HPCI計画推進委員会(第58回) 議事要旨

1.日時

令和6年4月17日(水曜日)11時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室(傍聴はオンライン会議にて参加)

3.出席者

委員

HPCI計画推進委員会委員:
合田委員、伊藤公平委員、伊藤宏幸委員、梅谷委員、小林主査代理、田浦委員、館山委員、中川委員、福澤委員、藤井主査、朴委員、棟朝委員
「次世代計算基盤に係る調査研究」評価委員会委員:
後藤委員、高野委員、中野委員、藤井啓祐委員、安浦委員
外部有識者:
(東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻)相澤清晴教授
(東京大学・大学院理学系研究科)常行真司教授
 

文部科学省

塩見局長、松浦審議官、国分参事官、栗原室長、谷本参事官補佐、長澤係長

オブザーバー

(理化学研究所 計算科学研究センター)松岡センター長、庄司部門長、近藤チームリーダー、佐藤(賢)チームチーダー、原室長、嶋田室長代理、西田高度研究支援専門職、岩崎副主幹
(東京大学大学院理学系研究科)藤堂教授
(東京工業大学 学術国際情報センター)横田教授

4.議事要旨

冒頭、4月より大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)に着任した、松浦審議官、研究振興局参事官(情報担当)に着任した国分参事官、4月10日より計算科学技術推進室に着任した栗原室長の紹介と挨拶を行った。その後、各議題の報告を行った。
 
