今後の医学教育の在り方に関する検討会(第10回)議事録

1.日時

令和6年5月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 今後の医学教育の在り方に関する検討会 第二次中間取りまとめ案
  2. その他

4.出席者

委員

  永井座長、今村(知)委員、今村(英)委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 森川部長)、岡部委員、北澤委員、熊ノ郷委員、炭山委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員

文部科学省

  池田高等教育局長、奥野審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

  厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 ライフサイエンス課 課長補佐 廣瀨 章博

5.議事録

【永井座長】  それでは,時間になりましたので,これから検討会,第10回を開始させていただきます。委員の皆様には,お忙しいところをお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 事務局から委員の異動,委員の出欠状況,配付資料の確認,オンライン会議での発言方法について説明をお願いします。
【海老課長補佐】  ありがとうございます。事務局でございます。
 まず,新たに就任いただいた委員を御紹介させていただきます。公益社団法人日本医師会常任理事,今村英仁委員でございます。
 続きまして,本日の委員の出欠状況でございますが,本日は,金井委員,宮地委員,和田委員から御欠席の連絡をいただいております。また,大井川委員に代わり茨城県保健医療部,森川部長に代理出席をいただいております。
 なお,田中雄二郎委員は,11時30分頃に御退席の予定でございます。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりでございますが,お手元にございますでしょうか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表してございます。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いでございます。御発言をされる場合にはZoomの挙手ボタンを押していただくよう,お願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言をいただく際はマイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,議事次第に従いまして,今後の医学教育の在り方に関する検討会第二次中間取りまとめ案,その他について議論いただきます。最初に中間取りまとめ案の説明を事務局からお願いします。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。医学教育課の堀岡でございます。前回も第二次中間取りまとめの案文は出させていただきましたけれども,まとまった議論の時間をとって御議論いただくのは今回でございますので,前回御議論いただいた診療科枠などの話も含めて,今回,追記させていただいておりますが,全体をもう一度簡単に御説明させていただいて,御議論に資せればと思っております。
 資料1の第二次中間取りまとめの本文を御覧ください。「はじめに」のところで,昨年5月以降,まずは前半,大学病院の抱える経営的な問題など様々な課題と対応策を中心に検討を行って,9月に中間取りまとめを示したところであります。今年の1月から主に医学教育・研究の,いわゆる地道な在り方について有識者ヒアリングや委員間での審議を重ねてまいりました。この間,改革プランなどの策定も通じて大学病院の改革の推進というもの,取り組んでまいりましたけれども,今般,一度,第二次中間取りまとめとして1月以降の議論の成果を取りまとめて,政策の参考とさせていただきたいと考えておりますので,第二次中間取りまとめをまとめさせていただいております。
 まず,1つ目のポツとして,医学教育の充実に向けた取組と書いております。(1)診療参加型臨床実習の実質化でございますけれども,まずは診療参加型臨床実習の意義というところで,当然でございますけれども,医師の職責を十分に自覚した上で,医学教育を通じて医師としての研鑽を行っていくということが必要であるということを書いております。
 3つ目の2ページの上から2つ目のポツでございますけれども,田中委員から前回御意見をいただいたような医師養成課程の最終的な参加型臨床実習は仕上げとなるということを強調した書きぶりに変えております。
 今後,2ページの一番下でございますけれども,文科省としても卒後に控える臨床研修,現在行っている臨床研修の内容を中長期的には診療参加型臨床実習の中で実施するということを目標としておりまして,それがもし可能になった場合には,臨床研修の内容についても,それに応じて検討する必要があると考えております。
 3ページでございますけれども,効果的な実習のための連続した配属期間の確保というところでございます。2つ目のポツでございますけれども,現在,全ての診療科で臨床実習を行う必要はないにもかかわらず,診療科間の公平性が優先されて,細切れの配属期間で全診療科での実習が設定されることも間々あるという実態を書いております。
 その次のポツで,実習を統括する権限を有する担当者や組織を設定し,診療科間における調整や学生の意向の確認を行った上で,特定の診療科などにおいてまとまった配属期間を確保して,充実した実習を行うことで診療参加型臨床実習の実質化を進めるというような取組は有効であると書いております。
 また,次のポツで,その場合には医師国家試験で少しその細かな問題が出たりすると,なかなかそういった集中した強弱をつけた配属というものが難しくなりますので,医師国家試験の在り方についても関係省庁と連携して検討する必要があると書かせていただいております。
 次に4ページ,(2)の医学教育を担当する教員の適切な評価というところでございます。1つ目,教員に対するインセンティブとしての評価として,2つ目のポツとして,既に今年度委託事業として予算化しておりますけれども,臨床実習指導医と,今まで臨床研修指導医という資格は厚労省のほうであったわけでございますけれども,医学生を教育するという臨床実習指導医というものがございませんでしたので,そういったことの制度設計など検討していきたいというように書いております。
 次に大学における教育業績評価の取組例として,これはあくまでも例として,様々な例を載せさせていただいております。田中委員から御紹介いただいた医科歯科において,臨床実習への教育貢献を評価項目に盛り込んでいること。また,田中純子委員から御紹介いただいた広島大学においても,処遇には反映されてはいないものの,様々な教育に関するアクティビティのモニタリングするシステムを行っていること,また,次の5ページでございますけれども,名古屋大学の方からヒアリングをした,名古屋大学の臨床研修センターなどで昇任する際に教授に関する実績を出している例などを御紹介して,グッドプラクティスとして,文科省としても御紹介していきたいと考えております。
 また,永井先生から御指摘があった中長期的検討に資する調査分析の実施,5ページの一番下でございますけれども,次の6ページの2つ目のポツですが,国として教育に関しては息の長い取組が重要なので,国内外の取組例について幅広く調査を行う必要があるという御指摘をいただいて,国としても実施しようと考えております。
