今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(令和6年度~)(第1回)議事録

1.日時

令和6年5月22日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議(Zoomを用いて開催)

3.出席者

委員

伊香賀委員、五十嵐委員、池田委員、上野委員、金子委員、木部委員、塩﨑委員、下條委員、高橋委員、恒川委員、鶴見委員、土井委員、西尾委員

4.議事要旨

【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 それでは、定刻となりましたので、ただ今から「今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」第1回を開催いたします。
 本日は、ご多用のところご出席いただき、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、文教施設企画・防災部計画課整備計画室で室長補佐をしております松田と申します。主査の選任までの間、議事進行をさせていただきます。
 また、人事に関わる内容がございますので、冒頭の議題(1)については非公開とさせていただきます。
 それでは、会議の開催に当たりまして、文教施設企画・防災部長の笠原よりご挨拶申し上げます。
【笠原大臣官房文教施設企画・防災部長】
 文教施設企画・防災部長の笠原でございます。第1回の会議の開催に当たりまして、一言ご挨拶をさせていただければと思います。
 委員の皆様方におかれましては、非常に大変ご多忙の中、委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
 ご案内のように、我が国における地域の知と人材の集積拠点である大学は、社会全体の変革の原動力になっていると考えておりますし、これからもより積極的な役割を果たしていく必要があると考えております。
 その中で、とりわけ国立大学法人等は、地域や社会における課題解決や、新しいイノベーション創出に貢献していくことが一層期待されていると考えています。
 それを支える、今日これからご議論いただきますキャンパス・施設は、まさに国民の税金をつぎ込んでこれまで築き上げてきた地域の貴重な公共財であると考えています。そのため、地域に今まで築き上げてきた地域の公共財である国立大学法人等のキャンパス・施設を今後どうしていくのかということを積極的にご議論いただければと思っています。
 一方、国立大学法人等のキャンパス・施設は、老朽化対策が喫緊の課題になっています。教育研究活動への支障、安全・安心を脅かすような事態も発生しかねません。そのため、当然、イノベーションの拠点としての役割を果たすことはおろか、地域における人材育成や学術研究を全うすることすらままならなくなるということも考えなければいけないと思っています。
 国立大学法人等の施設整備につきましては、計画的な整備が必要になりますので、国立大学法人等施設整備5か年計画をつくって進めているわけですけれども、その中で、これまでもキャンパス全体で、地域や社会、産業界等との多様な担い手が協働して新しい価値を生み出す、「共創」活動を支える「イノベーション・コモンズ」ということを打ち出しながら、ソフト・ハード一体で様々な対策をしていくということを考えてきています。
 また、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画を打ち出した後、令和3年度から5年度にかけましても、これまで大阪大学の西尾総長を主査とする協力者会議の中で、イノベーション・コモンズの具体化に向けた様々な考え方や、国として取り組むべきこと、自治体、産業界に期待すること等を提言いただき進めてきたというのが実態と思っています。
 これまでのそうした成果も踏まえながら、令和8年度から新しい計画をつくっていく必要がございますので、今日お集まりの様々な方々等による議論を経ながら、次の考え方をまとめていければと思っています。ぜひ忌憚のないご意見をいただければと思います。
 文部科学省としましても、本会議の議論を踏まえまして、速やかに必要な措置を講じるとともに、地方公共団体や産業界などの広い理解を得ながら、必要な予算の確保に努めていかなければならないと思っています。
 先生方の様々なお知恵をいただきながら進めていければと思っておりますので、これから何とぞご協力、ご支援を賜れればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 それでは、本日ご参加いただきます本会議の委員を、五十音順でご紹介いたします。
 慶應義塾大学名誉教授、伊香賀俊治委員。
 日本商工会議所理事・企画調査部長、五十嵐克也委員。
 一般社団法人日本経済団体連合会SDGs本部長、池田三知子委員。
 一般社団法人キャンパスとまち計画研究所代表理事、千葉大学名誉教授、上野武委員。
 広島大学理事・副学長(グローバル化担当)、金子慎治委員。
 大学共同利用機関法人人間文化研究機構長、木部暢子委員。
 一般社団法人国立大学病院長会議理事・事務局長、塩﨑英司委員。
 青森大学ソフトウェア情報学部教授 下條真司委員。
 金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授、高橋真木子委員。
 名古屋大学大学院工学研究科教授、恒川和久委員。
 北九州工業高等専門学校長、鶴見智委員。
 国立研究開発法人情報通信研究機構監事、東北大学理事、奈良先端科学技術大学院大学理事、土井美和子委員。
 大阪大学総長、西尾章治郎委員。
 そして、本日はご欠席ですが、
 愛知県知事、大村秀章委員。
 東京大学執行役・副学長、大学院新領域創成科学研究科教授、出口敦委員。
 東京大学大学院教育学研究科教授、両角亜希子委員
にご参画いただいております。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。
 文教施設企画・防災部長、笠原隆。
 技術参事官、金光謙一郎。
 計画課長、瀬戸信太郎。
 計画課整備計画室長、小林克嘉。
 計画課企画官、氏原拓。
 また、オブザーバーとして、
 国立大学協会、村田義則常務理事。
 国立教育政策研究所文教施設研究センター、深堀直人センター長。
 文部科学省内からのオブザーバーとして、大臣官房会計課、高等教育局高等教育企画課、高等教育局国立大学法人支援課、高等教育局専門教育課、高等教育局医学教育課、科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課、研究振興局大学研究基盤整備課、研究振興局参事官(情報担当)付学術情報基盤室にもご参画いただいております。
 配付資料の確認につきましては、各自、議事次第をご確認ください。
【西尾主査】
 それでは、議題(2)に入りたいと思います。議題(2)は「国立大学法人等施設整備に係るこれまでの取組と今後の論点(案)」についてご議論いただきたいと思います。
 後ほど、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画におけるこれまでの論点や、第6次国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けた方向性に対する受け止めのほか、今後どのようなことを期待するかということにつきまして、各委員の皆様からのご意見をいただきたいと考えております。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】  
 そうしましたら、資料3について、ご説明させていただきます。資料3につきましては、委員の皆様ご存じの部分も多々あるかと思われますので、ポイントのみ簡潔に説明させていただきます。
 それでは、資料3、2ページ目をご覧ください。こちらは、国立大学等施設の現状と課題を示した資料になります。国立大学法人等施設においては、老朽化が進行しており、経年25年以上の建物のうち、改修を要する建物面積が半数を超えている状態となっております。そのため、安全面、機能面、経営面に大きな課題が生じており、対応が急務となっております。
 また、ライフラインについても、建物同様、老朽化が進行しており、未改修建物1万㎡当たりの事故発生件数に関する調査によると、特に経年30年を超えたあたりから、ライフラインの損傷等による事故発生率が大きく上昇することが明らかとなっております。
 資料3、3ページ目をご覧ください。こちらは、国立大学等施設整備の仕組みを示した資料になります。国立大学法人等の施設整備の財源としましては、毎年度国が措置しております施設整備費補助金が基本になります。そのほか、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構による、主に附属病院の再開発等を対象とした財政融資資金などを財源とする施設費貸付金や、比較的小規模な施設整備等の営繕事業を対象とした施設費交付金があります。さらに、国立大学法人等が独自に確保している個人・企業からの寄附金や他省庁・地方公共団体からの補助金などの多様な財源を活用して整備することも可能です。
 資料3、4ページ目をご覧ください。こちらは、国立大学法人等施設整備費予算額の推移を示した資料になります。令和元年度以降、補正予算と国土強靱化関連予算による臨時・特別の措置を除いた当初予算については、毎年度約350億円前後とほぼ横ばいとなっております。
 資料3、5ページ目をご覧ください。こちらは、科学技術・イノベーション基本計画と国立大学法人等施設整備5か年計画の関係性を示した資料になります。国立大学法人等の施設は、平成13年度から5次にわたり、科学技術基本計画を受けて策定された国立大学法人等施設整備5か年計画に基づき、整備の充実を図ってまいりました。
 また、第6期科学技術・イノベーション基本計画において、「キャンパス全体が有機的に連携し、あらゆる分野、あらゆる場面、あらゆるプレーヤーが共創できる拠点『イノベーション・コモンズ』の実現を目指し、計画的・重点的な施設整備を進める」ことが提示されたことを受けて、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画では、施設整備の方向性として、キャンパス全体をイノベーション・コモンズへと転換することを提示いたしました。