議題1:開発主体候補からのヒアリングについて
資料1について、松岡センター長より説明があった。
【藤井主査】  ありがとうございました。おおむね中間取りまとめに記載した方向で理研の中でも議論いただいているように感じますが、御質問等いかがでしょうか、委員の皆様。
【安浦主査】  非常に丁寧な御説明ありがとうございました。メモリの話をされましたけども、3次元積層メモリのところが一番、今、技術が変化しているところだと思いますけど、今回の取組で最先端と書かれているんですけど、最先端でも、方向性はいろいろあります。バンド幅、キャパシティー、パワー、リライアビリティ、コストなど、それらをどこに、どういうふうに軸を置いて考えられるかという点についてお考えあれば教えていただきたい。
【松岡センター長】  今回、さらに長期的な点からすると、今、安浦先生がおっしゃった全ての点で、先進性を発揮することが重要であると考えています。つまり、もちろん、ベースラインとして、これは昔からずっと言われていたことですけれども、容量と帯域というのが同時に満たせるメモリが理想的である。これは大変難しいわけですね。難しいわけですけれども、かなりブレークスルーが期待できる技術を我々は検討していています。最近さらに重要なのはエネルギーのリダクションで、これをやらないと、いくら高容量のメモリでも駄目で、特にHBMで、今、一番問題となっているところなんですね。
 なので、ここも大幅な伝送エネルギーの低下というのを試み、信頼性を上げて、マニュファクチャリングし、全てうまくいく必要がある。。これが難しいからこそ、今ここが、言わば戦国時代であると考えているわけですが、もしここで、最先端の、それらを全てほぼ満たすような優位性がある技術ができますと、これが我が国でやるのか、日米でやるのか、ほかのパートナー含めてやるのかなど、いろいろシナリオは考えられますが、とにかく日本が参加することで、そこで技術的先端性が取れると、今後の全てのプロセッサというのは、その技術に依存することになるので、日本が、そこの技術的ヘゲモニーとは言いませんけれども、かなりの技術的優位性を担保できるのではないかと考えております。
【中川委員】  日立製作所の中川でございます。非常にわくわくするような計画というか、意思表明をしていただき、ありがとうございます。
 私の質問は、10ページの一体的整備に関してでございます。クラウド等ではCI/CDといって、コンティニュアス、継続的にインテグレーション及びデリバリーを行うというのが普通になっておりますが、やはりこのようなフラッグシップ、非常に製造コストが高いというシステムの場合、ちょっとこの矢印に年次が入ってないので、仮定で言いますと、今まで約10年に1回というところを、技術評価、研究開発という矢印、これが5年ぐらいの長さで、今、ポスト富岳とここで書いてあるところを検討しているけど、それが大体軌道に乗ったら、つまり開発がほぼほぼ製造フェーズに入っていったら、次のものも研究開発始めるという、そういう、要は5年ピッチでどんどん途切れなく研究開発、次、次の次ってやっていくということだと理解いたしました。
 一般的に考えると、研究開発費が増加しますよね。その分、もちろん予算も増えればいいと思うんですけれど、文科省の予算というのも限られていると思いますので、多分その分は製造量を抑えて、半分入れ替えるというよりは、一旦製造量を抑えた形で、次に入れる、ここでいうポスト・ポスト「富岳」というのはもっと電力当たり性能って上がっているはずですから、より、システム全体で見れば、5年ピッチで階段状に上がっていくことによってトータルの性能が上がっていくというふうなシナリオなのかなあと思うんですが、やはり一番国民目線で気になるのは、開発費の増加や、使える計算容量というんですか、インフラのキャパシティーが減っちゃわないかという心配、両面あるかなと思うんですが、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。
【松岡センター長】  我々、いろんな試算をしています。既に、我々、研究機関、理化学研究所のセンターでありますけれども、実質的に国のHPC研究センターでもあるので、基礎研究という部分も、実際にHPCを運用する部分も、開発を進める部分もあるわけですね。フィージビリティースタディーというのは一種の基礎研究なので、基礎研究の部分というのは実はそれほどお金がかかるわけではなくて、しかも既に計算科学研究センターでは、我々だけじゃなくて、様々な大学の研究室や国研の研究所と連携していて、そこの部分の予算というのは、もちろんある程度は必要なんですけれども、全体から見ればそれほど大きなものではないとは思います。ですので、この部分が、継続的な研究体制になっているんですね。この部分の予算というのはそれほど大きな心配はしていません。
 一番大きな部分というのは、本当の意味での開発というところで、ここは、エンジニアが何百人も関わって、開発、実際に物をつくる。ここの開発費というのが、中川さんおっしゃるように、非常にかかる。ここでのコスト上昇というのがやっぱり一番心配するところで、もちろん、理想的には文科省が必要な資金を獲得してきていただければベストなんですが、ニーズはあると思うんですね。ただ、そればかりに頼っていてもいけなくて、いくつかのレバレッジというか、方策は当然考えています。
 一つは、今回の開発が、市場価値を持つことで、各社、パートナーとなる会社が自らの投資もしていく。逆にそれが、例えばクラウドとか、クラウドインフラ等で採用されることによって、当然それはビジネスということで、各社のインベストメントを励起する。これが一つ目です。本来そうあるべきなんですけども、なかなか日本のスパコン開発がそうなってなかった、スパコン業界の外側もそうなってなかったんですけども、今回はそういうことを目指していく可能性もあると。
 もう一つは、いくつかのキーテクノロジーに関して、例えばメモリとか、そういうのは、これは「富岳」のため、ないしは「富岳」の次世代のためだけにつくるのではなく、ほかの一般のITの開発としてやっていく。そうすると、民間会社もそうですけど、例えば他省庁の開発プログラム等も場合によっては連携して活用するようになる。