 (3)が医学教育において検討会でも議論した中身でございまして,コンテンツの共有化でございます。2つ目のプラットフォームの整備に向けた検討を御覧ください。今後,医学教育の内容を充実しながら,オンデマンド授業の収録映像や汎用性のある授業用資料等の共有などを通じて,教育の質の向上というものを取り組むプラットフォームというような仕組みをつくってはどうかと考えております。
 また,その際には,2つ目のポツでございますけれども,授業の全てを例えば動画の教材の視聴のみで流すだけで完結するようなことを行って,教育の質の低下を招くというようなことがないよう十分注意した上で,でも,プラットフォームというものの整備に向けた検討を進めてはどうかと書かせていただいております。
 7ページ,これが前回の検討会で御議論いただいた,(4)医師の偏在解消に資する教育上の方策のところでございます。最初のポツ,医師の偏在対策等に係る最近の議論というところでございますけれども,最初のポツのところは,政府の方針で,閣議決定などで決まっている定期的に医師需給推計を行った上で,医学部定員の減員の方針を示されてきたところというところ,また,一番下,4つ目のポツのところでございますけれども,一方で,医師の地域偏在,診療科偏在の解消には至っていなくて,文科省においても厚労省と連携の上,医師養成課程において講じ得る医師の偏在解消に資する方策について不断に検討を行っていくことが重要であると書かせていただいております。
 次に,ここから先は地域偏在解消に資する方策というところでございますが,8ページ,いわゆる地域枠の医学教育を念頭に置いた記載ぶりになっております。最初の8ページ,一番上のポツでございますけれども,現在,医学部定員全体は約9,500名ですが,そのうちの地域枠は1,770名でございます。その中には,例えば茨城県や新潟県のように多く県またぎの地域枠を設けているという例もございます。
 2つ目のポツが,地域枠の簡単な状況でございますけれども,例えば令和3年度であれば,95.3%が県内に就職しており,地域枠以外の卒業生の方は,県内就職率38.4%でしたので,地域枠ということの効果というものは疑い得ないものだと思っております。
 また,3つ目,この辺りが文科省の仕事でございますけれども,地域の医師確保のために地域医療に関する教育を充実させていく必要がある。特に,例えば東北医科薬科からヒアリングなどさせていただきましたけれども,地域の風土や民俗についての理解を深める必須科目まで設置したりするというような特色ある教育活動が行われておりまして,そういったことが必要だと思っております。
 4つ目でございますけれども,銘苅委員から御指摘いただいたポイントでありますけれども,一方で,地域医療の貢献を志す医師が大学院進学や海外留学しにくくなっているのではないかという御指摘をいただきまして,様々,厚生労働省などとも調整いたしましたけれども,各都道府県で地域枠の学生の,そういった医師の配置を決めるキャリア形成プログラムというもの,次のポツでございますけれども,があるのですけれども,それについては厚労省のほうで運用指針というものを定めておりますけれども,大学院の進学や海外留学などは,そういったキャリア形成プログラムの一時中断ということを可能ということになっておりますので,各都道府県において,それに基づいたキャリア形成プログラムがちゃんと運用されるように厚生労働省と連携してお願いしていきたいと考えております。
 また,大学院への進学も含め,卒業後に当該大学が設置したプログラムの履修を要件とした,いわゆる大学枠というようなものも現在一部の例で行われておりますけれども,そういった例も地域の貢献を,9ページでございますけれども,果たすようにできる可能性が十分に考えられると考えております。
 次に,様々な御意見をいただいた診療科偏在の解消に資する方策でございます。一番上のポツで,現在,地域枠の中に診療科選定地域枠というものがございまして,71大学のうち,41大学,406名がその枠を使っております。これについてさらに発展するような形で前回お示しして,3つ目のポツでございますけれども,医学生各人の希望も踏まえた上で,特定の診療科での実習を充実して,早期から専門的な知識などの修得を目指した教育を実施するというようなことを,そのように提案をさせていただきましたけれども,一方で,様々な先生から医学教育における一定の平等性確保とか,学生に不公平感が生じるというような御指摘,たくさんいただきました。そういったことを考えてもよいのかもしれませんが,慎重な検討が必要となると考えられるというふうにまとめております。
 最後に,養成しようとする医師像と教育プログラムでまとめておりますけれども,すみません,資料,飛んで恐縮ですが,資料2の中間取りまとめ,パワーポイントでまとめているものが,3ページを御覧いただきながら,読んでいただければと思います。この2つ目の,9ページの一番下の丸でございますけれども,大学において上記のような教育プログラムを検討するに当たっては,地域の実情や将来の医療需要に応じて養成しようとする医師像を明確にした上で,共通に取り組むべき教育というものをあくまでもやった上で,必要に応じて,このパワーポイントの例を御覧いただきたいのですけれども,養成しようとする医師像の例に応じた特色ある教育プログラムを構想,提供していくということをより文科省として推進してはどうかということにしております。
 パワーポイントのほうを御覧いただきたいのですけれども,養成しようとする医師像の例というところで,ブルーで4つ,今,書いたようなことを分かりやすくまとめております。例えば一番上だと地域枠の医師を念頭に置いたもの,2つ目は地域枠,診療科枠を念頭に置いたもの,3つ目としては大学枠のもの,いわゆる研究医を養成するような枠,4つ目としては,大学教員を養成するような枠として通常の医学教育に加えて特色あるプログラムを大学によっては提供するということも推進してはどうかと思っております。
 例えば大学教員の一番下の枠でございますけれども,大学病院における教育・研究・診療を念頭として,例えばスチューデントアシスタントというような形で研究の手伝いを基礎研究のところに配属させて,ある程度大学でお金を払いながらスチューデントアシスタントとして雇用したり,また,大学によっては低学年の医学生を分かりやすく医学教育で教えるというようなことのために非常勤雇用して,スチューデントアシスタントとして雇用するというような教育を学生のときから地道に行うというような例もあるようでございますので,そういったプログラムを用意して特色ある教育プログラムを提供していくということを文科省としても推進してはどうかということにしております。
 教育については,大体,今,御説明した中身でございます。11ページ以降でございますが,11ページ以降が医学研究の中身でございます。最初のポツは論文数の分析から見る医学研究として,三重大学,豊田先生からもプレゼンいただきましたけれども,研究面での地位の低下というものが著しいという実態を現状分析しております。3つ目のポツでございますけれども,特に地方医大などの医師1人当たりの手術件数や入院患者数が多い大学ほど医師1人当たりの論文数が少なく,QI論文なども低くなっているということから,当初からこの検討会でも問題点,事務局からも示させていただいていますけれども,研究,教育時間を確保していくということが重要だということをまとめております。
