理解を妨げているようなことを防げるのではないかなということを感じます。例えば、「内容」という言葉が、幼児教育の内容と小学校教育の内容とやっぱり意味合いとしては違って中身はあると思いますので、こういったものが同じ用語で使われることで、「内容」という言葉を使って想起しているものが別々のものを想起しているということが起こっているんじゃないかということを思います。
 最後に、ここに具体的ないろいろなものを公開していますので、またお時間があったらのぞいていただけたらと思います。
 すみません、早口で申し訳ないです。以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。それでは、お二人目、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】  おはようございます。國學院大学の田村です。画面の共有をいたします。
 では、始めたいと思います。皆さん、こんにちは。幼児期の教育に学ぶ、とりわけつなぐということで考えていきたいと思います。
 今回の学習指導要領等の教育課程の基準の改訂は、幼、そして小、そして中学校、高等学校と連続するものとして整理がされてきました。まずは教育課程についてですが、どちらも3つの柱でつながるように整理がされてきたということになるかと思います。その意味では、幼稚園教育要領と小学校学習指導要領を見てみますと、それぞれには接続についての記載がなされていて、小学校学習指導要領では、生活科を例に挙げましたけれども、各教科の中で入学直後のということが示されているということです。その意味ではかなり整備されてきているということが言えるかと思います。
 とりわけ、総則のところを抜き出してみると、2の4の(1)に幼児期の終わりまでに育ってほしい姿、低学年教育、入学当初といったことが明示されています。生活科を例に挙げますけれども、他教科との関連を図りということで、先ほどの総則とつながる形で、とりわけ入学直後のことも記載されており、こういった記述についてはほかの教科も同じように整理がされているということになります。
 その意味では、先ほど話題にありました架け橋プログラム、学校の1年生に至る5歳児と1年生の架け橋期のカリキュラムの作成の中では、視点に置いてカリキュラムを作っていこうということが示され、各地域においてはまずはこの2つ辺りをメインにしながら整理していただいているという事例が紹介されたのではないかと思います。
 実際に全国の19自治体全てを見ているわけではありませんが、参加させていただきながら感じることは、とりわけ幼児期においては子供像といったことがメインに語られ、小学校においては資質・能力といったことが示されている。先ほどの田中先生の御提案は、幼児期においても資質・能力を明示することの意味や価値を御提案いただいたのではないかと思います。
 この両者は共通するものではあるものの、やや言語としては共通性が欠けるために、なかなか会話がかみ合わないようなこともあるような気がします。ですので、例えば10の姿は、架け橋プログラムの整理の中では、終わりまでに育ってほしい姿は、資質・能力が育まれている具体的な姿であるとしているところから考えるならば、やはり3つの資質・能力との関係を明確にしていく。例えば自立心であれば、こういった形で整理することも可能ではないかということかと思います。つまり、自立心の中には、3つの資質・能力がある程度整理もつくのではないかということです。こういうことができることによって、これまで以上に幼児期と小学校のつながりが分かりやすくなっていくのではないかということです。
 現在の幼稚園教育要領は、10の姿に加えて、ねらいあるいはそれぞれの具体的な内容が示されていますが、もう少し3つの柱に整理をしていくことも可能ではないかということです。併せて、幼児教育とのつながりを考えたときに、まず学習活動は、恐らく一般的には体験を通して思考し、プロダクトとしての気付きが得られると、こんなプロセスを経由し、そこで得られた手応えは次なる学びを生むと、こんなふうになっているかと思います。
 現在、低学年の生活科の学習指導要領の内容の記載は、およそこのプロセスをベースに整理がされているということになっています。そう考えると、この3つの資質・能力の記載についてはいろいろな方法があるかと思いますけれども、一定程度一体となるようにして3つを明示するということも考え得るのではないかと思います。生活科の内容の記述に当たっては、まさにこの低学年の学びのプロセスといったものを意識し、意図的に現在整備をしてきてあると理解しています。
 その点から考えるならば、まさに幼児期の学びでは遊びなどのプロセスに価値があり、恐らく言葉と体験が小学校以降はクローズアップされてくる。幼児期では恐らく体験が重点的に行われるということになるかと思いますので、最初の回にも申し上げたのですが、とりわけ幼児期においては体験なるものの再認識といいますか、ただ体験をすればいいということではなくて、誰とするのか、いつするのか、どのようにするのかということを更に整理すると、小学校以降にも連動するのかなと考えたところです。
 更に申し上げますと、幼児期の皆さんの評価は非常に丁寧に行われていると私は思います。今回の学習指導要領や教育課程の基準の改訂は、とりわけこれまで以上に見えにくいものを見取ることが求められていると考えると、やはり幼児期に学ぶことが必要ではないでしょうか。私が文部科学省で働いていたときの前任の調査官をしていた嶋野道弘先生は評価の方法を教えてくれました。恐らく幼児期の皆さんはこういったことを丁寧に行っている。そこに先ほどの資質・能力なる育成するものがクリアにイメージできれば、更に有効に機能していく可能性があるのではないかと考えるところであります。
 これまで幼と小の連携接続に関しては、スタートカリキュラムということで、平成20年の改訂で初めてその言葉が示され、国立教育政策研究所からは27年に資料が出、今回の指導要領改訂の中でも資料が明示されているところです。次の学習指導要領と教育課程の基準の見直しの中で、幼稚園教育要領や保育所保育指針等がどのような方向性になっていくかということを資質・能力の3つの柱との関係で少し整理がなされていくことが行われると、幼児期の子供たちから18歳までが連続したものとして整理されるのではないかと考えます。
 私からは以上です。大変ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。それでは、お三人目で、奈須委員、お願いいたします。
【奈須座長代理】  よろしくお願いします。上智大学の奈須です。
 私からは3点申し上げたいと思います。少し理論的な話になりますが、1点目は、田中委員、田村委員も指摘されたように、資質・能力が全ての教育段階を貫く学力論と位置付けられたことで幼小の接続の内実が明確になってきたわけですけれども、歴史的な経緯を確認すると2つ更に重要なことが見えてくるかと思います。
 一つ目は、1970年代に、人生の成功と当時言いましたが、今日的に言えばウェルビーイングを予測する要因を検討する中で、幼児教育が重視してきた非認知能力の果たす役割が大きいことが明らかとなって、それらも含めて学力論の再構成がなされたということです。
 それから、もう一つは、そもそも資質・能力、コンピテンツとかコンピテンシーですが、その概念自体が、進んで環境に働きかけ、環境との相互作用を通して学び育つという乳幼児の発達のメカニズム研究から実は出てきたということです。そこでは、知るということは、対象の特質に応じた適切な関わり方が現にできるということであり、個別具体的な対象について知る、つまり、関われるということを通して、汎用性のある関わり方が洗練されてくると。今、コンピテンシーと言われているものはまさにこの辺りから出てきているということかと思います。小学校以降にもこういった考え方が展開することで、幼小の接続はもとより、学校における学びの在り方それ自身も変わっていくということが期待されるかと思います。
 2点目ですが、令和答申で提起された個別最適な学びに関わってです。それ自体は新しいものではなくて、100年以上にわたり膨大な実践資産が我が国にも蓄積されています。実践の様子としては例えばこんな姿になってくるわけですけれども、理論的な研究も大正12(1923)年刊行の木下竹次の『学習原論』以来数多くなされていて、そこでは、学習指導の原理が環境を通して行う教育であるということ、その基底には、全ての子供は生まれながらにして有能な学び手であるという、幼児教育が大切にしてきた子供理解が不可欠であるということも繰り返し指摘されてきたかと思います。個別最適な学びの拡充に伴い、小学校以降においても、従来の教師が教える授業、教育に加えて、環境を通して行う教育がレパートリーとなる。教育方法、そして、子供観において幼小の接続がスムーズになるということが期待できるかなと思っています。
 ただ、このような取組に際して、小学校以降では教科ごと、単元ごとにゼロから学習環境を構築するということがあって、イニシャルコストの高さがネックになっていました。3点目はこのことに関わってきます。GIGAスクール構想に伴うデジタル学習基盤の充実が、学習環境整備の省力化と高度化を推進してくれています。
 情報技術が学校教育のパラダイムシフトをもたらすという議論としては、例えば1990年、ロバート・ブランソンが図のようなモデルを提起しています。左の過去のパラダイムというのは、教師による一方的な教え込みで、こんな授業はもう今ではなされていません。今実践されている授業は、真ん中の現在のパラダイムに基づいていて、教師と生徒、生徒と生徒の間で豊かな相互作用があります。ただ、図の下半分がいくら改善されても、上半分は過去のモデルからほとんど変わっていません。学びの対象である経験や知識へのアクセスは常に教師を介して行うよう制約されることが多いかと思います。右側の未来のモデルとされた情報技術パラダイムではこの点が大きく改善され、知識データベースやエキスパートシステム、今日的には1人1台端末ですけれども、それを介して生徒はその瞬間に自分が求める経験や知識に自由にアクセスすることができます。また、自立的・個性的に学ぶ子供同士が声を掛け合い、協働的な学びも自発的に豊かに生じていきます。