 資料3、6ページ目をご覧ください。こちらは、現行の第5次国立大学法人等施設整備5か年計画の概要を示した資料になります。基本的な考え方としましては、国立大学等の本来の役割として、「教育研究の機能強化」と「地域・社会・世界への貢献」が求められており、そのためには、様々な人々との連携により、創造活動を展開する「共創」の拠点、イノベーション・コモンズへキャンパス全体を転換させていくことが必要であるという方向性を提示しております。
 なお、中段の図では、特に重要な地方公共団体、産業界との共創を示しております。
 資料3、7ページ目をご覧ください。こちらは、大学キャンパスの地域における役割と、ソフト・ハード一体となった教育研究環境の共創拠点化を推進することの必要性を示した資料になります。
 まず、国立大学等には、高度で先端的な知・人材等が集積しており、地域において、イノベーション・産業振興のハブ、人材育成の拠点といった機能を担うとともに、災害時の地域の防災拠点や地域医療の最後の砦、さらには、カーボンニュートラルに向けた脱炭素化の拠点として重要な役割を果たしております。そのため、こうしたソフト的な取組とその活動の場であるハード面が一体となった、大学キャンパスの共創拠点化を推進していくことはとても重要であると考えております。
 資料3、8ページ目から9ページ目をご覧ください。こちらは、大阪大学の西尾総長を主査とする「国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議」において、イノベーション・コモンズ(共創拠点)の実現に向けて、共創拠点の考え方や取組のポイント、具体的な整備イメージ、今後の推進方策等を令和4年10月に取りまとめた第一次報告書になります。
 資料3、10ページ目から11ページ目をご覧ください。こちらは、先ほどの協力者会議において、第一次報告書の続編として、あらゆる活動に共通する事項として「デジタル技術も駆使したハイブリッド型環境の整備」及び重点事項として、「①デジタルやグリーン等の成長分野等の社会課題に対応した人材育成・研究を支える環境整備」、「②地域を中心とした産学官連携強化による人材育成を支える環境整備」、「③多様な主体に開かれた魅力ある環境整備」、「④グローバル化に対応した国際競争力のある環境整備」について更なる検討を行い、国立大学等施設における共創拠点の基本的な考え方や取組のポイント、推進方策等を令和5年10月に取りまとめた最終報告書になります。
 続きまして、資料3、12ページから19ページにつきましては、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画による取組の成果事例としまして、先ほどの第一次報告書や最終報告書で紹介されました、全国の国立大学等の共創拠点化に資する取組事例になります。
 資料3、12ページ目をご覧ください。地方公共団体との連携に資する国立大学等施設の事例としまして、大阪大学の箕面キャンパスと千葉大学の墨田サテライトキャンパスをご紹介させていただきます。
 大阪大学の箕面キャンパスにおいては、「地方公共団体と共創するサステナブルキャンパス」として、外国学研究講義棟やグローバルビレッジ(国際寮)が、図1のとおり、駅前の土地において、市立図書館などと一体的に整備されております。また、世界的な環境認証制度であるLEEDの認定も受けております。さらに、企業と連携して、講義棟内にセンサーや空調、ビル・エネルギー管理システムを導入するなど、キャンパスを「リビングラボ」の実証フィールドとして活用しております。
 千葉大学の墨田サテライトキャンパスにおいては、「まちと一体となったキャンパスづくり」として、千葉大学と墨田区で包括的連携協定を結び、墨田区施設の改修によりサテライトキャンパスを整備しております。また、当該キャンパスにおいては、地元商店街や町工場をフィールドにしたデザイン教育を実施しております。さらに、旧体育館を改修することで、多様な活動が可能なフレキシブルな大空間を整備しております。
 資料3、13ページ目をご覧ください。産学連携に資する国立大学等施設の事例としまして、九州工業大学のジムラボと金沢大学のバイオマス・グリーンイノベーションセンターをご紹介させていただきます。
 九州工業大学のジムラボにおいては、「ステークホルダーの多様な居場所」として、他省庁の補助金など多様な財源を活用しつつ、築50年超えの体育館をリノベーションし、中心を広い空間とした、様々な利用者のための多様な居場所を創出しております。
 金沢大学のバイオマス・グリーンイノベーションセンターにおいては、「構想から製品化まで一貫した産学官連携拠点」として、金沢大学と民間企業が包括連携協定を結び、新たな拠点整備と共同研究に向けて協働しております。また、施設は、オープン・クローズの考えのもと、フロア構成やセキュリティ区分により、共創と研究成果の保護を両立しております。さらに、アンダーワンルーフによる構想から製品化まで一貫した共創研究環境を確保できるフロア構成となっております。
 資料3、14ページ目をご覧ください。附属病院の機能強化に資する国立大学等施設の事例としまして、筑波大学の附属病院と浜松医科大学の医工連携拠点棟(iMec棟)をご紹介させていただきます。
 筑波大学の附属病院においては、「連携機関との地域医療を担う人材育成の場」として、診療支援を通じた地域医療に貢献するため、大学病院と市中病院として一次~三次医療を行っている中核的医療機関が連携し、双方の持つ機能を相互補完的に生かし、教育・研究・診療活動に役立てております。
 浜松医科大学の医工連携拠点棟においては、「医工連携を通じた地域企業発展の拠点」として、地元企業や隣接地域の大学と連携しながら、大学発ベンチャーを支援しております。
 資料3、15ページ目をご覧ください。グローバル化に資する国立大学等施設の事例としまして、広島大学のミライクリエと東京大学の目白台インターナショナル・ビレッジをご紹介させていただきます。
 広島大学のミライクリエにおいては、「海外大学を誘致した国際交流と地域連携の拠点」として、東広島市との連携により財源を確保しつつ、施設整備を行っております。また、当該施設は、多様な人々の交流と知識の循環、海外トップ研究者の宿泊機能など、複合的な機能を有する施設となっております。さらに、令和5年12月までは、アリゾナ州立大学日本校のオフィスが内部にあったとのことです。
 東京大学の目白台インターナショナル・ビレッジにおいては、「日常的に互いの生活文化に触れる国際寮」として、日本人学生、留学生及び外国人研究者が、日々の生活の中で互いの生活文化に触れながら国際交流が体験できる国際寮を整備しております。
 資料3、16ページ目をご覧ください。カーボンニュートラルに資する国立大学等施設の事例としまして、広島大学と三重大学の取組をご紹介させていただきます。
 広島大学においては、「カーボンニュートラルに向けた実証実験の場」として、東広島キャンパスにおいて、2030年のカーボンニュートラルを目指す「カーボンニュートラル×スマートキャンパス5.0宣言」を表明しており、ロードマップに基づき、太陽光発電装置の設置などの取組を進めております。
 三重大学においては、「全学的なカーボンニュートラルへの取組」として、「政府実行計画」などの政府の計画において大学施設に求められる施策に準じて、再生可能エネルギーの活用や、建物の省エネルギー化の徹底を通じて、2050年カーボンニュートラル実現を推進し、「科学的地域環境人材」といった、地域に必要とされる人材育成も実施しております。
 資料3、17ページ目をご覧ください。国立高等専門学校の事例としまして、熊本高等専門学校の地域協働プロジェクトセンター、佐世保工業高等専門学校の産学官連携による半導体デバイス開発設備の活用、奈良工業高等専門学校の寄宿舎管理棟をご紹介させていただきます。
 熊本高専や佐世保高専などにおきましては、「COMPASS5.0における半導体分野の拠点校」として、半導体業界が必要とする人材を育成しております。また、熊本高専では、クリーンルームなど県内企業や研究機関と連携した教育・研究の拠点となる設備を整備しております。佐世保高専では、半導体デバイス開発が行えるミニマルファブや集積回路実験室を整備し、西九州地域の企業や研究機関と連携した取組を展開しております。さらに、産学相互の教育研究設備の共同利用・利用提供にも取り組んでおります。
 奈良工業高等専門学校の寄宿舎管理棟においては、「女子寮室の整備、交流スペースの整備」として、「令和新時代高専の機能高度化プロジェクト」において、国際寮の整備や校舎の老朽改善整備などを実施することとしており、「女性エンジニアリーダー養成枠」推薦入試や、「しなやかエンジニア教育プログラム」などにより女子学生が増加傾向にあることを踏まえ、女子寮化の改修を実施しております。
 資料3、18ページ目をご覧ください。防災機能強化に資する国立大学等施設の事例としまして、熊本大学の災害対応及び復興支援と名古屋大学の減災館をご紹介させていただきます。
 熊本大学においては、「災害から早期に復旧復興できる社会の実現」として、熊本地震の発災直後、黒髪キャンパスの体育館を開放し避難者を収容するとともに、学生が避難所運営を担いました。また、復興に際しては、まちづくり拠点となるサテライトラボ「ましきラボ」を設け、住民・行政との持続可能なコミュニティを創出・支援しました。
 名古屋大学の減災館においては、「防災・減災に関する分野横断研究と産官学民連携の拠点施設」として、災害時は災害調査研究や地域支援の拠点として機能することを想定しております。また、耐震・免震に関する企業との共同研究や、一般市民などの社会連携活動、行政・企業・学校向け研修やワークショップ、地域課題解決に資する研究成果発信や専門家の講習会などに取り組んでおります。
 資料3、19ページ目をご覧ください。共同利用機関法人の事例としまして、高エネルギー加速器研究機構の取組をご紹介させていただきます。
 高エネルギー加速器研究機構においては、ライフサイエンスや創薬の展開を加速化させる施設として、物質構造科学研究所・構造生物学研究センターを中心に、産学共同利用や民間企業との非競争領域における共同研究などを行っております。また、施設内は、ラボスペースをオープンな空間にすることで、研究者同士の交流を促しております。
 続きまして、資料3、20ページから25ページにつきましては、個別施策の取組状況や今後の必要性を示した資料になります。
 資料3、20ページをご覧ください。こちらは、カーボンニュートラルやグリーントランスフォーメーションの実現に向けて、イノベーション・コモンズ(共創拠点)の深化の必要性を示した資料になります。具体的には、大学キャンパスは、産業界や地域との共創により、エネルギーマネジメントや、研究開発・実証実験の場、人材育成・地域支援といった機能を担う可能性があることから、ソフト・ハード一体となった大学キャンパスの共創拠点化を推進することにより、これらの機能を最大化し、脱炭素とイノベーション・新産業・雇用創出の両立に貢献し得ると考えております。
