全国的な学力調査に関する専門家会議(令和5年4月20日~)(第6回)議事要旨

1.日時

令和6年5月16日(木曜日)15時~17時

2.場所

Web会議(文部科学省17F1会議室)
※YouTube配信にて公開

3.議題

(1)令和5年度の学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究の最終報告について
(2)その他
 

4.出席者

 委員

 耳塚座長、大津座長代理、足羽委員、磯部委員、川口委員、斉田委員、貞広委員、土屋委員、中田委員、益川委員、三浦委員

5.議事要旨

【議事1】令和5年度の学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究の最終報告
・資料1に基づき、事務局より令和5年度委託研究の概要についての説明があった。
・資料2に基づき、理科教育における特徴的な取組等に関する分析について、福島大学より説明があった。
・資料3に基づき、我が国の児童生徒の理科の学力や学習状況に関する傾向等の分析について、事務局及び宮城教育大学より説明があった。
・資料4に基づき、令和5年度全国学力・学習状況調査の英語の結果を活用した専門的な分析について、横浜国立大学より説明があった。
・資料5に基づき、令和5年度全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査(うち、挑戦心、達成感、規範意識、自己有用感、幸福感等)の結果を活用した専門的な分析について、事務局より説明があった。
・各報告について、説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

 

「理科教育における特徴的な取組等に関する分析」の発表に対して

【委員】  学校質問紙を使うと今回対象になっている学校とそうでない学校との比較ができる。例えば、主体的・対話的で深い学びの取組や理科の指導法、ICTの活用など、どのように違うのかある程度傾向がつかめるのではないかと思うが、その辺り何か分かることがあったかお聞きしたい。
【鳴川准教授】 今回は時間等の制約があり、そういった視点での分析が行えていない。時間があればこれからさらに試みたい。
【委員】 今回お話しいただいた取組を行っている学校は多いと思うが、その程度にどのくらいの違いがあるのかというところまで、データで示していただくとさらに分かることがあると思うので、ぜひ追加で分析をいただきたい。
 
【委員】 2点質問がある。1点目は、訪問調査先の小学校について、教科担任制が導入されていたのか、あるいは専科の教員か学級担任が教えているのか等、訪問した学校の状況や、また、その状況によって何か違いがあるのかも教えていただきたい。2点目は、理科の教員、特に中学校での講師不足がある。それを補うために、関係機関、大学等との関係について具体的に教えていただきたい。
【鳴川准教授】 小学校で訪問した学校では、教科担任制をとっている学校もあったが、学年内の教科分担制を行っている学校も見られた。学年内で、それぞれの教員の得意な教科を生かして指導していた。また、中学校の教員が小学校で授業を行う取組も見られた。
【田代教授】講師不足への取組については申し上げることがないが、学校に勤務している講師の方と予備実験を一緒に行うなど対話を大切にしながらフォローアップをし、学校の理科の授業の質を担保しようとされている学校が見られた。
 
【委員】  本調査研究の総括の部分を見ると、ここ数年、国の方で推進している授業改善が進んでいる学校が、全国学力・学習状況調査の教科調査の正答率も高くなっており、成果が上がっているという風に感じた。教員間での日常的な情報交換や単元を意識した授業構想、また生徒目線での指導の在り方等、授業改善がまさに進んでいる学校だからこそ成果につながっているということを感じたので、こうした学校が具体的にどのような取組を進めているのか、広めていくことが必要だと感じた。
【田代教授】  訪問した各学校の具体的な取組の詳細については、報告書の最後に資料として掲載しており、その資料から各学校の具体的な取組を確認していただけるので、御覧いただきたい。
 
【委員】  発表の中で、中学校の校内研修等で授業イメージを統一化して実践がなされているということをお示しいただいたが、授業イメージを確立するために、例えば全国学力・学習状況調査の調査問題や結果を効果的に活用しているなど、研修の中身について、何か示唆を得られるようなことがあれば、教えていただきたい。
【田代教授】 学校のビジョンを作るうえで、学習指導要領の趣旨、主体的・対話的で深い学びとはどういう授業なのか、学習評価はどのようにあるべきかなどについて、それぞれの教科の具体例を示しながら、研究主任等を中心として共通理解を図っていくことをされている学校が多かった。
 
【座長】 訪問調査を実施する前の段階でアンケ―ト調査を実施されているが、この手法は今後の専門的な課題分析に関する調査研究でも取り入れたら良い工夫だと思った。しかし、残念ながら回収率が低い。この点について、いかがか。
【鳴川准教授】  回収率が低かった直接的な理由は分かりかねる。ただ、訪問にあたっても訪問受入れ不可の学校が数校あり、その一つの要因として挙げられたのが、学校の状況が訪問を受け入れられる状況になっていないということだった。多忙感であったり、新型コロナウイルス感染症の影響であったりが回収率の低さに影響した可能性も考えられる。
 ただ、アンケート調査を実施することで、かなり視点が絞られたので、アンケート調査を実施したことは、有効な手立てであったと思っている。
 