 注目したいのは、この図の中央の部分をデジタルにとどめることなく、学習環境全般と考えれば、そのまま実は一般的な幼児教育のモデルになるだろうということです。最近デジタル学習基盤に関わって、対面・非同期ということがよく言われます。教師も子供も教室に集っているんですけれども、子供一人一人が自分で時間を刻み、学びを生み出していくということです。デジタルではこの対面・非同期が基本になり、それを表したのがさきの情報技術パラダイムになります。
 幼児教育の環境を通して行う教育というのも、多くの場合、対面・非同期、そして子供がその瞬間に必要なものに自分の側からアクセスするという構造になっているんじゃないかと思うんです。GIGAスクール構想に伴うデジタル学習基盤の拡充が、子供観の転換、そして授業のパラダイムシフトを推進し、幼小間、更にそれ以降の滑らかな接続がもたらされることに大いに貢献する可能性があるということを何か注目したいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございました。極めて簡潔にまとめていただいて、ありがとうございます。3人の委員から様々な視点をいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、残りの時間が80分弱あると思いますので、その時間で意見交換と質疑を行いたいと思います。毎回で恐縮ですけれども、できる限り多くの皆様方から御意見をいただくために、お一人1回当たり3分程度ということでの御発言をよろしくお願いいたします。そして、やり方もいつもと同じですけれど、手を挙げるボタンを押していただいて、その順番ということで、大勢いらっしゃいますので、多分私が気付かない場合には、事務局の方から御指摘ください。多分、私の予想としては、十分全員に御発言いただけるはずなので、いずれどこかで手を挙げていただければいいんですけれども、順番は適宜ですので、どうかどなたかまず挙手していただけますか。お三人のどの論点でも、あるいはお三人の委員全部についてでも何でも結構です。よろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。どうぞ遠慮なさらずに。時間がもったいない。出してください。
 岸野委員、手を挙げていただきましたか。お願いします。
【岸野委員】  すみません、時間も限られているので、先にお話しさせていただきます。3人の先生方、本当にありがとうございました。3つの報告を通して改めて考えたことを大きく二つ申し上げたいと思います。
 まず、資質・能力、10の姿と、架け橋期のカリキュラムに関してです。子供の学びを見取る観点もねらいの観点も資質・能力をベースに捉えていくという田中先生の御提案に大変共感をしました。そして、田村先生がおっしゃったように、10の姿の中に資質・能力の3つの柱が埋め込まれているということも大変重要な論点だと思いました。
 しかし、研修などではいまだになかなかその関係性が理解されていないということも感じています。単に遊びの中で10の姿が見られたとか、あったとか、よく考えていてよかったねというようなだけで、中身に踏み込んで議論されていないということも時折あるように思います。心を動かして粘り強く挑戦していく。その過程で感じたり、気付いたり、分かったりする。また、試し、工夫し、考えたりするのが、何について、どういうことについて、どのように行われているのか、内容、コンテンツに踏み込んで考えていくということが重要だと思います。それが架け橋期のカリキュラムにもつながり、園と小学校とで何がどのようにつながって育っていくのかということを示すことにもつながるのではないかと思います。
 授業研究会などで時折、教科としての学びはどうなのかといったことが議論されることがありますが、それが時に教科の本質的な学びのことではなく、この教科ではこのことを押さえなければならないのにできていないといったような、ある意味狭い意味で言われることもあるように思います。5領域や教科の狭い意味での枠を超えて、子供の認識の育ちのつながりが見えるようになるということがカリキュラムにおいても大事ではないかなと改めて思いました。
 2つ目に、奈須先生がおっしゃったような、教える教育から環境を通した教育へという点についてです。ある意味では、私も教科書や授業で使う道具、黒板なども環境の1つで、本来、幼児教育だけでなく、小中学校等も環境を通した教育が行われているのだと思います。しかし、あまりその意味がコストのこともあって考えられることなく、所与のものとして扱われてきたということが問題だと思います。教科書を基にその単元で何をどう指導するかということに焦点が当てられて、その単元計画に沿って1時間ごとのねらいとか目当てが設定されて、それらが達成できたかどうかという評価がなされていくことが多いように思います。
 本来、評価とは、先ほどもおっしゃっていたように、できた・できないというのではなく、そこで子供がどう心を動かして何をどう考えたのか、そのプロセスの見取りそのもののはずであり、それに合わせて授業を再構成していくということが求められると思います。その意味ではしばしばPDCAサイクルといったことが援用されて議論されますが、緻密な計画を立てて、それができているかをチェックするというのではなくて、むしろAARサイクルのような進化可能なデザインの見通しの下で、やってみたことを省察して再構成していくということが重要ではないかと思います。
 以前に単元計画を幼小で一緒に作るというところに参加したことがあるんですが、小学校の先生が園の先生に、「園では、『さあ、今から秋の遊びをしましょう』というふうに言わなくても、自然に始まりますよね。どうやって始まるんですか」というふうに尋ねて、園の先生方がその遊びのプロセスとか環境構成について話をしてくださって共有したということもあります。教育の転換が起こっていくには、こういった園と小学校での協働が進んでいくということもこれからは必要ではないかなと感じました。
 早口ですが、以上です。ありがとうございます。
【無藤座長】  ありがとうございます。もっと議論すべき大事な論点になると思います。お三人とも共通の部分ですが、幼保と小をつなぐものとしての資質・能力と同時に、保育内容、教育内容があって、それは別々ではなくて、組み合っていくようなものであると。御指摘があったように、10の姿にも当然、10の姿は5領域をベースにしていますけれど、その中にも資質・能力というのは既に組み込まれているものなんだという御指摘。
 もう1つは、環境を通してというものは、教科書の1ページ1ページに沿っていくというよりは、教科書はもちろん環境の1つですけれど、それを通して単元の流れの中で子供たちの学びのプロセスをどう生かしていくか、誘っていくかという流れ。そこに幼児教育の考えが多分あるんですけれども、小学校もそこに通ずるだろうという御指摘というふうに整理してみました。ありがとうございます。
 それでは、若山委員、お願いします。
【若山委員】  よろしくお願いします。富山大の若山です。それぞれの先生方のお話を聞いて考えたことをお伝えしたいと思います。
 まず、田中委員の御発表にあった資質・能力の定義を見させていただいて、委員のスライド9ページの感想の中でもちょっと読んでおられましたけれども、そこにもあったように、教師の意識できていなかった資質・能力があることに気が付けるよいものだと感じました。また、キーワードもよく練られて考えられて設定されているように読めました。恐らくこの資質・能力を定義するに当たっては、きっと園の先生方や小学校の先生方が、子供たちの園や学校での生活する姿とか心の動き、あと、頭の使い方というところまでしっかりと季節を通じて捉えて、誰かの言葉ではなく先生方の言葉で子供の姿や育ちを表す言葉を探して作ってこられたのだなと思いました。また、それらを先生方で話し合って共有してこられたというのもポイントなのかと思います。カリキュラムや指導計画というのは、そういうふうに丁寧な言語化と先生方の協働によって出来てくるものだと思うので、それがとてもよく伝わる内容だと勉強になりました。
 続いて、田村委員の御発表からは、乳幼児教育の専門家と小学校の専門家は、接続期のカリキュラムや指導計画の書き方を身に付けておくことが必要な専門家の方なのだと改めて考えさせられました。特に指導計画に関しては、何をねらいとするのかとか、指導過程はどうデザインするかとか、どんな理念で環境を構成するかとか、子供のどんな部分を配慮点とするのか、どんな導入をするか、教材を選ぶかとか、そこで10の姿を指導計画のどこでどう扱っていけばいいのかなと、特に養成課程から具体的な接続期指導計画の書き方を身に付けておくことが必要なのではないかと改めて感じました。また、田中先生の御発表と併せて考えても、3要領・指針の中に接続に当たっての留意事項の項があると思うんですが、そこで接続期のカリキュラムや指導計画に関する文言がもう少し加えられてもいいのではないかなと感じました。
 最後の奈須委員の御発表からは、環境を通して行う教育という方法論を小学校と共有していくことができるということを御指摘いただいたと理解しました。資質・能力の考え方は、今でも小学校と十分共有できているということがこの会議でも分かってきたと思うので、今後は教育の方法に更につながりを持たせていく視点が大事なんだということを学ばせていただきました。
