学校教育活動等における熱中症事故の防止について(依頼)(令和6年4月30日 6教参学第5号)

児童生徒等の熱中症事故を防ぐためには、それほど気温の高くない時期から適切な措置を講ずること、暑さ指数に基づいて活動実施を判断すること、児童生徒等へ事故防止に関して指導すること等が重要であり、こうした点も含め各学校や学校設置者等において御留意いただきたい点を周知します。
 

6教参学第5号
令和6年4月30日


各都道府県・指定都市教育委員会学校安全主管課
各都道府県私立学校主管課
附属学校を置く各国立大学法人担当課
構造改革特別区域法第12条第1項の認定を
受けた各地方公共団体の学校設置会社担当課
各文部科学大臣所轄学校法人担当課        御中
各国公私立高等専門学校担当課
各都道府県教育委員会専修学校主管課
専修学校を置く各国立大学法人担当課
厚生労働省医政局医療経営支援課
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長
安里 賀奈子
文部宇科学省初等中等居育局教育課程課長
武藤 久慶
スポーツ庁政策課長
先﨑 卓歩
スポーツ庁地域スポーツ課長
橋田 裕
 

 

学校教育活動等における熱中症事故の防止について(依頼)



日頃より学校教育活動等における事故防止に御尽力いただき御礼申し上げます。
さて、令和5年度の夏の気温は、気象庁による1946年の統計開始以降、北日本・東日本・西日本で歴代1位(西日本は1位タイ)(参考1)となり、日本国内での熱中症による救急搬送人員数(全年齢)は91,467人(参考2)となりました。また、こうした状況において、学校の管理下や登下校中における熱中症は3,240件(参考3)が確認されています。
今年の夏は全国的に気温が高い(参考4)と予想されており、児童生徒等の健康被害を防ぐため、教職員や部活動の指導者等で共通認識を図りながら、それほど気温の高くない(25~30℃)時期から適切な措置を講ずることや、活動の場所や種類にかかわらず暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)に基づいて活動実施を判断すること、熱中症事故防止に関して児童生徒等へ適切に指導を行うこと等が必要です。
こうした点を含め、各学校や学校設置者等において御留意いただきたい点を周知しますので、熱中症事故の防止について引き続き適切に対応いただきますようお願いします。
また、本通知には「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(令和6年4月追補版)」を添付していますが、この中には各学校における熱中症事故対策のポイントを整理・確認することに役立つチェックリスト(別添3)を収録していますので、効果的に活用いただきますよう重ねてお願いします。
なお、熱中症事故の防止について、学校等において理解を深めるための研修会等を実施する際、医学的な見地について、学校の設置者から各地の医師会に対して協力依頼があった場合には積極的に対応いただけるよう、文部科学省から公益社団法人日本医師会へ依頼していることを申し添えます。

各都道府県・指定都市教育委員会におかれては、所管の学校(専修学校を含む。以下同じ。)及び域内の市区町村教育委員会に対し、各都道府県私立学校主管課におかれては、所轄の学校法人及び学校に対し、各国立大学法人担当課におかれては、所管の附属学校に対し、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては、所轄の学校設置会社及び学校に対し、各文部科学大臣所轄学校法人担当課におかれては、設置する学校に対して、厚生労働省の専修学校主管課におかれては、所管の専修学校に対して、周知されるようお願いします。
なお、学校における働き方改革の観点から、別添3のチェックリストを効果的に周知・活用いただくなど、貴課において必要に応じて適切に御対応いただけますと幸いです。


