今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会 (第1回)議事録

1.日時

令和6年1月25日(木曜日)16 時 00 分~18 時 00 分

2.場所

WEB開催(傍聴はYouTube Live上のみ)

3.議題

  1. 主な論点案について
  2. 意見交換

4.議事録

【横田幼児教育企画官】  それでは、先生方、お忙しい中お集まりいただきましてどうもありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまから、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会を開催いたします。
 本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。本会議は、Zoomを用いたウェブ会議方式にて開催をさせていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが、何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 また、本日は傍聴の御希望をいただいた報道関係者と一般の方向けに、本検討会の模様をYouTube Liveにて配信をしております。加えて、報道関係者の方々から、撮影及び録音の申出を頂戴しており、これを許可しておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 本日の配付資料につきましては、議事次第にございます資料1から資料4まで、加えて参考資料1となっております。
 なお、本日は本検討会の初回ですので、座長の御紹介を申し上げるまでの間は、事務局のほうで議事を進行させていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず初めに、大臣官房審議官の安彦広斉から開会の御挨拶を申し上げます。
【安彦大臣官房審議官】  皆さん、こんにちは。大臣官房審議官、初等中等教育局を担当しております安彦でございます。委員の皆様方におかれましては、御多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日の会議の開催に先立ちまして、一言御挨拶申し上げます。
 言うまでもなく、教育のスタートである幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培うというものでありまして、その後の人生に多大な影響を与える重要なものでございます。教育基本法におきましても、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものと規定されているところでございますけれども、とりわけ学校教育におきまして、学力や体力、不登校やいじめなどの様々な課題を抱えている現在におきまして、幼児期の教育からしっかりと充実を図って、子供たちに必要な資質・能力を育み、小学校との接続を充実するということで、学びや生活の基盤をつくることが求められております。
 そして、このように重要な幼児教育は、家庭や地域の状況に関わらず、また幼稚園、保育所、認定こども園といった施設類型に関わらず、全ての子供に格差なく保障していくことが大変重要でございます。
 そこで、本検討会におきましては、幼稚園、保育所、認定こども園における幼児教育について、一体的に議論を進めていただきたいと考えております。具体的には、現行の3要領・指針に基づく教育活動の実態や、幼児の学びの状況等を把握するとともに、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方について自由闊達に御議論いただき、必要な検討を行っていただきたいと考えております。
 教育行政を所掌します文部科学省としましても、0歳から18歳までの学びの連続性を踏まえて、幼児教育から高等学校教育までの教育の連続性・一貫性を確保し、全ての子供に質の高い教育を保障してまいります。本検討会の議論の成果につきましても、こども家庭庁と密接に連携しながら、幼稚園、保育所、認定こども園における幼児教育の一層の向上に向けて、今後の施策に反映し、取り組んでまいります。何とぞ忌憚のない御意見を頂戴したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【横田幼児教育企画官】  安彦審議官、どうもありがとうございました。
 続きまして、事務局より、本検討会への趣旨を御説明するとともに、座長と座長代理の御紹介を申し上げます。
 それでは、まず資料1の設置要項を御覧ください。1ポツの趣旨にありますとおり、中央教育審議会初等中等教育分科会の幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会において、令和5年2月にお取りまとめいただいた審議まとめでは、設置者や施設類型を問わず、幼児教育と小学校教育の連続性・一貫性を確保し、全ての子供に学びや生活の基盤を育むことを目指して、幼保小の架け橋プログラムを推進することなど、目指す方向性を御提言いただいたところであります。国としては、今後も幼児期及び幼保小接続期の教育の質を保障する施策を一層推進していくことが求められております。
 こうした状況を踏まえまして、本検討会では、2番の検討事項にありますとおり、幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領の、いわゆる3要領・指針に基づく教育活動の実施状況や、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価などの在り方について、必要な検討をお願いするものでございます。
 そして、本検討会は、今申し上げたとおり、保育所や幼保連携型認定こども園における教育活動などについても必要な検討をいただくものですので、5番その他にありますとおり、こども家庭庁成育局成育基盤企画課の協力を得ながら、本検討会を開催することとしております。
 また、3番の実施方法にありますとおり、本検討会は別紙の者の協力を得て検討を行うこととしており、有識者検討会に座長及び座長代理を置き、事務局が委嘱することとしております。時間の都合上、大変恐縮ですが、委員の皆様の御紹介につきましては、資料1の2ページ目にあります名簿に代えさせていただきますが、多くの先生方に御協力をいただくこととなっております。
 座長につきましては、中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会で委員長を務めていただいた、無藤隆先生にお願いをしております。また、座長代理については、現在、主に小学校以上の教育課程などについて検討が進められている、今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会でも座長代理を務めていただいている秋田喜代美先生と、奈須正裕先生の御両名にお願いをしております。
 それでは、ここからは、司会を無藤座長に交代をさせていただきます。無藤座長、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【無藤座長】  白梅学園大学の無藤でございます。今、御紹介いただきましたとおり、本検討会の座長という役を仰せつかりました。よろしくお願いいたします。
 一言簡単な御挨拶を申し上げますが、今、文部科学省側からの趣旨説明があったとおりですけれども、2017年に3要領・指針が改定され、同時期に小学校の学習指導要領も改定されたわけで、その後は普及といいますか、現場におけるその中身の実質化とでもいいますか、それに努めてまいりました。そして、その一環として架け橋期の教育について、いわゆる架け橋プログラムを進めるということも、これは現在進行形でありますけれども、行っている最中であります。
 本検討会の任務としては、その現況、言い換えれば3要領が改定され、そろそろ5年以上たつわけですけれども、その状況はどうなのかということを把握して、そして、今後どのような形で幼稚園、保育園、こども園の在り方を検討すればいいかということを整理していくということでございます。
 事務局からの趣旨説明の中にありますとおり、事務局は文部科学省幼児教育課でありますので、要するに幼稚園教育の主管するところですけれども、同時にこども家庭庁の保育所と認定こども園を預かる方々と協力して、ここでもオブザーバーという形でありますが、御参加いただいております。つまり、議論としては、幼稚園とともに保育所、認定こども園を含めていくと。幼児教育という言い方をここでしているのは、要するに、簡単に言えば幼稚園、保育園、こども園を総称した言い方と御理解いただいてよろしいかと思います。
 同時に、架け橋プログラムに出てくるように、幼児教育というのが小学校教育にどうつながっていくのかの検討は、幼児教育の在り方に直接影響することでもありますので、小学校教育、特に1年生なり低学年教育についても視野を広げておきたいということを考えてございます。
 ということで、委員構成は一々の御紹介は先ほどは省かれましたけれども、御覧いただくと、幼稚園、保育園、こども園の現場を言わば代表する委員、そして、そこに関わって研究をなさっている大学等のいわゆる学識経験者の方々、そして小学校がむしろ専門の委員という、かなり広げた形でお願いしてあるわけであります。でありますけれども、大枠はその程度の了解で進めているので、その中で具体的にはどういうことを議論すべきか。後ほど事務局と私のほうで少し考えた論点の案というものを御提示いたしますけれども、それも意識的に多少漠然と書いてあるということなんですけど、それは要するに委員の皆様方の御意見に沿いながら、それを盛り込んで進めていくという趣旨でございますので、よろしくお願いいたします。
 そして、今日は議題がありますけれども、基本的には委員の皆様方から、先ほども非常に提示が漠然とはしておりますけれども、御意見を頂戴したいと。あるいは、今後の進め方についても何かあればぜひ出していただきたいというふうに思うんですけど、毎回この種の会議はいろんな委員にお願いしていくと、どうしても1人当たりの時間というのは制限される中で無理やりに発言いただくことになるんですが、今日の段取りといたしましては、まず最初に議題1で、事務局から御説明いただくわけであります。そしてそれを受けて、委員の皆様方から、おおむね3分程度という時間を見込んでございます。全委員に何らかの形で発言をいただきたいと考えておりますので、御用意いただいていると思うんですけれども、よろしくお願いいたします。
 その際に、後で具体的には申し上げますが、途中退室の委員と途中入室の委員がいらっしゃると聞いておりますので、その辺については適宜こちらで判断して御発言をお願いしますが、今日は全員にということですので、基本的には名簿順での御発言になろうと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、事務局から資料の2と資料の3に基づいて、主な論点案の御説明をよろしいですか。
【横田幼児教育企画官】  それでは、資料2及び資料3に基づき、主な論点案の説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料2から御覧いただければと思います。今回、この会議においては、現行の3要領・指針に基づく実践上の成果と課題を検証していただくことが、まず主な目的となっております。そのため、まずは資料2を用いて、平成29年のときの改訂のポイント、その中でも3つの要領・指針の共通する改訂ポイントについて説明をさせていただきます。
 それでは、まず1枚目を御覧ください。このように小学校就学前の教育・保育の基準としては、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、幼稚園教育要領、保育所保育指針の3つがありますが、これらについては平成20年の改訂から同時に改訂・告示がなされ、教育内容の整合性が図られてきているところです。
 次のページからが具体的な内容のポイントになりますが、幼児教育はそれまでも環境を通して行う教育を基本として、幼児の自発的な活動としての遊びを中心とした、生活を通して一人一人に応じた総合的な指導を行ってきたところでありますが、平成29年の改訂におきましても、環境を通して行うものであることを基本とするということが維持されたところであります。