 以前、自分の研究で恐縮ですが、年長児の造形遊びと小学校1年生の図工の授業を継続して観察し、そこでの学びの変化を記述する研究を行ったことがあります。年長児の頃は、製作コーナーでその2名はお互いに教え合いながら、それぞれ分担しながら協働的に作るということをしていました。小学校の図工になると、今度は教師が絵の描き方を教える場面で、その2名は不思議なことに、絵が得意な子、苦手な子という自己意識を自分で持つようになっていきました。幼児期の製作コーナーと小学校での図工でのその2人の関係は、数週しかたっていないんですが、随分変化したと記憶しています。ですので、教育の方法論が幼小で共有されていくということで、子供たちは幼児期のスタイルを維持したまま、表現における自己発揮を十分していけるのではないかと感じています。
 以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございました。お三人の委員のそれぞれに対するコメントと、そこでの論点を明確化していただいたと思います。最初については、保育者・教師自身が子供の姿を捉えながらカリキュラムを作っていくということ、そこにどう資質・能力を広げ、深めていくかということの御指摘と理解しました。
 2番目は、接続期につながるような指導計画を作るためには、例えば留意事項等でもう少しそこのヒントというんでしょうか、示唆があった方がいいという、極めて具体的なポイントだと思います。
 3番目は、環境を通してということで、例えば幼稚園の造形と小学校の図工に連続的なつながりがあるということ。多分そこには、小学校の場合には教科書が主たる教材として環境の中でも重みを持つんでしょうから、幼児とは違う部分があるんですけれども、あるいはいわゆる小学校の授業時間は制約が強いですけれど、幼稚園・保育園は比較的緩やかですから、そういうことを考慮しながらどうつないでいくかをもうちょっと検討するということになろうと理解しました。
 それでは、次の挙手、渡邉委員ですね。お願いします。
【渡邉委員】  すみません、途中退室するので、先に話をさせていただきます。私の話はいつもまとまってないんですけれども、申し訳ありません。
 3人のお話を聞きながら一番印象に残ったのは、奈須先生の7ページ目にある、乳幼児の発達研究から生まれたというところで、「乳幼児は進んで環境に働き掛け、環境との相互作用を通して学び育つ」と書いてあって、これが中心に来なければ駄目だと思っています。そこに1)とか2)と書いてあって、「環境内の人・もの・ことに能動的に関ろうとする生得的な動機付け的エネルギー要因」、これが僕は5歳の子供に、今、失われつつあるという危機感を持っています。遊び出せない子供とか、遊ばない子供とか、人と関わらない子供とかというところが結構問題だと思っています。
 田村先生が、生活科は、体験を通してそこで思考が起こって次に気付きが起こる、そのサイクルを回すということを話されました。体験ができて、そこで思考が起こって、気付きが起こるというようなことを生活科で本当にやろうとするなら、幼児教育の段階で本当に何をやればいいのかということを考えなければなりません。田村先生の、見えにくいものを見取るという話でも、幼児教育では主体性を引き出すためには子供たちのことをケアしてあげたりすることが大事だし、それから、こども家庭庁で出されたこども大綱の中の「安心」と「挑戦」というサイクルでいえば、安心して挑戦していっていいんだということを保育者が見取るというようなことを、どう幼児教育の中で作っていくかも大事だと思っています。
 田中委員の話もすごく大事な視点だと思います。僕は遊び通して学ぶということは、丁寧に資質・能力に関わるということを明らかにしていくこととてもいいと思っています。ただ、発達が連続しているという見方だけでなく、本当にその子に丁寧に関わったり何か出来事が起こったり、また新たな環境との出会いがあって、その子が急に活動的になったりとか、資質・能力を伸ばしていこうとしても、保育者側というのか幼児教育側は、様々な形の中でいろいろな状況の中で、その子が本当に生き生きするのはどのようなかかわりや環境があってのことかというようなことを考えていく必要があると思っています。それが本当は幼児教育の根底の考え方だと思います。「環境を通して学ぶ」という学び方は、奈須先生の言葉だと、学び方の在り方を変えようとか、学力論を変えようということになるのですが、、従来の学び方ではなく本当に一人一人の子供たちが学んでいくとか、その子が本当に生き生きと個別最適な学びというものをきちんと保障していく。さらにお互いに学び合うような協働的な学びになっていく、その基本の枠組みは幼児教育にあるんだというところまで議論を深められたらいいなと思って、三人の発表を聞かせていただきました。
 私の発言は以上になります。
【無藤座長】  ありがとうございました。極めて本質的な部分なんですけれども、幼児教育でも小学校教育でも環境というものが重要だというときに、その環境というのは何を具体的には指しているかとか、そこで子供が環境と相互作用するとして、多分幼児教育の場合には、環境からの、言わば素材を子供自身が作り変えるとか作り出していくという過程がかなり強調されるでしょうし、小学校の場合にももちろんそういうのはあるでしょうけれども、環境自体を構造化して把握するという面が出てくるでしょうし、そこら辺の整理というんでしょうかね、田村委員の言い方で言えば、環境で体験することと、それを言葉に表すことの関係ということになるんでしょうか。非常に重要なポイントだと思いました。ありがとうございます。
 それでは、次の挙手の方はいかがですか。まだ手が挙がっていないですか。
【横田幼児教育企画官】  それでは、もし出席いただいている先生方から今手が挙がっていらっしゃらないようでしたら、本日出張で御欠席の秋田先生からコメントをいただいておりますので、三人の先生方に御質問、御意見いただいておりますので、御紹介させていただきます。
 3名の先生が共に、資質・能力により幼児教育とその後の教育をつなぐことを明確に示してくださっていると思いました。
 まず、田中先生にです。3つの資質・能力を軸にどのようにつながるのかを長年の実践の積み重ねを通して明らかにされている点に感銘を受けました。実質能力ベースで考えるときに、カリキュラムの内容として、経験してもらいたい内容のつながり、すなわち、5領域と小学校の教科は1対1対応ではないわけですが、子供に経験してもらいたい内容のつながりはどのように考えたらよいかについてより詳しく伺いたいです。
 次に、田村先生です。田村先生には、園生活の活動から生活へのつながりを示すとともに、主体的・対話的で深い学びにおける学習プロセスが幼児期から児童期とつながること、言葉と体験の大切さを示してくださることで、小学校の先生にも理解しやすい表現をお示してくださっています。そのときに、田中先生への質問とも関わりますが、生活科のみならず、幼児期の体験を生活科以外の教科にもつなぐことをどのように説明をしたらよいでしょうか。生活科との接続はこれまでずっと強調してきたところですが、架け橋期に全ての教科等へとつなぐという発想で考えるとすると、カリキュラムとしてどう考えたらよいのかについてお考えを伺ってみたいですというコメントです。
 そして最後に、奈須先生に対してです。環境を通して行う教育において幼小接続をすることが、小学校以降でも令和の時代に求められる個別最適な学び、同期型から非同期・分散型へとつながることを示してくださったことで、小学校の教育もまたこれからの教育へと変わっていく必要性があることも含めて示してくださっておられます。日本の幼児教育の基本理念である環境を通しての教育を示してくださることで、幼児教育も小学校教育においても説得的になると感じました。環境の構成とともに、幼児教育では環境の構成から再構成へと遊びの展開とともに教師が再構成するだけではなく、子供と共に協働再構成あるいは子供が再構成していくところに遊びの深まりが生まれると私は考えています。先生が考えられる環境を通しての教育における環境の考え方や環境の3構成を小学校ではどのように考えるとよいか、幼小のつながりがより分かりやすくなるかという点で詳しく伺ってみたいです。
 それぞれ3名の先生に御意見、御質問をいただきました。以上となります。
【無藤座長】  ありがとうございます。秋田委員のは、今朝というか会議の前に届いたようで、皆様方には紙面としては行っていないのかもしれませんが、今御紹介いただいたとおりのようです。
 私なりに要約すれば、田中委員に対しては、資質・能力のつながりとともに内容のつながり、それをどういうふうに統合的に考えるかということと、内容のつながりというと、とかく今度は教科に対してその基となる保育内容と直線的につなぎやすくなるんですけれども、それは大分違うぞというところをどうお考えかということ。
 2番目に、田村委員に対しては、幼児期の体験が生活科にというのはよく分かったけれど、では、ほかの教科にはどういうふうにつなぐと考えればいいのか。
 それから、奈須委員に対しては、環境の重要性ということで、そこに子供と共に協働再構成、あるいは子供自身が再構成するという辺りが幼児教育として打ち出されてきているけれども、小学校ではどう考えるかということです。
 それぞれの御質問に対するお考えは、いろいろな委員のものを合わせて最後にまた皆様方、御発表の3委員に戻しますので、そこでまとめてください。よろしくお願いします。
 それでは、他の委員の方で挙手いただけますか。河合委員、まずお願いします。
【河合委員】  ありがとうございます。3人の先生方、御発表ありがとうございました。皆さんのお話を伺った上でちょっと感じたことを申し上げたいと思います。