 (2)医学研究に携わる人材育成の推進でございますけれども,2つ目のポツ,医学部定員における研究医枠の設置の部分でございます。12ページでございますけれども,現在,研究医枠16大学,27名という少ない枠でございます。少ない枠でございますけれども,その次のポツや3つ目のポツにまとめておりますが,研究医枠を設置している大学では,そういったコースを丁寧に作っている大学が非常に多く,一定の数,研究医として従事する者を輩出するなど,よい取組としておおむねどの大学からも評価されていると思っております。そのために,4つ目のポツでございますけれども,医学部定員全体の方向性を踏まえながら,研究者養成に特化した枠を推進するなど,その範囲内において研究医を増員する方策を検討するという方向を打ち出しております。
 次は学部段階からの研究マインドの醸成について書かせております。その次のポツ,卒後の臨床研修及び専門研修期間中の研究との関わりというところでございまして,13ページの2つ目のポツでございますが,この検討会,一貫して専門医制度とできる限り大学院を両立させていくということを御提案させていただいております。専門医機構の御協力もいただいて,中長期的なキャリアパスや年齢面を考慮して専門研修と大学院博士の両立を念頭に置いたプログラムの更なる充実ということをさせていただいております。
 また,今後の検討でございますけれども,専門研修の期間中,大学院に入っている方については,専門研修で今一般的な,いわゆるグルグルいろいろな病院を回る研修プログラム制というのが一般的な研修になっておりますけれども,そうではないカリキュラム制で,大学院にいながら,専門資格を取りながら大学院の研究にも従事できるというような柔軟な対応を認めるというようなことも含めて,学会や専門医機構と検討するということも検討するという方向性を示しております。
 13ページ,一番下に標準修業年限と学位審査の方法という項をまとめております。14ページでございますけれども,熊ノ郷先生から4年間での学位取得率,非常に大学によって大きな差があるというエビデンスを御紹介いただきました。学位の取得のみはもちろん,大学院に進学する目的ではないとはいえ,若者にとって多くの1つの到達点というふうになっている面は否定できないものだと思っております。
 そのような中,例えば東京大学などでthesisによる学位審査を行っているという例を御紹介させていただいております。学位審査の在り方について様々な大学の御懸念というものはあると思いますけれども,3つ目のポツでございますけれども,thesisによる学位審査にも一定の合理性があるということは考えております。このような検討会の議論も踏まえて,各大学で学位審査,4年間でどのようにやっていくのかというのは検討を進めていただきたいというように考えております。
 また,(3)で,少し飛びますけれども,15ページ,医学研究の推進に係る研究環境整備でございますけれども,研究時間の確保というのが非常に重要だということを改めて書かせていただいております。1つ目のポツ,診療活動の時間の割合の増大に伴って,経年で大きく減少しているということでございます。研究に専念するための環境整備といたしまして,バイアウト制度,また,PI人件費支出の制度について御紹介しましたけれども,あまりいろいろな現場で,いろいろな先生が制度を使えるという状況にはなっていないと思っております。そのようなこと,また,宮地先生からも御指摘いただいた非常勤職員の研究費の応募などについても,さらに推進していく必要があると考えております。
 16ページ,その他環境整備に係る方策でございますけれども,永井先生からも繰り返し御指摘いただいている研究者として自由な発想がより活発になされるよう,組織の垣根を越えた人材の流動性,これは人材のほうも流動も重要ですし,組織としてそれを受け入れる体制ということも重要だと考えております。そのようなものをちゃんと確保するというところが,重要な点に留意する必要があると考えております。
 そういったことを,教育研究のことをまとめて「おわりに」というところで,様々なまとめをしております。2つ目のポツ,我が国の大学医学部・大学病院の教員は,諸外国と比べても非常に多忙な状況にあるということを改めて認識しなければならない。3つ目で,特に日本の大学病院は医学の教育・研究に必要な附属施設として大学設置基準に規定されているけれども,教育・研究に資する診療にとどまらず,実態上は高度で専門的な診療も担っているということは皆様御承知のとおりであります。大学病院は,そのほぼ全てが医療法に基づく特定機能病院として厚生労働大臣の承認も得ておりまして,大学病院は教育,研究及び診療のいずれについても中核的機関として明確に位置づけられております。
 しかし,最後のポツでございますけれども,我が国は将来にわたって世界でも有数の医療水準を維持していくために,厚生労働省,文科省,垣根を越えて,最後の3行ですけれども,国においても,こうした各大学・大学院の取組を我が国全体の医学教育及び研究の水準向上を期すべく,強力に後押ししていく必要があるという国の責務を書いて終わっております。
 御説明は以上になります。長くなって恐縮でございました。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明に御質問,御意見をいただきたいと思います。どの点からでも結構でございます。1時間,時間がございますので,御自由にお願いします。
 では,今村委員,続いて田中委員,お願いします。
【今村(知)委員】  今村です。ありがとうございました。医師偏在の対策について加筆いただきました。ありがとうございます。この件について,もう少し加筆をお願いできないかという意見です。医師偏在対策で,今,一番有効なのは修学資金貸与制度だと思うんですね。緊急医師確保枠などの名前で実際には運用されていると思いますけれども,そこで貸与されている以上,各診療科に必ず行くという縛りがあるのだと思います。今回,地域枠という漠とした括りで書いてもらっていますけれども,実際には,この修学資金貸与制度そのものをうまく運用するということが,一番実効性があると思うので,それを加筆してもらいたいと考えます。
 ただ,この貸与制度,実際には地域医療介護総合確保基金というものから出されていることが多くて,国や県の規定の中でなかなかすぐに変えられないという問題があります。例えば今,脳外が足りなくなってきたから,脳外をここに加えようとしても,そこに加えていくには様々なステップが必要になってきます。こういったことを柔軟に運用できるようにしていただくということが必要だと思うので,この地域枠の部分にぜひこの修学資金貸与制度などの柔軟な運用も調整していくべきだということも加筆するべきだと考えています。
 それともう一つ,この医師偏在の続きの議論として,今,かかりつけ医の議論も進んでおります。最終的に,そのかかりつけ医の議論の中では,かかりつけ医教育を充実しないと,かかりつけ医そのものが定着していかないという議論があると思います。この医師偏在解消そのものではないかもしれないですけれども,その議論の先にあるかかりつけ医教育の充実ということも,もう少し加筆してもらえないかと考えています。
 今村から,以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,事務局,御意見ありますか。
【堀岡企画官】  すみません,今村先生,ちょっと聞き取りづらかったのか,私が趣旨を理解できていないのか分からないですが,前半の柔軟な基金の運用というのは,どの辺りが使いにくいとなっているのか,もう一度御説明いただけますか。申し訳ありません。
【今村(知)委員】  修学資金の貸与制度ですよね,基本的には。だから,修学資金貸与制度を,診療科を増やすことができるようにしたりということの運用なんです。その財源が基金から出ていたりすると,その基金の運用規程や県が決めた運用規程を変えていくというステップが非常に大きな差し障りになるんです。だから,そこの部分の調整が必要だということと,そこを努力しない限り変わらないということも指摘するべきではないかと思います。