 例えば今、MONAKAというのを富士通がつくっておりますけれども、MONAKAというのは、「富岳」でつくられたCPUをさらに発展させて、富士通がサーバのCPUとして、経産省の資金でつくっているわけですね。そのように、必ずしも富士通のCPUの開発というのは文科省に頼るだけじゃなくて、経産省にもファンドを受けている。
 ですので、もし仮にそのような形で、キーとなる技術が、特にキーテクノロジーで、複数の省庁がそれを担保していく体制ができる場合があれば、もちろんそれを、我々は活用していきます。
 そのような様々な形で、なるべく、キーテクノロジーとして非常に広い形でITのコミュニティーに訴求していく。そうすることで、国の負担もあるのですが、しかし、その普及によってより国民が享受する便益が増える、民間も含めて担保していくということが重要になっていくと思っております。
【国分参事官】  先月取りまとめていただいた中間取りまとめの精神からいきますと、基本的に求められている計算需要があって、それを満たすための技術なりスペックというのはどうなっていくのだろうかというロジックで考えられていると思っています。
 そういう意味では、これポスト・ポスト「富岳」と書いてありますけれども、次の次は、こういう技術があるから次の次これをつくります、という順番ではなくて、2030年代に新しいニーズとか、ニーズの増ですとか多様性というのが生まれてきたときに、きちんとそれに対応できるような技術を我々としても温めていくべきではないかというのが基本的な発想だと思っているので、5年とか、あらかじめリプレースの時期がかちっと決まっているものでは必ずしもないとは思っています。一方で、一般的にこういう技術の進展が速くなっていることは御指摘のとおりだと思っております。
 あと、技術評価という意味でも、さっき松岡センター長からもありましたけれども、経産省からの補助金などなど、もしくは民間企業が様々な形で今投資している部分がございますので、必ずしも文科省や理研だけで全部研究開発していくというものではなくて、いろいろな形で日本国内で、成熟してきた技術をきちんと、将来、ポスト富岳の後継のところに実装できるようにインターフェースをきちんと見ていきましょうということが基本的に大事なところなのかなと思っています。
【中野委員】  11ページで運用技術部門を中心とした先導的な運用の取組で、今先ほどおっしゃられたように、これからソフトウエア、あるいはAIのトレンドというのは本当3年単位とか、僅か3年前にオープンAIが立ち上がるまではここまで大きな変動があるとは誰も思っていなかったということは、この2年ぐらいの間に次の動きがあるのは間違いないのではないかなという気がいたしますが、そういう意味でこの辺りの運用の取組ですね。つまり、ネクスト富岳が立ち上がるまでのつなぎに対して、変革していくであろう環境について、先ほどのソフトウエアの移行などについて、みんながやっている間にもう間に合わないというような状況に対して、理研さんはどこまで御支援いただけるのかなあ、というあたりをもう1回教えていただけると幸いです。
【松岡センター長】  こちらの図の上のほうは我々の研究チームですけれども、研究チームはもちろん、ソフトウエア開発をしたり、様々ユーザーとの、特にドメインのユーザーに対して様々なコンサルテーションを行ったりというようなことをしています。ですので、運用技術部門だけがやっているわけではありません。
 理化学研究所のいいところは、私も勤めてみてよく分かったんですけど、かなり機動的に、非常に、急速に組織変更できる。例えばこちらにあります量子HPC連携プラットフォーム部門は去年の4月にできて、AI for Scienceプラットフォーム部門は今年の4月に立ち上げましたが、去年の4月、その前の4月にはこのような組織をつくるということはまだなかったわけです。要するに、AIがあって、これは絶対対応しなきゃいけない。いろいろプロジェクトを始めなきゃいけない。全理研で動かなきゃいけない。我々はプラットフォームやシステム等をやる。そのためには研究開発部門をつくり、当然ながらこれに対応しなきゃいけないということで、1年ぐらいでどわーっと動いて、この部門ができたわけですね。ファンドが来て、部門ができたと。
 ですから、我々の対応力というのは、実はものすごく、クラウドベンダーも速いんですけど、我々も相当な速度で動いていて、その中でこのような様々なソフトウエア、もちろんベーシックな統合化とか、CI/CDとか、テスト環境とか、ベーシックなところもやっていますけど、さらに先進的な、例えば、AIを大幅にソフトウエアエンジニアリングに導入するなどの動きというのは、かなり高速に行っております。
 一番、我々が力入れているのは、さきほど申し上げたとおり、いかに運用に生成AIを含むAIを取り入れて、ユーザーを含めて、ユーザーのソフトウエア開発からサポートし、さらにマシンの運用を自動化していくというところです。その辺りを、今年度から、かなり力を入れることによって、マシンのレボリューションですね、これをユーザーが非常に高速に適用できていくようにしようというのが一つの大きな目標となっています。
【藤井主査】 今日の議論、もしくはこれまでの議論をいろいろ踏まえた上で、理化学研究所の御説明に対して特に大きな異論というのはなかったように思います。そういう意味で、これから先まだ詳細な検討が必要なわけですが、開発主体候補として理化学研究所さんに今後の検討をさらに進めてもらうという方向で進めたいと思いますが、いかがでしょうか。御了解いただけますでしょうか。
 それでは、もし細かいところで追加の質問などあありましたらメール等で事務局のほうにお送りいただいて、理研さんのほうから回答いただくということにして、引き続き、理研さんには詳細の検討を進めていただき、事務局においては今日の議論も踏まえ最終取りまとめ案をつくる作業に入っていただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。 どうもありがとうございます。
 