 私も、資質・能力ということで一貫して教育を考えていく、そのためにいま一度幼児教育の内容を整理していくということは大事なことだと思います。改めて大切なことだと思いました。その中で、田中先生がこれまでの長い研究の積み重ねで、まさしく事実の中から実践を通した先生方の言葉で紡ぎ出してこられた資料は、とても重要だと感じました。同様にもしかしたら、ほかのところでもこうした資質・能力ということをきっかけにして何か新しい知見を見いだしていることもあろうかと思います。今後に向けてはそうした様々に見いだされた知見を持ち寄るというような形で、幼児教育で育みたい資質・能力とはどういうものなのかということを改めて考えていくよい機会になるだろうと思います。そのときに先生方の御知見を是非またお借りして学ばせていただきたいなと思っています。
 そして併せて、それらを活用した研修方法の提示とか、保育者や小学校の先生方が研修を通して、実践を通して学ぶ機会が提供されていることも大変感銘を受けました。それぞれ参加した方が手応えを持つことが、それぞれの実践の現場での事実的な質向上につながるという期待が本当にこれからも大切なことだと考えています。これまでもありましたが、その際に資質・能力の考え方の正しい理解がいつもワンセットになっていく必要があるだろうなと思っています。
 2つ目ですが、そこに関連して、今後幼児教育において育みたい資質・能力が整理されて明示されていくことはとても重要で、明示されればされるほど分かりやすくなる関係で、改めてそういうものを目指しながら、幼児教育でどういう学び方、これは環境を通して行うということだと思うんですが、発達にふさわしいという形での学び方や評価の在り方を一緒に明確に示して、今の小学校の行われている評価等との違いみたいなこともお互いに認識をしておく必要があるかなと思っています。これは前倒しを危惧するという観点からです。
 明らかになればなるほど、これを育てればいいんだとか、この視点からできたかどうかということになりかねないということもいつもはらんでいると思いますので、そんなふうに感じました。
 最後ですが、そうしたことも含めて、そのために何が大事かということです。奈須先生のお話にもありましたとおり、今後、幼児教育における3要領・指針や小学校以降の学習指導要領が基づいていく子供観とか学力観、指導観というものを明示していくこと、それから、教育全体で転換期にあるんだということを改めて説明していくことが重要だと考えました。
 そのためにも、冒頭の事務局の説明にあった今進んでいる架け橋期を一体に捉えていくということが、子供の発達に応じた学び方を継続していく、そして資質・能力を発達に応じた形で保障していく、そういうことにつながるという点で、架け橋期ということの重要性を改めて認識した次第です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。資質・能力をより豊かになる方向で明確化するというのは、分かりやすくするんですけれど、分かりやすさは多分実践での姿がよく見えてくるということだろうと思うので、その辺をどういうふうに表していくかということですね。それに伴って、どういう学び方や評価があり得るか。幼児教育としてはどうなのか。それは小学校局とどうつながり、あるいは異なるかという。さらに大きなこととして、子供の学力観、知能観等をどういう形で表しながら、幼保と小のつながるところをはっきりさせていくか、そういう御議論というふうに考えました。ありがとうございます。
 それでは、次の方はどなたか挙手されていますか。大豆生田委員、お願いします。
【大豆生田委員】  三人の先生方ありがとうございました。私、とても学ばせていただきました。
 今回、特にこの3つの資質・能力との兼ね合いのことについて、それぞれの先生方からも示唆的なお話いただいたわけですけれども、そうした背景には恐らく、幼保と小以降もつなぐ3つの資質・能力が重要な核となっていながら、もしかすると保育の現場などでは、どちらかというと、なかなかそこにはたどり着かず、場合によっては、先ほどのお話もあったように、10の姿への当てはめでというふうに陥っている現実というのも多分あるんだろう。そこへの理解がまだまだ今後進んでいく上で重要な鍵になる。だからこそ、この資質・能力を改めて再考し、整理するということだとか、どうこれをしっかり重要なものとして位置づけていくかということが重要であるということを先生方のお話から改めて学びました。
 そのときに、改めて、子供の目の前の姿、見えにくいものとか、あるいは具体的な子供の経験や体験からどう読み取っていくかということとの兼ね合いの中でそれが起こっていくということが大事なんだと思うんですけれども、改めて先生方の話から、幼児期についてというのは、この内容面とコンピテンシーの面の統合というかが幼児期の終わりまでに育ってほしいという姿であって、資質・能力と5領域の双方の組合せが特に重要な特徴だということが改めて言えるのではないかというふうに思いました。
 そのときに、例えば田中先生がこの取組をしていく中で、ドキュメンテーションを取り上げてということが例えば1つ私は重要な鍵だというふうに思っています。具体的な写真だとかそういうことの中からどう読み取りながら、学びを読み取りながら、それを保育者と子供たち、あるいはその保護者と共有すると同時に、小学校ともそれを通しての共有の核になっていくのではないかということを考えると、それが今後、その架け橋の1つの具体的なことを通して行う重要なツールかなというふうに思った点が1つです。
 さらに、奈須先生のお話から、環境による教育ということを1つの共通のところでというところも、このことを考えていく上でとても重要な視点になるかなと思いながら、お話を伺わせていただきました。
 以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。これまでの委員の御指摘ともつながりますけれども、資質・能力というものが、浅く捉えれば、結局10の姿のチェックリストみたいな受け止めがなくもないので、そうではないという、そこにおけるコンピテンシーというんでしょうかね、子供の育ちの根底をどう具体的な姿から読み取るか。そのときに、その内容とコンピテンシーを合わさった形で捉えるにはどうしたらいいか。
 その方法として、ドキュメンテーションというような写真や言語記述を組み合わせた記録ということですかね、というあたりということ。それを伴って、環境による教育というものをどういうふうに展開し、示していけばいいかということだと思いました。
 それでは、次の方の挙手はどなた。高橋委員、お願いします。続いて古賀委員ですね。高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】  三人の先生方ありがとうございました。
 田中先生の神戸大学の附属幼稚園の取組です。とても参考になりました。ちょっと違う視点からですが、国立の附属幼稚園が中心となって、市町村の公立幼稚園がそれを活用して実践に移している、研究と研修に裏づけられて常に改善されている、研究が地域一体の幼児教育の質の向上につながっていること、公立幼稚園やこども園が研究開発の役割の一翼を担っていること、は重要な役割であることも認識しております。関西だけでなく、関東地域でも同じような実践が生み出されるようにするのも公立園の役割であるとも思いました。ありがとうございます。
 資質・能力の可視化についてはいろいろな先生方がおっしゃっているとおりだと思います。環境を通して行う教育というのは本当に長年公立幼稚園で取り組んできていることでありますし、幼児期の教育が子供の環境から学ぶ力を育てているということを再認識しました。
 小学校教育への接続を考えていくとき、「環境を通して行う総合的な教育」をどのように小学校の先生方と一緒に考えていくのかという点について、もっとお話をお聞きしたいと思いました。
 田村先生のお話の中で、見えにくいものを見取るというお話がありました。私たち公立幼稚園の教員は常にそれを考えて幼児理解を進めているところです。一人ひとりの遊びのプロセス、成長のプロセスを大事にしながら、見えにくいものを見取る、育まれる資質・能力を子供の姿から話し合うという幼児・児童理解を小学校の先生たちと一緒に実践していくことで、幼小の接続を進めていくことができるのではないかと、今日のお話を伺っておりました。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。最初のことはこの会議自体の話題じゃないけれど、田中委員の、つまり神戸大学附属幼稚園、明石ですけれど、が周辺、兵庫県の主に阪神間ってよく言い方分かりませんが、の様々な公立の市と連携して広げているというのをすごく際立った特徴というか、長年の御努力なんだなと感銘を受けています。
 より具体的には、環境から学ぶ力というのは、幼児期の場合、そして小学校の場合どうであるかということと、見えにくいものを見取ることの大切さということで、多分先ほどの大豆生田委員もそこら辺で、例えば方法論としてのドキュメンテーションとか、神戸の附属ならその記録を基にということになると思いますけれど、そのあたりの議論だと思います。
 それでは、古賀委員、お願いします。
【古賀委員】  よろしくお願いします。三人の先生方、御発表ありがとうございました。資質・能力の考え方でさらに充実させていくというのは非常に重要な御提案で、私も大いに賛同するところです。そのことを全国の様々な地域の実践とつなげていくというときに、さらに考えていきたいことが出てくるなというふうに思いました。
 例えば、人口減少地域の異年齢保育であるとか小集団の保育というものがこれから広がっていくというふうに予測されますし、日本国籍で母国語が日本語の子供のほうが少数であるというような園も既に出てきていますし、医療的ケア児を含む多様な支援を必要とする子供への対応と保育内容といった課題が多様化、複雑化していくということが予測されます。
 その年齢の横割りでのクラス構成というのが、この後の10年ぐらいでどのくらい一般的であるのか。また、それが望ましいのかということも考えていかなくてはならないのではないかと思うこともあります。そういったときに、まさにこの資質・能力の考え方で全ての子供を見ていくということが一層重要になるというふうに考えられます。