【林課長】  厚労省医事課長,林でございますけれども,私も奈良県に出向したことがありますので,どういう仕組みになっているかということは理解しているつもりなのですけれども,例えば地域枠の中で診療科選定のような枠を設けようとすると,もともと条例において,そういう規程があるかないかによって,何か制度の作りをしやすいかどうか,影響してしまう場合もありますし,奈良県の場合は創設時から診療科選定のルールがありましたので,これを変えていくときには議会を通さず,通知レベルでどの診療科を入れる,入れないみたいなことは変えることができましたので,そういった県にそれぞれの事情があるのだと思います。
 基金のほうの運用については,特段,その診療科選定をするか,しないかによって,国の基金のルールとして使い方に何か制約が生じているような形にはなっていないと承知をしておりますけれども,やはり都道府県の中で,その予算措置を行うに当たって,基金の財源には限りがあったり,あるいは単独で奨学金を出していただいていたり,いろいろなパターンがあると思いますので,その辺りにはきちんと留意をしながら,都道府県がやりやすいような情報発信が必要なのだということは,私もそのとおりかなと思います。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
【今村(知)委員】  ぜひ難しい面があるので,そこを強調していただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  田中委員,お願いします。
【田中(雄)委員】  2点あります。一つは,私,もっと前に指摘させていただけばよかったのですけれども,ここには書かれていない論点で,6年間で卒業しない医学生が10人に1人ぐらいはいるということなんですね。その人たちは,結局,7年,8年たって卒業するから大勢に影響はないとも言えるんですけれども,それは,要するに2年間余分にかかっているとか,1年間余分にかかっているということはやっぱり,社会から見れば損失ですし,個人から見ても損失だと思うんですね。
 これはいろいろな理由があるので,医学教育だけで解消するとはなかなか言えないのですけれども,私が拝見したところ,琉球大学とかほとんどみんな6年生で卒業していらっしゃったりするし,6年間で卒業する大学の事例をちょっと調べてみると,スチューデントアシスタントとかをすごく効果的に活用したりして,あまり教員の負担を増やさないで目的を達している大学も幾つかあるように思うので,何かどこかにそういう仕組みで研究医でもないし,結局,6年間で卒業することができれば,地域にだって出ていく時間が早くなるわけだし,いろいろな意味でプラスになるので,どこかそれを書き込んでいただいたらいいのではないかなと思います。
 それからもう一つは,最後のところに出てくる病院の在り方なのですけれども,大学病院は,今,教育と研究に加えて診療で果たす社会的使命も非常に大きくなっているので,経営上も岐路に立たされているという認識はあるとここに書いてあるのですけれども,じゃあ,どうするのかというと,あんまりそれは書いていないんですけれども,これは文部科学省と厚生労働省と,それに加えて自治体が一緒になってこの問題に取り組んでいく必要があるだろうという認識をどこかに書き込んでいただくとありがたいと思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  お答えしてもよろしいでしょうか。
【永井座長】  はい。
【堀岡企画官】  田中先生,ありがとうございます。事前に御指摘いただいたので,幾つかの例,調べますと,確かに先生の,学生が学生を教えるようなスチューデントアシスタントのこと,岡山大学や順天堂大学などで実際に規程を置いて非常勤として雇用しているような例を見つけましたので,そういった例が,よい例を示しているというようなことをどこかに記載させていただければと思います。また,後段の文科,厚労省,自治体,協力するということ,私どもも恐らく厚生労働省も茨城県さんも異存ないと思いますので,どこかに記載させていただければというように思います。ありがとうございます。
【永井座長】   今の点は,言いたいことがたくさんあります。最後の「おわりに」で,大学設置基準では大学病院というのは医学部学生の教育,研究のための病院である。そこに診療というのは書いてありません。「おわりに」の下から2番目の丸,最後のページですけれども,その代わりに特定機能病院として厚労省の承認を得ているとあります。ですから,大学病院は教育,研究,診療のいずれについても中核的機関として明確に位置づけられておりと書いてあるのですが,ここに問題があります。しかし特定機能病院は,大学病院を厚労省の管轄に置くために1993年に決められました。ですから,特定機能病院というのは管理が主体であって,大学病院の経済的支援は大きくないようにおもいます。これはまさに診療報酬の問題にもなるのですが。
 一方で,大学設置基準には,診療のことが書いてなく,人事も病院長は医学部長や学長の管轄下にあります。組織上,独立していないということが,そもそも特定機能病院としての大学病院の運営に問題があります。その意味で大学病院が明確に位置づけられているとは言えないと思います。したがって大学病院のスタッフからすれば,高度医療を好き好んで行っているという位置づけになります。だから,現場が苦労するのです。
 なによりも人件費が十分ではない。しかも,大学病院は特定機能病院以上に求められる高度な医療を目指しています。そのための診療経費は,研究費や診療報酬からは出てこない。低い給与の教育研究要員を動員して診療しなければならないから、若手が苦労するのです。また研究力も低下します。したがって最後のところは「明確に位置づけられており」というのは,「一応,位置づけられているけれども,検討すべき課題は多い」とする方がよいと思います。
【堀岡企画官】  分かりました。
【永井座長】  山口委員,どうぞ。
【山口委員】  ありがとうございます。9ページのところに診療科偏在解消に資する方策の3つ目と4つ目のところに,「早期から専門的な知識・技能等の習得を目指した教育」のプログラムについて書かれていて,さらにその次のところ,養成しようとする医師像と教育プログラムの中に,そうは言っても柔軟性が必要だということが書かれているんですけれども,それと併せて資料2をこのスライドで御説明いただきました。これらのことについては,ある程度早い段階から,自分はこういう科に行きたいんだという学生についてのプログラムのことが書かれていて,それはそれでとてもいいことだと思うのですけれども,早期から,私はこの科に行くのだということを選べている人というのは,どちらかというと少ないのではないかなと思います。
 そういうことからすると,例えば診療参加型臨床実習のところで,自分の関心がある科に重点的に行くようにするとすれば,この1年時から4年時までの早い段階,いろいろな現場を実際に見て,当初,関心を持っていなかったけれども,そういった現場を見ることによって,あ,これはとても魅力的だなというふうに感じる学生さんが早い段階から現場実習に入っているような大学の話を聞くと,そういった関心が高まってくるように聞いていますので,何かそういった早い段階に自分の関心ということをしっかりと感じ取れるような,そういうプログラムがあってもいいのではないかと思いました。大勢の学生は,そのような傾向にあるのではないかと思いますので,そんなことも少し書いていただくといいのかなと感じました。
 以上です。
【永井座長】  どうぞ。