 また、新たに改訂されたこととしては、育みたい資質・能力として、以下(1)から(3)の3つの柱が示されました。(1)豊かな体験を通じて、感じたり、気づいたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」、(2)気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」、心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」です。後ほど御説明する5領域の内容についても、この資質・能力の3つの柱に沿って、内容の見直しが図られたところでもあります。
 水色の部分を御覧いただければと思いますけれども、これらの幼児教育において育みたい資質・能力は、個別に取り出して身につけさせるものではなく、遊びを通しての総合的な指導を行う中で一体的に育むということが規定されているところであります。なお、この育成を目指す資質・能力は、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領においても示されているものです。幼児教育から高等学校教育までを通じて、資質・能力の3つの柱に沿って内容の見直しが行われ、系統的に示されたところでもあります。
 また、小学校以降の学習指導要領では、子供たちの現状と課題を踏まえ、何を学ぶかという指導内容の見直しにとどまらず、どのように学ぶか、何ができるようになるかまでを見据えて改訂が行われたところです。
 次に、また3要領・指針に戻りますけれども、新たな改訂のポイントとしては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が明確化されたというところであります。相互理解が難しいと言われている幼児教育関係者と小学校関係者において、この幼児期の終わりの姿が共有されることにより、幼児教育と小学校教育との接続の一層の強化が図られることが期待されているところです。
 一番下の行にありますけれども、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、幼児の自発的な活動としての遊びを通してこれらの姿が育っていくものであり、到達目標ではないことや、個別に取り出されて指導するものではないことについても留意が必要とされています。
 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、具体的にはこれらのページのとおりとなっております。時間の関係で、読み上げることは割愛いたします。
 また、このほか幼児教育と小学校教育との接続に関しては、3要領・指針それぞれ総則などにおきまして、青字のような規定がなされているところです。小学校の教師との意見交換や合同の研究の機会などを設け、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有するなど連携を図り、小学校教育との円滑な接続を図れるよう努めるものとすると定められました。
 また、この幼保小の接続の点につきましても、小学校学習指導要領にも新たに規定がなされておりますので御紹介をさせていただきます。こちらは小学校学習指導要領の総則になりますが、青字部分を御覧いただければと思います。幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより、幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し、児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能となるようにすることや、また、特に小学校入学当初においては、幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきたことが、各教科等における学習に円滑に接続されるよう、生活科を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など、指導の工夫や指導計画の作成を行うこととされたところであります。
 また、こちらにつきましても小学校学習指導要領の生活科の例でございますけれども、小学校の各教科等ごとに、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮することが明記されておりまして、子供の生活の流れの中で、幼児期の終わりまでに育った姿が発揮できるような工夫を行いながら、幼児期に育まれた資質・能力を徐々に各教科などの特質に応じた学びにつなげていくことが求められているところです。
 次に、また3要領・指針に戻りますけれども、3歳以上のねらい及び内容につきましては、それぞれ章立てなどが異なりますが、内容としては一層の整合性が図られたところです。ねらい及び内容につきましては、これまで同様、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域が維持されました。
 また、近年の子供の育ちをめぐる環境の変化などを踏まえ、以下の事項について改善・充実が図られたところです。例えば、人間関係のところでは、自己制御や自尊心などの、いわゆる非認知能力の育成などの現代的な課題を踏まえた教育内容の見直しが行われたところであります。
 これまで御説明をさせていただきました、育みたい資質・能力と5領域、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係は、以下のような整理がなされています。なお、ここの15ページからは、便宜上、幼稚園教育要領の文言で説明をさせていただきますが、趣旨は保育所保育指針や幼保連携型認定こども園教育・保育要領も同じと考えていただければと思います。
 まず、幼児教育においては、1番にありますとおり、育みたい資質・能力として示されている3つの柱の資質・能力を一体的に育むように努めること。そして2番、その資質・能力は、ねらい及び内容に基づく活動全体によって育むものであること。そして3番、この資質・能力が育まれている幼児の姿が、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」としてあらわれてくることということでございます。
 さらにねらい及び内容に基づく活動を実施するに当たっては、先ほど申し上げた環境を通して行うということでありますが、環境を通して行う教育は、幼児の主体性と教師の意図がバランスよく絡み合って成立するものです。つまり、教師主導の一方的な保育展開ではなく、一人一人の幼児が教師の援助の下で主体性を発揮して活動を展開できるような、幼児の立場に立った保育を展開することが求められます。活動の主体は幼児であるということ、また、教師は活動が生まれやすく展開しやすいように、意図を持って環境を構成すること。そのことにより、一人一人の幼児が発達に必要な体験を提供していくということが求められています。これらのことが実現できるか否かが、まさに環境を通した教育が実現できているかどうかという重要なポイントになってまいります。
 また、保育者は、ただ幼児を遊ばせるだけではなく、子供の発達の道筋を見通して、教育的に価値のある環境を計画的に構成すること。そのためには、遊びの計画や教材などの準備、遊びの中での教師の関わりというものが非常に重要となります。
 環境を構成することについてもう少しだけ補足をさせていただきますと、環境を構成するとは、物的環境や人的環境、自然環境など、様々な環境条件を相互に関連させながら幼児が主体的に活動を行い、発達に必要な経験を積んでいくことができるような状況をつくり出すということ。その際、幼児の視点に立って環境を構成すること。また、幼児の思いやイメージを生かしながら、環境を再構成していくことが必要であるというふうに考えております。
 最後に、幼児理解に基づいた評価ですけれども、幼児期においては、幼児一人一人のよさや可能性などを把握することとされており、また、それを指導の改善に生かすようにすることが求められています。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が規定されたことで、5歳児につきましては、評価の視点としても、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を踏まえた視点というものが新たに加わりました。
 その際のポイントとしては、資料において、「よりよい保育をつくり出すために」という項目や、「妥当性や信頼性を高めるための工夫」でお示しをしているところでありますが、例えば、評価の妥当性や信頼性を高める工夫としては、このほか日々の記録や実践も写真や動画などに残し、可視化したドキュメンテーション、ポートフォリオなどにより、幼児の評価の参考となる情報を日頃から蓄積するといった対応も考えられるところであります。
 それでは、次に、資料3について御説明をさせていただきます。
 こちらにつきましては、ただいま御説明をさせていただいた資料2とも関連しますが、本有識者検討会で議論を行っていただきたい主な論点案を、まずは事務局のほうで御準備をさせていただきましたので御説明をさせていただきます。
 大きく2つの柱で構成をしておりますが、まず1つ目としては、1番にあるとおり、現行の幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に基づく教育活動の実施状況、成果及び課題の検証を行っていただきたいというふうに考えております。
 (1)の小学校以降の教育や生涯にわたる学習とのつながりで示しておりますが、現行の改訂のポイントでもありました幼児教育と小学校教育の円滑な接続について、その後、幼保小接続の取組にどのような変化があったのか。また、新たに規定された幼児期の終わりまでに育ってほしい姿は、正しく理解され実践において適切に活用されているかどうか。さらに2つ目の丸になりますが、前回の改訂では、各学校段階等の接続も意識され、幼児教育から高等学校教育まで、連続性・一貫性を持った改訂もされたところですが、0から18歳の学びの連続性を踏まえた教育の連続性・一貫性は確保されているかといった点からの検証をお願いしたいと考えております。
 また、(2)幼児教育の特性等に関しましては、幼児教育の基本である環境を通して行う教育の理解や、幼児の主体性と保育者の意図のバランス、また、幼児一人一人の発達に必要な体験が提供できているかどうかといった点、また、次の丸の幼児期に育みたい資質・能力の育成については、ウェルビーイングの実現に向け、どう資質・能力を育みたいか。また、育みたい資質・能力やねらい及び内容、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係は分かりやすく整理されているかどうか。そして、障害を有する子供や外国人幼児など、特別な配慮が必要な子供への配慮が増加する中で、子供一人一人の特性に応じた指導の実施はできているか。さらに、急速な情報化や技術革新など社会が変化している中で、例えばICTの活用など、今の時代に合った保育方法とはどうあるべきか。また、幼児理解に基づいた評価が適切に実施されているかどうか、このような観点からの検証をお願いしたいというふうに考えております。
 そして、2つ目の柱、必要な条件整備におきましては、(1)のとおり、3要領・指針を着実に定着・実施するための具体的な方策について御議論いただきたいというふうに思います。例としては、指導資料や教材の開発、研修の実施などを示させていただいております。
 また、(2)地域の幼児教育振興体制の在り方では、地方自治体における幼児教育担当部局の在り方について、例えば教育委員会と関係部局の連携はどうか。そして、公立幼稚園が急減している状況の中で、これまでの国公立幼稚園が果たしてきた役割や、今後も期待される役割はどうか。そして2つ目としては、幼児教育施設への支援として、地域の幼児教育振興の拠点であります幼児教育センターの設置や、幼児教育のアドバイザー育成・派遣などを論点として挙げさせていただきました。
 資料につきましては、以上の説明となります。
 また、今回、御欠席であります尾上先生からも事前に意見をいただいておりますので、御紹介をさせていただければと思います。