 そこで、資質・能力で一人一人の子供を見ていき、個別最適な充実した教育を行っていくということと、それが協同的に育ち合っていくということをどう組み合わせて構成していくのか、それを全ての実践者にどう伝わるようにしていくのかということが、かなり大きな今後の課題になるのではないかなというふうに感じました。
 特に幼児教育における協同的な活動というのと、小学校以上の協同的な活動というのを同じような枠組みで考えていってもいいのかどうかというのをちょっと私自身はまだ迷っているところもあり、さらに考えていきたいというふうに思いましたし、そのあたりのところ、また、さらに先生方にお考えがあればお聞かせいただきたいというふうに思いました。
 もう一つ、田中先生にですけれども、資質・能力が詳細で明確であることが重要というのは、私も例えば国研の質評価の指標というのを手がかりにすると、具体的な保育者の関わりの次が見えるということがあって、詳細で明確なものがあると使いやすいというのは非常に理解できるところです。
 が、一方で、その要領・指針が告示であることで、どこまで詳細な内容を含めるのかというのが、全ての園の保育実践を強く縛るものでなく、方向性をしっかり示していくという性質を大事にしながら、どういった内容で構成していくことを先生がイメージされているのかなというのをさらに教えていただけたらというふうに思いました。
 指導資料で細かい内容があるというのは実践の支えになると思うんですけれども、先生がおっしゃる詳細で明確であるというものをどのように示していくことが適当と思われているのかというあたり、お考えがあれば聞かせていただきたいというふうに思いました。
 もう一つ、奈須先生に1点お尋ねできればと思っておりますが、お話にありました対面非同期のコミュニケーションで、幼児教育の環境を通した教育と情報技術パラダイムというのが挙げられていることに非常に大きな示唆をいただいておりますし、勇気づけられました。
 また、その一方で、その間の移行というのが非常に難しく感じているところです。最近見た実践例でもあったんですけれども、1年生でICTを活用するようになってきて、情報量が格段に多くなってしまったりだとか、手元の操作に終始してしまったり、そういう様子を見ていると、発達へのふさわしさというのを保障しながら、対面非同期型コミュニケーションに移行していく在り方であるとか、子供が主体的、対話的に学び続ける具体的なプロセスの在り方について、何かお考えがさらにあればお聞きしたいというふうに思いました。以上です。
【無藤座長】  3点ありがとうございます。今4点ぐらいかもしれません。
 最初のところはこの会議でも非常に重要になると思いますけれど、異年齢の保育スタイルは大分広がっているんですけれど、それが単に学年単位より異年齢ということをよしとしてというのももちろんあると思いますが、同時に、子供が減った中でそうなってしまうというところも増えてきたりするということ。また、それ以外のいわゆる障害のあるお子さんもそうでしょうし、外国系の様々なお子さん、医療的ケア児も積極的に園で受け入れるというところが保育所もこども園も幼稚園も増えていますが、じゃ、それに対してどういうふうに対応するかというようなことですね。
 それはもうちょっと大きなことで言えば、全ての子供が個別最適・協働的というときに、そう簡単に振り分けて、そうなるのかというのをより実践的に考えると、いろんな問題が幼児教育と小学校教育にあるんだろうと思いますけど、そこら辺のところです。
 2番目は、特に田中委員に対してですけど、資質・能力というものを詳細で明確にしていくことで有益だということは理解できるけれど、そのときの感想ですか、特にあったかもしれませんけれど、大変過ぎるというか、加え過ぎるということで、覚え切れないという便宜的なこと以上に、それがかえってそこに縛られるかもしれないというような懸念というのがあって、このバランスが非常に難しいところだと思うんです。おっしゃるように、要領・指針レベルで示すか、指導資料その他で示すかというのももちろんあるんでしょうけれど。
 ちなみに、現在の要領・指針の例えば幼児期の終わりまで育ってほしい姿、いわゆる10の姿はかなり意図的に、漠然でもないんですけど、ざくっと示しているとでもいいますか、俗的な言い方をすれば、なわけです。あんまり細かいことをそこでるる書かないということですけれど、それだと分かりにくいという面は多分ある。どうしたらいいかということですよね。
 3番目は、対面非同期のあたりということで、幼から小に移行する場合の問題とか、多分それと連動するのは、ICTなんかでいろいろ検索するのはいいんですけど、動画その他で圧倒的な資料がどーんとやってくることにどうしたらいいかという戸惑いというのは現場で既に出てきているような気がいたしました。ありがとうございます。
 それでは、坂﨑委員、お願いします。
【坂﨑委員】  坂﨑でございます。2点述べたいと思っていたんですが、1点目は先ほどの古賀さんが最初に話したことと全く一緒なので、そこは完全に割愛をいたします。
 もう一つは、田村先生のお話、とても今回分かりやすくて、これからの指針や要領をどうするのかと考えるには非常に勉強になりました。
 その中で、平成20年、27年と認定こども園の指針、要領も含めて告示化されてきて、今回の平成30年が、現3要領の指針・要領だけですけれど、ここに3つの資質・能力が出てきたことと、今回の架け橋プログラムをどう進めるかということについての整合性は、私個人は分かりやすいことがいいとは思っているんですが、先ほど古賀先生も無藤先生も話をしたように、それを行うことがいろいろな縛りを行うということについてもよく分かります。
 しかしながら、現実としては、なかなか今回の平成30年の3つ資質・能力が出てきた段階の小学校へのつながりとか整合性とかというのが、一般の乳幼児期の施設にはなかなか理解しにくい。逆に言うと、ゼロスタートではないのだということを言えば言うほど、その3つの資質・能力との何か乖離があるような気がしています。
 それを考えると、架け橋期の今回のプログラムを進めながらも、その3つの資質・能力とか10の姿をどう再考して整合性を図るのかというのは大きなことだと思います。
 その中で私は奈須先生の今日の提言は非常に感銘を覚えたというか、見直して、もう一回、私の中に取り入れていこうかと思います。これから先、発達の途上とか考えると非常に難しいこともあるわけですが、10年後、20年後の社会を考えたときには、様々な思考に対する関わりとか対応というのは必要だなと思いますので、子供たちの最適ということを加え、もう少し未来の学びの仕組みとか考え方、そういうことも考える必要があるのではないかなと思いました。
 三人の先生方ありがとうございました。以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。最初の子供の多様な、日本の今の社会における子供の多様な在り方、社会的背景の問題、改めて御指摘いただきましたけれど、幼から小につなぐ場合に資質・能力としてつないでということ、一応そのレベルの理屈は立っているんですけれど、より具体的に現場でそれがどういうふうに特に小学校の教科指導とつながるかについて、十分伝わりにくいというか、把握しにくいというのもおっしゃるとおりかもしれません。
 3番目は、多分、奈須委員がもっと時間があれば10年後の社会にどう未来的学びとして成り立つかというお話がされたいんだろうとは推察はしますけれども、そこら辺は後で、短い時間ですけど、補足していただければと思います。ありがとうございます。
 それでは、鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  三人の先生方ありがとうございました。非常に深い学びをさせていただきました。
 田中委員の資質・能力の項目というのは、子供理解の確かな目がないと、これはできないだろうなというふうに思いました。私としては、三人の先生方に対して感じたことを今回述べさせていただこうと思うんですが、まず、田中委員に関してはそういう子供理解の確かな目ということが前提というか、にあるだろうというようなことをすごく思いました。
 それから、田村委員の体験の整理という言葉がとても心に響きました。平成20年度の学習指導要領改訂の中で、言葉の力、体験の力ということで、体験から感じ取ったことを言葉や歌、身体などで表現するという、非常に言葉と体験ということがすごい重要だということを言っていますけど、まさに原点回帰ではないけれども、そこなんだなというのを改めて思いました。
 この体験の整理ということが、今度、奈須委員の環境という言葉とつながって、じゃ、どう、例えば子供たちが気づき、感じ、それから、それを表現していくのかというのを、我々保育者は見えにくいものを見取っていく。その上での環境構成というようなことで、3人の先生方の御発表を聞いていると、これってまた養成課程に戻ってくるブーメランなんだなというか、養成課程の中でここを育てていかなくてはいけないのかということを改めて思いまして、今日はちょっと身の引き締まる思いをいたしました。どうもありがとうございました。感想までです。
【無藤座長】  ありがとうございます。資質・能力の詳細化という必要性とともに、それが現場にとって実のあることになるためには十分、子供理解というものを進めなければいけないというのは、田中委員としては、神戸大の実践を具体的には出す時間がなかったので申し訳なかったんですけど、そのあたり。
 それから、体験と言葉とつながり、まさに生活科の核だと思いますけれど、言い換えれば、十分な体験をしながら、それを言葉、言葉というのはいわゆる日本語とともに物すごい広い表現手段ということだと思いますけれど、それによって整理し、再び環境に関わるという在り方ですよね。その辺のところが重要だという御指摘。