【炭山委員】  炭山でございます。先ほど大学病院のことが永井先生からも話がございました。診療,教育,研究,これが大きな柱でありますけれども,もう一つは,これ,別に我々のデューティーではないのですが,やはり各地域の医療機関に対して医師の派遣能力というのはやはり国公私立を問わず,大学病院が持っている大きな機能なんですね。これは厚生労働省も大変御心配しているように,万が一,大学病院に医者がいなくなった場合,これは当然のことながら,地域に派遣している医師をもう1回,大学へ集め直さなければいけないという,こういう事態が生じた場合,これは地域医療崩壊が起こります。
 特にこの救急領域というのは,第二次救急医療になっているというのは,ほとんどの場合,日当直を含めて大学病院から派遣されている医師が担っているわけですから,こういうことに関しても,昨夜,私は私立医科大学の懇親会があったのですが,そのときにも武見厚労大臣も,はっきりとおっしゃっていました。大学病院で働けている医師に対してどうあるべきかということを考えていたから,これは医療,教育,研究だけでなくて,そういう派遣能力そのものが削がれるということになります。
 前回のこの会で私が申し上げましたが,私立医科大学86病院のアンケートを取ったんですね。そのときの結果では,これからの,働き方改革,4月1日の前のアンケートの結果では,現在,地域に派遣している医師に対してどう考えているかというと,3分の1しか現状のまま動かさない。残りは考え中である。日当直,許可を取っているかどうかということとかも含めて,3分の2は考え中である。要するに派遣能力が落ちるという可能性。それから,現在の医局員数の減少はどうだといったら,96%が既に落ちている。このことは,医療も,教育も,研究も,あるいは医師派遣能力に関しても,大学の医師処遇改善がなければ物すごい恐ろしい結果になるということをぜひ申し上げておきたいと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。
 今の点もやっぱり大学設置基準に地域派遣とか,地域医療を支えるということは書いていないんですね。そこは最低限明記すべきだと思います。予算をどうするかは別として,それがないままに特定機能病院の整理の下で行うというのは,私は難しいと思いますね。
 いかがでしょうか。今村委員,続いて銘苅委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  今村です。よろしいでしょうか。
【永井座長】  はい。
【今村(知)委員】  先ほど永井先生の御指摘いただいた特定機能病院について,先ほど,私,意見を言うかどうか悩んでいて言わなかったんですけれども,申し上げます。特定機能病院は,今,大学病院以外の病院がかなり入ってきていて,だんだんその大学病院の経理としては曖昧になってきていると思います。どちらかというと診療の内容に特化していっているので,このままいくと大学病院そのものが特定機能病院の規定から外れていく可能性もあって,大学病院という特徴をつかんだ規定からだんだん外れていっているように見えます。特定機能病院の定義を見直すのか,大学病院という概念をもっと明確にするのかというふうな対策が必要だと思いますし,永井先生がおっしゃるように,ここで明確になっているとは,私も言えないと思いますので,その体系には賛成です。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。琉球大学の銘苅です。まず,資料の8ページなのですけれども,下から2つ目のポツですけれども,地域枠の趣旨などは十分に踏まえつつもというところの文章です。「地域枠の卒業者の医師としてのキャリア構築に係る一定の配慮が適切になされ」と書いてあるのですけれども,やはり地域枠の子たちは,都道府県からすると,もうやはり地域枠としてたくさんの奨学金をお渡ししているので,どうしても離島とか,地域に行っていただきたい。長い年月ですね。そういう意図があるので,こちらに書いてあるようにやはり大学院とか,留学とかということ,キャリアの,ちゃんと配慮してくださいというところに都道府県も十分に配慮するというような,しっかりとそういった文言を入れていただいたほうが現実的ではないかなと思いました。
 どうしても都道府県はお金をお渡ししている分,強く発言権がありますので,そうなってくると,やはりその医師個人のキャリアということに関する配慮よりも,地域への貢献ということがどうしても都道府県としては重要視されてしまうというところがあるので,長い目で見れば,そういった地域枠の子たちが大学院等でキャリアを積むということも非常に重要なことと思いますので,そこは「都道府県と一緒になって」というような文言を加えていただけると非常に実効性があるのではないかと考えました。
 続きまして13ページです。大学院博士課程の魅力向上についてというところなのですけれども,そちらの議論のうちの3つ目です。3つ目の丸,医学博士の学位を取得していることは,研究者としての科学思考や合理的思考,問題解決能力を有しといった,成果物をまとめ上げて世に問い,医学の発展にアカデミックな見地から貢献し得ることの証明として機能している。これはもう全くそのとおりで,皆さんが当然理解していることです。それを持っているがゆえに,どんなふうな,持っている,それを持つことによってインセンティブがあるのかというところを我々は作らないといけないということをずっと議論しているかと思います。
 ですので,これを持つことで,その医師のキャリアパスになる。それを持つことで待遇が改善されるというようなことまでしっかりと記載するというか,方向性を見つけなければ,こちらに書いてあることは今既に行われていること,理解していること,でも,だから何なのということで若い人たちが,そこを目指さないということがあるので,それがしっかりとキャリアとして成り立つ,キャリアパスとして成り立つということを記載していただかないといけないのかなと考えます。具体的には,じゃあ,どうなのということを考えますと,私も何度か,例えば関連病院であったりとか,そういったところの部長職になるには,そういったしっかりと博士号を持っていることにするとかということも提案させていただいたのですけれども,やはり文科省としては,そういったところは難しいのかなと,記載するには。
 というふうに考えると,やはり大学での教官の地位をそもそも上げる。先ほどから言っているように大学教官の報酬が上がる。医師の研究もして,教育もして,医師もやっている,地域派遣も行っているというような大学で働く医師の待遇を改善するといったことが,博士号になるにはやはり,助教以上になるには,そういった博士課程を持っていなければならないことがほとんどかと思いますので,大学病院の医師自体の待遇を改善する。もうこれはこの委員会で既に議論になっていることでありますけれども,それこそがキャリアパスになるというような記載の仕方,方向性を見せるということも可能性としては一番あるのかなと考えました。
 最後になりますけれども,17ページ,先ほどから議論になっております。永井先生の御提案もまさしくそのとおりだと思いますけれども,こちらに書いてあるような教育,研究,診療で働く医師が一番どこよりも悪い待遇で働いているということをしっかりと認識し,そこの改善を行うということは,これまで何度も議論されていることと思うので,そこにやはり大学医師の処遇改善を求めるというような方向性を検討する,難しいことであっても検討するというような記載であったりとか,そもそも大学病院で働く医療を行っている医師の処遇の新たな創設,今までは教官なのでとかというような,ほかの大学の教官と同じような位置づけという形で納得させられているところはありますけれども,そもそもやはり医師として働いていることがゆえにすごくすばらしい研究,臨床研究も成り立っているということ,成り立つということもあることを考えれば,やはり教官ではなく医師として,教育者として,研究者として働いている,この価値をしっかりと評価するような新たな処遇の創設といったようなことも議論していただけると非常にありがたいかなと思います。