 まず、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿につきましては、まだまだ姿のことの周知が広がっていない可能性があると思われますという御意見をいただいております。また、幼児教育の特性につきましては、幼児の主体性と保育者の意図のバランスについて悩んでいたり、迷っていたりする現場の話を聞くことがあるので、さらに分かりやすく伝える必要があると考えますといった御意見もいただいております。
 また、2番の必要な条件整備のところにつきましては、要領はとてもよくまとまっていると思います。大綱としての示し方が個々の園での教育の自主性を担保することが重要であることも認識されています。一番下の行になりますが、本来、大切な幼児期の教育を、保護者も含めてどのように普及啓発していくかが課題だと認識していますという御意見をいただいています。
 また、さらに(2)の幼児教育振興の体制の在り方では、幼児教育センターと市立幼稚園、こういった方々が域内での幼児教育向上のためによい連携となるように、今後も努力してほしいと考えていますと、このような御意見をいただいているところでございます。
 事務局からの説明としては以上となります。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、各委員からの御発言をお願いしたいと思いますけれども、今、最後に説明のありました資料3の論点案につきまして、それぞれの御意見というものをお願いしたいと思います。先ほど申し上げたように、今回は第1回目でございますので、全委員に発言をお願いします。基本的には名簿順ということでありますが、多少の出入りがあると聞いておりますので、その辺についての変更はさせていただきます。
 指名いたしますので、そういたしましたらミュートを解除していただいて、発言をお願いしたいのですけれども、3分程度ということですが、特に先ほどお示しした論点案について議論を深めようというのが事務局と私とで考えた方向性ですが、その辺りでよろしいのかどうか、また加えるべき点があるのかどうか。そして、論点案としてはよろしいにしても、特にその中でよりお考えを詳しく加えたいということがあれば、時間内で御発言をお願いしたいと思います。
 それから、言うまでもなくこれから何回かやっていくわけでありますけれども、2回、3回とどういう中身にするかはまだ最終的には決めてないんですけれども、ある論点に絞って関係の方に発言していただいて議論するということですので、この第1回で言わないと、あと機会がないということはないので御安心いただいていいと思います。
 また、先ほどの名簿をお示ししたところで紹介は省きましたので、御発言の際に簡単な自己紹介を含めていただければと思います。
 それでは、名簿順があいうえお順ですかね。では、秋田委員からお願いしていいですか。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田喜代美です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 この論点案に沿いますと、まずは3要領・指針が改定になって整ったわけですが、その後にコロナの経験が大きく社会を変えたと思っております。その中で、小学校以降の教育にわたる生涯学習というところも、架け橋プログラムでは、いわゆる架け橋期というのを2年間にしたというようなところで、やはりそこの在り方をもう少し今後考えていくこと、また、5歳、年長と、それから小学校の1年だけではなく0歳から18歳というところで、いわゆる0・2歳から3歳というところの、2歳から3歳への移行ついてどのように考えていくのかといった形での議論が、0歳から18歳を射程に入れたときに必要になるのではないかと考えております。
 また、2つ目としては、幼児教育の基本の特性としての主体性と、それから、教師の意図とのバランスということが重要であると考えます。遊びを中心とした幼児教育のためには、やはり遊び込むという、遊びといっても、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」をこども家庭庁のほうでつくりましたが、そこでは「安心と挑戦の循環」と書かせていただいている、やはり挑戦的な遊びというんでしょうか、子供自身がいろんな創意工夫をしながら環境に自ら働きかけていくような、そういう遊び込むような、探究していくような遊びがどのようにあったらいいのか、そのための豊かな環境ということを考えたときに、これまでの環境を通しての教育では、どちらかというと保育者が環境を再構成するというようなことが重視されてきましたが、子供もまた共に環境をつくる1人として、そこの辺りをもう少し考えていくことが、育みたい資質・能力の育成というところにつながってくるだろうと考えます。
 また、環境というものもコロナ後、戸外の重要性であったり、それから、ICT・デジタルの有り様であったり、こうしたことも環境の在り方というものを現行には書かれていませんので、もう少し議論していく必要があるだろうと思います。
 そして、育みたい資質につなげていくためには、形成的評価としての実践の記録の在り方であったり、ドキュメンテーションというようなことについて、より広く理解を深めていくことが大事だろうと思います。
 そして、最後に3点目ですけれども、研修の実施というところでございます。これまでは、やはり一人一人の保育者の研修や資質ということが大事にされてきたと思いますが、一層園組織として、チーム園の在り方、また、園間で地域でのネットワークを通しての相互の学び合い、それによって、地域で子供を中心とした地域社会をつくるというような視点をどのように入れていくのか、そして、地域にある幼児教育センターやアドバイザーが、そこにおいてどのような専門性を発揮することが必要であるのか、その予算立てや制度をどう考えていくのかというところについて、もっと今後、議論が必要かなと思います。
 初回ですので、以上3点をお話しさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  要領よくまとめていただいてありがとうございます。
 他の委員の御意見も含めて論点を膨らませる形で整理していく予定でございます。なお、秋田委員の御発言の中で、2歳、3歳というつながりのところを御指摘いただいて、重要なところだと思います。
 最初に資料説明の中では、幼児教育として3歳から就学前の時期についての紹介だったわけです。それは幼稚園、保育園、認定こども園の共通部分がそこですので、そこが主な議論になるんですけれども、幼児教育として3歳より前の段階も当然関連いたしますので、随時必要なところで御発言いただいて差し支えございませんので、よろしくお願いいたします。
 それでは、途中退室と伺っていますが、若山委員、お願いします。
【若山委員】  富山大学の若山です。よろしくお願いします。
 私からは、こういうことを追加で話したほうがよいのではということではなく、今の3要領・指針に関して現場の先生方がどんなことを考えているのかなということをお話しさせていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
 富山大学の若山です。私はこれまで進めてきた研究の関係で、この5年間は、幼保、こども園のカリキュラムであるとか指導計画に関して研修等で扱うことが多くなっています。そうした研修の機会等に現職の先生方と関わる中で、現行の3要領・指針に記載される、先生方が行っている創意工夫の部分に目を向けるようになってきました。それで学校等のカリキュラムに関する理論や議論の中では、現職の先生方というのは、カリキュラムのユーザーではなくてメーカー、つくる側のメーカーだというふうに言われています。そこで私からは、今回の有識者検討会の中で、3要領・指針が実施されたことで、教育活動に関して保育者の先生方はどんな創意工夫を行うことになっているのかというのを、3つこの場ではお話しさせていただきたいなと思います。
 まず1つ目は、現行の3要領・指針が施行されたことで、保育所の先生方は3資質・能力を自園なりにカリキュラムや指導計画にどう反映させるかということを考えることに直面していると思います。3資質・能力を育むことが明記されたこと、また、ねらいは子供の生活する姿から3資質・能力を捉えたものとされたことを踏まえて、各園では園の方針や目標、実態に基づいて資質・能力の概念を反映させた保育の内容を考え、文章化するという創意工夫を行うようになっていると思います。
 そして2つ目、先生方がしていることとしては、10の姿を保育の過程に組み込んだり、園外機関等と連携する際に使用したりする際に創意工夫を行っているのではないかと思います。10の姿は3要領・指針の中で、指導の際に考慮するというふうに記載されました。また、小学校と共有するものであることも記載されました。これらを踏まえて、園では10の姿を保育の過程でどう考慮するか、また、そもそも考慮するというのは一体どういうことなのかとか、またどうやって10の姿を使って園外機関等とそれを共有していくかなど、各園等の実態に応じた扱い方を検討しているのではないかなと思います。
 そして3つ目は、3資質・能力や10の姿、ねらい、内容に基づく教育活動を各園が積み重ね、理論化していく際の創意工夫もあると思います。3資質・能力を一体的に育むための指導とはどういうものなのか。保育者が考え、実践して記録として積み重ねていく中で、その園なりの3資質・能力を育む保育の在り方について、実践的な知見が見いだされていくことになると思います。こうした実践値は、恐らく園単位で組織的に見いだされ、共有されていくのだと考えています。
 以上3つ、今日はお話しさせていただきました。現在の3要領・指針が実施されたことで、教育活動に関して保育者は、こういった創意工夫を今行っている最中なんだと考えています。実際に保育者が行った創意工夫に関する具体的なエピソードは、ここの会議の中で、また機会があればプレゼンしていきたいと考えています。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。実際に保育実践を進める保育者、教師が創意工夫する在り方を捉えて、それをどういうふうに促すかとか、あるいは、研修などで進めていくか、ぜひどこかで議論したいと思います。ありがとうございました。
 次は、河合委員、お願いします。
【河合委員】  ありがとうございます。聖徳大学の河合優子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の3要領・指針が一層の整合性を図られたことで、共通の文言や考え方が広くみんなのものになってきたなという実感があります。そのことが研修などでもあらわされているかと思いますので、この時間をいただきまして、私が参加させていただいている研修の状況ですとか、幼小接続に向けてのことについて、大きく2つのことをお話しさせていただきます。
 まず、論点整理で示していただいています1番のところ、小学校以降の教育、生涯にわたる学習とのつながりという点ですが、先ほど御説明もあったように、3要領・指針、そして学習指導要領に規定されることが非常に大きいことなんだということを実感しております。そのことにより、各教育委員会と、また関係部局での研修も広がりを見せているというふうに思っております。そして、今お話がありました資質・能力の言葉ですとか、10の姿の言葉が共通になったことで、幼児教育の施設同士の研修も深まりを見せていると思います。そして、0歳から18歳ということが先ほどありましたが、実際に園内研究などで、1つのテーマを基にしながら、例えば主体性とか、それを基にしながら、こども園や幼保一体施設で行われている園内研修においては、まさに0歳から5歳児までを見通して、子供たちの育ちをしっかり言語化していこうということも増えてきています。これが0歳から18歳というところにつながっていく、初めの一歩になるんだろうなと思っております。
 それから、幼稚園での園内研究などを拝見すると、必ず小学校以降の、この先を見通したことをしっかり見ながら言語化していこうということも増えてきています。ですから、実践者の先生方の中では、こうした見通しを持って進めていく、その中で共通の言葉を使いながら、自分たちの実践を話しながら進めていこう、そういうことがしっかり広がってきているように考えています。