 最後は養成課程、私も関わっておりますので、いろいろな宿題を今いただいているという気がいたしております。
 それでは、尾上委員、よろしくお願いします。
【尾上委員】  お三方の先生、貴重なお話ありがとうございます。私ども幼児教育現場にとっては、なかなかこれだけの資料と裏打ちされた力をいただくということは大変、私自身も勉強になっております。改めて御礼申し上げます。
 奈須先生のICTの利用と幼児教育の共通点というお話がございました。GIGAスクール構想ということで、小学校以上はそういうふうな実態になっておることは承知しておりましたが、幼児教育はなかなか1人1台という、もちろんそんなのと違う性質のものがありますけども、そういった中でも対面非同期とか情報技術のパラダイムとか、お話いただいて、なるほどなと自分自身も改めてICTについて感じた次第でございます。
 まず、田村先生も本当に系統立ったお話ということで分かりやすく傾聴させていただきました。学習活動、学習評価、特に見えにくいものを見取るというあたりが私ども大変腐心しているところでございまして、機会があれば、さらにまたお話を承りたいなと思っております。
 それで、ちょっと時間の関係もございますけども、最後に資質・能力におきます学力論というのは言うまでもなく現行教育要領にも既に位置づいておりますが、保護者、社会のみならず、保育者も要領で大切にされているとは認識しておりましても、実際、意味理解に至らず、まだまだ浸透していない現状がございます。これらの時代を生きる子供たちには資質・能力を視点とする教育は重要なポイントだろうということ。そこで、保育者に浸透する方法としては、全ての保育者に対して、こういった点の研修をどう位置づけるかということが私どもの課題ではないかなと思っております。
 同様に、保護者、社会に対しても、国としてしっかりとしてこの点のメッセージをしていかないと、相変わらず幼児教育においてもコンテンツベースの活動がもてはやされている状況というのは、なかなか変わりづらい現実の課題があるということをここで御披瀝したいと存じます。
 また、田中先生の可視化という点には、私ども大変ここ重要であると、また、そういう実践している園もどんどん増えていっておるところでございますが、幼児期の遊びの中で、ここはこういうふうに小学校でこの学習の基盤になっているというつながり、具体化を見える化することによって、これを保護者に納得していただくということも重要ではないかなと思っております。
 私ども、どうしても私立学校という性質がございまして、保護者の啓発ということ、こういったことが進めば、保育者自身も資質・能力に関してより高度化していくのではないかなと相乗効果を期待しているところでございます。
 それで、全国で統一で一般するのは難しいので、教育要領解説の中で、このようなつながり方などの解説など工夫していただければ、現場の保育者がよりこのことについて取り組みやすくなるのかなということを申し添えて、私の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。最初のICTの関係はこの会議の1つのポイントにもなろうと思うので、どこかの段階で、幼児教育施設の中で子供自身がICTをどう活用可能なのか、留意点はという議論に入れるように考えたいと思います。
 また、幼児教育の評価というのは要領・指針に書いてはあるんですけれど、それと小学校で言う評価は大分異なる面と共通の面がありますけど、その辺は整理しなければならないし、それがどう現場に理解されているかということも御議論いただく必要があろうと理解しました。
 それから、保育者への研修を一層広げるというのは私立幼稚園連合会もなさっていただいていますけれど、その一方で、保護者、より広く社会にどう啓発していくか。最初に企画官から説明があった広報資料を作るという中にも、保護者向けというのか、保護者が見ても理解してくれるかもしれないぐらいですかね、短い動画を作って、幼児教育、遊びの大切さみたいなのを入れてあると思うんですけど、それだけで足りるわけでもないので、一層考えたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、汐見委員、お願いします。
【汐見委員】  もうあと私だけかなと思って発言するんですけど、3人の方の御報告はとても私にとっては興味深くてありがとうございました。いろいろ考えるきっかけをたくさんいただいたような気がします。
 資質・能力という言葉をもっとこれからの日本の保育、幼児教育の最もキーワードとして使っていくという、そういう機運を高めるというきっかけになるんじゃないかなと思って聞いていました。私、OECDがキーコンピテンシーということを提案した、キーコンピテンシーはもっと古くからある言葉なんですが、OECDのキーコンピテンシーというのを提案したときから、21世紀という難しい時代、社会を担ってくれる子供たちにどういう能力、力を持ってもらわなきゃいけないのかということが何か見えたような感じの内容だったんですよね。それほどにOECD、あるいはヨーロッパの人たちは、21世紀という時代を本当に大変な時代だというふうに認識しているんだなということで、だからこそ保育だとか幼児教育を含めた教育全般が、そういう社会の中で、その社会を少しでも人間がちゃんとできていける社会にしていくということに、ある意味で賭けるというんですかね、そういう思いが伝わってきて、それでキーコンピテンシーという言葉というのは重要だなとずっと思っていたんです。
 それでそれを日本は受け止めて、中教審だとか国研だとかの中で、そのことをきちっと議論し、資質・能力そのものを検討するような会もやって、それで出てきた3つの柱というんでしょうか、それで本当にいいのかという思いは僕もあるんですが、例えば、キーコンピテンシーの中には自分のことをしっかり認識する。自分の進路だとかそういうものをしっかりと学びの中で考えていくとか、そういう柱があるんですよね。僕はこういう社会の中で自分をしっかり見失なくなくなっていくということはとても難しいことで、だけれども、自分が本当は何がやりたくて何が好きでということをきちんといろんな文化と出会いながら、相互交渉しながら、それを自己認識として高めていくというようなことがここには入っているんですよね。なるほどなと思ったことがあります。
 日本では僕は、自分のことを知るために学ぶんだというのは生活を通じたぐらいしか知らないんで、僕はそれを興味を持ってずっとやっていたんですけど、やっぱり教育というのは何を知るかって、最後はやっぱり自分を知るということは大きいわけですよね。でも自分を知るためには周りを知らなきゃ知れないんだけれども、そこに行かなきゃいけないというのと、やっぱり日本の教育でももう少し考えなきゃいけないんじゃないかなと思っていたものですから、資質・能力の中にそれが入り込むかなと思ったら必ずしもそうじゃないんで、そういう辺りをどうするのか。
 それから、10の姿の中でもやっぱりそういうのは必ずしも位置づけられてないわけで、だからその辺りをちょっと、いや、ここには書いてあるというところはあると思うんですけど、だから資質・能力という、それを日本バージョンにしたような大事なカテゴリーを、やっぱりこれからの幼児教育の柱にしていくというような、そういう機運が何か高められるのかなと思って、今日はお伺いしてうれしかったんです。
 同時に、10の姿もそうなんですけれども、資質・能力の3つの柱で、知識理解とか、それを神戸大学の附属幼稚園のように、別の分け方したらリターンに近づいてきたというようなことがあってよかったと思うんですけれども、あれが静的なもの、ダイナミックなそれ自体が、自分たちを考えていくときの1つの方向を示しているものであって、これ、方向、到達目標、固定的で、思考力、判断がどうなのかとか、そういうふうになってしまわないようにするということがとても大事だなと思って聞いていました。
 僕は3つの中では学びに向かう人間性というのが、やはり本当は一番大事なんだろうと思っているんですが、でも実は、これが僕の言いたいことなんですが、それを実際の教育、保育の中で、そういうのがよく育っているよねとか、やっぱり育ち足りないよねとかというような評価というのをどう行うのかというあたりが、実は資質・能力にとっては最も大きな問題だというように思ってきたんです。
 教育の場合、評価活動をどうするかという辺りをセットで考えていかないと、させっ放しになってしまうわけです。今までは試験やって点数だとかというんだけど、資質・能力でいったら、試験の点数という形では評価し切れないところがたくさん出てきますよね。そうすると、私は保育指針のことをやっていたんですけれども、そのときに保育指針の中には自己評価というのがあって、これをどう進めるかということを検討する別の会をつくってくださったので、そこで結局、毎日の保育の中で見つけた子供について語り合うリフレクション、それを丁寧にやっていく。しかも子供は、こんなことできない、あんなことできないというんじゃなくて、今日子供について発見したような、そういうことをちゃんと話し合うということを丁寧にやるということが一番大事な評価活動だというふうに提案していったわけです。
 僕はこれは物すごく大事なことだと思っていまして、これは小学校なんかでも僕は同じだと思うんですけれども、点数じゃなくて子供たちの行動だとか素振りだとか、あるいは言動だとか、そういうものから何が子供たちの中に芽生えているのか、それを可視化していく。そういうようなリフレクションというのかな、それがどこの園でも小学校でも日常になっていくというような、例えばの話なんですが、そういう形の評価活動の在り方というのを、資質・能力を重視していくということとちょっとセットでぜひ議論していただければということを、今日強く感じたというのが感想でした。