 私からは以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。炭山委員,どうぞ。
【炭山委員】 今の大学病院に対する御支援の話,ありがとうございました。実は,このアンケートを取った根幹は,もともと文科省,厚労省が,補正予算が140億,そのほかにも実際の予算としても多額の予算を財務省から引き出してくれた。そういう予算折衝に対しては,文科省が求めている教育や,あるいは研究に対して,我々はやはり応えるべきだろうと。それが今回,アンケートを取った根幹にあります。
 厚労省も同じように,きちっと予算の中の骨太の中に方針として入れていただいているということを考えたら,私どもは単に処遇改善だけをお願いするのではなくて,その予算折衝していただいた両省庁に対して,我々が働く中で教育,研究に対して力を注がないということがあってはならないということがアンケートを取る大きな目的であったということをつけ加えさせていただきます。
大きな目的であったということを少しつけ加えさせていただきます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
【田中(雄)委員】  今,発言されたのはどなたですか。何かオンラインでは分からないんですけれども。
【堀岡企画官】  今,発言していただいたのは炭山先生です。
【炭山委員】  私立医科大学会長の東邦大学 炭山でございます。
【田中(雄)委員】  ありがとうございます。何かお名前とか,お顔が出るとかいう仕組みはないでしょうか。ありがとうございます。
【永井座長】  ほかにいかがでしょうか。
【田中(純)委員】  これ,このままで話ができるんですか。
【永井座長】  はい。田中委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  全体的に見せていただきまして,まず4ページの臨床実習指導医の称号ということなんですけれども,こちら,ぜひ進めていただきたいと思っています。臨床実習の指導をするのはかなりの負担で,各診療科で次は誰が担当かというので,履歴書,自分が昇任するときの履歴書には書ける状況にはなっていますけれども,明確に臨床実習指導医という称号をつけるべきだということを推進していただくことが,さらに責任を持って臨床実習をやるということにつながるかと思いますので,これはぜひ進めていただきたいと思います。
 6ページのプラットフォームの整備ですけれども,これもずっと長い間,懸案というか,話題にはなってきたことかと思いますけれども,ぜひこれもプラットフォーム,全国的な統一感を持って国が主導していかないとなかなか進められない案件だと思いますので,もちろん,これを使って楽をして教育の質を,招くようなことになってはならないというのはもちろん当然なんですけれども,各大学の医学部がどのように使うかというのを,アイディアを出すと,やはり医師のほうの働き方改革にも貢献するように教育時間の削減に効果的につながる貴重なツールになると思いますので,ぜひこちらも進めていただければと思います。
 それから,12ページの研究医のところですけれども,研究医の枠組みはいろいろな大学で取組があると思うのですけれども,私,広島大学のほうでは入学枠で,別途で研究医を採っているということから,同時に入った入学生,同級生でも,自分は研究医で入ったので,卒業までに9年から10年かかるのを分かった上で入学を申し込んで,それで入っているわけですので,非常にモチベーションが高いということで,入学した後でもこのSAの候補者にもなっておりまして,同級,同学年の中でも研究に関しては,プレゼンは,この研究医枠の人たちに聞けばいいというような風潮も生まれています。
 非常に研究に対してのモチベーションの高い集団が5人なり10人なりいるということは,全体としての研究に対するモチベーションを上げる波及効果が大きいわけですから,ぜひこの研究医の制度は進めるのがいいと思いますし,入ってからまた研究医になりたいというモチベーションの高い学生を呼び込むことにもなりますので,やはり明確なキャリアパス,学年進行の状況を分かった上で入学する子というのは大事にしていくべきだと思います。
 それから,14ページの大学院の魅力の1つとして,魅力がないことの1つとして修業年数が4年に限ったものではないので,何年かかるか分からないのでなかなか入りにくいというデメリットがあるということで,thesisはどうかという御提案なのですけれども,このthesisによる学位審査,東京大学で行われていますけれども,この審査にはかなりの労力と能力と時間がかかると思うんですね。例えばAsia論文のジャーナルに,Asia journalに通れば,それを要件にするということであれば,ある程度査読というか,一定の審査が入った上での学位論文ということになりますけれども,thesisということになると,その質の担保から,研究デザインのところから全部,その教員のほうに負担がかかってくるということを考えると,これができる大学はやはり限られてくるのかなと思います。
 根本的に戻ると,4年間で取れるかどうか分からないことが大学院入学の魅力を削いでいるということを考えると,例えばこの診療科では平均5年かかるのだとか,6年かかるのだとか,期限を事前に例示した上で大学院のこの進行,その中には社会人大学院ですか,診療,ほかの病院で勤めながら大学院に入るということになると,やはりフルの大学院よりも時間が限られるので,4年ではなかなか難しいかもしれないよということを事前に例示するというのが,ここの項目の本質的なものなのではないのかと思うので,thesisによる学位審査もいいのですけれども,質の低下とか,教員のほうの負担を考えると,本質的には大学博士課程の修業年数,こういう背景を持っている人については,何年ぐらいはかかりますよということを事前に例示するということを中に入れてもらえればいいのではないかなと思いました。
 広島大学の田中です。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかに御発言,いかがでしょうか。
【諸岡委員】  ありがとうございます。熊本大学の諸岡と申します。私も医学教育に関するコンテンツの共有化,これをぜひ進めていただければと思います。先ほど田中先生からもおっしゃったように,もちろん,これ,オンデマンド,オンラインの教材だけで教育するというのはなかなか難しくて,例えばコロナ禍でもオンライン講義が多々ありましたけれども,受講する側の熱意によってかなり,その効果にばらつきがあるというのが目に見えてありましたので,例えばこのコンテンツをベースに各大学でどういう教育カリキュラムを作るかというところにもっと違うところに力を注力するとか,あるいはそれによってできた時間で研究に集中するということもできるかと思いますので,ぜひこれを進めていただきたいということ。