 資料3、21ページ目をご覧ください。こちらは、多文化・共生社会の理解増進、教育研究の多様化、高度化、活性化、さらにはイノベーション創出につながる留学生や外国人研究者の受入れに資する大学キャンパスのグローバル化の必要性を示した資料になります。具体的には、世界中から日本の国立大学に高度人材を呼び込むことで、異分野融合・イノベーションを誘発する可能性があることから、旧来型の未改修施設について、研究室間の壁をできるだけ取り払うなど、大学キャンパスの老朽化対策・機能向上を推進することにより、世界中の学生を日本に呼び込める魅力ある環境整備を推進していく必要があると考えております。
 資料3、22ページ目をご覧ください。こちらは、博士人材の育成や博士人材の拡大に当たり、多様な博士人材の育成や研究活動を支える施設環境等の整備の必要性を示した資料になります。具体的には、多様な活躍に向けた博士人材の育成や博士人材の拡大に当たり、大学における企業との交流や共同研究など、産学が共創できる場が不十分であることから、地域や産業界などとの共創や分野を越えた共創を支える施設環境や、多様な博士人材の育成や研究活動を支える施設環境の整備を推進していく必要があると考えております。
 資料3、23ページ目をご覧ください。こちらは、高等専門学校施設の機能の高度化に向け、令和元年度から令和6年度にかけて実施しております、令和新時代高専の機能高度化プロジェクト計画の取組内容を示した資料になります。具体的には、国際寮の整備や老朽化が著しい学生寮、校舎などをこれまで集中的に改善整備してきたほか、基盤的設備の更新・整備にも集中的に取り組んでまいりました。
 資料3、24ページ目をご覧ください。こうした令和プロジェクトの実施により、高等専門学校の老朽化率が、実施前の41.4%から38.4%に改善し、国立大学の老朽化率に近い水準になったことは、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画における成果であると考えております。
 一方で、高等専門学校においては、老朽化率が国立大学に近い水準になったとはいえ、老朽化率が高いことは変わらないため、今後も引き続き、国立高等専門学校の老朽改善整備による高度化・国際化を図っていく必要があります。
 資料3、25ページ目をご覧ください。こちらは、個別施策に共通する取組として、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画で示された取組を抜粋したものになります。例えば、イノベーション・コモンズへキャンパス全体を転換させていくためには、学長などのリーダーシップによる全学的な体制の強化や、トップマネジメントによる戦略的な施設マネジメント、多様な財源の活用などが考えられます。
 ここまでが、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画によるこれまでの取組などの説明になります。
 最後に、資料3、26ページから30ページにつきましては、次期国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けて、事務局で整理してみました、本協力者会議で今後ご議論いただくことが考えられる論点案と方向性などを示した資料になります。
 資料3、26ページ目をご覧ください。こちらは、次期国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けて、これまでの国立大学法人等や国立大学協会等との意見交換を踏まえ、これまでの取組に対する検証事項と、本協力者会議で今後ご議論いただくことが考えられる論点案を事務局で整理したものになります。
 これまでの取組に対する検証事項等としましては、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画における共創拠点化の検証や整備内容の検証、全学的な体制構築に向けた検討を実施することを想定しております。
 資料3、27ページ目をご覧ください。次期国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けて、これまでの取組も継続していくことも重要であるという観点も含め、今後ご議論いただくことが考えられる論点案として、その他を除き、5つの検討事項に紐づけて整理してみました。
 具体的には、「ソフト・ハード一体となったキャンパス全体の共創拠点化の更なる推進」、「キャンパス全体の強靱化(地域の防災拠点としての国立大学)」、「施設整備に活用できる予算の拡大などの財源の多様化」、「持続可能な維持管理の観点も含めた適切な資産マネジメント」、「附属病院の機能強化」の5つです。
 資料3、28ページ目をご覧ください。こちらは、近年の政府全体における議論や、これまでの国立大学法人等や国立大学協会等との意見交換などで示された視点を整理したものになります。
 例えば、政府全体における議論としまして、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」におきましては、官民連携による社会的課題の解決や、地方公共団体や産業界との共創拠点の整備充実の必要性が示されております。
 また、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化計画」においては、国立大学施設等の老朽化・防災機能強化対策に取り組む必要性が示されております。
 さらに、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国立大学などは、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画において、ZEBの実現に向けた取組の推進など、社会の先導モデルとなる取組を推進することとされ、先進的事例の他大学への横展開を図り、先導的な役割を果たすことが期待されております。
 資料3、29ページ目をご覧ください。「中央教育審議会大学分科会」においては、現在、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方についての議論が行われております。
 また、文部科学大臣を座長とするタスクフォースで昨年度取りまとめました「博士人材活躍プラン」においては、社会人学生や女子学生の増加、グローバル化や障害者への対応など、多様な博士人材の育成や研究活動を支える施設整備の必要性が示されております。
 さらに、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」においては、Society5.0を国内外の情勢変化を踏まえて具体化させていく必要性がある旨が示されております。
 そのほか、令和5年度の協力者会議の最終回以降に実施しました国立大学法人等や国立大学協会等との意見交換において、「地方自治体や企業との連携が重要」、「災害時に大学施設が住民の受け入れ機能などを有することが重要」といった意見が示されております。
 資料3、30ページ目をご覧ください。これらの意見を踏まえ、先ほどご説明しました次期国立大学法人等施設整備5か年計画に際し論点と考えられるものと同じ重みづけではありますが、共創拠点の実装化に向けた視点として、特に重点的に議論いただくことが考えられるものとして、3つの検討事項を整理してみました。
 さらに、今後、本協力者会議でご議論を重ねていただき、中間報告でお示ししていただきたいと考えておりますキーワードとしまして、「イノベーション・コモンズ(共創拠点)2.0 ≪地域と共に発展する持続可能な共創拠点の実装化≫ ~老朽化したキャンパスからの転換~」という案を事務局において考えてみました。
 こちらのイノベーション・コモンズ2.0と現行の国立大学法人等施設整備5か年計画で掲げておりますイノベーション・コモンズとの違いにつきましては、≪≫部分に記載しておりますとおり、「実装化」ということで、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画では、イノベーション・コモンズの考え方や取組のポイントなどを世の中に浸透させていくことに取り組んでまいりましたが、いよいよ次期国立大学法人等施設整備5か年計画においては、共創拠点の実現、すなわち実装化を推進していくことを新しい視点として盛り込みたいと考えております。
 また、「地域と共に発展する」ということで、これまでの大学が地域に貢献するだけでなく、地域からも支えられる大学という観点ですとか、「持続可能な」ということで、施設整備をして終わりではなく、持続可能な維持管理の観点も含めた適切な施設マネジメントの観点も新たに加えていきたいと考えております。
 また、先ほど申し上げました3つの検討事項としまして、「将来の社会変革を見据えた共創拠点の整備」、「研究開発のニーズに機動的に取り組み続けられる共創拠点の整備」、「激甚化・頻発化する気象災害や切迫する大規模地震等への対策に資する共創拠点の整備」をお示しさせていただいております。
 これらの検討事項については、それぞれ論点案を紐づけており、「将来の社会変革を見据えた共創拠点の整備」につきましては、「地方公共団体(市町村を含む)や産業界との共創拠点の整備充実」、「「ものづくり」を先導する人材育成の場である国立高等専門学校施設の高度化・国際化」、「地域と連携した地域産業振興・スタートアップ創出のための拠点整備」、「カーボンニュートラルの実現に向けて社会の先導モデルとなる取組の推進」。また、「研究開発のニーズに機動的に取り組み続けられる共創拠点の整備」については、「多様な博士人材の育成や研究活動を支える施設整備」、「新事業・新産業の創出に資する拠点の整備」。「激甚化・頻発化する気象災害や切迫する大規模地震等への対策に資する共創拠点の整備」については、「大学等の防災拠点としての整備」といった形で整理しております。
 特に、「激甚化・頻発化する気象災害や切迫する大規模地震等への対策に資する共創拠点の整備」につきましては、近年、発災から復興までのフェーズで大学が果たせる役割は大きくなっていることから、次期国立大学法人等施設整備5か年計画では強く打ち出していきたいと考えております。
 説明は以上になります。
【西尾主査】