1.熱中症事故を防止するための環境整備等について

・ 活動中やその前後に適切な水分・塩分補給や休憩ができる環境を整えること。
・ 熱中症の疑いのある症状が見られた場合には、速やかに体を冷却できるよう備えるとともに、ためらうことなく一次救命処置(AEDの使用を含む)や救急要請を行うことのできる体制を整備すること。
・ 学校施設の空調設備を適切に活用すること。
・ 普通教室、特別教室、体育館など場所により空調の整備状況に差がある場合には、活動する場所の空調設備の有無に合わせて活動内容を設定すること。
・ 室内環境の向上を図る上では、空調、建物の断熱・気密性能の向上、必要な換気を組み合わせることが有効であり、「環境を考慮した学校施設づくり事例集」(令和2年3月)を参考にしつつ、施設・設備の状況に応じて、夏の日差しを遮る日よけの活用、風通しを良くする等の工夫をすること。
・ 幼児等が送迎用バスに置き去りにされた際、命の危険に関わる熱中症事故のリスクが極めて高いことに十分留意し、幼児等の所在確認を徹底し、置き去り事故を防止すること。なお、送迎用バスに設置された安全装置については、あくまでヒューマンエラーの防止を補完するものであるということを十分理解し、置き去り防止について万全を期すこと。
・ 学校の管理下における熱中症事故は、多くが体育・スポーツ活動中に発生しているが、運動部活動以外の部活動や、屋内での授業中、登下校中においても発生していることにも十分留意すること。
・ 休業日明け等の体がまだ暑さや運動等に慣れていない時期は熱中症事故のリスクが高いことや、それほど高くない気温(25~30℃)でも湿度等その他の条件により熱中症事故が発生していることを踏まえ、教育課程内外を問わず熱中症事故防止のための適切な措置を講ずること。
・ 熱中症対策には、暑熱順化(暑さに徐々にならしていくこと)も有効であることから、気温が高くなり始めたら、暑さになれるまでの順化期間を設ける等、適切に取り入れること。
・ 活動の前や活動中に暑さ指数を計測する等し、熱中症事故の危険度の把握に努めること。
・ 運動会、遠足及び校外学習等の各種行事、部活動の遠征など、特に教職員等の体制が普段と異なる環境で活動する際には、事故防止の取組や緊急時の対応について、児童生徒等も含めた事前の確認及び備えをしておくこと。
・ 感染症の流行時における児童生徒等のマスクの着用に当たっても、熱中症事故の防止に留意すること。


2.各種活動実施に関する判断について

熱中症防止のためには、暑熱環境において各種活動を中止することを想定し、その判断基準と判断者及び伝達方法を、各学校における危機管理マニュアル等において予め具体的に定め、教職員間で共通認識を図ることが重要です。なお、熱中症の危険性を判断する基準としては、暑さ指数を用いることが有効です。(別添1)
暑さ指数は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で地域ごとの実況値・予測値を確認することができます。また、同サイトでは、環境省による熱中症警戒アラート(暑さ指数予測値に基づき、前日17時及び当日5時頃、熱中症による人の健康に係る被害が生ずるおそれがある場合(暑さ指数が33を超える場合)に発令)や熱中症特別警戒アラート(暑さ指数予測値に基づき、前日14時頃、熱中症による人の健康に係る重大な被害が生ずるおそれがある場合(暑さ指数が35を超える場合)に発令)の発令状況等も確認することができます。
なお、域内の暑さ指数の実況値・予測値、熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒アラートの発表の有無に係わらず、実際に活動する場所における熱中症の危険度を、暑さ指数等を活用して把握し、適切な熱中症予防を行うことが重要であるに十分留意してください。
環境省と文部科学省では、教育委員会等の学校設置者が作成する熱中症に係る学校向けのガイドラインの作成・改訂に資するよう、「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」を令和3年5月に、この手引きの追補版を令和6年4月に共同で作成しています。これらの資料の詳細は後述(5.)します。
また、スポーツ活動における熱中症事故の防止については、公益財団法人日本スポーツ協会が「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」を作成しています。
これらの資料を活用するなどし、各種活動の実施等に関して適切に判断いただくようお願いします。
なお、暑さ指数に基づいて活動中止の判断に至らない場合においても、児童生徒等の様子をよく観察し、熱中症事故の防止に万全を期していただくようお願いします。