〔「我が国の児童生徒の理科の学力や学習状況に関する傾向等の分析」の発表に対して〕

【委員】 効果量を基に色々と議論した調査研究となっているが、教育政策の効果については、効果量が小さかったから意味がないという話にはならないと思う。中長期的な影響や費用対効果等、他の影響も様々見ながら議論しなければいけないと考えられるので、効果量のみで議論するのは危険ではないかと思った。
【田端教授】 効果量については、ご指摘のとおり小さいからと言って意味がないとは思っていない。今回は、経年変化での1つの目安として効果量を使った。小さな変動でも世代的な学力低下だという風に論じて良いのかというところに疑問があり、1つの目安として効果量を使い、効果量にして0.4程度のところがなければ維持していると評価してよいのではないかという仮説のもとで行ったものである。
 
【委員】 1点目は、最初のご報告にあったIRTで年度等化したという部分は、年度ごとに違う問題を行っているので、年度ごとにIRTのスコアを計算されているのではないかと思う。そうすると、実質、毎年、平均標準偏差を揃えたスコアをつくっているということになるので、年度間でスコアが変わらないことは当然であり、年度間で学力が変化していないということの主張の素材にはならないのではないかと思った。2点目は、男女間での理科の志向の程度の違いの部分で、「将来、理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思う」という質問になっているが、医療系や看護系も理系に入ると思うが、その分野も含んでいると明確に分かる聞き方をすると回答の割合が変わってくるのではないかと感じた。 
【田端教授】 1点目であるが、完全な等化ができているわけではないが、正答率との比較とはわけが違うので、便宜上ではあるが使える手法である。あくまで便宜上であるので、PISAやTIMSSの効果量を目安としながら検証を進めたところである。2点目については、PISAの質問項目の医療看護の職業に就きたいかでは、女子の肯定的回答が比較的高い結果であったので、全国学力・学習状況調査の質問項目についても検討の余地は考えられると思う。

〔「令和5年度全国学力・学習状況調査の英語の結果を活用した専門的な分析」の発表に対して〕

【委員】 採点基準のことについて伺いたい。令和5年度の英語の教科調査では、正答率に大きく着目されているが、調査本体としては、採点基準をどうやって精緻に整えていくのかは非常に重要な問題だと考える。採点基準を裏返すと、国が目指す資質・能力そのものではないかと考えられるので、御発表いただいた部分に追加して何か示唆的なことがあれば教えていただきたい。
【斉田教授】 採点基準については、国立教育政策研究所の報告書において、想定される例文とともに解答類型が示されている。例えば「書くこと」の問題では、3単元のsが抜けていたり、大文字になっていなかったり等、意味は通じるが正答にならない解答が英語力層で5段階に分けたときの中間層に最も多かった。「書くこと」の問題については、現在の採点基準でもよいと思うが、「話すこと」の問題の特性を考えると、コミュニケーションに支障のない程度の正確さを文法等で評価をするのは、誤答の生徒の割合が高くなり生徒の英語力の実態を正確に把握することが難しいと考えられる。文法的には間違っている部分もあるが意味は通じるといった解答を誤答にするのではなく、部分点等を加えることで、生徒の実態を細かく把握することができるのではないかということが分かった。
 
【委員】  「話すこと」の正答率が低かった問題について伺いたい。対象の生徒には難しすぎたと評価をされていたが、中学校3年生の時点で、「話すこと」の調査問題で示されている程度のことを達成しなければいけないのか、あるいはそこまでは求めることができないような問題だったのか。率直なご意見を伺いたい。
【斉田教授】  国・公・私立学校別の解答状況を見ると、学力差が大きくなっているということは感じた。問題自体は、やり取りという場面を考えて、学習指導要領の目標と内容に照らして作られており、出題されているような力をつけることは目標にすべきだと考えられる。ただ、知識・技能を測る「話すこと」の問題では、目的場面状況の設定をシンプルにしたり、平成31年の英語教科調査では、日本語で言われたことに関して英語で発表するといった問題で、正答率はもう少し高かったということもあるので、問題づくりについて改善の余地はあると思う。
 
【座長】  本日のご報告の中では、知見面でも成果があった。特に、横浜国立大学グループからの御発表では、初めて問題の困難度や採点基準の在り方についてインプリケーションが出されたということは重要であった。また、それだけではなく、研究の方法的な面においても今後委託研究のモデルとなるような新しい方法的な工夫もあった。例えば、訪問調査の前にアンケート調査を実施することや、SESの影響を除去して取組の成果を浮かび上がらせるような色々な方法等、今後生かしていくべき点だと感じた。
 

【議事2】その他

資料6-1、6-2について事務局より説明があった。
 

 

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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

(総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室)