 事務局から、要点を明確に説明いただきました。ありがとうございました。それでは、ただいま説明がございました資料3につきまして、委員の皆様方から様々なご意見等をいただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたとおり、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画におけるこれまでの論点や、第6次国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けた方向性に対して、どのように受け止めておられるのか、また、今後どのようなことを期待してこの計画を策定していくのかということについて、各委員からのご意見をお伺いいたします。
 まず、土井先生におかれましてはご参加いただける時間が限られているということでしたが、土井先生、まず、ご意見等ございましたらお願いいたします。
【土井委員】  
 今ご説明いただいた中で、一つ、共同利用拠点ということで、そこを共創拠点を整備するということは非常に重要だと思います。
 今回は、どちらかというと、令和6年能登半島地震とか、そういうことを考えて、大規模地震等への対策ということを前面に出していただいていますが、一方で、運用していくというところで考えますと、例えば、東北大学のNanoTerasuでは、施設の運用もそうですけれども、データの管理ということも非常に重要になってきています。
 なので、大規模地震に対して備えるということでは、せっかく蓄積したデータをどのようにバックアップを取っていくかというところを、それぞれの共創拠点ごとで考えるのではなく、電力の利用、なるべく水力とか、そういうカーボンニュートラルを考えた場所にデーターセンターを置けるようにするとか、何らかの共創拠点をデジタルの面から国として支えていくような、そういう考え方も重要ではないかということを一つ考えました。
 あともう1点が、ここで資料には出てきていないのですけれども、リアルな場所、あるいはデジタルのデータに関してのアクセス権の制御というところが、経済安全保障的には非常に重要になってくるかなと思います。
 そういう意味では、この委員会がやるのが適切なのかどうか分からないのですけれども、何らかのこういうアクセス権でこのように制御すればいいみたいな、そういうガイドライン的なものがあれば、こういう共創拠点を運用していく機関も、そのガイドラインにのっとって共創拠点の設計、整備をしていくことができるので、そういう経済安全保障的なデータやリアルな施設へのアクセス権というのも、ガイドライン的なものを考えていくということも、今後、運用という意味では重要ではないかというふうに考えました。
【西尾主査】
 ありがとうございました。
 1点目は、現在、研究や教育などのあらゆる活動がデータ駆動型になっている中で、そのデータをいかに安全に管理するかという問題を国全体として考えていく必要があるのではないかということです。これは重要な課題でありまして、施設整備の枠組みにおけるデータ等の格納場所については、しっかりと検討していく必要があると考えております。
 また、アクセス権の問題につきましては、本日オブザーバーとしてご参画いただいている研究振興局の情報担当の方、学術情報基盤室が深く関わるものと思いますが、先ほどの1点目の課題と共に、今後、アクセス権についても、文部科学省としてどのような方針を出していくのかということは検討する必要があるかと思います。
 どうもありがとうございました。
【土井委員】
 ありがとうございます。
【西尾主査】
 それでは、2分程度を目安にしていただきたいのですが、委員の方からご意見をいただければと思います。僣越ながら、当方から順にご意見を伺いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、伊香賀先生、お願いいたします。
【伊香賀委員】
 先ほどの資料3の20ページ目の、カーボンニュートラルに向けてネット・ゼロ・エネルギー・ビルの推進という、この点に関して2点ばかり発言させてください。
 まず、ネット・ゼロのためには、省エネルギーを徹底するということに加えて、太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入というのが両輪になっております。予算的な措置上、いろいろなプロジェクト、これは民間も含めてなんですが、なかなか容易ではない高い目標であります。ただ、国立大学は、率先して国の模範を示す施設ということで、どう予算措置をするか。様々な方法があると思うんですが、その予算の裏づけといったことも考えた計画の立案が必要ではないかというのがまずは1点目でございます。
 それから、2点目は、カーボンニュートラルに関連してなんですが、ネット・ゼロ・エネルギーというのは、運用段階のカーボンをゼロにするということにとどまっているんですけれども、現在、世界各国、特に昨年のG7の気候・エネルギー・環境大臣会合で、今後建物を建ててから壊すまで、ライフサイクル全体のカーボンをゼロに持っていくということがG7で合意され、あと、日本国内でも、花粉症に関する関係閣僚会議決定で、2026年までにその算定法を構築するということが国内的には決まっております。
 何が言いたいかと申しますと、どういう建築材料を使って、どんな施工方法で建てるか。そういうところまでゼロカーボンの対象に世界ではなっていて、日本もそれに対応せざるを得ない状況です。国立大学においても、施設の発注とか予算措置において、単なる運用段階のカーボンゼロではなくて、ホールライフカーボン、ライフサイクル全体のカーボンをゼロに持っていくということに対するさらなる予算措置ということも少し議論しておかないといけないかなと思っております。
 以上です。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化は非常に重要であり、国立大学等が率先して国の施策を実行していくにあたり、その予算をどう措置するか、また、G7等で示されている方向性にどのように対応していくか、という点について笠原部長いかがでしょうか。
【笠原大臣官房文教施設企画・防災部長】
 ご案内のとおり、カーボンニュートラルに向けた取組というのは、当然積極的にしていかなければならないと思います。
 今、伊香賀先生のほうから予算の話が出ました。まさにカーボンニュートラルについては、国の、政府の一員としての文部科学省として取り組むべき部分も当然あると思いますが、全体の環境政策の中で動いている部分も当然大きな部分があります。予算面についても、やはり環境省とも連携をしながら、必要な予算を国立大学のほうにも入れられるよう、今も実施し始めていますけれども、より積極的にやっていく必要があると思っています。そうした視点も踏まえながら、いろいろな省庁との連携ということも考えるということをしながら実現していくということが必要ではないかと思っています。その点でも今後いろいろお力添えをいただければと思いますし、ご意見をいただければと思います。
 以上です。
【西尾主査】
 ありがとうございます。予算面では厳しい状況下において、財源の多様化を強力に推し進める必要がありますので、その点どうかよろしくお願いいたします。また、伊香賀先生にもお知恵をお借りしながら進めていければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【小林大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】
 事務局です。伊香賀先生のご発言から関連してさせていただければと思います。参考資料1をご覧いただければと思います。
 こちらに、今、笠原部長の方から言及がございましたけれども、国立大学等に活用が可能な文部科学省以外の補助金について資料を出しております。ここにまさにカーボンニュートラルに向けた取組に対して、環境省の事業を紹介させていただいております。私たちの方も環境省と連携して取り組んでいくということで進めていきたいと思っております。
【伊香賀委員】
 よろしくお願いします。
【西尾主査】
 続いて、五十嵐様からは資料4でご意見をいただいておりますが、事務局に伺いますが、ここでもう一度ご紹介いただくという形でよろしいですか。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 事務局でございます。五十嵐先生におかれましては、資料をご提出いただいた中で恐縮ですが、ご発言のほうもいただけますと幸いです。
【西尾主査】
 それでは五十嵐様、よろしくお願いいたします。
【五十嵐委員】
 資料3の27ページ目に論点が書いてあります。この最初の部分、非常に力強く産業界のことも書いていただいており、ありがたく思います。こういう方向でやっていただければと思います。
 主な意見は提出した資料をご覧いただければと思いますが、一言二言、申し上げます。
 施設整備も重要ですけれども、その基盤の上に立って、機能という面、その充実が必要だと思います。地域の産業界と大学が連携・協力して地域経済が活性化する機能を持っていただきたいと。そういう観点から意見書を出しております。意見は2点です。
 1点目は、急激な少子化、人口減少を踏まえて、共創拠点がどうあるべきかということであります。社会環境が大きく変化する中で、課題解決につながる新技術や新産業などのイノベーションが求められていると思います。シーズを生み出す場としての大学の役割は極めて大きいです。地域産業を担う中小企業と連携していただいて、有効にそれが機能することを期待したいと思います。その際、施設というハード面に加えて、連携体制など、ソフト面の強化も同時に進めていただければと思います。
 それから、高等専門学校についても一言触れさせていただきます。既に評価の高い高等専門学校ではありますけれども、今後とも社会環境の変化に柔軟に対応できて、時代や社会のニーズに合った教育を一層進めていただければというふうに考えています。
 2点目ですけれども、大規模災害対策への対応ということであります。共創拠点としての機能が不測の災害等によって途切れることなく地域との連携体制が維持されることが重要だと思います。
 また、災害を乗り越えるための新技術の開発・新産業の創出を通じて、地域の迅速な復興に向けた研究を、地域社会や産業界と連携して推進していただければと考えております。
 意見は以上です。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 1点目につきましては、先ほど笠原部長からも説明がございましたが、ソフトとハードと一体的な整備については、次の基本計画でより明確に打ち出していくべきだと考えておりますので、その方向で今後、検討してまいりたいと思います。