 そして、研修のところですが、これは自治体によって大きく異なるとは思いますけれども、施設類型問わず、幼児教育に関する研修が広く門戸を開いて行われていっていると思っています。その中で、環境を通して行う教育といった幼児教育の基本について、改めて話題にしてほしいというオーダーもたくさんあります。これもまた、施設類型に関わらず幼児教育を進めていこうとすることのあらわれだと思っています。
 その中では、2つあるように思っています。1つは、広くいろいろな方が同じ土俵に乗るための研修、写真を持ち寄って語り合う、つまり、要領・指針に載っている言葉を自分たちの実践を通して理解しようとしていくこと、それが1つだと思っています。もう一つは、さらに実践を深く知る、1つの事例を深く考えたりすることによって幼児理解を深めたり、それが評価につながっていくということを、やはりこれもそれぞれの実践を持ち寄りながら理論と関連づけてまとめたり、共有したり、それをまたそれぞれ園に持ち帰っていく、こうした2つの側面からの研修も広がっているように考えています。
 また先生方のお話を聞きながら、私もいろいろ考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございます。研修の具体的な在り方がどう要領・指針の考えにつながり、小学校とつながっていくか、ぜひ考えたいポイントだと思います。
 それでは、次ですけれども、岸野委員、お願いします。
【岸野委員】  失礼します。福井大学の岸野と申します。
 私は、福井県や滋賀県のほうで、幼児教育センターでの園への関わりや、また幼小接続、架け橋カリキュラムの開発などに関わりながら研究を進めさせていただいております。私のほうからは、要領・指針に基づく教育活動のことと、それから、条件整備のことについてお話しさせていただこうと思います。
 まず、要領・指針に基づく教育活動の実施状況として、今、様々委員の皆様もおっしゃってきたように、本当に園種を超えてみんなのものになってきたし、また、それぞれの独自性を生かしながら、様々な工夫がされるようになってきたなというふうに、いろいろな園や接続の取組に関わって思っておりますが、一方で、頑張るようになった、非常に精力的に取り組む園が増えてきた分、その差も広がっているような印象も受けております。その差のポイントになるのが、まさに今回の論点にあるような環境を通して行う教育とか、幼児の主体性と保育者の意図のバランスというところだなというふうに改めて思いました。
 とりわけ先ほども出ておりました2歳から3歳というところで、3歳以上になると急にこのバランスが、幼児の主体性と保育者の意図のバランスが崩れていくような印象も受けていて、その辺り丁寧に議論できるといいなというふうにも感じております。
 こういった格差――格差というと失礼かもしれませんが、差を改善するきっかけになるのが接続の取組だというふうにも思っております。小学校のほうに幼児期の育ちをつないでいくということと同時に、そのことがやはり保育の見直しとか質の改善・向上とも深く関わっているということを実感しております。小学校への接続について、どういう部分を育てるのか、資質・能力の育成について、もう一度考え直していくことにつながるというふうに感じます。いまだに接続のポイントについて、教育課程ではなく、規律的なところとか、座り方とかというところを挙げているところも見受けられ、やはり資質・能力という観点で育ちを考え直していくというところ、10の姿について、園のほうでは様々浸透してきているけれども、それが小学校に具体的にどうつながっていくのかというところはまだ十分意識されているとは言えないという現状もあるように思っておりますので、そういったところが幼小接続の取組の中で、園を超えて保育を見合うとか、環境構成や援助について見直してヒントを得るというふうにつながっていくといいなと思っております。
 そういったときに、園の組織マネジメントみたいなところとか、園内研修というところについて、園内研修は様々行われていると思うのですが、組織マネジメントのあたりは小学校以降に比べると弱さがあるような印象もあって、管理職を中心にどういうふうにチームとして組織をマネジメントしていくのかといったところも議論のポイントになっていくかなというふうに思います。
 2つ目の条件整備のほうについては、こちらも様々な地方自治体で取り組まれるようになってきているところとそうでないところというあたりで、やはり資質・能力の理解についてもまだ差があり、あるいは統括する範囲についてどれだけ課を超えて連携できているかといったようなところも、地方自治体によって差があるというところを感じております。そうしたときに、やはり先ほども出ておりましたが、自治体での研修の在り方を見直していくことが必要だと思います。どうしても講師を呼んで話を聞いてもらってというような研修のやり方になりがちですが、研修の枠をつくってそこに講師を当てはめていくやり方ではなかなか学びの質が繰り上がっていかないということも感じておりますので、センター等がやはりネットワークの結び目になって、それぞれの園の保育を見直し、高め合っていくような、つないで発展させていくような役割を担っていくといいなというふうに感じております。
 すみません、以上取り留めもなく話してしまいましたが、いろいろな園や、関わっているところで感じていることを申し上げました。ありがとうございます。
【無藤座長】  ありがとうございます。やはり日本全国ということを考えたときに、都道府県、あるいはそれ以上に市町村が直接的には幼児教育に関わると思いますけれども、その取組のかなり違い、ある意味ではもしかしたら格差と言ってもいいかもしれない、そういうものが見受けられる。それは市町村自体の規模の大きさも、また状況もすごく違いますのでやむを得ない点もあると思うんですが、そこどう組み込んでいくか。
 それから、最初におっしゃった、その中での園ごとの違い、あるいは要領・指針の考え方の理解のずれということも無視できないところがあるので、そこら辺にどう関わっていくかは以前からの課題なんですが、非常に難しいけれども、委員の知恵をお借りして考えたいというふうに思います。
 それでは、古賀委員ですね。よろしくお願いします。
【古賀委員】  よろしくお願いいたします。京都教育大学の古賀と申します。ふだんは教員養成や保育者の専門性に関する研究を実践現場で行っているところです。
 今後の幼児教育の在り方について、その質を観点としたときに、いわゆる構造の質を制度的に管理し、向上させていくのはもちろん重要だということを前提として、プロセスの質、つまりは子供が身の回りの人や物、物事とどのように関わっているか、このことが発達にとってはより重要そうだということが研究において見いだされてきているかと思います。今後は、実践者もアドバイサー等の指導者的な立場の人も、遊びと生活の具体的なプロセスの質を見る力、これをより一層身につけていく必要があると思います。
 資料2の16ページに、幼児の主体性と教師の意図性のバランスについて改めて触れられていますが、いまだに教師が物事への関わり方を先に決めて指示してしまうことを指導だと誤解している実践は多く、特に行事前になると、教師が幼児をコントロールして動かすようなことを保育と呼んでいる現実を目にします。では、そのプロセスの質を改善することについて、これまでの要領等の取組を基盤としてどう取り組むかということになります。前回の要領改定では、育みたい資質・能力と幼児期の終わりまでに育ってほしい姿、いわゆる10の姿が総則に入り、10の姿を見とる研修や、それを小学校の先生と共有して子供の姿を語る研修などが増えました。しかし、そこから保育内容の改善にどれだけ展開できたかというと、姿を見とる、語るというところで満足しているケースが多い印象です。本来は、これがプロセスの質の充実に資するようにしていくべきものです。姿評価というものが、子供の実態把握なわけですけれども、そこを保育の改善へ向かう循環の中に位置づけていくようにしていくということです。
 その際、子供の学びのプロセスの分析的観点として、主体的・対話的で深い学びの考え方を幼児教育でも生かしていくとよいのではないかというふうに思っています。主体的・対話的で深い学びが小学校以上のところで出てきたときに、幼児教育はもともとアクティブラーニングしているから大丈夫というようなことがよく言われましたけれども、本当にいつでもどこでもできているかという問いも込めて、改めて遊びと学びのプロセスが子供主体となっているか、そこに対話が詰まっているか、その遊びに深まりが生じているか、遊びのプロセスを見とる評価の観点が必要とされているのではないかと思います。つまり、幼児の物事への直接的、具体的な関わりの仕方について、どこに魅力を感じて主体的に関わろうとしているか、具体的にどのように関わっているか、相互行為が生まれているか、つまりは対話がなされているか、そのことによってより魅力を感じるようになっているところは生じているか、つまりは深まっているかということを、遊びと生活、直接的、具体的な体験のプロセスを見ていく評価の観点としていくことができるのではないかと考えます。
 10の姿評価から保育の改善を向かうために、主体性、対話性、展開性を分析的観点として遊びのプロセスを見る、そのことを通して、子供の主体性と教師の意図性のバランスの取れた、遊びを中心とした指導の本質的な理解と実践が広がっていくのではないかと考えます。
 今日のところは以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。確かに具体的な保育場面で、子供の姿をめぐって語ることは広がったという印象を私も持つんですが、それが保育の改善、その質の向上にどうつながっていくかは、それぞれの園の保育者に任せられている。そこにどう踏み込んでいけるかということは、大いに議論すべきだと思います。ありがとうございました。
 それでは、坂﨑委員、お願いします。
【坂﨑委員】  坂﨑でございます。青森県で社会福祉法人清隆厚生会の理事長をしております。青森県で認定こども園2つと、児童発達支援事業3つ、子育て支援センター等を行っております。また、青森県の幼児教育アドバイザーをして、基本的には架け橋プログラムを自治体にどう進めていくのかを中心に、県では活動しています。
 それでは、少し意見を述べたいと思います。論点に沿ってお話をしますが、3要領・指針の中での大きな小学校以降の教育の学習のつながりという点では、やはり令和2年の段階の、コロナで小学校は3月からでしたか、休みになったというのが非常に大きくて、そこで本来であればスタートカリキュラムが行われるべきであったものが、その後の令和3年、4年とやったということになっているんだと思いますけれども、コロナの中で、それはなかなか非常に難しかったと考えると、今、文科省の幼児教育課で進めている架け橋期のプログラムが、これから大きな着眼点になるのではないかと考えています。そういう意味で、私自身も国立政策研究所の中に幼児教育センターをつくったときの委員であるんですけれども、青森県においては黙っているとできるのかと思ったらできなくて、実は幼稚園の団体、認定こども園の団体、保育の団体全部巻き込んで、県にこちらから幼児教育センターをつくっていただきたい、そういった形でアドバイザーになってしまったわけです。そういう意味では全国的に皆さんが今おっしゃっている中で、地方でのやはり格差があったり、取組の違いがあるというのは、本来であれば令和2年の段階でスタートカリキュラムが日本中で行われたところが、コロナでうまくいかなかったところを今の架け橋期でどういうふうに取り戻していって、さらに言うと、今、私たちの3要領・指針の中で大事にしているものが、小学校とお互いに理解できるかということを、地道ながらやはりこつこつと進めていく必要があるのではないかと思います。
 私たちが平成30年にいただきました3つの資質・能力というのは、小学校以降ではそれぞれの教科で、3つの資質・能力があるわけです。そういうことというのはなかなか一緒に勉強しないと分からないことであって、一方、いわゆる幼児期の終わりまでに育ってほしい姿10というものについても、それは私たちと一緒に勉強する中で、こういう10の姿の中からどういうふうな、いわゆる学習指導要領につながっていくのかとか、教科につながっていくのかということを考えていくと、コロナでうまくいかなかったことを今ちょうど行っている段階ですから、指針・要領に関して言うと、この中で大事なこととして継続していく部分というのは何なのか、また、今、見直さなければならないというのは何なのかというのが、ある程度検討が必要なのではないかなと思います。