3.児童生徒等への熱中症防止に関する指導について

熱中症を防止するためには、登下校時を含め、児童生徒等が自ら体調管理等を行うことができるよう、発達段階等を踏まえながら適切に指導することが必要です。以下のような点をはじめとして、児童生徒等への指導について御留意いただくようお願いします。
・ 暑い日には帽子等により日差しを遮ること、通気性・透湿性の悪い服装等を避けること
・ 運動するときはその前後も含めて適切に水分を補給し休憩をとること、児童生徒等自身でもよく体調を確認し、不調が感じられる場合にはためらうことなく教職員に申し出ること
・ 児童生徒等同士で互いに水分補給や休憩の声掛け等を行うこと
・ 運動等を行った後は、気象状況も踏まえつつ、十分にクールダウンするなど、体調を整えたうえでその後の活動(登下校を含む)を行うこと
・ 体調不良等により下校やその他活動が困難だと感じた場合にはためらうことなく教職員等に申し出ること

なお、児童生徒等への熱中症防止に関する指導の観点から、保護者に対しても熱中症対策についての情報提供を行う等、必要な連携を図るようお願いします。


4.休業日等の取り扱いについて

休業日等については、別添2の関連規定を踏まえ、次の(1)及び(2)を参考として、適切に御対応いただくようお願いします。

(1)各設置者及び学校等におかれては、気象状況等や学校施設(普通教室、特別教室、体育館等)における空調設備の有無等を踏まえ、児童生徒等の健康確保に十分配慮した上で、必要に応じて、夏季における休業日延長又は臨時休業日の設定、それに伴う冬季、学年末及び学年始休業日の短縮等をはじめとした対応について検討すること。
その際、本通知末尾の資料も参考とし、学校及び地域の実態等を踏まえて判断すること。

(2)学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第63条に規定する「非常変災その他急迫の事情があるとき」には、熱中症事故防止のために必要がある場合も含まれることに留意すること。


5.学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(令和6年4月追補版)について

環境省・文部科学省は、教育委員会等の学校設置者が作成する熱中症対策に係る学校向けの熱中症対策ガイドライン等の作成・改訂に資することを目的として、令和3年5月に「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(以下、「手引き」と言う。)」を作成しました。
このたび、作成から約3年が経過し、気候変動適応法等の一部を改正する法律が施行されるなど、熱中症対策をめぐる状況について動きがあったことを踏まえ、その内容を一部追補する資料(令和6年4月追補版)を取りまとめました。
この追補版は、気候変動適応法等の一部を改正する法律の施行による制度の概要や最近の事故事例及び教訓、学校等における熱中症事故対応に関する事例を掲載するとともに、各学校等における熱中症事故防止に必要な取組や留意点が一覧できるチェックリストを収録しています。(別添3)
各学校設置者におかれては、本追補版の内容や地域の特性等を踏まえつつ、設置する学校等において熱中症対策の推進が図られるよう、よろしくお取り計らいいただきますようお願いします。

学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き・チェックリスト


【参考サイト】

○環境省
熱中症予防情報サイト(※環境省ホームページが別ウィンドウで開きます)
「熱中症環境保健マニュアル2022」(令和4年3月改訂)(※環境省ホームページが別ウィンドウで開きます)

○文部科学省
学校の危機管理マニュアル作成の手引き(PDF:5663KB)
学校の「危機管理マニュアル」等の評価・見直しガイドライン(PDF:16948KB)
学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き・チェックリスト
環境を考慮した学校施設づくり事例集

○独立行政法人日本スポーツ振興センター
熱中症の予防(学校等での事故防止対策集)(※日本スポーツ振興センターホームページが別ウィンドウで開きます)

○公益財団法人日本スポーツ協会
熱中症を防ごう(※日本スポーツ協会ホームページが別ウィンドウで開きます)
 

【担当】
文部科学省総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課
安全教育推進室 学校安全係
電話:03-6734-2966

参考資料・別添

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課

安全教育推進室 学校安全係
 

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