 高等専門学校関係のことについては、後ほど、鶴見先生にご意見を伺う際に、コメント等いただければと思っております。
 また、次の国立大学法人等施設整備5か年計画において、従来よりも強力に打ち出していくべきものが、大規模災害対策拠点としての施設の存在意義であり、このような観点から財政出動を推し進めていくということが重要であると考えております。これらの貴重なコメントをいただきましたことに心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 続いて、池田様、よろしくお願いいたします。
【池田委員】
 ありがとうございます。日本経済団体連合会の池田でございます。3点、コメントさせていただきます。
 第1に、かねてから申し上げてきたとおり、国立大学等には「社会に開かれた知の拠点」、そして、地域、国内、さらには国際社会における社会課題を的確に把握し、課題解決に資するソリューション・イノベーションを提供することなどを通じて、Society5.0 for SDGsの実現や、我が国の国際競争力強化に積極的に貢献をすることが強く求められています。
 そのため、国立大学等が、国内外の大学研究機関等はもちろん、経済界や政府、自治体、地域コミュニティなどの多様なステークホルダーと連携、協働することが必要不可欠であり、そのような意味で、イノベーション・コモンズ、共創拠点を実現していくことは今日的に極めて重要であると考えています。次期国立大学法人等施設整備5か年計画でもぜひ推進していただきたいと考えております。
 先日、ある会合で、ある大学関係者から、「日本の大学は社会や街との距離が離れてしまった」といったご発言がございました。我が国でも、大学と社会・街との距離感を縮めていく、これは空間だけではなく、ソフトの面も含めてでございますが、むしろ大学が社会や街に入っていくようなイノベーション・コモンズの意義や取組について、教職員を含めた大学関係者の皆様に広く、そして深くご理解いただくことを期待申し上げます。
 一方、イノベーション・コモンズの考え方や取組をより多くの企業の方々にご理解いただくべく、日本経済団体連合会では、今年2月に開催した会合で文部科学省の笠原部長からご説明いただいたことを付言いたします。
 第2に、資料にご記載いただいた論点につきまして、概ね良いと考えています。そのうえで、30ページ目の論点、「多様な博士人材の育成や研究活動を支える施設整備」に関して、コメントいたします。
 日本経済団体連合会では、今年2月に「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に向けた提言」を取りまとめました。学生や社会人にとって、博士課程への進学がより魅力的な選択肢となるためには、博士人材の民間企業などへのキャリアパスの拡大とともに、仕事という出口を見据えて、社会のニーズに合った大学院教育改革の推進が必要であり、ハード・ソフト両面における研究・教育環境の整備・拡充が欠かせないと考えます。
 学内外の人材交流や産学連携拠点の整備を一層推し進める観点から、例えば、複数の企業研究所の入居など、大学施設内における企業との連携拠点の開設・拡充等を推進し、博士課程学生が経済界と共創しやすい環境を整備すべきと考えます。
 また、共同研究や学内に入居する企業へのインターンシップなど、博士課程学生が企業との接点を増やすことで、企業は博士課程学生の優れた魅力やコンピテンシーを知ることができ、博士人材が民間企業に就職しやすくなることも期待されるかと思います。
 さらに、企業との連携・交流を増やすことによって、寄附を誘発しやすい土壌を大学側から積極的につくっていくことも重要と考えております。
 第3に、大学施設は地域の防災拠点としての役割も重要です。非常時において地域住民の避難場所としての機能を果たすことはもちろんのこと、地域の復興に向けて大学の専門的な知を活用しつつ、住民や行政と共創する場となることを期待申し上げます。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 大学と企業等との距離がさらに広がっているのではないかというご意見があるということに関しては、深刻に受け止めなければならないと思っております。
 次期の国立大学法人等施設整備5か年計画では、共創拠点の実装化を鋭意進めていくことによって、先程、池田様からいただいたご意見に応えていく必要があると思います。
 また、博士人材については、現在、文部科学大臣が博士号取得者を3倍にすべきだというメッセージを発していただいておりまして、これは大学関係者にとって非常に強力な後押しとなっております。その博士人材をどう生かしていくのかということを考えるうえでも、ソフトとハードの両面という意味で、ハードとしての施設・機能の充実とそれを実現するための整備の工夫など、しっかりと検討していく必要があると考えております。
 災害に関する点については、おっしゃるとおりでございまして、大きな柱にしていきたいと考えております。
 事務局から何か補足説明等ございますか。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 事務局からは特にございません。ありがとうございます。
【西尾主査】
 池田様、貴重なご意見をどうもありがとうございました。
 それでは、上野先生、お願いいたします。
【上野委員】
 上野でございます。今後の論点と考えられるものという、資料3の30ページ目ですけれども、共創拠点の実装化というのはますます重要になってくると思います。
 それと、その下にある、老朽化したキャンパスからの転換というものが同列に考えられるのかどうかという辺りに、少し疑問があるのですが、25ページ目の国立大学法人等施設整備5か年計画の内容の、現国立大学法人等施設整備5か年計画ですね。それの中間評価をきっちりするべきではないかなと思います。キャンパスの老朽化というのは、第4次の国立大学法人等施設整備5か年計画のときからずっと言い続けられていることで、その改善がどの程度進んでいるのか、その辺りをここで一回整理しておく必要があるのではないかなと思います。
 施設マネジメント的に言うと、大学の施設総量を少し見直すべきではないかということもあるのですが、各大学でそれらの取組が進んでいるのかどうかのチェックも必要かと思いました。
 それと、もう一つは、伊香賀先生からお話のあったカーボンニュートラルに関連することですが、政府目標としては、2030年までに排出ガスを46%削減するとか、2050年までにゼロにするという目標を立てて公表しているわけですが、それを、例えば大学施設はどこまでそれが進んでいるのかということなんですね。2030年というのは、今度の次の国立大学法人等施設整備5か年計画の中でやってくるのですが、その2030年に対して、何らかの形で国立大学はこんなことをしましたということを成果として出せるのかという視点、これも大事かなと思います。
 ZEBということで、新しく建てる建物は、Nearly ZEBとか、そういうものにしていくというのは話としては出ていますけれども、なかなか本当のZEBの建物になるにはまだまだ予算面も少ないし、文部科学省が考える工事単価というのもかなり乖離があるように思います。その辺をぜひ考えていく必要があるのではないかと思います。
 最後に、全体の予算なんですけど、当初予算というか、資料3、4ページ目のところにある全体の施設整備費の予算ですが、ここ数年、1,000億という辺りで推移していますが、このままこれで行っても、さっき言った老朽改善とかカーボンニュートラルへの対策というのは、まずできないのではないかと思うんですね。令和元年、令和2年あたりの1,400とか1,500というようなお金を継続的に確保して整備をしていくようにしていかないと、共創拠点にしていこうというのはいいのですが、実際にそれを支える環境としてのキャンパスというのが、世界に誇れる、美しい、みんなが集まってくるようなキャンパスにできるのかという辺り、少し心配な気がしています。今回の有識者の会議の中で、そういう辺りのことも議論できればいいのではないかなと思います。
 以上でございます。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
【瀬戸大臣官房文教施設企画・防災部計画課長】
 事務局のほうから今の上野先生のご指摘に対して、幾つかご説明したいと思いますが、よろしいでしょうか。
【西尾主査】
 よろしくお願いいたします。
【瀬戸大臣官房文教施設企画・防災部計画課長】
 いろいろ貴重なご指摘ありがとうございます、上野先生。まず始めに、共創拠点の実装化という目的と足元の老朽化対策といったところの整合性といいますか、そういったところについてもご指摘いただきました。
 私どものほうでは、当然、足元の老朽化対策、これは極めて重要だと考えています。ただ、その老朽化を改善するに当たって、何らその方向性を示さないということではなくて、ただ新しくするということでもなくて、現行の国立大学法人等施設整備5か年計画でも打ち出している共創拠点化という概念をしっかりと推し進めていきたいという整理にしております。
 それから、カーボンニュートラルについてはおっしゃるとおりでございまして、その辺のところの扱いについても、今後議論を深めていければと思います。
 3点目の予算、今まさに画面共有されていますけれども、確かにここ数年、国立大学施設整備費としては、1,000億円程度というようなところが続いております。
 ただ、こちら、冒頭、笠原のほうからもお話がありましたとおり、やはりいろいろな財源というものをこれから増やしていく必要があるだろうと考えています。つまり、この施設整備費補助金だけではなくて、いわゆる多様な財源、それは環境省によるカーボンニュートラルを進めるための政策的経費ですとか、あるいは、文部科学省の中でも、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」を進めるための施策ですとか、もしくは、最近ですと、国立大学法人の責任と権限において法人債を発行したり、あるいは長期借入金についての利用目的の多様化したりというようなことが進められております。また、寄附金といったところにつきましても、私どものほうで留学生の受入れ環境を整備するための個人寄附についての税制改正というものを昨年実現できましたし、そういったいろいろな手段を組み合わせて、必要な施設整備を進めていきたいと考えております。