 特性としては例えば、直接的なことではないかもしれませんが、これから少子化とか過疎化みたいなものも進んでいく中で、保育の在り方、異年齢児を行うだけということだけではなくて、そういうことは要領・指針上の集団の教育の中でどういうふうに考えるのかみたいなことも、幼児教育の特性として、いわゆる一人一人の特性の必要な体系みたいなことも含めて考える必要があるのではないかなというふうに思っています。
 私はちょっと皆様方と違って、認定こども園を平成24年からやっているわけですけれども、認定こども園の要領というのを相当かみ砕きながら、幼稚園の教育と保育所の保育のよさをどう取り入れながら、仕組みとしても、さらに教育内容としてもどういうふうに進めていくのかというのを個人的に実施してきたつもりでいます。そういう中で、例えば、いわゆる施設関係者評価の学校評価とか、また公開保育、そういうことを通して行うこと。幼稚園では普通かもしれないけれども、保育所では逆にそういうのが加算になってなくて、やっていない土壌なんですよね。逆に言うと保育所であっても公開保育や施設関係者評価を行うことによって、小学校との連携が進んでいくのではないかというふうにも思います。
 必要な条件整備を2つだけ。いわゆる研修の実施や指導の資料については、非常に進んできたというふうに思います。それは3要領・指針の中身がやはり非常に研究された。ただし、今回、教材の開発ということに関しては新しく出来たわけですけれども、なかなかその点については成果を評価されるところもなくて、そこは一つの問題だなと少し思っております。
 幼児教育センターにつきましては、各自治体で随分考え方等が違います。たくさんの方々の力を得て仕組みを作っていくというところから進むことが、また今度の指針や要領を作っていくこととその後の取組の大きな起点になるのではないかと思いますので、進めていただければなというふうに思います。
 今日は雑多な意見だけを述べました。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございました。現場、また、行政に関わる経験の下でいろいろな示唆をいただきました。確かにコロナがまだ続いてはいますけれども、特に3年間、いろいろな意味での研修、また、研修もリモートでできる部分はあるにしても、顔を合わせてやはり話し合うということも必要で、そこが大きく停滞した。それをもう一度やり直しているという感じを私は持っておりますので、そのやり直しを越えてその先に行くにはどこをどうすればよいのか、また、首都圏、東京とともに全国的にどうすればよいのか、少子化が更に進む中で考えなければいけないことは非常に多いということだと思います。
 また、研修については、御指摘のように、恐らく量的にはこの10年間で相当増えたろうなと、調査は知らないんですけれども、恐らくそうだと思うんですが、では、それが本当に保育の質を改善する方向に進んだか、あるいは進んでいるとすれば、そのやり方は何なのかも検討する必要があるというふうに改めて考えております。ありがとうございます。
 それでは、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】  江東区立東陽小学校の校長をしております佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私、この学校で3年目を終わろうとしています。江東区では、幼保小中の連携教育の日を年間2回設けておりまして、先生たちが分科会に分かれて幼小中、それぞれステージを変えて集まる研修を年2回必ず行っています。コロナでオンラインということもありましたが、つい先日は幼稚園の方に出向きまして、皆で集まって協議をするという機会をもったところです。また、千代田区でも指導課長の経験があるのですが、千代田区は、小学校8校、そこに園とこども園が8園あります。千代田区の中でも幼保小の連携教育の日を設けて、当時は、もう6年前になるのですけれども、やはり10の姿を基にしながら、幼稚園の先生、保育園の先生、小学校の先生が協働して学ぶという機会を得て学びを進めているところです。
 私の小学校長の立場の見方から見ると、幼児教育の見方が指針・要領等によってかなり明確になって、先生たちの理解も進みやすい状況が作られているなと感じているところです。総じて私の方から見る園の先生方は、子供を見つめる感度がとても高くて、アンテナが高いといいますか、その指導の様子は直接見させていただいて感動するものもありましたし、すばらしいと感じているところです。
 各学校の方ではスタートカリキュラムを作成して、小学校スタート時点での連続性の意識はだんだんと高まってきていると思っていますし、そういう計画もしっかり作っているところです。小学校は、幼稚園を見るとなおさら思うのですが、子供たちができるということをあまり信じずに、学びを制限してしまうような傾向があります。できるのに手を差し伸べてしまったりとかすることが多かったのですが、昨今はこの意識が解消しつつある傾向にあると思っているところです。
 また、子供の未来を考えて学びを考えていくと、やはり子供に委ねて創造力を発揮できる、そういった単元、ユニットを創り出していくということが必要だなと考えています。個別最適な学びと協働的な学びと言われていますが、私は子供観と指導観というものをいま一度自分たちに問い直す機会だというときだと思っております。そういった意味で環境構成や子供の評価、捉え方においては、幼児教育について、小学校はより学んでいく必要があるのではないか、そして、子供の学びの連続性を実現させていく必要がそこにヒントがたくさんあるのではないかいうことを意識していく必要があると思っています。
 小学校の現状から見ると、学校には多くの園から集まってきますので、どの子にどういう効果があってというところはいまひとつ認識しづらい傾向にあると思っています。評価の観点といいましょうか、その辺りを私たちはどう捉えていくかということは学ぶ必要があります。そういった意味で、今回の論点の中にある幼児教育センターの設置とか、幼児教育アドバイザーといった人たちが園と学校にも関わっていただくような機会があれば、園と学校が相互に学びを中心に高まっていくことができるのではないかと思っている次第でございます。
 本会に参加させていただきまして、たくさん勉強していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【無藤座長】  ありがとうございます。佐藤委員の江東区あるいはその前の千代田区も、東京の中でも先進的に取り組まれているところで、幼稚園、保育園とのつながりも深いと理解しております。そういう立場で是非御発言いただきたいと思いますし、そして、具体的に幼保と小、それぞれ時期が違うので教育の在り方は違うわけですけれども、なおかつ連続性を求めるというのは具体的には何をすればいいのか。まだまだ架け橋の現状を見ても模索すべきことが多いように思いますので、是非御発言を今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、汐見委員、お願いいたします。
【汐見委員】  皆さん、こんにちは。白梅学園大学、東京大学の汐見です。主な論点案に沿って少し意見を述べさせていただきます。
 まず、小学校以降の教育や生涯にわたる学習、最初の項目なんですが、ここに0~18歳の学びの連続性という言葉が出てまいりました。これはとても大事なことだと思うんですが、私は主に保育、特に保育園、こども園にずっと関わってきたことが多かったので、そこでの現状を中心にお話しさせていただきたいんですが、その中で、0~2までの保育と3・4・5からの保育というのには、やっぱり連続と同時にある種の断絶が僕はあると思うんですが、そこのところの理解が今しも進んでいないなということがあります。特に私は0・1・2の保育というのはとても難しいなというふうに最近やっぱり感じていまして、この専門性をもっと上げないと、不適切保育というような問題がこの年齢でたくさん起こってしまうんじゃないか。幼児の死亡事件の調査なんかも私は幾つかしているんですけれども、やっぱり0・1・2が多いです。
 せっかく指針で、0歳と、それから、1・2歳は別の保育内容として分けて、あれは僕はとても大事だと思っているんですが、それを十分に理解した上で、やっぱり0・1・2というようなところの保育は、例えば遠藤さんがアタッチメントの意義をもう一遍強調し直しているというようなこともあって理論的にはいろいろ言われているにもかかわらず、現場では必ずしも0・1・2というのは3・4・5とある意味では原理はやっぱり違うんだという辺りが十分にまだ浸透していないなというのがあります。これをもうちょっと更に強めていって、その上で3歳とどうつなげていくのかという辺りですね。今、幼保小とのつながりはやっているんですが、乳幼つながりというのが本当はとても僕は大事だというふうに思っているんですが、その辺りがもう一つの課題になるかなというのが一つ。
 それから、時間がないので何点かしか言いませんが、その次、幼児教育の特性のところで、幼児の主体性と保育者の意図のバランスという項目があります。先ほど古賀さんがおっしゃってくださったように、現場に行くとまだ、今日何やるかを先生が考えて、そして、子供たちに上手に指示するのが保育だというような、そういうものがかなり残っているという意味では、幼児の主体性あるいは子供の主体性というところの理解というのはまだまだ続けなければいけないということはあるんですが、同時にいろいろそれを強調するあまり、今度は保育の世界では保育者の意図という辺りが曖昧になっているというのをかなり実は見ることがあるんです。
 私は、保育が教育である限り、保育者が質の良い願いとか意図を持っていて、その視点から子供をやっぱりきちんと評価していくということがなければ本当の意味で教育にならないと思うんですが、ただ、自分がどのような願いを持って保育しているかということがきちんと議論されていないために、昔からこうやっているというのでやっている場合とか、それから、幼稚園は「社会に開かれた教育課程」という言葉を採用しているんですが、保育所の方はその言葉が実はないんです。「社会に開かれた教育課程」というのは、私はとても大事な、つまり、カリキュラムを作るときに何の視点で作っていくのかという、そこにはどういうふうに育ってほしいかという、社会の中で活躍する子供への期待が込められるわけですね。そういうことが必ずしも議論されていないということがあって、カリキュラムの中に社会性というのがやっぱり弱くなっているという感じが。その辺りをもう少しきちんとやっぱり議論していかなければいけないんじゃないかというの(音声途切れ)保育者の意図、主体性という辺りが大事である。これは、これからエージェンシーという言葉が大事になってくるというのとつながっていると思います。
 それから、3点目は、幼児理解に基づいた評価の実施というところがあります。この幼児理解ということが私はとても大事だと思って、文科省の場合はそのための事例集とかがいろいろ出されているんですが、実は保育所保育指針には「幼児理解」という言葉が出てこないんです。自己評価ということがあって、保育をやっていてその結果どうなるかというのを評価しなければ教育にならないんだけれども、自己評価ということが入ってきて、そのやり方についてはいろいろまた別の検討会を作って提案してきているんですけれども、その中に出てくるんですけれども、指針の中には「幼児理解」という言葉がないんですね。
 私は、やっぱり子供の行動の内面だとかなんかをどういうふうに理解した上で、それを私は見える化するというか、その上でどういうふうに環境設定していくのかとか、語り掛けるのかというのがキーワードだと思ったんですけれども、そこが十分ないために、自己評価をどういうふうにするかというときに、真ん中にとがっていくはずの自己評価というのが中央に位置付かないようなそういうことが起こっている感じがいたします。私は、だから、保育所保育指針には、今言った「社会に開かれた教育課程」という言葉と「幼児理解」という言葉をきちんと、乳児がいるから幼児理解という言葉は使いにくいのかもしれませんが、何かそれに当たる言葉がやっぱり必要ではないかなということが三つ目です。
 時間がありませんので、一応それだけです。
【無藤座長】  ありがとうございます。0・1・2、特に1・2歳が、3歳以上との連続性・つながりとともに、当然、違い、原理的なかなり違いが大きいという辺りもどこかで議論をできたらしたいと思います。