 あと,こういったコンテンツの共有化というのは,別に医学教育に限らず,私,工学出身なんですけれども,例えば工学部のほうでも適用できると思うんですね。今だと,例えば,私,熊本大学工学部の情報電気工学科というところにいるのですけれども,そこではまず情報電気工学科という形で1年生が入学して,2年生になったら,それぞれの専門に分かれていくという形になりますので,1年生の間は共通の科目を受けるということがありますので,そういった点では,こういうコンテンツの共有化というところでベースを例えばオンラインでやって,その後,演習とか,そういう実際のところを対面でやるとか,そういったことで教育効果がもっと高まるのではないかなという感想を持ちましたので,ぜひこれを他学部,なかなかほかのところでは難しいかもしれませんけれども,共有化できるところはあるかと思いますので,ぜひそういったところに波及してもらえればと思って,そういった意見を述べさせていただきました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。今村委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  何度もすみません。この議論の本質的な部分ではないのですが,現実,今,処遇改善の関係で銘苅委員からも御指摘いただいた内容で,様々な予算がついているわけですけれども,そこの問題点を指摘させてもらいたいと思います。
 今,診療報酬でベースアップ評価料というのがつきまして,4.5%ほど給料を上げてくれるという予算です。これは診療に関わっている方が上がるのであって,教育や研究に携わっている方は上がらないという問題が,今,大学病院や大学で非常に大きな問題になっていると思います。それは例えば病院で働いている事務方は,病院管理課の人は4.5%上げられるんですけれども,教育支援課とか,研究推進課は上げることができないということで,人事院勧告で上がるのが大体1%ですので,それに対して今回,診療報酬でついた部分は非常に大きくて,そこで全部を引き上げるのか,診療に携わる方だけが上がるのかということが,今,大学に選択を迫られています。
 それも12月までに決めないとなかなか診療報酬がもらえないというような状況の中で,今それぞれが非常に苦労して判断している。予算のつき方としては,診療にそれなりについたんですけれども,教育,研究については,医学部について予算的にはベースアップされないという状況になっています。本来,入院基本料で賄うべきということなのですが,ベースアップ評価料,最初の2年に関しては少なくとも4.5%,大学病院などでも医師や,40歳以下の医師と事務方に対してもつくようになったということで,これ,臨床系のベースアップの話と教育,研究系の,医学系のベースアップの話がちょっと乖離してきているので,その問題点があるということは,ぜひ情報共有させてもらえればと思います。
 今村から以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 岡部委員,どうぞ。
【岡部委員】  改めてこの文章をもう1回読み直させていただいて,医学研究に関する部分で,1つ少し感じたのは11ページなのですけれども,その最初の出だしとして現状分析で,現在の状況があまりよい状況にはないということを書かれていて,この部分,量的指標で書かれるというのは分かりやすいという面は確かにあって,これだけでもいいのかなとも思ったのですけれども,一方で,最近,野依良治先生が日経に現在の研究評価指標に対する問題点といったようなことを書かれていて,その量的指標の問題点というのは,かなり皆さん認識されているところだと思います。
 あと,研究評価に関するサンフランシスコ宣言ですか,DORAというものが出されていて,東京大学もそれを承認したのですけれども,インパクトファクターといったようなものに頼った定量的な研究者の評価というのが,かなり悪影響を与えているというところはありますので,ここら辺の書きぶり,もう少し定量的指標だけではない評価といったことも含めて現状分析をされたほうが本当はいいのかなと思っています。
 あともう1点は,大学院教育に関する議論は大分されてきて,中身も深まったと思います。大学院の教育で入口があって,実際のカリキュラム,教育の内容があって,出口があるということがあって,その3点,全て重要だということだと思うんですね。あと,出口の後というところが,先ほどの御意見にもあったように不明確で,そこが不明確なので大学院をなぜ出なければいけないという話になるのだと思います。
 私がアメリカの研究者を見ていて,その中にPhD-MDコースを卒業された方もかなりいて,そういう方がどうなっているのかなというのを追跡しているんですけれども,本当に優秀な方は,大学院を出てすぐPIになるんですね。ポスドクを経ずに自分の研究室を持つという方が,それなりにいます。日本の場合,多分,そういったパスというのはほとんどないのだろうと思います。大学院でどれだけ頑張れば,次に自分のキャリアがどう開けるのかというところ,そこをそれぞれの若手研究者の立場や能力に応じて,いろいろな可能性があるということを示せれば,かなり大学院の教育,それから,学位を取るということの意味が明確化されるので,そういったところを今後検討できればいいのかなと思っています。
 これ,医学部に限らず,研究者全体として,そのミッドキャリアサイエンティストをどうサポートするかという話にもなりますし,そういったミッドキャリアサイエンティストが,いわゆる科学研究費補助金の中でどうやって育っていけているのかというのは,かなり広い話になってしまうのですけれども,特に医学部の場合には,その対象となる大学院生というのは比較的質がそろっていて,その後のキャリアも比較的明確ですので,そういったところにターゲットを絞って研究費全体の制度を考えていくといったこともやっていただければありがたいなと思います。全般的な話になってしまって申し訳ないですけれども,そういったところも少し今回の文章の中に加えていただければありがたいです。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかに御発言。
【横手委員】  よろしいでしょうか。
【永井座長】  はい。横手委員,どうぞ。
【横手委員】   全国医学部長病院長会議の横手でございます。今の様々なお話を伺っていて,なるほどと思ったことがございまして,2点,発言させていただきます。
 まず1つは,今,文部科学省でも博士人材活躍プランというのを推進されていると思います。その部分は,これまで医師以外のイメージが私としては強かったように思うのですけれども,今日の議論を聞いていて,医師についても全くそのとおりだなと思いました。診療で主に評価されている部分の1と博士取得,そして研究で評価されている部分の1を足したときに,1+1が1になってしまっているのではモチベーションが湧かない。1+1が2として評価されるような評価及びある部分の処遇というものが改善されていかないと,博士を取得して研究をしていこうというモチベーションにはつながらないのだろうと思いました。その部分,文章の中でどのように反映させるかはなかなか難しいところですが,今後引き続き検討していく課題のように思いました。
 もう一つは,先ほど来,永井先生や炭山先生がおっしゃっていた地域医療等のところです。この17ページの「おわりに」の部分の文章というのはとても重要と思いますので,17ページの一番上の行,歴史的に実態上は高度で専門的な診療も担ってきたというところ,やはり、実態上は高度で専門的な診療や地域に対する医師派遣などを担ってきたというように,地域への医師の派遣,地域支援という内容も加えるべきではないかと思いました。
 また,ここの部分,確かに永井先生がおっしゃるように,特定機能病院,あるいは明確に位置づけられているとは言いがたいと思いますので,ここに課題がある,残っているということは,付け加えるべきだろうと思います。