 ただ、もちろんその本丸として、こういった施設整備費補助金といったものの獲得は、やはり1,000億円程度では足りないのだというところは、これからもしっかりと財政当局と協議していきたいというふうに思っております。
 以上です。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
【上野委員】
 上野ですけど、少しよろしいでしょうか。
【西尾主査】
 お願いいたします。
【上野委員】
 今の3つ目の予算についてのご説明ですけれども、いろいろな省庁の予算といいますか、そういうものも使ってというお話がありましたが、それをまとめてというか、それを入れ込んだ施設整備費、どのぐらい使っているか、どれぐらい実現できたかという資料を作っていただくと、すごく分かりやすいかなと思いました。
 以上です。
【小林大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】
 事務局です。先生、どうもありがとうございます。上野先生からいただいた、まさに今の国立大学法人等施設整備5か年計画の検証であるとか、あとはまた、今の多様な財源、この辺り、また先生の今のご指摘踏まえて対応を考えていきたいと思いますし、また、今の2点ですが、この協力者会議の中でも深掘りをして議論をしていただくことがいいのではないかと考えておりますので、またこのような問題意識を私たちが持っていることをお伝えさせていただきます。
【西尾主査】
 私も、上野先生がおっしゃられました、他省庁の予算も含めたもののデータを明確に示していただいたほうが良いと思いますので、その点よろしくお願いいたします。
 また、上野先生から、施設整備費の予算について1,500億円程度は確保する必要がある旨のご意見を頂戴しました。現状で1,500億円と申しますと、昨今の急激な物価上昇、労賃の高騰などを考えますと、これまで1,500億円の持っていた価値が現状では1,000億円分ぐらいしかないのではないかと思います。そのような点も含めて、検討を進めていく必要があると考えております。ありがとうございました。
 残り時間が少なくなってきておりますが、本日はご参加の委員の皆様には、一言ずつコメントをいただきたいと思っております。大変恐縮ですが、ご意見等ある場合にも、可能であれば1点程度に絞っていただき、とにかく本日、皆様からご意見を頂戴したいと思います。
 金子先生、よろしくお願いいたします。
【金子委員】
 全体の大きな流れとして、考え方の整理から実装に向かう流れについては、非常に良いと考えております。この実装化の考え方が、イノベーション・コモンズというのはこうあるべきだという議論だけが深まっていくことにならないように、実装化をどう行っていくかを議論することが重要だと考えます。この取組を投資として捉え、それがどのような価値を生むかを考え、見える化して説明していくことで、お金の循環が生まれる仕組み自体が実装化の論点の中心にならなければならないと思います。
 特に海外において、もちろんカーボンニュートラルもデジタル化もいろいろな取組が可能ですが、高機能化させるための施設整備が、どういう形で社会に価値を生み、どういう形で回収するかという仕組みが議論される必要があります。それは市場の仕組みの中で回収されるものと、社会に価値を訴えて、予算化をいろいろな形で多様化し、返していただく、あるいはサポートしていただく流れがあるかと思います。海外の大学では例えば資産価値が上がることで、回収するモデルが、大学の投資の循環を生み、大学の施設が高機能化される仕組みがあります。これをどういう形で見える化して、日本の制度の中で実現するか。アメリカのリンカーンプロジェクトの事例では、リーマンショック後、州立大学の予算がなくなったときに、国民に対して訴えて、その価値を認めてもらい支援を受けたという経験があるかと思います。恐らくそういう努力も必要になると思われるので、考え方の整理に、議論が終始しないように配慮していただくことが必要かなと思います。
 以上です。
【西尾主査】
 金子先生、どうもありがとうございました。
 ある建物を建てることで、どのような価値が生み出され、その投資に対してどのようなリターンにつながるかという論点については、これまではあまり議論がなされてきていないように思いますので、この論点を含めて検討してまいりたいと思います。ありがとうございました。
 木部先生、お願いいたします。
【木部委員】
 初めて参加させていただきましたので、簡単に申し上げます。やはり重要だと思うのは、2番目の、研究開発のニーズに機動的に取り組み続けられる設備、ここのところをやはり強調していただきたいなという気がします。実際に今、日本の研究力が落ちているというふうに言われているのですけれども、それは、実験機材とか実験器具の開発が非常に進んでいて、日本は最新のものを取り入れることが遅れているという面もあるわけですね。施設に直接関わるというか、そこはありますけど、でも、機材を動かしていくための施設がやはり必要ですので、大学や共同利用機関が担っている研究力の向上のために、また、日本の研究力の向上のために、やはりこの2番目のテーマが非常に今、必要とされているということを強調していただければと思います。
 以上です。
【西尾主査】
 先ほど大学共同利用機関法人等に関する現在の施策等について、事務局から説明がございましたが、木部先生がご指摘されました点は、非常に重要な観点だと思いますので、この点につきましても、より強力に打ち出していくような議論を今後、展開してまいりたいと思います。
 事務局から何か補足はありますでしょうか。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 事務局からはございません。ありがとうございます。
【西尾主査】
 木部先生、貴重なご意見をありがとうございました。
 それでは、病院関係ということで、塩﨑様、よろしくお願いいたします。
【塩﨑委員】
 塩﨑です。ありがとうございます。先ほど実は金子先生がおっしゃったとおりだと私も思っていまして、国とか自治体とか企業が、将来のために大学に投資的な、そういった資金を流していくという事をしないと、とてもこの共創プロジェクトが実装できないと思っています。そこが一番のポイントかなと思っています。
 今、病院は、国立大学病院全体で1.3兆円ぐらいの収益がございます。医療費全体の46兆円の中の1.3兆円なんですけれども、実はヘルスケア市場規模は33兆円と推計されています。この分野は残念ながら、ほとんど国立大学が獲得できていないところです。
 今、予防医療が大事で、社会のために高齢者の人たちがしっかり働けたりとか、高齢者以外もすぐに社会に戻れたりすることがとても大事ですので、ある面、病気になって病院に来るという人だけではなく、健康な状態のままで社会で活躍するために、実は大学が機能していくということも大事ではないかなと思っています。
 もう1点は実は地震のお話もありましたけれども、感染症とかサイバーも、これは社会に対する大きなリスクでございます。ここはぜひ大学が社会に対するレジリエンスを発揮できるところかなと思いますので、ぜひともそこもまた論点としていただくとありがたいなと思っています。
 以上でございます。
【西尾主査】
 ありがとうございました。
 事務局に伺いますが、今までの国立大学法人等施設整備5か年計画では、病院関係の記述はどの程度、書かれているのでしょうか。
【小林大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】
 現行の国立大学法人等施設整備5か年計画では、しっかり書かれておりまして、附属病院の整備は、現行計画では約45万平方メートル整備すると書かれております。項目立てもしっかりされて、整備していくとなっております。
【西尾主査】
 分かりました。
 そういうことを踏まえると、塩﨑様からおっしゃっていただいた投資という点について、まさに金子先生がおっしゃられたような観点からの議論を今回はより強めるということが重要かと考えます。また、社会におけるリスクへの対応という観点から、パンデミック等のことも踏まえ、きっちりとした備えを有する医療関係の施設整備についても議論していきたいと思います。どうも貴重なご意見ありがとうございました。
【塩﨑委員】
 よろしくお願いします。
【西尾主査】
 下條先生、いかがですか。
【下條委員】
 ありがとうございます。今書かれていることはそのとおりで、おっしゃるとおりで、私、最近、青森県に1年おりまして、要するに、日本の地域の疲弊具合というのがひどいと。少子化の影響を実はもろに受けている、一番早くそれが起こっているのが地方だという実感をしております。
 そういう意味でいうと、今回の政策の中で、少しやはり地方の拠点といいますか、地方を元気にするような施策がないかというふうに思っています。特に、例えば、青森地域で言っても、弘前大学が国立大学としてある種ハブになっていただいて、そこから地域の広がりを持って、地域を元気にするというような政策にならないかと。それから、青森県でも、例えば、東北大学の施設だとか、いろいろいわゆる国立大学の地方拠点というのがありますので、そういうところを生かして、もう少し地域の広がりを持った活性化につながらないか。
 恐らく、だから、大学を中心にした共創エコシステムというものの広がりをある意味で可視化できて、かつ発展させることができるということが非常に重要で、これ、都市にいると、なかなか分からないんですよ。ですので、ぜひある意味では地方を見ていただいて、そこをやはり元気にすることをしないと、都市って地方がないと実は消費が存在しないので、そういう意味でも頑張っていけるといいかなと思います。
 以上です。
【西尾主査】
 ありがとうございます。
 非常に重要な論点かと思いますし、この辺りをきっちり記載することによって、全国知事会からも強力な支援を得ることが可能になると思います。今まで以上に、地域との連携の観点、さらには、地域の更なる活性化を促進するソフトとハードが一体化した方向性を強く打ち出すことができればと思っております。
 下條先生が青森県に行かれて実際にお感じになられたことからご発言をいただき、どうもありがとうございました。
 それでは、高橋先生、よろしくお願いいたします。
【高橋委員】
 ありがとうございます、コンパクトに2点ほど申し上げます。