 また、幼児の主体性と保育者の意図とのバランスというのも何人かの委員がおっしゃっていただいて、このバランスというのは50%、50%みたいな話ではない、もっとダイナミックな関係の在り方だと思うんですけれども、そこをどう表現していくかも大事なところだと思います。
 最後の幼児理解で評価の在り方というのは、幼稚園教育の中では、幾つも指導資料を作りながら議論をこの数十年やってきたところの積み重ねがありますが、それを現在に生かしながら幼保、こども園全体を見渡していくような検討を是非したいというふうに考えております。ありがとうございます。
 それでは、鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  國學院大學の鈴木みゆきと申します。保育者養成に長く関わりながら、子供の生活リズムの研究をしています。どうぞよろしくお願いいたします。
 現行の3要領・指針は、文言とか目指すものに関しての整合性が図られて、私はとてもよく出来ているというふうに思っております。その上で、今回二つの柱が出されておりますので、その二つの柱に沿って三つ申し上げたいと思います。
 一つ目は、幼小接続の問題なんですが、架け橋に関しましては本当に格差がありまして、秋田先生もおっしゃっていたようにコロナの影響はとても大きくて、更に少子化の波がかぶり、情報発信とか実践に関していうと、人との関わりというところにまだまだ足りないな、具体化のものが足りないなというのをすごく感じています。この中でも特に、幼児一人一人の発達に必要な体験というのも次にありますけれども、まさにこここそ、コロナと少子化の影響は想像以上にやっぱり大きかったというふうに思っていて、集団の在り方であったり、保育者と子供、子供同士の関わりであったりというようなところをもう1回きちんと大切に捉えていく必要があるのではないかなというふうに考えております。
 それから、2番目の必要な条件整備の方で一つ申し上げます。私、いっときちょっと養成から離れていた時期があったせいもあるんですけれども、その間に養成校がここまで苦戦すると思わなかった。学生集めに今、非常に大変な状況にあり、志望者が減って、ということは学生の力量形成に非常に苦戦しているということなんです。学生が保育者になっていく、保育者が保育者として育っていく、そこに大変な危機感を持っております。一方で、彼らは情報、IT化、ビジュアル化にはとても詳しい。なので、そういう能力の高さがあるので、これまで文部科学省が一生懸命作ってきた指導者用資料とか教材とかも少し意趣を変えてというか、ビジュアル化、IT化の要素も取り入れながら、学生や新任の保育者が分かりやすく、かつ入り込みやすくというようなところを工夫する必要があるのではないかなというふうに考えております。指導資料の開発や教材の開発なども是非お願いしたいなというふうに思っております。
 以上3点です。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございます。特に養成校の問題は、私もそこに属しておりますので身にしみるところですけれども、高校生の数が減っていくのに応じた程度ではなくて急激に減ったこの2年ですけれども、それが特定の大学・地域ではなくて、どこでもそうだということに私もショックを受けております。それについてのいろいろな試みは、小中学校の教員については文科省は一生懸命なさっていただいていると思うんですけれども、保育系の方も是非、これは文科省とこども家庭庁両方が一緒になって取り組まなければいけない。そういう魅力事業が今年度動いているのは承知しておりますけれども、更にと思いました。それ以外にもそのとおりだと思います。
 それでは、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】  目黒区立みどりがおかこども園の高橋と申します。よろしくお願いいたします。幼稚園が45年、その上にこども園が10年で、55年の歴史がございます。こども園になって10年過ぎました。その中の歩みについてこの論点と一緒にお話ができたらいいなと思っているんですが、この論点が物すごく大きくて、一つ一つ深く踏み込んでいきたいぐらいとても難しいというか、そういうのをちょっと感じておりまして、まず論点に沿って進めさせていただきたいと思います。
 まず、小学校との接続ですけれども、これが掲げられるようになって接続の意識はすごく変化していると思います。幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を中心に、振り返りに活用しながら小学校と一緒に連携を進めていこうというふうには思えるんですが、実践にしていくとなかなか難しい状況がある。また、0から18歳というところまでを踏まえた一貫性ということは、更に難しい状況があります。
 現場は多忙感に結構追われておりますので、そこら辺のところまで本当にみんなで余裕を持って語り合ったり話したり、じゃあ、ここのところを架け橋で育てようねといったところまで現場は進まない。そこが課題でもあると思います。ただ、資質・能力を育むといったところでは、その言葉で連続性や一貫性の理解がとても進めやすいと感じるところがあります。心情・意欲・態度から子供の姿をイメージして入っていくと、すっと幼小連携の先生たちと一緒に進められるというところが感じ取れます。
 (2)の幼児教育の特性のところですけれども、これはどれも非常に難しくて、そして、内容が濃い。特に幼児の主体性と保育者のとのバランスというところは、ここでは語り切れないくらいな難しさ。でも、それを環境を通して行うということでの理解だったりバランスだったりというところが求められているんだなというところは感じますが、これをダイナミックにバランスよく、そして子供にというところではまだまだ、「やっていますよ」とどこも言うかもしれませんが、「やっていますよ」の内容がそれぞれ違うというところでは大きな差があるのかなと思っています。
 また、下の子供一人一人の特性とか、それから、ICT、評価については、「やっています」と言っていいと思うんですが、十分やり切れているかというとちょっと疑問が残るところです。ただ、ICTの活用についてはすごく進んだなと思っています。コロナ禍において、ICTを使って幼小の学級と連携をしたりというところが意外なところで進んだので、こういうところでは活用できてきたなというふうに思っています。
 また、2番の必要な条件のところですが、根本的な幼児教育の大切さを知らせていくことの難しさをすごく感じています。何が幼児教育にとって必要なのか、どういうことを伝えなければいけないのか、互いに学び合って専門性を高めるということがどういうことなのかということが、現場の業務量を減らして、時間を取って研修・研究を積み重ねていかないと難しい問題だなというふうに思っています。
 すみません、マイナスのことばかりなんですけれども、目黒区でも幼保小の研修があったりするんですが、みんな学びたいと思っているし、みんな意欲的に何かを進めたいと思っているんだけれども、そこに時間的なこと、人材的なことがのし掛かってくるなというのが否めない現状です。以上です。私も勉強させてください。よろしくお願いします。
【無藤座長】  ありがとうございます。現場のかなり厳しい状況もお話しいただいて、時間・人材が十分でない状況というのは恐らく想像できるんですけれども、じゃあ、それをたくさん渡しますよという、なかなかそういう実情も国の方にも自治体の方にもないかなという感じなので、そこら辺をどうやって現場の園・保育者を助ける形で少しでも可能にしていくかのかなり工夫。それからまた、発信するにしても、保育の準備・反省にしても、効率という言葉をそういうときに使っていいか分かりませんが、それを短い時間の中で、でも、有効なものにしていくにはどうすればいいかももう少し踏み込んでいく必要があるのかもしれないと思いました。ありがとうございます。
 それでは、田中委員、お願いします。
【田中委員】  神戸大学附属幼稚園の田中と申します。よろしくお願いいたします。私も幼稚園の現場にいることと、それから、地域の園に呼んでいただいて、いろいろな研究とか研修に関わらせていただいたりしています。
 特に要領・指針が共通になったということで、保育所、それから、認定こども園、幼稚園変わらず、教育の部分についてしっかりと一緒に研修するということも起こってきているなというふうに思います。自治体によっては随分前から保育所と例えば幼稚園で人事交流が行われていて、当たり前のようにされているところも兵庫県の中にもあったりするんですが、一般的には一緒に研修するというのはなかなか難しいというのが現状としてあるんじゃないかなと思います。
 例えば公立の園が研修する際に、保育所さん、こども園さんを公立、民間さんかかわらず呼んで、研修の場として機能しようと努力されるようなところもあったりするので、連携をうまく取りながらみんなで高め合うという動きには少しずつなってきているんじゃないかなというふうに思います。そのときには、これまでも出されていましたが、参加型で学び合うという手法で研修をするというのが大事なことだなというふうに思います。一方で、やっぱり保育の長時間化によって研修に出づらくなっているという話はよく聞きますので、そこを乗り越えてうまくやっているところの知恵を共有できるのが大事なことかなということを思います。
 幼保小の接続を推進するに当たっては、自分は資質・能力にすごく高い可能性を感じています。幼児期の終わりまでに育ってほしい姿も使う、いろいろな武器を現場は得て、それを使いながら連携・接続ということを進めていっていると思いますが、ただ、この資質・能力がもっと明確になっていけば、より資質・能力に対しての理解が深まるとかということにつながっていくのかなと。そうすると、小学校もこの3観点で評価をしているわけですから、よりお互い理解も進みやすいかな、子供の見取りも共通になっていくのかなということを感じていますので、資質・能力の明確化みたいなことは大事に考えたいなというふうに思っています。
 あと、資質・能力を育むことに向けて、保育者がもっと育みたい資質・能力を自覚するのは先ほどの明確化が必要だと思うんですが、そんなことを進めようとしたときに、今、資料の15ページに、要領等の資質・能力と狙い・内容、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係を整理してされているものがありますけれども、この関係性をしっかりと理解しているということがすごく大事だなということも思います。ただ一方で、ここで何か戸惑われている方もやっぱりあって、ここの関係をちょっと整理しながら考えていくということがかなり多いなということを自分は関わりながら感じています。
 整理しながら、感性ですごくすてきな保育をされる先生方もたくさんおありなんですけれども、それをしっかりと言語化して伝えないと発信がうまくいかなくて、感性を磨くということはどうやればいいのか具体的には分からないけれども、言語化するということについてはある程度その方法を明確にお伝えすると、しっかりと保育をどうするのかということを自覚しながら保育に向かわれるという変化を自分は感じていますので、その方法を保育の例えば環境の構成とか教師の援助とか、あるいは狙いをどう具体にすればいいのかという方法を明確に伝えていくということが大事かなと思います。
 しっかりと取り組まれているところもあれば、変わっていこうという意識を高めているところ、それから、なかなか変わろうとすることに意識が向かわないところ、様々あるんですけれども、いろいろな現場があるなというふうに思います。ただ、しっかりやっているなと思っている園であっても、今までも出されていた先生方もいらっしゃったんですが、例えば時間帯によってとか、あるいは時期、例えば行事があるとかいう時期によって、主体的・対話的で深い学びになっているかなということは少し疑問を感じることもあって、そのこともいろいろなところでお話しさせていただくと、行事の持ち方を変えるということもやっぱり起こってきたり、そんな事例も聞きますので、自分のところはしっかりとやっているんだと思い込んでいるとなかなか変わらない。何かしら変わる、改善するところがあるんだという気持ちに皆さんがなっていくようなことが大事かなと。そのためには架け橋の取組というのはすごく武器になるんじゃないか、これからすごく期待されるんじゃないかなということを思います。ただ、一方で、やっぱりなかなか進んでいないなということも感じます。