 お3人の方、本当にありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。資質・能力というのは極めて重要なものなんだということと、その中で自分の認識というようなことがちょっと弱いかもしれないという御指摘。それから、静的な動かない、固定的なチェックポイントというよりは、もっとプロセスでダイナミックなものとして見ていかなければいけないんだという御指摘は全く同感であります。
 そして、その資質・能力を重視することと評価、特に保育者による自己評価というのをどう進めるかということがセットなんだと。これは指針でも要領でもそのように書かれていると理解しますけど、それは指導課程を振り返り、それを理解し直して考えていくことだろうということ。書いてはありますけど、そこが十分伝わりにくいところがあるのは確かかと思いますので、その辺をどう見直すかということでさらに議論を今後したいと思います。
 それでは、鍋田委員、お願いします。
【鍋田委員】  よろしくお願いします。すみません、私、発表が今日聞けなくて途中から入らせていただきました。今資料を見ながら、ちょっと皆さんのお話も聞かせていただきながら大変勉強になりました。ありがとうございました。汐見先生の後でしゃべらせていただくのは大変恐縮です。
 保育現場で私の反省も踏まえてというところですが、3つの資質・能力について注目というのをあまりこれまでしてこなかったというのが、保育現場では多いのではないか思っています。どちらかというと10の姿ですとか主体性というところをどうしてもクローズアップしてしまって、そのことを語ったりですとか勉強し合うということは大変多かったんですけれども、この資質・能力というものについては、実践としては取り組んでいるんですけれども、みんなで語ったりですとか確認し合ったりというところが少なかったなというふうに思っています。
 ですので、10の姿というところを今すごく注目して、例えば、小学校の先生と話したりとかというところでは使ったりもするんですけれども、今後、皆様の資料のお話を聞かせていただく中で、もう一度しっかり考えていかなければいけないという気持ちを持ちました。
 もう1点、奈須先生のお話で適切な環境と出会えば自ら進んで学ぶという言葉が資料の中にありますけれども、昔から、親はなくとも子は育つと言うよねって、保育現場でも、保育士がいなくても子供って育っていくよね。だけど、環境をつくるということがすごく大事だから、放っておいていいわけじゃなくて、環境を整えていくことが私たちの仕事なんだよねということを常日頃から確認し合っています。
 そういった中で、奈須先生の資料の中で、学校教育の過去・現在・未来のモデル、現在のパラダイムというところで、教師を介している形にどうしてもなりがちというところでは、もっと直に子供が環境と関わって学べるよねというようなお話だったかと思うんですけれども、ここでも現場では、保育士の意図がここで働き過ぎて、直接子供がやりたいことができないということもまだあるのではないかと思いました。
 あとはこれまであまり議論になってこなかったかもしれませんけれども、リスクに関することで、例えば、今いろいろな保育現場でのリスクということを、とても現場の保育士さんたちは気にしてびくびくしているという部分もあります。そういった中では、いろいろ広げていきたいけれども、そのリスクとのバランスですね。リスクヘッジといいますか、リスクテイクといいますか、どちらもやり過ぎてしまってはいけないというところでの迷いですとか、そういったものを感じています。
 いろいろ資料見させていただいて、本当に様々な取組がなされている中では、もっといろいろな研修の仕方ですとか幼保小の連携の仕方、地域で進めていかなければいけないというふうに改めて思いました。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。最初のポイントは、主体性とか10の姿をかなり意識しているけれども、ある意味でそこの根底にある資質・能力への着目が少なかったかもしれないということだと思いますが、当然子供の主体的な在り方が資質・能力につながって、それが10の姿につながるという流れではあるんですけれども、その辺の目配りだと思いました。
 それから、適切な環境をつくることを整えることが重要で、そこにどう子供が関わっていくかとか、そこでの保育者の援助の在り方は何であるのかということと、もう一つ、子供が直接環境に関わる中で、当然様々なリスクが生まれるわけですけれども、それをどの程度配慮するか。全て安全第一ならやらせないことが一番になるんですけど、そうではないはずなので、非常に具体的な保育実践の中で多分難しい点があるということも考えなきゃいけないと思いました。
 さて、残り10分ちょっとなので、短い時間で恐縮で、お一人3分ぐらいしかないんですけど、お3人の委員にいろんな質問等が出たので、返答というよりはまとめたコメントぐらいしかないんですが、お願いできますか。
 では、田中委員からお願いします。
【田中委員】  すみません、ちょっと画面を共有させていただきたいと思います。うちのホームページのものが見えていると思うんですけれども、ここにお示しした資料があります。資質・能力の考え方が固定化しないようにということ、本当にまさにおっしゃるとおりだなと思っていて、一番最新版の資質・能力の定義については今現在この形ですが、ここに日付を書いているというのも意味があって、開発が終わった年のものから3段階置いています。皆、そこの変更がまずあるということと、汐見先生がおっしゃってくださった、まさに自分のことを認識するということなんかがないなということをおっしゃっていて、自分たちも、最新のものでそれがないんです。でも、そのことが今現在は、話の中にまさに話題に上がっていて、自分たちが自分のことを知るという言葉であらわしていこうかというふうにしていますけれども、常に資質・能力の考え方ですると、新しいものを見いだしていけるなということを思います。まだまだ自分たちも、もっともっと資質・能力のほうの考え方に思考を寄せていかないといけないなということを思っています。
 そのほか、示し方なんですけれども、資質・能力で示せれば、恐らく活動なんかを縛るようなものにはならないと思っています。実際に例に挙げさせていただいた尼崎の先生が使ってくださっているのは、この定義だけではなくて、うちの資質・能力でのねらいの一覧ですね。こちらともっと詳しい一般に長期の指導計画と言われるもので、これは四十数枚あるんですが、もっと詳細に示したものです。これも活動を縛るものではなくて、活動の例としては、遊びや生活の場面例としては示しているんですが、資質・能力ということで考えると、1つの遊びや生活の場面でも様々な資質・能力の観点から捉えられるので、決して活動を縛るものではないなということを思っています。ここ、いろいろ吹き出しがあったり赤や青色になっているのは、カリキュラムのマネジメントの過程もつまびらかにお示しするということを今していますので、ここに問題意識があるということで見ているといふうに思っていただいたらと思います。
 このほかにも、遊びや生活のまとまりとしての計画というものがここにはあるんですが、例えば5歳の発表会だと、様々な質量・能力の育ちを願いながら展開している、具体はまださらにあるというものがあったりします。こんなものは長年の積み重ねでしてきたものですぐにしたものではないんですが、こういうもので実際に子供たちの活動を見ていただくと、子供の姿、これちょっと皆さんには本当は見ていただけない、パスワードなんかが入っていて見られないんですが、年長の発表会、6つのグループ、例えばここ、バスケットボールの子供たちのずっと前からの取組で、当日はこんなような発表会まで至る過程を行動を示していて、そこにもこんな学びがありましたよ。全く違う種類のものとしては、ゴジラショーみたいなものも同じ、小学校で言うと単元計画に近いような計画を別途持っていて、子供の活動を決して縛らないということが、自分たちは体験的に感じているところです。しかも資質・能力の育ちはお示ししやすいというふうに思っています。
 なので、これは自分たちの感覚としては、資質・能力の考え方でいけば、決して子供の活動とかそんなものを縛るものではないですし、あるいは小学校の先生たちとの関係の中でも、小学校の教科に親和性の高い資質・能力はもしかしてあるかもしれませんが、例えば理科の実験で、理科の学びだけではなくて、例えば理科で道具を扱うとなったり、実験器具を扱いますよね。そうするとその道具の特性を知るということが、例えば1つ資質・能力の例としてもあるんですが、そんなものも教科に関わらず、1つの教科の中にも様々な資質・能力の子供の育ちがあるという見方を自分たちはしていますので、決して一対一にはならないな。同じ遊びの中でも、子供によっても育まれている資質・能力は、その子供の今の興味・関心によって別個のものだなというふうに考えています。
 1個例は、砂場で、あの子がしているから自分はこの遊びをしているという子もあれば、砂の性質が変わっていることに関心があって、そのことをやり続けている。横並びで遊んでいる子供でも、その子の意識によって育まれている資質・能力は違うということは、窓口があれば捉えられるなというのが自分の感じている印象です。
 すみません、ちょっとそんなところで、以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 では、田村委員、お願いします。
【田村委員】  ありがとうございました。十分な資料でなかったにもかかわらず、たくさんの御意見をいただきましてありがとうございました。皆さんの御意見を踏まえて、感じたことを3つ申し上げたいと思います。