 1つは、URA (University Research Administrator)の役割ということで、先ほど博士人材に言及がありましたが、この役割とこの事業に関してです。URAっていろいろな定義があると思うんですが、この委員会の文脈においては、恐らく自分の組織の研究力強化のために、持っている内部資源の最大効率化のため、必要に応じ競争的資金など外部資源を利用する、そのプランの実装部隊だというふうに捉えることができるかと思います。
 その理解のもと、URA業界については、この10年の文部科学省施策によって、応援されつつ、ますます多様化が進むというのが現状だと思います。そのときに、連携が必要だということは既に書いていただいているのですけれども、先ほどのいろいろな大学の事情、首都圏や地域ということも踏まえて、連携の仕方もいろいろあり、URAをどう活用するかというのは、本日は頭出しだと思うんですけれども、重要な視点かと思っております。
 2点目なんですけれども、先ほど上野委員でしょうか。ソフトとハードの一体化という、ある種ポジティブな方向性と、1960年代以来の足元老朽化問題というのは別ではないかというお話、全くそのとおりだと思っております。
 また、直近の下條先生のご指摘、私、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」のほうもJSPSのほうでコミットしているのですが、全く同じ感触を持っております。特に3大首都圏は比較的いろいろな資源があります。地域、地方においては、自分の資源が全くない中で、いい頭出しとしては、国公私立や高等専門学校の連携が首都圏以上に進んでいます。さらに、いろいろな他局の、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」等も含めた競争的資金によって、それがある種、追い風として吹いている。この芽出しの現実をうまくこの施設整備というところにも使っていく必要があるのではないかと思っております。
 ですので、この委員会、国立大学のということではあるんですけれども、ぜひ国立大学をハブとして、少子化とか地方の現状を踏まえて、場合によっては、地域という物理的集合体のくくりでイノベーション・コモンズということを捉まえるというのが、あり得る方向性ではないかと思った次第です。
 以上、2点です。ありがとうございます。
【西尾主査】
 ありがとうございます。1点目でURAのことをおっしゃっていただきました。そのことに関して、施設ということとの関係で言うと、今後どのようなことを推進していけばよろしいでしょうか。
【高橋委員】
 ポジションだけ申し上げますと、URAの観点からすると、施設というものは、外部資源を獲得するために学内で持っている資源の一つに当たるので、あまたある競争的資金の中で、場合によっては、本当に既にあるものを使うという意味では、あまり重要になりませんし、一方で、イノベーション・コモンズ等に関しては、そこがないと始まらないという……。
【西尾主査】
 イノベーション・コモンズを真に有効活用し、いろいろな活動の展開を図るうえでは、URAの方々のご尽力が欠かすことができませんね。
【高橋委員】
 実際にはその部分があると思いますが、それも西尾総長に申し上げるのはなんですけれども、総長の方針でURAをどの部分にアサインするかは、本当に大学によって多様なので、大学の企画部機能もありますし、部局にも点で存在するプレアワード、お金取りになっている部分もあります。科研費支援もあります。いろいろなので、全て一緒にというわけにはいかないんですけれども、重要なパートナーかと思います。
【西尾主査】
 上野先生にご指摘いただきました「老朽化したキャンパスからの転換」という副題に関しては、日本の高等教育機関にとっては、極めて差し迫った大きな問題です。この転換をどのように実現していくかのシナリオについて、先ほど事務局の方からもある視点からはご回答いただきましたが、3つ目の老朽化の観点は、極めて重要な点であり、この点をどのように今後、実装化していくかということについては、深刻な問題として捉え今後議論を深めてまいりたいと思っています。
また、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業等において、文教施設企画・防災部に頑張っていただいたのは、その経費の中に施設関係経費を含めていただいた枠組みになっているということです。今後、文部科学省の主にソフト的な内容の施策ではあるものについても、必ずハード面の充実も一体化しているような施策として公募をかけていただくことがより重要になっていくものと考えております。どうもありがとうございます。
 恒川先生、お願いいたします。
【恒川委員】
 名古屋大学の恒川です。私は、名古屋大学で施設整備の現場に近いところにおりまして、現場で施設系の職員の方々がどういうことをしているのかとか、どういうふうに整備をしているのかという観点から、お話ししたいと思います。
 まずは、先ほど上野先生がおっしゃったように、この国立大学法人等施設整備5か年の成果を確認するということが非常に大事で、そこが、国から、文部科学省から施設の職員に対するメッセージでもあるので、非常に大事だと思うんですね。
 この国立大学法人等施設整備5か年の計画の中でイノベーション・コモンズという言葉が浸透してきたわけですけれども、一方で、先ほどご紹介いただいたようないろいろな事例というのは、この国立大学法人等施設整備5か年計画の中でつくられたものではないものがほとんどです。イノベーション・コモンズという言葉自体は、施設系の理事や職員の方々には浸透していると思うのですが、大学の教員、特に共創拠点に関わるような研究者の方々というのは、共創することが社会に価値を生むというようなことはよく分かっていて、様々なソフト・ハードの補助金等のメニューを利用していると思います。ところが、施設整備の施策として、イノベーション・コモンズ、共創拠点ということがどういうふうに重要なのかということが、必ずしも一般の研究者や職員の方々、あるいは連携する企業や自治体の方に浸透しているとは考えにくいと思っています。実際のところ、新たに施設概算要求を行う段階になって初めて、研究者の方々がイノベーション・コモンズという言葉を知って、その趣旨に基づいて要求を作文するようなことが起こっていると思うんですね。
 そうではなくて、やはりいろいろな大学の中のメニューみたいなものが、この施設の整備に関わるんだということが、実際に共創拠点をつくっている方々とか、それをつくろうとする、整備しようとする方々に浸透しているということが極めて大事で、それはやはり大学の執行部からのメッセージや、国からのメッセージから伝わってくることなので、これをどうやって浸透して、施設の職員だけじゃなくて、一般の教員や共創拠点をつくろうとしている人たちに伝わるのかということ、そのメッセージをどういうふうに出すのかということが非常に重要ではないかなと思います。
 以上です。
【西尾主査】
 ありがとうございました。
 今までにどういうことがどこまで進んだのかという評価を、まずはきっちり行うことが大切ではないかということと、イノベーション・コモンズにしても、より浸透を図り、実装化に力を入れるべきではないかというご意見と捉えていきたいと思います。
 恒川先生、貴重なご意見をありがとうございました。
 最後に、鶴見先生、先ほど五十嵐様からも高等専門学校等に対する期待も述べられましたが、そういうことも踏まえまして、ぜひお話しいただければと思います。
【鶴見委員】  
 北九州工業高等専門学校の鶴見です。まず初めに、私、高等専門学校の教員としても経験が長いのですけれど、現状、実情の話を少しお話しします。 
 資料3、23ページ目、24ページ目、令和新時代高専の機能高度化プロジェクトということで、予算を大分配分していただきまして、老朽化が改善されてきているということですが、ただ、現状ではまだ38.4%ということで、この数値はまだまだかなと思います。 
 国立高等専門学校は、昨年、高等専門学校制度ができて60周年を迎えたところですが、施設の改修の方は全くそれに追いついていない。あちこちどんどん老朽化が進んできていて、少しずつ新しくなっているんですが、追いつかないという状況です。 
 それと、もう1点、女子学生の急増です。現在、国立高等専門学校の女子学生の割合は、全国平均が25%、4分の1になります。多分、大学の工学部と比べると、かなり高い数字になっています。ところが、施設自体はもともと男子学生中心で学ぶような格好でしたから、特にトイレ設備だとか、そういう女子学生対応の設備が非常に遅れていると思います。 
 私のところも、今年の新入生のうち33%が、女子学生でした。この辺りの状況を国立高等専門学校機構本部にもいろいろ伝えて、トイレ設備の整備をどんどん進めていただいています。あと一方で、障害者対応、それとLGBTQの学生も一定数入ってきておりますので、こういったことに施設としては全く対応できていなくて、この現状をやはり何とかしなくちゃいけません。 
 それから、奈良工業高等専門学校では、女子の増加に合わせて、女子寮のところを整備したというふうに報告がありますが、こういった一部の改修だけでは、間に合わないと思います。 
 一方で、全国の高等専門学校には寮があるわけですが、規模はまちまちです。地域事情によりまして、全学生の1割強ぐらいから、大体7割8割ぐらいが寮生という寮もあります。それを一律に同じような対応で改修なり何なりをやっていくと追いつきません。 
 それから、留学生自体は極端にはこのところ増えておりませんけれど、各学校大体10名ぐらいずつという規模で、これからはどんどん国際化が進んでおりますので、増えていくと思います。女子と留学生対応のことをまずきちんとやっていなくちゃいけないのではないかなと思います。 
 あと、防災の件で言いますと、強靱化ですね。令和6年能登半島地震で、石川工業高等専門学校が大分被害を受けました。入学式等でいろいろご苦労されておりました。 
 一方で、高知工業高等専門学校は、南海トラフで多分真っ先に被害を受ける学校だと思います。和歌山工業高等専門学校もそうだと思いますが、こういったところの強靱化というのは、地元の恐らく避難場所としても使われると思いますので、きちんと対応しなくちゃいけないかなと思います。 
 続いて、資料3、30ページ目の、イノベーション・コモンズ(共創拠点2.0)のところですけれど、「ものづくり」を先導する人材育成の場である国立高等専門学校施設の高度化・国際化ということを強調されております。私の地元で、一体地域から何を期待されているのかといったことを、北九州市と何度も話合いしながら、連携協定を結びました。北九州市ですら、少子化や人口減少のことを非常に意識されていますし、やはり若い人の地元定着やUIターンを促進してほしいというような期待も聞いています。 