 あと、条件整備のところでは、残念ながら、兵庫県にまだ幼児教育センターが出来ていないんですけれども、そういったところは取組が進んでいくといいなというふうに思っています。ただ、そこでも自分がよく分かっていないのが、そういう体制が出来たことですごくよくなったというところもおありだと思いますし、出来ているけれどもなかなか進まないというところももしもあったとしたら、体制を作ったときにどういうことを大事にしたらいいのかということが分かるといいなということを思います。例えば幼児教育の専門家がそういった職に就いているとは思うんですけれども、そうじゃない方だったりとか様々いろいろな状況があるのかなというふうに思っています。
 あと、最後にですが、幼児教育が大事にしていることを一般の保護者がどのように得るのかというチャネルがないのが自分は一番課題だと思っていて、幼児教育の大事にしていることが周知されない、最も大きな問題だなと思っているところです。うちの園でも出来て、年間数百人ぐらいになってしまうので、伝えられるとしたら、それは各園に委ねられているとか任されているところもあって、そこには文科省の動きもあるというふうにお伺いしているのですごく期待したいなと思っているんですが、保護者がそういう情報を得る、そういう仕組みをどう作っていくのかということも大事に考えたいなと思っています。
 以上です。
【無藤座長】  ありがとうございます。幾つか出していただいて、特に資質・能力と幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の関係とか、それをより明確に分かりやすくどうすればいいのかという問題とか、それから、その中でも幼児教育センター、実は量的には今、都道府県でかなり広がってきたんですけれど、では、その在り方、よりよき在り方は何かということはまだ検証していないと思いますので、それが必要だというふうには考えております。
 それでは、鍋田委員、お願いいたします。
【鍋田委員】  よろしくお願いします。茅ヶ崎南保育園の鍋田と申します。私は今、現場に、去年まで市役所にいたんですけれども、現場に戻ってきて1年目でして、まだまだ施設長としては経験が浅くて、保育士時代からの方がいろいろな思いが募っているというところなんですけれども、まずは現場でこの指針の改訂後どのような感じで変わってきているのかというところを身の回りのことで今お話しさせていただければと思います。
 まず、幼児教育と小学校教育の円滑な接続という部分では、保育者はやはり小学校への接続の部分についてとても強く意識するようになってきたなというふうに思っています。小学校への接続の部分が、今の保育をする上でとても大事であり、どうつながっているのか、今後の子供の成長にどのような願いを持って私たちは関わっていくのかという意識がすごく根付いてきました。
 とてもそれは喜ばしいことであって、これまで私たちの保育の現場というのは、やはりたくさんの子供をどう動かして時間まで過ごさせていくのか、安全に過ごさせていくのか、それにはやっぱりその子供たちを統制できる先生がすごく力がある先生なんだというような流れが一時期までありました。そして、改訂後はそういったことが少しずつ意識が変わってきまして、やっぱり私たちは何のためにこれに今関わっているのかということの大事さとか方向性を明確に示していただいたというところはとてもよかったなというふうに思っています。
 また、幼児期までに育ってほしい姿ということが示されましたけれども、これは小学校の先生との共通言語として大事なことなんですけれども、やはり今、私たちとしては、保護者の方とこれを共有したいというふうに思っているところが強くあります。そして、それはとても意義のあることで、保育園がこれから変わっていきたい、変わらなければいけないといったときに、やはりお母さんたち、御家庭の方でもいろいろな、そんなふうにしてただ遊んでいていいのかとか、もっと小学校に向けてこれをやってほしいといった意識が恐らくある中では、この10の姿を是非理解してもらったり、私たちはここに向けて今取り組んでいるんだということをしっかり力強く訴えていきたいと思っているんです。
 ただ、これにはやっぱり小学校も変わっているんだよ、小学校の先生もこういうことを意識して変わっているし、実際現場も変わっているということを心から思って伝えたいというか、実際はどうなのかというところを半信半疑に思いながら伝えている現状があるので、是非安心して送り出したいという部分では、ここを是非もっと小学校の先生や幼稚園の先生、私たちの中で深めていきたいし、深めていくための仕組みが必要なので、ここは本当になかなかできない。そして、お互いに理解していくという部分の研修とか、子供の姿を伝え合っていったり、理解し合っていくというところが進まないなというのが今やはり思っているところです。
 そして、二つ目に幼児教育の特性というところです。保育所では養護と教育の一体化というところを軸に取り組んでいるんですけれども、私たちが教育という言葉を捉えるときにどういうふうに捉えるかというところでは、まさしく環境を通したもの、教育、遊びであるということがすごく心の支えというか、私たちも幼児教育をやっているんだ、遊びが大事なんだというところがきちんと明確になっていくことがとてもうれしいなというふうに思っています。
 そして、保育所というのはやはり家庭とは異なる場であるというところで、人・物・事象との積極的な関わりがあるというところでは、今、子育て支援という部分では、家庭の養育力がちょっと下がってきているんじゃないかという中では、そういった場の提供であったり、そこをきちんと私たちがやっていくというところが使命かなというふうに思っているので、そこは保育者みんなと共有しているところです。そのような中で、やはり先ほどからも出ていましたけれども、主体性のことの理解と保育者の意図というところの間では本当にまだまだ揺れています。特に計画性のところと個別性をもっともっとしっかりやっていきたいというところでは、働き方というところもありましたけれども、人手不足も含めてジレンマがあるというのは保育園も同じであります。
 そして、最後にですけれども、必要な条件整備というところでは、職員一人一人が客観的に保育を振り返ることができ得るか、また、クラスを出て見る、園を出て見る、地域を超えて見るといった取組が現場は必要ではないかというふうに感じているところがあります。
 以上です。よろしくお願いします。
【無藤座長】  ありがとうございました。保育所の現状と可能性を明確にしていただいたので、保育所の在り方も視野に入れながら議論を進めたいというふうに思います。ありがとうございます。
 それでは、渡邉委員、お願いします。
【渡邉委員】  すみません、ちょっと暗いところにいるので申し訳ありません。今日、横浜で架け橋の研修会があってという形で、途中から抜け出してここにいます。皆さんがお話したことと重複するところがあるんですけれども、やっぱりコロナがあって、少子化があって、働き方改革があったりとかという社会の変化があったところで、一つは保護者の意識が変わってきたという感じがあります。人と人とがつながりがないようなところがあったりとか、子育てのアウトソーシングというか、子供を預けてしまえばいいとかという形になってきています。国としては、幼児教育や小学校教育がこのように変わっていくんだという形で、幼稚園教育要領とか幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針の中で示されてはいるんですけれども、現場ではすごく二極化しているといっていいのか、本当のところは分からないですけれども、やっぱり子供ではなく、保護者の方に寄り添ってしまうと、子供を預かる形の方が大きくなってしまって、子供を育てるという話ではなくなってくるような怖さを感じております。
 そうは言いながら、では幼児教育に何を求めるかといったときに、どうしてもハウツー的なものとか、何かお稽古事的だというものに保護者の方の意識が強かったりすると、それに幼児教育が引っ張られていく。そうではなくて、本当は本来、幼稚園教育要領で求めているものを、ちゃんと子供の育ちをどう実現していくかというところに軸足が向いてくるといいなと思っています。
 そのときに、やっぱり架け橋の検討会に参加してみた中で、幼児教育の考え方は小学校教育を変えていく原動力になるんだということが見えてきたときに、結構すごい光が差してきました。こういう言葉がある本の中にあったんですけれども、「受動的で一方的で浅い学び」と聞いたときに、「主体的・対話的で深い学び」とは対極の教育です。うちの園の教育・保育のあり方を変えてきた中で、一斉的なところから本当に遊びを大事にした教育・保育に変えてきた中で、結構な葛藤があったときに、幼稚園とか保育園とか認定こども園でも教育や保育を変えるのも大変だし、本当は小学校が変わっていくのも結構大変だろうなとすごく思ってはいるんです。
 幼稚教育がすごく積み重ねてきたプロセスとか、ある意味苦労してきた部分というのが小学校の中にちゃんと入っていって、やっぱり子供たちが生き生きするとか、それから、探究的な活動で問いを持ったときに、子供たちがいろいろなことに挑戦していったりとか、調べたり、失敗しても繰り返していくような、そんなような子供たちをどう育てるかというときに、学校もそうですし、園もそうでしょうけれども、学ぶことの面白さとか、園や学校はわくわくできる場なんだとか、子供が育つ場なんだということを改めてきちんと幼児教育側から発信できるようなその流れをちゃんと作っていかないと、日本の教育が全部駄目になるし、日本の子供たちがばらばらになっていくみたいな、何かそこまでの危機感を僕の中では感じてはいます。
 その一つの例が、共生社会の実現で、障害のある子供たちがちゃんと社会に位置付いていくかどうかというときに、一斉でみんな一緒のことをさせようとするとか、教師の意図で動かそうとしたら、多分その子たちははじかれていきます。その子たちが園や学校、地域の中で共に育ち合っていく、多様さを認め合っていくみたいなところが、本当は人としての学びとしても大事だし、それから、思いやりが育ったりとか、地域が出来てくるという中でもすごく大きな役割を果たします。このような観点からも、幼稚園、保育園、認定こども園の役割とかは物すごく大きなものがあるんだと思っています。
 特に0・1・2歳では、僕は多分親が親として育っていくときに、「こども誰でも通園制度」みたいなものをやろうとするならば、そこの中で子供が育つというのはどういうことかというのは、改めて、これは文科省、厚労省、こども家庭庁関係なく、本当にその辺のところがきちんと保護者の中にも分かっていってもらいながら、社会全体が子供真ん中社会を創っていく、その中心には幼児教育があるんだということを改めて、文科省もそうですけれども、こども家庭庁の皆さんにも何か発信していただけたらありがたいかなということを思っています。以上になります。
【無藤座長】  ありがとうございます。幼児教育における学びの姿、それが楽しくわくわくするものであることを発信したい、まさに共感しているところです。
 それでは、大豆生田委員、お願いします。
【大豆生田委員】  今日、すみません、遅れて参加で申し訳ありません。今日は渡邉さんと同じ横浜市の架け橋の研修会で、今、会場が6時になったら電源が切られるということなので、今間に合っていますが、よろしくお願いします。
 皆様のお話にあったように、一つは、コロナも含めて大きなピンチがたくさんあったんですけれども、私の実感としてはチャンスがいっぱい生まれてもきたなというふうなのが実感です。というのは、やっぱり今回の幼稚園教育要領、保育所保育指針の改訂で、資質・能力の話と10の姿の話で、子供主体の遊びが学びということをちゃんと学びとして位置付けてくださったことが持っている力はすごくて、だけれども、どこでどう変わっていっていいかということを皆さんが実は難しいというふうにも感じられています。
 それで、私、全国のあちこちの現場の先生方の研修に御一緒させていただいているんですけれども、物すごくやっぱりこの指針・要領の考え方に沿って変わっていこうという動きの中に私はたくさん身を置かせていただきました。そのときにやっぱりとても大事なのは研修の在り方。一つは、園内でどういうふうに語り合う風土を作っていくかというマネジメントのことなんですけれども、しかし、園内だけでは難しいという声が今、別の研究でも見えてきています。外部の力をどう使えるかということ。そうすると、地域というのがすごく核になってくる。今日の横浜市もそうなんですけれども、地域の中で実践を持ち寄ったり、あるいは公開したり、我々の言い方だと往還型の研修、受けて終わりではなくて、自分のチャレンジテーマの下でこうしてみたいの保育をしていくというふうな研修の在り方が物すごいやっぱり成果があるという実感を持っています。