 1つは、資質・能力をこれまで以上に明確に設定し、明示することのリスクやデメリットは、細分化に向かうのではないかということかもしれません。一方で、そのことがより明確な資質・能力の育成に向かうということに加えて、横断的でホリスティックな子供の姿を生み出す可能性もあるのではないか、あるいは意図的、計画的、組織的な営みによって生まれる可能性があるのではないかというメリットも考えることができるかと思います。となると、何を明示するかに加えて、どのように明示していくかということが大事になってきて、子供の姿や活動をそこに例示として用意しながらなどの工夫が必要になってくるのではないかと考えました。
 加えて言えば、この幼児期の終わりになるのか、あるいは5歳児から小学校1年生に至るところの資質・能力が一定程度クリアになることは、小学校以降の教育課程、小・中・高等学校の入り口がクリーンになることにもつながります。教育課程全体、幼児期だけではなくてずっと上までを視野に入れていく重要なポイントになってくるのではないかと考えました。
 2つ目が、秋田先生の御質問についてです。生活科と幼児期が比較的つながりが見やすく実現もされているとするならば、なぜそれがほかの教科と違うのかと考えることが必要かと思いました。となると、恐らく教科・生活科の理念のみならず、現在の学習指導要領、教育課程の基準の構造や示し方に1つの要因があるのかもしれない。例えば、活動が明確に示されているといったところになりますが、うまくつながることを是とするならば、アイデアの1つは、小学校の他の教科もそういった示し方をしていくことが考えられるかもしれない。しかしながら、全ての学年は無理とするならば、1年生においてはということも考えられる。あるいは幼児期のほうを、少し小学校につながる意味で資質・能力でクローズアップできるのかもしれないと考えました。
 3つ目です。体験の充実や見直し、再整理の話をしましたが、そのことを考える起点として、「環境を通して学ぶ」という言葉、あるいは「環境を整える」という言葉が、環境なる言葉の見つめ直しがあってもよいのではないでしょうか。つまり、特別支援教育の世界にいけば、環境ということを重視しているのですが、「状況づくり」という言葉を使っています。環境なるものが、一人一人の子供にとってどのような役割を果たしているかということが大切かと思います。客観的なものではなくて、主体的なものとして捉え直しをしていくことが、個別最適な学びの議論とも連動し、より一層の充実に向かうのではないかと考えたところです。
 大変ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、那須委員、お願いします。
【奈須委員】  ありがとうございます。資質・能力をめぐって、やっぱり元の有能さという感覚に戻ることが大事だと思うんです。その子が対象と自分らしく効果的に関わることができるという状態を生み出すということ、それが学力なのだということに戻る必要があると思います。幼児教育は、それを本当にやっていると思うんですよね。むしろ直感的にすごくちゃんとやってきた、その子の育ちと言いますよね。それを今日の神戸大附幼もそうですが、もっと多面的に確かにしていこうという動きだと思うんですよね、明示化するとか整理するということは。ただ分析的になってしまうとまずいんだろうと。要素分割をしてしまって、それで積み上げても有能さにはならないのでというようなことは大事だろうと思うんです。
 一方、小学校は常々要素的、分析的、網羅的に学力を構成し過ぎたので、それをもってどんな有能さが実現されているのかというふうな見方を、汐見先生がおっしゃったように、もっとダイナミックに、もっと個別的に、個人の評価としてしていく必要があるんだろうと思います。
 もう一つ有能さということをめぐって大事なのは、もともと子供は有能な存在で、有能な学び手だと。だから、コンピテンシーを育成するという表現に私は常々違和感を感じていて、もともと持っている有能さを顕在化させるとか、文化遺産との対決、出会いを通して洗練させるとかいう話のほうがいいような気はしているんです。外から身につけさせるというふうな感覚は違うんじゃないかとずっと思っています。幼児教育は本当にそういうふうになさってきて、僕ら学ぶところが多いと思うんです。そのときにどんなものと彼らが合うのかということが、幼児教育では、いろんな生活だったり、それを通しての世界だったり、遊びを通して世界といろいろ出会っていくんだろうと思いますし、小学校もそれもありますけど、さらに文化遺産と出会うということがあるんだろうと思うんですよね。だからその辺り、それが結果的に環境を構成する枠組みや要素になるんだろうと思うんですけど、そういうことを見ていけばいいんだろうと思います。
 環境の再構成とか、子供による構成という話が秋田先生から出ていましたけど、面白いのは小学校で、学習環境が子供たちに働きかけるというような授業をやっていくと、ちょっと映像を見ていただきたいんですけど、これ、例えば1年生の図形の構成を学習環境整備でやっているんです。教師が時間を刻むんじゃなくて、子供たちがいろんなコーナーに行って、多様な活動を自分のペースでやっていって単元を進めるみたいなやり方なんですけど、すごく幼児教育的ですよね。だから、教科書なんです、やっている中身は。教科書を時間軸から解き放って、子供のほうが時間を刻んで、教科書を空間的に表現するというふうに僕ら言いますけど。そうするとこの子たちは幼児教育との連続性で、算数がとても無理なくその子らしくやれるんですけどね。また、これは極めてアナログ的で体験的な活動なんですけど、例えばこういうものを挟んでいくと、その先はデジタルになってくる部分も多いですけど、そう段差がなくいけるかななんて思いますけど。
 こういうことをやったときに、子供によってはこの環境でうまく学べないというようなことが時々起こりますが、そのときに、どうしても小学校の先生は個別指導をしたがるんです。僕らはそれしてもいいけれども、その前に、環境にやっぱり不具合とか、また不足があるので、あしたまでに環境を再構成するということをやろうと言っていますが、これがなかなか小学校の先生に分からなくて、多分幼児教育の皆さんには当たり前のことだと思うんですよね。子供がうまく遊べない場所があったら、あしたまでに環境をやり直すという、こういったことはすごく面白いなと思いますし、それから、子供による再構成ということでいうと、こういったいろんなものを使って、自分が単元の学びをどう計画するかというのを子供に委ねようということを1年生からやっているわけですけど、それはまさにこの環境を自分たちがどう使ってどんな学びをつくるか、ある種の環境の再構成にもなるだろうし、先生、ここ、こんなふうにしてくださいと1年生が言ってくることすらありますよね、時々。いろんな面白いことが起こったりします。これは僕らみんな幼児教育に学んで、小学校でもそのやり方でやれるかなと思ってやってきたことですけれども。
 それから、デジタルがきっかけになって、今こういった動きが進んでいるという話を申し上げました。どうしてもバインドされた教科書というのは、子供がそれを自在に使うというふうにはならなくて、先生がやはり前に立って使うというふうになっちゃうんです。だから、教科書の内容でも今のように、ばらして子供が自由にアクセスして、子供のペースで使えるように再構成してあるわけですけれども、ICTというのはそれがもともとそういうものになっているわけですよね、1人1台端末というのは。もともと子供がそこにアクセスして使うようになっていると。その辺のアイデアが、デジタルかアナログかを超えて、子供が適時必要な情報とか対象と関わっていくということが、今、ICT関係の動きの中で大きく起こっていて、ICTの御専門の皆さんが、いや、これはデジタルに限らずアナログでも同じだよねと言い出していて、それって幼児教育と一緒なんだということに彼らが気づきつつあるというのが私は面白いなと思っています。
 その意味では、今デジタル学習基盤という言い方をして特別委員会が動いていますけど、それはデジタルだけではなくて、デジタルをきっかけにして今動き始めていることが、アナログとか、あるいは体験や活動とかいったことも含めて、子供たち一人一人にとっての、先ほど田村先生が言われた、主観的な意味としての環境がどういうものになるか、それをどんなふうに僕らは技術的に構成できるかということの議論に進むといいなと思っています。そうすると幼児教育から高校まで、アナログからデジタルまで、全て一貫した枠組みで議論できるのではないかと。また妄想ですけど、かなり本気で考えていくと面白いかなと思っています。
 すみません、以上です。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、時間が参りましたので、本日はここまでにさせていただきます。
 発言時間が短いので、御発言いただけなかったことたくさんあると思いますが、それらをメールなどで事務局までお知らせください。
 最後に、事務局よりお知らせをお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  次回の検討会は、資料4のとおり、3月21日木曜日、15時から17時を予定しております。
 次回においては、無藤座長とも御相談の上、地方自治体における幼児教育振興体制の在り方について意見交換を行っていただきたいと考えておりまして、札幌市、伊丹市、津市の自治体の皆様より御発表いただく予定としております。
 また、先日事務局より御連絡いたしましたとおり、第6回から第8回の日程についても決定いたしました。委員の皆様におかれましては御多忙のことと思いますが、引き続きどうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。
 それでは、本日予定した議事は全て終了いたしましたので、これまでとさせていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――