 一方、九州はご存じのように、TSMCがありますが、半導体分野が非常に人材不足で、そういった分野の人材を育成してほしいという期待もあります。 
 私どもが考えたのは、リスキリングのところで、やはりこういった地元定着や少子化対応にうまく活用できないかなと。高等専門学校、それから地方大学が一緒になってやる。先ほど下條先生がおっしゃられた地域のハブ、これは地方大学だけじゃなくて、高等専門学校も51ありますので、高等専門学校と地方大学がタッグを組んで、そういった地域のハブとしての役割を、施設設備の観点から行えるといいのではないかというふうに考えております。 
 先ほどの日本商工会議所の五十嵐様のご指摘の点ですが、高等専門学校を非常に高く評価していただいて、誠に感謝いたします。期待が非常に高いということも、重々承知しております。 
 こういった期待、特に多様な教育とか科目を取り入れるという件につきましては、我々も本当に日頃から苦心しているところですけど、やはり時代とか社会ニーズに合った人材を育成するためには、外部の企業さん、地域企業さんとの協力で、そういった外部講師を教育の中にどんどん入れていく。新しいニーズに合わせたような教育をやはり実践していくということが、今一番期待されているのかなというふうに思います。 
 最後になりますけれど、施設設備の話を、キャンパスの中のクローズした中だけの整備というふうに考えるのではなくて、地域連携、産学官連携を通して、人材を育成する場として何が必要かということを、そういった視点で考えていくことが必要ではないかなというふうに思います。 
 以上です。
【西尾主査】
 鶴見先生、どうもありがとうございました。
 ダイバーシティ&インクルージョンの論点や、リカレント、リスキリングの論点、さらに、宿舎のことも含めた高等専門学校における様々な現状等をお話しいただきました。最後にお話しいただいた、キャンパス内だけの問題ではなく、地域と連携した学びの場としていかに整備していくかという視点は非常に重要であると考えます。
 委員の皆様方、本当に貴重なご意見を多々いただきまして、ありがとうございます。
 ここで、愛知県知事の大村様からいただいているご意見を、事務局から簡潔に紹介いただけませんでしょうか。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 かしこまりました。「資料5 大村委員提出資料」をご覧ください。
 こちら、愛知県知事の大村委員からご提出いただきました意見ペーパーについて、事務局から代読させていただきます。
 タイトルとしまして、「「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」の発展・深化に向けて」ということで、中身としましては、2つ目の○からになるかと思いますけれども、少子高齢化・人口減少の進行に伴う地域経済の担い手確保や地球温暖化などの環境問題、地震などの大規模災害への対応など、地域にはそれぞれ実情に応じた様々な問題が存在しています。それらを解決していくためには、地方自治体や企業、関係団体、住民等、多様な主体が課題を共有し、大学等が有する知見を最大限活用しながら、問題解決につながる具体的なプロジェクトを作り上げていくことが必要です。
 このため、それぞれの地域において、共創による地域課題の解決が促進されるよう、技術革新のための研究開発、社会実装の先導モデルの提示、地域産業の振興やスタートアップの創出などの役割を担う共創を支える大学等の体制強化のための支援の充実が必要です。
 また、大学等が、イノベーション・コモンズとして、地域や産業界からの期待に応えていくためには、共創の場として活用される大学等における教育研究施設や屋外空間等も含めたキャンパス全体を有機的に連携した共創拠点へと整備・充実していく必要があり、その機能が十分発揮されるよう着実に取り組んでいくことが重要です。
 このため、大学等がイノベーション・コモンズとしての役割・機能を最大限発揮できるよう、ソフト・ハード一体となったさらなる教育研究環境の充実、すなわち、ソフト面の取組を支える施設の機能強化や老朽化対策を含む大学等の施設の整備充実を継続的に図る必要があります。
 大学等においては、地域の核となって、地域産業の振興やスタートアップの創出を図ることなどにより、雇用の創出、ひいては人材の流入・定着につなげるなど、各地域における一層の地方創生の実現に寄与していくことが求められており、この会議における議論が地方創生にとって重要な役割を担う大学等の教育環境の一層の充実につながることを期待していますということで、以上になります。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次期国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に際し論点と考えられるもの、重点的に議論すべきと考えられるもの等について、本日各委員の皆様方からいただきましたご意見を踏まえまして、それらを反映した形で今後の議論を展開してまいりたいと思います。このような方向でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【西尾主査】
 ありがとうございます。
 それでは、その方向で今後の議論をさらに深めてまいりますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
 最後に、議題(3)「その他」について、事務局から説明をお願いいたします。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 事務局でございます。西尾先生からはご意見ございますでしょうか。
【西尾主査】
 どうもありがとうございます。私の考えにつきましては、本日の皆様方との議論の中ですでに反映できていると考えております。どうもありがとうございます。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 かしこまりました。ありがとうございます。
 そうしましたら、「その他」につきまして、事務局よりご説明させていただきます。こちらでご説明させていただきたいのは、今後のスケジュールについてでございます。「資料6 今後のスケジュール(案)」をご覧ください。
 本日開催しました協力者会議は、5月22日の第1回調査研究協力者会議になります。次回の第2回協力者会議につきましては、7月上旬の開催を予定しております。なお、議題としまして、ワーキング・グループの設置について、ご審議いただきたいと考えておりますのと、有識者によるご発表などを考えております。第3回協力者会議以降につきましては、令和6年12月にかけて、1回から2回程度、開催を予定しております。
 また、第2回協力者会議でワーキング・グループが設置された場合、令和6年12月にかけて、複数回開催する予定になろうかと思われます。さらに、年明けの開催を予定しております協力者会議において、ワーキング・グループが設置された場合の成果報告ですとか、中間まとめの素案などをご審議いただきたいと考えております。その後、令和7年3月頃の開催を予定しております協力者会議において、中間まとめの案をご審議いただき、公表したいと考えております。
 なお、来年度以降のスケジュールとしましては、令和7年末頃に本協力者会議における最終報告書の取りまとめと公表を行い、令和7年度末に第6次国立大学法人等施設整備5か年計画を文部科学大臣決定したいと考えております。
 説明は以上になります。
【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 スケジュールやワーキング・グループの設置等について、ご質問はございませんか。
 それでは、ちょうど時間となりましたので、本日はこれまでとさせていただきます。返す返すも、皆様方から貴重なご意見を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。
 この後、事務局から事務連絡と、技術参事官の金光様からご挨拶をいただけるということですので、どうかよろしくお願いいたします。
【松田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
 ありがとうございます。事務局でございます。
 まず、事務連絡といたしまして、本日の会議の議事録につきましては、改めて委員の皆様に照会させていただきますので、ご確認いただければと思います。
 また、ご確認いただいた後、文部科学省のホームページにて公開させていただきたいと考えております。
 最後に、会議の閉会に当たりまして、技術参事官の金光よりご挨拶申し上げます。
【金光大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官】
 金光でございます。今日は貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。全ての出席の委員からご意見を頂戴するところでございましたが、西尾先生にご発言いただかないままご挨拶申し上げるのも恐縮でございますので、手短にお話ししたいと思います。
 この会議、今年度、また、来年度と2か年にかけて、次期国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けたご検討をお願いしているところでございます。少し長丁場ではございますが、どうぞ引き続きご協力のほどお願い申し上げます。
 また、来年度の予算編成につきましても、この会議でいただいたご意見等を反映して進めてまいりたいと思っておりますので、この点についてもご意見を賜れればと思います。
 本日はどうもありがとうございました。
【西尾主査】
 金光技術参事官からお話がありましたように、これからの議論で大事なことがあります。今後、次期の国立大学法人等施設整備5か年計画の策定に向けた議論を行ってまいりますが、その議論が、来年度の概算要求に向けてどのようなことを盛り込み、どのような点を強調すべきか、ということにも関係していることです。これらの双方を併せた形で今後の議論を進めてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
 それでは、委員の方々、事務局の方々、本日はありがとうございました。これにて閉会にいたします。
―― 了 ――

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