 そして,最後のところに,最後の3行,国においてもこうした各大学,大学病院の取組をというところに,もし可能であれば,例えば持続可能とし,そして,その上でこの我が国の医学教育や研究の推進,向上を期すべく強力に後押ししていくというふうに表現していただくと,より広く今後の取組を支援する姿勢を示すことになるかと思い,一言コメントさせていただきます。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。田中委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  田中です。今の岡部先生の話を聞いて,私がちょっと言いよどんだところ,研究医のところを言ってくださったと思うのですけれども,研究医のところ,先ほど,私,申し上げたように進めていただきたいと言った先には,研究医として6年間,それから,マスター,学位,医学部のときに9年間やって,そのときにPAとか,SAとかで雇用するというのは今もやっていることですけれども,その先やはり本人が希望すればという条件つきですけれども,教員としての助教なり,そういう枠,キャリアパスも含めた上での研究医養成の拡大というのを国が推進しているというような書きぶりもあってもいいのではないかなと思うわけです。
 最初から診療科を決めて入学というのはなかなか難しい,不公平感が出るというので難しいということになりますけれども,分野を問わないで研究をやりたいという高校生までの学生はいるのではないかと思うわけですね。それで,そういうモチベーションで入ってくる研究医学の医学生については,医師としての国家試験を取り,それから,研究,MD,Ph.D.としての研究を,キャリアパスを確保する用意があるぐらいまでの書き方だったらいいのではないかなと私のほうは思いますので,以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。大体,御意見は出尽くしたようでございますので,少し早い時間でありますが,意見交換を終了したいと思います。本日は活発な御議論,ありがとうございました。いただいた御意見を踏まえて,第二次中間取りまとめ案につきましては,今日の御意見を踏まえた上でございますが,必要な修正を加え,本検討会における中間取りまとめとさせていただきたいと思います。具体的な修正につきまして,座長一任とさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永井座長】  ありがとうございます。
【堀岡企画官】  永井先生,申し訳ございません。宮地先生から,検討会,今回,欠席ですので,意見を紹介してほしいというのがありまして,1つ,議事録に残す意味でも,今,読み上げてもよろしいでしょうか。申し訳ありません。
【永井座長】  はい。お願いいたします。
【堀岡企画官】  宮地先生から,医学教育を担当する教員の適切な評価についてというところで,5ページのClinician Educatorというような,特に医学教育に従事するトラックの教員に対する教員強化の記載に分量が割かれており,その内容については,異論はない。そのような特別な枠ではない大学病院の臨床教員が日常的にもらっている教育業績についても記載が必要。その観点から,共用試験OSCEやPost-CC OSCEの評価者や課題責任者の業務というものが非常に重要だということを再度お願いしたいと思います。
 具体的な表現といたしまして,また,教員業績の評価として共用試験OSCEや臨床実習OSCEの評価者業務や課題責任者業務などを教育業績に含める取組や臨床実習等において連携している関連病院等の大学病院以外の医療機関の医師に臨床教授等の称号を付与して,指導体制の充実を図る取組の推進も考えられるというような記載案を御提案いただいております。このようなことも踏まえて座長に御相談をさせていただければというように思います。申し訳ありません,最後に。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,最後に,この検討会は今回で一区切りということでございますので,私から総評を述べさせていただきたいと思います。この検討会で日本の医学教育,研究,診療の在り方を幅広く検討することができ,非常によい機会だったと思います。ただ,日本の医学教育,あるいは大学病院の在り方の問題というのは,明治の最初以来の問題でして,日本の近代化や学術行政の大きな問題でもあります。戦前,戦後,大学紛争,国立大学法人化,いろいろな動乱の中で現在のシステムがつくられてきましたが,いろいろな面で制度疲労が起こっていると思います。まずは足元の不合理な問題,待遇の問題とか,働き方の問題などにきちんと対応しつつ,医学部と大学病院の関係について、法的な位置づけを含めて,日本の風土に合ったシステムになるよう抜本的な見直しを検討すべきと思います。
 何よりも大学は自由な場であるべきですし,職業人としての医師がどこでもきちんとした教育,卒後トレーニングを積み研究もできるように、大学はまずオープンで,流動性のある組織運営をしていく必要があります。また,若手もじっとしていると,どうしても発展できないことが多いので,若手はトレーニングを積み,自立して研究できるように旅に出る。武者修行する勇気,また,大学のほうも,そうした人材をきちんと迎えられるような組織運営になるように努めることが大事だと思います。その全体のシステムを行政はしっかり確保できるように指導していただければと思います。
 この問題全体を通じて私が感じますのは,臨床医学というものは,実践の学術であるということです。これは書斎の知や実験室の知とは異なります。経験に基づく実践をしつつ,作っていく知です。この認識が日本の近代教育や学術の中で弱かった、その問題が今出ているように思います。この実践の知は,単なる科学を超えた智慮とか,思慮とか,そういう言葉で語られますけれども,この価値観をしっかり根づかせることが今回の検討会を通じてさらに生かしていただければと思います。以上でございます。
 それでは,最後に事務局から一言お願いいたします。
【池田局長】  高等教育局長の池田でございます。ちょうどこの委員会,検討会,昨年5月から始まりまして1年余りにわたって精力的に御審議をいただいてまいりました。これまで10回にわたって大学病院や医学教育,医学研究,地域医療といったそれぞれの課題を大所高所から議論を深めていただいて,大変ありがたく思っております。
 昨年9月に中間取りまとめをまとめていただきまして,検討委員の先生方の御支援もありまして,厚生労働省とも連携しながら,大学病院改革に向けた支援として,おかげさまで令和5年度の補正予算と,それから,今年度,6年度の当初予算で一定の予算を確保することができました。本年度,今日,座長一任としていただきました第二次の中間まとめ,この内容も踏まえて,さらなる医学教育に関する政策や,それから,まだ来年度以降もしっかりと予算措置をしていく必要がありますので,夏の概算要求に向けて頑張ってまいりたいと思います。
 それから,今,永井座長からも医学教育のみならず,広範な問題意識をおっしゃっていただきましたが,私どもとしても,今,大学全体をどうあるべきかというのを別途,中央教育審議会でも議論しておりますし,それから,国立大学はちょうど法人化して20年がたちまして,いろいろな課題も見えてきておりますので,医学教育や大学病院の在り方と,それから,大学政策全般と連携させて,さらに議論をしてまいりたいと思っております。
 検討会の今後でございますけれども,座長の永井先生とも御相談していきたいと考えておりますが,委員の皆様方には,いろいろな形で引き続き御支援,御意見をお聞きしたり,御支援をお願いしたりすることもあると思いますので,引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日の会議は,これで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

 

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