 このベースになっているのは、厚生労働省で汐見先生の下で自己評価のガイドラインなどを作らせていただいたときに、まさに語り合う風土をどう作っていくのか、園内と地域なんだという考え方、そのことがとても重要で、そのときにそれをコーディネートしていく役割ということをどう育てていくかということが極めて重要だということ。それは園内もそうなんだけれども、地域もまさにそこに核があると。秋田先生の本の中で、園内研修のいわゆるファシリテートする人の役割の方にも書かせていただきましたけれども、やっぱりそういう人の役割がすごく。幼児教育アドバイザーが増えていくだけではなくて、今、例えば横浜市ではちょっと先取りになりますけれども、ECEQと似たような仕組みを作っていて、現場から30代とか40代の先生たちが、自分の園の園内研修だけではなくて、外の園の公開保育のファシリテートにも関わっていくような人材も含めて、そういうふうなことの、それは横浜だけの話ではなくて、あちこちでやっぱりそれができ得るという可能性が一つ重要だということが1点です。
 それから、6時に出なければいけないので長く話してはいけないんですけれども、ごめんなさい、2点目は、架け橋がやっぱり物すごく鍵で、これは横浜だからということもあるんですけれども、やっぱりこんなに同じ土俵で実践を持ち寄る、さっきの実践を持ち寄る研修なんだということが。今日の研修の中ではほぼ同じ言葉で皆さん同士が語っていた。それはかなり進んだ事例かもしれないけれども、その小さなところからこれを広げていく、私の言い方で言えば、往還型の実践を持ち寄る研修なんですけれども、こういうことが可能性を持っているのではないかということが2点目です。
 それで3点目が、ICTと評価の話です。特にドキュメンテーションがこのコロナ禍の中で物すごく広がりました。これは丁寧に記録をしていく、ただし、時間がないから、時間のない中で、写真記録でもちょっとだけでも何々ちゃんの話をちゃんと振り返る風土を作っていく。対話する風土を作っていく。更には、それは職員間でもそうだし、子供にも可視化するし、それから、保護者をどう巻き込めるかがとても重要な話で、子供主体の遊びが学びの話を、保護者を巻き込んでこれはムーブメントにしていかないとなかなか広がっていかないということになると、この仕組みをどう作っていくかということがとても重要だなということで、ごめんなさい、いっぱい話したいんですけれども、以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。語り合う風土、それを作るコーディネーターの役割、更にそれを実践の形の中で例えばドキュメンテーションを利用してと、非常に具体的なところまで踏み込んで、ありがとうございました。
 それでは、田村委員、よろしいですか。
【田村委員】  國學院大學の田村です。とりわけ小学校、中学校、高等学校の教育に関わってきた立場から発言をさせていただきたいと思います。1ポツの(1)と(2)に関して三つお話をさせていただきたいと思います。
 まず、一つ目は、一層の体験活動の充実を強調すること、その新たな価値を整理し示すことです。なぜかというと、ChatGPTのような生成系AIが出てきたわけですが、言ってみれば、これは記号の世界ということになるかと思います。このことはより一層子供たちの学びにおいては身体性が重要になるということを暗黙のうちに明示していると考えます。つまり、身体を通した学び、あるいは感覚を生かした学び、例えば子供たちが驚くとか、喜ぶとか、憧れるとか、違和感を感じる、こういったことが極めて今後の学びの土台になるということを明示し整理すること。そして、これが認知系と言われる部分だけではなくて、いわゆる非認知系の部分、認知系をハンドリングする部分を確かに育成していくということをはっきりと語る必要がある。幼稚園教育要領等においては、私は非認知系なる学びに向かう力、人間性がかなり明示されていると思いますので、それを体系的に整理する。そのことを幼児教育のみならず、小学校以降の中高等学校の学習指導要領にもつなげていくということが大事ではないかなと思います。
 二つ目が、幼児期の教育と小学校以降の教育との教育課程上の接続を一層明確にするということです。架け橋期のカリキュラムの議論をしていますと、小学校の先生は資質・能力の三つで語り、幼児教育の関係の皆さんは姿で語ると、こんな場面が出てくるわけです。どうしてもこの辺の言葉がうまくつながらないところがありますので、言ってみれば、10の姿や内容を三つの資質・能力との関係で整理し、そのつながりを見える化するということが必要ではないかなと思います。その意味では、その背景にある幼小中高という大きなつながりの中での教育課程を体系的に確認し、その上で幼児期がどんな役割を担うかといったことをもっと明確にするといいのではないかと考えます。
 3つ目が、幼児期の子供たちを確かに育ててきた育成の方法が、小学校以降の学習の方法に生かせるということを提言していくということです。どういうことかというと、小学校で言うところの能動的な学習やアクティブラーニング、主体的・対話的で深い学び、あるいは個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実、これは恐らく一人一人の子供が自分で考えて自分で行動できるようなことを期待している。あるいは、探究という物事の本質を探るといったことは、幼児期の学びがまさに基盤にあると考えていいのではないかと思います。例えば幼児期で育った自発性とか能動性とか協働性とか共感性といったものが恐らくそこに結び付くとするならば、幼児期で育ててきたこういった力は、環境を通してとか、状況を整えるとか、あるいはプロセスの充実があるわけですから、それらを小学校以降の学習の方法に結び付くように整理し、うまく連続するものにしていけるのではないか。この辺のところが考えられるといいのではないかなというふうに思いました。
 以上です。ありがとうございました。
【無藤座長】  ありがとうございます。体験活動、身体性、感覚性とか、幼児教育の位置付け、更には方法の連続性。ありがとうございます。
 それでは、最後かと思います。奈須委員、お願いします。
【奈須座長代理】  よろしくお願いします。3点ほどお願いします。
 まず資質・能力ということなんですけれども、今回、3要領・指針もそうですし、幼稚園から高等学校の学習指導要領等まで全部一貫した形に理念をそろえたというのが大事で、その核が資質・能力という表現かと思います。そして、資質・能力というのは、幼児の発達とか幼児教育から出てきた概念で、幼児教育ととても親和性がある。それが高等学校まで一貫したということの意味はとても大きいと思います。なので、この場でこそ、資質・能力というのが何か、それを育成するというのがどういうことかということを一層明確にして、小中学校以降にも影響を与えたいと思います。
 現行の指導要領を作成中に夭逝された三宅なほみ先生が、資質・能力は育成したり、身に付けさせたりするものではなくて、そもそも子供の中に芽としてあるので、顕在化と洗練を図ればいいんだということをおっしゃっていたのがとても印象的です。資質・能力というと、三つを何か要素のように外から身に付けさせるような誤解が生じているのではないかと思います。この辺りを幼児教育の段階から正していって、上につなげていきたいと思います。
 二つ目は幼小連携のことです。幼小連携を考えるときに、相手の小学校以降がどうなるかということが大きな問題で、小学校以降も大きく原理的に今回変化をしましたけれども、実践がどうかというところはやはり丁寧に見ていかなければいけない。まだまだ弱いと思います。これにはやはり歴史的な違いというか、そもそも幼児教育は発達保障という原理で生まれてきたと思いますし、小学校教育は国民形成、国民統合という概念で生まれてきたので、教育の原理がもともと違うんですね。150年たって大分似てきましたけれども、根の深い違いがある。これを埋めていくということをどこかで考えなければいけないんだろうと思います。
 生活科が出来たときに理科の人たちが、間に合わなくなるとおっしゃいました。つまり、6・3・3、12年間で理科をやったのが10年になるから足りないんだと。それは18歳で理工学部に入るときにこれだけのことが身に付いてなければいけなくて、だから間に合わなくなるという表現になる。上から下に向かってカリキュラムを作っていたのだなと私は思いました。子供の自然認識の発達が下から育ってきて、それを盛り立てていくということではないんじゃないか。今もどうなんだろう。その辺りをやっぱりしっかり考えていかなければ、幼小の連携・接続というのはできないと思います。その意味で、発達という筋道でカリキュラムを下から積み上げていくような議論で幼小を考えていく。逆に言うと、幼児教育の在り方や事実から、小学校はこうしてください、こうであったほうが子供はうまく育ちますということを突き上げていくぐらいの議論をしていくのが私は大事だと思っています。
 そうは言いながらも、小学校も大分変わってきました。特に令和答申では、個別最適、協働、それから、GIGA端末が入ってきたことも大きいです。GIGA端末というのは1人1台なので、本当に非同期、分散ということが普通になってきました。そろえない、教師が前に立たない教育というのが意外かもしれませんが、デジタルから動き始めています。ICTも含めた環境に自ら子供が働き掛けて、子供が自律的に学びを進めるという動きが起こっています。これはまさに幼児教育的なことですし、皆さんの言葉で言えば、環境を通して行う教育という原理。先ほど田村先生がおっしゃったことです。この環境を通して行う教育を、幼稚園、保育園はもとよりですが、小学校以降も教育方法のレパートリーにしていく。田村先生おっしゃったとおりですが、それを是非進めていきたい。
 それによって、幼児教育と小学校教育で教育方法がそろってきますので、そういう原理的な整理が多分必要かななんて思っています。やっぱり上に従わせるのではなくて、下から育てていって上を作っていく。それで全体が整合するように18歳までのカリキュラムを作っていくということの一番ベースの議論、原理的な議論がここでできて、それがまたいろいろなところに伝わっていくといいなと、そんなことを思いながら伺っていました。よろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございます。資質・能力や原理の部分、更に個別・協働に進む部分は、幼児教育からむしろその原理を明確にして発信し、小学校につなぐという、非常にポジティブな御発言をいただきました。ありがとうございました。
 さて、ちょうど時間が18時を過ぎたところであります。いろいろ御意見あろうと思いますが、ここまでに今日はさせていただきたいというふうに思います。
 私の理解といたしましては、基本的にこの論点案の方向でそれを深めていくということでの御意見かと理解いたしました。それを受けて次回以降どういう形でこの議論を展開するかということについて、事務局からお話をお願いしたいと思います。
【横田幼児教育企画官】  次回の検討会は、資料4のとおり、2月13日10時から12時を予定しております。無藤座長からも今御説明あったとおり、無藤座長と事務局の方で準備をしたこの論点案を次回以降深めていければと思っております。無藤座長から御指名があった委員の先生方からの御発表もお願いしたいと考えているところでありますので、御発表をお願いする委員の皆様には、別途事務局より御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤座長】  ありがとうございます。ということで、今、目の前に、本年度といいますか、3月までの予定の日時、また順次その中で毎回毎回考えながら進めていくという感じであります。次回の御依頼をすると思いますが、よろしくお願いいたします。
 3分過ぎてしまって申し訳ございません。それでは、本日予定した議事は全て終了いたしましたので、これで今日は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――