 
議題2:AI for Scienceロードマップについて
資料2について、藤堂教授、佐藤チームリーダーより説明があった。
【藤井主査】  ありがとうございます。ちょっと時間が残り少なくなってしまったので、質問の数を限定させていただきたいと思います。委員の皆様、いかがでしょうか。
【棟朝委員】  いわゆるAI処理と既存のHPCの処理が3つに結合したもの、今回の計算機周りに影響すると思うんですけれども、そのようなアプリケーションってどれぐらいあるんでしょうかね。つまり、ソースコードの中にAI処理が埋め込まれているとか、そのようなものというのは。
【佐藤チームリーダー】  基本的にやっぱりシミュレーションとAIの融合というのは非常に重要で、AIを学習するためにデータが必要になりますよね。そのデータというのは、やはりシミュレーションで、「富岳」とか大規模で生成された学習が必要で、基本的には学習の場合には、シミュレーション単体で動かして、そのデータを使って学習するんですけれども、実際にそれを使って応用するときにはAIというのはシミュレーションに組み込まれた形で利用することになると思います。
 例えば「富岳」でも既にそういった取組は徐々にしていまして、例えば沖のところで地震が起きたときに、沿岸のところにどのぐらい津波の影響があるのかというのを即時に予測するようなAIシステムがありますけど、それはもう、本当に大量のシミュレーションをし、データ生成・学習する形式で、シミュレーションとAIが融合されたものです。
 これは1つの例ですけれど、先ほど、モード分解のところもそういったシミュレーションとAIを組み合わせて使っているものもありますし、ほかにも様々な例が存在します。
【藤井主査】  今の御質問は、1つのシミュレーションプログラムの中にAI的な演算が入っているものがどれだけあるか、ということでしょうか。
【棟朝委員】  中にもっと密に入っているものがあると、いわゆるこのようなフラッグシップでやる意味がより高くなるのかなという、そういう意図でございます。
【朴委員】  6ページにAI for Scienceの典型的な例が3つ出ているんですけども、これとその次に出てくるLLMのパラメータ設定云々という定量的な評価は直接関係あるんでしょうか。
【佐藤チームリーダー】  こういった基盤モデルを使って、例えば2番目の例ですと、構造をつくった後に、じゃあ、それは人間としてどうやって解釈すればいい、どのぐらい強度があるのかと聞いたときに、返すためには、この次のスライドで示されている赤いラインにあるような大規模言語モデルとの融合が必要という意味で関連づけています。
【朴委員】  ということは、6ページの、これかなりスペクトルが広い話なので、これをそれぞれやろうとしたときのLLMのパラメータ数は、逆に言うと、8ページの倍半分の中に収まるというほうが何か驚きなんですけれども、最終的に要求されるフロップスがこういった広い範囲のことをカバレッジするのに。LLMでこれぐらいのパラメータでいけるでしょうというところが6ページとちゃんとリンクしているんだったらそれでいいんですけれども。
【佐藤チームリーダー】  そうですね。ただ、今、ChatGPTでもそうですけれども、やっぱりちょっと学術的なものを入れると、正しい文章が生成されにくいところで、よりそういうことをカバーするための、ここに書いたことを実現するためのパラメータというのは今の段階では少ないという見解で、とはいっても、今、すごい速いマシンがあって、メモリサイズもあったら、多分ラインというのは線形じゃなくてどんどん上がると思うんですけれども、これまでの計算の性能ですとかキャパシティーのトレンドに照らし合わせて予想をしたものが赤いラインなので、どちらかというと、アプリケーションのリクワイアメントとしては、できれば赤いラインよりさらに上に行けば行くほどいいんだと思いますけれども、多分どちらかというと、今はどちらかというとマシンの性能にキャップされている影響で、赤いラインを……。
【朴委員】  この赤いラインにそろえるぐらいで6ページのものを考えましょうということなんですね。
【佐藤チームリーダー】  そうですね。現実的なラインとして。もっと上を行けるのが多分アプリケーションのリクワイアメントとしてはいいと思います。
【朴委員】  分かりました。
【安浦主査】 1つだけお願いなんですけれども、11個の領域書いてある中に情報科学がないんですけど、ぜひ入れていただきたいと思います。
【松岡センター長】  そうですね。アルゴンヌは、実は、アルゴンヌはサイエンスで、サイエンスもやっているので、我々もぜひ。
【藤井主査】  先ほど低次元化モデルの話が例の中にありましたが、それらのようにトランスフォーマー的なアプローチではないものもたくさんありますね。ですから、要求性能の議論ではそれも含めてまとめていただくほうがいいかなと感じました。AIの利用に関してはまだ皆さん質問もたくさんあると思います。もし機会があったらまたどこかで議論させていただく機会をつくろうかと思いますが、いかがでしょうか。
 時間もなくなっていますので、今日のところはこれで終わりとさせていただきます。最後に全体として何かコメント等ございましたら御意見いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
【栗原室長】  本日、忌憚のない御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本日いただきました議論の結果も踏まえまして、最終取りまとめの作成を行いまして、そこで開発主体の決定をすべく作業を進めさせていただきます。
 
事務局より事務連絡を行い、藤井主査により閉会。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室)